1985 エホバの証人の年鑑
神権的拡大はすばらしい前進を見せる!
イザヤの預言の60章は,神権政治のもとでいま生じているすばらしい拡大を感動的な言葉で描写しています。特に1919年以来,油そそがれた者たちの一握りの残りの者は,王国を一般に広く知らせ,この世の体制の世俗的および宗教的な部分がサタンの制御のもとにあることを暴露するための行動を起こしました。人間の見地からすれば,それら残りの者たちには成功の見込みは全くありませんでしたが,彼らは神の天的組織を代表しており,その組織に対しては次のような明確な命令が与えられていました。「女よ,起きよ,光を放て。あなたの光が到来し,あなたの上にエホバの栄光が輝き出たからである」― イザヤ 60:1。
サタンの世の濃い暗闇や闇のただ中にあって,まさしくあらゆる光と真理の源であられる方からの栄光と光がいよいよ輝きを増し加えるようになりました。これは力強い影響を及ぼすことが予告されていました。「諸国民は必ずあなたの光のもとに,王たちはあなたの輝き出るその輝きのもとに行くであろう」。(イザヤ 60:3)光を掲げる忠実な者たちから成る小さな一隊は徐々に前進し,その努力の輪をいよいよ広げて行きました。エホバがその活動を祝福された結果,並外れた増加を示す証拠がはっきりと見られるようになりました。諸国の人々は確かにその光のもとにやって来ました。イザヤ 60章5節で次のように非常に生き生きと描かれている通り,すばらしい拡大を見ることができました。「その時,あなたは見て,必ず光輝き,あなたの心臓は実際にわなないて広がるであろう。海の富があなたのもとに向かうからである。諸国民の資産もあなたのもとに来る」。
わたしたちは確かに自分たちの見たものに対して喜びで光輝くようになりました。世界中で生じているすばらしい神権的拡張のために,わたしたちの心臓は興奮と幸福とでわなないて広がっています。いま生じている事柄が成し遂げられているのは,「『軍勢によらず,力にもよらず,ただわたしの霊による』と,万軍のエホバは言」われました。(ゼカリヤ 4:6)わたしたちがこれまで人生で目撃してきた事柄は,人間の力では決してもたらし得ないものでした。
世を照らす者たちから成るエホバの小さな軍勢が1919年に公の活動を始めた時から,サタンの邪悪な組織はそれら世を照らす者たちに対して反対の大いなる山を生じさせました。神の保護と後ろだてがなかったなら,エホバがご自分の王国の関心事を推し進めるために用いておられた組織全体はサタンの軍勢によって滅ぼされていたことでしょう。ゼカリヤ 4章7節はサタンの反対を「大いなる山」になぞらえ,エホバの次のような言葉がその敵に向けて語られています。「大いなる山よ,あなたは何者か。ゼルバベルの前にあっては,あなたも平たんな土地となるであろう。そして,彼は必ず頭石を携えて来る。それに向かって,『麗しいかな,麗しいかな』という叫びが上がるであろう」。
確かに,エホバはご自分の傑出したお名前と民のためにすばらしい事柄を行なってこられました。サタンの引き起こした反対の巨大な山は,神の偉大な目的の進展を妨げることはできませんでした。総督ゼルバベルによって表わされていた方,戦人なる王イエス・キリストの前に,大いなる山は平たんな土地となります。象徴的な神殿建造の業は完成に至るまで,頭石,すなわち主イエスご自身がその高められた地位に据えられるまで続けられなければなりません。大いなるゼルバベルはエホバの霊的神殿でその崇拝を再び確立する業を勝利の完成へと至らせます。悪魔の反対はすべて失敗に終わってしまうでしょう。そして,エホバを愛する,喜びに満ちた人々は勝利の証拠を目にして,「麗しいかな,麗しいかな」という大きな賛美の叫びを上げるでしょう。賛美の歌が全天全地に響きわたります。幸せな気持ちと喜びがすべての人の心に満ちあふれます。
ですから,「海の富」と「諸国民の資産」が霊的シオンに来ることを期待するのは,期待しすぎであると思えますか。神のみ言葉に収められているイザヤの栄光ある預言は,現在わたしたちが目の当たりにしているように,エホバがご自分の民に繁栄をもたらされるという事実を描き出しています。そしてわたしたちは,このすばらしい拡大は,全地がエホバの栄光で満たされるまでずっと続いてゆくことを知っています。
イザヤ 60章22節にある神の約束は既に成就を見ています。わたしたちは多くの国々で『小さな者が千となる』のを見てきました。65年ほど前にこの業を始めた小さなグループから,『小なる者が強大な国民となり』ました。全世界のエホバの崇拝者たちから寄せられる胸の躍るような報告は,エホバが『ご自分の時に速やかにその業を行なって』おられることを示しています。
アフリカ,南北両アメリカ,アジア,ヨーロッパ,オセアニアその他,海洋の島々から,驚くべき増加の報告が寄せられています。エホバがもたらしておられるすばらしい事柄に関する,心温まる,励みになる良いたよりを,神の民すべてに提出できることをたいへんうれしく思っています。1984奉仕年度の284万2,531人という驚くべき伝道者最高数は大きな喜びを引き起こすものでした。全世界では,7.1%という平均伝道者数のすばらしい増加がありました。ほとんどすべての国が伝道者の増加を報告しました。4万7,869という会衆の数は,1931年にエホバの証人という「新しい名」をわたしたちが受けたときに活発に奉仕していた伝道者の総数にほぼ匹敵します。741万6,974人の記念式出席者のうちの幾百万もの人々は,エホバに全く身をささげた活発な賛美者となるために霊的食物と助けを必要としています。これらの人々すべてがエホバの活発な賛美者になったとしたら,何と大勢の人々が流れ込んで来ることになるのでしょう。神権的な拡大はすばらしい前進を見ているのです。この「1985 年鑑」に載せられている際立った情報を読み,胸を高鳴らせ,声を上げて,輝かんばかりの喜びを表現してください。主権者なる主エホバが行なっておられる事柄を見て,読者の心臓が興奮でわなないて広がり,成し遂げられた事柄についてエホバに栄光と賛美を帰してゆきますように。
アフリカにおける神権的増加の喜ばしいたより
「実にすばらしい年でした!」: これは南アフリカの兄弟たちが報告を提出した際の喜びの言葉です。「わたしたちは4月に3万4,363人という空前の伝道者最高数に達しました」。そして,「初めてのことですが,わたしたちの黒人の兄弟たちは自分たちの王国会館を建てる許可を得ました。黒人の兄弟たちは今では著しく改善された施設で集まり合うことができるようになりました。そしてこれが,その分野で最も大きい前進の一つになる見込みがあります」と述べられています。同支部はさらに次のような喜ばしいたよりを伝えています。
「昨年わたしたちはこの国で初めて大規模な異人種間の大会を開きました。そのうち最大のものはヨハネスブルグで開かれ,2万9,073人が出席しました。出席者は,ズールー語,セソト語,ポルトガル語,ギリシャ語,英語そしてアフリカーンス語で行なわれる集まりのうち自分の望む集まりに出席できました。多くの人種からなる343人のバプテスマは,この国におけるエホバの羊の一致を示す際立った例でした」。
ソウェトに住むある若い女性は最近訓練を終えて祈とう師になりましたが,あるアフリカ人のエホバの証人の娘に,「この世に真理があるのかしら」と尋ねました。それがきっかけになってその姉妹は彼女との聖書研究を司会するようになり,この若い女性はすぐに集会に出席し始めました。しかし,彼女の母親は怒り狂い,エホバの証人との交わりを続けるのなら祈とう師になるための学業につぎ込んだ学費を返して,家から出て行ってもらわなければならない,と言いました。それでもこの若い女性は自分の持っていた悪霊に関係した道具類を全部焼き捨て,母親に学費を返すことに同意し,全部の集会に引き続き出席しています。
「ザンビアにいるわたしたちにはなすべき仕事がまだたくさんあります」: エホバの僕たちがこのようなりっぱな結論に達したのは,昨奉仕年度に幾つものすばらしい出来事があったからです。彼らは,主の夕食に39万3,431人がやって来た時,言い知れない興奮を覚えました。この際立った数字は,1984年1月に報告した伝道者の数(5万8,925人)のほぼ7倍に相当します。これはザンビアにとって実に大きな活動の分野を開くものとなります。
一人の兄弟は,あるグループが証言の帰りにバリケードの築かれている所を通りかかった時のことについて述べています。検査を一通り終えてから,警察官は彼らが伝道の帰りなのかどうかと尋ねました。兄弟は,「そうです,わたしたちは真理を求める人々に話をしていました」と答えました。すると警察官は「ものみの塔」誌を1部求めました。それで兄弟は警察の野営地に雑誌を届ける約束をし,その野営地で雑誌経路を取り決めました。
「エホバは増加を速めておられる」: これはガーナからの報告です。昨奉仕年度の初めに2万2,304人だった伝道者の数は1984年4月に2万4,551人まで増加しました。しかし,8月に2万7,730人が報告したときには,本当に大きな喜びがありました。さまざまな出来事のあった昨奉仕年度中,七つの新最高数が得られました。記念式に出席した真理を探し求める人々は,合計10万4,151人という非常に大きな数に達しました。他の多くの国々と同様,着実な拡大のすばらしい可能性があります。確かにエホバは定めの時に増加を速めておられます。
支部の報告によれば,伝道者が道を歩いていると,声をかけてきて雑誌を求める人が少なくないということです。例えば,一伝道者は次のように述べています。「いつもはわたしたちの文書を何も求めない一人の男の人が私のところへやって来て,雑誌が欲しいと言った時にはびっくりしました。その人は異なった号を6冊選び出しました。そこで予約を勧めると,その人はすぐに両方の雑誌を予約しました」。
ザイールで真理を探し求める幾千人もの人々: この国の支部は,「幾千人もの人々が王国の真理を探し求め,拡大しつつあるエホバの組織の中でそれを見いだしている」のを見て喜んでいます。ザイール支部にとって昨奉仕年度中の大きなニュースは,新しい支部を建てるために200万平方㍍の土地を購入したことでした。新しい建物が建てられ施設が改善されたので,同支部は自分たちの区域で「増加した活動すべてに対応」できるようになるはずです。記念式の出席者は,13万9,856人だったので,この国の3万2,208人の伝道者(8月の最高数)は,今や自分たちの前途にすばらしい拡大の可能性があることを知っています。
「記録的な年でした」: リベリアのエホバの僕たちはこのように感じています。この国の記念式の出席者数もやはり際立ったものでした。平均伝道者数は1,151人ですが,その数の5倍を上回る6,440人という驚くべき数の人々が記念式にやって来ました。会衆の伝道者たちは良いたよりを伝えるために,毎月一人当たり平均12時間を費やしています。畑は豊かに実っており,柔和な人々を取り入れる時になっています。3歳の一少女はこの優れた増加に間接的に貢献しました。この少女が自分の祖母を訪問した折に,祖母から「聖書物語」の本を読んで聞かせられたようです。少女は学んだ事柄がすっかり気に入り,そのことについて母親に話し続けました。それで母親はとうとう,次に自分の家を訪れた伝道者に,私にも『聖書が分かるように』助けてくださいと頼みました。
