イエスの復活 ― わたしたちにとって重要なもの

1，2. （イ）宗教指導者たちはどんなことを問いただしましたか。ペテロはどのように答えましたか。（冒頭の挿絵を参照。）（ロ）そのときペテロが勇気を示せたのは，なぜですか。

イエスが死んで，まだ何か月もたっていませんでした。使徒ペテロは，敵対的な男たちの前に連れ出されます。強力なユダヤ人の宗教指導者たち，つまりイエスの死を画策した者たちの前にです。男たちはペテロに説明を求めました。生まれた時から足のなえている人をいやしたペテロに，どんな権限で，だれの名においてそうしたのか，と問いただしたのです。ペテロは勇敢にこう答えます。「ナザレ人イエス･キリスト，つまりあなた方が杭につけた方，しかし神が死人の中からよみがえらせた方の名において，この方によって，この人がここ，あなた方の前に健やかな姿で立っているの（です）」。―使徒 4:5-10。

² それより前，ペテロは恐れの気持ちに負けてイエスを3度否認しました。（マル 14:66-72）では，宗教指導者たちの前でこのように勇気を示せたのはなぜですか。聖霊が重要な働きをしたのはもちろんですが，そこには，イエスの復活に対する確信がありました。イエスは生きていると，ペテロが強く確信していたのはなぜでしょうか。また，わたしたちがその同じ確信を抱けるのはなぜですか。

3，4. （イ）使徒たちが生まれる前にも，どんな復活がありましたか。（ロ）イエスはだれを復活させましたか。

³ 死者が生き返るという考えは，イエスの使徒たちにとって新しいものではありませんでした。復活は彼らが生まれる前にも起きていたからです。例えば，預言者のエリヤとエリシャは神から力を与えられ，復活の奇跡を行ないました。（王一 17:17-24。王二 4:32-37）ある人の遺体が墓に投げ入れられ，エリシャの骨に触れると，その人は生き返りました。（王二 13:20，21）そうした聖書の記述を，初期クリスチャンは信じていました。わたしたちも，神の言葉に偽りはないと信じています。

⁴ イエスが行なった復活の記述を読むと，心を揺さぶられます。イエスがやもめの独り息子を生き返らせた時，そのやもめは非常に驚いたに違いありません。（ルカ 7:11-15）イエスは12歳の少女を復活させたこともあります。娘に死なれて悲しみに暮れていた両親が，生き返った娘を見てどれほど喜び，驚嘆したか，想像してみてください。（ルカ 8:49-56）また，ラザロが元気な姿で墓から出て来たのを見て，人々はどれほどの感動を覚えたことでしょう。―ヨハ 11:38-44。

 5. イエスの復活は，それ以前の復活とどのように異なっていましたか。

⁵ 使徒たちは，イエスの復活がそれ以前の復活とは異なることを知っていました。以前に復活した人たちは，物質の体でよみがえり，やがて再び死にました。しかしイエスは，朽ちることのない霊の体で復活しました。（使徒 13:34を読む。）ペテロが記したように，イエスは「肉において死に渡され，霊において生かされ」ました。また，「この方は神の右におられます。天へ行かれたからです。そしてもろもろのみ使いと権威と力は彼に服させられました」。（ペテ一 3:18-22）以前の復活も驚嘆すべき奇跡的なものでしたが，そのうちのどれも，この復活に勝るものではありません。

 6. イエスの復活は，弟子たちにどんな影響を与えましたか。

⁶ イエスの復活は，弟子たちに強力な影響を与えました。敵たちの予想に反し，イエスは死んだままではいませんでした。人間が危害を加えることのできない強力な霊者として，生き返ったのです。その復活は，イエスが神の子であることの証拠でした。深い悲しみに暮れていた弟子たちはそのことを知り，大きな喜びに包まれました。そして，恐れの気持ちは勇気に取って代わられました。イエスの復活は，エホバの目的の要であり，弟子たちが遠く広く大胆に宣明する良いたよりの中心をなすものでした。

 7. 今日イエスは，何を行なっておられますか。どんな質問が生じますか。

⁷ エホバの僕であるわたしたちは，イエスが単なる偉人ではないことをよく知っています。今も生きており，地上の人すべてに関係した業を指導しておられます。神の天の王国で支配する王として，間もなく地上から悪をぬぐい去り，地球を楽園に変えてくださいます。人はそこで永遠に生きるのです。（ルカ 23:43）イエスが復活しなかったなら，こうしたことは実現しないでしょう。では，イエスの復活を信じられるどんな理由がありますか。また，イエスの復活がわたしたちにとって重要なのは，なぜですか。

