世界展望
「明日の流行病」
◆ 「欠乏との闘い」と呼ばれる英国の一機関は,発展途上国におけるタバコの売り上げが急上昇していると伝えている。これらの国では売り上げ高が年に5%増加していると言われている。「タバコと第三世界: 明日の流行病」と題する同機関の報告は,さらに,ガンや他の喫煙と関係のある病気はやがて第三世界諸国に脅威をもたらす流行病となるであろうと述べている。トゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌の報告によると,こうした国の市場に出されるある種のタバコは,「ヨーロッパや米国で販売される同じブランドのものに比べ,ガンの原因となるタールを二倍も多く含む」という事実は,問題をさらに深刻なものとしている。
記憶によみがえる広島
◆ 1945年8月6日に広島に原爆を投下した米軍機の標定手を勤めたかつての空軍飛行士が,最近テキサス州ヒューストンの在郷軍人病院で死亡した。AP通信はこう報じている。「幾度にもわたる精神医学上の検査によって,“重度の精神神経症及び罪悪観念”を暗示する結果が出たため,1947年に除隊させられた。医師たちの話によると,彼は広島の幾十万もの日本人の死に対して責任を感じていると述べていた」。埋葬の後,故人の兄弟は次のように語った。「彼は自分の頭が燃えているようだと言っていた。あの人々が燃えているのが分かると言っていた」。
ガソリンの消費量
◆ モービル石油会社の話によると,米国では16㌔以下のドライブで使用されるガソリンの量がガソリン消費量全体のほぼ半分を占めている。また,速度を110㌔から80㌔まで落とせば,リッター当たりの走行距離は平均25%延びるという点をモービル社は指摘している。
コンコルド機の“通勤者”
◆ 英仏共同開発による超音速機コンコルドが1976年1月に大西洋航空路に就航して以来,ある乗客は事実上“通勤者”となっている。英国航空会社のコンコルド機を利用する客の43%は以前に二度以上同機を利用している。トゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌の報告によると,「50回以上も乗っている人が五人おり,63回利用したアメリカ人が最高記録を保持している」。
ソ連の聖職者
◆ 1978年7月号のソビエト・ライフ誌に発表された最近のあるインタビューの中で,科学・無神論協会の会長パーベル・クロチェキンは戦争及びソ連の制度に対するロシア人僧職者の態度について言及している。第二次世界大戦中(1941-1945年),「大半の僧職者及び教会の役員が愛国主義者となった」と,クロチェキンは述べている。彼はまたこう述べている。「ロシア正教会の諸会衆はドミトゥリ・ドンスコイ戦車部隊とアレクサンドル・ネフスキー飛行大隊を組織するための基金を集めた。イスラム教の教職者もユダヤ教の律法学者も赤軍のために祈りをささげた」。ソ連における教会と国家の関係について,クロチェキンはこう述べている。「現総主教ピーメン(イズベコフ)を選出するために1971年に開かれたロシア正教会地方協議会は,ソ連の国家と社会制度を政治面で支持することを宣言した。同協議会は宗教に対する現行の法律と,教会と国家間の諸関係とに満足していることを表明した」。
アームストロング帝国は“崩壊しつつある”?
◆ ワールドワイド・チャーチ・オブ・ゴッドをテレビで提唱したことで有名な,ガーナー・テッド・アームストロング氏は,最近放送界を追われ,父親のハーバート・W・アームストロング氏からは除名処分を受けた。年間約1,700万円を稼ぐと噂される息子のアームストロング氏は,それ以前に指導部によるお金のむだ使いや,教会員の間に見られる分裂と恐れによって「帝国全体が崩壊しつつある」と主張した。
犬の健康
◆ 日本の何軒かのペット・ショップで最近人気を呼んでいる商品は,犬が屋内にいても健康を維持できるようにする“ドッグ・ランナー”である。これを発明した人の話によると,この着想が浮んだのは自分が二日酔で犬の散歩に乗り気でなかった朝のことだという。「彼は自分の仕事場にあった古びたコンベヤー・ベルトの上にその犬を乗せ,機械を作動させた。そのマルチーズ犬は最初のうちこそぐらついたりよろめいたりしていたものの,やがて動いているベルトの上で走り始めた」と英文毎日は伝えている。福岡市の一獣医は,自分の診療所では犬の減量や健康改善のためにこの“ドッグ・ランナー”を用いていると語り,『ここを訪れる犬は大抵太り過ぎか足が非常に弱い」と付け加えた。
砕氷
◆ 今年,7万5,000馬力のソ連原子力砕氷船シビル号が,普通三か月しか続かない短い夏の始まる二か月前に,世界初の北極海航海を行なった。北極海航路は,冬期にはその90%,年間平均70%が氷で覆われているため,商業的にはあまりその価値は認められていなかった。シビル号は荷を積んだ貨物船を従えて3,360海里(6,220㌔)の行程を18日間で走行した。時々,ぶ厚い氷が2万5,000㌧の砕氷船を鋭くかしげたため,船のプールから水があふれたり,棚から物が落ちたりしたこともあった。ソ連政府が望んでいるのは,近い将来にほとんど常時航路が開かれるようになり,北極の豊かな資源が産業に大いに貢献するようになることである。
女性の功績
