生活の歩調に気をつけなさい
他の人がいつも自分を圧迫しているとか,自分に普通以上に求めているとか思うことが多くありますか。また,あなたは,自分にあまりに多くを要求していませんか。
この点を確かめる一つの方法は,物事を行なう点で自分がいつでも遅れているように思っているかどうかを見ることです。あるいは,あなたはいつでも急いでいるでしょうか。何かを待たねばならないとき,あなたはいらいらしますか。レストランで席のあくのを待ち,またエレベーターや,バスや,家族のほかの人を待つときです。こうした,いつもあせった気持ち,なんでも急いで行なおうとする気持ちはよくありません。
実のところ,あまりに速い歩調で生活することは体によくありません。40年以上にわたって心臓病患者を扱ってきた一心臓学者によると,このことが心臓病の主要な原因となっています。ほかの大きな原因として彼が挙げたものは,喫煙,肉・ミルク・卵などの取り過ぎ,運動不足です。
運動の必要性を認めて,自分の忙しいスケジュールの中にこれを無理に押し込んでいる人がいます。家に飛んで帰り,あるいは運動場に飛んで行き,そそくさと着衣を変え,限られた時間の中で最大限の運動をしようとして無理に体を動かし,こうして心臓に益よりも害をもたらすのです。毎日階段を何度か上り下りするなど,自分の日常の活動の中に健康的な運動を取り入れたほうが益になるでしょう。車での通勤をやめ,あるいは全部バスで行くところを途中から歩き,また自転車の利用に努めている人びともいます。
生活の歩調が速すぎるということはいろんな点に示されるでしょう。例えば,交通渋滞でなかなか進めないような場合,あなたはすぐにいらだち,ハンドルにつかみかかり,警笛を鳴らし,あるいは他の何かの方法で自分の落ち着かない気持ちを表わしますか。いらいらすることによって状態が緩和されるでしょうか。緊張をほぐし,体と気持ちを静めるほうがずっとよいではありませんか。
他の人が話すことを聴くさいにじれったく思うことが多くありますか。「早く要点を言ってくれ!」といったようなことばで相手の話をさえぎろうとしますか。そのようにあせった態度を示したところで,だれの益にもなりません。でも,ほんとうに時間がない場合にはどうしたらよいでしょうか。
おそらくこう言えるでしょう。「まことにすみませんがわたしは今とても忙しいのです。そのことについていつか別の時にうかがえないでしょうか」。相手がごく身近な人,例えばあなたのお子さんである場合には,次のようにも言えるでしょう。「そのことをいっしょに話したいけど,今は手を離せないから,時間がある時に話し合うのはどうだろう」。相手の人は,できるだけ力になろうとするあなたの態度に感謝するでしょう。そして,落ち着いた時に聞けるなら,あなたとしてももっとくつろいだ気持ちでその問題を扱えるでしょう。
生活の歩調が速すぎるからといって必ず心臓病になるわけではないにしても,やはりいろいろな点で害を生みます。それは往々にしてざせつ感をもたらし,生活の喜びを失わせ,他の人のために物事をする楽しみを奪い取ります。例えば,母親の場合,日常の生活のテンポに疲れきって家族や友人と交わる楽しみもなく,何かのレクリエーションをする力も残らないようであれば,やがてざせつ感をいだくようになるでしょう。
何かの実業に従事しているかたなら,仕事からくる圧迫のために,他の働き人や自分の家族に対してさえ関心を払うゆとりをなくしていますか。他の人に対してぶっきらぼうな答えの出がちなことがあるかもしれません。しかし,そうした態度を強いるような歩調で生活するのはほんとうに知恵のあることでしょうか。
さらにたいせつな点は,生活の歩調が神との関係に与える影響です。あなたのお子さんが忙しすぎてあなたのことを全く忘れ,あなたがしてあげることに対して少しも関心を払わないとしたらどうでしょうか。わたしたちに命と息とすべての良いものを与えてくださった偉大な創造者に対しては,子どもが親に対する以上の感謝を示すのが当然ではありませんか。あなたがこのまえ創造者に感謝の祈りをささげ,あるいは座ってそのみことば聖書を読んだのはいつのことでしたか。
もし,自分が現代生活の速い歩調の犠牲になっていると思うなら,その原因を考えてください。ある医師が述べたように,それは,短い時間にあまりに多くのことをしようと絶えず気をせき立てているためではありませんか。「たしかにそうだ。しかし,どうしたらよいのだろう」と言われるかもしれません。
一つできるのは,何がたいせつかをはっきり決め,できれば,行なうべき事がらの表を作ってみることです。そして,いちばんたいせつな事を必ず最初に行なうようにするのです。結果として何かがなおざりになるとしても,それはそれほどたいせつな問題ではないはずです。妻の立場にあるかたでしたら,その表についてご主人と話し合うのがよいでしょう。
対抗意識や競争心がせわしない生活態度の理由となっている場合も少なくありません。この世でごく普通に見られるこうした精神に感化されてしまうのはよくあることです。しかし,問題の解決は,聖書の次の忠告に含まれる知恵を認め,それに従うことにあります。「何事も闘争心や自己本位の気持ちからするのではなく,むしろ,他の者が自分より上であると考えてへりくだった思いを持ち[なさい]」― ピリピ 2:3,新。
物質上のものを,それも,どうしても必要なものではなく,それ以上の余分のものを求める気持ちに動かされて,過度に速い歩調で生活している人が多くいます。しかし,こう考えてみるのがよいでしょう。『自分の健康や,家族と過ごす楽しみを犠牲にして求めるのであれば,そうしたものを得たところでなんの価値があるだろうか』。次の,神の助言のことばに従うことこそ知恵の道です。「あなたがたの生活態度は金銭に対する愛のないものとしなさい。そして,今あるもので満足しなさい」。この助言に従う人に対して,神はこう約束しておられます。「わたしは決してあなたを離れず,決してあなたを見捨てない」。―ヘブル 13:5,新。
それで,自分の生活を調べてください。その歩調が速すぎると思うなら,それをゆるめることを学んでください。あなたの健康を損わず,ざせつ感をいだかせず,仲間の人間に愛を示すゆとりを与えるような歩調を定めてください。そして何よりも,創造者エホバ神を崇拝する時間の余裕を与えるような歩調を定めてください。