「弱い者は強くされ」
1 エホバは何の源ですか。
エホバは命と力の真の源であり,「天を創造してこれをのべ,地とそれに生ずるものをひらき,その上の民に息を与え,その中を歩む者に霊を与えられる」かたです。(イザヤ 42:5)そして,苦難にある地上のしもべが助けと導きを求めるとき,エホバはご自分の霊つまり活動力によってその者を強くされます。―詩 34:8,15。
2 サムソンが本心にかえったことは何を表わしていますか。
2 サムソンの場合もそうでした。敵に力を奪われたサムソンは直ちに本心にかえりました。自分のあやまちを悟ったサムソンは神の前で悔い,ナジルびととしての献身を果たして再び神に仕える用意をしました。このことには一刻の猶予もありません。その髪の毛はそり落とされたのち,すぐに「伸び始め」ました。力がよみがえってきたとき,サムソンはふたたび「ペリシテびとを攻めようと,おりをうかが」いました。(士師 16:22; 14:4)同じように,1919年以来,心の底から悔い改め,死に至るまでエホバに仕えようと決意した神の「どれい」は,力がよみがえるのを知りました。「いのちの〔霊〕が,神から出て彼らの中にはいり,そして彼らは立ち上がった」。彼らは「終りの時」の精力的な活動のための用意ができたのです。―黙示 11:8-12,〔新世訳〕。ダニエル 12:1-4。
3 『めしひの民』はどのようにたずさえ出されましたか。どんな目的のために?
3 イザヤ書 43章8,10,11節の成就する時が来ていました。「目あれどもめしひ…のごとき民をたづさへ出でよ…エホバのたまはく,なんぢらはわが証人わがえらみし僕なり,さればなんぢら知りて我を信じわが主なるを悟りうべし,我よりまへにつくられし神なく我よりのちにもあることなからんただ我のみ我はエホバなり,われのほかにすくふ者あることなし」。(文語)エホバの民は第一次世界大戦の間,偽りの宗教家のため一時的にめしいにされましたが,今エホバの証人として確固とした奉仕をするため,とらわれの状態からたずさえ出されねばなりませんでした。もしめしいの状態が少しでも残っていたとするなら,それは全能の神のみこころ以外のことはいっさい行なわないというめしいでした。彼らは『うしろのものを忘れ』ようと心に決めていました。―ピリピ 3:13,14。
4 宴会をしたペリシテびとはなにを理由に自分の神をたたえましたか。
4 ペリシテびとの君たちは魚の神ダゴンに大きな犠牲をささげるために集まりました。それはおよそ600年後,ベルシャザルがバビロンで催したような宗教的な宴会でした。ベルシャザルはその席でエホバの宮からとって来た聖器を戯れ事に用いています。(ダニエル 5:1-4,30)しかし,ペリシテびとの宴席で悪口と嘲笑の的とされたのは,エホバの献身したしもベサムソンです。「(彼らは)共に集まって言った,『われわれの神は,敵サムソンをわれわれの手にわたされた』。民はサムソンを見て,自分たちの神をほめたたえて言った,『われわれの神は,われわれの国を荒し,われわれを多く殺した敵をわれわれの手にわたされた』」― 士師 16:23,24。
5 ペリシテびとのような今日の牧師はどんな点で一致団結していますか。
5 第一次世界大戦の終わりころ,キリスト教国牧師はエホバの証人が捕われの状態になったことを喜んだのです! 証人を完全に沈黙させたと考えた彼らは黙示録 11章10節の予告どおりのことをしました。『これらの者は彼らのことで喜び楽しみ,互に贈り物をし合った』。彼らはしいたげられたエホバの「どれい」をもてあそびました。そしてこの時以来,キリスト教国牧師および偽りの宗教の世界帝国の僧侶全体は,終始エホバの証人を嘲笑し,自分たちの偽りの崇拝の家に集まり,信仰合同運動によって互いの結びつきを深め,神に逆らい,建てられたキリスト・イエスによるエホバの御国に敵対してきました。彼らはエホバの証人に敵対するという面でいつも一致団結しています。
6,7 (イ)サムソンはなぜ獄屋から引き出されましたか。(ロ)エホバは現代のご自分の「どれい」についてどんな配慮をされましたか。
