人類はハルマゲドンにおける勝利から益を受ける
1 なぜ人類はハルマゲドンで得られる勝利からとこしえの益を受ける立場にありますか。
人類は,ハルマゲドンで得られる勝利からとこしえの益を受ける立場にあります。その勝利は,人類,とりわけハルマゲドンでの戦争を生き残る人々にとって,永久に記念すべきものとなります。それは,「大いなる日」を特色づける勝利となります。今日まで,そのような日はいまだありませんでした。それは,「全能者なる神の大いなる日」です。全能者なる神は,その日になされる全宇宙的な戦争で勝利を得ることによって,それをご自身のために「大いなる日」とします。人類は全能者なる神の勝利から必ず益を受けます。神は人類の最良の友であるからです。
2 (イ)論争点となっている王国はその領域としてどこを包含しますか。なぜ?(ロ)論争点となっているのはどのような状態下の地上に対する支配権ですか。
2 ハルマゲドンにおいて,全能者なる神は,「人の住む全地の王」を戦闘者として相手にされます。王国ということがハルマゲドンにおいて決着を見るべき論争点であるからです。その王国はわたしたちの住む地球をその領域として包含しなければなりません。「人の住む全地の王」が現在そこを支配しており,その支配の座にとどまろうと決意しているからです。論争点は王国ということです。しかしそれは,今日のように,民主主義国家ブロックと共産主義国家ブロックとに分かたれた地上を治める王国ではありません。それら二つの勢力は互いを容認し合って共存しています。またそれは,キリスト教世界と異教世界に分かたれた地上を治める王国でもありません。論争点となっているのは,分かたれることのない一つの地球全体を治める王国,全地に対する単一の王国です。それこそ人類全体に益をもたらすものではありませんか。
3 王国という問題をめぐってハルマゲドンでなされる戦いは偶然に起きるのですか。わたしたちはその変化が神によってもたらされることをなぜ感謝できますか。
3 王国をめぐる論争がハルマゲドンの戦場で戦われるのは,予見されなかった人間世界の情勢や偶然などによるのではありません。この事態は神自身と人間とのためにすべて時を定めて行なわれるのです。太陽と月と星を設け,地球の運行を制御して,人間の計時の用に供しておられる全能者なる神は,全地を治める王国のための時をあらかじめ定められました。神は全地に対する人間の支配をこれまで十分長いあいだ忍んでこられたのではありませんか。全能者なる神がご自分の創造物である地球の王国をいつどのように引き継ぐべきかということを,人間の支配者たちが決定するのですか。神は,1914年の第一次世界大戦とともに始まった世界のあらゆる苦悩と諸国民の苦もんの中で無力な人類がいつまでももがきつづけるままにしておかれ,その助けには来られないのですか。幸いにもそうではありません! 全く必要なもの,全地を治める神の王国は,不完全で死にゆく人間の支配者たちがこれまで人類に与えることのできたいかなるものにも長大な進歩をもたらします。被造物である人間の支配に関して神のもたらす変化が悪い方向への変化であるはずはありません。わたしたちは,その変化をもたらすかたが全能の神であること,そして神がそのために賢明に選ばれた時が到来したことに感謝できます。
4,5 神は,神の支配を求めるどんな祈りを永年聴いてこられましたか。その祈りを教えた人は,そうした支配に関する事がらを推進するために何を言い,何を行ないましたか。
4 これまで19世紀以上の間,全能の神は,山上の垂訓中の教えに従って繰り返しささげられた祈り,つまり,「天におられるわたしたちの父よ,あなたのお名前が神聖なものとされますように。あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天におけると同じように,地上においてもなされますように」という祈りを聴いてこられました。(マタイ 6:9,10)その定めの時がまだ到来していなかったゆえに,全能の神はこの霊感の祈りにこれまではまだ答えを与えてこられませんでした。この祈りは,神の王国の到来とその価値とを信じ,その王国に関係した事がらの推進のために自らの命をさえ犠牲にした人によって教えられたものです。偽のメシアはそのようなことをしません。自分の行なった山上の垂訓の中で天の父の王国を祈り求めるべきことを教えたこの人は,「王国と神の義をいつも第一に求めなさい」とも語りました。パレスチナの住民の間で行なった彼の教育的な業の当初からの主題は,「あなたがたは悔い改めなさい。天の王国は近づいたからです」ということでした。(マタイ 4:17; 6:33)そして,神のメシアによる王国の設立に伴う苦難について予告した中で,彼はこう語りました。
