不法の世にあって宣べ伝える
「また不法が増すために,大半の者の愛が冷えるでしょう。しかし終わりまで耐え忍んだ人が救われる者です。そして,王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」― マタイ 24:12-14。
1 今日,世界では不法がどの程度はびこっていますか。(テモテ第二 3:1-5)
今日の不法の増加ぶりはどうでしょう。世界の多くの場所で,法と秩序をべっ視する傾向ははなはだしく,いわば大洪水の域に達しようとしています。ほとんどの大都市で犯罪が横行し,町を歩くのももはや安全ではなくなりました。近年になって多数の政府が革命で転覆し,国によっては,内部における造反と外部からの脅威に対して一分のすきもなく武装しているところもあります。共産主義の世界にさえ,ナショナリズムが社会主義的“一致”に優先するため,種々の困難があります。
2 不法はキリスト教世界の多くの教派にどのように浸透しましたか。
2 キリスト教世界はどうでしょうか。今の時代に関するイエスの預言通り,『不法の増加』はキリスト教世界の多くの教派に破壊的な影響を与えました。法と秩序を正しく重んずることを奨励する聖書を,今多くの人は「時代遅れ」と考えています。何事にも甘い現代社会に迎合して,不道徳や同性愛,不正行為などを大目に見,そうすることによって多数のまがいのクリスチャン,「神の王国を受け継がない」クリスチャンを生み出している教会は数知れません。―マタイ 24:12。コリント第一 6:9,10。
3 不法の者はどのようにしてクリスチャン会衆に入り込もうとしましたか。そのような人々についてイエスは何と言っておられますか。
3 不法の者たちは,わたしたちの主の『約束された臨在』はこの時代にあるのではないと主張して,真のクリスチャン会衆にまで入り込もうとしました。彼らは長老たちをあざけり,主人が地上における王国の関心事をつかさどらせるために「忠実で思慮深い奴隷」を任命したことに異議を唱えます。(ペテロ第二 3:3,4。マタイ 24:45-47)この種の人たちは,マタイ 7章15-23節に記録されている,イエスが警告した人々の中に含まれます。「羊のおおいをかぶってあなたがたのもとに来る偽預言者たちに警戒していなさい。内側では,彼らはむさぼり食うおおかみです。……[その日には]わたしは彼らにはっきり言います,わたしはいまだあなたがたを知らない,不法を働く者たちよ,わたしから離れ去れ,と」。
4 わたしたちはどんな特質を養うように励まされていますか。またそれをどのように実証できますか。
4 しかしイエスは本当に「羊のような」人々については,「終わりまで耐え忍んだ人が救われる者です」と言われました。わたしたちはどうすれば,自分にこの忍耐という資質のあることを実証できるでしょうか。それはイエスの次の言葉の成就にあずかることによってです。「そして,王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」。(マタイ 24:13,14)「王国のこの良いたより」をふれ告げることにおいて忍耐するとき,わたしたちは救いを得るでしょう。
5 (イ)わたしたちはひとりで働くのではないと,どうして言えますか。(ロ)今どんな裁きがだれによって行なわれていますか。
5 わたしたちはこの仕事をひとりでするのではありません。というのは,この「事物の体制の終結」に関するイエスの預言にはさらに,「人の子がその栄光のうちに到来し,またすべてのみ使いが彼とともに到来すると,そのとき彼は自分の栄光の座にすわります」とあるからです。目に見えない天からイエスは裁きの業を導き,それによって諸国民を,「羊飼いが羊をやぎから分けるように」分けるのです。この分ける業は「大患難」で頂点に達し,良い反応を示さない「やぎ」は去って「永遠の切断にはいり」,従順な「羊」は,「世の基が置かれて以来」彼らのために父が備えておられる王国を受け継ぐよう招かれます。―マタイ 24:3,21; 25:31-46。
6 (イ)「羊」と「やぎ」はどんな方法で,自分がそういうものであることを示すことになりましたか。(ロ)わたしたちの家から家への奉仕にみ使いの導きがあることは,しばしばどのように示されましたか。