6 ダゴンの前での偶像崇拝にふけったペリシテびとは,「また心に喜んで言った,『サムソンを呼んで,われわれのために戯れ事をさせよう』。彼らは獄屋からサムソンを呼び出して,彼らの前に戯れ事をさせた」― 士師 16:25。
7 エホバはサムソンの時代に事の成り行きを支配しておられました。同じように,献身したエホバの「どれい」が1919年に宗教上の捕われからたずさえ出されたのはエホバの配慮によりました。自らは直ちに悟らなかったかもしれませんが,現代のペリシテびとはエホバの証人に対しもはや力をふるうことはできませんでした。エホバの証人は奉仕し,働くために出てきました。象徴的な髪の毛の『伸びた』彼らは教会指導者からの恥辱と非難に耐えました。1967年の今日に至るまで,「忠実な思慮深いどれい」,油そそがれたエホバの証人の残れる者は,エホバに強くされて忠実に奉仕し,エホバの至上権をあかしすると同時に,「苦しめられて見せ物にされ」てきました。―ヘブル 10:33。
「柱のあいだに」
8,9 ペリシテびとがサムソンを柱の間に立たせたことは何を表わしていますか。
8 そして『彼らはサムソンを柱のあいだに立たせ』た。これはダゴンの家の主要な柱です。非常に大きな家をささえたこれらの柱は巨大なものであったにちがいありません。実際,ガザにおける近年の考古学的な発掘では,巨大な礎石が幾つも発見されており,ダゴンの家の主柱はそのような礎石の上に並んでいたと思われます。―士師 16:25。
9 1919年以来,偽りの宗教家は神への忠実を守るエホバの証人をからかおうとしてきました。彼らは偽りの宗教の世界帝国,特にキリスト教国が希望の支柱とするものの間にエホバの証人を追い詰めようとしています。偽りの宗教の家のささえとして宗教家が塔より頼む柱は何ですか。
10,11 (イ)1914年以来,地上にどんな大きな問題が起きていますか。(ロ)このことを示す例をいくつかあげなさい。
10 キリスト教国が第一次世界大戦を起こした1914年を大きな転機として,国家主義は人間関係を支配する大きな要素となりました。非理性的な愛国心,たまたま自分の生まれた国に対する熱狂的な忠誠心が全地にうえつけられました。主要な宗教は自らすすんで国家主義の炎をあおり,国家への忠誠を全人類の創造者なる神への忠誠以上のものとしてきました。宗教家は他国にいる仲間の信者を無慈悲に殺すための大砲を祝福することさえしました。他方において彼らは政治支配者に依存し,人々を支配する自分たちの宗教の家をささえてもらっています。
11 その一例として,カトリック教会とムッソリーニとの提携があります。それによってバチカンは大いに権力を回復しました。またカトリック教会はヒトラーとも政教条約を結び,世界支配を目ざすヒトラーの戦いを支持しました。1940年8月,フルダで行なわれたドイツ司教会議において,出席した高位聖職者は,ドイツ軍による「ドイツ国土の防衛と前進」についてヒトラーに感謝しました。a プロテスタント教会もカトリックと並んで二つの世界大戦を支持し,戦士の士気を高めるため軍隊づき牧師を戦線の両側に派遣してきました。
12,13 (イ)宗教の「家」はほかのどんな柱に頼ろうとしていますか。(ロ)偽りの宗教の世界帝国がそのようなささえを求めていることはどんな証拠にうかがえますか。
12 しかし,偽りの宗教家が信頼してきた支柱は国家主義だけですか。これに加えてサタンは超国家的な機関を生み出しています。これは人類に真の平和と繁栄をもたらす神の手段,つまりキリストを王とする神の国に正面から反対するものであり,黙示録 17章8,11節に『平和の獣』として描かれています。これは二つの世界大戦の間に初めて出現し,第二次大戦中に衰え,その後ふたたび活発になってしばらくの間つづくものです。それはいま消滅している国際連盟およびその後身の国際連合です。
13 連盟設立のとき,偽りの宗教の世界帝国の一部であるキリスト教国の新教グループは,連盟を「地上における神の国の政治的な表現」と呼びました。b 現代の宗教家は連盟の後身である国際連合を地上に平和と繁栄をもたらす希望のささえとしていますか。国際連合設立二十周年記念にあたり,1965年6月27日付AP通信はサンフランシスコからこう報じました。