8，9. （イ）イエスの墓の守りを固めるよう，ユダヤ人の宗教指導者たちが願い求めたのはなぜですか。（ロ）女たちがイエスの墓に来た時，どんなことがありましたか。

⁸ イエスが処刑された後，祭司長とパリサイ人たちがピラトの元に来て，こう言いました。「閣下，わたしどもは，あのかたり者が，まだ生きていた時分に，『三日後にわたしはよみがえらされる』と言ったのを思い出しました。それで，三日目まで墓の守りを固めるように命令してください。弟子たちがやって来て彼を盗み出し，『彼は死人の中からよみがえらされたのだ！』などと民に言いふらすようなことのないためです。この最後のかたりは，最初のものより悪い結果になってしまうでしょう」。それでピラトは，「あなた方には警備隊がある。行って，あなた方の知る限りの方法で守り固めるがよい」と答えます。彼らはそのとおりにしました。―マタ 27:62-66。

⁹ イエスの体は，岩塊に掘り込まれた墓の中に置かれ，墓は大きな石で封じられました。ユダヤ人の宗教指導者たちは，イエスが永久に死んだまま墓にいることを願っていましたが，エホバのお考えは全く異なりました。死後3日目にマリア･マグダレネともう1人のマリアが墓に来てみると，石は転がしのけられ，み使いが石の上に座っています。み使いは女たちに，墓は空なので中を見てみるように，と勧めます。また，「彼はここにはいません。……よみがえらされたのです」とも伝えます。（マタ 28:1-6）イエスは生きていたのです！

10. パウロは，イエスの復活を裏付けるどんな証拠を挙げていますか。

¹⁰ 続く40日間に生じた出来事からすれば，イエスの復活に疑問の余地はありません。使徒パウロはその証拠を要約し，コリントの人たちにこう書きました。「わたしは，最初の事柄の中で，次のことをあなた方に伝えたからです。それは自分もまた受けたことなのですが，キリストが聖書にしたがってわたしたちの罪のために死んでくださった，ということです。そして，葬られたこと，そうです，聖書にしたがって三日目によみがえらされたこと，さらに，ケファに現われ，次いで十二人に現われたことです。そののち彼は一度に五百人以上の兄弟に現われました。その多くは現在なおとどまっていますが，死の眠りについた人たちもいます。そののち彼はヤコブに，次いですべての使徒たちに現われました。しかし，すべての者の最後として，あたかも月足らずで生まれた者に対するかのように，わたしにも現われてくださいました」。―コリ一 15:3-8。

11. イエスの復活が「聖書にしたがって」起きたと言えるのは，なぜですか。

¹¹ イエスが復活したと言える1つ目の理由は，それが「聖書にしたがって」起きたということです。聖書にはイエスの復活が予告されていました。例えば，神はご自分の主要な「忠節な者」を墓に捨て置かれない，とダビデは書きました。（詩編 16:10を読む。）使徒ペテロは西暦33年のペンテコステの日に，その預言をイエスに適用してこう述べました。「[ダビデは]キリストの復活を先見し，それについて，彼がハデスに見捨てられず，その肉体が腐れを見ることもないと語ったのです」。―使徒 2:23-27，31。

12. だれが，復活したイエスを見ましたか。

¹² 2つ目の理由は，多くの証人による証言があるということです。イエスは復活後の40日間，墓のある園で，あるいはエマオに向かう道や他の場所で弟子たちに現われました。（ルカ 24:13-15）そのような折には，ペテロのような個人にも，一群の人々にも話しかけました。何と一度に500人以上の人々に現われたこともあります。これほど多くの目撃者による証言は，無視することができません。

13. 弟子たちは，イエスの復活を確信していたゆえに，どのように熱心さを示しましたか。

¹³ 3つ目の理由は，弟子たちがイエスの復活を熱心に宣明したということです。弟子たちはキリストの復活を熱心に証ししたために，迫害や苦しみや死に直面しました。もしイエスが復活しなかったとしたら，つまりそれが全くの作り話だったとしたら，ペテロは命の危険を冒してまでもキリストの復活について宗教指導者たちに証言したでしょうか。相手はなにしろ，イエスを憎み，その死を画策した者たちなのです。ペテロやほかの弟子たちが証言できたのは，イエスが生きていて，宣べ伝える業を指導しているという確信があったからです。さらに言えば，イエスの復活は弟子たちに，自分たちも復活するという確信を与えました。ステファノが良い例です。ステファノは復活を確信しつつ，死の眠りにつきました。―使徒 7:55-60。

14. 今イエスは生きている，と信じられるのはなぜですか。

¹⁴ 4つ目の理由は，今イエスが王として支配し，クリスチャン会衆の頭として奉仕しておられる証拠があるということです。真のキリスト教は繁栄を見ています。もしイエスが復活しなかったとしたら，こういう結果になったでしょうか。実際，イエスが生き返らなかったとしたら，人々はイエスについて聞くことはなかったでしょう。イエスは今生きており，遠く広く良いたよりを宣明する業を指導しておられます。そう言える確かな証拠があるのです。

