良いたよりを全世界に宣布する
「良いたよりをもたらす者,平和を宣明する者,何かさらに良いことについての良いたよりをもたらす者,救いを宣明する者,シオンに向かって,『あなたの神は王となられた』と言う者の足は,山々の上にあってなんとうるわしいのだろう」― イザヤ 52:7,新。
1,2 宇宙のはるかかなたから見た地球はどのように映りますか。神が地球を創造された時,天使たちはどう応じましたか。
あなたの知性の目を用いて,アポロ8号の飛行士たちによって初めて写真に取られた時の地球を描いてみてください。暗黒の空間に浮かぶその地球は,太陽の光線に照りはえて,さまざまな色の施された,巨大なボーリングのボールのように見えます。幾重にも連らなる,綿のような白い雲の合い間から,水をたたえた海洋の輝かんばかりの青,また陸地のあやなす色合い豊かな茶や緑が目に映ります。神は人類のために,なんと美しい惑星を創造されたのでしょう。そこに住むすべての人のために,神は良いたよりを持っておられるのです。それが何かご存じですか。
2 宇宙のはるかかなたの位置から地球をながめる人は,神が地球を創造された時,神の天使の子たちが「称賛の叫びをあげ始めた」と聖書が述べている理由を,容易に想像できます。(ヨブ 38:7,新)地球はこの太陽系の他の惑星すべてと著しく異なっているため,天使たちは創造者なるエホバ神を賛美し,こぞって喜びの叫びをあげずにはおれなかったのです。次いで,神が地に生きた動物を住まわせ,地上におけるご自分のわざの頂点にも位すべき人間を創造された時,天使たちが称賛の叫びをあげる理由はさらにいっそう強力なものになりました。
3,4 神なしで自らを治めようとする人間の努力の結果,地には何が起こっていますか。
3 しかし,神が人間を創造されて以来,地上では何が起こっていますか。人間が自分の創造者に反逆し背を向けたため,生活条件は理想からほど遠い状態にあります。人々は自分自身の知恵にたより,神なしで地を支配しようと努めてきました。その結果は,途方もない混乱です。人類は国家的な単位に分けられ,互いの間で絶えず論争や戦争をくり返しています。大都会はアスファルトのジャングルと化し,人が人をえじきにして理性のない野獣同様にふるまっています。暴力,犯罪,不正,反抗が至る所で見られます。
4 人間は,命のよりどころである地球の環境を破壊する,という愚行さえ犯しています。大気の汚染や川・湖・海の汚濁をもたらしています。無分別な農業方式を実施して肥よくな土地をそこない,無数の野性動物を無残にも殺し,多くの種類を絶滅させてしまいました。神なしで自らを治めようとする人間の努力は,まさにとてつもない失敗に終わっています。
何かさらに良いことがこようとしている
5,6 人類のために神が持っておられる良いたよりはなんですか。戦争に関する神の処置はどのように予告されましたか。
5 「行はるゝところの諸の憎むべき事のために歎き哀しむ」人たちすべてのために,この美しい地球の創造者は良いたよりを持っておられます。(エゼキエル 9:4)彼はご自分の構成する王国をすでに樹立され,それによって全地を公正と正義のうちに支配します。その支配のもとでは,人類はもはや互いに戦争をする国家群に分けられることなく,恒久平和のうちに生活します。
6 すでに起こっているかのような表現方法を用いて,聖書の預言はこう述べています。「きたりてエホバの事跡をみよエホバはおほくの懼るべきことを地になしたまへり エホバは地のはてまでも戦闘をやめしめ弓ををり戈をたち戦車を火にてやきたまふ」。(詩 46:8,9)この預言が書かれた時代に使われたそれら古代の武器は,あらゆる兵器を象徴するためにここで用いられています。神の王国の平和と正義の統治のもとでは,そうした物は全く必要ありません。
7 神の王国の基礎が何かを示しなさい。王国のもとでは,人々がなぜ正直かつ真実な行動をするのかを説明しなさい。