全世界20億以上の信徒を代表する国際的な宗教指導者7人は,今日,国連の平和への努力を支持して祈りのうちに会合した。法王パウロ6世はローマから祝福のメッセージを送った。カトリック教徒,新教徒,ユダヤ教徒,ヒンズー教徒,仏教徒,回教徒,ギリシャ正教徒から成るこの会議にそのメッセージを伝えたのはシリアの大司教である……ユダヤ教牧師ルイス・ジェイコブスは……「存亡を国連にかける今の世界において,恒久平和のための唯一の希望は国連である」と述べた。それで世界の宗教組織が国際連合を人類進歩のための希望の支柱とみなし,存続そのものを国連に託していることは明らかです。
14 ローマ法王は国連をどう見ていますか。
14 このことは1965年10月4日にアメリカを訪問した法王パウロ6世のことばにも裏書きされます。そのとき同法王は国際連合を「最も偉大な国際組織」と呼び,さらにこう述べました。
地上の人々は一致と平和の最後の希望として国際連合に期待をよせています……あなたがたの築きあげた建物は決して失敗に終わってはなりません。それは完成されねばならないのです。
15,16 神のことばは国家主義と国連の『平和の獣』の前途について何と述べていますか。
15 しかし,20世紀の宗教指導者がしきりに賛美する国家主義と国際連合をエホバ神はどう見ておられますか。この「終りの時」に地上を治める政治上の「王たち」についてエホバの預言者は述べています。「それらの王たちの世に,天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく,その主権は他の民にわたされず,かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです」。(ダニエル 2:44)このように,種々の宗教制度が支持をあおぐ国家主義的な政府は神の天の国によって打ち砕かれることが定まっています。
16 『平和の獣』国際連合については黙示録 17章5,14-17節が述べています。それによると,この『獣』は世界宗教制度からの現在の熱心な求愛を退けたのち,小羊イエス・キリストにより征服されます。預言は,この世界機構そのものから出る急進的な勢力「十の角」が,偽りの宗教の世界帝国つまり淫婦のごとき「大いなるバビロン」に向けられることを示しています。「十の角と獣とは,この淫婦を憎み,みじめな者にし,裸にし,彼女の肉を食い,火で焼き尽すであろう。神は……彼らの心の中に,御旨を行(う)……思いを持つようにされたからである」。世界の宗教が存続のための支柱として国際連合に頼ったことは無益に終わるでしょう。
「もう一度,わたしを強くして……ください」
17 サムソンが自分の立場を定めたことは何を予表していますか。
17 これら世界の問題についてエホバの証人はどんな立場にありますか。預言的なドラマに帰りましょう。「サムソンは自分の手をひいている若者に言った,『わたしの手を放して,この家をささえている柱をさぐらせ,それに寄りかからせてください』」。(士師 16:26)サムソンはペリシテびとを攻める機会を再び求めていました。同じように,現代のエホバの証人は論争の核心についてきっぱりした立場をとり,神の国と神の至上権を率直に支持してきました。彼らは世の宗教家が国家主義政策と戦争,および見当ちがいの連盟や国際連合に依存していることを暴露しました。
18 現代の「サムソン」はどのように「柱」に力をかけ始めましたか。
18 早くも1922年,オハイオ州シーダーポイントで開かれた国際大会において,エホバの「どれい」は次のことを宣言しました。
世界に現存する組織のすべてはサタンの帝国もしくは組織の見える部分を構成する。サタンの帝国は今や栄光の王の進軍の前に倒壊せねばならない……国際連盟規約その他同様の契約すべてを含め,それに根ざす国際会議および条約のすべては神の定めのとおりに失敗する……諸派の教会,その牧師,指導者,同盟者などは現存する地上の秩序を救って立て直し,平和と繁栄を招来することに努めているが,彼らはメシヤの国のいかなる部分をも構成しないゆえ,その努力すべては必ず失敗する……