5 「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」― マタイ 24:14。
6,7 (イ)その預言を成就している人々はその預言をしたかたについてどんな信仰をいだいていますか。(ロ)シモン・ペテロは,週の祭りの日に,そのかたについてユダヤ人になんと述べましたか。
6 この注目すべき預言は大々的に成就してきました。そして今日なおその成就は続いています。それを成就しているのは,地的な王たちを持ち,戦争や政治上の争闘を続けているキリスト教世界ではなく,全能の神とそのメシアによる天の王国とを真実に信じている人々です。それらの人々は,神が約束したメシアに関するヘブライ語聖書中の霊感の預言を成就したのがだれであるかを知っています。彼らは,それが,神のメシアによる王国を地上で唱道した者の中で最大のかたであったことを知っています。彼らは,神の与えた聖書から,このメシアが,かつての収税人マタイ・レビが「アブラハムの子,ダビデの子,イエス・キリスト」と呼んだかたであることを,自信と確信とをもって証明することができます。(マタイ 1:1)それは,シモン・ペテロという名のガリラヤ人がシャブオス(週)の祭りの日に古代のエルサレムで証しした人です。その祭りを祝い,また真実を知ろうとする三千人以上のユダヤ人に対して,ペテロはこう語りました。
7 「実際ダビデは天に上りませんでしたが,自らこう言っています。『エホバはわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい。わたしがあなたの敵たちをあなたの足の台として据えるまで」』。ですから,イスラエルの全家は,神が彼を,あなたがたが杭につけたこのイエスを,主ともキリストともされたことをはっきりと知りなさい」― 使徒 2:34-36。
8 (イ)メシアが血肉のすがたで到来することを期待しているキリスト教世界とユダヤ人はなぜ誤ったものを期待していると言えますか。(ロ)真のメシアによる王国は人類のために何を行なうことができますか。
8 ダビデはユダヤ人としてエルサレムで王となった最初の者でした。そして,彼の子孫である「ユダ族の」イエスは今,ダビデの天的な主,またメシアつまり油そそがれた者なるキリストともなっています。メシアが血肉のさまでまもなく到来することを期待する,キリスト教世界の宗教的な人々および割礼を受けたユダヤ人は,誤ったものを期待しています。真のメシア,すなわち,ダビデが霊感のもとに語ったとおりエホバ神が天のご自身の右に座するようにと招かれるかた,そして古代のメルキゼデクと同じような王なる祭司となるかたは,今そして今後常に天のメシアであり,神の天的な子なる霊者です。(詩 110:1-4)彼のメシア王国は死すべき地上の人間の王国をはるかに超越した存在です。それは超人間的なものであり,単なる人間の支配者による地上の王国の決してなしえない事がらを人類のために行なうことができます。真のメシア王国は天的なものであり,不従順な天使で,悪霊となった使いたちの君である悪魔サタンの力を打ち砕くことができます。悪魔サタンと配下の悪霊たちの哀れむべき犠牲となってきた人類は,メシアによるそうした王国から永続的な解放と益を受けることができます。
定めの時に設立された王国
9 (イ)地上にあったダビデの王国はいつ覆されましたか。そうした状態でどんな期間を経ることになっていましたか。(ロ)いつ異邦人の支配は去り,メシアの支配が到来しなければなりませんか。
9 エルサレムを都としたダビデの家系の王国は,紀元前607年に,バビロンの軍隊によって覆されました。その災厄の少し前に,エホバ神はご自分の預言者エゼキエルを用いて,約束のメシアが神の定めの時に到来すること,また,その持つ権利のゆえに神がそのメシアに王国を与えることを宣言させました。(エゼキエル 21:25-27)ダビデの王統が異邦のバビロニア人によって滅ぼされたのちにどのようなことが起きたかについては,ユダヤ人も異邦人も歴史を通して知っています。つまり,異邦人が地上を支配し,ダビデの王統の王国がそれら異邦人の支配者たちになんの干渉も加えない時代が始まりました。それは,「異邦人の時」と呼ばれてきました。(ルカ 21:24,文)しかし,全能の神は異邦人の世界支配の時を一定の期間継続させるにすぎません。神はその異邦人の時がいつ終わるかを明確に定めました。そして,そのことを,エルサレムを滅ぼす者となったバビロンの王に示しました。(ダニエル 4:16,23,25,31)その時が来るなら,異邦人の支配は過ぎ去らねばなりません。そして,メシアによる支配が到来しなければなりません!
