楽園をもたらす政府
イエスは,地上におられたとき,ご自分の追随者に神の王国を祈り求めるよう教え,こう語られました。「あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天におけると同じように,地上においてもなされますように」。(マタイ 6:9,10)イエスは「王国の良いたより」についても絶えず話されました。(マタイ 4:23)実際,イエスは,ほかのどんなことよりも王国について多く語られました。なぜでしょうか。それは,王国が,今日の生活を非常に難しくしているさまざまな問題を解決するために神がお用いになる手段だからです。神は,まもなく王国によって,戦争や飢え,病気,犯罪をなくし,一致と平和をもたらされます。
あなたはそのような世界に住みたいと思われますか。それを望まれるなら,ぜひこのブロシュアーをお読みください。そうするとき,この王国が一つの政府であること,しかもこれまで人間を支配してきたどの政府よりもまさった政府であることが分かるでしょう。また,神が,王国に関するご自分の目的を胸のときめくような方法でご自分の僕たちにしだいに明らかにしていかれる様子も目にできます。それに加えて,王国が今日でさえ,わたしたちにどのような助けを与えてくれるかについても理解できます。
事実,あなたは,今のこの時代に,神の王国の臣民の一人になれるのです。しかし,そのような選択をする前に,神の王国についてもっと多くのことを知る必要があります。そのために,このブロシュアーをお調べになるようお勧めします。そこに説明されている,王国に関するすべての情報は聖書から取られています。
では,最初に,わたしたちが神の王国を大いに必要としている理由を調べてみましょう。
人間の歴史の初めに,神は人を完全な者として造り,楽園に置かれました。そのとき,王国は必要ではありませんでした。
しかし,わたしたちの最初の親であるアダムとエバは,反逆したみ使いであるサタンの言うことに聞き従いました。サタンは神について偽りを語り,二人を自分と同じように神に反逆させました。こうして,二人は死に値する者となったのです。というのは,「罪の報いは死」だからです。―ローマ 6:23。
罪深い不完全な人間は完全な人間を産み出すことができません。ですから,アダムの子供たちはすべて,罪深い不完全な状態で生まれ,死んでいきました。―ローマ 5:12。
それ以来,人間は,罪と死の呪いのもとから立ち直る助けを得るために,神の王国を必要とするようになりました。サタンは神のみ名に偽りの非難を浴びせましたが,王国は神のみ名に対するそうした非難を一掃します。
エホバ神は,人類を罪から救出するために特別な「胤」(つまり子孫)の生まれることを約束されました。(創世記 3:15)この「胤」は神の王国の王になるはずでした。それはだれでしたか。
アダムが罪を犯してから2,000年ほど後に,アブラハムという名前の非常に忠実な人がいました。エホバはアブラハムに,それまで住んでいた都市を離れ,パレスチナの地で天幕の生活をおくるようお告げになりました。
アブラハムは,エホバから行なうように告げられた事柄をすべて行ないました。そのうちの一つは非常に難しいものでした。エホバはアブラハムに,その息子イサクを祭壇の上に犠牲としてささげるようお告げになったのです。
エホバは実際には,人間を犠牲にすることを望んでおられたのではありませんでした。むしろ,アブラハムがどれほど神を愛しているかを知りたいと思われたのです。アブラハムがイサクをまさに殺そうとした瞬間,エホバはアブラハムを止められました。
アブラハムの大いなる信仰のゆえに,エホバはパレスチナの地をアブラハムの子孫に与えることを約束なさり,約束の胤はアブラハムとその子イサクの家系から出ると語られました。―創世記 22:17,18; 26:4,5。
イサクには,エサウとヤコブという二人の息子がいました。約束の胤はヤコブの家系から出るとエホバは言われました。―創世記 28:13-15。
エホバからイスラエルという名を与えられたヤコブには12人の息子がいました。やがてその息子たちもみな子供をもうけました。こうして,アブラハムの子供たちは増え始めました。―創世記 46:8-27。
付近一帯にひどい飢きんが臨んだとき,ヤコブとその家族はエジプトの支配者であるファラオの招きに応じてエジプトに下りました。―創世記 45:16-20。
