過ぐる1年の際立った事柄
世界各地から寄せられた報告がはっきり示すように,エホバの証人は王国の良いたよりを『あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝える』点で,これまで以上に忙しくしてきました。(マタ 24:14)証人たちが忍耐し,利他的な愛を表わすため一致して労苦した結果,『エホバの言葉が響きわたり,神に対する信仰があらゆる場所に広まり』ました。―テサ一 1:8。
楽しくて築き上げる家族の崇拝
2009年1月1日,エホバの証人の週ごとの集会予定は大きく調整されました。会衆の書籍研究は会衆の聖書研究という名称に変わり,神権宣教学校と奉仕会と同じ時に行なわれることになりました。すべての人に対し,それまで会衆の書籍研究に充てられていた晩を家族の崇拝のために用いるようにとの励ましが与えられました。
エホバの僕たちは,この愛ある調整にどのように応じているでしょうか。多くの人の気持ちをよく言い表わしているのは,夫である一人の兄弟の語った次の言葉です。「本当に,本当にありがとうございます。晩の家族の崇拝から妻もわたしもどれほど益を得ているか,言い尽くすことなどできません。エホバへの愛が深まり,夫婦としての絆もいっそう強まりました。天の父は,知恵の表われた実にすばらしい取り決めを設けてくださいました」。
家族は,新たに生み出された貴重な時間をどのように活用しているでしょうか。ある母親はこのように書いています。「『目ざめよ!』の31ページを一緒に考えることもあれば,組織のビデオをみんなで見ることもあります。子どもたちは自分で調査をし,喜んで学び,家族の崇拝の時間を楽しんでいます。毎月,聖書中の一人の人物を調べるという課題を与えられ,翌月にその点について発表します。夫もわたしも同じようにします。10歳の息子が取り組んだ最初の課題はノアでしたが,とても上手な話をしました。しかも,調べた点をどのように当てはめられるかということにも触れたのです。それから,自分で作ったノアの箱船の模型を見せてくれました。その翌週に娘は,使徒パウロの宣教旅行を取り上げました。話が終わり,皆で拍手をすると,娘は『覚えていますか』というクイズを出しました。とても驚きました」。この家族は,家族の崇拝という取り決めが確かにエホバからの祝福であると感じています。母親はこう続けています。「わたしたち夫婦にとって,この1年はいろいろありました。そうした中で歩み続けるのに,この取り決めが本当に助けになりました」。
別の姉妹はこう書いています。「この備えを通して霊的に目覚めさせてくださったことに感謝を申し上げたいと思います。子どもたちが成人して家を出た後,主人と私は家族研究をしなくなっていました。ですが,今では行なっています。研究はたいてい2時間におよび,時間が早く過ぎてしまうように感じます」。
大患難がいよいよ近づくにつれ,皆さんが家族の崇拝のために取り分けた時間を用いて神の言葉を掘り下げて調べ,霊的にも強められますように。それは悪魔に立ち向かうための助けとなるでしょう。この貴重な時間を最大限に生かし,「神に近づき」ましょう。「そうすれば,神はあなた方に近づいてくださいます」。―ヤコ 4:7,8。
聖書研究を勧めることに力を入れる
2009年1月から,各会衆は毎月の土曜日か日曜日のいずれか一日を定め,聖書研究を勧めることに努力するよう励まされました。どんな結果になったでしょうか。多くの奉仕者は驚きと大きな喜びを経験しています。研究を勧めるのが思っていたよりも簡単だったことに驚き,「聖書は実際に何を教えていますか」の本による研究にさまざまな人が応じたことを喜んだのです。旅行する監督の報告によれば,諸会衆はこの新たな活動に熱意を抱いて取り組んでいます。すでに得られた結果は,今後も良い見込みがあることを示しています。例えばイタリアでは,最初の5か月間で8,000件以上の新しい聖書研究が始まりました。
これまで研究を司会したことのない奉仕者たちも再訪問をし,研究を始めています。ペルーに住むカロリナはこう言います。「この活動が行なわれる前は聖書研究を持っていませんでした。でも,毎月の特定の日に集中的に努力するよう勧められたので,聖書研究を始めるために頑張らなければ,と思いました。家の人に,聖書研究は簡単にでき,さほど時間はかからないことを伝えています。提案どおりにしたところ良い結果が得られ,今では2件の研究を司会しています。そのことをエホバに感謝しています」。