7 その王国の王はすでに選ばれ,職に任ぜられています。それはエホバ神の,試みられた忠実な御子,イエス・キリストにほかなりません。彼は聖書預言の中で,「試をへたる石たふとき隅石かたくすえたる石」と呼ばれています。(イザヤ 28:16)神の王国の全構造は,その王としての彼の上に築かれています。イザヤのこの預言は続けて,イエス・キリストのもとでの神の王国の支配が,公正と正義の支配であることを予告しています。「われ〔公正〕を準縄とし正義を錘とす」。(イザヤ 28:17〔新〕)鉛錘線が建造物の支柱や壁の真実の状態を明らかにするのと同じように,神の王国において顕著な位置を占める正義の特質により,人々は正直かつ真実な行動を取るよう促されます。不完全な人間の不等な支配のもとにある今日の状態とは,なんと大きな隔たりがあることでしょう。邪悪な人々は,「虚偽をもて避所となし欺詐をもて身をかくし」ているのです。―イザヤ 28:15。
8 神の王国の支配のもとでは,だれひとり恐れや不安を感ずる必要がありません。なぜですか。
8 神の王国では,正義の支配者たちが公正,正義および平和をもって地を支配するのですから,だれひとり恐れや不安を感じる必要はありません。もはや人に暴力を加えたり人の命をおどしたり,あるいは,他人の所有物を盗もうなどとしたりする邪悪な者は存在しません。わたしたちの創造者は,「あしきものは久しからずしてうせん」との保証を与えておられます。(詩 37:10)この地は,神の律法に反逆してそれを破るどう猛な人々に制圧される代わりに,気質が柔和で,神の律法に従順な人たちがそれを所有します。イエス・キリスト自ら,次のように言ってこのことを予告されました。「幸福なるかな,柔和なる者。その人は地を嗣がん」。これは確かに良いたよりです。―マタイ 5:5。詩 37:11。
9 神の王国,特にその樹立が人類にとって良いたよりである理由を説明しなさい。
9 神が地に対して持っておられる驚くべき目的を考えると,神の王国は人類にとって良いたよりです。それは,邪悪な者が地をいつまでも制圧することがないという保証と,はるかにすぐれた生活条件が整えられるという希望をわたしたちに与えます。神の王国が天に建てられたこと,そして,今わたしたちが現在の邪悪な事物の体制の終わりの日に生きている事実は,特に良いたよりです。この時代にあってその王国に信頼を置く人々に対し,イエス・キリストはこう言われました。「しかし,これらの事柄が起こりだすとき,身をまっすぐに起こし,あなたがたの頭をもたげなさい。なぜなら,あなたがたの救出は近づいているからです」― ルカ 21:28,新。
1世紀に始まる
10 (イ)良いたよりを宣布するわざはいつ,そしてどのように始まりましたか。(ロ)王国は当時なぜ近いと言えたのですか。
10 王国の良いたよりの宣布は,西暦1世紀に始まりました。それはイエス・キリストによって着手され,彼の追随者はそれに携わるよう教え導かれました。「行くときには,『天の王国は近づいた』と言って,伝道しなさい」。(マタイ 10:7; 4:12-17,新)神の王国はその当時まだ建てられてはいませんでしたが,この音信は適切なものであり,王国は近いと言えました。なぜなら,油をそそがれたその王がそこにおられたからです。彼はそれを代表していたのです。
11 良いたよりの伝道されるべき方法について,イエスはどのように模範を残されましたか。
11 イエスは王国の良いたよりを携えて,直接人々のところに行って伝道しました。「それから彼はガリラヤの全土をあまねく回り,彼らの諸会堂で教え,王国の良いたよりを伝道……された」。(マタイ 4:23,新)彼は個々の家でも人々に伝道しました。二,三の例をあげると,エリコのザアカイ,マタイ,娘を死で失ったばかりのある支配者などの家を訪問されました。(ルカ 19:5。マタイ 9:9,10,18,23)イエスはまた,山や海岸,それに市の開かれる広場などで伝道されました。支配者,祭司,商人,漁夫,収税吏,売春婦,兵士,その他あらゆる種類の人々に伝道されました。このようにしてイエスは,追随者たちが王国の良いたよりを伝道するための模範を残されたのです。
12 イエスはイザヤ書 61章1,2節の預言をどのように成就しましたか。