エジプトにおいて,約束の胤はヤコブの子であるユダの子孫から出ることが啓示されました。―創世記 49:10。
やがてヤコブは死に,その子孫は数を増して一つの国民のようになりました。そのため,エジプト人は恐れるようになり,彼らを奴隷にしました。―出エジプト記 1:7-14。
やがて,エホバはたいへん忠実な人であったモーセを遣わし,その時のファラオにイスラエルの子供たちを解放するよう,お求めになりました。―出エジプト記 6:10,11。
ファラオがそれを拒んだため,エホバはエジプト人の上に十の災厄を下されました。最後の災厄として,エホバは死のみ使いを遣わし,エジプトの初子をすべて殺させました。―出エジプト記 7-12章。
神はイスラエル人に,彼らが夕食のために子羊を殺し,その血の幾らかを戸柱に塗るなら,死のみ使いは彼らの家を過ぎ越すであろう,とお告げになりました。こうして,イスラエル人の初子は救われました。―出エジプト記 12:1-35。
その結果,ファラオはイスラエル人にエジプトから出て行くように命じました。ところが,ファラオは考えを変えて,イスラエル人を連れ戻すため,その後を追いかけました。
エホバは,イスラエル人が紅海を通って逃れることができるように,道を開いてくださいました。そして,ファラオとその軍勢がイスラエル人のあとに続いて進もうとした時,彼らはおぼれ死んでしまいました。―出エジプト記 15:5-21。
エホバはイスラエルの子らを,砂漠にあるシナイと呼ばれる山に導きました。そしてその所で,エホバは彼らにご自分の律法を授け,もしそれを守るなら,彼らは祭司の王国,聖なる国民となるであろうと言われました。したがって,イスラエル人にはやがて神の王国の重要な部分を占める機会が与えられました。―出エジプト記 19:6; 24:3-8。
エホバは,イスラエル人がシナイ山に1年ほどとどまった後,ご自分が彼らの父祖アブラハムに約束した地,すなわちパレスチナに彼らを導かれました。
神は後日,パレスチナにおいて,イスラエル人が王の支配を受けることをお許しになりました。その当時,神は地上に王国を持っておられました。
イスラエルの二番目の王は,ユダの子孫であるダビデでした。ダビデはイスラエルの敵をすべて征服し,エルサレムを国の首都としました。
ダビデの統治中の出来事は,エホバが王の後ろ盾となる時,地上のどんな支配者もその王を征服できないことを物語っています。
エホバは,ダビデの子孫から約束の胤が出ると言われました。―歴代第一 17:7,11,14。
ダビデの後に,その子ソロモンが支配を行ないました。ソロモンは知恵に富む王で,イスラエルはその統治のもとで栄えました。
ソロモンはまた,エルサレムに,エホバのための立派な神殿を建造しました。ソロモン統治下のイスラエルに見られた状態は,まもなく到来する神の王国が人類にもたらす祝福を幾つか示しています。―列王第一 4:24,25。
しかし,ソロモンの後の王たちの多くは非常に不忠実でした。
ところが,ダビデの子孫が引き続きエルサレムで支配を行なっていた時,エホバは預言者イザヤを用いて,忠実をもって全地を支配するダビデの子が将来現われることをお告げになりました。この人物が約束の胤となるのです。―イザヤ 9:6,7。
預言者イザヤは,その胤の支配がソロモンの支配よりはるかに栄光あるものとなることを予告しました。―イザヤ 11章および65章。
今や,神の僕たちは,それまでにも増して,この胤となるのはだれだろうかと考えるようになりました。
ところが,その胤が到来する前にイスラエルの王たちは非常に邪悪になったので,エホバは西暦前607年に,その国民がバビロニア人に征服されることをお許しになりました。そして,民の多くはバビロンへ流刑にされました。しかし,神はご自分の約束を忘れてはおられませんでした。胤は依然としてダビデの家系から出ることになっていました。―エゼキエル 21:25-27。
イスラエルに臨んだ事柄は,一人の知恵に富む忠実な人間の王が益をもたらしても,その益は限られたものであることを示しました。忠実な人々は死に,その後継者たちは忠実でないかもしれません。何がその解決となったでしょうか。約束の胤です。
やがて,何千年かが過ぎ,胤が出現しました。それはだれでしたか。
神のみ使いの一人が,イスラエル人で,マリアという名前の未婚の婦人に,その答えを与えました。み使いはマリアに,彼女が一人の男の子を産み,その子はイエスと名付けられるであろうと告げました。み使いはこのように言いました。