10 どんな最も強力な政治勢力についてダニエルは予告しましたか。それが支配に関する神の時と法とを変ええなかったことを述べなさい。
10 神は,ご自分の預言者ダニエルによって,異邦人の一政治勢力が起こって,地上の支配に関する神の時と法とを変えようとすることを予告されました。(ダニエル 7:25)しかしながら,この20世紀の世界史は,予告されたこの政治勢力が,全人類史上最強の世界強国でありながら,異邦人の時の終わりとして神の定めた時を,1914年から,それよりもいつかのちの時代に変えることはできなかったことを示しています。確かに,第一次世界大戦が1914年にぼっ発しました。しかし,その年,真に異邦人の時の終わりを画し,それを意味したものは,神の子イエス・キリストが油そそがれた王として正式に即位し,メシアによる神の王国が天に誕生したことです。それ以来の苦難の年月の間,強大な第七世界強国(英米二重世界強国)も,宇宙的に重大な意義を持つこの事実を変えることはできませんでした。「王国のこの良いたより」を人の住む全地に宣べ伝えるエホバのクリスチャン証人たちに対する迫害というかたちで表わされてきた諸国民の憤りも,王国設立のための神の定めの時を取り消すことはできませんでした。
11 (イ)神が統治に関するご自身の力を執られたことに対して感謝をささげるべき時はいつ到来しましたか。(ロ)感謝した者たちの中に地上の諸国民が入っていたかどうかについては何が示していますか。
11 異邦人の時の終わった1914年の初秋,それは,啓示 11章15節にあらかじめ記された次の発表のことばが天において語られる時となりました。「世の王国はわたしたちの主とそのキリストの王国となった。彼はかぎりなく永久に王として支配するであろう」。では,キリスト教世界の諸国家は,宇宙史上のこの新しい局面に対して感謝をいだきましたか。キリストの手中に託される,主なる神の王国の誕生に感謝した者たちの中に,いわゆるキリスト教諸国が含まれていましたか。いいえ,そうではありません! 啓示 11章17,18節の預言は,そのことに感謝をいだく者たちの語ることばをあらかじめ次のように記していました。「いまおられかつておられたかた,全能者なるエホバ神よ,わたしたちはあなたに感謝します。あなたはご自分の偉大な力を執り,王として支配を始められたからです。しかし,諸国民は憤り,あなたご自身の憤りも到来しました」。歴史は,憤りをいだいたそれら諸国民が,王国を宣べ伝える人々の激しい迫害者となったことを証言しています。
12,13 サタンは王国の誕生を喜びましたか。啓示 12章7-12節はその点をどのように示していますか。
12 それ以外のことは期待できません。悪魔サタンとその使いである悪霊たちは,メシアによる神の王国が1914年に天で誕生したことを喜んではいません。啓示の次の章,つまり第12章の7節から12節は,王国の誕生ののちに起きた事がらについてこう述べています。
13 「天で戦争が起こった。ミカエルとその使いたちが龍と戦った。龍とその使いたちも戦ったが,優勢になれず,彼らのための場所ももはや天に見いだされなかった。こうして,大いなる龍,すなわち,初めからのへびで,悪魔またサタンと呼ばれ,人の住む全地を惑わしている者は投げ落とされた。彼は地に投げ落とされ,その使いたちもともに投げ落とされた。そして,わたしは大きな声が天でこう言うのを聞いた。『今や,救いと力とわたしたちの神の王国とそのキリストの権威とが実現した! わたしたちの兄弟を訴える者,日夜彼らをわたしたちの神の前で訴える者は投げ落とされたからである。……地と海には災いが来る。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りをいだいてあなたがたのところに下ったからである』」。
14 (イ)地の王たちは導かれるままにどこに集まっていますか。なぜ,そしてどんな影響のもとで?(ロ)わたしたちが王たちとともにそこに集められるとすれば,それは最終的に何を意味することになりますか。
