永遠の支配は真の崇拝の振興に依存する
人間の支配者は,避けることのできないどんな現実にぶつかりましたか。しかし人類は何から永遠の益を受けますか。
永続する国を建てようとした支配者が常に直面したものは,死んで権力を後継者にゆずらねばならないという,避けることのできない現実でした。そこで不滅を求めた支配者は多く,不滅の生命を持つと自称した者さえありました。しかしそのすべては死に,その国もやがては滅びました。ここに一人のふさわしい王が出て永遠に生き,その国を永遠に治めるとすれば,その民の受ける恵みに限りはありません。
支配に関してエホバはどんな契約を結びましたか。模型的な神の国を建てた目的は何でしたか。
一つの王朝あるいは一王家が永遠に王権を維持するのも,不可能なことでした。しかし聖書は,エホバ神がある人と結んだ契約により,その家系から出る一人の人が永遠に位に座し,その王権が増し加わって遂に全地を治めるようになることを告げています。その保証として,神はこの人とその子およびその国の都を,永続する国の模型として用いました。こうして小規模な神の国が運営された結果,関心を持つ人ならば,永遠の王権を持つ者に何が要求されているか,この国の支配が何を意味するかを知って,それに依り頼み,また希望を託することができます。
神は永遠の王を予影するため,ダビデをどのように用いましたか。
神からこのように用いられた人はダビデ王でした。それはダビデが神の是認する支配者であったからで,いわれのない事ではありません。ダビデは紀元前1077年にユダの支族を治め始め,1070年には全イスラエルを支配するようになりました。しかし約束された永遠の国の型が完全に出来上るまでには,ふさわしい都を選び,国の体裁をととのえる必要がありました。ダビデの行なったことは,永遠の支配者に対する神の要求を示しており,神の国の永遠の王が成し遂げるわざを予影していることに注目して下さい。
ふさわしい支配者
エルサレムはどのようにしてダビデ王の支配下におかれましたか。それはダビデのどんな願いのためですか。かつてのエブス人のこの要害は,何と呼ばれるようになりましたか。
ダビデは,神から与えられた土地の全部に神の支配が行なわれることを望みました。ダビデは王となったとき,エルサレムが都として地の利を得ていることを見定めました。しかしエルサレムは異教徒のエブス人になお占拠されていました。いまやユダの支族のみならず全支族の王となったダビデは,ベニヤミンの領地にあるエルサレムの攻略を開始できることになりました。その熱意と勇気を神に祝福されて,ダビデはシオンの要害すなわちエルサレムを占領しました。ダビデがヘブロンからシオンに都を移してのち,シオンは「ダビデの町」呼ばれるようになったのです。―サムエル後 5:6-9。歴代上 11:6-8。
ダビデは神の律法に対してどんな態度をとりましたか。ダビデは,真の崇拝に敵対したバビロン的な敵に対して,どんな勝利を得ましたか。
ダビデ王は正義と公正を要求する神の律法を守り,それを施行したので,シオンすなわちエルサレムの名声は周辺の国々にまで知れ渡ることになりました。(エゼキエル 16:14)バビロンに起源を持つ宗教を実践した人々の中でとくに目立つ存在であったペリシテ人は,ダビデを倒そうと図りました。しかしダビデは真の崇拝に敵対するバビロン的なペリシテ人を2度の戦いで打ち破り,彼らの企てをくじきました。―サムエル後 5:17-25。
王となったダビデは何を第一にしましたか。それはどのように示されましたか。
さてその国を堅くしたダビデは,民の間に真の崇拝をすすめることを早速に始め,エホバ崇拝の事柄を第一にしました。大祭司エリの時以来,契約の箱はモーセの造った幕屋にはおかれず,すでに長年ものあいだキリアテ・ヤリム(バアレ・ユダ)にある1軒の家に安置されていました。(サムエル前 4:1–7:2)ダビデは,契約の箱をこんどシオンの山に携え上らせ,ダビデの町に天幕を張ってそこに安置させました。また10人のレビ人と祭司二人を任命して契約の箱の前に奉仕させ,神の崇拝の事柄をとりきめました。また自ら真の崇拝に率先したのです。その日ダビデは新しい歌を作り,次のように歌っています。「エホバに感謝しその名をよびそのなし給へることをもろもろの民らの中にしらしめよ……エホバはすべおさめたまふ……エホバに感謝せよそのめぐみはふかくそのあはれみはかぎりなし」。これに対して民はみなアーメンととなえました。―歴代上 15:1–16:36,文語; 13:1-12。サムエル後 6:1-19。