ナイジェリアで新たな活力: この国からの報告には感謝すべき理由がたくさん含まれています。同国では1975年以来最も優れた伝道者の報告があり,1984奉仕年度中に良いたよりを人々に伝えた人の最高数は11万3,537人に達しました。ナイジェリアは熱心なエホバの証人の世界的な家族の中でも最大級の規模を持つ成員の一つです。ナイジェリアにおける目覚ましい拡大は,アフリカの他の国々の兄弟たちだけではなく,世界中の兄弟たちを大いに鼓舞するものです。
サタンは神権政治の繁栄に怒りを抱いており,あらゆる手段を使ってそれを妨害しようとしています。一人の兄弟は,過激な政党の党員たちが兄弟の家に押し寄せ,自分たちの政策を兄弟に受け入れさせようとしたことについて次のように語っています。「彼らはこん棒でわたしに襲いかかりましたが,殴られても羽で触れられたぐらいにしか感じませんでした。家内は抗議したために平手打ちを受けました。わたしたちはエホバに祈り,そのみ名を呼び求めました。すると,暴徒たちの間でわたしたちをどうするかについて意見が分かれ,互いに争いだしました。わたしたちの持ち物を破壊しようとして家の中に入って行った者たちもいました。ところが,その人たちは羊のようにおとなしくなって出て来ました。全体として,彼らはわたしたちに大きな危害を加えずに立ち去りました。この苦しい体験の後に,一番上の子供がほかの子供たちを集めて,聖書から慰めを与え,何物もわたしたちに危害を加えることがないよう祈っていたことを知りました。長女の心に真理がこれほど深くしみ込んでいたことを知ってうれしく思いました」。同国の支部は,「このような経験は,将来の進歩に対して楽観的な見方を持たせてくれます」という感想を述べていました。そのような破れることのない忠節さを持つこれら信念の堅い人々は,エホバから深く愛されているに違いありません。
真理によって変えられる: ギニア共和国の一特別開拓者は,キシ語でセンギアンドという名をつけられた人と聖書研究を始めました。その名には,「同意しない者」という意味があります。この人はその名前通りの人でした。子供のころから好戦的で,けんか好きで,非常に扱いにくい人物だったからです。センギアンドは多くの人から恐れられていました。ところが,エホバの証人と聖書を研究するようになってからほどなくして,センギアンドは自分の生活を著しく変化させ始めました。けんかをしなくなり,たばこと大酒をやめ,クリスチャンの人格を培うようになったのです。そして,温和で争いをしない人になりました。これはその地方一帯に広く知られるようになり,神の真理の音信の大きな力に大勢の人々は深い感銘を受けました。
体の不自由な人々を見過ごさない: シエラレオネから寄せられた次の経験は,わたしたちが野外奉仕で出会う体の不自由な人々を見過ごさないことの大切さを示しています。一人の宣教者の姉妹は,ジェイという名の18歳の足の不自由な少女と聖書研究を始めました。この少女はそういう体だったので,学校に行っていませんでした。彼女にとって動き回るのは並大抵のことではありません。木のブロックを使って手が直接地面に付かないようにし,自分の体重を両手にかけて,両足を後ろで振って前に進みます。
この宣教者がたびたび訪問した結果,ジェイは聖書の真理を学ぶようになり,読み方も学び始めました。彼女は自分の住む小さな囲い地から思い切って足を踏み出したことが18年間に1度しかありませんでしたが,自分の住む同じ通りで開かれている会衆の書籍研究に出席できるかどうか尋ねました。ジェイが安全にしていられる自分の家からあえて街路に出て行くのを見て,家族の人たちがどれほど心配したか想像できるでしょう。ジェイは真理を絶対に自分のものにするのだという決意を示しています。時には先に述べたような方法で4ブロックか5ブロック“歩いて”,タクシーをつかまえ,王国会館に行かなければならないこともありますが,それでもすべての集会に出席しているのです。現在,ジェイは真理について他の人々に話しています。
マダガスカルからの励みになるたより: 支部からの報告には次のように述べられています。「1983年の12月の終わりごろ,わたしたちは自分たちの業の法的な認可を求める申請を出しました。そして,エホバに感謝すべきことに,1984年2月24日にその申請は認められました。これは1970年に科された禁令が解かれたという意味ではありませんが,わたしたちは地元の新しい協会のもとで登録をすることができました。このニュースを聞いて兄弟たちはみんな大喜びしました。奉仕の活動は増し加わり,その結果4月には二つの際立った数字が得られました。1,708人の伝道者が報告を提出し,8,977人が記念式に出席したのです」。
アフリカの他の国々も同様の励みになる報告を送ってきました。この広大な大陸は実に驚くべき証言を受けています。そこには,家庭聖書研究を通して,エホバの道と自分の生活を調和させるよう助けられる人が幾百万人もいます。アフリカでわたしたちの兄弟たちが直面している数多くの問題や困難を考えると,この神権的な活動はすべてエホバの霊によってのみ成し遂げることができたと言わなければなりません。では,別の大きな畑であるアジアにおける神権的な進展を見ることにしましょう。
アジアから寄せられた心を鼓舞する報告
大いなるバビロンの諸宗教は,人口の最も多いこの地域を幾千年にもわたって非常に深い霊的な暗闇と神秘主義で覆ってきました。しかし今では神権政治の光がそのとばりを貫いて輝いており,その光のもとに来る人々の喜びは大きなものになっています。わたしたちは,そのようなすばらしい結果がもたらされていることを本当に感謝しています。
パキスタンにおける進歩: パキスタンのような回教の国で増加を見るのは非常な励みになります。今や伝道者の最高数は231人という数に達しました。これは補助開拓の活動が増し加わったことによります。家族のきずなが非常に強いため,どんな宗教に属していても,家族の伝統を断ち切るのは容易なことではありません。しかし,一人の若い伝道者は,コリント第二 6章14節から18節の聖句を用いて,別の青年がペンテコステ派のある団体から離れるのを助けることができました。現在,その青年とその人の友人は勤勉に宣べ伝える業に携わり,バプテスマを目指して優れた進歩を示しています。最も難しい区域も神権政治の増加に貢献しています。
「成し遂げられた事柄を非常に喜んでいます」: 昨奉仕年度についてインド支部はこのように述べています。インドでは伝道者の最高数が5回得られ,前年5,842人だった伝道者最高数は,6,552人に達しました。その大半は土地の言語を話す兄弟たちの働きによるものです。例えば,地方語を用いて七つの大会が開催され,その結果,出席した人々は話からこれまでよりもはるかに多くの益を得ることができました。インドの新しい支部施設は完成間近です。新しい建物は使用され始めており,設備はさらに充実するので,兄弟たちは優れた拡大を心待ちにしています。
一人の若い大学生は,友人から「進化」の本と「若い時代」の本をもらいました。ローマ・カトリック教徒だったこの青年は進化論を信じており,聖書は信頼できないと考えていました。しかし,その2冊の本を読んで見方が変わりました。将来に対して確かな希望を差し伸べている,まことの神がおられるということを理解するようになりました。親族からの反対にもめげず,この人はエホバの証人と聖書を研究し,集会に出席しました。そして学生仲間にも証言しました。ある学生仲間からは殴られてひどい目に遭いましたが,それでも聖書の真理を大胆に語り続けました。その結果,この人の学生仲間8人が援助されて献身し,バプテスマを受けるに至りました。この人はまた,自分の家族の者にも真理を伝え,その中の幾人かは研究を始めました。そして実の兄弟の一人はバプテスマを受け,母親もバプテスマを受ける予定です。3人のいとこも真理を受け入れ,バプテスマを受けましたが,その中の二人はカトリックの修道女でした。これで,この青年が4年前に大胆で熱心な宣べ伝える業を始めて以来,合計24人の人が真理を受け入れたことになります。何というすばらしい話でしょう。
2年生の幼いスーザンがクラスで聖書物語をとても上手に話したので,ローマ・カトリック教徒の先生が「わたしの聖書物語の本」を1冊求めました。この先生は今では宗教の授業でその本を使っており,生徒たちもほとんど自分用にこの本を持っています。スーザンの母親は,その学校での宗教の授業に関して与えられる1位の賞品はすべて「わたしの聖書物語の本」だったのを見て大喜びしました。
スリランカにおける進歩: インドの南東部の海岸から32㌔ほど離れた所に浮かぶこの美しい島では,仏教をはじめ,東洋の諸宗教が優勢です。説得力のある話をする才能を持つ一人の若い姉妹は補助開拓の業を定期的に行なっています。彼女は5か月間に1,059冊の雑誌を配布し,185の予約を得ました。これは昨奉仕年度に同支部の報告した予約の約5分の1に当たります。
農業を営むあるローマ・カトリック教徒は,気性が荒く,行ないが悪いので,人々を恐れさせていました。この人は闘鶏を趣味にしていました。人々は至る所からやって来て,闘鶏に幾千ルピーものお金をかけていました。ついにこの人は真理を知るようになり,その趣味がエホバに喜ばれないことを悟りました。当初この人の奥さんは真理に反対していましたが,後に夫に加わりました。この人は1,500ルピー出すからその有名な闘鶏を譲って欲しいと言われましたが,二人はある晩その鶏を夕食にしてたいらげてしまいました。今では,その辺りの人々はこの人の生活の変わり様に驚いており,その結果,真理についてりっぱな証言がなされました。
日本における驚くべき出来事: 「私たちはエホバがこの国の業を引き続き祝福してくださっていることを感謝しています」。これは日本の兄弟たちの心から出た言葉です。日本では神権的な拡大に関連して,非常に多くの驚くべき事柄が生じています。日本では1984年8月に68か月連続の伝道者最高数を記録し,その数は9万2,022人に達しました。今では,区域がこれまでよりもひんぱんに網らされるようになり,区域によっては七日ないし十日に一度網らされています。何と勤勉な人々なのでしょう。エホバがその努力を豊かに祝福しておられることは,1984年の記念式の22万4,696人という出席者数にも表われています。
日本は“伝道者爆発”に伴う必要すべてにほとんど追いついていけないほどです。そこで,8階建てのもう一つのベテル・ホームと新しい6階建ての工場とが建てられることになっています。日本支部の現在の大きな建物がまだ1982年5月に献堂されたばかりであることを思い起こすと,「この次には何が起きるのだろうか」と考えざるを得ません。
一人の婦人は,3年の間忍耐強く訪問を繰り返した特別開拓者を通して真理を学びました。特別開拓者の姉妹がこの婦人にコリント第一 13章の中で定義されている愛について説明した時,婦人はこれこそ真理だと確信するようになりました。彼女は以前に自分が属していた宗教においても活発に活動し,大勢の親族をその宗教に導き入れていました。そこで婦人はそれらの親族全員を招き,自分がとうとう真の宗教を見いだしたことを説明し,聖書の真理を学ぶよう皆に勧めました。結果はどうだったでしょうか。5年間に,この婦人の親族50人以上がエホバの証人になりました。その中に一人の大工がいて,その人も自分の仕事仲間や親族,知人に良いたよりを伝えました。その結果,24人が真理に入りました。これらの人々はいずれも,おもに富山県にある三つの会衆と交わっています。近縁の人々に真理を伝えるなら,確かに大きな祝福を得ることがあります。開拓者精神は日本中に行き渡っていて,毎月,平均して伝道者の37%が何らかの形の開拓奉仕にあずかっています。
