『彼の救の良いたより』
『日ごとに彼の救の良いたよりを宣べ伝えよ』― 詩 96:2,新世。
1 第一次世界大戦中,私たちはどんな不思議な事柄を経験しましたか。そのとき以来,この世にはどんな種類のたよりしかありませんか。
1914年このかた,私たち人間は不思議な事柄を経験しています。それは,以前にかつて無かつた事柄であり,ニュースの種となつた事柄です。その年に,真実に『世界的』な規模を持つ第一次戦争が勃発しました。その戦争に参加した16ヵ国と帝国は,国民を総動員してこの地球全体に及んだ戦に一致して当ることが必要と知つたのです。飛行機による空からの戦も,始めて登場しました。戦争の兇猛性が加わわるにつれて,化学的なガス戦争が始まり,戦線に立つ青年たちは,ガス襲撃を受けても呼吸をして生命を保つために,見るからに醜悪なガスマスクを着用することが必要だつたのです。砲火による移動弾幕とか,気球や水雷を張りめぐらすことなども,初めて現われました。ドイツ軍の巨大な大砲は,30マイル離れたところから最初の発射弾をパリーに打ちこみました。1916年の9月,鉄の覆いをつけた最初の動く要塞,すなわち無限軌道の車を持つ英国の戦車は全世界を驚かしました。この戦車は,凸凹のある場所であろうとも,敵を急速にひき砕いてしまつたのです。この地のものとは思えぬ巨物は,情け容赦なく砲火を浴せかけあらゆるものを残酷に打ち砕いて行きました。死者の数を,増したものとして,悲常な食糧不足や飢饉,死をもたらす疫病や悪疫が襲つてきました。また,人々は,移動をし,強い憎しみの気持が煽られ,そして自分の宗教的な信仰や原則に忠実な小さな群は迫害を受けました。かつ共産主義者ボルシエビキ国家が初めて設立されました。そのとき以来,この古い世には悪いたよりしかありません。
2 アメリカナ百科事典に述べられているごとく,その時以来この世はどのように昔と同じものでなくなりましたか。
2 この最後の言葉は,異論の余地が無い程たしかです。1914年前から生存していた人々は,そのとき以来この世界は昔とは全く違つてしまつた,ということを知つています。この事実に関連して,アメリカナ百科辞典(英文)は,1914年に始まつた世界戦争を論じて,次のように述べています,『1918年に終結した大戦争は,国境を変えただけでなく,実際のところ人間生活のあらゆる興味や性格をも変えたのである。この大戦争の為に,政府,法律,国際関係,民主主義,自由,商業,工業,経済,労働,その他を裏づける,と今まで受け入れられた基礎的な原則も根底からくつがえされるに至つた。20以上の王位が潰滅し,以前の王者も,亡命して身の安全を図つた。努力のあらゆる分野において,再び価値づけることや,再び陳述することが必要になつた。1918年の大事変には,世界人口の93パーセントが関係した。中立の級に入る国々の人口は全部で僅か1億3000万人であつたが,一方戦争に参加した国々の人口は全部で17億人もいたのである。』まつたく,それは世界戦争でした。しかし人類最初の世界大戦です。それにより,世界は二度と変らない大変化を遂げるにいたつたのです。状態を改善しようとする政治,商業,宗教の努力が払われたにもかかわらず,1914年以来の変化は,悪化の一路を辿り,最近では最悪の事態に達しています。この世の著名人が,世界状態の悪化について語る言葉をここに引用する必要はありません。『ものみの塔』の読者は,著名人の悲観的な言葉を『ものみの塔』の中や,他のものの中で,すでに読んでおります。
3 この世の悪いたよりが,絶えず沢山ある故に,私たちはどんな大切な質問を尋ねるようになりますか。私たちは,どのようにその質問に答えることができますか。
3 悪いたよりはひつきりなしに来て,人間の将来に対する堅実な希望はひとつもないために人間の心は病んでいます。自殺の増加は,この事を証するものです。また入院患者であろうとなかろうと,精神病患者の数が急増していることや,人心を惑す快楽に対する熱狂的な,狂気じみた無意味な探求は,そのことを証するものです。しかし,今日に良いたよりは無いのでしようか。ひとりとか,一家族とか,あるいは興味を持つ民の一つの限られた群に対する良いたより,というのでなく,全人類に対する良いたよりは無いのでしようか。悪いたよりを全部集めても,それらが全く圧倒される程に重要なたよりは,ないのでしようか。良いたよりを持つ源はないのでしようか。そのような良いたよりを,私たちのところに間ちがいなく伝える径路はないのでしようか。たしかにあるのです! その源は,この径路を通して,あらゆる悲惨な状態やその結果からの救の良いたよりを私たちに伝えているのです。そのたよりの源こそ,いちばん重要なものです。それではその源とは誰ですか,何ですか。それは神です! だが,『神』と言われるものはたくさんあります。インドだけでも幾十億いう神々があるのです。すべての神々の中のどの神が,唯一つの良いたよりの源ですか。その神の名前は何ですか。
4 神の名前についての質問の答えをして頂くよう,誰にお願いしますか。なぜ?