どなたの名により,またどなたの位に座って,ダビデ王は治めましたか。
ダビデはイスラエルの本当の王としての栄光とほまれを自分に帰することをせず,自分は「エホバの位」に坐り,エホバの名によって治めていることを認めていました。(歴代上 29:23)コラの子たちの詩の中で,民もこの事を認めるようにすすめられています。
コラの子の詩篇の中で,人々はエホバの王権を認めることをどのようにすすめられていますか。
「エホバは大なり,われらの神の都そのきよき山のうへにていたくほめたたへられたまふべし,シオンの山はきたの端たかくしてうるはしく喜悦を地にあまねくあたふ,こゝは大なる王のみやこなり……なんぢのもろもろの審判によりてシオンの山はよろこびユダの女たちはたのしむべし,シオンの周囲をありきあまねくめぐりてその櫓をかぞへよその石垣に目をとめよ,そのもろもろの殿をみよ,なんぢらこれを後の代にかたりつたへんが為なり」― 詩 48:1-14,文語。詩 76:1,2をも見て下さい。
王権が長続きするため,王に要求される事柄は何ですか。
神の預言者サムエルは不従順なサウル王に対し,「従うことは犠牲にまさる」と,かつて告げたことがあります。(サムエル前 15:22)たとえ王であっても,その支配が長続きするには,神に対する従順の要求されることをダビデは知っていました。その王権は,先代のサウル王から王権が除かれたように取り去られますか。それを決めるものは,神に対するダビデの愛,エホバの崇拝を高め,促進するダビデの熱心です。
永遠の王権の契約
ダビデがエホバの神殿を建立することを望んだのはなぜですか。
ダビデはシオンの山に自らの宮殿を建てましたが,自分は香柏の家に住みながら,神の契約の箱が天幕にあるのを正しいこととは考えませんでした。ダビデはエホバの神殿を建立して,真の王であるエホバ神を高く崇めようと望んだのです。エホバはそれを喜ばれ,預言者ナタンによって次のように言われました。
エホバは,ダビデのすえに関してどんな特定の事柄を約束しましたか。
「我……汝がすべて往くところにて汝と共にあり汝のもろもろの敵を汝の前より断ちさりて地の上の大なる者の名の如く汝に大なる名を得さしめたり……又エホバ汝に告ぐエホバ汝のために家をたてん……我汝の身より出る汝のこを汝の後にたてゝその国を堅うせん,彼わが名のために家を建ん我永く其国の位を堅うせん,我はかれの父となり彼はわが子となるべし。彼もし迷はゞ我人の杖と人の子の鞭を以て之をこらさん。されど我の恩恵はわが汝のまへより除きしサウルより離れたるごとくに彼よりは離るゝことあらじ,汝の家と汝の国は汝のまへに永く保つべし汝の位は永く堅うせらるべし」― サムエル後 7:1-17,文語。
この契約の言葉は,神の女のすえ,アブラハムのすえおよび王権に関する預言の成就をどのように保証し,また明確にしていますか。
これは宇宙の主権者の祝福のことばです。ダビデは,終わることのない王権を持つ王の家系の最初の者となります。この御国契約は,エデンの園で約束された神の女のすえ,地のすべての人に祝福をもたらすアブラハムのすえが,ユダの家のダビデ王の王統から出ることを明らかにしています。ユダの家からは王権の離れないことが預言されていました。―創世 3:15; 22:18; 49:10。
ダビデはいま何にたとえられますか。ダビデはどのように感謝を表わしましたか。
ダビデ王はいまやシオンにすえられた隅のおや石にもたとえられます。天の王エホバを代表する王統がその上に建てられるのです。ダビデは感謝の祈りをしました。―サムエル後 7:18-29。
ソロモンの名にはどんな意味がありますか。詩篇 87篇は,シオンに生まれることのほまれをどのように述べていますか。
ダビデの後継者は子のソロモンでした。その名は「平和」を意味します。ソロモンはまた「エホバの愛する者」という意味で,エホバからエデデアとも呼ばれました。(サムエル後 12:24,25)シオンで生まれたことは,ソロモンにとって大きな名誉でした。そのほまれは,有名なバビロンで生まれることよりも遙かにまさっています。詩篇 87篇2節から6節はそのことを述べたことばです。「エホバはヤコブ〔イスラエル〕のすべての住居にまさりてシオンのもろもろの門を愛したまふ 神の都よなんぢにつきておほくの栄光のことを語りはやせり……エホバもろもろの民をしるしたまふ時このものは彼処にうまれたりと算へあげたまはん」。(文語)