英国のサティアという開拓者の姉妹は,最初の訪問で聖書研究を勧めてうまくいくのだろうかと思っていました。しかし,研究を勧める活動の日に,今日はこの方法を試さずに家に帰ることがないようにしようと心に決めました。たいへんうれしいことに,ある女性がすぐ勧めに応じました。サティアが思っていたよりもずっと簡単だったのです。
シチリア島のパレルモに住むルカという若い兄弟は,あるやもめに定期的に雑誌を届けていました。その女性は恐れの気持ちからだれも家の中に入れようとしませんでした。ある土曜日の午後,研究を勧める日にルカはこの女性を訪ねました。『聖書の教え』の本を開いたままあいさつし,本の一部を声に出して読みました。その女性は本の内容に興味をそそられ,少しの時間ルカと話をします。ルカは,この本には奥様が持つ疑問の答えが載っており,ご主人に再び会えるかという点についても分かる,と言いました。そして,だれが復活するかを説明している72ページを開きました。女性は,聖書が差し伸べるこの希望に心を動かされ,聖書研究の勧めに応じました。今では定期的に研究し,何の恐れも持たずにエホバの証人を家に招じ入れています。
ペルーの巡回監督はこう報告しています。「この活動が始まってすぐに,ほとんどの会衆では聖書研究の件数が増えました。チクラヨのある会衆は1か月で25件の新しい研究が始まったことを報告しています。チェペンでも新しい研究が24件始まりました」。
若い奉仕者も聖書研究を勧めて良い結果を得ています。ブラジルのサンパウロに住むジョバンナという11歳の少女はこう伝えています。「ある土曜日の午後,お母さんと家から家の奉仕をして,『聖書の教え』の本から聖書研究を勧めていました。最初の家でお会いしたのは有名な社長さんでした。聖書が神の霊感によって書かれたことを信じていますか,と尋ねると,信じていると答えてくださいました。それでテモテ第二 3章16節をお見せしました。その方は,こんな女の子がすばらしいことを話してくれたと感心し,本を受け取ってくださいました。
「再訪問は,おじいちゃんに一緒に行ってもらいました。その人のことをよく知っていたからです。家に上げていただき,わたしは『聖書の教え』の本の目次を見せ,どの章に関心がありますか,と聞きました。その人は,11章の『神はなぜ苦しみを許しておられるのですか』を選びました。2節まで読んでから,その人と奥さんは質問をたくさんしました。質問の答えが全部聖書に出ているのを知ってとても喜び,定期的に研究をしてくださることになりました。最初の家の人と研究が決まり,とてもうれしかったです」。
もちろん,だれもが聖書研究の勧めに応じるわけではなく,研究を始めても続かないこともあるでしょう。しかし,わたしたちは神と共に働く者として,これからもできるだけ多くの人に聖書研究を勧めます。サタンの事物の体制が滅びる前に,エホバは羊のような人々をご自分の組織に引き寄せておられる,ということを知っているからです。―ヨハ 6:44。コリ一 3:9。
現代の技術によって業を「速やかに」進める
エホバの民は,胸の躍るような次の預言が成就していることを歓んでいます。「小さな者が千となり,小なる者が強大な国民となる。わたし自ら,エホバが,その時に速やかにそれを行なう」。(イザ 60:22)興奮を誘う今の時代に,エホバがご自分の民の増加を速めるため新しい技術を用いておられることに疑問の余地はありません。そのため統治体は,世界じゅうのすべての支部で使える管理用のソフトウェアの開発を承認しました。
開発チームは当初南アフリカ支部に置かれていましたが,ニューヨーク市ブルックリンの世界本部に移され,引き続きこのソフトウェアの開発と保守を行なっています。20ほどの支部が地区ごとのサポートセンターとして機能し,近くの支部がこの有用なプログラムを十分に用いられるよう助けています。
このシステムを用いることにはどんな利点があるのでしょうか。すべての支部が同じソフトを用いることで情報を共有できます。例えば,世界各地の印刷支部は,他の支部にどの文書が在庫しているかを知ることができます。ある支部に文書が余分に在庫しているなら,他の支部はその文書を回してもらうことができ,新たに印刷する必要はありません。このソフトにはほかにも,野外からの過去の依頼状況に基づいて今後の必要量を予測する機能も備わっているので,すべての支部において文書在庫の余剰を減らすことができました。