こうして,現代の「サムソン」は論戦的な音信を宣明しはじめ,サタンの偶像崇拝的な宗教の家をささえる「柱」に強い力をかけました。
19 ペリシテびとが集まっていたことは何を表わしていますか。
19 聖書の記録は続きます。「その家には男女が満ち,ペリシテびとの君たちも皆そこにいた。また屋根の上には三千人ばかりの男女がいて,サムソンの戯れ事をするのを見ていた」。(士師 16:27)これは全員召集であり,集まるべき者は皆そこにいました。現代においても,キリスト教国牧師を先頭にした世の宗教指導者全員は,エホバの忠実な「どれい」,油そそがれたエホバの証人の残れる者をからかうため,自分たちの宗教の「家」に集まっています。しかし,これらエホバの証人はつのる非難攻撃をあびながら,どう行動しますか。
20 サムソンはどんな祈りをしましたか。このことは何を表わしていましたか。
20 「サムソンは,〔エホバ〕に呼ばわって言った,『ああ,主〔エホバ〕よ,どうぞ,わたしを覚えてください。ああ,神よ,どうぞもう一度,わたしを強くして,わたしの二つ目の一つのためにでもペリシテびとにあだを報いさせてください』」。(士師 16:28,〔文語〕)こうしてサムソンは失った目の一方をデリラとの恋で注意を怠った自分の責任に帰しました。しかし誠実に悔い改めた彼はエホバの許しを得ていました。サムソンは他方の目をペリシテびとの責任に帰しました。1919年当時,油そそがれたエホバの証人の残れる者は,さながらサムソンのごとく,獄からの解放について熱心にエホバに祈りました。彼らは,神のどれいの視力を悪意でそこない,結果としてエホバの清いみ名に非難をもたらした現代の「ペリシテびと」にあだを報いられるとき,エホバが彼らを力強く用いてくださることを求めました。エホバはその祈りに答えられましたか。エホバはすばらしいかたで強さを増し加えられました!
21 サムソンはどんな最期を遂げましたか。
21 「そしてサムソンは,その家をささえている二つの中柱の一つを右の手に,一つを左の手にかかえて,身をそれに寄せ,『わたしはペリシテびとと共に死のう』と言って,力をこめて身をかがめると,家はその中にいた君たちと,すべての民の上に倒れた。こうしてサムソンが死ぬときに殺したものは,生きているときに殺したものよりも多かった」― 士師 16:29,30。
22 (イ)こうしてエホバは献身したご自分の「どれい」にどんな保証を与えておられますか。(ロ)エホバは彼らを強くして今どんな音信を宣明させていますか。
22 このことは,今日地上で行なわれる平和な仕事と論戦的な仕事の最後に至るまで,エホバが献身したご自分の「どれい」を強くされることのすばらしい保証です。サタンの悪霊的な宣伝は続き,すべての人を熱狂的な国家主義と国連の『平和の獣』の支持にかり立てていますが,エホバの霊はエホバの「どれい」の上にあり,それを強めて「エホバの善意の年と,わたしたちの神の報復の日」とを宣明させています。(イザヤ 61:2,新世訳)まさにそのような宣明がなされたのは1963年,エホバの証人の「世界一周」大会においてです。そのとき世界24都市で45万4,977人が採択した決議は,次のことを率直に宣言しました。サタンの組織は「かつてないほど大きな艱難に直面しています。この大艱難にふるい動かされるとき,世のすべての政治組織と現代の宗教的バビロンはこなごなに砕け」ます。
23 残れる者のうち多くの者はどんな点でサムソンに似ていますか。
23 油そそがれた残れる者の多くは今地上の生涯を忠実のうちに終えようとしています。昔のサムソンのごとく,彼らは最後まで神の正義のための戦士であり,エホバの大いなるみ名の立証に存分に参加しています。彼らはキリスト教国の牧師のごとく恩給を得て退職することなど望んでいません。むしろ彼らは「死に至るまで忠実」であり,それゆえ約束のことばは必ず彼らに実現します。「今から後,主にありて死ぬ死人はさいわいである……そのわざは彼らについていく」― 黙示 2:10。14:13。
24 「サムソン」級の仕事はどのように終わりますか。どんな祝福を受けて?
