神の怒の酒槽を避ける
『我はひとりにて酒槽をふめり,もろもろの民のなかに我と共にする者なし。われ怒によりて彼らをふみ,忿恚によりてかれらを踏にじりたれば,かれらの血わが衣にそそぎ,わが服飾をことごとく汚したり。』イザヤ 63:13
1 何を避ける方法を知つて,あなたはうれしく思いますか? そして,なぜ?
もし,自分の持つ貴重な生命の亡びを避け得ることができるなら,その避け方を知つてあなたは仕合わせに思わないでしようか。『全能の神の大いなる日の戦争』が戦われるハルマゲドンは,全人類に対する大きな酒槽のようです。今の時代に住む人の中,ごく僅かな者だけが,その亡びを避け永遠の死をまぬかれることができます。あなたは,この亡びを避けることができます。そして,世界的な規模を持つこの酒槽をふむ時と,その後にともなうよろこび,歌,そしてうれしい叫声に加わることができるでしよう。どのようにして,そうすることができますか。それを知ることは,全く有益なことです。
2 (イ)神は,人間の血の重要さを,どのように説明していますか?(ロ)不当に殺された人の生命に対して,神は全く至当にも,何を要求していますか?
2 体の血管中をとどこおりなく流れている血は,人間の魂としての生命を意味します。大いなる『生命の泉』であるヱホバ神は,血の重要さを示して,こう述べています『すべての肉の魂は,その中に魂を持つ血にある。』それで,他の人々の血を自分の体内に入れてはならないというヱホバの次のいましめは,全く理に合つた正しいものです。『それで,私はイスラエルの人々に言つた。「あなたがたは,どんな肉の血も食べてはならない。すべての肉の魂はその血だからである。すべて血を食べる者は,絶たれるであろう。』人類は,邪しまな行をなし,罪を犯したために,その罰として,生命を失いました。しかし,神は,人類の失つた生命を償う贖の犠牲,もしくはその生命を再び買い戻す価としての正しい犠牲の血を認められました。血は生命の価値を持つていますから,それは,公正な御業です。それで,神はこう言われました。『肉の魂は血にある。あなた方が,祭壇の上で自分の魂を贖うために,私はそれをあなた方に与えた。血はその中に魂がある故に,贖をする。』(レビ 17:11,14,新世。詩 36:9)ある生物を殺した場合に,その生物の生命を賠償するための適当な犠牲の血を神に捧げたとき,神はその血を嘉納されました。そのわけで,もし人が不当にも殺された場合には,その殺人者の血を流させることによつて,殺された者の生命を償わせよ,又は平衡させよと神の命じていることは,全く至当なことであります。
3 (イ)神は,ノアとその家族に対して,その規則をどのように述べられましたか?(ロ)現在,虹は何を示していますか? ノアとその家族は,どんな生残者を予表していますか?
3 4000年以上のむかし,世界全体に及んだ大洪水に生き残つた8人の生残者たち,つまりノアとその家族の者にむかい,ヱホバはその規則を告げられましたが,今日の私たちは,みなノアとその家族の子孫です。ヱホバ神は,動物の肉を食物として喰べてもよいという許可を彼らに与えて,こう言われました。『しかし肉を,その生命である血のままで,食べてはならない。あなた方の生命の血を流すものには,私はかならず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟である人にも,私は人の生命のために,報復するであろう。人の血を流すものは人に血を流される。神が自分のかたちに人を造られたゆえに。』(創世 9:4-6,新口)動物の犠牲の生命は,殺された人の生命を賠償することはできません。殺された人の仲間,つまり殺人者自身の生命だけが,神の正義の御要求に適うことができます。そのとき,ヱホバ神は虹を空に生ぜしめ,すべての肉を大洪水によつて二度と再び亡ぼさない,ということを示す永遠のしるしにならせました。だからといつて,その虹は次のこと ― すなわち,ヱホバ神は,世界的な酒槽のような手段で人間を亡すことはない ― を示しているものではありません。全世界に及んだ大洪水を生き残つた8人の生残者は,予言的な予表になりました。そしてこの予表から推して,ハルマゲドンにおける神の怒の酒槽で全人類が打ち潰されるときに,幸運な生残者がいることが保証されます。―創世 9:4-6,11-16,新口。マタイ 24:37-39。
4 生命の血をハルマゲドンで踏みつぶすのは,なぜ公正な行ですか?