◆ 英国のナオミ・ジェームス女史は,記録的な272日間という短期間で世界中を単独航海し,最近ダートマウスに到着した。4万8,000㌔に及ぶ同女史の航海時間は,1967年にフランシス・チチェスター卿の行なった航海の記録より二日間短かった。同女史の16㍍の一本マスト縦帆装船,エクスプレス・クルセーダー号は,ガラス繊維製の10㌧の船で,普通は10人乗りだと言われている。
700万ドル(約14億円)するココス諸島
◆ ココス諸島のために700万㌦(約14億円)をジョン・クラニース・ロス氏に支払うとオーストラリア政府は発表した。オーストラリアの西2,570㌔のインド洋には27の環礁がある。クラニース・ロス氏の家族は1886年,ビクトリア女王からこの島を所有する永久の法的権利を認められていたが,1955年,ココス諸島はオーストラリアの管轄下に入った。そこには約360人のマライ人が住んでいる。
アテネの緑を守る
◆ 「アテネ市議会は樹木や各種の植物を保護するため,思い切った方策を採用している」とアテネ・デイリー・ポスト紙は報じている。大小を問わず木を伐採したり芝地を荒らしたりすると「10万ドラクマ(約56万円)の罰金が課せられる」。この地方自治体は,由緒あるギリシャの町から,すでに不足しているとみなされている緑の量をこれ以上減らすまいと心を砕いている。
低俗な美食家
◆ オランダのハーグ市近郊の刑務所で,新しいフランス人のコック長が“高級料理”を出すようにしたところ,囚人たちはそれを拒絶した。ホランド・ヘラルド誌の伝えるところによると彼らは「フランス風のじゃがいも,シカ肉,入念な味付けのソースで自分たちは養なわれていると刑務所長に不平をこぼした」。そこで,「オランダに古くから伝わるミートボールやリッソールやシチューなどがメニューに戻ることになった」。
魂をゆさぶる宝石
◆ 最近幾つかの珍しいルーベライト石(紅電気石)がブラジルで発見された。その石の大きさと完全な状態があまりにもみごとだったため,ある宝石専門家がそれを見た時には医師の手当てが必要になったと言われている。伝えられたところによると,フランスの一専門家は涙を流したという。そのうちの三つの石だけでも合計30万カラットの重さがあった。オ・エスタード・S・パウロ誌上のレポートによると,一カラット100㌦(約2万円)の卸売りではそれらの石に3,000万㌦(約60億円)の値がつけられた。ブラジル,ミナス・ジェライス州にあるその採掘坑には厳重に武装した見張りがいて,一般の人や報道関係者はシャット・アウトされている。重要な買い手だけが通行を許される。
グランドキャニオンの年代に誤り
◆ 従来科学者たちは,アリゾナ州のグランドキャニオンの年代を1,000万年昔のものと見積もっていた。その数字はカリウム・アルゴン年代測定法を用いて得られたものである。しかし今日科学者は,この年代には誤りがあると述べている。それは最近の検査が示すところによると,この地域はせいぜい600万年の古さで,400万年の誤差が生ずると言われているからである。一人の科学者は「これは我々を当惑させるものだ」と語った。しかしカリウム・アルゴン年代測定法が大きな変動の影響を受けやすく,この方法を根拠として立てられた仮説には誤りがありうることを考えると,最新の数字でさえ重大な疑いを免れられない。
精管切除術の問題
◆ メディカル・トリビューン誌の報告によると,サルを使った実験で,二グループのサルの双方に非常に油っこいエサを食べさせたところ,精管切除を受けたサルは,他方のグループと比べて二倍もアテローム性動脈硬化症にかかりやすかった。精管切除手術を受けた人間が同様な反応を示すかどうか定かではないが,コレステロールに関しては,サルは人間とほとんど同じような反応を示すことが観察されている。
新しいハイウェイ
◆ 中国,シンチャン・ウィグル自治区の国境からパキスタン,イスラマーバードの数㌔手前まで,800㌔に及ぶ新しいハイウェイが延びている。工業技術の偉大な勝利とたたえられたこの石炭タールのハイウェイは,山々の壁を切り開いて進み,周囲の氷河の浸食によって蛇行するようになった急流を渡ってゆく。カラコルム・ハイウェイまたはヒマラヤン・ハイウェイと呼ばれるこの道路の建設中に,2,700人以上の犠牲者が出たが,そのうち600人は中国人で,残りは20年間もこの事業に携わってきたパキスタンの労働者だった。この工事は,二年交替で八年間働く一万人の中国人の助力を得て完成された。パキスタンの労働者の述べるところによると,中国人は近代的な機械を使おうとはせず,道路建設の仕事の大部分をつるはしとシャベルを用いて行なったという。
食物の摂取量は老化に影響
◆ ネズミを使った実験で,食物の摂取量が老化現象に多大な影響を与えることが明らかになった。サン・アントニオ市にあるテキサス州ヘルス・サイエンス・センターのエドワード・マソロ博士は,550匹のネズミを食事の量を基準にして二つのグループに分けた。片方のグループは好きなだけ食べることができるが,もう一方のグループの食物は第一グループが実際に消費した量の6割に制限されていた。その結果食物の摂取量を減らしたグループの方がかなり長生きしたことが明らかになった。同博士は「食事制限は,生理的な衰えを食い止めることによって,致命的な病気の始まりを遅らせる」と結論づけている。人間の場合も同じであろうと考えられている。