6 では,「羊」と「やぎ」は,自分がそういうものであることをどのように示すのでしょうか。それは,霊で油そそがれた王の「兄弟」と彼らの仲間が地上で行なう証しの業,「地の最も遠い所にまで」達する業の結果として明らかになるのです。(使徒 1:8)この業の主要な部分は,地球全体にわたる家から家への伝道活動です。この活動の結果として,霊的な事柄の価値を認めてそれに反応を示す人々が出てきます。そのことは,「羊」級に対して王が言われた,「わたしがよそからの者として来ると,あなたがたはあたたかく迎え」てくれた,という言葉によって示唆されています。(マタイ 25:35)王は,彼らがご自分の「兄弟」を迎えることを自分にされたものとみなされるのです。それは霊的な事柄に注意を払わないかたくなな人々の応対と対照的です。この分ける業は確かにみ使いの指導の下に推進されてきました。(マタイ 25:31,32)そしてそれと関連して,「良いたより」をふれ告げる際にみ使いの助けがあります。というのは,ある誠実な人が神に助けを祈り求めたら,早くもエホバの証人がその人の家の戸口に立っていた,ということが非常によくあるからです。そしてまた,ある家庭が霊的な援助を一番必要としている時に,エホバの証人が妙なことからその家庭を訪問するということも,なんと多いのでしょう! わたしたちは,無数の天のみ使いの支持があることを知っているのですから,家から家へ熱心に宣べ伝えてふさわしい人々を探し出すことをやめないようにしたいものです。
一世紀の手本に従う
7 (イ)初期のクリスチャンたちが,「公にも家から家にも」熱心に証言していたことは,どんなことからわかりますか。(ロ)初期のクリスチャンたちと現代のクリスチャンたちとを,ほかのどんな点で比較することができますか。
7 初期のクリスチャンの間では,牧師と平信徒の区別はありませんでした。主イエス・キリストを信じていた人々は,教会堂の信者席に座るだけの人たちではありませんでした。彼らは活動する人々で,「公にも家から家にも」証しすることに熱心に従事しました。(使徒 20:20)彼らは文字通り『エルサレムを彼らの教えで満たし』,良いたよりを「天下の全創造物の中で」宣べ伝えたのです。(使徒 5:28。コロサイ 1:23)彼らが成功したのは,歴史家のE・アーノルドが自著「初期のクリスチャンたち」の中で述べているように,「彼らの共同体の中の最も無学な成員たちでさえ,彼らにゆだねられた真理を広める使者だった」からです。今日でも同じでなければなりません。次のパウロの言葉は信仰を持つすべてのクリスチャンに当てはまるからです。「人は,義のために心で信仰を働かせ,救いのために口で公の宣言をするからです」。そしてその結果として多数の人が「良いたより」を聞いています。「実に『その音は全地に出て行き,そのことばは人の住む地の果てにまで行った』」からです。―ローマ 10:10,18。
8 キリスト教世界の宗教と真のキリスト教との間にはどんな著しい対照が見られますか。
8 真のクリスチャンの預言的な音信と,キリスト教世界の形式的な説教との間にはなんと大きな相違があるのでしょう! 歴史家H・G・ウェルズはこの相違を自著「世界文化史」の中で次のように指摘しています。
「この十分に発展した[西暦325年の]ニケアのキリスト教と,ナザレのイエスの教えとの間にある深刻な相違については,読者の注意を喚び起こす必要があろう。……いずれにしてもはっきりしていることは,ナザレのイエスの教えがヘブライの予言者とともにはじまった新しい型の予言的教えであった,ということである。……そして唯一つの組織は説教者の団体であり,その主な仕事は説教であった。ところが四世紀になってすっかり羽の生えそろったキリスト教は……すでに数千年も昔の世界から馴染みになっていた型の祭司的宗教になったのである。……こうして助祭とか,長老とか司教とかの組織は急激に発達していったのである」。
真のクリスチャンたちは今日における彼らの預言的教えとして,樹立された王国についての貴重な良いたよりを有しています。この良いたよりは,終わりが来る前に,『あらゆる国民の中でまず宣べ伝えられねば』ならないものです。―マルコ 13:10。
9 1919年に始まった家から家へのどんな奉仕が今日まで継続され,成功していますか。
