真の富と真の友
『あなたの寄附の見込み』は,真の富に対する感謝と真の友に対する愛を示します。
誰が一番価値のある友ですか。また一番価値のある富とは何ですか。人間の友は,私たちの期待にそむくことがあります。故に一番価値のある友とは,ヱホバ神とキリスト・イエスです。また物質の富は,私たちの期待にそむくことがあります。故に一番価値のある富とは,神の御国の良いたよりについての知識と,そのたよりを他の人々に分け与える特権です。これこそ真の富です。
神は私たちに真の富 ― 御国の事柄と連続して行う奉仕 ― を私たちに委ねられます。それで,私たちは最初小事に忠実でなければなりません。つまり,地的の富,物質の富を用いるのに忠実でなければならないのです。神の子は,ルカ伝 16章10,11,12節(新口)で,この点を次のように強調しました。
『小事に忠実な人は,大事にも忠実である。そして,小事に不忠実な人は,大事にも不忠実である。だから,もしあなたが不正の富について忠実でなかつたら,だれが真の富を任せるだろうか。……あなた方は,神と富とに兼ね仕えることはできない。』
地的な富に仕える者は,神の友になり得ません。なぜですか。なぜなら,小事に忠実でないからです。その人は,『不義の富』に忠実でありません。それであるなら,どうして真の富,御国の事柄に忠実であり得ましようか。神の友になるため,私たちは地的の富を正しく用いるべきです。といつて神を買収することによつて,神の友になれるというわけではありません。何人も神を買収することはできないのです。シモンは,聖霊を授けるという賜物を買うことができませんでした。ペテロはシモンに次の言葉を告げています,『お前の金は,おまえもろとも,うせてしまえ。神の賜物が,金で得られるなどと思つているのか。』現在の組織制度がハルマゲドンで亡びるとき,金で神の保護を買うことはできません,『かれらの銀も金もヱホバの烈しき怒の日には彼らを救うことあたわず。』― 使行 8:20,新口。ゼパニヤ 1:18。
それでは,神と友になるために,お金をどのように用いることができますか。神が関心を払われているもの ― すなわち御自分の聖名を立証する神の御国を拡張するために無私の気持から用いられねばなりません。これは真の富に対する感謝の念を示します。それは真の友であるヱホバとキリストに対する愛を示します。
真の友と交りを持つことは,なぜ大切なのですか。なぜなら,ヱホバとキリストの友にならないなら,人は『生命の過分の恵み』を頂くことができないからです。ルカ伝に述べられているイエスの譬のなかの富める人は,金を持つていながら,ヱホバとイエスの友になることに失敗しました。彼はその富を自分一人の楽しみに使つたのです。しかし,地的の富が彼の期待を裏切つた時が来ました,『神が彼に言われた,「愚かな者よ,あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。そうしたら,あなたが用意した物は,誰のものになるか。」自分のために宝を積んで神に対して富まない者は,これと同じである。』地的の富を持つていても,それは人の死ぬときに何の役にも立ちません。そのわけで,イエスは次のように諭しているのです,『自分のために古びることのない財布をつくり,……天に尽きることのない宝をたくわえなさい。』― ペテロ前 3:7。ルカ 12:20,21; 12:33,新口。
お金の有益な使用
大多数の人々は,『天に尽きることのない宝』を貯える,などということにすこしの考慮も払つていません。人々は,この地上に宝を貯えることだけを考えています。地的の富を貯えることは,実際には有益なお金の使用法でありません。イエスはルカ伝 16章でそのことを指摘しましたが,それは不正な家令についての譬話です。
『ある金持のところにひとりの家令がいたが,彼は主人の財産を浪費していると,告げ口をする者があつた。そこで主人は彼を呼んで言つた,「あなたについて聞いていることがあるが,あれはどうなのか。あなたの会計報告を出しなさい。もう家令をさせて置くわけにはいかないから」この家令は心の中で思つた「どうしようか。主人が私の職を取り上げようとしている。土を掘るには力がないし,物ごいするのは恥ずかしい。そうだ,わかつた。こうしておけば,職をやめさせられる場合,人々が私をその家に迎えてくれるだろう。」それから,彼は主人の負債者をひとりびとり呼び出して,初めの人に,「あなたは,私の主人にどれだけ負債がありますか」と尋ねた。「油百樽」と答えた。そこで家令が言つた,「ここにあなたの証書がある。すぐそこにすわつて,五十樽と書き変えなさい」次に,もうひとりに,「あなたの負債はどれだけですか」と尋ねると,「麦百石です」と答えた。これに対して,「ここにあなたの証書があるが,八十石と書き変えなさい」と言つた。ところが主人は,この不正な家令の利口なやり方をほめた。この世の子らはその時代に対しては,光の子らよりも利口である。』― ルカ 16:1-8,新口。