4 洪水後にノアは葡萄酒をつくりましたが,そのために恐らく酒槽を用いたことでしよう。人の心をよろこばす葡萄酒をつくるときに,葡萄の血にあたる果汁は,酒槽で葡萄を踏む人の足に押しつぶされて,どくどくと流れ出ました。ハルマゲドンの全能の『神の大いなる日の戦争』の時に,人間の血は流れます。いままでに聞いたこともないような大規模な仕方で,人間の生命は失われます。そのとき,全能の神に手向つて戦う者たちは,災であります! 怒りに燃えた全能の神が公正な裁きをして生命の血を踏みつぶして流す故に大きな流血の罪は人類にあるのです。過去,人間の血が不当に流されたことは,有罪者の生命を打ちつぶすことによつてつぐなわれます。それは,人類に対する不正ではありません。当然の報いであります。
5,6 ユダとエルサレムのどんな経験から,キリスト教国に逃れることができない,ということが分りますか? 神は,イザヤを通して,その経験をどのように述べましたか?
5 流血の有罪者に対して,恐ろしい刑が執行されますが,そのときキリスト教国内には逃れる場所がありません。たとえ,キリスト教国が信心ぶつて,神を口にし,自分たちは神の民であると云おうとも,キリスト教国に避難所はありません。25世紀むかしのイスラエル人たちも,今日のキリスト教国と同じことをしました。しかし,彼らが故意に悪行を犯して,ヱホバとの契約を破つたとき,ヱホバは御怒りを表明して,エルサレムとユダの地を亡ぼしました。その際,イスラエル人が,神を口にして,神の民であると唱えていたことは,何の御利益にもならなかつたのです。ハルマゲドンのとき,不忠実なキリスト教国は,その予言的な型である昔のユダとエルサレムと同じような経験をするでしよう。神はどのような事態が起きるかを前もつて示し,こう述べています。
6 『視よ,ヱホバこの地をむなしからしめ,荒廃れしめ,これを覆えしてその民をちらしたもう。かくて,民も祭司もひとしく,……地はことごとく空しく,ことごとく掠められん。こはヱホバの言い給えるなり。地はうれえおとろえ,世は萎え衰え,地のとうときものも萎えはてたり。民おきてにそむき,法を犯し,とこしえの契約をやぶりたるがゆえに,地はその下にけがされたり,このゆえに,呪は地をのみつくし,そこに住める者は罪をうけ,また地の民はやかれて僅ばかり遺れり。』― イザヤ 24:1-6。
7 ヱホバは,ユダとエルサレムの地を,どのように覆えしましたか? それを為した理由は,何でしたか?
7 神は,どのようにユダとエルサレムの地を覆えしましたか。地は,さながら,なにかで充ち充ちている皿のように,ユダヤの住民で充ち充ちていました。それでヱホバは地を,その皿のように取り扱つて,ひつくり返してしまい,その地の住民を投げ出して地から追い出し,外国の地に追いやつてしまいました。それより以前に,ヱホバは,偶像崇拝していた殺人王アハブの首都サマリヤにも同樣な処置を取られ,そしてこう言われました『見よ,私はエルサレムととユダに災をくだそうとしている。これを聞く者は,その耳が二つながら鳴るであろう。私はサマリヤをはかつた測りなわと,アハブの家に用いた下げ振りをエルサレムにほどこし,人が皿をぬぐい,これをぬぐつて伏せるように,エルサレムをぬぐい去る。私は,わたくしの嗣業の民の残りを捨て,彼らを敵の手に渡す。彼らはもろもろの敵のえじきとなり,略奪にあうであろう。』このように,地をぬぐいさる理由の一つは,エルサレムの王であるマナセについての次の言葉に述べられています。『マナセはヱホバの目の前に悪をおこないて,ユダに罪を犯させたる上に,また罪なき者の血を多く流してエルサレムのこの極よりかの極にまで充せり。』(列王紀略下 21:10-16,新口)災を告げるこの明白な予言は,約100年の後に成就しました。
8 地はくつがえされることにより,なぜ正しい状態にならなかつたのですか? 地は,何時正しい状態になりましたか?