「これは偉大な者となり,至高者の子と呼ばれるでしょう。エホバ神はその父ダビデの座を彼に与え,彼は王として……支配するのです」― ルカ 1:32,33。
ですから,イエスは,約束の胤となり,やがては神の王国の王となる方でした。しかし,イエスはそれ以前の忠実な人々となぜ異なっていたのでしょうか。
イエスは奇跡によって誕生したのです。イエスの母は処女でした。イエスには,人間の父親がいませんでした。イエスはそれまで天にいたのであり,神の聖霊,つまり活動力がイエスの生命を天からマリアの子宮に移しました。ですから,イエスはアダムの罪を受け継いでいませんでした。生涯を通じて,イエスは一度も罪を犯しませんでした。―ペテロ第一 2:22。
イエスは,30歳の時にバプテスマを受けました。
イエスは民に神の王国について語り,やがてご自身を神の王国の王として示されました。―マタイ 4:23; 21:4-11。
イエスは多くの奇跡も行なわれました。
また,病人をいやされました。―マタイ 9:35。
イエスは,奇跡によって,飢えている人に食べ物を与えました。―マタイ 14:14-22。
イエスは死人をよみがえらせることさえしました。―ヨハネ 11:38-44。
これらの奇跡は,イエスが神の王国の王として人類のために何を行なわれるかを示しています。
ダビデ王がエルサレムを自分の王国の首都にしたいきさつを覚えておられますか。イエスの説明によると,神の王国は地上にではなく,天に建てられます。(ヨハネ 18:36)そのわけで,その王国は「天のエルサレム」と呼ばれているのです。―ヘブライ 12:22,28。
イエスは,王国の臣民となる人々が従うべき律法の概要を示されました。それらの律法は,今では聖書に収められています。最も大切な律法は,神を愛すること,そして互いに愛し合うことでした。―マタイ 22:37-39。
イエスはまた,ご自分がただ一人で王国を支配するのではないことを啓示されました。天に行き,イエスと共に天で支配を行なうよう選ばれる人々がいることになっていました。(ルカ 12:32。ヨハネ 14:3)その人々の数は何人になるでしょうか。啓示 14章1節は,それが14万4,000人であることを示しています。
14万4,000人だけが天に行って,イエスと共に支配を行なうのであれば,残りの人類にはどんな希望があるのでしょうか。
聖書はこう述べています。「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」― 詩編 37:29。
地上で永久に生きる人々は「ほかの羊」と呼ばれています。―ヨハネ 10:16。
ですから,二つの希望があるのです。天に行ってイエス・キリストと共に支配を行なうようエホバ神に召される14万4,000人がいます。しかし,他の幾百万もの人々には,神の王国の臣民として地上で永久に生きるという確かな希望があります。―啓示 5:10。
サタンはイエスを憎み,イエスに反対しました。イエスが3年半にわたって伝道した後,サタンは,イエスが拘引されて,杭の上にくぎづけにされ,殺されるようにはかりました。なぜ,神はそれをお許しになったのでしょうか。
わたしたちはアダムの子孫であるため,だれもが罪を犯し,死に値する者であることを,思い起こしてください。―ローマ 6:23。
イエスは奇跡的な方法で誕生したので,完全であり,死に値する方ではなかったことも,思い起こしてください。しかし,神は,サタンが『イエスのかかとを砕く』,つまりイエスを殺すことをお許しになりました。しかし神は,イエスを不滅の霊者として再び命によみがえらされました。イエスは,完全な人間の命に対する権利を依然として有しておられたので,わたしたち人間を罪から贖うために今やそれを用いることができました。―創世記 3:15。ローマ 5:12,21。マタイ 20:28。
イエスの犠牲が何を意味しているかを十分理解する助けとして,聖書は預言的な型によってそれを説明しています。
例えば,エホバが,アブラハムの愛を試みるために,自分の息子を犠牲としてささげるようアブラハムにお告げになったことを覚えていますか。
これはイエスの犠牲の一つの預言的な型でした。その出来事は,エホバが人類に対して抱いておられる愛の深さを物語っていました。神の愛は,わたしたちに命を得させるためみ子イエスが死ぬことをお許しになるほど深いものでした。―ヨハネ 3:16。