12 イエスは良いたよりを宣布して歩き回りながら,イザヤ書 61章1,2節(新)の預言を成就しておられました。「主エホバの霊がわたしの上にある。温順な者たちに良いたよりを宣布させるため,エホバがわたしに油を注がれたからである。彼はわたしをつかわされた。エホバの善意の年……を宣布するため,嘆き悲しむ者たちすべてを慰めるため……である」。苦難にあえいでいた当時の温順な人々にとって,自分たちの間に彼が王国の良いたよりを携えて到来するということは確かに快い光景でした。彼の足はうるわしい,快い光景であったことでしょう。自分たちのために行なってくださった善のゆえに,人々は彼が自分たちの間に来たことを感謝したことでしょう。彼は,苦難にあえいでいる者たちに慰めを,傷心している者たちに希望をもたらしました。ご自分の王国によってもたらされる何かさらに良いことを,神が目的とされているのを彼らはイエスから学びました。
13 ペンテコステ以後,イエスの弟子たちが,伝道に関する彼の模範にどのように従ったかを述べなさい。
13 イエスの残された模範にならって,西暦33年のペンテコステの後,彼の弟子たちは,たとえ迫害によって散らされても,その行くさきざきで王国の良いたよりを伝道しました。「しかしながら,散らされた者たちはみことばの良いたよりを宣べ伝えながら,当地を行きめぐりました」。(使行 8:4,新)彼らはイザヤ書 52章7節(新)の成就に用いられたのです。「良いたよりをもたらす者,平和を宣明する者,何かさらに良いことについての良いたよりをもたらす者,救いを宣明する者,シオンに向かって,『あなたの神は王となられた』と言う者の足は,山々の上にあってなんとうるわしいのだろう」。他の国々に行った者たちも良いたよりを伝道しました。使徒パウロおよび彼とともに旅行した者たちが,長い年月,数か国でこのわざを行なったことに関して,聖書は詳細な情報を提供しています。イエスと同じく彼らも,直接人々の所に行きました。家々を訪問し,市場やその他,一般の人々が集合する場所で話をしました。
14 パウロは,人々が神の目的を学ぶの助けるために払った自分の努力についてどう述べていますか。
14 使徒パウロは,自分の努力を通して神の王国の希望をいだくにいたった,小アジアにおける一群の人々に向かいこう言いました。「わがアジヤに来りし初の日より如何なる状にて常に汝らとともに居りしかは,汝らの知る所なり。即ち謙遜の限をつくし,涙を流し,ユダヤ人の計略によりて迫り来し艱難に耐へて主につかへ,益となる事は何くれとなく憚らずして告げ,公然にても家々にても汝らを教へ(たり)」。(使行 20:18-20)人類のために神の定められた良いことを人々が学べるよう,彼がいかに尽力したかを見てください。彼が良いたよりをもって慰めた多くの人々にとって,パウロの足もやはり「うるわしく」,また,快く映らなかったでしょうか。
15 イザヤ書 52章7節の預言がイエスの油そそがれた追随者にあてはまると,どうして確信できますか。
15 最終的にイエスとともに支配する見込みを持つ,イエスの油そそがれた追随者たちは,イザヤ書 52章7節の預言を成就します。それはパウロ自らが明らかにしているところです。彼らも平和を宣明し,「さらに良いことについての良いたより」をもたらし,救いを宣明します。他の人々に良いたよりを伝道する必要を彼らに指摘して,パウロはこう書きました。「しかしながら,信仰を置いていないかたを,どうして彼らは呼び求めるでしょうか。また,聞いたこともないかたに,どうして彼らは信仰を置くでしょうか。また,だれか伝道する者がなければ,どうして彼らは聞くでしょうか。また,つかわされたのでないかぎり,どうして彼らは伝道するでしょうか。まさに書かれているとおりです。『良い事柄についての良いたよりを宣べ伝える者たちの足はなんとうるわしいのだろう』」。(ロマ 10:14,15,新)パウロがイザヤ書 52章7節の預言を引用して,良いたよりを宣布するイエスの模範に従う人々に,それをあてはめている点に注目してください。
16 初期クリスチャン組織によって行なわれた伝道は,どんな結果をもたらしましたか。
