ヱホバの證者の近代歴史
その25B アフリカにおける拡大(1945~1955)
アフリカでは,昔から異教の教が根強く信奉をされていましたから,人々は『暗黒』大陸と呼んでいた程です。しかし1945年以降,ヱホバの証者により真のキリスト教が伝えられるようになつてから,2億300万の住民を有するこの大陸は,世界の暗黒地域として取り残される心配はありません。この尨大な大陸の北部には,モハメット教が強い勢力を占めています。この教により人々の考えは,熱狂的,宗教的にはしり,理性を以つて判断することなく,また極めて道徳観念が薄くなつています。社会において婦人の力は弱く,一夫多妻が広く行われています。道徳は非常に乱れ,疾病は蔓がり,生活は苦しく,教育は欠けており,より高い霊的方面のことはかえりみられていません。この大陸にすむ欧州人について云うと,彼らは原住民より優れたものという態度をとり,欧州本土の人々と同様な気持を抱いております。そして黒色又は有色人種から分離した社会を作つています。一方,アフリカ人の心には,異教の習慣と迷信が深く入り込んで居り,酋長を頭に持つ族長制度を依然として固守しています。またアフリカ人は白色人種を嫌うという気持が心にこびりついており,また白色人種が搾取しないかとか侵略しないかとかいう疑いの気持をいつも離しません。アフリカ人はお互いにも愛情を殆んど感ぜず,隣人愛とは何であるか,理解に苦しみます。自分の妻又は子供に対する愛情もよく理解できません。族長制度の掟通りに,家畜を以つて妻を買い取り,子供を産み,その方面での村を築いて行くという状態です。彼らは『先祖の霊』が生きていて,生きている者を助けたり,罰したりすると信じています。又霊のたたりを恐れて,お祈りをします。さらに,人々は,このような『霊』とかかわりをもつ色々の事,たとえば,規定されている動物の犠牲を供えたりしますが,決して先祖を愛しているが故にしているのではなく,恐怖のために,或は,物質的利益を得るために行つています。悪らつな魔術を行う行者はこれらの背後にあつて,『霊』とのかかわりの行いを為し,愛のない仕業をしています。
ヨーロッパ,モハメット,野蛮な異教の思考が交錯しているこの地で,ヱホバの証者は,どのように困難を克服して行つたでしょうか? 1900年代の初期に,ものみの塔協会は南アフリカに伝道を始め,その地で支部事務所を設立し,1920年代には,この教育の業は北方へと伸びています。同じく1920年代に英領西アフリカに伝道は始められ,支部事務所は設立され,伝道の業は奥地の方へと進められて行きました。1930年代の初期に,エジプトで伝道が開始され,そこからアフリカの北部へと伝道は徐々にすすめられました。このようにして3方面から御国の業はすすめられ,1942年までには,アフリカの12の国々で1万70名の証者が働いております。つぎに1947年にギレアデの宣教者はアフリカへ派遣され始めましたが,最初の年には20名でした。1947年12月,1948年1月,1952年と協会の会長はアフリカの殆んど全部の支部を訪れ,アフリカの証者と語り,同地の伝道上の難問題を共に解決しました。活撥な証者の数は上昇の一路をたどり,1955年には34の国々で9万8146名の証者と108名のものみの塔の宣教者がおりました。13年のあいだに,実に875パーセントの増加をとげています。
このことをなしとげるには,尨大な規模の教育と訓練を忍耐強く与えることが必要でした。しかし,欧州人の証者とギレアデ卒業の宣教者は,無私的な奉仕をよくなしとげてきました。アフリカ人に読み書きを教える学校がまず開設され,会衆の制度は凡ゆる面から簡単化されねばなりませんでした。それらアフリカ人は聖書的な事柄に以前ふれたことは全くなかつたので,色々の規則や,またその実施方法を,始めから教えることが必要でした。一夫一妻というクリスチャンの正しい結婚のあり方も教えられ,協会と永続的に交わるには,まず姦通行為をすつかり取り除き,清い生活を行つていなければなりません。アフリカ人の一つの特徴としてあげられるものに,よく見ならうという性質があります。白人やまた長年の訓練を経た原地人は,新しく興味を抱いている善意者とよく交わり,クリスチャン愛と愛の交りの良い模範を示しました。アフリカ人は,それらの人々が決して偽善ではなく,真心と誠意を以つて行つていることに,直ちに気付きました。そして円熟にすすむにつれて,少しも遜色のない立派なクリスチャンとなつています。このようにして,クリスチャン愛と暖い交りは,アフリカ人の心に深く植えつけられ,彼らも正しいクリスチャン的な考えを持ち,清い生活を行うようになりました。この地の人々には,いわゆる生活上の近代的な娯楽がないので,かえつて聖書を研究し,神の新しい世を学ぶ時間があります。このようにして,聖書をよく学ぶアフリカ人は,永遠の生命という希望をしつかりと持つています。
アフリカ人の証者が道徳方面にも知的方面にも,偉大な変化をなし遂げたことは,アフリカの政府の要職についている人々の目を見張らせました。年毎に増加をつづけたアフリカのクリスチャンの増加の表をここに掲載しますが,これを見ても,まだまだ多くの,ヱホバの「他の羊」がこの大陸から集められ,「一つの群」になるということをよく示しています。
年度 国の数 伝道者の数 伝道時間
1942 11 10,070 2,200,163
1947 17 24,896 6,298,189
1952 32 72,228 15,460,243
1955 34 98,146 25,222,817
全世界の証者と同じように,アフリカの証者も,家から家に伝道し,再訪問をし,聖書研究を行うという方法を用いています。ヱホバの証者は,何処にあつても,1900年以前に,イエスとその使徒たちにより示された模範によく従つております。1955年,このような方法により,以前に「暗黒のアフリカ」と呼ばれていた大陸において,ヱホバの証者は,2000万時間以上の伝道を行いました。彼らは,色々のその土地の言葉でかかれた聖書を用いて,証言しています。1955年には,9万8146名の証者がおりましたが,それは,アフリカ住民のうち,2068名につき1名の証者がいることになります。(次号につづく)