エホバがイスラエル人をエジプトからどのように救出なさったか,また死のみ使いに過ぎ越させて彼らの初子をどのように救われたかを覚えていますか。―出エジプト記 12:12,13。
それは一つの預言的な型でした。子羊の血がイスラエル人の初子にとって命を意味したのと同様,イエスの流された血はイエスを信じるすべての人にとって命を意味します。そして,その夜の出来事がイスラエル人にとって自由を意味していたように,イエスの死は罪と死からの自由を人類にもたらします。
イエスが,「世の罪を取り去る,神の子羊」と呼ばれているのはそのためです。―ヨハネ 1:29。
しかし,イエスは地上におられた間,弟子たちを集めて,ご自分の死後も王国の良いたよりを伝道できるよう彼らを訓練しました。―マタイ 10:5。ルカ 10:1。
これらの弟子たちは,神の王国でイエスと共に支配を行なうよう神に選ばれた最初の人々でした。―ルカ 12:32。
もしユダヤ人が律法を守るなら,彼らは「祭司の王国」になるであろうと,神がユダヤ人に約束されたことを,覚えていますか。もし彼らがイエスを受け入れるなら,彼らには今や,神の王国の一部分を占め,天的な祭司として奉仕する機会がありました。ところがユダヤ人のほとんどがイエスを退けたのです。
その時から,ユダヤ人はもはや神によって選ばれた国民ではなくなりました。パレスチナはもはや約束の地ではなくなりました。―マタイ 21:43; 23:37,38。
イエスの時からわたしたちの時代に至るまで,エホバは,イエスと共に天で統治を行なうこれらの人々を集めてこられました。今日でも,地上にこれらの人々のうちの何千人かが生存しています。わたしたちは彼らを油そそがれた残りの者と呼んでいます。―啓示 12:17。
今や,神の王国がどのようなものか,しだいに分かってきました。それは天にある政府で,その王はイエス・キリストです。そして,地から選ばれた14万4,000人がイエス・キリストに加わります。その王国は,地上の忠実な人類に対して支配を行ない,地に平和をもたらすために権威を行使します。
イエスは,亡くなられた後,復活させられ,天へ行きました。そして天で,王国の王として支配を始める時が訪れたと神が言われるのを待ちました。(詩編 110:1)その時はいつ訪れるでしょうか。
エホバは時々,ご自分の王国に関連したある事柄を知らせるため,人々に夢を見させます。
ダニエルの時代に,エホバはバビロンの王ネブカドネザルにそうした夢を見させました。それは一本の巨大な木に関する夢でした。―ダニエル 4:10-37。
その木は切り倒され,幹には7年間たがが掛けられました。
その木はネブカドネザルを表わしていました。幹に7年間たがが掛けられていたように,ネブカドネザルは7年のあいだ正気を失いました。その後,ネブカドネザルは正気を取り戻しました。
このすべては一つの預言的な型でした。ネブカドネザルはエホバの世界的な支配権を表わしていました。初め,その支配権はエルサレムにいるダビデ王の子孫を通して行使されました。西暦前607年にバビロンがエルサレムを征服した時,その王統は中断されることになりました。「法的権利を持つ者が来るまで」,ダビデの家系から別の王が現われることはありませんでした。(エゼキエル 21:27)
その法的権利を持つ者とはイエス・キリストでした。
西暦前607年からイエスが統治を始めるまでにはどれほどの期間が経過することになっていたでしょうか。預言的な7年が経過するはずでした。これは2,520年に相当します。(啓示 12:6,14)そして,西暦前607年から2,520年を数えると西暦1914年になります。
ですからイエスは1914年に天で支配を始めました。それは何を意味したでしょうか。
聖書は,使徒ヨハネの見た幻によってそれをわたしたちに告げています。
ヨハネは,天の一人の女が男子を産むのを見ました。―啓示 12:1-12。
その女は神の天的組織を表わしており,神に仕える天のみ使いたちすべてで成り立っています。男子は神の王国を表わしています。それは1914年に「誕生」しました。
次にどんなことが起きたでしょうか。イエスが王として最初に行なったことは,サタンおよびこれと共に反逆に加わったみ使いたちを天から地に追い出すことでした。―啓示 12:9。