このプログラムはベテルの仕事にも役立っており,文書や雑誌の依頼の処理,毎年の野外奉仕報告の集計,大会を計画すること,旅行する監督や特別開拓者の奉仕に関連した事柄に活用されています。さらに,購入,会計,在庫管理にも利用され,高価な市販のソフトウェアの使用を減らす結果になりました。
インターネットを通して霊的な光が輝く
文字どおりの光が暗い場所を隅々まで照らすように,神の民は地の隅々にまで『光を輝かせて』います。(マタ 5:16)その光を最果ての地まで照らすうえで極めて有用なのが,エホバの証人の公式サイトwww.watchtower.orgです。このウェブサイトには,雑誌の記事やパンフレットやブロシュアーが383もの言語で掲載され,「新世界訳聖書」全巻も11の言語で載せられています。このサイトで合計700以上の記事を見ることができます。内容は毎週更新され,人々が関心を持つテーマを扱った最近の記事が載せられます。インターネット上で出版物の内容がこれほど多くの言語で提供され,どんな結果が得られているでしょうか。
米国フロリダ州に住むパットは,このサイトを外国語の文書を手に入れる最も早い方法と見ています。姉妹はこう書いています。「『真理を知りたいと思われませんか』のパンフレットを配布していた際,英語のパンフレットを受け取ったものの別の言語を母語とする人たちがいました。配布キャンペーンが終わってから,その人たちが話す言語のパンフレットを印字しました」。どんな結果になったでしょうか。
パットは,小さな商店を経営するタイ人の女性のためにタイ語のパンフレットを印字しました。女性はとても喜び,タイ語の文書をこんなに早く持ってきてくれたと驚いていました。この女性と店の他の客は,エホバの証人のウェブサイトを自分で見たいと思い,サイト名を知りたがりました。そのうちの一人は,さらに話し合えるようパットを自宅に招きました。パットのように,このサイトから別の言語の文書を幾らか印字し,外国語を話す関心を持つ人に渡すのは良い方法であると感じている人は少なくありません。
昨年は,世界のすべての大陸からエホバの証人の公式ウェブサイトに2,400万件以上のアクセスがありました。2007年以降,このサイトを訪れる人は33%増えました。孤島を含む世界各地から,訪問や家庭聖書研究の依頼がウェブサイトを通して寄せられています。それらの申し込みを送信した人の数は,2007年以降55%も増えました。霊的な光はまさに地の最果てにまで輝き渡り,天の父の賛美また栄光となっているのです。―マタ 5:16。
ウェブサイトwww.watchtower.orgに加えてwww.jw.orgも設けられ,主要な出版物の録音データなどを入手できるようになっています。このサイトにはどんな利点があるのでしょうか。
米国ミズーリ州に住むトリーシャと同じように思っている人は少なくありません。姉妹は,「木曜日がとても楽しみです」と言います。なぜ木曜日なのでしょうか。たいていその日にwww.jw.orgから「ものみの塔」や「目ざめよ!」の新しい号の録音をダウンロードできるからです。トリーシャは,霊的な情報に富むこのウェブサイトをよく利用する,世界の大勢の兄弟姉妹の一人です。オーディオ版の雑誌,聖書,劇,書籍,ブロシュアー,パンフレットを27の言語でダウンロードできます。手話の出版物も,二つの主要なファイル形式で入手できます。
どんな人がこのサイトで出版物をダウンロードしているのでしょうか。おもに霊的な兄弟姉妹ですが,200以上の国に住む一般の人も利用しており,わたしたちの業が制限されている国や地域の人々も含まれています。パプアニューギニア,セントヘレナ島,さらには南極大陸からでさえ定期的にこのサイトを訪れている人もいます。オーディオ版をダウンロードすることによって,兄弟姉妹はどんな益を受けているでしょうか。一例として,フランス領ポリネシアでは荷物の到着が遅れ,雑誌が発行日付の後に届くことも少なくありません。とはいえ,こうした遠隔の島々に住む奉仕者もインターネットに接続するなら,最新号の記事をサイトに載せられた日に取り込んで聞くことができるのです。
米国イリノイ州に住むデボラは,難しい健康上の問題を抱えているため,会衆の集会に行けないことも多く,そのうえ読んだことをあまり覚えられません。今では出版物をダウンロードして聞いており,こう言います。「内容を覚えられるようになり,学んだ事柄を確信をこめて話せるようになりました」。
