「事物の体制の終局」をしっかり心にとめなさい
「お話しください。これらのことはいつあるのですか。あなたの臨在と,事物の体制の終局とにはどんなしるしがあるのですか」― マタイ 24:3,新。
1,2 (イ)どんな収穫は,喜びと悲しみの両方をもたらしますか。(ロ)「終わりの時」について,イエスはなんと言われましたか。
普通,収穫の時は大きな喜びをもたらします。何か月間かの労働の結実が刈り取られ,集められた穀物は将来の月々に対する備えとなるからです。しかし,ある人々には喜びをもたらしながら,同時に他の人々に嘆きと悲しみをもたらす収穫があります。それは比喩的な収穫です。それはイエスが次のように言及した,全地におよぶ収穫です。「畑は世界である。……収穫は事物の体制の終局であ(る)」― マタイ 13:38,39,新。
2 「終わりの時」あるいは「時代の終」つまり「事物の体制の終局」というようなことばを聞くと,何が起きるように感じられますか。確かにイエスは,あらゆる問題をかかえた,現存する世界の体制に終わりが訪れることを強調されました。彼は,事物の体制の終局としての収穫について,また,天使たちが出て行って,正しい人とよこしまな人とを分けることについて話されました。また,御国の良いたよりが宣べ伝えられ,それから終わりが来ることも指摘されました。そして,ご自分が命じた事柄すべてを伝道し続けるよう弟子たちに命じ,かつ,イエスは事物の体制の終局まで弟子たちとともにいるであろう,と言われました。しかし次のように尋ねるかたもおられるでしょう。このすべてはいったい何を意味するのですか。どうすれば終わりの時を見分けることができるのですか。わたしたちは今なぜこのことに関心を持つべきですか。―マタイ 24:14; 28:19,20。
3 現在の体制の終わりは,どんな変化をもたらしますか。
3 現存する地上の事物の体制に,なんらかの著しい変化が生じている,などとは考えられない人が大ぜいいます。しかしイエスは,まさにそうした変化について話されたのです。イエスは,神の御国が来るように,また御心が地上で行なわれるように祈れと弟子たちに命じられました。この御国が力と権威をもって支配するとき,重大な変化が生ずることになります。ですから,ダニエル書 2章44節の預言は,この御国が,「終わりの時」に全地に存在する,他の王国すべてを打ち砕いて終わらせ,永遠に存続することを述べているのです。
4 神は,ご自分を中傷する者に対し,どんな処置を取られますか。
4 この点に関して聖書が述べる事柄に驚いてはなりません。偉大な創造者エホバ神が,地に破壊がもたらされたり,地形がそこなわれたりするような事態,あるいは,ご自分のお名前がはずかしめられ,そしられたりする状態を引き続き放置され,人々が,「神はなぜ何もしないのだろうか。神はいないのだろうか。死んだのではないだろうか」と言うにまかされる,と考えるべき理由がどこにありますか。神の御心およびお目的に反する教理を教える,数多くの偽りの宗教をサタンが用いて,人々を誤導するのを,宇宙の創造者が放置する必要がどこにあるでしょうか。こうした事態がいつまでも続くのを許すどころか,聖書は,神が制限時間を設けて,現在の事物の体制の終局を定めておられることを明確に示しています。そののちに,測り知れない祝福を信仰の人に与えるより良い体制を,御国によってもたらすことを神は約束されました。―エゼキエル 6:10。ペテロ後 3:9。
5 世界を悩ましている諸問題は近い将来に必ずなくなる,とどうして言えますか。
5 一方,わたしたちのまわりの世界には何が生じていますか,あらゆる種類の問題が生じており,犯罪と不正はいよいよふえています。多くの土地は干ばつ,飢え,疫病に襲われ,人々は病気・老齢・死に苦しめられています。多くの土地は戦争のために荒廃し,人命と資産が失われ,哀れな孤児や不幸な未亡人があとに残されています。また,人々は高い税金・苦しい住宅事情・失業・インフレその他さまざまな問題で悩まされているのです。イエスはこうした苦難を予知していたにもかかわらず,確信をもって次のように天の父に祈り,かつ,同様に祈ることをクリスチャンに教えて言われました。「御心が,天におけるごとく,地にも行なわれますように」。