24 神の「どれい」級そのものはサタンの制度の終わりを生きて通過することを期待しています。しかし,エホバのさばきを宣明する彼らの仕事は,偽りの宗教の家とサタンの組織の他の部分すべてが「荒れすたれ」るときに終わるでしょう。(イザヤ 6:11)名前に「破壊者」の意味を付せられたサムソンはまさにその名前のとおりでしたが,同じようにエホバはご自分の「どれい」が今宣明する破壊的なさばきを必ずこの地に執行されます。また,さばきびととしてのサムソンの活動がイスラエルに救いをもたらしたように,キリストを王とする神の国の支配は従順な人類に完全な救いと永遠の祝福をもたらす点で「太陽のよう」になるでしょう。c
エホバの霊に頼りなさい
25 サムソンの物語からどんな励みを受けますか。
25 サムソンのからだつきはいかにも堂々としていたでしょう。しかし,彼の力の真の源は人間的な体力でなく,いっさいのものを征服するエホバ神の霊にありました。道が長いのでしばらく手をゆるめ,あるいはやめようと思ったことがありますか。髪の毛を切られ,目をつぶされたときのサムソンのように,どんなに熱心なエホバのしもべでも失意する場合のあることを忘れてはなりません。しかし,祈りによってエホバに頼るなら,エホバが新しい力をいっぱいにしてくださったではありませんか。真理はわたしたちにとって非常に大切なものになっており,それを離すことは決してできません。それで,年を重ねるごとに,わたしたちは「主にあって,その偉大な力によって,強くな」っています。―エペソ 6:10。
26 サムソンのような献身はどんな祝福をもたらしますか。
26 ニュージーランド南部には開拓奉仕を続けている87歳の兄弟がいます。彼の妻は数歳年上ですが,やはり忠実な開拓者です。彼は1914年に自分の店を売りました。その年の秋に到来を予期された大崩壊の前に,たとえ数ヵ月でも「聖書文書販売人」として開拓奉仕をするためでした。彼は,『エホバよ,あなたがわたしを欺かれたので,わたしはその欺きに従いました』というエレミヤ記 20章7節のことばを好んで引用します。地上での自分の開拓奉仕はほんのしばらくの間だけと考えていたのに,実際には50年以上の長きにわたったからです。それは数々の試練とあざけりに面しながらも,報いの多い50年でした。最近の知らせによると,彼はサムソンのように今でも「強く」されています。彼はそのようにして生涯を送ったことを後悔していますか。いいえ,決してそうではありません。むしろ,若い人々に1914年当時の自分と同じ見方をすることを勧めています。開拓者となって福音を広めるすばらしい機会を今最大限にとらえなさい。残された時間が短かくても長くても,エホバの霊があなたをささえ,無限の祝福をもたらすでしょう。
27 エホバのことばはおさえがたいどんな力になりますか。
27 今日の神の民の多くと同じく,昔の預言者エレミヤは年の経過と共にきびしい試練に会い,「一日中,物笑い」になることもありました。あなたも,何年働いても自分の区域の人は無関心だと思うことがありますか。エレミヤはエホバの名で語るのをやめようとさえしました。しかしそのとき,「〔エホバ〕のことば」がおさえがたい力となり,さらに大胆な活動へと彼を動かしました。「〔エホバ〕のことばがわたしの心にあって,燃える火のわがうちに閉じこめられているようで,それを押えるのに疲れはてて,耐えることができません」。(エレミヤ 20:7-9,〔文語〕)エホバの御名とその立証のため,彼は熱心な奉仕を忠実に続けました。
28 サムソン級が再び弱くなるということはありえますか。なぜ?