米国テキサス州の小さな町に住む夫婦には,シベリア出身の聖書研究生がいます。二人はこの女性のためにロシア語のオーディオ版の雑誌をダウンロードできることをうれしく思っています。米国カリフォルニア州の兄弟は,早朝のジョギングにデジタルプレーヤーを持って行き,走りながらイヤホンで雑誌の朗読を聞いています。
ニュージーランド北部の小さな町に住む夫婦は毎週,集会で扱われる資料をダウンロードしています。「ものみの塔」の研究記事,「自分を神の愛のうちに保ちなさい」と「偉大な教え手から学ぶ」の本の該当する章,その週の聖書通読の箇所です。それを週の間ずっと聞くようにしています。夫は,「職場でのストレスを口にするよりも,二人で霊的な事柄をよく話題にするようになりました」と言います。同じようにしている家族は,世界じゅうにいます。
毎週,聖書通読の範囲の章をダウンロードすることがとても多く行なわれ,特に火曜日によく行なわれています。土曜日と日曜日に最も多くダウンロードされているのは,その週の「ものみの塔」研究の記事です。さらに,会衆の長老たちは用紙類や講演の筋書きをこのサイトから直接印字することができます。こうした備えすべては,組織にとって時間と費用と労力の節約になります。
「証しの機会となる」
エホバの証人は,『敬虔な専心を全うし,平穏で静かな生活をしてゆく』ことを願っていますが,迫害されるとしても驚きません。(テモ一 2:1,2)イエス・キリストは弟子たちが憎しみの的となることを警告し,こう言われました。「人々はあなた方に手をかけて迫害し,あなた方を会堂や獄に引き渡し,あなた方はわたしの名のために王や総督たちの前に引き出されるでしょう」。それでもイエスは,そうした迫害が清い崇拝に敵対する人たちのねらいとは正反対の結果を生むことを指摘し,「それはあなた方にとって証しの機会となるのです」と予告しておられます。―ルカ 21:12,13,17。
イエスの預言の成就として,エホバの証人は多くの場所で示される不当な扱いに立ち向かってきました。さまざまな国や地域における裁判で勝訴し,証人たちの法的な自由が守られてきました。それには家から家に伝道したり崇拝のために自由に集まったりする権利が含まれています。まだ問題はありますが,この1年も重要な法的勝利が得られ,わたしたちの活動が純粋に宗教的な性質のものであることがはっきり示されてきました。
オーストリア
兄弟たちの30年にわたる努力が実り,2009年5月,オーストリア連邦の教育・芸術・文化省はエホバの証人に宗教組織として最高位の認可を与えました。エホバの証人はオーストリアでこの立場を得た14番目の宗教協会です。2008年7月のヨーロッパ人権裁判所による好意的な判決に続き,同裁判所はオーストリアの兄弟たちにとって有利な,さらに3件の判決を下しました。こうしてエホバの証人が宗教協会として全面的に認められていることが疑問の余地なく示されました。
南アフリカ
2005年,南アフリカの労働省を相手に,労働裁判所に対して訴訟が起こされました。その裁判は,南アフリカのものみの塔聖書冊子協会と,南アフリカのベテルで奉仕する世界的なエホバの証人の特別全時間奉仕者団の成員に関係して起こされたものです。その訴えは,ベテル奉仕者を南アフリカの労働法による従業員として分類すべきではないという判断を求めるものでした。2009年3月,労働裁判所は訴えを認めて兄弟たちに有利な判決を下し,それによってベテルで行なわれている活動が宗教的な性質のものであることが明確に示されました。
ウガンダ
2007年,ウガンダ国税庁は,ウガンダのベテルで奉仕する,世界的なエホバの証人の特別全時間奉仕者団の成員は,ウガンダの所得税法による従業員に当たるという判断を下しました。その件について国際聖書研究者協会は国税庁を相手に,カンパラにあるウガンダ高等法院に対して提訴しました。2009年6月,高等法院は国際聖書研究者協会に有利な判決を下し,ウガンダのベテル奉仕者は従業員ではないと判断しました。同法院はベテル奉仕者が,「行なう仕事にかかわらず同額の払戻金を受けている」ことに特に注目しました。そして,ベテル奉仕者が宗教団体の成員であると判断し,支給されている食物と住居と少額の払戻金は,ウガンダにおいて専ら慈善的,また宗教的な活動を行なうために個人の必要を賄うものであるとみなしました。
アルメニア