どのようにして,そうなるのですか。世界の人々すべての改宗によってではありません。それは,使徒ペテロが語ったとおり,現在の事物の体制の終局,および正義の宿る「新しい天と新しい地」の到来によるのです。(マタイ 6:10,新。ペテロ後 3:13,新)これと全く同じ希望が,霊感を受けた筆記者により,イザヤ書 65章17節と黙示録 21章1節にしるされているのは興味深いことです。これら3人の聖書記述者,すなわちイザヤ,ペテロ,ヨハネはいずれも神の霊感を受けました。したがってわたしたちには,神が新しい天と新しい地,つまり御国の治める正義の新体制を樹立するという,神の確かな約束があるのです。しかも神は偽ることがありません。
将来の見込み
6 わたしたちの前途にはどんな見込みがありますか。それはどのようにして実現しますか。
6 その新しい体制が人類にもたらす祝福と有益な変化を考えると,その到来が迫っていることを大いに喜ぶべき十分の理由があります。箴言 12章7,28節はこう述べています。「悪者はたふされて無ものとならん されど義者の家は立つべし 義しき道には生命あり その道すぢには死なし」。このことをもたらしうるのは,知恵と力の偉大な源であられるエホバ神だけです。このかたはダニエル書 7章13,14節で,日の老たる者,つまり宇宙で最も古いかた,始めも終わりもない唯一のかたとして描写されています。この神はご自分の御子イエスに,「権と栄と国々とを賜ひて諸民 諸族 諸音をしてこれに事へしむ その権は永遠の権にして移りさらず またその国は亡ぶること」がありません。その統治権は地の果てにまで及ぶものですから,国土の境界線や,種族あるいは国家的な分裂はもはや見られなくなるでしょう。人間はすべてその天の王の民となるのです。その平和の君の統治下では,戦争はもはやありません。その統治権は,人々の安全を保障する「永遠の」権ですから,みじめな生活環境のために,革命や政変が引き起こされるようなことはもはやありません。
7 新しい体制の下では存在しなくなる問題を幾つかあげなさい。
7 新しい事物の体制の樹立に伴う益の一つとして,貧困また貧民街などは根絶されるでしょう。イザヤ書 65章21,22節の預言によれば,その新しい体制の下で生活する人々は,それぞれ自分たちの家を建て,自分たちの畑を作ります。それは,自分たちの労働の益にだれかほかの人があずかるためではなく,自分の家族といっしょに,その益を自ら享受するためなのです。すべての人は完全な健康に恵まれ,地上の住民は,「わたしは病気です」ともはや言わなくなるでしょう。実際のところ,もはや死さえも忠実な人々を脅かすことがなくなるのです。死者はよみがえらされて,とこしえの命を受けられるよう,楽園の地で正義を教えられるのです。新しい体制の下では食糧が不足することはありません。詩篇 72篇16節(新)は,「地上では穀物が豊かになり」と述べ,詩篇 67篇6節(新)は,「地そのものはまさしくその産物を出し,神,われらの神は,われらを祝福されるであろう」と付け加えています。―イザヤ 33:24。黙示 21:4。
8 エホバに関する知識は,全創造物にどのように影響を及ぼしますか。
8 動物さえ平和を好むものとなるのです。小牛とライオン,あるいは雌牛と熊がいっしょに草をはむありさまを想像してごらんなさい。子どもがライオンやヒョウと遊びたわむれても,親は恐れる必要がないのです。事実,イザヤ書 11章6-9節の聖句は,オオカミと小羊が仲よくしているさまを描いています。神からのこうした祝福のゆえに,昔パロが語ったように,「エホバとはだれか」と尋ねる人はもはやいないでしょう。それとは反対に,水が海をおおっているように,エホバに関する知識が地に満ち,生きている人々すべては,清い崇拝を行ない,エホバを拝するようになるでしょう。―イザヤ 66:23。エゼキエル 34:25-27。
どうしてそう言えるのか
9 変化が起ころうとしていることを示すどんな証拠がありますか。