何時そしてどんな特別の意味において,ソロモンはシオンに生まれましたか。その国はどこまで治めましたか。
王としてのソロモンの誕生は,紀元前1037年のことです。ダビデとの契約に従って,エホバはとくにその時ソロモンの父になったと言えます。ダビデは,神の定めた約束の地の境界内の土地をすべて平定していました。そこでソロモンは南はエジプトの河より,北はダマスコの北8マイル,オロンテスのカデシに至るまでを治めました。―歴代上 29:23。
ダビデは宮の造営のために何を準備しましたか。国の繁栄の基礎について,ダビデは何を認めていましたか。
エホバはダビデを霊感して,宮の造営計画をさずけました。加えてダビデは多くの資財と,自分自身また民の寄せた資金を宮の造営のために用意しました。また宮の敷地をも準備しました。ダビデは,その国の繁栄が神に依存していることを悟っていたのです。また宮の建築は,神から与えられた神のものをもって,神に栄光をささげることにほかなりません。―歴代上 29:10-16。
宮が実際に高所にあったことは,どうしてふさわしい事でしたか。そのため崇拝者には何が必要でしたか。宮の敷地に選ばれた土地は,ダビデの時代にどんな犠牲のささげられた重要な土地でしたか。
モリア山上の宮の敷地は,地中海の水面より720米以上高いところにありました。そこはアブラハムが息子イサクをささげるために祭壇を築いたところです。それは南に延びたオフエルの丘によってシオンの山と連らなっていました。いずれの方角からにしても,崇拝者は宮にのぼることが必要でした。(詩 122:1-4。イザヤ 2:2)ダビデがこの敷地を買ったのは,人々が疫病に見舞われていた時であり,エホバの天使は祭壇をそこに築くことを命じました。ダビデは犠牲をささげて,次のように述べています。「エホバ神の室はここなりイスラエルの燔祭の壇はここなり」― 歴代上 21:14–22:1,文語。サムエル後 24:10-25。
エホバの崇拝を高くあげる
ソロモンはどのようにして2回,王として油そそがれましたか。神はどんな預言的な目的のために,ソロモンの統治を導き,祝福しましたか。
ダビデの4番目の息子アドニヤが王位を継承しようと企てたとき,ダビデはソロモンに油をそそがせ,ソロモンを王にしました。のちに人々はこぞってソロモンに油をそそぎ,ソロモンに従いました。(列王上 1:1-40。歴代上 28:1; 29:20-28)その時から,神はソロモンの支配に導きと祝福を与えました。それはアブラハムのすえであり,ダビデの相続者である大いなるソロモンつまりキリスト・イエスによって,エホバ神の真の崇拝が高められることを表わし,またその支配によってもたらされる祝福を表わすためです。
ソロモンは何時,宮の建築を始めましたか。完成にどれだけの年月を要しましたか。
紀元前1034年の春に,ソロモンは宮の建築を始めました。ダビデが前以て準備したため,この壮麗な宮はわずか7年半の歳月を要しただけで,驚くほど容易に完成されました。しかし契約の箱を宮の至聖所に安置しないうちは,宮は完成したことになりません。献堂式の記録は次のように述べています。
宮のささげられた時,どんな大切な器が至聖所に安置されましたか。
「こゝに〔かりほずまいのいわいの時〕ソロモン……イスラエルの長老とすべてのわかれのかしらを……よび集む……祭司エホバの契約の櫃をその処に舁いれたり即ち家の神殿なる至聖所の中のケルビムの翼の下におさめたり,ケルビムは翼を櫃の所にのべ且ケルビム上より櫃とそのさををおほへり」― 列王上 8:1-7,文語。出エジプト 34:22。レビ 23:33-36。
広い意味のエルサレムに,こんど何が含まれるようになりましたか。それでエホバはどこに臨在されると言えますか。
シオンならびに宮の境内は,広い意味でのエルサレムに含まれるようになりました。それで奇跡的なシエキナの光によってケルビムの間に住んだ神は,エルサレムとシオンに臨在したのです。―詩 80:1; 99:1。イザヤ 37:16。民数 7:89。
宮をささげる祈りの中で,ソロモンは特に何を願っていますか。どんな理由のためですか。
イスラエル全会衆を前に,巨大な銅の祭壇にぬかづいたソロモン王は,宮を献ずる長い祈りの中で,御国契約の永続することを述べています。イスラエルが罪を犯して外国に捕われたとき,心から悔いてこの国の方角にむかい,エホバに祈るならば,エホバよ,願わくはその祈りに耳を傾け,あわれみをもって彼らをこの地に連れ戻して下さいと,ソロモンは祈りました。それは「地のもろもろの民にエホバの民なることと他に神なきことを知らしめ」るためです。―列王上 8:22-61,文語。