当局は,良心的に兵役を拒否する徴兵年齢の兄弟たちを今なお逮捕し投獄しています。2009年8月現在,74人の兄弟が刑務所に入っています。国内のすべての裁判所は兄弟たちに不利な判決を下したため,救済を求める4件の別個の申し立てがヨーロッパ人権裁判所に対して行なわれています。政府はまた,兄弟たちが外国から受け取る宗教文書に対して引き続き法外な付加価値税を課しています。この不当な金銭的負担が取り除かれるかどうかにかかわりなく,わたしたちは兄弟たちが今後も霊的にじゅうぶん養われることを確信しています。―イザ 65:13。
アゼルバイジャン
この国の兄弟たちは,崇拝の自由が徐々に失われる状況に対処しています。文書を入手することや崇拝のために集まることはますます困難になっています。首都バクーでは兄弟たちの法的な立場が認められていますが,他の都市では登録がなされていません。それらの都市において,個人の家で開かれる集会に警察がしばしば違法に踏み込み,兄弟たちが警察署で長時間拘束されています。個人の家での集まりには登録が法律で義務づけられていないにもかかわらず,こうした扱いを受けているのです。2009年4月9日,兄弟たちはアゼルバイジャン政府に対し,この国におけるエホバの証人の登録を求める申請を出しました。わたしたちは,登録がなされて兄弟たちの困難が解消されることを希望しています。
エジプト
過去3年にわたって,エジプトの兄弟たちと,ベルギー,イタリア,米国から訪れた兄弟たちは,わたしたちの業に対する法的認可を得るため,国の当局者と会見してきました。結果として当局はエジプトの兄弟たちに対し,30人までの人々が個人の家で平和裏に集まる許可を与えました。それにもかかわらず,政府部内には今なお兄弟たちを虐げる動きがあります。国家保安局は,兄弟たちを絶えず監視し,時おり会衆の成員を尋問し脅迫しています。当局者と直接会見することに加え,兄弟たちは裁判によって法的な立場を得るために努力しています。
エリトリア
基本的人権を全く無視する行為として,2009年6月28日,当局はある会衆の成員23人を逮捕しました。その中には高齢の姉妹たちや,2歳から4歳までの3人の子どもも含まれていました。高齢の姉妹たちは釈放されましたが,子どもたちは母親たちと共に刑務所に入れられたままです。父親たちはずっと以前から投獄され,今では家族全員が留置されています。これで,投獄されている兄弟姉妹は合計64人になりました。その中には,兵役に対する中立の立場ゆえに1994年以来投獄されている3人の兄弟も含まれています。その兄弟たちは,どの法律に違反したかも告げられていないのです。
インド
ここ数年,インドのエホバの証人が公の宣教奉仕の際に暴徒に襲われる事件が起きています。さらに,暴言や身体的な危害,投獄するとの脅しや文書が焼かれるという状況に耐えてきました。兄弟たちはしばしば,殴打された後に逮捕・投獄され,刑事訴追を受けています。怒り狂った暴徒は,兄弟たちが法律を破っているという言いがかりをつけ,地元の当局者に圧力をかけて処置を取らせようとしています。
例えば2008年12月,カルナータカ州クンダプラに住む3人のエホバの証人(母親とその娘と10歳の孫娘)は,聖書を学ぶことに関心を示していたコニ村の女性を再訪問しました。後に五,六人の男たちがその3人を地元の警察署に無理やり連れて行きました。暴徒が詰めかけ,警察は姉妹たちが住居に侵入し,階級間の敵意をあおり,他の宗教を侮辱したという容疑をかけました。3人は結局,家に帰ることを許されました。そうした状況にある兄弟姉妹に対して法的援助が与えられています。
モルドバ
国際的には国家として承認されていない,トランスニストリアという地域がモルドバにあります。そこに住む兄弟たちは,12年にもわたって絶えず禁令や解散の脅しを受けてきたにもかかわらず,引き続き熱心に王国の業を行なっています。問題は山積しているとはいえ,兄弟たちは王国の関心事を擁護するための裁判において,エホバの祝福を経験し,一定の成功を収めています。三つの例を挙げましょう。オルダシェイ村では,二人の姉妹が伝道中に正教会の司祭にののしられ,暴力を振るわれましたが,その司祭は責任を問われて罰金を科されました。また,ティラスポリで兄弟たちは,エホバの証人を登録するために努力を払い,市裁判所はそれに関連して好意的な判決を下しました。さらに,ある王国会館の建設プロジェクトが行なわれた際,自発奉仕者に提供された食事に対してリブニツァ市の税務調査局が課税したのは違法であるとの判断が下されました。
カザフスタン