8 ユダとエルサレムの地がくつがえされることにより,それは正しい状態になつたのでしようか。いいえ,そうではありません。バビロン人によつて,エルサレムとその宮は亡ぼされ,ユダの地は壊滅して人ひとり残らず,家畜すら1匹も残らなかつた程でした。以前その地に住んでいた生残者は,バビロンの囚人になるか,又はエジプトに逃げのびました。地は,さながら把手のない皿を空にするようにくつがえされました。それで,人気のない地は,荒野,密林,荒莫とした荒地となり,悲しい鳴き声を立てる獣や鳥で充ちました。それは,ユダの地の正しい状態ではありません。神は,御自分の約束にしたがつて,その地を選民に与え,選民の住所にいたしました。その故に,70年の荒廃の期間中,地に安息を与えてから,神はバビロンをくつがえして,御自分の民の忠実な残れる者をバビロンからエルサレムに連れ戻し,かくして,エルサレムを再建して,その宮を再興し,地に人を再び殖やされようとなされました。地はその日に生れ,正しい状態となりました。丁度皿が正しく起されたように,その地は,ヱホバを讃美して崇拝した住民たちで充されました。これは予言的な模型であつて,これにより,ヱホバ神は御自分の忠実な残れる者を救い出されてハルマゲドンに生き残らせるということが分ります。―イザヤ 45:17-22; 66:8,9。歴代志略下 36:17-23。
9 ヱホバがユダの地に対して為された御処置は,打ち潰すどんな経験になぞらえられていますか? このことは,キリスト教国について,何を示していますか?
9 ユダの地と,その聖都と宮は,恐ろしいばかりに荒廃してしまいました。その大部分の人は,剣や飢饉や疫病で殺され,その生残者は捕われ人になつて,敵の地に追放されました。それは,ヱホバの御手からなされましたが,それは彼らがヱホバの契約を破り,無罪の者の血を流してその土地を汚したからです。それは,丁度ユダの地を大な酒槽に入れて,ヱホバがそれを踏まれた状に似ています。多勢の人はその生命を失い,有罪者はその血を流しました。(エレミヤ 2:21。イザヤ 5:1-8)予言的な哀歌を書いた人は,そのことを歎き,こう述べています。『ヱホバその烈しき震怒の日に,我をなやまして,われに降したまえるこの憂苦にひとしき憂苦また世にあるべきや考え見よ。……主われを敵りがたき者の手にわたしたまえり。主われの中なる勇士をことごとく除き,節会をもよおして我を攻め,わが少き人を打ほろぼしたまえり。主酒槽をふむがごとくにユダの処女をふみたまえり。ヱホバは正し,我その命令にそむきたるなり。』(エレミヤ哀歌 1:12,14,15,18)ハルマゲドンの時に,ヱホバは酒槽をふむように,キリスト教国をふみますが,そのとき,どのような状態になるかが,この哀歌から分ります。キリスト教国は世界中にひろがつているため,それはもつと悲惨なものでしよう。血で汚されているキリスト教国の中に,逃れる場所があるなどと考えてはなりません。
10,11 (イ)ハルマゲドンの亡びを避けようとするとき,なぜこの古い世には逃れる場所がないのですか?(ロ)『地の葡萄』の中に逃れることを,なぜ避けねばなりませんか?