14 こうして,悪魔サタンとその使いである悪霊たち,および地上の諸国民は,メシアによる神の王国が異邦人の時の終わった1914年に誕生したことに対して同様の感情を経験しました。したがって,大いなる龍である悪魔サタンの口から出る霊感の表現が,人の住む全地の王たちを,王国という問題をめぐってなされるハルマゲドンの戦争に集めるということも,少しも不思議ではありません。また,これら憤った諸国民の王たちがそうした悪霊の影響のままにそこに集まることも驚く理由にはなりません。しかし,わたしたちが自分自身について厳密に調べるべきことがあります。つまり,わたしたち個人個人としては,こうして惑わされている「人の住む全地の王たち」の側に集められるままになっていますか。もしそうであるなら,わたしたちは,自分が彼らの王国を支持し,メシアによる神の王国を支持していないことを明白に示すことになります。そしてまた,それら「人の住む全地の王たち」がハルマゲドンで被る事がらを,わたしたちも自分の身に受けねばならないことになるでしょう。それはなんですか。啓示 19章19-21節がこう述べています。
15 啓示 19章19-21節は,ハルマゲドンにおいて地の王たちとその支持者たちに降りかかるものについてどのように描写していますか。
15 「そしてわたし[使徒ヨハネ]は,野獣と地の王たちとその軍勢が,馬に乗っているかたとその軍勢に対して戦いをするために集まっているのを[つまり,ハルマゲドンに集まっているのを]見た。[そして,彼の外衣に,実にそのもものところに,王の王また主の主と書かれた名がある。(16節)]そして,野獣は捕えられ,それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた。彼らは両方とも生きたまま,いおうで燃える火の湖に投げ込まれた。しかし,そのほかの者たちは,馬に乗っている者の長い剣で殺された。その剣は彼の口から出ているものであった。そして,すべての鳥は,彼らの肉を食べて満ち足りた」。
16 (イ)それで,ハルマゲドンにおいて勝利者として登場するのはだれですか。彼が王の王と呼ばれているのはなぜですか。(ロ)敵の軍勢の処刑はだれによってなされますか。敗北する者たちの遺体はどのように処理されますか。
16 この預言的また象徴的な描写から,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」の勝利者として登場するのがだれであるかを判断することは,だれにとっても難しいことではないはずです。それは王の王,また主の主であり,白い軍馬に乗る者として描写されています。(啓示 19:11)この天の戦士は,地の王たち,およびハルマゲドンでその王たちの側に整列する者たちの処刑を命ずる号令を発します。それはさながら,長い剣が彼の口から突き出るかのようです。王の王なるかたのこうした命令を遂行するのは天のみ使いたちの軍勢です。こうして,彼が王の王,つまり,それら地上のすべての王たちに勝る王であることが実証されます。それら地上の王たちに従い,またそれを政治的に支持する者はみな,それら人間の王たちとともに滅ぼし去られます。王の王に従う人々はハルマゲドンにおけるその宇宙戦争を生き残りますが,この描写の中で,それらの人々が地の王たちやその軍勢のなきがらを葬るようにと命令されているのではありません。では,野にさらされ,腐臭を放つそれらの遺体をだれが処理するのですか。その処理のために用いられるものは,腐肉を食う野鳥たちとして描かれています。
17 そうした死と遺体の処理法とはそれら処刑された者たちについて何を意味していますか。なぜ?
17 こうしたいとわしい死とそこに残された肉体の処理のしかたとは,それが復活の希望の全くない死であることを意味しています。それは,その者たちが,ハルマゲドンの戦場で全能の神によって,つまり,キリストの率いる,神の天の軍勢によって処刑されるからです。それらは,エホバ神とそのメシアによる王国の敵対者として矯正不能であることを示す者たちです。彼らは二度と生きず,象徴的な「野獣」や象徴的な「偽預言者」と同様の運命をたどります。これらは人間の設けた政治上の機構であり,「いおうで燃える火の湖」に生きたまま投げ込まれるかのようにして永久の滅びに処されます。啓示 20章14節と21章8節は,この燃えるいおうの「湖」を,「第二の死」,つまりとこしへの絶滅の象徴としています!