カザフスタン共和国の最高検察庁が異議を表明したことがきっかけで,兄弟たちに対して有利な複数の判決が下されました。それ以前に,キジロルダ,シムケント,サルイアガシュの裁判所はエホバの証人の宗教活動を6か月にわたって停止するよう命じていました。しかし,2008年11月の判決によって,エホバの証人の宗教的自由がキジロルダ地域,シムケント,カザフスタン南部全域で回復されました。さらに,2008年12月にアティラウの市裁判所は,エホバの証人がその都市で法的登録を行なう権利があると判断しました。地元当局が7年にわたって登録を拒否してきましたが,ついに認められたのです。
ロシア
昨奉仕年度,エホバの証人の管理センターは検察官や国の大勢の当局者による度重なる捜索を受けました。違法な手段によって,わたしたちの宗教活動を停止させる意図があることは明らかです。個々の兄弟姉妹も,嫌がらせや事実無根の容疑による取り調べを受け,その回数も非常に多くなっています。ある時など,警察が宗教的な集会に違法に踏み込み,その後,妊娠していた姉妹は流産してしまいました。集会に来ていた15歳の少年も,違法であるにもかかわらず拘束されました。検察当局は,過激活動対策法を利用して地元の幾つかの会衆を解散させ,エホバの証人の宗教文書を発行禁止にしようとしています。過激主義という事実無根の容疑をかけて,関係当局はほかの方法でも宗教的自由を抑圧しています。それには不当な逮捕や国外追放が含まれています。さらに,そうした偽りの容疑をかけられていたエホバの証人を弁護するために外国から来た4人の法律関係の代表者は入国を拒否されました。4人の兄弟たちの一人は,モスクワで23時間にわたって身柄を拘束されました。
連邦保安局の局員が,集会や大会に用いる会場の借用契約に干渉し,結果として多くの借用契約が取り消されました。当局はまた,新しい王国会館の建設を妨害してきました。エホバの証人に対する犯罪行為としては,容疑をねつ造して警察に留置し,拷問を加えることが含まれています。
韓国
韓国政府は2008年5月7日に,良心的拒否者に対して代替の市民的奉仕活動を認めるという考えを表明しましたが,同年6月16日,その考えを後退させる声明を出しました。この声明では,「良心的兵役拒否の問題はさらに調査検討し,幅広く国民の合意を得る必要がある」と述べられています。現時点で,韓国の国会は代替の奉仕活動に関する法案を審議していません。兄弟たちは国連の規約人権委員会の判断を待っています。その委員会は,2件の提訴に関してすでに好意的な判断を下しています。2009年1月,軍隊内の不審死に関する韓国の大統領委員会は,1970年代から1980年代半ばにかけて強制的に徴兵された5人のエホバの証人が,暴行を受けて死亡したことについて,韓国政府の責任を認めました。この画期的な判断は,軍隊内での暴力行為による死について国が責任を認めた最初の例です。
タジキスタン
タジキスタンの「エホバの証人の宗教協会」は2007年に活動を禁止され,ドイツから送られる文書は税関で差し押さえられました。軍裁判所に上訴が行なわれ,2008年9月,上訴は棄却されました。その後,最高裁判所の軍事部会に上訴が行なわれましたが,それも棄却されました。いずれの判決も,活動禁止と文書の押収を支持しています。兄弟たちを助けるため,さらに努力が進められています。
トルコ
この国の兄弟たちは兵役に関連した問題に直面しています。ある兄弟は確固とした立場を取ったため,刑務所に2年間入れられています。徴兵年齢にある他の多くの兄弟たちも,今なお罰金や投獄や解雇の脅しを受けています。2009年3月に兄弟たちは,国連の規約人権委員会に提出されたエホバの証人に関する2件の訴えについて,同委員会が調査を開始したという知らせを受けました。
さらに2009年5月,ヨーロッパ人権裁判所は保留となっている3件の申し立てを一括して扱い,6人の兄弟たちの人権が侵害されているかどうか,調査を開始することを決定しました。兄弟たちのうち4人は,刑務所に入れられています。エホバの僕たちは,これら二つの法的機関によって考慮が払われていることに感謝しており,救済が得られるよう希望しています。
ウズベキスタン
