きょうはごはんにしましょうか
パナマの「目ざめよ!」通信員
日本の読者は,中央アメリカのこの変わった調理法に興味を持たれることでしょう
もしあなたがパナマ人なら,一瞬のためらいもなく,「ええ,ぜひそうしましょう。ぜひごはんがほしいわ」と言うでしょう。たいていの家庭は毎日,そして多くの場合日に2回ごはんを食べます。パナマではほかの主食は食べないのですか,と聞かれたら,ある人はきっとこう答えるでしょう。「もちろんわたしたちはジャガイモ,マカロニ,スパゲッティなどのでんぷん食品も好きです。でもごはんといっしょに食べます。ごはんの代わりにはしません」。
小さな子どもたちまでごはんが好きで,ほかの国の子どもたちがキャンデーやアイスクリームをほしがって泣くのと同じように,ごはんをほしがって泣くほどです。パナマの子どもたちは,ごはんを与えてくださいと祈るほどごはんが好きで知られています。ある宣教者は,ひとりの母親とその9人の子どもに聖書を教えていたときのことを次のように話しています。
「『主の祈り』について勉強をしていたときのことでした。イエスは日ごとのパンを祈り求めなさいと言われましたが,それはどういう意味ですか,とわたしが質問すると,子どもたちのひとりがさも心配そうな顔をして,『ごはんはどうなの,ごはんをお与えくださいと祈っちゃいけないの』と尋ねました。そして,ほかの子どもたちも口をそろえて,『ごはんはどうなの』と言いました。
「『パン』もいいけれど,ごはんの代わりでは困るというわけです。母親とわたしが,この『パン』には,ごはんや,毎日必要なほかの物が全部含まれているということを説明すると,子どもたちは安心して,勉強を続ける気持ちにもどりました」。
パナマの人たちが老若を問わずこんなにもごはんが好きなのはなぜでしょうか。それはそのおいしい調理法と消化のよさです。ではそのたき方をご紹介することにしましょう。
ごはんの基礎的なたき方
まず基礎的なたき方からはじめましょう。料理用具としては,底の丸い,鉄かアルミの重いパイラつまりなべが必要です。なべの底が丸いと,ごはんをあまりかきまぜないでかえすのが容易です。ぶあついシチューなべや,底の平らななべも使えますが,底の丸いなべのようにはうまくいきません。そして底の薄いなべがごげつきやすいのはいうまでもありません。
最初は少しだけたくことにしましょう。カップ2杯のお米を冷水で洗ってざるに上げ,水けをきります。お米を水の中につけておきますとのりのようになるのでよくありません。なべを強火にかけ,ラードか植物性の油を少量 ― 大さじで2杯くらい入れます。そして油が熱したところにお米を入れ,全部の粒に油がまわるようによくかきまぜます。そして塩大さじ1杯(あるいはもっと少なく)と湯か水をカップ3杯加えます。火が強いのですぐに煮えたつはずです。表面が乾いたように見えるまで強火でぐらぐら煮ます。
それから火を弱くし,ぴったりとふたをして静かに煮ます。10分か15分たったら,大きなしゃもじでごはんを静かにかえしますが,かきまぜてはいけません。そして再びかたくふたをします。そのあとごはんは15分か20分でできあがり,食卓に出せます。そのごはんは軽くてふっくらしているはずです。たくさんたくときには,ごはんをほぐすために,そして上のごはんが下に,下のごはんが上になるように,もう2,3回注意深く『かえす』ことが必要でしょうし,時間ももっと長くかかるでしょう。しかし,いったんたき上がると,かなりの時間弱火にかけておいても,ふっくらした状態を保ちます。
お米といえばみな同じというわけではなく,水を比較的によく吸うお米もあれば,あまり吸わないお米もあります。しかし経験をつむとその加減はわかるようになります。多少底が茶色になったりこげたりしても心配はいりません。それは風味を加えるだけです。上のほうのきれいな白いごはんからよそっていけばよいでしょう。子どもたちは底からこそげ取ったおこげが好きです。
変化をつける
変化をつけるために次の方法を試みてみるのもよいでしょう。強く熱した油に,洗って乾かしておいたお米を大さじ2杯ほど入れ,キツネ色になるまでいためます。それから残りのお米を入れて全部の粒に油がゆきわたるようにかきまぜ,前述の方法でたき上げます。こうするとごはん全体はおいしそうなこうばしいかおりがします。
パナマの主婦たちはほとんどみな独自のたき方を持っていますが,経験をつめばあなたもそのようになります。「私は水をはかって入れたり,時計を見たりはしません」と言う主婦のようになるでしょう。12,3歳の少年や少女のなかにも,たいへんおいしいごはんをつくる子どもがたくさんいます。
変わりごはんのいろいろ
ごはんはほとんどどんな型の食事とも合います。ここパナマでは,お皿の上で大部分の場所を占めるのはごはんです。力仕事をする人のお皿には山盛りに盛られます。肉はたいてい濃い味のトマトソースで煮ます。そしてひと切れの小さな肉をごはんの上に乗せその上から少しのソースをかけ,油で揚げた料理用バナナを,ふた切れか三切れ置きます。そしてシチュウにした豆やレンズ豆をたっぷり添えると完全な食事になります。最後に,冷い甘い飲物であるチチャかまたはコーヒーがあれば,申し分ないでしょう。