16 初期クリスチャン組織が伝道に対して熱心に勤勉な努力を払った結果,多くの国々の人が良いたよりを聞き,信者になりました。キプロスおよび小アジアを巡る,パウロとバルナバの第1回宣教旅行の成果を,聖書は次のように報じています。「既に到りて〔会衆〕の人々を集めたれば,神が己らと偕に在して成し給ひし凡てのこと並に信仰の門を異邦人にひらき給ひしことを述ぶ」。(使行 14:27〔新〕)それら他の国々で注意深く聞き,聞いた事柄に信仰をもって応じた人々は,自分たちのところにパウロとバルナバが来てくれたことを深く感謝しました。彼らが,良いたよりのそれら宣明者の足を「うるわしい」ものと見たことはまちがいありません。こうして,良いたよりはローマ帝国全域に広まり,その結果,非常に多くの人々が神の組織の一員となりました。しかし,それは始まりにすぎませんでした。
「人の住む全地で宣べ伝えられる」
17,18 使徒たちの死後,クリスチャンの組織に何が起こりましたか。
17 使徒たちの死後,偽りの諸宗教から退廃的な信条が持ち込まれたため,クリスチャンの組織は堕落しはじめました。また,自己の考えを提唱する者たちが現われ,会衆内に分派が生じました。そうした尊大な人たちは自分の側に会衆の成員を集め,自己の歩みにしたがって離れて行きました。これはすべて使徒パウロによって予告されていたことです。「われ知る,わが出で去るのち暴き豺狼なんぢらの中に入りきたりて群れを惜まず,又なんぢらの中よりも,弟子たちを己が方に引き入れんとて,曲れることを語るもの起らん」― 使行 20:29,30。
18 クリスチャン組織のこの堕落をきっかけに,表面的にはキリスト教でありながら,その実,異教の種々の虚偽と融合させられた融合宗教ができあがりました。異教の信条と慣行とに満ちていたため,それはローマ帝国内でそれほど反対されなくなり,ついには帝国を制圧する地位につけられることになりました。想像できるとおり,この堕落した組織は王国の良いたよりの伝道を遂行しませんでしたし,人々にそうすることを奨励もしませんでした。人々は霊的な意味では死んだのです。
19 剣による改宗に関して,神のクリスチャン組織を責めることができますか。
19 このことから,その組織は真のクリスチャン組織ではなく,ヨーロッパじゅうの人々を,世にいうクリスチャンに強制的にならせるため,武器を用いることさえ辞さない組織であったと理解されます。それはイエスが自分の追随者に教示された,弟子を作るための方法ではありませんでした。そうした強制的な改宗は,神の真理のことばより自分自身の考えを重要視した人たちの,ゆがんだ思想から生み出されたものです。それらの人たちは僧職階級となり,人間の宗教哲学を説教し,それを説教された教会員たちは不活発で下位の一般信徒の階級を構成するにいたりました。それは神の方法ではなく,その方法を奨励した宗教組織は神の組織ではありませんでした。良いたよりの伝道は停止したものの,それが永久に絶えたままであることは神の意志ではなく,良いたよりが人の住む全地で宣べ伝えられることこそ,神の意志であったのです。
20 良いたよりの伝道がどのように再興されたか説明しなさい。
20 何世紀も経た後,すなわち19世紀の後半になって,神は良いたよりの伝道のわざを再興されました。その再興はアメリカ,ペンシルベニア州アレゲーニーにいた,小グループの聖書研究生とともに始まりました。彼らは,イエス・キリストが自分の追随者に与えられた使命を,キリスト教世界の諸教会が果たしていないことをはっきりと知りました。その代わりに諸教会は,政治,社会事業,人間の哲学,聖書に反する教え,人間の伝統といったものに深入りしていました。イエス・キリストのそれら現代の追随者は,良いたよりを宣布する必要を認め,すすんで奉仕する用意のあることをイザヤ同様に表明しました。その預言者はこう言いました。「我……エホバの声をきく曰く われ誰をつかはさん誰かわれらのために往べきかとそのとき我いひけるはわれ比にあり我をつかはしたまへ」。(イザヤ 6:8)こうして,その忠実なクリスチャンの群れはチャールズ・テーズ・ラッセルの指導のもとに,長い間おろそかにされていた王国の良いたよりの宣布のわざを始めました。神のクリスチャン組織が再び出現しました。