10 この古い世には,逃れる場所はひとつもなく,又古い世にいては,ハルマゲドンの亡びを避けることができません。異教国だけでなくキリスト教国の国を含むすべての国は,世界全部にひろがる酒槽が踏まれるように,打ち踏まれてしまいます。この世の組織制度は,全世界にひろがつて悪い実で充ちている大きな『地の葡萄』のようです。いまや,全部の葡萄が根こそぎに引き抜かれて,打ちくだかれ,その生命の血がすつかり流される時です。自分はキリスト教である,と主張するキリスト教国の国々を含むすべての国々は,戦争を行い,地を血で染めました。そして,神の御国が天で1914年に設立し,またヱホバの証者がこの御国の誕生を世界的に宣明し始めて以来,諸国民はいまや悪の絶頂に達し,ヱホバ神と御座についた王イエス・キリストに対して戦争を準備しています。
11 現在の原子爆弾時代に,この国際的な『地の葡萄』の実は,まつたく熟しきつており,この巨大な葡萄の実を刈り入れる時機は近づき,その根,枝,そして実を引き抜いて神の怒の酒槽に投げこむ時は切迫しています。ヱホバ神は,いま御自分の証者に,次の挑戦の言葉を述べしめ,不敬虔の実の成熟する事を促進させております。『もろもろの国に宣つたえよ。戦争の準備を為し,勇士をはげまし,軍人をことごとくちかより来らしめよ。なんぢの鋤を剣に打ちかえ,汝らの鎌を鎗に打ちかえよ。弱き者も我は強しと言え。四周の国々の民よ汝ら急ぎ上りて集まれ。ヱホバよ,汝の勇士をかしこに降したまえ。国々の民よ起て上りヨシャパテの谷に至れ,かしこに我座をしめて,四周の国々の民をことごとく裁かん。鎌をいれよ,穀物は熱せり。来り踏めよ,酒槽は充ち,甕は溢る,彼らの悪大なればなりと。かまびすしきかな,無数の民,審判の谷にありてかまびすし。ヱホバの日審判の谷に近づくが故なり。』(ヨエル 3:9-14)現在,この『地の葡萄』の技の中に避難して,その枝の一つになるか,又はその下に坐するかして,その実を楽しむならば,その葡萄ともどもに,神の怒の酒槽の中に入れられて亡ぼされてしまいます。ほんとうに,そのように打ち潰されるのを避けるべきです。
12 神がこの世の生命を打ち潰す一つの際立つ理由は,何ですか? このことで,何が特別に罰をうけますか?
12 神はこの世の組織制度を打ち潰してしまいます。その際立つ理由の一つは,この世の組織制度が非常な流血の罪を持つていることです。その罪を罰しなければなりません。これは,なにもこの世の政治,商業,社会制度だけに言えるものではなく,この世の宗教にも言えるのです。この世の宗教は,みな国際的な連盟である国際連合と交つており,国際連合を支持しています。この世の宗教は,大いなるバビロンである大淫婦と象徴されています。その淫婦は,七つの頭を持つ獣の背に乗り,ヱホバの『主の主,王の王』に手向つて戦をしかけます。地上になされた不正な流血のことごとくは,偽の宗教のためです。それで,この神秘な大いなるバビロンは罰せられるべきです。黙示録の幻を見たヨハネは,大淫婦に刑が執行される直前,その流血の有罪さを指摘して,こう述べています。『私はこの女が聖徒の血とイエスの証者の血に酔いしれているのを見た。……また,予言者や聖徒の血,さらに,地上で殺されたすべての者の血が,彼女の中で見出された。』(黙示 17:6; 18:24,新世)正義の神は,ハルマゲドンの裁きを為し,その時この世のすべての宗教のなした胸のむかつくような残忍な流血の罪を罰します。
13 この裁きの御業について,天の大軍は何と言いますか? 有罪者は,どのように自分自身の血を飲みますか?
13 この裁きの御業の故に,天の大軍はヱホバを讃美しつつこう言います『ハレルヤ,敵と栄光と力とは,われらの神のものであり,そのさばきは,真実で正しい。神は霊的な姦淫で地を汚した大淫婦をさばき,神の僕たちの血の報復を彼女になさつたからである。』血に充ちるこの世の宗教の長い記録は,今や明るみに出されねばならず,またバビロン的な宗教の煽動をうけて,無実な者たちの血を流した者共への将来の裁きは,神が正義な方であることを示さねばなりません。『あなたは正義な方であられる……なぜなら,聖徒と予言者たちの血を流した者たちに血を飲ませられたが,それは当然なことである。……たしかに,全能のヱホバ神よ,あなたの裁きは真実にして義しい。』(黙示 19:1,2; 16:5-7,新世)有罪者たちは,ハルマゲドンの時に当然殺されてしまい,自分自身の血を飲まされるでしよう。―イザヤ 49:26。