4 『ものみの塔』が,自己の権威にもとづいてこの肝要な質問に答える,とするなら,その300万人の読者以外の人々は,重要なものとして採り上げないかもしれません。それで,ひとりの人にその答を述べて頂くようお願いいたします。その人の名前は,19世紀のあいだ世界中で知られ,かつその生涯と音信は数えれ切ぬ程無数の人々に,永遠の福利に導く影響を及ぼした人,すなわちイエス・キリストです。私たちは,その答をして頂くようイエスにお願いしますが,いわゆるキリスト教国にはお願いしません。
5,6 (イ)その人は,その質問にどう答えましたか。(ロ)地上にいるヱホバの証者は,真実に良いたよりをどのように得ますか。
5 このイエス・キリストが『天の御国』の音信を伝道してまだ間もないとき,彼は同郷人たちの土曜日ごとの宗教的な集会所の中に立ちました。彼はそのときまでの30年の生涯の大部分を,その地の人々と共に過したのです。その手中に700年も昔のイザヤの予言の巻を持ち,それから61章の1節と2節を読みました。イエスの読んだところは,こうです,『ヱホバの御霊は私にのぞんでいる。ヱホバは,貧しき者に良いたよりを宣べ伝えるため,私に油を注いだ。捕われ人のゆるしを伝道し,盲の目を開き,打ちひしがれた者に自由を得させ,ヱホバの受けいれ給う年を宣べ伝えるために,ヱホバは私をつかわした。』その後,イエスは聞いている者にむかい,『あなた方のいま聞いたこの聖句は,今日成就された。』と告げました。―ルカ 4:16-21,新世。またイザヤ 61:1,2をも見て下さい。
6 それでイエスの言葉によると,ヱホバは良いたよりの源であり,ヱホバはイエスに聖霊で油を注ぎ,貧しい人々,捕われていた人々,盲の人々,打ちひしがれた人々,柔和な人々,心を傷めている人々,嘆き悲しむ人々にこの良いたよりを伝道させました。あなたはこのような人々のひとりですか。イエスは,自分の伝道を裏づけるために,いつも聖書から引用しました。なぜなら,聖書はヱホバ神の霊感をうけた御言葉だからです。その書の中に,イエス・キリストの父なる神,ヱホバからの良いたよりが書き記されています。イエスがイザヤ書 43章10,12節を開いたとするなら,次の言葉を読んだことでしよう,『ヱホバ宣給わく,なんじらはわが証人,わがえらみし僕なり。されば,なんじら知りて我を信じ,わが主なるを悟り得べし。我より前につくられし神なく,我より後にもあることなからん。……なんじらはわが証人なり,我は神なり,これヱホバ宣へるなり。』イエスは昔も今も『ヱホバ神の忠実にして真の証者』である,と彼御自身も告げておられます。地上にいるヱホバ神の証者たちは,ヱホバ御自身だけから真実に良いたよりを得ています。彼らはヱホバ神の書なる聖書に頼ることにより,ヱホバ神から良いたよりを得ます。聖書は,良いたよりの唯一の源の本です。ヱホバ神は,地上の他の本や宗教的な書物に御自分の名前を記したり,つけたりしません。ヱホバの真の証者たちは,長なる証者イエス,キリストの為したと同じことをしなければなりません。すなわち,その音信は神の言葉なる聖書にもとづかねばならないのです。―黙示 1:5; 3:14。
7 イエスの宣べた良いたよりは何でしたか。その故に,イエスは驢馬に乗つてエルサレムに入つたとき,人々はどのように叫びましたか。
