ラルナカの塩湖と聖堂
キプロスの「目ざめよ!」通信員
キプロス島のラルナカは,人口3万8,000ないし4万ほどの海岸沿いの町です。その町にはキプロスの塩の主要な供給源となっているとても興味深い湖があります。広さが1.3平方㌔ほどあるこの湖の風景は美しく,夕方にはその静かな湖面に荒涼とした丘陵やよく茂った葉が映ります。
この塩湖は,冬の間に降る雨のあと徐々に姿を現わします。夏の間,特に7月および8月中,湖がかれると,その跡は塩の宝庫となります。地元の政府職員がその塩を集めて小さな山を作り,それをロバに載せて特別な倉庫に運び込みます。彼らはまず動物の下肢と足先をぼろで包み,塩で動物がけがをしないようにします。塩を運ぶ作業は一か月半ほど続きます。やがてその塩は,カートンに詰められ,食料品店で売られます。
この塩湖の西側,ナツメヤシに囲まれたたたずまいの中に,ウム・ハラムのテケとして知られる,有名な回教の聖堂があります。このテケには,マホメットのおばの遺体が収められていると伝えられる墓があります。しかし,その婦人の家系を調べた学者たちは,その人はマホメットの親族ではなく親しい友人で,マホメットの秘書のおばに当たる人であると唱えています。この婦人は,イスラム教の預言者マホメットがメッカからメジナへ旅をする際に力を貸したと言われています。
伝説によると,ウム・ハラムは,西暦647年に行なわれたアラブ人によるキプロス侵略の際に夫に同伴してキプロスへ来ました。そして,乗っていたラバから落ちて死に,その場に埋葬されたと言われています。後日,高さ5㍍の垂直の石柱二本と,その上にかけ渡された三番目の石とから成る慰霊碑が彼女のために建てられました。聖堂を訪れる人々は,上にかけ渡された石は奇跡的にメッカから運ばれ,夜の間にのせられた,という話を聞かされます。
この聖堂は,トルコによるキプロス占領中に重要な存在になりました。その地にモスクが建てられ,今や多くの敬虔なイスラム教徒の巡礼の地となっているのです。イスラム教の聖堂の中でも,このモスクは重要性の点で,メッカのカーバ,メジナにあるマホメットの神殿に次いで第三位に挙げられています。
飛行機でキプロスを訪れるなら,ラルナカにある空港に降り立たれることになるかもしれません。空港を出てから500㍍ほど離れた所に,この注目すべき塩湖とその近くにある,ナツメヤシなどの豊かな緑に囲まれた聖堂を見いだされるでしょう。静かな湖水がすばらしい景色を作り出す冬の間であれ,乾いた湖床に大きな塩の山の見られる夏の間であれ,この地は人をくつろいだ気分にさせることでしょう。