動乱の地で業を続ける: レバノンではこの1年も戦争と暴力に明け暮れました。5か月以上にわたって,同国への航空輸送の道は断たれ,この支部の管轄下にある土地の兄弟たちと連絡を取るのは困難でした。大勢の兄弟たちは自分の家を後にして国内の他の場所へ避難することを余儀なくされました。負傷した人は幾人かいましたが,死亡した人は一人もいませんでした。大会は小さなグループに分かれて開かれ,野外奉仕は各地区の状況に応じて最善と思われる方法で行なわれました。こうした事態の中にあって,兄弟たちは次のように報告しています。「わたしたちは必要な霊的食物を受け損なったことは一度もありませんので,このことを感謝しています。今後どんな状況のもとに置かれようとも,エホバがこの地のご自分の僕たちに,神への奉仕を続けられるようにしてくださることを祈っています」。
補助開拓奉仕はレバノンの大勢の人々にとって祝福となっています。84歳になる一姉妹は,夫の死後,次のように書いています。「子供たちはみな成人しており,結婚して家族を持っています。子供たちが私の世話をしてくれないわけではありませんが,子供たちが訪ねてきてくれても,空虚な気持ちと寂しさを克服することはできませんでした。そんな時,会衆の長老の一人が補助開拓奉仕をしてみるよう提案してくださいました。私はためらいましたが,とうとうやってみることにしました。何という喜びなのでしょう。エホバは私が補助開拓奉仕を経験できるよう,この年になるまで生き長らえさせてくださったのだと感じました。それ以来,毎月補助開拓者として奉仕を続けています」。
イスラエルは増加に感謝する: この国ではこれまでずっと人々に証言するのが非常に困難でしたが,イスラエル支部はとうとう300人の伝道者を超えたことを報告できるのを喜んでおり,兄弟たちはこのことを非常に感謝しています。家族のきずなが非常に強く,多くの人は真理を受け入れて反対まで引き起こす危険をあえて冒そうとはしません。しかし,中には確固とした立場を取る人もいます。例えば,ある青年は真理を求めて神に祈りました。そして,数日後バスの中である女友達に会い,彼女の行なっている聖書研究に加わるよう誘われました。『両足をへし折ってやる』という父親の脅しにもかかわらず,この青年はよく進歩し,聖書研究を続けています。中立の問題でも確固とした立場を取り,刑務所の独房での監禁にも耐えました。この人は真理のために引き続き確固とした立場を保っています。
やはりイスラエルでのことですが,一人のイスラム教徒が自分の家の戸口で幾冊かの本を求めました。ところが,証人たちは重ねて訪問して説明することを一度も行ないませんでした。それで,次にエホバの証人がやって来た時にこの人は,必ずもう一度来るよう念を押したので,証人たちはその通りにしました。聖書研究が始まり,その人は真理に入りました。このことは,だれでも関心を示す人には,引き続き,できる限り世話をしなければならないことを強調しています。
タイの兄弟たちはバプテスマで元気づけられる: 最近,タイで行なわれた地域大会に,出席者は全員感謝の念を深めました。というのは,1,147人の出席者の約4%に当たる46人がバプテスマを受けたからです。タイでは,王国の希望に歓びを抱く人々がますます増えています。タイのベテル家族の一成員はカトリック系の学校の図書館員に「聖書物語」の本を配布し,その中に『永遠に生きる』の本に関するちらしをはさんでおきました。後日,ある教師が生徒たちに聖書を教えるのに用いる本を探しに学校の図書館へ行きました。この女教師は「聖書物語」の本を見つけ,それが大変気に入ったので,本を配布した姉妹に電話をかけ,生徒たちのために30冊を注文しました。この本を届けた時に,姉妹は『永遠に生きる』の本も数冊配布することができました。このことから姉妹は,普通は比較宗教学の課程のあるさまざまな学校や大学の図書館員を訪問することを思いつきました。こうして姉妹は280冊の本,「地上での生活」のブロシュアー240冊を配布し,20件の予約を得ることができました。
フィリピンは前進する: 1984奉仕年度中,7万5,257人の伝道者最高数が得られました。これは1983年に対して平均8%の増加に当たります。これは非常に喜ばしいことで,この国でも物事が本当に前進していることを示しています。開拓奉仕の申込書が毎月,約200通寄せられており,こうした傾向が続く限り,野外での拡大は確実に続くことでしょう。この国における4月の補助開拓者の総数は1万3,984人という非常に優れたものでした。
7人家族のある父親は,予算が足りなかったため,マニラで開かれる地域大会に自分だけが出席する計画を立てていました。この人は漁業に携わっていたのですが,漁はかんばしくありませんでした。それでも,一家そろって大会に出席できるよう,エホバに助けを祈り求めていました。大会の直前になって,父親と12歳の息子が漁に出かけました。二人は自分たちの努力をエホバが祝福してくださるよう祈りました。何度網を降ろしても魚は入りませんでしたが,男の子は父親にもう一度だけやってみることを勧めました。二人はその通りにし,網を揚げてみると,500㌔以上の魚が入っていたので驚きました。そしてそれを売って,一家全員が大会に出席しても余りあるほどのお金を得ました。
死刑囚の独房で証言する: フィリピンの長老たちは長年の間,首都マニラにあるモンテンルパ国立刑務所を交替で訪問し,死刑囚の独房にいる受刑者で聖書研究を望む人に聖書を教えてきました。ある時,独房の中で聖書研究が行なわれている所へ,別の受刑者が近寄って来て,耳を傾けるようになりました。この受刑者は幾度かそうしました。ある日,贖いと,イエスの犠牲が罪の許しへの道を開いたこととについての話が行なわれていました。すると,話に耳を傾けていたその受刑者は長老に向かって,「これだけひどいことをしたのに,私も許していただけるということですか」と尋ねました。この受刑者は幾人もの人を殺したかどで死刑の判決を受けていたのです。
最近この受刑者は自分の命をエホバに献げ,バプテスマを受けたいと申し出ました。しかし,この受刑者は巡回大会でバプテスマが行なわれる以前に処刑される予定になっていました。そこでこの人は刑の執行の延期を申請し,それを認められました。そして,1984年6月29日にバプテスマを受け,処刑の日が迫っているにもかかわらず,新たなエホバとの関係を歓んでいます。ほかの3人の死刑囚もこの人と共に,刑務所の屋上の水槽の中でバプテスマを受けました。
多くの実を生み出した聖書研究: 韓国で,開拓者の姉妹が一人の婦人と聖書研究を始めました。やがて,近所の仏教徒の婦人がその研究に出席するようになりました。この開拓者は研究の度に10分から20分の時間を割いて,その仏教徒の婦人に話しかけ,愛と憐れみに満ちた創造者エホバと,なだめなければならない怒り狂う偽りの神々との違いを示しました。そして,サタンとその悪霊たちが神に対する人々の信仰を打ち壊そうとしていることを説明しました。ある日のこと,この仏教徒の隣人は,自分の持っている偶像を全部打ち壊してエホバを崇拝するようになったら,自分と自分の家族の身にどんなことが起きるかと開拓者に尋ねました。
その婦人は説明を聞いて安心し,会衆の長老たちはこの婦人の家にあった数多くの偶像を打ち壊すのを手伝いました。その後,悪霊に悩まされたものの,この婦人は問題の源がどこにあるか知っており,死んだ先祖の仕業ではないことを悟っていました。やがて,この家族の7人の成員 ― 婦人とその夫と5人の子供たち ― はバプテスマを受けました。その母親と娘の一人は現在,正規開拓者です。研究が始まった家の婦人のほうはどうなったでしょうか。この人もバプテスマを受け,その4人の肉親の姉妹たちも今では研究しています。
このようなさまざまな経験は,真理の力強い影響力が今やサタンの世の宗教的な障壁を貫いていることを実証しています。確かに,諸国の人々が「神があなた方と共におられる」ことを学び知り,「真剣な気持ちで行ってエホバの顔を和め」る時が来ています。(ゼカリヤ 8:20-23)オーストラリアや太平洋の島々についても同様のことが言えます。今度はその地域に注意を向けることにしましょう。
拡大に喜ぶオーストラリアと太平洋の島々
「昨年に続いて顕著な年」: オーストラリア支部は1984奉仕年度をそのように言い表わしています。伝道者数が初めて4万人を超えました。開拓者精神が著しく高まったことがその理由の一つであることは明らかです。4月には,全伝道者のほぼ25%に当たる1万250人が開拓奉仕を行ないました。オーストラリアの原住民に音信を伝える業も引き続き急速に発展しています。非常に多くの原住民と聖書研究が行なわれており,100人にも達する幾つかの大きな群れが定期的に集まり合っています。それらの群れはまるで蜜蜂の巣のように活気にあふれています。原住民の兄弟たちの中には補助開拓奉仕を行なっている人がかなり大勢います。
「拡大の年」: ニュージーランドは1984奉仕年度をそのように言い表わしています。1984奉仕年度になってまず,新しいベテルの建設用地として6㌶に及ぶ土地の購入の契約が結ばれました。幾百人もの兄弟姉妹たちが仕事を自発的に手伝いました。この国では1980奉仕年度以来会衆の数が増えず,ずっと119でしたが,昨奉仕年度は増加して,その数は132になりました。平均伝道者数は8%増加しました。「特に胸の躍る思いがしたのは,補助開拓者が初めて1,000人を超えたことです」と,支部の報告は述べています。聖書研究の数も初めて5,000件を超え,主の記念式には,これまでの出席者の最高数である1万8,066人が出席しました。
7人の子供を持ち,夫と離婚した一人の女性は,けんかの絶えない大変惨めな家庭生活を送っていました。ある日,実父の葬式があった時,その人は成人している娘の一人が別の婦人と聖書について話しているのを聞きました。その後,その娘の家へ1週間泊まりに行きました。その親子はいつもは言い争い,けんかばかりしていましたが,この度は様子が違っていました。娘が大変落ち着いていて,家族ととても仲良くやっていたので,母親は,『あの子がエホバと呼ぶ神様は,憎しみを取り除けるのかしら』とひそかに考えました。
1か月後にその人は研究を始め,自分の間違った行ないを一つ一つ正し,バプテスマを受けました。そして今では補助開拓奉仕をしています。また,3人の娘と一人の婿,実の姉妹とその二人の子供が聖書を研究しています。その人は,「私の家族生活は現在平和そのものです。兄弟姉妹たち,ありがとうございます。エホバ,ありがとうございます」と語っています。実に喜ばしい結果になりました。
グアムからの喜びにあふれた報告: マーシャル,ポナペ,コスラエ,トラック,サイパン,ヤップ,ベラウ,キリバス,ナウルといった諸島群ではそれぞれの主要な島で優れた証言が行なわれている,とグアムの支部は伝えています。ベラウの一官吏が最近述べた通り,「エホバという名前はこれらの島で人々によく知られています」。昨奉仕年度中,長老や宣教者たちは沖合いの島々,すなわち環礁に出掛けてゆく努力を払いました。それらの島に船で行き,島民にその土地の言葉で伝道し,文書を配布して人々に読んでもらうようにしたのです。