7 明確に言つて,イエスの宣伝えた良いたよりとは何でしたか。それは,今日の私たちにも良いたよりでしようか。イエスの生涯について述べる聖書の歴史は,次のように語つています,『イエスは,神の国の福音を説きまた伝えながら,町々村々を巡回し続けられた。』(ルカ 8:1,新口)地上における人間としての生涯を終えるときに,イエスはエルサレムの審判所内でローマ人の総督ポンテオ・ピラトの前に立ちました。『あなたは王なのだな』とのピラトの質問に答えて,イエスは次のように答えました,『あなたの言うとおり,私は王である。私は真理についてあかしをするために生れ,また,そのためにこの世に来たのである。だれでも真理につく者は,私の声に耳を傾ける。』(ヨハネ 18:37,新口)その日の後刻,ナザレのイエスは苦しみの杭に釘づけにかけられましたが,頭上には『ユダヤ人の王,ナザレのイエス』と記す標がつけられていました。(ヨハネ 19:19,新口)それより僅か4日前には,イエスは,丁度イスラエルの国の昔の王が戴冠式のときになしたと同じように,驢馬に乗つてエルサレムに入りました。そして,ローマからの独立を欲し,またユダの支族に属するダビデの王統の王を欲していた人々は,よろこびに充ちて次のようないろいろな叫びを挙げたのです,『ヱホバの御名によつて来る王に祝福あれ! 天には平和,高きところには栄光あれ!』『救い給え! ヱホバの御名によつて来る者に祝福あれ! 私たちの父ダビデの来るべき御国に祝福あれ! いと高きところに,救い給え。』『ダビデの子よ,救い給え! ヱホバの御名によつて来る者に祝福あれ。いと高きところに,彼を救い給え。』― ルカ 19:38。マルコ 11:9,10そしてマタイ 21:9,新世。
8 ヱホバは彼らの祈に充ちた叫びにどう答えられましたか。
8 ヱホバ神は,人々の祈に充ちた叫びに答えられました。彼は王なる子イエス・キリストをたしかに救いました。しかし,それは苦しみの杭の恥辱と残酷さからの救ではなく,キリストが杭の上で受けた死からの救でした。イエスの死後3日目に,ヱホバ神は彼を死からよみがえしました。それから50日経たない中に,ヱホバはイエスを天の御自分の右に坐らせ,そして神の予定の時 ― 御国を設立して天と地にあるすべての敵を王なる御子の足下に置く時 ― まで待たせました。―使行 2:32-36。詩 110:1,2。
昔のたよりは良くなる
9 そのたよりの良さは,今日どのように拡大されましたか。イエスの弟子たちは,今日何を持つ,とイエスは保証しましたか。
9 19世紀前に,イエスとその弟子たちの宣伝えた御国の音信はその当時までのいちばん良いたよりでした。それは貧しい者にたいする自由のたよりでした。それは柔和な人々を元気づけました。それは傷められた心を癒しました。それは宗教的に盲な人々の目を開きました。それは,この世の圧迫や束縛によつて打ちひしがれた人々を自由にしました。それは,悪い宗教的な状態の故に嘆くすべての人々を慰めました。1900年の年月が経つているにしても,御国の音信の良い事はすこしも減少していません。それは今でも良いたよりです。しかし,今日ではそのたよりの良さは拡大されているのです。なぜ? なぜなら,長いあいだ待つていた神の御国は,御子イエス・キリストによつて設立されているからです。それは,御子が19世紀のあいだ,神の右に坐していた,天の御座で設立されたのです。それは,世界を変化した最初の世界戦争が始まつた年と同じ年,西暦1914年に設立されました。キリストによる神の御国がこの地上にも力を及ぼして,地上の悪しき状態を打砕くように,祈れ,とイエスは私たちに告げました。彼は私たちに次の祈りを教えました,『天にいます我らの父よ,御名があがめられますように。御国が来ますように。みこころが天に行われるとおり,地にも行われますように。』(マタイ 6:9,10,新口)いまから19世紀のむかし,地上にいたヱホバの証者たち,すなわちイエスとその弟子たちは,来るべき御国の良いたよりを大胆に宣べ伝えました。1914年以来の今日,同じくヱホバの証者であるイエスの真の弟子たちは何をしなければなりませんか。彼らはすべての国,種族,家族,そして言語の人々に,神の与え給うた語ることのできる音信,良いたよりを持つていますか。イエスの今日の弟子たちは,それを持つであろう,とイエス・キリストは保証しました。
10 イエスは,今日の弟子たちの業を,何に結びつけて予告しましたか。そして,どのように?