別のごはん料理。ニンジン1本,タマネギ1個か2個,赤いピーマン,トマト,セロリなどを適当にきざみます。ニンニクをひと粒つぶして加えることもできます。その量は好みに応じて加減します。これらの材料全部を熱した油に最初に入れます。また角切りのハムやポーク,干しエビ,チキンなどもこれに加えます。茶色にならないようにたびたびかきまわして軽くいため,お米を加えます。水を半カップほど余分に加える必要があるかもしれませんが,べとべとさせないでふっくらたき上げることを忘れないようにします。
好みによっては,目先を変えるために,こまかくきざんだ新鮮な緑のインゲンマメをカップに2杯ほど加えるのもよいでしょう。しかしこれは,水がかなり引いて,これからふたをして蒸らすというときにごはんの上に乗せます。10分ほど蒸らしたらごはんをかえしてマメが下のほうにゆくようにします。完全には煮えないかもしれませんが,ぽりぽりして,栄養価の高いごはんに新鮮な風味を添えます。どんな野菜でも最初にいためるかわりにこの段階で入れることができるでしょう。
軽くいためた野菜や肉をたき上がったごはんに混ぜ込むのが好きな料理人もいるでしょう。この方法のただひとつの欠点は,少し油っこくなりすぎて,ウエストラインには良くないということです。残ったごはんを,いためた野菜や肉に加えることもできますが,この場合も油の量に気をつけます。少量の水をふりかけるようにして加え,ぴったりとふたをして数分間蒸らします。それでもべとべとにはなりません。
冷蔵庫の中に,豆やレンズ豆などが残ってはいないでしょうか。お米をいためたあとそれと水を加えます。しかし塩を入れるときには,それにすでに塩味がついていることを忘れないようにします。そして基礎的なたき方と同じ方法でたき上げます。
独特の味を持つのは,ココヤシの実の液でたいたごはんで,ココヤシの味の好きな人にはとてもおいしいものです。1個のココヤシの実の肉を,目のこまかいおろし金でおろすかまたはミキサーにかけます。そしてそれに水をカップに5杯ほど加え,うらごしにかけて液が全部出るまできつくしぼり,4カップほどになるまで煮ます。それから塩大さじ1杯とお米カップ2杯を加えます。この場合はこげつきやすいので,やや弱火でたく必要があるでしょう。水が引いたらぴったりとふたをします。くっつかないようにするためには,たき上がるまでに数回かえす必要があるでしょう。このごはんも,どんな料理にでも添えることができます。
特別の料理
さて,これだけ経験をつみましたので,『特別の時のごはん』をつくってみましょう。それは,「アロス・コン・ポリョ」,つまり鶏肉とごはんと呼ばれているものです。
1㌔か2㌔の鶏肉を適当な大きさに切り,酢かレモン汁を大さじ1杯と,塩大さじ2杯をそれにまぶします。そしてみじん切りのタマネギ,トマト,セロリ,パセリ,赤いピーマン,つぶしたニンニク,少量の黒いコショウその他好みの香辛料などを十分に加え,よく混ぜてふたをし,1時間ほど置きます。それからカップ1杯のトマト・ペーストとカップ2杯のトマト・ケチャップを加え,とろ火にかけて半時間ほど,あるいはソースがかなり濃くなるまで煮ます。そして水カップ8杯を加えて鶏肉が柔らかくなるまで煮ます。
大きな鉄なべに油を大さじで4杯ほど入れ,強火にかけます。油が熱したらカップ4杯のお米を入れていためます。全部の粒が油にまみれるように気をつけます。ソースの中から鶏肉を取り出し,野菜をこし取ります。お米にこの液体のソースカップ7杯を加えます。鶏肉のためにソースが足らないようであれば水を足します。そして塩を加えて味をととのえ,適当に水けがなくなるまで煮ます。
次に,鶏肉の骨をはずしてごはんに混ぜるか,あるいはとっておいてあとで混ぜます。ソースからこし取った野菜は,オリーブの実や白花菜の酢づけ,オールスパイス,粒のままのトウモロコシカップ1杯,水けをきったグリーンピースカップ1杯などといっしょに,水けのなくなったごはんの上に置き,ふたをして20分ほど蒸らします。
底の薄いなべでたく場合には,こげないようにこの段階でなべをオーブンの中に入れるとよいかもしれません。20分ほどたったら,気をつけながらごはんをかえし,べとつかないようにします。そしてもう一度ぴったりとふたをして20分間蒸らします。全部のお米の粒がのりのようにならずによく煮えているかどうか味をみて確かめます。もし十分に煮えていなければ,少し長く蒸らします。たき上がったならばごはんを大きなはちに盛り,ごはんの上と回りに鶏肉をきれいに置き,飾りにピーマンのせん切りとパセリを添えます。簡単なサラダさえ作ればこの料理はできあがりです。
貴重な食糧
ある専門家の説によると,今日世界にはお米を食べる人が15億います。これは人類の約半数に当たります。玄米,つまり精白されていないお米にはビタミンB複合体,E,Kなどが含まれていて,精白されたお米よりも栄養価があります。白米には,約25%の炭水化物,少量のヨード,鉄,マグネシウム,燐,ごくわずかの量のたんぱく質および脂胞が含まれています。あなたが最後にごはんを召し上がったのはいつでしたか。
あなたもぜひこのようなパナマ風のごはんのたき方を試してみてください。そしてパナマにおいでになったら,パナマ人がつくるごはん料理をぜひ味わってみてください。