1984奉仕年度には,「ものみの塔」誌を六つの異なる言語で発行したほか,『永遠に生きる』の本のコスラエ語版とヤップ語版を受け取ったので,兄弟たちは大変喜びました。ギルバート語の「王国ニュース第31号」が発行されましたが,これは協会がこの言語で印刷した最初の出版物です。その王国ニュースは熱烈に受け入れられ,その結果新しい聖書研究が幾つか始まりました。このパンフレットはコスラエ語,マーシャル語,ポナペ語,トラック語,ヤップ語でも発行されました。4月には614人の伝道者の37%が開拓奉仕を行ないました。グアムの支部は,家族からの強い反対にもめげず真理の側に堅く立って祝福されたある若い開拓者の経験を次のように伝えています。
「20歳になる一人の姉妹は1982年の9月から正規開拓者になりました。間もなく,厳しい迫害を受けるようになりました。その姉妹の両親は娘を未信者と結婚させる手はずを整えていたからです。『主にある者とだけ結婚しなさい』という聖書の助言を固く守って,姉妹はその男性との結婚を断わりました。(コリント第一 7:39)それで,それから6か月の間,自分の家に事実上軟禁されてしまいました。
「この姉妹は1983年3月に行なわれる主の記念式に出席しようと決意しました。出席させて欲しいと父親に3度頼みましたが,父親は行かせてくれませんでした。再び集会へ行くことにした,と両親に話すと,父親はすっかり腹を立て,半年ぶりで集会に行って帰って来た娘を家から追い出してしまいました。姉妹は,野外奉仕用のかばんと背中にしょった衣類だけを持って家を出,エホバの証人であるおばさんの家に身を寄せました。しかし,その翌日も野外奉仕に参加したのです。そして今でも熱心に正規開拓奉仕を行ない,10件の聖書研究を司会しています。両親のほうはといえば,6か月に及ぶ自分たちの仕打ちを娘にわび,どうか家へ帰ってきて欲しいとしきりに頼みました。姉妹は,だれからも,またどんなことにも妨げられずにエホバへの奉仕を行なえるなら,という条件で家に戻りました」。
パプアニューギニアにおける喜び: この地の兄弟たちは,幾つか存在する孤立した会衆の成員がすばらしい進歩を示して円熟に向かっていることを歓んでいます。それはりっぱなことであり,今後の増加を促すものとなることでもあります。補助開拓者が34%増加しました。このことからも兄弟たちの円熟したことがよく分かります。記念式の出席者は,7,704人に達しましたが,これは前年の出席者数を1,000人余りも上まわるもので,今後大いに発展することが見込まれます。数年前真理に接して,その後故郷の村へ帰った男の人が,最近開かれたある巡回大会に出席しました。大会が終わってからその人は旅行する兄弟たちの所へやって来ました。そして,自分が住んでいる僻地の村の年寄りたちは,証人に村へ来てもらい霊的なことに関心のある人々すべての世話をしてもらうことを願っていると言いました。ここでも人々はやって来てシオンへの道を尋ねているのです。
フィジーとハワイからの良い知らせ: フィジーでは伝道者の新最高数を6回記録しました。最後に新最高数が得られたのは8月で,その数は950人でした。また,この島では,開拓奉仕を始めたり,以前よりはるかに産出的になったりしている人が大勢います。ハワイも,1984年にすばらしい増加を見込んでいましたが,その見込みははずれませんでした。初めて5,000人を上まわる伝道者が野外奉仕を報告したのです。しかもそのうちの23%の人は4月中,何らかの全時間奉仕に携わりました。37名の人が補助開拓を行なった会衆が二つありました。別の会衆でも,31人の正規開拓者に加えて,46人が補助開拓を行ない,4月の開拓者は合計77人になりました。
タヒチの霊的パラダイス: 太平洋の「楽園<パラダイス>の島」の一つに数えられるタヒチも霊的パラダイスに伴う数々の祝福を経験しています。ここでは伝道者が14%増加し,聖書研究と再訪問の数は最高数に達しました。したがって,兄弟たちが,神の言葉を学ぶことを心から望んでいる人々を一人残らず教える面でよく進歩していることが分かります。沖合いの島々に出かけて行って良い結果を得ている兄弟たちもいます。ヒバオア島では,六つの家族が教会の礼拝を終えるのを待たなければなりませんでした。しかし,その6家族がみな文書を求め,タヒチ語の「ものみの塔」誌を予約したのです。しかも,教会の指導者も,聖書を理解するためにこれまで自分が探していたのは正にこういう文書だと言いました。
ソロモン諸島の神権的産出力: ソロモン諸島における発展には驚くべきものがあります。4月に伝道者が640人という新最高数に達したのは兄弟たちにとってうれしいことでした。また,記念式の出席者数は伝道者数の5倍を上回る3,210人でした。昨年,兄弟たちは新たに三つの島へ出かけて行きました。それらの島では英国国教会が大きな力を持っています。一人の特別開拓者は教会の指導者に招かれて,独身の男性の聴衆に話をすることになりました。しかし,エホバについて話し始めたところ,一部の人が腹を立ててその開拓者の兄弟を海に投げ込もうと考えました。一人の青年がその人たちに対抗し,勇敢にも,「皆さんはどうしてそんなことをするのですか。そんなことをするくらいなら,教会から聖書を処分したほうがいいのではありませんか」と言いました。ほかの人たちはその青年にくってかかりましたが,青年は自分の立場を変えませんでした。そして研究を始め,生活を調整し,今では良いたよりを他の人々に伝えることに多くの時間を費やしています。
ソロモン諸島には伝道者が一人しかいない島がありますが,その伝道者の話によると,オズワルドという名の聖書研究生は,証人と研究をしていることが人々に知れるや,英国国教会の長老たちと主教の前に連れ出されたということです。「どうしてあの人たちと研究などしているのですか」と主教は詰問しました。オズワルドは答えました。「あの人たちは聖書を教えてくれます。私はそれがうれしくてたまりません。私は長年の間ぜひとも聖書を知りたいという願いを持っていました。ですから,今学んでいることを捨てる気持ちはありません」。驚いたことに主教は他の人たちに向かってこう言いました。「この男の好きなようにさせましょう。これほど聖書を学びたいと思っているなら,それをやめさせるべきではありません」。オズワルドとその夫人にとって,聖書の真理は今でも喜ばしいものです。二人は定期的に研究して,より多くの事柄を学んでいます。
悪霊崇拝から解放される: ニューカレドニア支部は昨奉仕年度に開拓者学校を開くことができ,地元の開拓者12人が出席しました。その中の一人の姉妹は,真理を知る以前,家庭内に問題がたくさんあったのでゲリスール(妖術を使う医者)のところへよく行っていました。実際,ニューカレドニアで開業しているその種の“医者”全部にかかり,1か月に1,000㌦(約24万円)を使っていましたが,何の成果も得られませんでした。そんな時,真理に接して,自分がかかえる問題を解決するのは真理だけだということを悟りました。それで,ブカン(お守りとしてゲリスールからもらった,植物の根と葉を縛ったもの)を全部処分しました。処分したあと,悪霊の攻撃に悩まされるようになりました。1日中エホバに祈らねばならなかったということです。苦しい闘いが24時間続いた後,悪霊はついにその姉妹から去りました。人々を自由にする真理を開拓者として分け与えているこの姉妹は現在大変幸せです。―ヨハネ 8:32。
新しい支部事務所が設置される: 世界でも美しいこの地域に別れを告げる前に,ぜひ西サモアの状況をお伝えしたいと思います。その地の兄弟たちにとって1984奉仕年度における顕著な出来事は,2月1日に新しい支部がアピアに設置されたことです。その新しい支部は現在西サモア,ニウエ,トンガおよびツバルを監督しています。トンガのババウにも新しい会衆が作られました。家族ぐるみで真理にこたえ応じている例も幾つかあり,諸会衆の状況は以前よりも安定してきたということです。こうした優れた発展のおもな理由は開拓奉仕が活発に行なわれるようになったことにあります。子供を持つ人たちは自分が研究する時に子供も一緒に参加させるよう援助されています。一組の夫婦は25年余り前に排斥されました。二人は真理がどこにあるかを知っていましたが,会衆に復帰しようとはしませんでした。しかし,子供たちを聖書の原則にそって育てました。その結果4人の娘は野外奉仕を活発に行なうようになり,開拓者になりました。喜ばしいことに,現在その父親と母親も復帰し,霊的な点で子供たちと再び一致することができました。これはめったにないことではありますが,実に喜ばしい結果です。では,今度はヨーロッパ大陸の神権的拡大に目を向けることにしましょう。
ヨーロッパからの,心を喜ばせるたより
世界の他の地域の場合と同様,ヨーロッパの支部から寄せられた報告もスペースの関係でほんの一部しか紹介できません。
イタリアでは増加が続く: カトリックの本拠のただ中にいるイタリアの兄弟たちは,驚くべき逆転が起きるのを見てきました。第二次世界大戦中,ファシスト政権下でイタリアの証人の数は100人ほどに減少してしまいました。しかし,40年後の現在,エホバの証人は11万6,555人という驚くべき数に達しています。報告を受け取る度に,証人の数は増加してくるように思えます。記念式には25万868人という実に大勢の出席者がありました。したがって今後さらに大きな増加があるものと考えられます。
ある年若い兄弟は,学校から出された課題がきっかけとなってまれな特権を得ました。生徒たちは「昨日と今日の生活」という題で絵を描くことになりました。その年若い兄弟は,『永遠に生きる』の本の131ページおよび150から153ページを基にして絵を描くことにしました。その絵は兄弟が住んでいる地域で1等になり,1983年12月2日にローマへ行く機会を得ました。そこで開かれた催しには,イタリアの大統領が司会者として列席していました。アレッサンドロ少年は『永遠に生きる』の本を持って行き,大統領が近くに来た時,それを手渡しました。大統領は少年に感謝の言葉を述べ,「これはうれしい贈り物ですね」と言いました。ほかの少年たちはそのことを見聞きして,いろいろ知りたがりました。それで,アレッサンドロは良い証言をさらにすることができました。
ある兄弟は『永遠に生きる』の本を自分の勤務している空港に持って行き,12ページと13ページを開いて机の上に置いておきました。そこへ,定期便のパイロットとスチュワーデス二人が通りかかりました。パイロットはさし絵を見て,「こんな生活ができたらさぞかしいいだろうなあ」と言いました。そして,その本をどこで入手できるか兄弟に尋ねました。接客乗務員たちも1冊欲しいと言いました。二日後,兄弟は3冊の本を持って行って3人に渡しました。二,三週間してから,そのパイロットはまたやって来て,37冊注文しました。1か月後にはまたアルフォンソ兄弟のところへ来て,ほかのパイロットや搭乗員用にと48冊注文しました。そればかりか,その本を見た同僚も,31冊欲しいと言いました。アルフォンソ兄弟はこのような仕方で今までにこの優れた書籍を120冊も配布できました。このことから,イタリアの人々が霊的食物にいかに飢えているか,また,現在人々がどうして真理に大変良くこたえ応じているかが分かります。
