「新約聖書」中の神のみ名
「新約聖書」の大抵の翻訳は全能の神の固有の名前を用いていません。それはなぜでしょうか。ギリシャ語本文に厳密に従っているからでしょうか。多くの場合そこに主な関心が払われていないことは明らかです。なぜなら,それらの翻訳は「旧約聖書」でもエホバという名前を用いていないからです。ところが,原語のヘブライ語では,主や神という言葉のほか,神の固有のみ名が7,000回近く現われます。
しかし,み名が用いられている聖句がヘブライ語聖書から直接引用されているというほかならぬその理由で,「新約聖書」の中に神のみ名があることを認める翻訳者はこれまでに幾人かいました。ですから,神のみ名を含む「新約聖書」の翻訳がドイツ語に少なくとも五つあるのは興味深いことです。
そのうちの一つ,1796年に出版されたドミニカス・フォン・ブレンターノによる翻訳は,主本文中に神のみ名を2回用いており,これまでにものみの塔の出版物の中で引き合いに出されたことがあります。さらに二つの翻訳がマルコ 12章29節で神のみ名を用いています。一つは1781年にスイスのチューリッヒで出版されたストルツ訳,もう一つは,教授の職にあったヨハン・バーボル博士による翻訳で,1805年にオーストリアのウィーンで出版されたものです。また,D・P・ダウシェ教授によって翻訳され,1932年にドイツのボンで出版されたいわゆるボンナー・バイブルもあります。この聖書はルカ 20章37節で「ヤーベ」という語を用いています。
もう一つのドイツ語訳は,「新約聖書」の中でそのみ名エホバを10回用いています。この聖書は1789年と1790年にドイツのミュンヘンで出された,「新約聖書」という2巻から成る翻訳です。それには翻訳者の名前が付されていませんが,「ディ・ビーベル・イン・ドイチェラント」(ドイツの聖書)と題する本は,その281ページで次のように述べています。「翻訳は,[セバスチアン]ムッチェレによって行なわれた。ムッチェレは,1749年1月18日にアレルシャウゼン・バイ・フライジングで生まれ,幼くしてイエズス会に入った」。
神のみ名は,「新約聖書」のドイツ語の翻訳だけでなく,ヘブライ語を含め他のおよそ50の言語の翻訳に現われています。
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あなたに関係があるのはなぜですか
『しかし,神の名前を使うか使わないかでどんな相違があるだろうか』と言う向きもあるかもしれません。それは大きな相違を来たすのです。考えてみてください,「新約聖書」には,神が「諸国民に注意を向け,その中からご自分のみ名のための民を取り出され」るとあります。(使徒 15:14)そのみ名を知らず,それを使わないなら,神がご自分の民として選ばれる人々の中に間違いなく入ることができるでしょうか。わたしたちは神のみ名を知っているだけでなく,イエス・キリストが地上におられた時に行なわれたように,他の人々の前で神のみ名を賛美しなければなりません。―マタイ 6:9。ヨハネ 17:6,26。