水の鉢と祭壇はどんなものでしたか。
祭壇の南には,「海」と呼ばれた,巨大な円形の水の鉢がおかれていました。それは直径4メートル半,高さ2メートル4分の1で,3頭ずつ異なった方角にむいた12頭の牛の像の上にすえられていました。(列王上 7:23-26)ソロモンが前に立って祈った祭壇は,ダビデが祭壇を築いた場所にあったに違いありません。それは縦横9メートルの正方形で,高さは4メートル半ありました。(歴代下 4:1-5)宮のささげられた日,その上にたくさんの犠牲が捧げられたのです。神は宮を是認したことを示しました。
エホバは,祭壇と宮を受け入れたことをどのように示しましたか。
「ソロモン祈ることを終へし時天より火くだりて燔祭と犠牲とを焚きエホバの栄光その家にみてり,エホバの栄光エホバの家にみちしによりて祭司はエホバの家にいることを得ざりき,イスラエルの子孫は皆火の降れるを見またエホバの栄光のその家に臨めるを見て敷石の上にて地にひれ伏して拝しエホバをほめて言へり善かなエホバその恩恵は世々かぎりなしと」― 歴代下 7:1-3,文語。
これらの事から見て,ソロモンは永遠の王権を持つ者であると言えますか。
ソロモンは永遠の王権を持つ,約束された者でしたか。そうではありません。しかしダビデの後継者であるソロモンは,エホバのみ名を崇め,また正義の支配とエホバの崇拝の促進によって民に幸福と繁栄をもたらすための宮を建立したことにおいて,永遠の相続者の支配を予影したのです。
宮の近くに何が建てられましたか。
次の13年間ソロモン王はモリア山から1キロ半あまり離れたシオン山上のダビデの町にある宮殿に住み,かついろいろな建物を造りました。ソロモンは,モリア山上の宮のすぐ南の少し低い土地に新しい王宮を建て,そのまた南に審判の廊,柱の廊,レバノンの森の家を建てました。―列王上 7:1-7。
ソロモンは,今どこから治めましたか。しかしパロの娘であったソロモンの妻は,なぜそこに住まなかったのですか。
ソロモンはこんど宮のあるモリア山から治めたのです。パロの娘であったソロモンの妻も,そのために建てられた新しい家に移り住みました。「我妻はイスラエルの王ダビデの家におるべからずエホバの契約の匱のいたれる処は皆聖ければなり」と,ソロモンが言ったように,彼女はダビデの家に住むことを許されなかったのです。―歴代下 8:11,文語。列王上 3:1; 7:8; 9:24。
予影された祝福
ソロモンの建造物は,見る者にどんな印象を与えましたか。
ソロモンの建造物は美しく,壮麗であり,それを管理する手はずもよく整えられていたので,見る者を驚嘆させました。シバの女王もその例外ではありません。(列王上 10:1-5)長年にわたったソロモンの統治は栄光と平和と繁栄に満ちたもので,民はふえひろがりました。
ソロモンの支配下に人々はどんな生活をしましたか。
「ユダとイスラエルの人々は多くて,海べの砂のようであったが,彼らは飲み食いして楽しんだ。ソロモンの一生の間,ユダとイスラエルはダン〔の町〕からベエルシバに至るまで,安らかにおのおの自分たちのぶどうの木の下と,いちじくの木の下に住んだ」― 列王上 4:20,25。
このすべては何の予影ですか。ダビデの王統にとって,これは何を意味しますか。
このすべてには預言的な意味があります。ダビデは永遠のみ国がその家に留まるとの契約を与えられました。ダビデの家から多くの王が出ましたが,永遠の王権を持つ者がやがて現われることになっていました。そのかたは偉大なるソロモン,キリスト・イエスです。すべての人が楽しみ,自分の土地に住んで,正義の支配の祝福に喜んだソロモンの統治は,大いなるソロモン,神の女のすえであり,平和の君であるキリスト・イエスの支配を予影しています。(マタイ 12:42。イザヤ 9:6,7)キリスト・イエスは不滅であるゆえに王権を永遠に保ち,位を持つダビデの王統を永遠に堅くするでしょう。しかし模型的なこの神の国と,それが第2の世界強国アッシリアと衝突するようになったいきさつについては,本誌の次号をごらん下さい。
[727ページの地図]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
モリア
神殿
王宮
シオン
ダビデの町
シロアムの池
オフエル
ミロ
ギホン
チロペオンの谷
ケデロンの谷
ヒンノムの谷
エンロゲル