「どこを向いても関心が爆発的に高まっています」: ポルトガルの兄弟たちは同国の昨奉仕年度をそのように描写しています。ポルトガルの兄弟たちは目下,現状から脱却する途上にあり,「天幕の場所をもっと広く」しなければなりません。(イザヤ 54:2)伝道者も開拓者も聖書研究も,そうです,活動のあらゆる分野で驚くべき最高数が得られており,ポルトガルのエホバの民は興奮と喜びを味わっています。報告はこう伝えています。「集会の出席者は記録的な数に上り,王国会館は人々であふれています。全会衆の10%余りが,以前のものより大きな王国会館を建てるか購入するかしています。支部でも,幾つかの部門が食堂に詰め込まれている状態です。エホバのご意志であれば,来年は,新しいベテルの建設に着手したいと考えています」。
ポルトガル支部は,かつて幻滅を感じていた一人の男性の喜ばしい経験を伝えています。「宗教と政治が生み出したものを見て,私は既成の社会秩序を打ち倒すことに身を投じました。テロリストの一味に加わり,あらゆる種類の武器を扱えるように訓練されました。武装強盗にも度々加わりました。ですから絶えず命の危険にさらされていました。時たつうちに,自分たちが負け戦をしていることが分かってきました。人生に対する強い絶望感に打ちのめされ,挫折していました。そんな時,一人の証人が我が家を訪れました。その女性は神の王国のことを私に話しました。そういう話を聞いている暇などないと言ってから,妻なら聞くと私は言いました。実際,妻はその話に耳を傾け,家庭聖書研究が始まりました。結局,私もその研究に参加することに同意しました。人類を悪に駆り立てている力が何かを理解して,私は言葉では言い表わせないほど気持ちが楽になりました。また,すばらしい王国の約束は,支えとなる,人生の希望と目的を私に与えてくれました。うれしいことに,現在私は妻と共に,虐げられた者の真の解放者であられるエホバ神の献身した賛美者となっています」。
フランスでは野外の業が増加: この国もヨーロッパの他の幸福な仲間と共に前進しています。伝道者は6%増加し,平均で7万9,568人になりました。補助開拓者は39%の増加を見ました。会衆の伝道者は野外奉仕に平均11時間を費やしています。
エホバは中立の立場を祝福される: オランダの兄弟たちは同国において神権的な関心事が推し進められていることから大きな励みを得ています。そして,命の音信に人々がどう反応しているかを示す優れた経験を多数寄せています。例えば,関心を持つある男の人はロッテルダム港で主に軍艦に関連した仕事をしていました。バプテスマを受けたいと強く願っていたものの,仕事がその妨げとなっていました。港には仕事にあぶれた人が幾百人もいて,仕事にありつけた人は運がよいと考えられていました。それでも,この人は,軍艦ではなく商船関係の仕事をさせて欲しいと雇い主に頼みました。その願いは退けられただけでなく,解雇すると脅されました。その人は祈りによってエホバに近づき,再び雇い主のところへ行って同じことを頼みました。解雇されることは覚悟の上でした。ところが全く意外なことに,商船関係の仕事を与えられたのです。こうして,その後機会が訪れた時にバプテスマを受けました。
増加を続けるアイルランド: この国の兄弟たちは伝道者が7%増加したことを伝えており,「聖書物語」の本のアイルランド語版が発行されたことを喜んでいます。ある会衆はこの本を10分間に1冊の割合で配布しました。兄弟たちは農村地帯に出かけて行って良いたよりを宣べ伝え,良い結果を得ています。雨が降る冷たいある日の午後,兄弟たちが出会った一人の婦人は,すっかり意気消沈して,『自分を取り去るか,助けを与えてください』と神に祈っていた人でした。そう祈ったちょうど翌日に伝道者たちが訪問したのです。この婦人は現在無事群れの中に入っており,「迷っていた羊がついに元の住みかを見つけたような気分です」と語っています。
マーチンという名の男の人が『永遠に生きる』の本を求めました。再訪問がなされた時,その人は求めた本をまだ読んでいませんでした。しかし,その再訪問がきっかけとなって,マーチンは本を読みました。そして二つのことに心を動かされました。一つは司祭が武器を祝福しているさし絵です。マーチンは以前そのことについて考えたことがあったのです。もう一つの点は,忙しすぎて聖書を学ぶ暇などないとサタンが人々に思わせる場合があるという説明でした。車で町に出かけた時,マーチンは,「神さま,王国会館の場所を見つけるのが悪いのなら,どうか会館を見つけられないようにしてください」と祈っていました。ところが,王国会館を見つけたのです。次の日マーチンは集会に行き,それから記念式に出席し,今では二人の幼い娘を連れて定期的に集会に出席しています。マーチンは重い病気にかかっている妻の世話をしなければなりませんが,よく進歩し,野外奉仕に参加しています。そして献身することを考えています。
「実に重要な年でした」: 英国の支部はそのように報告しています。レスター市で開かれた,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会の1983年年次総会は英国の兄弟たちにとって非常に感動的な出来事でした。統治体の成員を迎え,神権的に古い人々が少なくとも3,000人出席するのを見て,この国の兄弟たちは大いに励まされました。昨年はかつてないほど開拓奉仕が活発に行なわれた年で,8月には,伝道者が9万7,495人に達しました。記念式の出席者が18万7,709人であったことからも分かる通り,今後も増加する見込みがあります。
昨奉仕年度,英国では初めてのすばらしい出来事がありました。それは,“速成の”王国会館が二つ初めて建ったことです。支部はこう伝えています。「ノーサンプトンの一つ目の会館には4日かかりました。ウェールズ地方にあるドルゲラウの二つ目の王国会館は二日もかからずに建ちました。その事はラジオやテレビや新聞を通じてウェールズ地方に大変広く知られるようになりました。カンブリアン・ニューズ紙は『1,000人の建築者,信仰が奇跡をなし得ることを証明』という見出しを掲げ,こう評しました。『訪れている建設チームは世界のほかの土地で幾つかの王国会館を建て,その経験を通して,請負人が普通不可能と考える,二日で建てる技術を開発した』。王国会館が実際に建つまでは,二日で建てるのは無理ではないかと感じていた人が少なくありませんでした。その町の小さな礼拝堂に所属する婦人は,野外奉仕中の証人に会った時,激しい口調でこう言いました。『あなた方の会館を二日で建てられると思うの。礼拝堂のつり鐘を修理するだけで6年もかかったのよ』」。
オーストリアにおける拡大: この国の支部は伝道者数が7回最高数に達したこと,および補助開拓者数が空前の最高数に達したことを伝えています。兄弟たちは,「確かに開拓者精神は広まっており,開拓者数が5か月連続して最高数を記録しています」と述べています。またこう付け加えています。「ベテルの拡張工事は順調に進んでいます。それが完成すれば,床面積は以前の3倍になります」。神権的増加の堂々たる前進運動に自分たちも加わっていることを兄弟たちは喜んでいます。
「発展の傾向が明らかに認められる」: 長いあいだ目覚ましい増加のみられなかったノルウェーの支部は,同国における王国の業の大部分の分野についてそのように述べています。比較的若い伝道者の間で開拓奉仕に対する関心が高まっており,開拓奉仕を始める人が月を追うごとに増加しています。王国の音信に対する関心は以前よりも強くなっています。伝道者数は7,670人という新最高数に達し,1万4,228人が記念式に出席しました。
1972年当時,ノルウェーの未割り当て区域で奉仕していた一人の姉妹が,疑問を幾つか持っている,関心のありそうな婦人に会いました。それで姉妹は婦人の住所を教えてもらい,聖書の良いたよりについて2度ほど手紙を書きました。しかしその婦人から何の音沙汰もありませんでした。ところが11年後にその婦人から手紙が届いたのです。息子が1か月前に殺されたため,一家は悲嘆に暮れているということです。その婦人と夫は,聖書を読んで何か慰めを見いだすことにしました。聖書を開くと,姉妹から届いた手紙が1通出てきました。それで婦人は姉妹に助けを求める手紙を書いたのです。姉妹は,その未割り当て区域からおよそ95㌔離れた所に住んでいるエホバの証人の夫婦と連絡を取りました。その夫婦が婦人の家を訪れ,聖書研究が始まりました。その家族は現在よく進歩しており,悲しみがいやされてゆくのを感じています。
「かつてないほど重要な年」: ルクセンブルグは昨奉仕年度についてそのように述べています。数か月間に伝道者は8%増加し,記念式の出席者は2,537人でした。この国の人口170人に付き一人の人が出席したことになるわけです。エホバの王国の関心事が大いなる前進を遂げているので,5番目のポルトガル語会衆が設立されました。
スペインは前進する: この国が政治的および宗教的勢力の抑圧から脱却したのはつい最近のことですが,今,神権的増加が非常にはっきりと見られます。5万6,717人という伝道者最高数が報告され,記念式には12万5,040人が出席しました。正規開拓者の隊伍は37%増加しました。
スペイン支部はしっかりした若い開拓者の次のような経験を伝えています。テレサは,父親が開拓者だったので,12歳になった時自分も開拓者になりました。しばらくの間は万事がうまくいっていましたが,母親が病気にかかって亡くなり,テレサはそれまでよりも多くの責任を担わねばならなくなりました。しかし開拓奉仕を辞めませんでした。それから,父親が大きな交通事故で亡くなり,現在テレサは妹の世話をしなければなりません。しかし,こうした悲しい出来事はすべてテレサをエホバに一層近づかせるものとなり,テレサは開拓奉仕に踏みとどまっています。そして「エホバの助けや兄弟たちの援助があるので,私は辞めません」と語っています。エホバはそのような専心を豊かに祝福されるに違いありません。
スペインから寄せられた別の経験は,正直さが強力な証言となり得ることを例証しています。タクシーの運転手をしているアントニオは,県都マラガから17㌔離れたある町まで一組の夫婦を乗せてゆくことになりました。アントニオはそこまでの時間を活用して十分証言しようと決意し,実際にそれを実行しました。その夫婦は敬意をもって証言を聴き,幾つか質問をすることさえしました。それからしばらくたって,一人の男の人が,私を覚えていますかと言ってアントニオに近づいてきました。アントニオは思い出せませんでした。その人は,「あなたはタクシーの運転手をしておられませんか」と言い,マラガから車で出かけた時の話をしました。そして,あなたから聖書の説明を聞いた後二,三日して,私たちの家にエホバの証人が訪ねてきた,と言いました。そのご夫婦は聖書研究に応じ,今ではバプテスマを受けたエホバの証人となっていたのです。「私がお話ししたことで,一番印象深かったのは何ですか」とアントニオは尋ねました。「ほかのタクシーの運転手は皆500ペセタ(約800円)取るのに,あなたは383ペセタ(約613円)しか取らなかったことです」という答えでした。
「至る所で拡大がみられる」: ベルギーはそのように伝えています。この国の正規開拓者は15%増加しました。昨奉仕年度中,補助開拓者も伝道者もりっぱに最高数を記録しています。ある正規開拓者は始めてから14日しかたっていませんでしたが,豊かに祝福されました。何か月もの間神に助けを祈り求めていた婦人が聖書研究に応じたのです。その後,その婦人の夫,次いで娘たち,長女の婚約者の合計5人が真理を受け入れました。