聖書はその結果についてこう告げています。「天と天に住む者よ,喜べ! 地と海にとっては災いである。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りを抱いてあなた方のところに下ったからである」― 啓示 12:12。
ですから,イエスが天で統治を始めると,その敵たちは地上で非常に活動的になりました。聖書に予告されていたとおり,イエスは敵のただなかで支配を始めました。―詩編 110:1,2。
そのことは人類にとって何を意味したでしょうか。
イエスはわたしたちに,戦争,食糧不足,疫病,そして地震があるであろうと告げられました。― マタイ 24:7,8。ルカ 21:10,11。
わたしたちは,こうした事柄が1914年以来生じているのを目にしています。これも,王国がその年に支配を開始したことを知るもう一つの根拠となっています。
また,「逃げ道を知らない諸国民の苦もんがあるでしょう。同時に人々は……恐れ……気を失います」。(ルカ 21:25,26)わたしたちはそうした事態をも1914年以来目にしています。
使徒パウロはさらに,人々は「自分を愛する者,金を愛する者……親に不従順な者……容易に合意しない者,中傷する者,自制心のない者」となるであろう,と述べました。―テモテ第二 3:1-5。
これで,今日の生活がなぜこれほど難しいのかお分かりになるでしょう。サタンは非常に活発に活動してきました。しかし,神の王国も活動してきたのです。
1914年が過ぎると間もなく,イエスと共に天で支配する希望を抱く人々の残りの者たちは,神の王国が設立されたという良いたよりを告げ始めました。イエスが言われたとおり,この業は今や全世界で行なわれています。―マタイ 24:14。
この宣べ伝える業の目的は何でしょうか。
第一の目的は,神の王国について人々に告げることです。
第二の目的は,その王国の臣民になりたいかどうか決定できるよう人々を援助することです。
わたしたちの時代に,すべての人が羊のような人々とやぎのような人々のいずれかに分けられる,とイエスは言われました。―マタイ 25:31-46。
「羊」は,イエスとその兄弟たちを愛する人々です。「やぎ」は,彼らを愛さない者たちです。
「羊」は永遠の命を得,「やぎ」はそれを得ません。
この分ける業は,王国の良いたよりの伝道によって,現在,成し遂げられつつあります。
預言者イザヤの語った次の預言があります。
「そして,末の日に,エホバの家の山はもろもろの山の頂より上に堅く据えられ,もろもろの丘より上に必ず高められ,すべての国の民は必ず流れのようにそこに向かう」― イザヤ 2:2。
人類は今や「末の日」にいます。
エホバの崇拝の「家」は偽りの宗教の上に「高められ」ています。
「そして多くの民は必ず行って,こう言う。『来なさい。エホバの山に,ヤコブの神の家に上ろう。神はご自分の道についてわたしたちに教え諭してくださる。わたしたちはその道筋を歩もう』」― イザヤ 2:3。
このように,あらゆる国民から大勢の人々がエホバを崇拝するためにやって来て,自分たちに加わるよう他の人々に招待を差し伸べます。それらの人々は,エホバの望んでおられる仕方で行動するにはどうしたらよいかを学びます。
「そして,彼らはその剣をすきの刃に,その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず,彼らはもはや戦いを学ばない」― イザヤ 2:4。
エホバを崇拝する人々は一致した,平和を愛する人々です。
神の王国によるこの活動の結果,王国の臣民が今や幾百万人も存在するようになっています。
彼らは,残りの者,すなわち天に行ってキリストと共に支配を行なう希望を抱く人たちの中の残っている人々の周りに集まっています。
彼らは神の組織を通じて霊的な食物を得ています。―マタイ 24:45-47。
彼らは,互いに心から愛し合う国際的なクリスチャンの兄弟関係にあります。―ヨハネ 13:35。
そして思いの平安を享受し,将来に対する希望を抱いています。―フィリピ 4:7。
間もなく,良いたよりの伝道は成し終えられ,「羊」は集められてしまうでしょう。その時,王国は何を行なうでしょうか。
忠実なダビデ王が神の民の敵をすべて征服したのを覚えていますか。ですから,王イエスも同様のことを行なわれます。
かつて,ネブカドネザル王は一つの巨大な像の夢を見ました。その像は,ネブカドネザルの時代から今日に至るまでの世界強国すべてを象徴していました。