9 しかし,現在の事物の体制が実際に終結して,そのような事柄がほんとうに実現するとどうして言えるのですか,と尋ねる人もいるでしょう。証拠は数多くあるのです。昔の事物の諸体制が終わりを見た時に起こった幾つかのできごとが歴史にしるされています。それらは現代に対する預言的な意味を持っています。わたしたちにはまた,現在の体制の終結に関する,イエスおよび霊感を受けた他の記述者の証言があります。聖書の年表は,この世の神サタンの配下にある現在の古い体制の終わりが,急速に近づいていることを示しています。それに加えて,現在成就を見ている聖書預言や,現存する体制の諸問題の解決策を見いだせずにいよいよ憂慮の念を深めている,世界の指導者たちの証言もその証拠となっています。ゆえに今日,イエスの弟子たちが,かつてイエスに尋ねた次の質問は,きわめて時宜にかなうものと言わねばなりません。「お話しください。これらのことはいつあるのですか。あなたの臨在と,事物の体制の終局にはどんなしるしがあるのですか」― マタイ 24:3,新。
10 イエスはご自分の再臨に関して,どんな対比と警告を与えましたか。
10 このことについて述べたイエスは,ご自分の再臨と現体制の終わりを,大洪水で終わりを見たノアの日のできごとと対比させました。(マタイ 24:36-39)当時の人々は,ノアの警告に心をとめず,飲んだり,食べたり,結婚したりして,ついに洪水でことごとくぬぐい去られてしまったのです。イエスは言われました。「人の子のきたるも然あるべし」。こうした対比を用いてイエスは,現存する事物の体制の終わりを示されました。この体制は,悪が再び地上にはいった大洪水後に始まり,「大かん難」および,サタンが底のない穴に入れられる時まで存続します。イエスは,この変化の時期を油断なく見守ることが,どんなにたいせつかを警告し,ふたりの男が畑にいる場合,ひとりは連れて行かれるが,別の男は見捨てられるであろうと述べて,こうさとされました。「汝らも備へをれ,人の子は思はぬ時にきたればなり」― マタイ 24:44。
11 ノアの模範は,わたしたちにどんな希望を与えますか。
11 しかし,ノアとその家族は,以前のその事物の体制の大激変となった,終わりを生き残ったのですから,現在の体制の終わりを生き残る希望もやはりあるのです。エホバは,大洪水前に存在していた,邪悪な体制の終わる時を定めましたが,箱船を建造させて,ご自分に仕える者たちを保護する手はずをも整えられたのです。ノアはエホバのみむねにかなう人でした。彼はむすこたちを周囲の暴力行為に加わらないようにさせ,正義をもって育てました。その結果,彼らは妻たちとともに守られて,当時の体制の終わりを生き残ったのです。
12 現代における“箱船”は何を意味しますか。どうすれば,それにはいることが期待できますか。
12 現代の事物の体制の終わりを生き残るには,イエスの警告のことばを心にとめ,忠実なノアの模範に従わねばなりません。ノアは正義の伝道者としてその世代の人々に仕えましたが,今日のエホバの民はそれと同じことを行なわねばなりません。(ペテロ後 2:5)わたしたちは,箱船によって表わされている,キリスト教の事物の体制にはいらねばなりません。このキリスト教の体制は,大いなるノア,キリスト・イエスによって建てられつつあり,かつ,イエスが刑柱上のご自分の死の価値を適用された時に正式に終わった,モーセの律法に基づく,事物の体制に取って代わりました。(コロサイ 2:14)このキリスト教の体制には,ひとりの妻に忠実であること,また,神の霊の実を示すことなど,イエスが定められた,クリスチャンの行ないに関する,高い規準に従う生活を伴う,エホバの清い崇拝が含まれています。それは,ノアのむすこたちが箱船の建造を助けたように,このキリスト教の体制を築くわざに協力することを意味します。このキリスト教の体制に従順であること,また,その益を図る者であることを示さない人は,現体制の終わりを生き残りうる,と考えることはできません。―ペテロ後 3:7。
13 ある事物の体制は1世紀当時,どのようにして終わりましたか。