10 霊感を受ける予言者のまぼろしをもつて将来を見越したイエスは,1914年以来の現代の出来事を予見し,予告しました。イエスは,飢饉,疫病,地震,そして宗教的な迫害をともなう第一次世界大戦を予告しました。それらの事柄は,みな神の御国が遂に権力を取り,この地に対して支配していることを目に見えて示す地的なしるしです。それから,イエスはその時,つまり私たちの時,における弟子たちの業を予告しました。その業とは,世界大戦や別の宗教的な人々の迫害に参加することにより,地上のくるしみ,悲しみ,そして犯罪を増す業でしたか。全くちがいます! イエスは,弟子たちの為すよろこびに充ちる慰めの業を前もつて指摘して,次のように語りました,『そして(第一次世界大戦後)この御国の福音は,すべての民に対してあかしをするために,全世界に宣べ伝えられるであろう。そして,それから(この組織制度の)最後が来るのである。』(マタイ 24:7-14,新口)設立された神の御国についてのこの証は,戦争で不具となったこの組織制度がハルマゲドンの戦で全く終る以前に与えられねばなりません。
戴冠の詩篇
11 神の御国の設立されたことは,何に値しますか。そして,なぜ?
11 この反逆の地を支配する神の天的な御国が設立されたことは,戴冠の歌に値するものです。それは,愛する御子イエス・キリストが全人類に対する任命された王として,王冠を受けることを崇める歌です。33年にイエスが王のごとき様子で驢馬に乗つてエルサレムの都に入つたとき,宮にいたユダヤ人の宗教的な支配者たちは,イエスに王冠を捧げる機会を逸しました。イエスが,ずつと昔にエルサレムにあつたヱホバの御座に坐つた有名なダビデ王の約束された子なることを,彼らは認めなかつたのです。(歴代志略上 29:23)彼らは,『ダビデの子よ救い給え』と叫んで,イエスと共に王の都に入つたよろこび溢れた群衆の気分を持つていなかつたのです。
12 ダビデ王は,どのように私たちのために戴冠の歌を作曲しましたか。私たちは,なぜそれを歌わねばなりませんか。
12 昔の王であつたダビデは,ヱホバが全地に対して力を取られるような場合に,戴冠の歌のふさわしいことを示しました。ダビデは,神の臨在の見えるしるしを有していました,それは,エルサレムの王都に持ち入れて,王宮の近くの天幕に置いた契約の金の櫃です。それで,ダビデは戴冠の歌を作成して歌いましたが,その主題は次のごとくすばらしい最高潮に達していたのです,『天はよろこび,地は楽しむべし。もろもろの国の中に言え,ヱホバは統治めたもう。』(歴代志略上 16:23-33)ダビデ王は,ヱホバの聖霊の導きの下に,同じ主題を改修して新しい詩篇をつくりました。この詩篇は,次のことを示しています。すなわち1914年に神の御国が設立されて神の忠実な復活を受けた御子が天の御座に即いたからには,私たちの時に,戴冠の歌はいま大規模に歌われねばならぬ,ということです。詩篇の書の中で,これは詩篇 96篇です。そして,戴冠詩篇の一つとして知られています。大即位と栄光に輝く戴冠は,光輝赫々たる天廷で行われました。その事実についての必要な証跡は,1914年以来ことごとくあるのです。それで,この戴冠の詩篇に命ぜられていることは,みな遂行されねばなりません。信仰の目を有する今日のヱホバの証者は,それらの事柄を行つています。どんな事柄ですか。
新しい歌
13 詩篇 96篇1-3節は,どんな事柄を述べていますか。科学のどんな最新の発明は,ヱホバに歌うべき新しいものでないのですか。