28 今日でも同じです。エホバの民は『全世界に見せ物にされ』ています。(コリント第一 4:9)おりがあればあざけろうとする目が絶えずエホバの「どれい」を見ており,彼らが弱くなり,あるいは衰えるすきをうかがっています。それらの人々は神の証人に対して再び勝ちを得ますか。1919年以降の「忠実な思慮深いどれい」はこれをはっきり否定しました! 100万人以上の仲間の崇拝者を得た「どれい」は,エレミヤのように熱心にこう呼ぶことができます。「しかし〔エホバ〕は強い勇士のようにわたしと共におられる。それゆえ,わたしに迫りくる者はつまずき,わたしに打ち勝つことはできない……正しき者を試み,人の心と思いを見られる万軍の〔エホバ〕よ,あなたが彼らに,あだを返されるのを見せてください。わたしはあなたに,わたしの訴えをお任せしたからです」。(エレミヤ 20:11,12,〔文語〕)今日のエホバの証人は,エレミヤ,サムソンなど昔の忠信の人々と同じ強固な確信をもって,問題をエホバに任せています。
29 サムソンはどんな記録の中に含まれていますか。それからどんな励みを得ますか。
29 ヘブル人への手紙 11章の中で,サムソンは,「義を行い,約束のものを受け,ししの口をふさぎ,火の勢いを消し,つるぎの刃をのがれ,弱いものは強くされ」た昔の信仰の人の一人にあげられています。(32-34節)それでサムソンは『雲のように多い証人』の一人であり,その勇敢な行ないは,わたしたちが「参加すべき競走を,耐え忍んで走りぬ」くための励みとして記録されています。―ヘブル 12:1。
30 (イ)なぜわたしたちは忍耐を続けるべきですか。(ロ)わたしたちはどんな仕事に身をささげますか。
30 それで,キリストを王とする神の国が平和と永遠の命のための人間の唯一の希望であることを忍耐して宣明し続けましょう。国家主義的な政治勢力と超国家機構である国際連合が「ペリシテびと」の宗教と争う日は足早に近づいています。エホバが長年にわたりご自分の「どれい」に宣明させてこられたとおり,偽りの宗教の「家」の支柱は最後に「家」を見捨てるでしょう。地上にあるサタンの巨大な組織は,まずその宗教機構が,つぎに政治勢力が滅びて,完全に崩壊します。地上のすべての民を包む危機が高まるなかでひきつづき非難をあびても,わたしたちはエホバの戦闘的なさばきのおとずれを伝え,同時に『自分と教えを聞く者と』を救う平和な仕事を行なうことに力をつくします。―テモテ第一 4:16。
31 最後までどんな決意と確信をもつべきですか。
31 それで,「忠実な思慮深いどれい」と,この重大な仕事に加わり絶えず増加する「大ぜいの群衆」の双方を,エホバの霊がひきつづきささえられることを確信し,エホバの新秩序における永遠の命の賞を目ざして進みましょう。そして,サムソンの預言的なドラマから時機にかなった音信を学ぶわたしたちは,パウロの勧めのことばにかたく従うことを心に決めましょう。「目をさまし,かたく信仰に立ち,雄々しく,かつつよかれ」― コリント前 16:13,文語。
[脚注]
a フィラデルフィアのレコード紙。1940年8月28日付。
b アメリカキリスト教会連邦協議会の宣言。1918年12月12日。
c サムソンのドラマのさらに細かな点については,「ものみの塔」英文1935年11月1日号から1936年1月1日号までにのせられた5つの主要連載記事をごらんください。