この国におけるエホバの崇拝者の法的状況は悪化の一途をたどっており,兄弟たちが国の主導する迫害の標的にされるケースが増えています。妻と二人の息子を持つ男性は,宗教を教えたという理由で服役していましたが,2年の刑期を終え,2009年5月14日に釈放されました。その翌日,兄弟は国籍国であるタジキスタンに強制送還されました。他の3人の兄弟たちは,「非合法な宗教活動」を組織したとして,刑務所に入れられたままです。3人の兄弟たちの弁護士はそれぞれ,ウズベキスタン最高裁判所に上訴を行なう準備を進めています。この問題を解決するため,地元の兄弟たちと,外国の兄弟たちの代表はウズベキスタンの国家宗教委員会の代表者たちと何度か会見しました。
ヨーロッパ人権裁判所
フランスのストラスブールにあるヨーロッパ人権裁判所に対してエホバの証人が行なった合計22件の申し立てが保留となっています。申し立てているのは,アゼルバイジャン,アルメニア,オーストリア,キプロス,グルジア,セルビア,トルコ,フランス,ロシアのエホバの証人です。その申し立ては,ヨーロッパ人権条約の締結国に住む人々すべてに保障されている基本的人権の侵害にかかわるものです。申し立てのうち9件は兵役を拒否する権利にかかわるもので,7件は宗教に基づく迫害や差別,4件はエホバの証人が活動を組織するために用いる法人の登録抹消または活動禁止にかかわるものです。また,2件は崇拝のために平和裏に集まる権利に対する政府の侵害行為に異議を申し立てるものです。
2008年6月17日,ヨーロッパ人権裁判所は,アソシアシオン・レ・テモワン・ド・ジェオバ(エホバの証人協会)がフランス政府を相手に行なった申し立てを考慮しました。申し立ては,エホバの証人協会が1993年から1996年にかけて受け取った宗教的な寄付全額に対する60%の差別的な課税に異議を唱えるものです。ヨーロッパ人権裁判所は,ヨーロッパ人権条約第9条に示されている信教の自由が侵害された可能性について,追加の質問を寄せました。フランスや欧州評議会の他の加盟国に住むエホバの証人も,同裁判所がこの件を審理することに同意するかどうか,推移を見守っています。
サタンは『布告によって難儀を仕組む』ことにより,真の崇拝を妨げようと画策していますが,エホバの僕たちは「堅い信仰を」持ち続けています。『苦しみを忍ぶ点での同じことが,世にいる仲間の兄弟全体の中で成し遂げられているのを知っている』からです。真の崇拝者が皆,引き続きサタンに断固として立ち向かい,あらゆる過分のご親切の神にすべての思い煩いをゆだねますように。神は彼らを顧み,確固とした強い者としてくださるのです。―詩 94:20。ペテ一 5:7-11。
「資格を得て他の人々を教える」
訓練を施すことは,クリスチャン会衆の発足当初からの特色です。使徒パウロはテモテにこう語っています。「それを忠実な人々にゆだねなさい。次いでそうした人々は,じゅうぶんに資格を得て他の人々を教えることができるようになるでしょう」。(テモ二 2:2)今日でもエホバの組織は数々の訓練プログラムを設けています。例えば2008年以降,米国支部の区域 ― アラスカ,バミューダ,タークス・カイコス諸島を含む ― から来た6,528人の長老が,会衆の長老のための学校に出席しました。70のクラスが,ニューヨーク州パタソンのものみの塔教育センターで開かれました。
1週間の集中的な課程では,長老の生活のさまざまな面が扱われ,宣べ伝える業において率先し,会衆でいっそう効果的な教え手となるための助けが与えられます。(テモ二 4:5。ペテ一 5:2,3)その課程ではまた,長老が自分の霊性と家族の霊性を維持するようにとの励ましが与えられ,他の人を援助する際に「真理の言葉を正しく扱う」ための訓練が施されます。(テモ二 2:15)学校に出席した長老たちから感謝の言葉が数多く寄せられています。その一部をご紹介しましょう。
「教訓者の示す謙遜さは,会衆の兄弟たちにどのように接するかという点で良い手本でした。私の心は,統治体に対する感謝の気持ちであふれています。これまで真理のうちを歩んできた中で,今回の学校で教えていただけたことは,際立った特権であると感じました」。
「エホバ神は,わたしたちが何を必要とし,いつそれを備えるとよいかを知っておられます。信仰が新たにされ,霊的に充電されました。今回の経験を通して,エホバがご自分の組織の目に見える部分を用いて行なってこられた事柄を認識し,またご自分の民すべてをどのように顧みておられるかを知ることができました」。
「非常にすばらしい経験でした。学校で学べば学ぶほど,自分の知識がどれほど足りないかを痛感させられました。個人研究の大切さと,学んだすべての事柄を自分に当てはめるべき理由を改めて認識できました」。
