世界展望
記録的な軍事費
◆ 最近行なわれたある分析によると,1975年度の世界軍事費は,ほぼ3,000億㌦(約90兆円)に達した。前年の2,700億㌦(約81兆円)に比べて,これは記録的な数字である。米国とソ連が全体の六割を占めており,増加率が最大だったのはアフリカ,アジアおよびラテンアメリカの発展途上国であった。それらの国の軍事費は,その基盤となる経済成長の二倍の速さで増加した。近年,中東諸国の軍事費は八倍も増加した。当局者は,軍備競争は「制御できない」と述べている。
政府に対する冷笑的な見方
◆ ウォール・ストリート・ジャーナル紙は,人々が政治指導者たちに対してますます冷笑的になってきたと報告している。世論調査によると,非常に多くの人々は,「だれが選挙に勝つかは問題ではない」と考えている。彼らは選挙を,「政治家の野心を満足させるための儀式,すなわち人々が最も強い関心を抱いているインフレや失業の問題とは本質的に無関係な権力闘争」とみなしている。世論調書家のパトリック・キャデルはこう述べた。「(政治上の)手段は余りにも反応が鈍く不明朗な点が多いので,有権者は自分の目的のためにそうした手段を用いることはできない,と考えられている」。
乳ガンは克服されたか
◆ イタリアのミラノの研究員たちは,乳ガン患者の治療に関して,励みとなる良い結果を報告している。それによると,外科手術の後に,特殊な薬品を施すことによって,婦人がガンの早期再発を免れる可能性は四倍以上になった。その研究は,ナジオネール・ティュモリ研究所のジアンニ・ボナドナ博士の指導の下に行なわれ,研究員は三種類の薬品,すなわち,ミクロフォスファマイド,メトトレキセート,5-フルオロウラシルを併用した。その研究の対象となった女性全員のわきの下には一つかそれ以上のリンパ節が出来ていたが,それ以上は広がらなかった。最も効果があったのは,リンパ節が四つかそれ以上出来ていた患者の場合で,再発した者は,8.8%にすぎず,それに対してその薬品療法を受けなかった患者の場合は40.7%が再発した。しかしボナドナ博士は,患者の余命が著しく延ばされたか否かを決定するのはまだ早すぎると述べている。
香港は海のじゃ口を開ける
◆ 一世紀余りの間,香港は増大する人口に対する給水の問題と取り組んできた。しかし今年は,一日に約1億5,000万㍑の海水を淡水に変える設備が完成する予定になっている。やがて,香港の400万人余りの住民に十分の給水が行なわれることが期待されている。
働く妻は増加する
◆ 1947年当時,米国では,勤めを持つ夫の数は勤めを持つ妻の数の五倍であった。しかし,1975年には働く夫が3,800万人であったのに対して,勤めに出る妻が2,000万人もいたので,その割合は夫二人に対して妻一人強となった。1950年当時,学齢期の子供を持つ母親のうち仕事を持っていたのは全体の28%であったが,昨年までにその数字は51%に跳ね上がった。
高まるヨーロッパの離婚率
◆ ある国際的な社会学研究団体は,過去10年間にヨーロッパの多くの国々で,離婚率の驚くべき上昇が見られたことを明らかにした。西ドイツでは現在,結婚した夫婦四組のうち一組が離婚に終わっており,デンマークでは五組のうち二組が離婚している。スウェーデンと英国でも離婚率は高い。また別の傾向として,現在ヨーロッパでは,三件の離婚のうち二件は女性のほうが言い出したものであり,西ドイツの場合,その割合は四件のうち三件である。
女性のアルコール中毒者
◆ 米国の少なくとも900万人のアルコール中毒者のうち,約200万人は女性である。しかも,その数は急速に増えている。「アルコール中毒者自主治療協会と呼ばれる団体では,過去五年間に女性のアルコール中毒者の割合が25%から40%に増加した。その理由の一つとして,男女同権の要求が最近高まってきたことが挙げられており,その結果女性は飲酒などに対して慎みの欠けた態度を取るようになったと言われている。しかし,この過度の飲酒のしわ寄せを受けるのは子供たちである。ある権威者は,他の否定的な面の一つとして次の点を指摘した。「恐らく非常に多くの子供たちが,母親の飲酒のためにひどく損なわれている。我々が得た情報によると,知能の遅れた子供はアルコール中毒者の家庭から出る傾向があるようだ。そこには何らかの関係があるに違いない」。
ゾウが涼むための問題
◆ すべてのほ乳動物と同様に,ゾウの体温は概して安定している。体温がわずか(約5度)上がっただけで,体の組織,特に脳組織は致命的な害を受ける。しかし,人間と違って,ゾウは体温を下げるために汗をかくことをしない。しかもその灰色の皮膚は,太陽の熱を吸収しやすい。その代わりに,ゾウは木陰を捜し求め,泥の中で転がり,長い鼻を使って体に水を吹き掛ける。しかしケニアの動物学者は,人口が増えるにつれゾウの生息地が狭くなり,木陰を与える場所や水浴びをする所が少なくなったと述べている。
強制的な断種