13 イエスはまた,当時存在していた,ユダヤ教の事物の体制の終わりをも預言しました。(マタイ 23:37,38)その体制は,それよりおよそ15世紀前,エホバがシナイ山でイスラエル民族に律法を与えられた時に始まりました。ユダヤ教の体制は,祭司職・犠牲・幕屋あるいは宮における崇拝・祝祭を伴う律法契約および,人間の王を伴う国家体制をも含んでいました。この体制は,新しい契約が制定されて,古い契約が廃止された,西暦33年に正式に終わりました。(ヘブル 8:13)しかし歴史が示すとおり,律法契約下の祭司や犠牲に関する種々の取り決めは,ローマ人がついにエルサレムを攻略して崩壊させた,西暦70年に至るまで,イスラエル人の手で守られました。
14,15 ある人々はエルサレムの崩壊をどのようにして免れましたか。それは,わたしたちにとって,どんな意味を持っていますか。
14 このことは,わたしたちにとって特に興味があります。なぜなら,当時,一部のユダヤ人はクリスチャンとなって,事物の体制の終わりを生き残ったからです。彼らは,律法下のその事物の体制が正式に終わったこと,また,イエス・キリストの死・復活・昇天によって新しい取り決め,もしくは体制が可能となったことを認めました。そして,自分たちが新しい仲介者および新しい契約を得たこと,また,霊的な子として神との間に新しい関係を得たことを,正しく評価しました。また,野営する軍隊によって,エルサレムが囲まれるのを見たなら,山にのがれよ,と語ったイエスの警告に注意しました。(ルカ 21:20-22)ゆえに西暦66年,ローマ軍が,その都に対する最初の包囲を解いて撤退した時,イエスのことばを信じていた,それらの人々は,西暦70年,エルサレムが恐るべき殺りくを伴って破壊する前に,信仰と不屈の精神を表わしてエルサレムを捨て,その外に出ました。当時,外見上は依然としてユダヤ教の体制が存続していたとはいえ,実際には,キリスト教の体制が存在していることを,彼らは認めていたのです。
15 彼らは山にのがれ,イエスの預言が成就するまで,ペレヤのペラにとどまりました。これに似るものとして,献身して霊によって生み出されたクリスチャンたちは,政治および偽りの宗教を伴う,現在の事物の体制をあとにして,エホバが設けられた安全な場所にのがれました。キリストの導きを受ける,神の霊的な事物の体制にとどまるかぎり,神の献身したしもべたちは,現在の古い体制が,最終的に滅ぼされる前の残された短い期間,エホバの導きと保護を受けることができるのです。
預言された,「終わりの時」
16 「終わりの時」をさし示すものとして聖書が述べるしるしの幾つかをあげなさい。
16 エルサレムに関する,イエスの預言のことばが真実となったとおり,「事物の体制の終局」に関する,イエスの預言も成就することは確かです。それらのことばが「しるされたのは,事物の諸体制の終わりが臨んでいるわたしたちへの警告のため」だからです。(コリント前 10:11,新)それで,イエスの臨在のしるしに関する,使徒たちの質問に対するイエスの答えが,この体制の終わりをしるしづける世代をまちがいなく見分けるのに,どのように役だつかを,ここで考慮してみましょう。現在の体制の終わりが,いかに重大な事柄であるかを強調するものとして,しるしを構成するさまざまな事柄が,聖書のマタイ伝 24,25章,マルコ伝 13章,ルカ伝 21章,テモテ後書 3章,黙示録 6章に記録されました。イエスとその使徒たちは,わたしたちが何に注意すべきである,と語りましたか。彼らは,不法が増し,国々が悩み,世界戦争・地震・疫病などを伴う,特定の世代を指摘したのです。また,神の御国の良いたよりの伝道が,徹底的に行なわれるとともに,そうした伝道者が憎まれ,神に対する人々の愛が冷え,かつ,偽りの預言者が現われることをイエスは予告し,荒廃を引き起こす,神の目に憎むべきものが設立されることを警告されました。また,世の始めから,その時に至るまでの,いずれの時よりも重大な,そして二度と起こらないような,苦難の時代が来ることを強調されました。―マタイ 24:6-21。
17 今日成就している証拠の幾つかをあげなさい。