生き残る人々にもたらされる戦争後の祝福
18 義の政府を愛する人々はだれを愛し,だれを憎みますか。その人々は猶予することなくどちらの側に整列しますか。
18 これがこの世代に生きるすべての人にとってきわめて重大な問題であるために,聖書は,ハルマゲドンにおける宇宙戦争で敗北を被る側に整列している人々の前途にあるものについてきわめて簡明率直に述べています。全人類のための正義の完全な政府を真に愛する人々は,王の王たる者に対してことさらに戦い,こうしてメシアによる神の王国を退ける人々の前途にあるものについて考え,恐れに身の縮むものを感じます。彼らは,遠い昔から約束されてきた,この義と平和と繁栄の王国の源である,あわれみの神を愛しています。そして,神の敵対者である悪魔サタンを憎みます。そのサタンから,人類に対するあらゆる誤った統治,および人類社会のあらゆる不義と不安動揺と過酷な生活状態とが出ています。彼らは,み子イエス・キリストを通してハルマゲドンで得られる,神の栄光ある勝利によって,すべての理知ある創造物に対するエホバ神の宇宙主権が立証される日を待望しています。こうして正当な宇宙主権者に対して愛をいだく人々は,なんら猶予することなく,神のメシア,王の王であり,主の主であるかたの側に整列します。ただその側に立ってのみ彼らは生き残ることができます。
19 地上で生き残る人々にとって,ハルマゲドンにおける勝利が言い知れぬ喜びのおりとなるのはなぜですか。
19 ハルマゲドンの戦場における神の勝利は,「全能者なる神の大いなる日の戦争」のなされるこの地上に生き残るすべての人にとって言い知れぬ喜びのおりとなります。エホバの宇宙主権の立証をたたえる彼らの歓喜の歌は,全地がいまだ聞いたことのないものとなるでしょう。エホバの大敵対者がニムロデ王国のバビロンの時以来用いてきた獣のような政治体制がついに地上全体から現実に除き去られるのを見るとは,なんという喜びではありませんか。そうです,エホバの油そそいだ者の手にゆだねられる,慈しみに富む王国が,神の栄光と人類のとこしえの祝福とを目的として愛による支配を行なうために,その妨げとなるものが全地から除かれるのです!
20 その喜びに加えて,さらに大いなるどんな勝利の喜びがありますか。
20 この比類のない喜びの上にさらに加わるのは,主権者なる主エホバの側のいっそう大きな勝利に伴う喜びです。これはハルマゲドンにおける勝利のすぐあとに続きます。それは,地上の見える政治体制を背後から操って人間を傷つけてきた邪悪な者,すなわち悪魔サタンを,その使いである悪霊たちもろともに拘束することです。これらの者は地の近辺から除かれ,隔たったところにある底知れぬ深みに閉じ込められて封印され,メシアによる神の王国に対しなんら干渉できなくなります。
21 (イ)生き残る人々は,悪霊たちが底知れぬ深みに入れられるのをどのようなかたちで目撃しますか。しかし,これらの生存者にとって,そのことはどのようにして現実のものとなりますか。(ロ)生き残る人々がメシアによる神の王国の抱擁のもとで平安を感じるのはなぜですか。
21 こうして悪霊たちが底知れぬ深みに投げ込まれる時,そのことを永年待望してきた,ハルマゲドンの地上生存者たちは,啓示 20章1-3節の預言的な描写に基づいて,それを信仰の目で見るにすぎませんが,その喜ばしい結果をきわめて現実的なかたちで必ず感じ取ります。彼らはもはや,悪魔の策略と戦い,それに対してしっかり立ち向かうために,神からの「完全にそろったよろい」を着けていなければならないということはありません。彼らはもはや,見えない超人間の政府や「天の場所にある邪悪な霊の勢力」との格闘を続ける必要はありません。そして,敵対者である悪魔がだれか食いつくすべき者を見いだそうとしてほえるししのように歩き回るということもなくなります。(エフェソス 6:11-18。ペテロ第一 5:8)それら悪意をいだく見えない敵対者たちに対する恐れはなくなり,地上の最大の患難を生き残った人々は,メシアによる「新しい天」の抱擁の中でさわやかな平安を感じます。この天の政府は,自分の羊を愛をこめて守る東洋の羊飼いのような優しさを持つでしょう。りっぱな羊飼いであるイエス・キリストは人間の「羊」たちのために自分の命をなげうったかたであり,自分がそのために命を捨てたすべての人を治める王なる牧者となります。―啓示 21:1; 7:9-17。ヨハネ 10:10-16。