◆ 毎年約1,300万という実質的な人口増加を記録するインドでは,強制的な断種が話題に上っている。自発的な産児制限計画によって毎年の膨大な人口増加を抑えられなかったため,インドの保健および家族計画に関係する一大臣はこう述べた。「我々は法律を作らねばならないかもしれない。それはすべての人に適用されるだろう」。子供の数を,一世帯当たり二,三人に制限することが提案された。中国では,結婚した夫婦に対して,子供を二人に制限するよう強く勧められている。中国人の生活様式は非常に組織化されているため,こうした形の強制は概して成功しているようだ。
自動車の中のアルコール
◆ ブラジルのエルネスト・ギセル大統領は,砂糖きびやカサバ,その他の原料から造るアルコールの生産を促進する「全国的なアルコール計画」を始めた。その目的は,アルコールの混合率が約20%になるまで,その地方のガソリンに,アルコールを加えることにある。ブラジル人は,石油の輸入を大幅に削減したいと望んでいる。ある専門家の語るところによると,ガソリンにアルコールを混ぜることによって,実際に走行距離は増し,汚染は軽減するとのことである。スウェーデンとドイツの自動車会社もまた,大規模にこれを実験している。1980年までには混合を許可するよう立案された,カリフォルニアの議会法案は,伝えられるところによれば,石油業界の反対を受け,否決された。
クジラの吹く潮
◆ 米国カリフォルニア大学の二人の研究者が最近観察したところによると,コククジラの吹く潮は噴水孔付近では主に液状であるが,高い所へ上がるにつれ霧状になる。この研究者たちは,観察のためにクジラの幼獣三頭を捕らえ,流水計を用いて噴水孔から吹き上げる流水量を測定した。一番大きな幼獣は,一秒間に202㍑もの率で吹き上げた。
胎児の大虐殺
◆ 国連の後援した調査によると,今や毎年世界中で4,000万ないし5,500万件の堕胎が行なわれている。ワールドウォッチ研究所はまた,世界人口の約三分の二は合法的な堕胎の許可が比較的容易に得られる国に住んでいることを伝えているが,五年前のその割合は世界人口の三分の一に過ぎなかった。「これほど急速に世界を席けんした社会的変化はまれである」と,その調査論文は評している。
スピードはエネルギーの節約につながる
◆ オーストラリアの動物学者テレンス・J・ドウソンは,長年にわたる研究の末,次の点を報告した。カンガルーは,四本の足すべてを使って歩いたり,ゆっくり走ったりする際に,ゆっくりと跳びはねているときの四分の一のエネルギーしか使わない。ところが,高速度で跳びはねると,カンガルーのエネルギーの効率はずっとよくなる。
増加する文盲
◆ 今から10年前,国連教育科学文化機構(ユネスコ)は世界の文盲を無くすために,大がかりな計画に着手した。同機関の独自の報告によると,その計画は「惨たんたる失敗」に終わった。計画が始められた当時,世界の文盲人口は7億3,500万人と推定されていたが,現在その数は約8億に達している。この10年間に同計画の恩恵に浴した文盲は100万人にすぎず,しかもそのすべてが読み書きを学んだ訳ではない。
母乳の益
◆ 幼児に起こる原因不明の突然死は,長い間医学の専門家を悩ませてきた。しかし,アメリカの医師ロバート・レイシンガーは,このような突然死が母乳で育てられた赤子よりも哺乳びんで育てられた赤子に多く見られると述べている。同医師の主張は,ニュージーランドにおける一調査によって裏付けられている。その示すところによると,哺乳びんで育てられた幼児の「幼児性突然死症候群」による死亡率は,母乳で育った幼児の場合の10倍である。
喫煙者に不利な一層の証拠
◆ 喫煙者には不利な情報が,カナダ医学会ジャーナル誌に再び公表された。若年層の場合,喫煙者の死亡率は非喫煙者の死亡率の二倍ないし三倍であることが分かった。女性も例外ではなく,心臓病で急死した人の62%はヘビー・スモーカーで,死亡時の平均年齢は非喫煙者より19歳低かった。喫煙をやめた65歳以下の男性は心臓病の危険を50%減らすことができた,と同誌は述べている。
増加する少女の喫煙者
◆ 巻きたばこを吸うことの危険が明白に立証されているにもかかわらず,少女の喫煙者の数は増加の一途をたどっている。六年前には,13歳から17歳までの少女の22%が喫煙者で,その10%は一日に最低一箱のたばこを吸っていた。現在では,この年齢層の27%は喫煙し,その40%が一日に最低一箱を吸う。18歳から34歳までの女性喫煙者の割合はわずかに(34%から36%へと)増加したにすぎないが。13歳から17歳までの年齢層ではヘビー・スモーカーの割合が1969年の51%から1975年の61%へと増加している。全米ガン学会の会長,ベンジャミン・ビルド博士は,新しい調査結果は“公衆衛生の緊急な危機”を成すものであると述べた。
不景気の犠牲
◆ 最近の不景気の影響で,米国では破産件数が増加している。1975会計年度の破産は25万4,484件で,それ以前の最高数であった1967年度を4万6,000件上回った。その中には3万130件を数える法人および商業上の倒産があり,前年度より約1万件の増加であった。
日本の賭博
◆ 日本の政府当局によると,1975年中に約3兆6,000億円余りが,日本で合法的な賭博のために使われた。この推定総額は,宝くじや競馬などにかけられた。日本人は,合法的な賭博に一人当たり年間約3万3,000円使う。非合法的な賭博もやはり盛んである。