エホバのお名前を精力的にふれ告げる: 「今年ほどエホバのお名前をふれ告げる業が精力的に行なわれたことはかつてありません」とフィンランド支部は述べています。この国では伝道者数が1万5,263人という最高数に達しました。開拓者も引き続き増加しています。野外奉仕の時間および聖書研究の数も増加しており,非常にすばらしい成果をみています。
「多くの祝福があった年」: ドイツの人々は二つの世界大戦を経験して,宗教的な考え方をあまりしなくなってしまいました。しかし,ドイツ連邦共和国の支部は,「振り返ると,祝福の多い年だったと言えます」と述べています。昨奉仕年度の祝福のうちでも際立っていたのは,ゼルターズに堂々たる新しい支部施設が完成したことです。したがってドイツには,今後長い期間この国の必要を世話することのできる極めてすばらしい施設と強固な作戦基地とも言うべきものがあるのです。
反対があってもすばらしい発展がみられる: ギリシャからの報告によれば,ギリシャ正教の僧職者たちは長年の間兄弟たちをひどく困らせてきましたが,形勢は逆転しつつあります。1983年9月,兄弟たちは雑誌を持って街頭に立つことができ,反対者たちは度肝を抜かれました。僧職者たちは引き続き,改宗を禁ずる法律に訴えることをしています。昨奉仕年度中,約150件の逮捕がありました。少なくとも38件は裁判にかけられました。そのうち35件は勝訴し,残りの3件は控訴される予定です。司祭たちは懸命に闘って勝とうとしてきましたが,それは負け戦になりそうです。例えば,エホバの証人反対決起集会にデモの参加者を運ぶため何十台ものバスが用意されましたが,人数はバス1台分にも満たなかったのです。地元の役人は,「司祭たちもばかなことをしたものだ」と言いました。
裁判で勝訴になった例はほかにもあります。パトラスという町でのこと,町の人々は強制的に聖アンデレ教会の建設資金を寄付させられました。建設資金の寄付として電気代が余分に請求されたのです。兄弟たちが教会に献金することを拒否すると,電力会社は兄弟たちに電気を供給することをやめると脅しました。その問題は裁判所に持ち込まれました。エレフセリ・グノミ紙は裁判所の判決を要約して次のような見出しを掲げました。「118人のエホバの証人,法廷闘争で勝つ ― 聖アンデレ教会建設用の寄付を電力局へ強制的に支払わせる法律は違憲とされる」。兄弟たちは電気を止められずにすんだことを喜びました。
ではここで,世界のほかの地域から寄せられた報告に移りましょう。
わたしたちの業が制限されている国
主イエスはご自分の真の追随者が世から憎まれることを予告されたので,世界の幾つかの土地でエホバの業が禁じられていても不思議ではありません。(ヨハネ 15:18,19)そのような国の王国伝道者たちは,種々さまざまな状況のもとで奉仕しており,良いたよりを宣べ伝える方法を見いだすために良い判断を働かせたりエホバの導きを求めたりしなければなりません。
孤立した区域で挑戦となる事柄: 業が制限されている国では,非公式の証言が,人々に良いたよりを宣べ伝えるための極めて重要な方法となる場合が少なくありません。しかし,可能な場合はもっと組織的に伝道がなされます。例えば,業が禁止されているある国の兄弟たちは,孤立した区域に良いたよりを伝えようとして一時的な特別開拓者を派遣しました。小さな町で奉仕することは一つの挑戦となりました。よそ者のいることがたちまち町中に知れ渡ってしまうからです。それで,業が禁令下にある国では異例のことですが,開拓者たちはまず,町の警察官を訪問して証言することにしました。(マタイ 10:18)どんな結果になったでしょうか。14か所では伝道の許可が下りませんでしたが,75か所で許可されました。事実,開拓者たちを警察署に泊めてくれた警官さえいたのです。それで兄弟たちは,禁令下にありながら,警察署を拠点にし,反対されることなく伝道の業を行なうことができました。開拓者が警官を再訪問した例も幾つかありました。
非公式の証言をする機会に目ざとくある: 業が禁止されている,ヨーロッパのある国の一人の証人は次のような経験を寄せています。「駅の待合室でのことですが,私は若い女性が激しく泣いているのに気づきました。その女性に向かってどうしたのか尋ねると,その人は一層悲しげに泣きました。しかし,しばらくして,夫がほかの女性に関心を持ち自分を家から追いだしたのだと言いました。その夫婦は長年連れ添い,子供も二人いました。それで,その女性は駅へ行って自殺し,一切を終わらせようと決心したのです。私はその女性と長い間話をしました。悲しみに打ちひしがれた人々すべてに希望を差し伸べる音信を聞いて,その女性の気持ちは落ち着いてきました。当時その人が住んでいた所へ行っても,わたしたちは話し合いを続けました。それからしばらくして,家族の状態が良くなったのでその人は家へ戻りました。この女性は,聖書の希望,自分を自殺から救ってくれた希望を心に抱いています」。
その同じ国からは,補助開拓の業の増加も伝えられています。その報告は次の通りです。「これは,過去15年間に伝道者の考え方が大きく変化したことの表われです。わたしたちの国には正規開拓者が数人います。証言する機会を探したり,絶えず危険にさらされたりしながら宣教が行なわれていることを考えると,これはすばらしい偉業と言えます」。
モザンビークの難民キャンプ: ジンバブエの支部事務所からは次のような報告が寄せられています。「マラウィの東側の国境に近いミランジェにあるキャンプを包含する八つの巡回区には今でも約1万人の伝道者がいます。そのうえ,モザンビークの西部には幾つかの会衆が散在しており,二人の旅行する監督がそれらの会衆を訪問しています。良い通信手段がないため,昨奉仕年度中ミランジェのキャンプとは十分に連絡が取れませんでした。しかし,届いたわずかな報告から,モザンビークの兄弟たちも全世界の兄弟たちと共に,『しりごみして滅びに至るような者ではなく,信仰を抱いて魂を生き長らえさせる者』であることを証明するものと確信しています」。―ヘブライ 10:39。
残酷な迫害に面しても忠誠を保つ: 業が禁止されているある国では幾十人もの兄弟たちがクリスチャンの中立のゆえに投獄されています。次のような報告が寄せられました。「クリスチャンの良心にそむくことをさせようとして,激しい殴打やむち打ち,ありとあらゆる抑圧が兄弟たちに加えられています。次から次へと何度も懲役刑が科されました。ある時幾人かの兵士は,ひどく殴打してもある兄弟の忠誠を破らせることができなかったので,その兄弟を殺そうと謀りました。その計画を知った上官は,個人的にそれに介入し,その兄弟をひそかに別の町へ移して命を助けました。(使徒 23:12-35と比較してください。)昨奉仕年度中,クリスチャンの中立の立場をまげなかったため14人の兄弟が命を失いました」。兄弟たちが迫害下で忠実に忍耐している経験を挙げるなら,ほかにもたくさんあります。しかし,ここで,中南米に注意を向けることにしましょう。
中南米と西インド諸島における大きな進歩
良いたよりを知らせることに関する同じような顕著な結果を示す報告は,中南米や西インド諸島からも寄せられています。エホバは,ご自分の羊のような人々を取り入れる壮大な業の速度を速めておられるため,胸の躍るような出来事が生じています。
「このようなすばらしい年はいまだかつてありませんでした」: 40年の全時間奉仕の経験を持つブラジルの一兄弟は,声を大にしてそう語りました。まさにその通りでした。昨年度は16万927人を頂点として七つの伝道者新最高数を記録し,記念式には47万4,450人という驚くべき数の人が出席したのです。ブラジルは,神に全く身をささげた人々から成るエホバの全地球的な家族における「兄さん格」の一人になりました。
昨年の初め,すべての伝道者が,4月に補助開拓奉仕を考慮することを勧める個人向けの手紙を受け取りました。その結果,ある会衆では長老と奉仕の僕が全員補助開拓者になりました。その月には合計3万3,007人が補助開拓の業に参加しました。報告によれば,「開拓者精神の感化力はすばらしく,王国会館は経験を語る声と激励の言葉でにぎわっている」とのことです。
11人の子供を持つ一人の母親は,家庭聖書研究が司会できずに気落ちしていました。しかし,一人の兄弟が,補助開拓をしてはどうかと提案したため,姉妹はそうしました。今この姉妹は家庭聖書研究を4件持っているので,もう気落ちしていません。
確かにブラジルでは驚嘆に値することが生じています。一人の特別開拓者は近くの町を訪ね,41冊の書籍を配布しました。翌月に再訪問を行なったところ,ホテルの持ち主が,あなたに会いたがっている司祭がいる,と教えてくれました。その司祭は,「聖書物語」の本を見たことがあるが,それを若者のサークルで使いたいのでもっと手に入れたい,と言いました。それから司祭は,次のミサの時には,だれでもこの本を入手できるということを発表するつもりだ,と言いました。その特別開拓者は4回訪問して,全部で220冊の「聖書物語」の本と170冊のポケット版の書籍を配布しました。今では,関心を持つ人々と幾つもの聖書研究を行なっています。このような経験は,ブラジルに肥沃な畑があることや,この国がなお一層大きな増加を見るに違いないことを示しています。
アルゼンチンにおける法的な認可: 今,最も喜びにあふれている支部の一つはアルゼンチンです。1984年に偉大な勝利が兄弟たちにもたらされたからです。少なくとも33年間,禁令が科され,エホバの証人に不利な法律が施行されていましたが,アルゼンチンのエホバの証人は勇気をもって前進し,エホバはついにアルゼンチンの兄弟たちに圧倒的な勝利をもたらされました。1984年3月9日,彼らは,合法的な宗教として活動することを正式に認可されたという通知を受け取りました。もう一つ喜びの理由となったのは,宗教組織としての立場が認められ,崇拝の自由が尊重されたために,エホバの証人の子供たちが愛国主義的な儀式に参加することを免除されたことです。―詳しくは,「ものみの塔」誌1984年11月15日号[英文]の27ページをご覧ください。
兄弟たちの熱心さは,伝道者が平均10%増加したことにも表われています。伝道者数は1983年には4万3,815人だったのが,1984年には4万8,282人になりました。4月には伝道者の19%が開拓の業にあずかり,記念式の出席者数は10万9,140人に達しました。会衆の数も増加しており,昨奉仕年度の最初の10か月で新しく52の会衆が設立されました。ブエノスアイレス近辺の人々が用いるための新しい大会ホールが建設されています。支部の施設は手狭になり,今生じていることすべてを世話しきれないため,新しい土地が購入されました。既に大きな工場を買い取っていますが,それは事務所と工場になります。同支部は,そのすぐ隣にベテル・ホームを建てる予定です。「すべてが活気を帯びています」と報告されています。エホバが行なわれていることにだれもが驚きの目を見張り,本当に喜びを感じています。
補助開拓奉仕をして休暇を過ごすことに決めた人々のグループに,若い二人の伝道者が加わりました。彼らは,これまで一度も証言を受けたことがないと思われる孤立した区域に出かけて行きました。話に耳を傾ける人たちが文書中の美しいさし絵を見,感激してその顔を輝かせたことを話しながら,彼らは喜びの涙を浮かべました。市の当局者,学校当局者,裁判官や警察官が音信に耳を傾けました。まいた種に増加をもたらしてくださることを願い求めた,これら熱心な人々の祈りはエホバのもとに届きました。休暇を過ごす何と喜ばしい方法なのでしょう!
