「経験のない者はすべての言葉を信じ」る

200年以上前に新聞に出ていたことをうのみにできなかったのであれば，21世紀のインターネット情報の多くについてもそう言えます。現代のテクノロジーによって膨大な情報を得ることが可能になっていますが，その中にはうそや真実，有益なものや無益なもの，無害なものや有害なものが混在しています。ですから，注意を向ける価値のある情報かどうかをよく見極めなければなりません。特に，インターネットを使い始めたばかりの人は，怪しげな情報やセンセーショナルな情報でも，インターネットに出ていたとか，友人がメールで送ってきたというだけで信じてしまうことがあります。聖書は適切にも，「経験のない者はすべての言葉を信じ，明敏な者は自分の歩みを考慮する」と警告しています。―箴 14:15。

どうすれば「明敏」になり，コンピューター画面に現われる作り話や都市伝説，詐欺，間違った情報を見分けられるでしょうか。まず，こう考えてください。「これは，信頼できる公式ウェブサイトの情報か，それともブログの記事や出どころの分からないものか。信頼できるサイトでその情報の誤りがすでに指摘されているか」。a そして，「思考力」を働かせます。（箴 1:4）信じられないと思うような情報は，恐らく真実ではないでしょう。また，人の評判を損なう内容であれば，それを広めることで得をするのはだれか，その情報源になっている人はなぜそれを広めたいと思っているのかを考えてください。

中には，情報の正確さを確認することも，結果を考えることもせずに，自分の連絡先全員にメールする人がいます。真っ先に情報を伝えて自分に注意を引きたいと思うのでしょう。（サム二 13:28-33）しかし，「明敏な」人はどんな結果が生じ得るか，例えばある人や組織の評判にどんな影響が及ぶかを考えます。

情報の正確さを確認するのには労力が要るので，信頼できる情報かどうかの判断は受け取る側に任せようとする人がいます。でもそうすると，情報を受け取った人が多くの時間を費やさなければなりません。時間は貴重です。（エフェ 5:15，16）「本当かどうか分からないが，とりあえず送っておこう」ではなく，「本当かどうか分からないなら，送らないでおこう」と考えるほうがよいでしょう。

こう自問してください。「わたしは何か情報があるとすぐにメールで送らずにはいられないだろうか。送った情報が不正確だったり，でたらめだったりして，謝らなければならなかったことがあるだろうか。情報をむやみに送らないでほしいと言われたことがあるだろうか」。メールの連絡先の人たちはインターネットを使えるはずなので，関心があれば自分で調べることができます。面白い話やビデオやスライドショーを次から次へと送ってもらう必要はありません。聖書の話を録音したものや書き取ったものを送るのも賢明ではありません。b また，何かについて調査した内容や聖書研究で用いる聖句を書き出したもの，会衆の集会で用いるための答えなどを送るなら，自分で準備して益を得る機会を奪ってしまうかもしれません。

インターネットでエホバの組織を中傷する情報を目にしたらどうしますか。断固退けてください。他の人に伝えてどう思うか尋ねなければと考える人もいますが，そのようなことをしても悪意のある情報を広めるだけです。インターネットで目にした情報のことで気持ちを乱されるなら，エホバに知恵を求め，円熟した兄弟たちに相談するのがよいでしょう。（ヤコ 1:5，6。ユダ 22，23）イエスご自身，偽りの非難を受けましたが，追随者たちに対して，敵たちが「あなた方を……迫害し，あらゆる邪悪なことを偽ってあなた方に言う」と警告しました。（マタ 5:11; 11:19。ヨハ 10:19-21）わたしたちは「思考力」と「識別力」を働かせ，「ゆがんだ事柄を話す者」や「その行路全般にわたってねじくれている」人々を見分ける必要があります。―箴 2:10-16。

仲間のクリスチャンに関するニュースや経験を間接的に聞く場合にも注意が必要です。その情報が真実だとしても，必ずしも広めなければならないわけではありません。他の人に伝えることが不適切で不親切な場合もあります。（マタ 7:12）例えば，良くないうわさを広めるのは，たとえ内容が真実でも，愛に欠けたことであり，励みになりません。（テサ二 3:11。テモ一 5:13）ある情報は内密かもしれません。わたしたちは，特定の情報をふさわしい時に適切な方法で知らせる他の人の権利を尊重すべきです。情報を事前に広めてしまうなら，問題が生じかねません。

今日，うそや真実，有益なものや無益なもの，無害なものや有害なものなど，どんな情報もすさまじい速さで広がる可能性があります。たった1人の人に送ったメールが，知らないうちに世界を瞬時に駆け巡ることさえあるのです。ですから，情報をすぐに一斉送信したくなる衝動に抵抗してください。センセーショナルな情報を目にした場合はどうですか。愛のある人は過度に疑うことも，すぐにだまされることもありません。愛があれば，エホバの組織に関する悪意のあるうわさや兄弟たちに関するうそを信じたりはしません。そのような情報は「偽りの父」である悪魔サタンの奴隷となっている人たちが広めているものなのです。（ヨハ 8:44。コリ一 13:7）思考力と識別力を培うなら，「明敏な者」となり，毎日見聞きする多くの情報をどう扱うべきかを適切に判断できます。聖書が述べるとおり，「経験のない者は必ず愚かさを所有することになり」ますが，「明敏な者たちは知識を頭飾りとしてつける」のです。―箴 14:18。