17 そうした事態にもかかわらず,神が,ご自分のしもべたちに必要な霊的な食物を供給する,伝達の経路として仕える「忠実なさとい奴隷」を地上に持たれることを,イエスは見越しておられました。また,大規模な収穫の仕事がなされて,選ばれた者たちが集められる,ということをも予知しておられました。天にさえ異常な事柄が現われるでしょう。そのうえ,パウロは,「対処しにくい危機の時代」としての,「終わりの日」について述べ,人々は,神よりもお金や快楽また個人の事柄にいっそうの愛を示し,自然の情愛を失うようになるであろう,と警告しました。また,人々は自制心を失い,何事によらず,容易に同意しないようになり,それを反映するものとして,子どもが親に不従順になる,ということをも知っていました。しかし,聖書に予告されたこれらの事態すべても,神が取り決められた仕事の遂行を妨げるものとはならないでしょう。つまり,人々に警告を伝えるわざが行なわれ,ある人々は,現在の体制の滅びを免れて生き残り,正義の新しい体制の祝福を享受することができるのです。イエスは,この時に行なわれるわざを,羊と山羊をわける仕事にたとえられました。
18,19 黙示録 6章4節が成就していることを示す証拠がありますか。説明しなさい。
18 わたしたちは,これらの預言の成就を見てきましたか。西暦1914年以来の諸事実は,わたしたちがその成就を見てきたことを示しています。イエスが予告したとおり,国際戦争は,かつて経験したことのない最高の規模に達したため,歴史家は,それらの戦争を第一次および第二次世界大戦と名付けました。(黙示 6:4)しかも,この世代の戦争は,絶え間なく続いているのです。タイム誌は,1945年から1965年の間だけで,40の戦争が行なわれたことを指摘しています。
19 人々が,先例のない国際的な規模の破壊を目撃したにとどまらず,一夜にして,隣人が互いに敵対し合い,略奪・放火・殺人を行なう事態が,身のまわりで生ずるほどになったのです。インドネシアでは,1966年の血なまぐさい共産党員粛清の際,40万余の人々が殺害されたと推定されています。アメリカはもとより,モーリシャス共和国に至るまで,遠く隔たった国々で人種暴動が生じ,多数の死傷者を出しています。全地に見られる暴動や流血を考えると,人々が互いに手をふりかざして,隣人を打つことを述べた,ゼカリヤ書 14章13節のことばの成就する時が,いかに身近かに迫っているかを思い知らされます。―エゼキエル 38:21。
20,21 黙示録 6章5節に予告されている食糧不足を示すどんな証拠がありますか。
20 一対のはかりを持った騎手の乗る,黙示録 6章5節の黒い馬は,イエスの予告した食糧不足のゆえに,いよいよ全地にその姿を現わしています。その様相は,もはや戦争の結果として起きる飢きん,というようなものではありません。サイエンス・ニューズ紙が述べるとおり,「一部専門家筋によれば,世界的大飢きんが,すでに始まっている」のです。近年,世界人口は35年ごとに2倍になっています。そしてすでに,たんぱく質食品の不足のため,毎年,少なくとも300万人が死亡していると推定されています。食糧生産問題の専門家,エウエル博士は,今後,10年ないし15年以内に,大量の餓死者が出るであろう,と予測しています。
21 最近のタイム誌は,それまでの5年間に世界人口は食糧生産の2倍の速さで増加したことを報じました。地上の人口は,人類史の始めから西暦1800年に至って,10億人に達し,その後,130年を経て20億人に達し,次は,わずか36年後に,32億8,000万人台に飛躍したと計算されています。近年,アメリカは,アフリカやラテン・アメリカおよびアジアの各地で,人口20人につき1人を養ってきました。また,インドは1966年に,アメリカの小麦の生産高の4分の1を消費した,と報じられており,その割合は前年の5分の1,その前の年の8分の1を上回っています。してみれば,「飢きん ― 1975年!」と題する本が,「だれが何をしようと,飢きんは避けられない」とするのも,不思議ではありません。前述の“黒い馬”が,飢きんをもたらす,その歩みを続けているのですから,大規模な餓死という恐ろしい事態を克服するには,事物の新しい体制が確かに必要です。
22 地震は現在の世代にどの程度の影響を与えてきましたか。