ボリビアはその報告に胸を躍らせる: ボリビアの兄弟たちにとって,会衆の伝道者が昨年の平均より18%増加したことを報告するのは,本当に喜ばしいことでした。伝道者たちは平均すると毎月約12時間奉仕しており,伝道者一人当たり1件の家庭聖書研究を報告しました。記念式には羊のような人々が合計1万7,671人出席しましたが,それは伝道者の4倍以上に相当します。これからも非常に順調に拡大が続きそうです。正規開拓者は絶えず増加しています。
真理に対していつも耳を傾けようとしなかった元警察署長とその妻が秘術的な集会に出席し始めました。そのご主人はカトリックの聖書を手に入れ,たまたまイザヤ 43章10節を開きました。この人は妻を呼び,もうこのような集会には出るのはやめようと言いました。多大の努力を払った末,二人はエホバの証人を探し出し,今では二人共バプテスマを受け,非常に熱心です。このようにエホバは,誠実にご自分を求める人々がご自分を見いだせるように取り計らわれます。
「聖書物語」の本を探し求めていた人: グアテマラの一伝道者が,田舎で一人の男の人に「聖書物語」の本を見せたところ,その男の人は,「本屋という本屋を歩き回ってこの本を探していたんです! この本を学校へ持って行き,1週間15㌣で友達に貸している子がこの辺りにいるのです」と言いました。その男の人は熱心な態度でその本を受け取り,聖書研究が始まりました。
マヤ族のインディオの村に出かけて行く: ベリーズの支部は次のような報告を寄せています。「昨奉仕年度の活動のハイライトの一つは,この国の南部にあるマヤ族のインディオの村々を訪れる,毎年恒例の伝道旅行でした。これらの辺ぴな村々(12村)に行くには,ジャングルの道を113マイル(182㌔)歩かなければなりません。そのため,12人の兄弟たちから成るグループが,背に荷物を負い,かばんを持ち,十日間に必要とされる物すべてを携えてこの旅行を敢行しました。彼らの装備の中には,電圧6ボルトの小型スライド映写機とオートバイのバッテリーが含まれていました。これらの辺ぴな村々でカラースライドを上映したのは彼らが最初でした。エホバの証人の全世界的な宣べ伝える業を示すこの映写会に,合計568人が出席しました。なかなか会うことのできないこれらの謙遜な人々に,王国を宣べ伝える業に関するより良い理解が与えられました」。
スリナムでの川船による証言: スリナム支部は次のように述べています。「昨年はこの国の内陸部で多くの業が行なわれました。道路の数が非常に少ないため,主な交通手段は川船です。特別開拓者は大きな川ならほとんどどこにでも出かけてゆき,忙しく宣べ伝えています。今年わたしたちは,上スリナム川の南部の奥地での業を始めました。5人の特別開拓者が割り当てられ,そのうち3人がはるばるピキン・リオまで行きました。ピキン・リオにはグランマン(河川域全体の指導者)が住んでいます。この人は非常に友好的で,3人の兄弟たちとしばらく話をしました。そして家を提供し,これらの証人たちと協力するようにとすべての村の村長に要請しました。特別開拓者たちは自分たちの船を作り,あまり時間がたっていないにもかかわらず,幾つもの聖書研究を始めました。関心を持つ人々の中には今良いたよりを伝道している人もいます」。
コスタリカも増加にあずかる: この国も去年は神権的な活動の面で最も顕著な年でした。初めて伝道者が8,000人の大台を超えました。一つの確かな理由は,この国の人々が9,000ほどの家庭聖書研究を司会していることです。奉仕のこの面に重きが置かれると,大幅な増加がもたらされます。開拓者も非常に忙しい生活を送っています。その数は2倍に増え,補助開拓者は45%増加しました。支部の施設の拡大が緊急に必要となり,同国でも指折りのりっぱな農地にある広さ15エーカー(6㌶)の美しい土地が購入されました。それはサンホセから7マイル(11㌔)のところにあります。
ある兄弟の話によると,働いていた事務所で上の地位を与えられたのですが,別の従業員で,自分のほうがはるかに経験が深いと考えていた人がいたそうです。この女子従業員は,その職務に関して兄弟を訓練するよう頼まれましたが,あの手この手でこの兄弟にいじわるをしました。別の従業員がこの兄弟に近づき,そうした扱いをがまんすることはないと言いました。所長のところへ行ってその女子従業員との問題を明らかにするよう忠告されましたが,兄弟はそうするのを断わりました。結局その女性はとげとげしくなくなり,その兄弟と親しい会話を交わすようにさえなりました。後にこの女性は兄弟から文書を受け取り,今では定期的に研究し,真理において進歩しています。クリスチャンとしてのその行動の仕方は,その女性を敵に回し,真理を伝えられなくなってしまうよりはるかに優れています。
「伝道者の爆発的増加」: メキシコにおける感動的な出来事は,報告の中で「伝道者の爆発的増加」と表現されています。メキシコは伝道者の16%の増加を報告しており,最高数は15万1,807人に達しました。この増加が見られたのは,家庭聖書研究が6月に26%増加し,20万2,132件になったためだと兄弟たちは考えています。こうした研究により,家族全員が真理に入ってきています。記念式には驚くべきことに69万5,000人を上回る人が出席しました。
メキシコでは,国旗敬礼の問題が大きな注目を浴び,新聞やテレビはその状況について騒ぎ立てました。シウダドフアレスでは,エホバの証人を制圧する何らかの行動を取らせようとして,様々な人が軍の当局者に働きかけました。その当局者は,彼らに対し,「皆さんはエホバの僕たちについてよく知るべきだ。シウダドフアレスの住人がみなエホバの証人だったら,問題はもうなくなるだろう」と言ったと伝えられています。ある新聞も,「学校」のブロシュアーから引用し,非常にりっぱな証しがなされました。
メキシコの兄弟たちは,「確かに,エホバは昨年わたしたちに善良さを示してくださった」と述べています。わたしたちはみなその言葉に心から同意することができます。メキシコの畑は,確かに「収穫を待って白く色づいて」おり,収穫の主人がその産出的な地域により多くの働き人を送られる時,「伝道者の爆発的増加」は,いよいよ大きくなり,エホバを愛する人すべての深い喜びとなります。―ヨハネ 4:35。マタイ 9:37,38。
暴力的な時代にもかかわらず前進する: 暴力と不法のはびこるエルサルバドルの兄弟たちは何を行なうことができるでしょうか。彼らは,「エホバの助けがあるので,わたしたちはここでエホバに仕えられることに満足しています」と答えます。そのわけで,関係した種々の困難にもかかわらず,記念式には4万9,344人が出席しました。これは平均伝道者数のほぼ4倍に相当します。伝道者は1万3,427人というりっぱな最高数に達し,彼らは優に2万件を上回る家庭聖書研究を司会しています。新しい支部の建物をサンサルバドルに建てる計画が進んでいます。暴力のはびこる地域の中心に当たり,同時に王国の業におけるりっぱな増加のみられるサンミゲルに,新しい大会ホールが購入されました。大きな問題もなく,ここで大会が開かれています。
次の驚くべき経験は,エホバがご自分の民を顧みられる時の力を例証しています。かなり大きな会衆の話ですが,周辺の地域が時には民間防衛活動,別の時にはゲリラ活動の支配下に置かれます。投票日に会衆の集会が通常通り行なわれました。兄弟たちの中には,集会のあとすぐ急いで家に帰った人もいましたが,中に残っていた人もいました。そこへゲリラの一団が現われました。これらのゲリラは兄弟たちに,自分たちがこれから開く予定の集会に出るようにと命令しました。兄弟たちは一つに固まり,政治的スローガンを一斉に叫ぶよう命令された時にも黙っていました。1時間余り立ち続けなければなりませんでした。それから全員が政治目的のために25センターボを献金するよう求められました。帽子を上向きにして回しましたが,兄弟たちはお金を投げ入れる代わりに雑誌を投げ入れました。ゲリラはそれに驚きましたが,午後10時まで兄弟たちが証言するのを許しました。ついに兄弟たちは家に帰ることを許され,エホバへの忠節を保てたことを喜びました。
チリとコロンビアにおけるりっぱな進歩: チリは6月4日に新しい支部事務所の建設に着工しました。報告は,「異例の豪雨にもかかわらず業は進んでおり,自発的な働き人が示す熱意は少しも衰えていません」と述べています。兄弟たちの熱意は,伝道者の14%の増加にも表われています。聖書研究は増え続けています。合計7万5,029人が記念式に出席しました。補助開拓者は何と50%も増加しました! 同様に,コロンビアでも開拓者の活動が引き続き増大しており,伝道者は増えつつあります。ボゴタ市では毎月一つの新しい会衆が生まれており,伝道者の最高数は2万3,117人へと急増し,1984年には1983年の平均に比べて22.7%のすばらしい増加が見られました。
ベネズエラにおけるすばらしい増加: この国からは,数か月の間に伝道者が19%増加したという熱意あふれる報告が寄せられています。開拓者は一年中増え続けました。記念式の出席者は,1983年よりも1万2,165人多い9万3,263人でした。
6歳になる少女は,字が読めないにもかかわらず,神のお名前がエホバであることを上手に家の人に示しました。その婦人は大変感銘を受け,その少女を抱き締めてキスしただけでなく,家庭聖書研究の取り決めを設け,今ではバプテスマの準備をしています。
ベネズエラのガン制圧協会の会長は,「アタラヤ」(「ものみの塔」誌のスペイン語版)の1981年6月15日号に掲載された喫煙に関する記事に感銘を受けたため,その号を500部注文しました。今,医学の授業でガンと喫煙に関する割り当てを受けている学生はみな,この号の雑誌と,他の教材を与えられています。
「刺激と励みを与える」: これは,トリニダードの人々が1984奉仕年度の経験を言い表わした言葉です。1月から4月まで,この国では連続して伝道者の最高数が得られ,大変喜ばしいことに,4月には2,082人の補助開拓者が出ました。これは,その月に伝道者の54%が補助開拓を行なったことを意味しました。一人の兄弟は昼休みにいつも出版物を読んでいます。その結果,幾人かの同僚が深い関心を抱くようになり,この兄弟はそれらの同僚に雑誌の予約を勧めることにしました。「同僚は価格の安いことに驚いたので,私は1月に36の予約を得ることができました」と,その兄弟は述べています。さらに,107冊の『永遠に生きる』の本を配布することもできました。今では,はぐくまれた関心を高めようと忙しく日を送っています。
ドミニカ共和国における前進: この国では,報道管制や暴動のために業が幾分妨害されていますが,伝道者数は初めて合計8,192人に達しました。記念式には2万3,000人という,全伝道者数を上回る人々が出席したため,これらの人々すべてが進歩するよう助けるための業が多く残されている,と兄弟たちは感じています。一人の巡回監督は,農村地帯で共に働くよう,21人の伝道者から成る会衆を招待しました。41人の人々がやって来て巡回監督を驚かせました。姉妹たち全員が子供たちを連れて来たからです。言うまでもなく,彼らはめったに味わうことのない楽しい時を農村地帯で過ごしました。
「ここでは王国の増加が見られます」: グアドループの兄弟たちはそのように感じています。彼らは,聖書研究の活動が増加したために喜びにあふれています。研究は伝道者一人当たり平均1件に達し,その年は伝道者の9%増加を記録しました。およそ1万人が記念式に出席しました。一人の主婦は,10年間耳を傾けようとしなかったにもかかわらず,どういうわけか伝道者を家に招き入れました。その娘も耳を傾け,スタートは幾分遅れたものの母親も娘もバプテスマを受け,今では真理の熱心な伝道者です。
グレナダでは,態度が変化する: 1983年10月に生じた紛争のため,多くの人が示していたのんきな態度が幾分影をひそめました。彼らはその事件のために今なおかなり動揺しています。多くの人は政治的な約束に対する信仰を失い,真理に関心を示すようになっています。記念式には伝道者の3倍に当たる合計1,175人が出席したので,兄弟たちはこれからも業が増大し,良い結果が得られるものと考えています。