9 現代におけるこの「良いたより」の伝道は,1919年9月5日,アメリカはオハイオ州のシーダー・ポイントで開かれた大会で新しい「黄金時代」誌の発行の企画が発表された後,一段と勢いを得ました。この雑誌は現在,「目ざめよ!」という聖書的な名称で呼ばれています。(ローマ 13:11)同誌は,その大会でものみの塔協会が発表したある特別な業のために用いられる道具となりました。
「黄金時代誌活動は,我らの神の報復の日と嘆く者への慰めとをふれ告げる王国の音信を携えて家から家に行く運動である」。
「目ざめよ!」誌を,そしてまた「ものみの塔」誌を携えて家から家に行く活動が,「良いたより」を人々に定期的に伝えるための大切な手段の一つであることは今日に至るまで,変わっていません。
10 活動に対して心を鼓舞するどんな呼びかけが1922年に行なわれましたか。家から家への活動はどのように組み込まれましたか。
10 エホバの証人の家から家への奉仕は,1922年に開かれた二番目のシーダー・ポイント大会からさらに勢いを得ました。この大会では,活動への忘れ得ぬ呼びかけが響き渡りました。
「バビロンが跡かたもなく荒廃するまで戦いに前進しなさい。音信を遠く広く述べ伝えなさい。世界は,エホバが神であり,イエス・キリストが王の王,主の主であることを知らねばなりません。今日こそ,あらゆる時代のうちで最も重大な日です。ご覧なさい,王は統治しておられます! あなたがたは王のことを広く伝える代理者です。それゆえに,王とその王国を宣伝し,宣伝し,宣伝しなさい」。
その大会のうちの一日は,グループで家から家に証言することに当てられ,一万冊の書籍が王国伝道者たちによって配布されたということです。今日に至るまで,大会で設けられる戸別伝道の特別プログラムは,大会出席者たちの喜びをいっそう増し加えるものとなっています。
『いなご』の軍は進む
11 (イ)家から家に宣べ伝える業に携わるエホバの証人の大群は,聖書では何になぞらえられていますか。(ロ)この“いなご”の活動は(1)僧職者に対して,(2)心の正直な人々に対して,どんな影響を及ぼしましたか。
11 こうして1920年代から1930年代にかけて行なわれた家から家への精力的な証言は,さながらキリスト教世界を通過するいなごの災いのようでした。啓示 9章7-10節に,「いなごのすがたは戦闘の備えをした馬に似ていた。……彼らの翼の音は,多くの馬に引かれる兵車が戦闘に走り行く音のようであった。また,彼らには尾と,さそりに似た針があ(る)」と描写されている通りでした。熱心な証人の「強大な」軍隊が,間違った教理や偽善的な宗教的慣習を暴露しながら,キリスト教世界の都市という都市,町という町を通過しました。僧職者はしばしばこれに刺されて盛んに反対をはじめました。その“いなご”の群れは,エホバのみ名を辱める者すべてに対するエホバの近づきつつある報復の日を予告し,また神の主権の下に回復されて楽園となる地球についての喜びのおとずれをもって,心の正直な人々を慰めました。―イザヤ 61:2。
12 (イ)この「終わりの日」は,ひとりで悦に入っているようなときではありませんが,それはなぜですか。(ロ)“いなご”の大軍に関するヨエルの言葉はエホバの証人の活動にどのようにあてはまりますか。
12 この「終わりの日」はひとりで悦に入っているような時ではありません。(テモテ第二 3:1)神の預言者ヨエルは,「エホバの日が来るから,それが近いからである」と,はっきり述べています。(ヨエル 2:1,新)この日は,偽りの宗教家にとっては憂うつと苦悩の日となりますが,神を愛する人々は今,「山々の上に広がったあけぼのの光」のような霊的啓発を受けて喜ぶことができます。(ヨエル 2:2前半)彼らは“いなご”の大軍のように,王国の音信を家から家に携えて行きました。神の預言者は彼らの熱心な活動を,次のような印象的な言葉で描写しています。
「数が多くて強大な民がいる。そのようなものは無窮の過去からいまだ存在したことがなく,その後にも代々の年月を重ねるまで二度とない。その前方では火がなめ尽くした。その後方では炎が焼き尽くす。その前方において,地はエデンの園のようである。が,その後方は荒れすさんだ荒野である。それから逃れ得た物もなかった」。(ヨエル 2:2後半,3,新)
確かに,油そそがれたそれらエホバの証人のような霊的軍隊はかつて存在したことはありませんでした。彼らはバビロン的宗教の誤りをあばき,その活動領域のエデン的外観を完全に荒廃させながら,しかしまた「良いたより」を受け入れる家庭には祝福をもたらしながら,地の全域を行進してきました。エホバ神はヨエルを通してこの証人のことを次のように言っておられます。