13 『新しい歌をヱホバにむかいて歌え。全地(の民)よ,ヱホバに向いて歌え。ヱホバに向いて歌い,その御名をほめよ。日ごとに彼の救の良いたよりを宣べ伝えよ。もろもろの国の中にヱホバの栄光を語り,すべての民の中にヱホバの奇しき御業を告げよ。』(詩 96:1-3,新世)普通の爆薬の幾百万トンに匹敵する恐ろしい爆発力を持つ水素爆弾は,近代科学の一番新しい発明品に入つています。しかし,それはヱホバにむかつて歌う新しいものでありません。科学者たち自身が指摘しているように,幾十億年のむかしヱホバ神は太陽内に水素の熱核爆発を生ぜしめました。かくして,人類がこの地球上に生存し得るように,地球に光と熱を供給しているのです。爆弾,長距離の発射弾,原子潜水艦,そして他の軍事発明品や,20世紀科学の商業製品は,ヱホバが科学者たちに導きと啓発を与えて行わせた『奇しき御業』でありません。そして,それらのものでヱホバを讃える歌を歌うべきでありません。科学者たちは,神と人間の悪しき敵であるサタン悪魔に仕えることによりヱホバを嘲笑しています。そして,ヱホバが人間に創造し給うた頭脳を悪く用いることを好みます。
14 どんな事柄は,私たちに『新しい歌』の主題を供給しますか。そして,なぜ?
14 たしかに,現代の科学の発明や発展は,新しいよろこびの歌の主題に決してなりません。1914年以来,ヱホバの民にヱホバ讃美の『新しい歌』の主題を供給するひとつの大きい圧倒的な事柄とは,ヱホバの御国政府の誕生です。ヱホバは,長く待ち給うた御子イエス・キリストにその御国政府を委ねています。そのことは,約6000年のむかし人間の最初の地的な家,エデンのパラダイスで約束されましたが,西暦1914年まで,約束された裔イエス・キリストによる神のこの御国のようなものは天にも地にも存在しなかつたのです。(創世 3:15)1914年以前では,キリストを頭となし,最高の神ヱホバがその中に住まわれ,そして生ける宇宙全部を支配する首都の制度はなかつたのです。ヱホバはその制度を通して御自分の御意を宇宙内に行います。(ピリピ 2:5-11)これは全く新しいもの,栄光に輝く新しいものです。そして,それはすべての善意者と聖なる御使たちにたいする祝福を意味します。このことを認識すると,人は胸を開いて歌を歌い出すようになります。それは,主題が全く新しい,全く異つた新しい歌を求めます! ヱホバは御国を始めることにより,このことを可能にいたしました。ヱホバにむかい,ヱホバの誉の為に新しい歌は歌われねばなりません。
15 誰に向かつて『全地(の民)』と言われていますか。彼らは詩篇を成就するどんな事柄をしていますか。
15 『全地(の民)』は,ヱホバにむかいて歌い,ヱホバの御名を讃えよと,すすめられています。それはこういうことです,ヱホバが制度内で霊的なイスラエル人にしたあなた方は,全国民の中でヱホバの証者でなければならぬ,ということです。神が最初にこれらの真理を啓示し,最初にこの新しい歌を歌うように教えたのは,他ならぬあなた方でした。天的な御国内でイエス,キリストに交るあなた方霊的イスラエル人は14万4000人である,と神は予め定め置かれました。それは,ダビデ王がかつて統治していた地的なシオン山の上でなく,王の支配の座なる天的なシオン山の上です。19世紀のあいだ,イエスは天に居られ,御父の右で栄光をうけました。しかし,神の支配する御国が設立されて以来,ヱホバの忠実なクリスチャン証者,すなわち霊的なイスラエル人の大部分は,シオン山で即位したキリストと共に栄光を受けました。どのように? 彼らを,死から復活して天における不滅の霊者としての生命を与え,『神の性質』を持たせることによるのです。神の天的な御国の14万4000人の相続者の中,僅かな数の残れる者だけが今でも地上にいます。しかし,まだ地上にいる残れる者も,また勝利の中に復活した御国相続者も,14万4000人の全部は,ヱホバの讃美を歌つています。すべての者は,目に見ても見えなくても,互いに協力し合い,宇宙的な歴史上における奇しき新しい事実を知らせています。黙示録 14章1-4節は,その壮大な有様を示しています。
16 ヨハネは,彼らが何をしている幻を与えられましたか。