この譬話の要点は何ですか。イエスは次のように説明されました,『あなたがたに言うが,不正の富を用いてでも,自分のために友だちをつくるがよい。そうすれば,富が無くなつた場合,あなたがたを永遠のすまいに迎えてくれるであろう。』― ルカ 16:9,新口。
イエスは不正直をほめているのではありません。彼は,将来のことを見透す賢明で実際的な自分の利害を考えた行をほめたのです。この世の人々は,多くの友だち,特に自分たちに恩恵をもたらす友だちをつくつて,自分の益を図るのに抜目がありません。多くの場合にお金を抜目なく用いてそのような友だちをつくります。この世の人々は,もちろん自分の将来の利害を考えています。この世の見地から見ると,それは健全な智恵です。それは,自分の益を図るお金の使用法です。『光の子ら』は,この世の人々よりも智恵が劣つても良いですか。彼らは,この世の人々よりも将来のことを見透すのに劣つても良いですか。自分の益を図るお金の使用法に劣つても良いですか。もちろん,そのようなことはありません。すべての人の中で,『光の子ら』は,人間の真の友だちが誰であるかを一番良く知つています。すべての人の中で,『光の子ら』は『不正の富を用いて』真の友だちをつくるべきです。
不正な家令についてのイエスの譬話を聞いた宗教的なパリサイ人は,金を愛している者たちでした。彼らは『光の子ら』である,と主張しましたが,金の使い方は賢明ではなかつたのです。彼らは利己的に金を貯えましたが,神の友にならず,キリスト,イエスを殺しました。しかし,不正な家令は将来のことを見透していました。彼は主人に対する負債を減少させることにより,自分の財産を蓄えました。お金に関しては,自分の利益を図る行をしたため,彼は友だちをつくりました。たとえ職を失つたにしても,心配する必要はなかつたのです。彼の友だちは,自分の家に彼を迎え入れるでしよう。それで,『光の子ら』はいま賢く行つて真の友たちをつくらねばなりません。しかし,どのようにですか。
神の御国の事柄を進歩させるのに貢献することによります。このために,私たちは時間と力を用いなければなりませんが,また『不正な富』をも賢明に用いなければなりません。御国会館を維持するために寄附したり,良いたよりを伝道するために文書を入手したり,聖書研究に行くため,自動車を使用したり,バスや,市電や,地下鉄に乗つたりするとき,私たちの区域内における神の御国の事柄を増加します。しかし又全世界における御国の事柄を増加させるために『不正な富』を用いることができます。どのように? いま良いたよりを証として全世界に伝道するためにヱホバの用いている経路に物質的な援助をすることによります。その経路は『忠実にして慧き奴隷』です。それはヱホバの証者の油注がれた残れる者で構成されています。彼らは,自分たちの合法の僕としてペンシルバニアの『ものみの塔聖書冊子協会』を長い期間用いてきています。―マタイ 24:45,新世。
ものみの塔協会は,御国の良いたよりを全地に一層拡張することに関心を持つています。そのため協会は今75の支部事務所を世界中に運営しています。協会は,1800人以上の『ものみの塔』ギレアデ聖書学校の卒業生を100の違つた国々に派遣しました。ヱホバの証者の証言の業を援助するため,協会は聖書の文書を印刷します。全時間奉仕者は,印刷や輸送に要する費用よりもずつと安い値段で文書を受とります。そのお金は何処から来るのですか。寄附から来るのです。
全地における御国の事柄を拡大するためにいくらかの『不正な富』を貯え用いるのは,『光の子ら』の特権です。協会は将来の拡大を計画しています。それで,1年中に寄附し得る人が,どれ程のものを寄附し得るかを前もつて協会に知らせるのは極めて良いことです。そう知らせるから,といつて,それは誓いというものではありません。ただ,どれ程のものを寄附し得るかを知らせるだけに過ぎません。それは『あなたの寄附の見込み』と言うことができます。どのように,このことを言表わすことができますか。あなたの住んでいる国の協会支部事務所に葉書か手紙を書けば良いのです。日本では,東京都港区芝三田豊岡町1番地の『ものみの塔聖書冊子協会』に葉書か手紙を送つて下さい。
どのように書くべきですか。次のように書くことができましよう,『私は次の12ヵ月の中,御国の良いたよりを伝道する業のため……の金額を寄附したい希望を持つております。私にとつて都合良い時,そしてキリスト,イエスを通してのヱホバ神の過分の御親切により,私が繁栄する時に,それだけの金額を寄附します。』(署名)282頁には,支部事務所の住所の表が出ており,全部の表は協会の多くの出版物の最後の頁に記されています。
たしかにお金は神を富ますことができません。すべての金や銀は神のものです。それで,『不正の富』を賢明に用いることは,真の友たちに対して為す最小の事柄です。あなたが小事に忠実であるなら,真の友たちは,あなたに更に多くのものを委ねられ,そして新しい世の『永遠の住居』にあなたを迎え入れるでしよう。賢明でありなさい。富に仕えるのでなく,人間の真の友たちに仕えなさい。