「力ある者たちのように彼らは走る。戦人のように城壁を登る。……家々の上に彼らは登る。窓から盗人のように入り込む。……そしてエホバ自ら必ずその軍勢の前に声を上げる。その陣営には非常に多くの者がいるからである。彼の言葉を遂行する者は強大なのである。エホバの日は大いにして,まことに恐るべきものなのである。だれかその下でこらえ得よう」。(ヨエル 2:7-11,新)
天の無数のみ使いたちに守られて,その霊的“いなごたち”は戸別訪問を推進しました。普通の人たちが彼らの言うことを喜んで聞きました。『エホバの恐るべき日』が近づいているからです。―「宗教」,6,7章(西暦1940年,英文),および「ものみの塔」誌,1939年6月15日号から7月15日号までの,「宗教の運命」(英文)という記事をご覧ください。
13 どんな“馬”が今日“いなご”の軍隊の用いる手段となっていますか。その結果どんな大々的な家から家への証言がなされましたか。
13 預言者ヨエルはこの“いなご”の軍隊が,戦闘の備えをした「馬」のように,多くの戦車に似た音をたてて走っているところを見ました。(ヨエル 2:4-6,新)「家から家へ」と宣べ伝えながら霊的な戦いを推し進めるこれら世界的王国宣明者はいかにも大軍です。そしてヨハネの幻はさらに,万の二万倍 ― 200,000,000 ― の数に上る騎兵隊を構成する,乗り手を乗せた馬について述べています。(啓示 9:16-19)これらの馬は,エホバの裁きの宣明に役立つ強力な手段となっています。そしてこれらは,“いなご”の群れが戸別訪問活動を行なってきた年月の間に配布した幾億にも上る聖書や書籍や雑誌に,なんとよく似ているのでしょう。(『その時,神の秘義は終了する』第17章をご覧ください)1978年だけでも彼らは,啓示 7章9-17節の「大群衆」と共に,2億1,670万9,937部の「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌を家々に配布しました。“いなご”の軍隊の家から家への伝道は,確かにすばらしい証言を行なっています。
増し加わる迫害
14 ヨエル書 2章7節は,禁令下のエホバの証人の活動にどのようにあてはまると思われますか。
14 真理の敵はこの伝道活動を阻止することを試みてきました。多くの国では,国家主義の支配者たちが,この“いなご”の仕事を禁止しました。王国を宣べ伝える活動に対して「城壁」を設けようとしました。しかし“いなご”の軍隊はそのような城壁を「戦人」のようによじ登ります。活動が禁止されている幾つかの町では,地元の関心を持つ人々が証人たちに加わり,好意的なことがわかっている人々の家に証人たちを案内しました。時には,一つのブロックの中の一軒か二軒の家で証言し,別のブロックに移って同じことを繰り返すこともあります。多くの場合聖書だけで証言します。別の国では証人たちは,非公式に効果的な業をつづけていますが,再び自由に家から家へ行けるように,制限を加える足かせが砕かれる日を切に待ち望んでいます。
15 アメリカ最高裁判所は,わたしたちの戸別伝道を支持してどんな態度に出ましたか。
15 第二次世界大戦中,アメリカの僧職者たちは,エホバの証人の戸別伝道活動を禁止させようとしてあらゆる手を使いました。しかし,アメリカ最高裁判所は多くの場合に次のことを認めました。すなわち,この戸別伝道活動は,宗教活動の自由,言論および出版の自由という憲法上の保証によって支持されているということです。同裁判所は,1943年5月に行なわれたマルドック対ペンシルバニア州事件において多数を占めた意見として,エホバの証人の活動の聖書的根拠に注意を引き,次のように述べました。
「彼らはパウロの模範に従って『公にも家から家にも』教えているのだ,と主張する。使徒行伝 20章20節。『全世界に出て行って,すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ』という聖書の命令を文字通りに受け取っている。マルコ伝 16章15節。……種々の教派は今日この種の福音伝道の方法を大規模に利用しており,それぞれの派の文書頒布者たちが幾千幾万もの家に福音を携えて行き,じかに訪問して,信者を得ることに努めている。それは宣べ伝えるだけのことではなく,また宗教文書を配布するだけのことでもない。両者を組み合わせたものである」。