「この訓練から,キリストの思いを持って家族と会衆を世話するよう,いっそう整えられました。(コリ一 2:16)また,自分がどんなタイプの人間か見つめ直す機会ともなりました」。
「エホバに教えていただいたこの1週間と大学教育とを選ぶよう言われたら,今回の学校を選びます」。
「とても築き上げられ,大きな益を得ました。エホバへの奉仕をずっと続け,自己犠牲的であり,兄弟姉妹にとってさわやかな存在であるための力を得ました。(イザ 32:2)エホバ,本当にありがとうございます。」
「この課程を通してエホバの愛を感じ取りました。エホバに牧羊していただいたような気持ちです」。
「エホバの栄光また賛美のために,割り当てられた務めをよりよく果たせるよう教えていただきました。この特権をエホバに感謝しています」。
他の土地に住む長老たちがこの時宜にかなった教えから益を受けるための取り決めについては,今後,統治体から知らせがあるでしょう。
支部の献堂式が喜びをもたらす
2009年1月24日,アフリカ東部のタンザニアにある新しい支部の献堂式が行なわれ,統治体のサミュエル・ハードが話をしました。この国で支部が発足したのは25年前のことで,3部屋から成るコンクリートブロックの建物で仕事を始めました。その建物は,マゴメニ地区46番として国内の証人たちに知られていました。献堂式には22の国から779人が訪れました。それら喜びに満ちた招待客の中には,1987年に禁令が解除されて以来の業の進展を振り返って,涙を浮かべている人が少なくありませんでした。古くからの奉仕者の一人は,「エホバの助けなしに,この国でこうしたことは行なえなかったでしょう」と言いました。今では宣べ伝える業が盛んに行なわれ,1万4,000人を超える奉仕者が歓びにあふれてエホバに感謝をささげ,そのみ名に調べを奏でています。―詩 92:1,4。
2009年5月2日,土曜日,オランダ支部で行なわれた献堂式には,31の国から約600人の兄弟姉妹が訪れ,統治体のセオドア・ジャラズが話をしました。1983年に完成した建物に,今回,宿舎棟が増築されました。そして,雑誌の印刷のために用いられていた部分が,事務所と地区オーディオ・ビデオ・センター(RAVC)のビデオ・スタジオに改造されました。オランダのRAVCは,おもにヨーロッパで用いられている24の言語のCDやDVDの制作を援助しています。さらに,20ほどの手話言語によるビデオの制作も支援しています。それにはヨーロッパ,アフリカ,オセアニアで用いるCDと,全世界で用いるDVDの制作を組織する仕事も含まれています。オランダ支部はまた,世界の他の支部が必要とする物品の購入と発送を行なっており,改装された施設はそうした活動に合った造りになっています。
「自分を神の愛のうちに保ちなさい」
わたしたちにはまさに,喜べる理由がたくさんあります。胸の躍るような時代に生きているわたしたちは,祝福されています。預言されていたとおり,「終わりの日」は確かに「対処しにくい危機の時代」です。(テモ二 3:1)とはいえ,救出は非常に近いので,ユダが与えた次の強い訓戒に従うよう一人一人が決意することはとても重要です。「愛する者たちよ,あなた方は,自分の抱く極めて聖なる信仰の上に自らを築き上げ,聖霊をもって祈ることにより,自分を神の愛のうちに保ちなさい。そして,永遠の命を目ざしつつわたしたちの主イエス・キリストの憐れみを待ちなさい」。―ユダ 20,21。
[13ページのグラフ]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
www.watchtower.orgを訪れる人の1日当たりの数
70,000
50,000
30,000
10,000
1999 2001 2003 2005 2007 2009
[21ページの地図]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
法律上の重要な動きのある国
オーストリア
エジプト
エリトリア
ウガンダ
南アフリカ
モルドバ
アルメニア
トルコ
アゼルバイジャン
ロシア
カザフスタン
ウズベキスタン
タジキスタン
インド
韓国
[11ページの図版]
若い奉仕者も喜んで聖書研究を勧めている
[27ページの図版]
会衆の長老のための学校によって長老たちは,神権的な責任を果たす面で整えられている
[28ページの図版]
オランダ支部で献堂式の話をするジャラズ兄弟
[29ページの図版]
タンザニア支部で献堂式の話をするハード兄弟