中南米とカリブ海の島々における神権的な拡大についてもっと多くのことをお伝えしたいのですが,北アメリカに話を移さなければなりません。
北アメリカは大きく前進する
極北の人々は偏見を克服する: アラスカの兄弟たちは,3月に伝道者が1983年の平均よりも16%増加して,1,748人に達しました。記念式には4,397人が出席しました。ですから,助けを与えればエホバの真の崇拝に携わるようになる人々がまだ大勢います。アラスカの兄弟たちは,奥地の区域で働くために最善を尽くしています。奥地の孤立したある村に入ろうとしたところ,兄弟たちは村議会の代表者から,「お気の毒ですが,この村に入ることは許されていません」と告げられました。その後,『永遠に生きる』の本の美しい絵を見せ,偉大な創造者が皆さんのために準備しておられる事柄をお話ししたいと伝えたところ,その人は,「どうぞ私たちの村へおいでください」と言いました。
この年の際立った出来事は,はるか遠くのカリフォルニア州から,二日間で建てる王国会館建設のため,230人の兄弟たちがチムシアン族のインディアン指定居住地のメトラカトラにやって来たことです。地元の議会は10年もの間その建設に反対していましたが,やっとその工事を許可しました。32時間で幅9.8㍍奥行15.8㍍の美しい建物が完成しました。村人のほとんど全員がそれを見にやって来ましたが,ある人は,「一つの民として,私たちはよくこのように一緒に働いてきたものだ」と言いました。アンカレッジから80㌔北にあるワシラでも,二日間で建てる王国会館が完成しました。
「わたしたちはすばらしい成長を続けています」: カナダの兄弟たちは,1984奉仕年度についてそのように感じています。カナダの反対者たちは,ものみの塔協会は落ち目になっているという誤った情報を流しましたが,この国の支部は,1983年の平均よりも10.7%の増加に当たる8万939人の伝道者を喜びのうちに報告しています。全伝道者のおよそ23%が4月に開拓の業にあずかりました。そのような熱意があるので,これから一層すばらしい結果が生まれることでしょう。
カナダでは王国会館がはち切れんばかりになっているため,昨奉仕年度には,二日間で建てる王国会館が何と22軒も建設されました。さらに9軒の申込書が来ています。
イエズス会の司祭であるジョセフがチェコスロバキアからカナダにやって来て,新世界訳聖書を1冊入手しました。この人を訪問した姉妹は,何かのことで,ペテロがローマにいたことはなかったと言いました。この司祭は,ペテロがカトリック教会の頭としてローマで務めを果たしていたと誠実に信じていました。ところが研究の結果,ペテロはローマではなくバビロンからあいさつを送ったことが明らかになりました。この人は地元の王国会館に出かけて行き,牧師と平信徒の区別がないのを見て驚きました。さらに,化体説の教理の誤りをも認めました。強い圧力が加えられたにもかかわらず,後にこの人はイエズス会の司祭を辞め,今では幸福な王国宣明者になっています。
「神権的な活動の実り豊かな年」: 米国からはそのような報告が寄せられています。伝道者の新最高数が五つ得られましたが,8月の最高数は69万830人であり,7月の伝道者の最高数67万395人に対して2万435人の驚くべき増加となります。4月には,9万3,990人という補助開拓者の新最高数が得られました。正規開拓者の数は4月に2万9,098人になり,この数字は,その月に12万3,442人が開拓者として奉仕したことを意味しています。
家庭聖書研究は増加して45万658件となり,161万1,310人という大勢の人々が記念式に出席しました。将来の拡大の見込みは本当にすばらしいものです。平均すると二,三日ごとに新しい会衆が設立されており,1984奉仕年度には合計159の新しい会衆ができました。予約の数は1983年よりも3.9%多く,雑誌の合計は11.8%高くなりました。この国にはまさに神権的な拡大が生じています。
カリフォルニア州で,関心を持ったばかりの看護婦が回復期病棟で患者の一人と聖書研究を始めました。その患者は100歳で,ずっと昔に「創造の写真劇」を見たことがありました。この老婦人は聖書の真理を受け入れ,神の言葉について他の人に語りました。そのため,病院付きの牧師や病棟の他の人から反対されましたが,気の若い100歳のこの婦人はひるまずに宣べ伝え続け,エホバに命を献げ,102歳という高齢でバプテスマを受けました。エホバの霊はくすしい事柄を成し遂げます。
「王国の増加」地域大会
米国(アラスカとハワイを除く)の117の「王国の増加」地域大会すべてが1か所で行なわれたとしたら,その幸福な出席者は,115万9,898人という膨大な数に上ったことでしょう。また彼らは,1万625人の新しい兄弟姉妹がバプテスマを受けるのを見て胸の躍るのを感じたことでしょう。確かに,「王国の増加」という名称は非常にふさわしいものでした。この膨大な群衆は,国内各地の65の違った場所に集まったからです。
新しい「参照資料付き聖書」の発表は大きな喜びをもって迎えられました。「新しい地へ生き残る」という新しい書籍と,エホバのみ名を高める優れたブロシュアーを受け取って兄弟たちは本当に喜びました。フィンランドで「神のみ名」のブロシュアーが発表された時,兄弟たちは,「これこそまさに必要としていたものです」,「これをずっと待ち望んでいました」,「教会の壁がまさにエホバについて証ししています」と口々に述べました。
これらの地域大会は,英国の兄弟たちにとっても非常に大きな励ましの源でした。大会の合計出席者数13万6,524人は新最高数でした。そして934人がバプテスマを受けました。大会に関係した多くの経験の中に,車が故障してしまい,徒歩でカーディフへ向かっていたある兄弟とその妻に関する経験があります。農家の人が家から出て来て,何か手伝えることがあるか,と尋ねたのです。二人は,大会へ行くところだと言いました。二人がエホバの証人であることを知ったその人は,「中庭のすみに車が1台あります。それを使って大会を楽しんでください。帰る途中でお返しください」と言いました。この農家の人がエホバの民を深く尊敬していたので,この夫婦は益を得ました。
励ましとなるさらに別の神権的な発展
野外の必要にこたえる: エホバの証人の軍勢の野外での必要にこたえるため,協会はベテル家族の人数を9.9%増やし,世界全体でその数は7,233人になりました。考えてみてください。1984奉仕年度に,よく働くこれらの人たちは,聖書・書籍・小冊子を何と5,918万8,650冊も生産したのです。ほかに,「ものみの塔」と「目ざめよ!」の両誌は,102の異なった言語で5億350万555冊生産されました。それに,何百万部にも及ぶ,ビラ,パンフレットなどの印刷物も印刷されました。
エホバの僕は,エレミヤ 23章3節から6節に予告されていた通り,羊のような人々を養うために,かつてないほど精力的に働いています。王国の音信を宣べ伝えるために兄弟たちは,ドル,マルク,ペソ,ポンド,リラなどのお金を個人的にたくさん費やしました。ものみの塔協会も,1984奉仕年度に,特別開拓者・旅行する監督・宣教者など幾万人もの人々の必要物をまかなうために総計1,943万7,938.73㌦(約46億6,510万5,300円)のお金を費やし,野外の活動を支えました。エホバの民は,「受けるより与えるほうが幸福である」という使徒 20章35節の言葉の真実さを確かに証明してきました。
コンピューターの発展: 昨奉仕年度中,エホバは,地の果てにまで良いたよりを速やかに宣べ伝えるためのかつてなく優れた装置をわたしたちに与えてくださいました。出版能力を高めた重要な機械は,MEPS(多言語電算写植システム)とMEPS写植機です。MEPSは,すべての国の人々に,すべての言語集団に良いたよりを広める助けとして,兄弟たちによって設計され,作られたコンピューターです。MEPSは翻訳を行なうわけではありませんが,このシステムにより,すでに翻訳されているテキストを入力し,訂正することができます。MEPSはテキストを電子的にページに組み,次いでそれがMEPS写植機に送られ,そのページのフィルムが作られます。
MEPSは,予約,文書注文,支部事務所の他の管理業務のためにも用いられます。現在のところMEPSはブルックリンと,印刷施設を持つ次の19の支部で用いられています: オーストラリア,オーストリア,ブラジル,英国,カナダ,コロンビア,デンマーク,フランス,ギリシャ,イタリア,メキシコ,オランダ,ナイジェリア,フィリピン,南アフリカ,スペイン,スウェーデン,スイス,西ドイツ。わたしたちはもっと多くの国々にこの機械を設置することを計画しています。様々な支部から来た兄弟姉妹たちがこの機械を操作し,維持するための訓練を受けてきました。MEPSは,アラビア語,ギリシャ語,ヒンディー語,韓国語などの言語を処理する能力を持っています。中国語と日本語を処理するようMEPSの能力を高める仕事が,いま兄弟たちによって行なわれています。このすべては,すべての国の人々を弟子とする業の速度を速めるのに役立っています。
同時出版: 1984奉仕年度中の最も胸の躍る発展の一つは,20以上もの異なった言語で,「ものみの塔」誌の同じ記事が同時出版されるようになったことです。多くの場合,協会の開発したMEPSコンピューターシステムの導入によって,これが可能になりました。英語の「ものみの塔」誌が1冊翻訳用に各支部へ送られます。次いでその雑誌は入力され,この機械の助けを得て植字されます。このようにして,同じ主要な連続記事と研究記事を収めた雑誌は,既に幾つもの言語で出版されています。世界中どこでも,その号の表紙のデザインは同じです。
これは,エホバの民の間に一致をもたらすすばらしい力となっています。1985年の始めには,世界中の様々な国で「ものみの塔」研究に出席する250万以上の人々が,同じ週に同じ記事を研究するものと見込まれています。すべての人は一致し,「ものみの塔」誌を通して野外で同一の音信を提供することでしょう。このことによって,どんな重要な宣言も,この雑誌の中で同時に世界中に知らせる可能性も開けます。このすべては,エホバがご自分の民の間で今行なっておられる,一致をもたらす大規模な運動の一環です。―エフェソス 1:9,10。
神権的な拡大を喜ぶ
1984年に関する全世界のこの特別な報告の中に何を含めたらよいかを決めるのはとても難しいことでした。昨奉仕年度にエホバがご自分の民を通して行なわれた事柄をすべてお伝えするにはこれだけのスペースではとても足りません。しかし,際立っているのは,どこにおいても兄弟たちが示す熱意と喜びの精神です。
サタンは,エホバの民の間に分裂をもたらそうと常に試みてきました。また,ある人々を動かして,忠節な者たちの平和と一致を乱そうとしてきました。このような不満を抱く人たちは自分の境遇に幸福を見いださず,『霊の崩壊』ゆえに今この時に泣きわめいています。―イザヤ 65:13-15。
これらの人々も,サタンの配下の軍勢も,地上におけるエホバの関心事の拡大を防ぐことはできません。従順な者たちに対する神の命令は,イザヤ 54章2節から4節に記されている通り,「あなたの天幕の場所をもっと広くせよ……ためらうな。……恐れてはならない。あなたが恥をかくことはないからである」ということです。確かにその通りです! サタンの世とその邪悪な手下どもは苦もんしていますが,エホバの僕たちは喜んでいます。成し遂げられた事柄全体を見ると,1984奉仕年度は,他のすべての年に勝っていました。
エホバの王国が,サタンの邪悪な体制全体を『打ち砕いて終わらせる』時が間近に迫っています。(ダニエル 2:44)王国の義なる支配は,全地に満ちるまで増え続け,広がり続けなければなりません。このエホバのすばらしい目的を阻めるものは何もありません。ですから,エホバを愛する者は皆,今生じているこの実にすばらしい「神権的な爆発的増加」を喜び,一つになって感謝を抱いてエホバの栄光をたたえましょう。
[24-31ページの図表]
全世界のエホバの証人の1984奉仕年度の報告
(出版物を参照)