21,22 (イ)良いたよりの宣布者の数は,1870年代からどの程度ふえましたか。(ロ)彼らは「終わりの日」に対するイエスの預言をどのように成就してきましたか。また,イエスの模範にどのように従ってきましたか。
21 1870年代当時のその小規模な始まりから,良いたよりの宣布者たちの集まりは,活発なエホバのクリスチャン証人100万名を超える今日の組織へと成長しました。これは神の活動的な組織であり,現在の世の事物の体制の終わりの日に行なわれるであろうとイエスが予告されたこと,つまり「すべての国の民に対する証として,人の住む全地で」王国の良いたよりを伝道することを推し進めてきました。―マタイ 24:14,新。
22 このクリスチャン組織では,献身してバプテスマを受けた人すべてが伝道者です。全員が活動的であり,宣教に活発であり続けるようエホバの組織から絶えず励まされています。これが使徒たちの生存していた1世紀のエホバの組織のあり方でした。彼らはイエスと同様,人々の家やその他すすんで耳を傾ける人を見いだせる所ならどこへでも出かけて行きます。それら伝道者のもたらす良いたよりによって慰められ,感謝に満ちた人々にとり,彼らの姿は快い光景です。
23 神の組織が今日,どのように人の住む全地で実際に良いたよりを伝道しているかを示しなさい。
23 1世紀においては,地中海周辺の国々に対する良いたよりの伝道にかなりの力が注がれましたが,今日ではイエスの予告されたとおり,人の住む全地にわたって伝道が行なわれており,わたしたちはそれを見ています。1970年,エホバの証人は206の国々で良いたよりの伝道に忙しく携わり,そのために2億6,700万時間を費やし,神のことばと目的に関する文書を約2億3,200万部配布しました。良いたよりのこうした規模の伝道こそ,邪悪な人々の体制の終わりの日に地にあまねく行なわれると,1,900年前にイエスが予見されたものに違いありません。
伝道する組織
24,25 神が用いられる者たちの間になぜ組織が必要なのですか。初期のクリスチャンたちの間に組織が存在していたことについて,どんな証拠がありますか。
24 神の目的とされている良いたよりの世界的な伝道を遂行するためには,組織が必要です。それは神からの伝道のわざを行なうために用いられている,幾十万人ものクリスチャンの努力を統合するために必要です。その統治体は最善の成果が得られるようわざを指揮し,意見の相違を解決します。そのような組織は西暦33年のペンテコステの後に存在しており,その統治体は12人の使徒およびエルサレムの他の円熟したクリスチャン数名から成っていました。この群れは決定を下したり,特別の奉仕に人々を任命したり,論争を解決したりしました。使徒行伝の15章に見られるように,その決定は当時のクリスチャンたちの全組織に対して拘束力を有するものでした。
25 使徒行伝 15章,特に23節から29節までを読むと,神の組織の統治体が活動しているさまがわかります。シリヤのアンテオケにいたクリスチャンたちの間に論争が生じ,その問題は地方で解決がつかないまま統治体の前に持ち出されました。それを審理した後に統治体は決定を下し,その決定はアンテオケに通報されました。
26 今日の神の組織における統治体の実体を明らかにしなさい。
26 今日,王国の良いたよりを伝道するために神が起こされた組織にも,統治体があります。それはイエスがマタイ伝 24章45節から47節(新)のたとえの中で話された,油そそがれたクリスチャンの「忠実なさとい奴隷」級を代表しています。彼らは「時に応じて」霊的な食物を供給する自分たちの責任を果たしており,統治体を通してそれを行なっています。この統治体は,ペンシルバニヤ州のものみの塔聖書冊子協会の,油そそがれた者たちから成る理事会と密接に提携しています。
27 神の組織がどのように,神の関心事にのみ仕えることに専心しているかを示しなさい。