22 (イ)詩篇 145篇20節の例証として,エホバがご自分の崇拝者たちを保護し,「大患難」を生き永らえさせることは,エホバの側の何であると言えますか。(ロ)王国の領域に起こるべきこととして預言された壮大な事がらに地上で最初にあずかるのはだれですか。
22 聖なる天界からこの地に放逐されたのちのサタンと配下の悪霊たちの邪悪な目標は,全人類,とりわけエホバ神の真の崇拝者たちを滅ぼし去るような「災い」を地と海にもたらすことでした。わたしたちはこの点を忘れません。こうした点から考えると,そうした崇拝者たちを保護して「大患難」を通過させ,その最高潮であるハルマゲドンを生き残らせることは,全能の神とそのメシアなる王の側のめざましい勝利の業であると言えます。(マタイ 24:21,22。マルコ 13:19,20)またそれは,『エホバはおのれを愛しむ者をすべて守りたまへど 悪しき者をことごとく滅ぼしたまはん』という聖書の保証の真実さをさらに例証するものともなります。(詩 145:20)エホバは,メシアなるイエスの千年王国のもとに置かれるこの地上のために数々の輝かしい事がらを預言されましたが,そうした輝かしい預言の実現に,地上において最初にあずかるのは,「大患難」の生存者たちです。
23 (イ)その時の地上は,そこに住む人々の間にどんな関係の見られるところとなりますか。(ロ)そこにおいてもはやカエサルのものをカエサルに返す必要がないのはなぜですか。
23 こうして全地は人間的な友愛によって結ばれたところとなります。全能の神とみ子イエス・キリストの側に立って忠実を守る生存者たちの間でそれが実現するのです。平和条約をまとめて戦いの傷あとをいやし,勝者と敗者の食い違いを取り繕うための平和会議を開く必要はありません。敗北を被ってなお生き永らえている者はいないからです。生き残っている人々,つまりエホバの勝利にあずかる人々は,カエサルのものをカエサルに,神のものを神に返そうとして自分の注意を二つに分けることはもはやないでしょう。「カエサル」とその政治上の統治機関とは永久に存在しなくなっているからです。(マタイ 22:21)今やすべてのものは神のものでなければならず,地の住民はすべてのものを神に返さなければなりません。―詩 103:19。歴代上 29:11。
24 サタンの支配のもとで地上はなんの君臨するところとなってきましたか。しかし,神の王国のもとでは代わって何が支配しますか。
24 過去六千年にわたる,人類に対する悪魔の支配の間,地は罪とその刑罰である死の君臨するところとなってきました。全地に及ぶ単一の政府,救い主イエス・キリストを通してなされる神の統治のもとでは,地は,義とその報いである命が支配するところとなります。大患難を生き残る人々は,神の政府の意志を行なってゆくにつれ,身心の若返りを実際に感じるでしょう。
25 (イ)地上で生き残る人々は,王国統治の益がほかのだれにも及ぶのを見て喜びますか。どんな手段によって?(ロ)こうして帰還してくる人々を,どんな地上の状態が喜び迎えますか。(ハ)生き残る人々の目と心は,今勝利の側に立つことに対してどのような祝福を受けますか。
25 生き残る人々の愛にあふれた心は,天の完全な政府のもとでの命の恩恵が地のふところで眠りに就いている人々にも差し伸べられるのを見て喜びに満ちるでしょう。それは,イエス・キリストの命令によって死者の復活が始まる時に起きる奇跡です。(ヨハネ 5:28,29)こうして贖われた死者の帰還が始まる時までに,地上の状態はなんと大きな変化を遂げているではありませんか。復興の過程にあるパラダイスが彼らの目をとらえ,彼らの帰還を喜び迎えるのです! その時生きて,メシアによる神の王国のもとに仕える喜びについては,ただ想像することができるのみです。しかし,ハルマゲドンの勝利の側で生き残る人々の目と心は,まさに祝福されています! その人々は,生きて前途の備えをし,こうした事がらが現実に到来するのを見るからです!
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全地球的な規模でパラダイスを地上に再確立すること,これが,ハルマゲドンにおける神の勝利による輝かしい結果の一つとなる
[245ページの図版]
復興過程にあるパラダイスが,イエスの王国統治下の地上に復活してくる人々の目をとらえる