愛と忍耐は勝利を得る
● ルクセンブルグの一婦人の次の経験は,妻がどのようにして夫に聖書の真理を受け入れてもらえるかを示しています。その婦人の夫は,学校卒業以来神や宗教について何も聞きたくないという気持をいだいていたため,聖書のことに対してはきわめて激しく反対しました。そして世の諸問題を解決するには共産主義以外に方法はないと考え,熱心に共産主義を支持していました。そのため,妻が会衆の集会に出席したり,野外奉仕をしたり,娘に聖書の真理を話したりすることを禁じました。そのうえ,エホバの証人のだれかと家で会おうとしないどころか,もし家に来たなら,追い出してやると語るほどでした。妻はそのような主人にどんな態度をとりましたか。それは神の前における自分の権利ですから,自分の信仰は決して捨てませんと,きっぱり告げたのです。夫が激しく反対したにもかかわらず,妻は会衆の集会に秘かに出席し続け,野外の宣教にも活発に参加しました。やがては夫は,自分の反対が妻の信仰を強めるにすぎないことを悟り,それからは妻の思いどおりにさせました。しかし妻は,夫に聖書の真理を受け入れてもらいたいと願っていたため,それだけでは満足しませんでした。何日かのちのこと,天気が悪かったので,集会のあとで迎えに来てほしいと夫に頼みました。そして夫は,近所に住んでいる3人の年配の婦人の伝道者がその悪天候の中を歩いて帰ってゆくの見過ごすわけにはゆかず,その晩の集会の終了後,婦人たちを車に乗せて家まで送って行きました。こうして結局,夫はエホバの証人に接したわけです。その後,妻は夫が他の男子のクリスチャンと接するよう,あらゆる努力をしました。夫は聖書の真理に少しも関心を示しませんでしたが,それでもエホバの証人とともにいることが楽しいと見えて,妻と一緒に大会に出席したこともあります。しばらくして夫は重病をわずらい,入院しなければなりませんでした。この時期に至って彼は死を恐れるようになり,聖書文書を読み始めました。入院中,彼の同僚で見舞いに来る者はひとりもなく,エホバの証人だけが見舞ってくれました。このことで深い感銘を受けた彼は,病気が回復してから,会衆の集会に出席し始めました。こうして彼は聖書の真理を学び,最近の巡回大会でバプテスマを受けたのです。愛と忍耐という聖書の原則は,共産主義の人生哲学を降し得るということが再び証明されました。
― エホバの証人の1968年度年鑑より