16 そのまぼろしを初めて見た使従ヨハネは次のように書いています,『なお,私が見ていると,見よ,小羊(かつて犠牲になつたイエス,キリスト)がシオンの山に立つていた。また十四万四千の人々が小羊と共におり,その額に小羊の名とその父の名とが書かれていた。また私は,大水のとどろきのような,激しい雷鳴のような声が,天から出るのを聞いた。私の聞いたその声は,琴をひく人が立琴をひく音のようでもあつた。彼らは,(神の)御座の前,四つの生き物と長老たちとの前で,新しい歌を歌つた。この歌は,地からあがなわれた十四万四千人のほかは,だれも学ぶことができなかつた。彼らは,女にふれたことのない者である。彼らは,純潔な者である。そして,小羊(イエス・キリスト)の行くところへは,何処へでもついて行く。彼らは,神と小羊とにささげられる初穂として,人間の中からあがなわれた者である。』― 新口。
17 地上の人々は,誰からこの『新しい歌』を学ばねばなりませんか。そして,なぜ?
17 その歌を学んだ地上にいる霊的な残れる者は,詩篇 96篇1-3節のいましめに従つて『忠実にして慧き奴隷』級のごとき行をなし,『新しい歌』を歌います。(マタイ 24:45-47,新世)参加したいと欲する地上の他のすべての人は,この全く異る新しい歌を彼らから学ばねばなりません。なぜなら,この世の政治家たち,財界人,そして工業家たち,またキリスト教国の名前だけのクリスチャン牧師という人々でさえも,その新しい歌を知らず,それを他の人に教えることができないからです。イエス・キリストと彼の14万4000人の共同相続者だけが,ヱホバ神より新しい歌を教えられているのです。そして,彼らだけが率先してその歌を歌うことができます。(イザヤ 54:13。ヨハネ 6:44,45)彼らこそ神が過去1900年のあいだ選ばれてきた民であります。神は諸国民に注意を向けられ,ヱホバの『御名を負う民を選び出された。』(使行 15:14,新口)今までの幾世紀ものあいだ,キリスト教国の種々さまざまな宗教制度は,キリスト教国内やキリスト教国外のあらゆる国々の中で,自分たちの宣教師を働かせてきました。しかし,地上に住むあなた方みなさんが御存知のように,あなな方にヱホバの御名について教えたり,または詩篇 96篇2節が真のクリスチャンたちに為すよう命じているごとく,ヱホバの御名をあがめるようあなた方に教えたのは,キリスト教国の宗教的な牧師でもなければ,ユダヤ教の宗教指導者でもありません。
18 今日,誰がヱホバの御名について,世の注意を惹きましたか。そして,特に何時から?
18 いまから30年前の1926年の1月1日号の『ものみの塔』誌(英文)は,その最初の中心記事に『誰がヱホバを崇めるか』と題する記事を掲載しました。特にその時以来,この雑誌にかたく従う忠実な人々は,ヱホバの証者という識別の名にふさわしいことを示しました。彼らは,1931年にその名前をよろこびの中に受け入れたのです。1931年から,地上の全国民は次のことを知るに至りました。すなわち,ヱホバの御名について人々の注意を向け,そしてその御名を崇めて讃える主要な理由を示しているのはヱホバの御名を負うクリスチャンの残れる者たちです。カトリック,新教徒,そしてユダヤ教の指導者たちは,ヱホバ神にむかい『私は,あなたが世から選んで私に賜わつた人々に,み名を現わしました。』と語つたイエスに倣つていません。それどころか,彼らはヱホバの証者を嘲笑し,どんな手段に訴えようともヱホバの証者を妨害して,神の聖名に証を立てさせまい,としています。しかし,それはみな水泡に帰しました! ヱホバの証者は,しつかりとイエス・キリストに倣いました。(ヨハネ 17:6,新口)彼らはヱホバの御名を現わし,次のいましめに従いました,『もろもろの国の中にヱホバの栄光を語り,すべての民の中にヱホバの奇しき御業を告げよ。』(詩 96:3,新世)共産主義者の支配する国々でも,ヱホバの証者がこの神のいましめに従うのを止めさせることができません。共産主義者の支配する国にいても,ヱホバの証者は,キリストによるヱホバの御国が1914年に天で運営を始めた,というよろこびのたよりを高らかに歌いつつ,宣べひろめて来ました。
救は何処に?