15. イエスの復活が，宣べ伝える勇気を与えるのは，なぜですか。

¹⁵ キリストの復活は，宣べ伝える勇気を与えます。神の敵たちは2,000年にわたり，背教･あざけり･暴徒による襲撃･暴力･禁令･拷問･処刑など，ありとあらゆる方法を駆使して良いたよりを抑えつけようとしてきました。しかし，わたしたちを「攻めるために形造られる武器」はどれも，王国を宣べ伝えて弟子を作る業をとどめることはできません。（イザ 54:17）わたしたちはサタンの手先を恐れません。イエスは約束どおり，わたしたちと共にいて支えてくださいます。（マタ 28:20）敵がどんな手を使うとしても，わたしたちを沈黙させることは決してできないのです。

16，17. （イ）イエスの復活は，イエスの教えの正しさをどのように証明していますか。（ロ）ヨハネ 11章25節によると，神はイエスにどんな力をお与えになりましたか。

¹⁶ イエスの復活は，イエスの教えすべての正しさを証明します。パウロが述べたように，もしキリストがよみがえらされなかったとすれば，クリスチャンの信仰も宣べ伝える業も無駄になります。ある聖書学者はこう書きました。「キリストがよみがえらされないとすれば，……クリスチャンは，大きな欺瞞にはめられた哀れなお人よしになってしまう」。イエスの復活がなければ，福音書の記述は，敵に殺された善良な賢人にまつわる悲話で終わってしまいます。しかし，キリストは実際に復活しました。そのことは，イエスが語った預言を含め，その教えすべての真実さを確証するものです。―コリント第一 15:14，15，20を読む。

¹⁷ イエスはこう述べました。「わたしは復活であり，命です。わたしに信仰を働かせる者は，たとえ死んでも，生き返るのです」。（ヨハ 11:25）この驚くべき言葉は，必ず実現します。エホバはイエスに，命を回復させる力をお与えになりました。イエスは，人々を天における霊の命に復活させるだけではありません。地上で永遠に生きる見込みを持つ者として幾十億もの人々を復活させることができるのです。イエスの贖いの犠牲と復活は，死がもはやなくなることを保証します。そのことを知っていれば，どんな試練をも耐え忍び，死に対してさえ勇敢に立ち向かえるのではないでしょうか。

18. イエスの復活は何を保証しますか。

¹⁸ イエスの復活は，地に住む人たちがエホバの愛ある規準に従って裁かれることを保証します。パウロは古代アテネの一群の人々にこう述べました。「[神は]ご自分が任命したひとりの人によって人の住む地を義をもって裁くために……，彼を死人の中から復活させてすべての人に保証をお与えになった（の）です」。（使徒 17:31）そうです，イエスは神から任命された裁き主であられます。わたしたちはその裁きが公正で愛に富むことを確信できます。―イザヤ 11:2-4を読む。

19. キリストの復活に対する信仰は，わたしたちにどのような影響を与えますか。

¹⁹ イエスの復活に対する信仰は，神のご意志を行なうようわたしたちを動かします。イエスの犠牲の死とその後の復活がなかったなら，わたしたちは罪と死の有罪宣告から逃れられないでしょう。（ロマ 5:12; 6:23）もしイエスが復活しなかったのであれば，「ただ食べたり飲んだりしよう。明日は死ぬのだから」という考え方になるかもしれません。（コリ一 15:32）しかしわたしたちは，楽しみ事を生活の中心とはしません。復活の希望を大切にしているので，あらゆる事柄においてエホバの導きに注意を払います。

20. イエスの復活は，神の偉大さをどのように証ししていますか。

²⁰ キリストの復活は，「ご自分を切に求める者に報いてくださる」エホバの偉大さを証しします。（ヘブ 11:6）エホバはイエスを天的な不滅の命へと復活させるために，実に素晴らしい力と知恵をお示しになりました。また，その復活を通して，ご自分の約束をすべて果たすことができる，ということも実証されました。その約束の1つは，宇宙主権の論争を解決するために特別な「胤」が重要な役割を果たす，という預言的な約束です。その約束が果たされるには，イエスの死と復活が必要でした。―創 3:15。

21. 復活の希望があなたにとって重要なのはなぜですか。

²¹ あなたは，復活という確かな希望を与えてくださったエホバに感謝していますか。聖書には次のような保証の言葉があります。「見よ！ 神の天幕が人と共にあり，神は彼らと共に住み，彼らはその民となるであろう。そして神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり，もはや死はなく，嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。この素晴らしい見込みは，忠実な使徒ヨハネに伝えられたものです。ヨハネは，「書きなさい。これらの言葉は信頼できる真実なものだからである」と告げられました。ヨハネがだれから，霊感によるこの啓示を受けたかに注目してください。それは，復活したイエス･キリストなのです。―啓 1:1; 21:3-5。