確かに“いなご”の軍隊と彼らの仲間は,敵が家から家への業に反対して築こうとした法律の城壁を乗り越えました。
全世界で「家から家に」
16 (イ)いま全世界でみ使いのどんな活動がありますか。(ロ)キリスト教世界の宣教者たちの“宣教”方法はなぜ成功しませんでしたか。
16 イエスはたとえ話の一つを次のように説明されました。「畑は世界です。……収穫は事物の体制の終結であり,刈り手はみ使いたちです」。(マタイ 13:38,39)使徒ヨハネもこの「終わりの時」のみ使いの活動を幻で見ました。ですから次のように書いています。
「わたしは別の使いが中天を飛んでいるのを見た。彼は,地に住む者たちに,またあらゆる国民・部族・国語・民に喜ばしいおとずれとして宣明する永遠の良いたよりを携えており,大声でこう言った。『神を恐れ,神に栄光を帰せよ。神による裁きの時が到来したからである。それゆえ,天と地と海と水のわき出るところとを作られたかたを崇拝せよ』。また,別の,ふたりめの使いがそのあとに従って,こう言った。『彼女は倒れた! 大いなるバビロン,あらゆる国民に自分の淫行の怒りのぶどう酒を飲ませた者は倒れた』」。(啓示 14:6-8)
神の王国の支配に関する永遠の良いたよりと,迫り来る偽りの宗教の世界帝国の崩壊とを,どうすれば全人類に知らせることができるでしょうか。いわゆる“異教”の国々に入り,学校や病院や救済センターを建て,自分たちのところへやってくる“ライス・クリスチャンたち”に,ことのついでに説教するというような,キリスト教世界のやり方でできるものでしょうか。そのような方法では決して成功しません。成功したためしがありません。それに,幾世紀にもわたって銃砲の密輸入や植民地戦争の片棒をかついできたキリスト教世界の宗教は,多くの非キリスト教国のどこに行ってもあまり尊敬されていません。
17 エホバの証人の宣教者たちはどんな方法を用いてきましたか。どんな結果を得ましたか。
17 天のみ使いたちは,近年になって,それとは大きく異なる宣教奉仕を指導してきました。1943年からエホバの証人は,特に全世界で働く宣教者の養成を目的として,ものみの塔ギレアデ聖書学校(最初の所在地は,アメリカ,ニューヨーク州,サウス・ランシング)を運営してきました。宣教者たちは次々に送り出されました。それは「公にも家から家にも」宣べ伝え,家庭聖書研究を司会し,関心を持つ人々を集めて新しい会衆をつくるためでした。この「家から家に」公に宣べ伝える奉仕は成功したでしょうか。確かに成功しました。1943年には,12万6,329人のエホバの証人が54の国や領土の至るところで,6,310の会衆に属して奉仕していました。35年後の1978年には,205の国に218万2,341人の活発なエホバの証人がおり,4万2,255の会衆に組織されていました。
18 (イ)家から家への証言は今日重要ですか。あなたがそう答える理由を述べてください。(ロ)裁きの業と関連した自分たちの役割を,エホバの民はどのようにみなすべきですか。(ハ)最終的結果として確かに幸福になるには,何をしなければなりませんか。
18 神による「裁きの時」が足早に近づいているので,国内伝道者や外国人宣教者の皆さんによって行なわれているこの家から家への活動も,その終わりに向かって急がねばなりません。(啓示 14:7)今日,多くの人は「やぎのような」気質を示すかもしれませんが,あなたの区域の中には,待っている「羊」がまだいます。あなたが勇敢に戸別訪問活動をつづけるとき,天のみ使いたちは,あなたがそれらの「羊」のところへ導かれるように配慮するでしょう。王位についておられる王キリスト・イエスが審判者です。わたしたちは裁きの業に関連して一つの役割を演ずる特権を与えられた,取るに足りない僕にすぎません。そして『公にも家から家にも徹底的に証言する』ことによってその役割を果たすことができます。(使徒 20:20,21)まもなくキリスト教世界および世界中の不法の都市は「実際に崩壊し,住む人もいなくなり」ます。そのときには,「ここに私がおります。私を遣わしてください」と言ってエホバへの奉仕の召しに応じた人々は,本当に幸せを感じるでしょう。―イザヤ 6:8-11,新。