19 神の御国は,なぜ諸国家をこの恐れにおののく状態に入ることから救わなかつたのですか。
19 しかし,第一次世界大戦の始まつた年から神の政府が運営している,というのであるなら,それによる救は何処にありましたか。人々に宣べ伝えるための,ヱホバの救の良いたよりは,何処にありましたか。キリスト教国の国々を含めて,諸国家はなぜ自滅の間際に近づいているのですか。そして,なぜますます増大する分裂主義や,現代科学の発明品を悪く用いることに起因する必至の結果から自らを救おう,と努めているのですか。ヱホバは,その御国によつて,この恐れにおののく世界状態から彼らをなぜ救わなかつたのですか。それは,諸国家がキリストによるヱホバの御国を欲していないからである,と事実は答えています。彼らは,ヱホバの御国を全人類に来る最大の祝福と見なさず,その御国に信仰を持ちません。実際のところ,ヱホバの御国は人類に生ずる最悪のものであるかのごとくに恐れているのです。彼らは,神の天的な御国に頼らなくても良い,と自惚れにも感じており,御国に加わわることを欲しもしなければ,御国による救いをも欲しません。ヱホバの証者の宣べ伝える御国の音信を拒絶したり,またヱホバの証者を迫害したり,妨害したりすることは,彼らが御国に反対していることを示します。更に,世界の支配を目論む世界大戦や,国際連盟,国際連合は,そのことを証明します。その結果,彼らには救が全くなく,その事態はますます悪化して行きます。
20 天の御使たちは,御国による救いをどのように経験しましたか。
20 しかし,救われた私たちは,日ごとに良いたよりとして宣べ伝えることのできる『彼の救』があつたことを知つています。『この組織制度の神』は,サタン悪魔で,神の最も悪しき敵であり,『全世界は悪しき者の配下にある。』ことを私たちは知つています。(ヨハネ第一書 5:19そしてコリント後 4:4,新口)また,1914年には,地上の第一次世界大戦よりもずつと激しい戦があつたことを,私たちは知つています。それは天で行われた戦争でした。それは,ツエッペリン飛行船とか飛行機の戦でもなければ,超人の戦でもなく,また神秘的な『火星人』の戦でもありません。それは,新しく即位した王キリストとその御使たちが,偽りの神なる悪魔サタンと悪鬼になつた使共に対する霊界の戦争でした。この天界の戦争は,新しく誕生した神の御国の権力をより強固なものにしました。なぜなら,サタンの軍勢はみな天から出されて,この地球の近くに追い落されたからです。天の軍勢は,神の力によるこの救を,どれ程感謝したことか! 彼らは大声でこう叫びました,『今や,われらの神の救と力と国と,神のキリストの権威とは,現れた。われらの兄弟らを訴える者……は投げ落された。それゆえに,天とその中に住む者たちよ,大いに喜べ。しかし,地と海よ。おまえたちはわざわいである。悪魔が,自分の時が短いのを知り,激しい怒りをもつて,おまえたちのところに下つてきたからである。』(黙示 12:7-12; 11:15-18,新口)サタンに属する諸国家間の世界大戦を別にしても,天の戦争においてこのように敗北したことは,サタンとその世の制度にとつて恐ろしい患難でありました。
21,22 地上の誰が,御国による救いを最初に経験しましたか。そして,どのように?
