「ものみの塔」(英語)1922年6月15日号で,1922年9月5日から13日にかけてオハイオ州シーダーポイントで全体大会が開かれることが知らされました。シーダーポイントに着いた聖書研究者たちは,期待に胸を高鳴らせました。
ラザフォード兄弟は,最初の話の中でこう言いました。「私は,主が……この大会を祝福し,これまでにないほどの規模で伝道が行われるようにしてくださることを心から確信しています」。この大会で話を扱った兄弟たちは,伝道を行うよう兄弟姉妹を何度も励ましました。
9月8日金曜日,会場に詰め掛けた8000人ほどの出席者は,ラザフォード兄弟の話を心待ちにしていました。招待状に書かれていた「ADV」という文字の意味が明らかにされることを期待していたのです。席に着いた時に,ステージの上に大きい布が巻かれていることに気付いた人もいました。米国オクラホマ州タルサから大会に来ていたアーサー・クラウス兄弟は,話がよく聞こえる席を取ることができました。この大会では,今のような音響機器は使われていなかったので,それはとてもうれしいことでした。
「私たちは,一言も聞き漏らさないようにしていました」。
司会者は,ラザフォード兄弟の話の間は誰も入場できないことを知らせました。話の妨げにならないようにするためです。午前9時30分,ラザフォード兄弟は話の初めに,マタイ 4章17節の「天の王国は近づきたり」というイエスの言葉を引用しました。(「ジェームズ王欽定訳」)そして,人々がどのようにしてこの王国について聞くのかを説明し,次のように言いました。「イエスは,自分の臨在の間に人々の収穫を行うと言いました。これはつまり,心が正しく忠実な人たちを集めるということです」。
本会場に座っていたクラウス兄弟はこう言います。「私たちは,一言も聞き漏らさないようにしていました」。でも,兄弟は急に体の具合が悪くなり,会場を後にしなければなりませんでした。兄弟は,再入場できないことを知っていましたが,仕方なくその会場を出ました。
しばらくすると,良くなってきたので,兄弟は会場の方へと戻っていきました。すると中から,大きな拍手の音が聞こえてきました。それを聞いて,兄弟の心に火が付きました。屋根によじ登ってでもこの素晴らしい話の続きを聞きたい,と思ったのです。当時23歳の若者だったクラウス兄弟は,登れそうな所を見つけました。そして,明かり窓が開いていたので近づいてみると,「中の話がよく聞こえてきました」。
でも,そこにいたのはクラウス兄弟だけではありませんでした。数人の友達がいたのです。その1人,フランク・ジョンソン兄弟が駆け寄ってきて,こう言いました。「ポケットナイフ,持ってない?」
「持ってるよ」とクラウス兄弟は答えました。
「祈りの答えだ!」とジョンソン兄弟は言いました。「巻いてあるこの大きな布を見て。これは横断幕で,くぎで留めてあるんだ。話をよく聞いて,判事が『宣伝し,宣伝し』と言ったら,この4本のひもを切ってね」。
それで,クラウス兄弟はナイフを片手に仲間と一緒に合図を待ちました。やがて,ラザフォード兄弟の話はクライマックスに達し,兄弟は熱意に駆り立てられ,叫ぶようにしてこう言いました。「主の忠実な真の証人でありなさい。バビロンが跡形もなく荒廃するまで戦いで前進しなさい。音信を遠く広く告げ知らせなさい。世界は,エホバが神であり,イエス・キリストが王の王,主の主であることを知らねばなりません。今はあらゆる時代のうちで最も重大な時代です。ご覧なさい,王は統治しておられます! あなた方は王のことを広く伝える代理者です。それゆえに,王とその王国を宣伝し,宣伝し,宣伝しなさい」。
クラウス兄弟と仲間たちがひもを切ると,横断幕は非常にスムーズに広がりました。そこには,「王と王国を宣伝しなさい」と書かれていました。「ADV」という文字は,「宣伝しなさい」という意味がある“advertise”を表していたのです。