27 政治や社会改革,商業の運営や会社の投資に深いかかわりを持っているキリスト教世界の諸教会と違って,忠実な証人たちから成る神の組織は唯一のこと,つまり王国の良いたよりの伝道のみを集中して行なってきました。その組織はイエスが自分の追随者に与えた,「すべての国の人々を弟子とし…わたしがあなたがたに命じた事柄すべてを守るよう教えなさい」との使命を,決して見失いませんでした。(マタイ 28:19,20,新)それゆえ今日この組織は,王国の良いたよりの世界的な伝道に関するイエスの預言を成就しているのです。―マタイ 24:14,新。
28,29 イエスは,良いたよりの宣布者になるようだれを訓練しましたか。この点に関して,神の組織は今日どのように彼の模範に従っていますか。
28 王国の良いたよりを伝道された時のイエスは,漁夫や収税吏などといった一般の人々を,神の真理のことばの伝道者および教え手となるよう教えられました。高等教育を施す当時の宗教の学校で訓練された律法学者やパリサイ人たちと違って,それら一般の人々は神からの祝福と権限を受けて伝道しました。彼らは神の意志を実際に行ないましたが,律法学者やパリサイ人のほうは行ないませんでした。
29 同様に今日でも,神の組織はあらゆる身分の一般の人々を,書かれた神のことばの伝道者および教え手となるよう教えたり,訓練したりします。彼らは伝道を行なう,神からの権限を授与されるため,高等教育を施す神学校に行く必要はありません。その組織は子どもたちをさえ訓練して,良いたよりを伝道できるようにします。イエスの時代の漁夫たちと同様それら一般の人々は,自分ができるなどとは夢にも思わなかった事柄を行なうよう教えられています。
30 他の国々へ送られる人たちにどんな訓練が施されますか。彼らの努力はどんな成果をもたらしていますか。
30 この組織によって設立された特別の学校は,選ばれた人たちを宣教者として他の国々へ送るための訓練をも施しています。聖書および外国語に関して,5か月間の課程から成る集中的な研究をします。割り当てられた外国の地に到着すると,王国の良いたよりを宣布し,その土地の人々に神のことばの真理を教えるため,彼らは1か月に150時間をささげます。この特別な学校であるギレアデの卒業生は,世界の多くの国々,地域,島々で良いたよりの伝道のわざを開始し,神の王国の立場を取るよう幾千人もの人々を援助してきました。
あとどれほどか
31,32 良いたよりの世界的な伝道によって何が示されていますか。イザヤ書 52章7節の成就として,神の組織は何を行なってきていますか。
31 良いたよりが人の住む全地で現に伝道されており,その規模は今までに類例を見ないほどのものであるという事実それ自体,人間の作った諸政府から成る現在の事物の体制の終わりの日にわたしたちが位置していることを明白にしています。これが,イエスの予告した他の世界的なできごとと平衡して見られるようになるなら,その時は「終わりの時」であり,最終的な最高潮が近いことをイエスは明確にされました。―ルカ 21:28,新。
32 わたしたちは西暦1914年以降,「終わりの時」にいます。この間,証人たちから成るエホバの組織は「平和を宣明(し)」,「何か良いことについての良いたよりをもたら(し)」,さらに「あなたの神は王となられた」と言っています。これは預言者イザヤの予告した事柄です。―イザヤ 52:7,新。黙示 11:17,18。
33 エホバの組織の一員であることからもたらされる祝福を望むものは,だれでも,良いたよりを伝道することが重要です。なぜですか。
33 良いたよりを宣布するために残されている時間は非常に短くなっています。しかしなすべきことはまだ多くあります。「収穫はおほく労働人はすくなし」と,イエスは言われたからです。(マタイ 9:37)神がご自分の組織の中の者たちのために備えておられる祝福を望むなら,今その一員になってください。良いたよりの活発な宣布者となって,取り入れのわざに加わってください。この美しい地球に対するエホバ神の目的が何かを人々に知らせてあげましょう。イザヤが預言した人々,すなわち平和を宣明し,何か良いことについての良いたよりをもたらす者たちのひとりになってください。