21 しかし,それは自分の制度に降りかかる患難の始めにすぎない,そして『短い時』の後には,その患難の大結末が来る,とサタンは知つていました。これは,サタンに対するハルマゲンを意味します。そのとき,『全能の神の大なる日の戦』でサタンの制度はみな打ち砕かれて敗北し亡びてしまいます。(黙示 16:13-16; 19:21より20:3)この『短い時』があることにより,新しく誕生した御国によつてサタンの制度に加えられた患難は短くされました。それにより,サタンとその悪鬼共は,ほつと一息つくことができたのです。しかし,患難の日が短くされたのは,サタンの為でありません。それは,イエス・キリストの14万4000人の共同相続者に属する残れる者『その裔の残れるもの,すなわち神のいましめを守り,イエスの証を有てる者』を神が救うためでした。(黙示 12:17)第一次世界大戦中,残れる者はアメリカ合衆国や交戦中の国々で悪しざまに虐待されました。その虐待の企ては,残れる者を支離滅裂させて,その証言の業を止めさせ,かつ脅迫を加えて永久に証言の業を中止させ,今後永遠にわたつて残れる者の名声と良い立場を挫折せしめよう,とすることでした。神の御国に敵対の戦争をしていたこの世に束縛されていたなら,残れる者は必らずしも身体上の死に面しなくても,霊的な死に面したことでしよう。そのときに,ハルマゲドンが諸国家に来たとするなら,ヱホバにたいする義務不履行のため神の恵みを失つていた残れる者たちは,この世の諸国家と共に亡んだかも知れません。
22 神の選民の残れる者は,重大な事態に臨んでいました。それは,恵みに充ちる救を必要としたのです。ヱホバだけが,勝利のキリストを通してその救を備えることができました。ヱホバはサタンの制度の上に降りかかつた患難を短くし,そして『短い期間』の終る後までハルマゲドンを保留せられることによつて,そういたしました。イエスは,次の言葉の中にそのことを予告しました,『その日には,神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで,かつてなく今後もないような患難が起るからである。実際,ヱホバがその期間を縮めてくださらないなら,救われる者はひとりもないであろう。しかし,選ばれた選民のために,その期間をちぢめてくださつたのである。』― マルコ 13:19,20,新世。
23 1920年に啓示されたことによると,残れる者はなぜ地上で救われましたか。
23 現代歴史は,次の事実を記録しています。すなわち,第一次世界大戦が終つて後間もない1919年の春にヱホバ神はキリスト教国を驚かし,御自分の証者の残れる者をこの世の屈辱の束縛から自由に解放しました。その翌年に,彼は彼らの目を開き,彼らが『救わ』れて,助け出され,主の予言的な次のいましめを成就するためこの地上に生延びたことを知らしめました『終まで耐え忍ぶ者は救われるであろう。御国のこの良いたよりは,すべての国民に証をするため,全世界に伝道されるであろう。それから全き終が来るのである。』(マタイ 24:13,14,新世)1914年,『諸国民の定められた時』の終に天で設立された御国のこの『良いたより』は,彼らだけが持つていました。それは救いの良いたよりでした。その御国は,天で戦争を行い,サタンやその悪鬼の使の威赫的な汚れた活動から聖なる御使たちを救いました。それは,地上にいた選民の残れる者を霊的な危険から救い,そして彼らを自由にして勇気づけたのです。かくして,彼らは,ヱホバとその御国にたいする奉仕を更新して行うようになりました。
24 そのとき以来,地上の誰が救われましたか。そして,いま何をすることは特権ですか。
24 それから幾年もの年月を経た今日,この時代の大多数の人々は,この組織制度がハルマゲドンで全く終る以前に残れる者が与える証言を拒否してきました。しかし,救いの御国の『この良いたより』を伝道したことは,すでに『あらゆる国民,部族,民族,国語のうちから』来た善意者の『大ぜいの群衆』を救う結果になつています。そのことは,必らず起るはずでした。それは予告されていたからです。(黙示 7:9-17,新口)ハルマゲドンのとき,神権の御国は,勝利を得るでしよう。そして,サタンの制度を宇宙から取除き,善意者の『大ぜいの群衆』を救つてハルマゲドンの破壊的な患難を通過させ,新しい世に入れます。新しい世は,全地に行われる正義の新しい組織制度のことです。ハルマゲドン後も,その御国は救の力を更に行使して記憶の墓に死んでいる者たちにも救をもたらします。それは,キリスト統治の1000年間に,彼らを地上の生命に復活させるのです。これらの事柄をみな考慮するとき,本当に1919年以来は『彼の救』であります。そして,それについての良いたよりは,『日ごとに』語るべきであります。救われた者に加つて,その良いたよりを語ることは,心から感動する大きな特権です。