22 そうした悩みに加えて,イエスが今日の世代に関して予告されたとおり,地震が引き続き地を揺り動かしています。その最も恐ろしい例の一つとして,1920年,中国大陸で起きた地震では,18万人が死亡しました。次いで1923年,日本の関東地区を襲った大地震は,14万3,000人の人命を奪いました。1966年のトルコの地震は,死者2,500人を出しました。この国の公式統計によれば,20世紀に起きたトルコの地震で,合計4万人が死亡しました。1967年,コロンビアは,それまでの最悪の地震に見舞われ,死者75人,負傷者300人を出し,同年,フランスでは,一度の地震で1,100人が家を失い,またインドネシアでは,死者41人,負傷者370人を出し,家屋2,000戸が破壊されました。シシリー島やギリシアまたイランも,1968年初頭の月々,地震に見舞われました。地震の激しさ,および悲惨さは,現在の古い体制の,「終わりの時」が始まった,1914年以来,著しく増大したと報じられています。事実,今世紀に起きた地震による死者は,アメリカの約1,250人を含め,合計90万人を上回っています。
23 “不法の増加”を示すどんな証拠がありますか。
23 聖書に予告されていた他の証拠,つまり不法の増加・自然の情愛および自制心の欠如についてはいかがですか。近年の実情は,何を物語っていますか。アメリカ連邦検察局のフーバー長官は,「1960年代のわが国の犯罪の増加率は,人口増加率を11対1の比で追い越した」と報告しています。あらゆる種類の犯罪が,著しい増加を示しました。その首位を占めているのは,強姦・凶悪な暴行・強盗などです。現代が,“無政府時代”と呼ばれるのも,不思議ではありません。アメリカのマクナマラ前国防長官は述べました。「これまでの8年間だけでも,国際的に重大な意味をもつ暴動が,164件も発生した」。こうした“不法の増加”に災いされない安全な場所は,まさにどこにもありません。
24 今が,「事物の体制の終局」の時であることを示す,どんな事柄がほかにありますか。
24 新聞は,売春・離婚・堕胎・淫行・同性愛行為その他の事件を毎日のように報じています。子どもがほしくないので,生まないようにするため,神のみことば聖書に反する堕胎を行なう婦人がふえています。インドからの一報告は,自宅で行なわれる堕胎処置のため,1年に18万人の婦人が死亡している,と伝えています。最近のある報告によれば,日本では合法的な中絶手術が,1月平均3,000件の割合で行なわれているとのことです。1967年の最初の9か月間に,チェコスロバキアでは,7万人の婦人が中絶手術を申請しました。それにしても,聖書は,特に現在の世代の人々が善を愛さず,自然の情愛を失って,快楽を愛する者になるため,自制心の欠如が見られることを予告していませんでしたか。
25,26 多くの人々は,聖書預言に対してどんな態度を取っていますか。どんな道を取るのは賢明ですか。なぜですか。
25 事態はかつてないほどの危機に陥っていることを,多くの事実は示しています。ゆえに,聖書預言が,これほど正確に成就している,この時代のできごとの意味を嘲笑する人々のひとりになってはなりません。神に対する信仰を失い,また,現在の体制の終わりと,エホバの正義の新体制の樹立について,聖書が述べることを信じない人は,大ぜいいます。しかもこの事実すら,「終りの時にあざける者たちが,あざけりながら出てきて……『主の来臨の約束はどうなったのか……』と言うであろう」と述べた,ペテロの預言を確証するにすぎないのです。そうした嘲笑にもかかわらず,今日の世代こそ,現在の事物の体制の終わりと,エホバの正義の御国の治める,全く新たな地上の体制の樹立を目撃する世代であることを,多くの事実は示しています。―ペテロ後 3:3,4,口語。
26 人類が徹底的な変化に直面しようとしていることを知っているわたしたちは,現在生じている事柄に対し,今こそ目ざめて,油断なく警戒すべきです。収穫のわざが完了する前に,その仕事にあずかるべき時は今です。そうすれば,エホバの正義の新しい地に生き残る者として,「事物の体制の終局」に際し,悲しみではなくて喜びを味わう,幸福な人々のひとりとなるでしょう。―ロマ 13:11。
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現在の体制の終わりを生き残るには,ノアの模範に従わねばならない。わたしたちは,箱船によって表わされているもの,つまり,キリスト教の事物の体制にはいらねばならない