その時,ネブカドネザルは,一つの石が山から切り出され,その像を粉々に打ち砕くのを見ました。その石は神の王国を表わしていました。
これは,現在の邪悪な事物の体制に滅びが臨むことを意味しています。―ダニエル 2:44。
その王国は次のものを覆します。
偽りの宗教は,海に投げ込まれた臼石のように姿を消します。―啓示 18:21。
その理由で,神を愛する人はすべて偽りの宗教から今ただちに出るよう促されています。―啓示 18:4。
次いで,王イエスは,『諸国民を討ち,また鉄の杖で彼らを牧します』。―啓示 19:15。
そのため,エホバの証人は,税金を払い,国の法律に従うものの,政治には関与しません。
最後に,大いなる「龍」であるサタン自身が底知れぬ深みに投げ込まれます。―啓示 20:2,3。
王であるイエスに服する人々,つまり「羊」だけが,この患難を生き残ります。―マタイ 25:31-34,41,46。
使徒ヨハネは,この患難を生き残る「羊」の幻を見ました。
「わたしが見ると,見よ,すべての国民と部族と民と国語の中から来た,だれも数えつくすことのできない大群衆が,白くて長い衣を着て,み座の前と子羊の前に立っていた。彼らの手には,やしの枝があった」― 啓示 7:9。
その「大群衆」は,良いたよりの伝道に答え応じた人々すべてで構成されています。
彼らは「大患難から出て来る」人々です。―啓示 7:14。
「やしの枝」は,彼らがイエスを王として迎えていることを示しています。
『白い衣』を着ていることは,彼らがイエスの犠牲に信仰を持っていることを表わしています。
「子羊」はイエス・キリストです。
その時,彼らはどのような祝福を享受するでしょうか。忠実な王ソロモンが統治していた時代にイスラエルで見られた幸福な状態を覚えていますか。これは,王イエスの支配下の地上で見られる幸福な状態の小規模な予告編にすぎませんでした。
イザヤが予告したとおり,人々の間に,また人間と動物の間に,文字通りの平和が見られます。―詩編 46:9。イザヤ 11:6-9。
イエスは地上におられた時,病人をいやされましたが,それとちょうど同じように全人類から病気を除きます。―イザヤ 33:24。
大勢の群衆に食べ物を与えた時のように,イエスは人類すべての間から食糧不足を一掃します。―詩編 72:16。
イエスは死者をよみがえらせましたが,それとちょうど同じように,神の王国に服する十分の機会を持たなかった死んでいる人々をよみがえらせるでしょう。―ヨハネ 5:28,29。
イエスは人類を徐々に,アダムが失った完全性へと引き上げていかれます。
それはすばらしい将来ではないでしょうか。それを見たいと思われますか。そう望まれるなら,今,神の王国に服し,「羊」の一人となれるよう,努力してください。
聖書を研究して,エホバ神とイエス・キリストを知るようにしてください。―ヨハネ 17:3。
その王国に服している他の人々と交わってください。―ヘブライ 10:25。
王国の律法を学び,それに服してください。―イザヤ 2:3,4。
エホバに仕えるべく自分の命を献げ,バプテスマを受けてください。―マタイ 28:19,20。
エホバ神が不快に思われる,盗みや偽り,不道徳,酔酒といった悪い事柄を避けてください。―コリント第一 6:9-11。
王国の良いたよりを宣べ伝える業にあずかってください。―マタイ 24:14。
そうすれば,アダムが失って子孫に残すことができなかった楽園がその時回復されているのを目にできるでしょう。そして,あなたは,次の約束の成就を目撃することができます。「わたしはみ座から出る大きな声がこう言うのを聞いた。『見よ! 神の天幕が人と共にあり,神は彼らと共に住み,彼らはその民となるであろう。そして,神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである』」― 啓示 21:3,4。
[20ページの図表]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
西暦前607年 西暦1914年
西暦前 | 西暦
500 1,000 1,500 2,000 2,520
[11ページの図版]
アブラハム
イサク
ヤコブ
ユダ
ダビデ
[14ページの図版]
14万4,000人
[16ページの図版]
イエス
アダム