1979 エホバの証人の年鑑
わたしたちは不安で混乱した世界に住んでいます。来る日も来る日も,人々は,心配をいっそう大きくするような事柄を見たり経験したりしています。種々の圧力や諸問題から逃れるために何をすべきか,あるいはどこに頼るべきかが分からず,多くの人は途方に暮れています。政府は動揺しており,経済問題は依然として解決されず,インフレは疫病のごとく多くの国々を脅かしています。汚染は種々様々の健康上の問題を引き起こし,道徳面では深刻な崩壊が見られます。宗教上の矛盾や偽善を指摘すれば枚挙のいとまがありません。政治,経済,科学,宗教,社会活動その他の分野で多くの著名人が“指導”に当たっているにもかかわらず,世界は窮境に陥っています。
この世で権威を振るう指導者たちが明らかにしているすべての発言を前にして,次のように尋ねるのは時宜を得ています。正しい進路を本当に知っている人が,それらの指導者の中にいるだろうか。自分たちがかかえている重要な問題に対する満足のゆく解決策を得るために,あるいは,将来の確かな希望を見いだすために人々の頼り得る人が,世の識者たちの中にいるだろうか。決して失望させられないという確信を持ってだれに付き従えるだろうか。人々を混迷状態から救い出し,人々が今緊急に必要としている導きを与え得る指導者がいるだろうか。
わたしたちは,人々が全幅の信頼を置くことのできる指導者がいると申し上げますが,それは決してせん越なことではありません。このことを確信し,その指導者を間違いなく見分けるために事実を知るには少しの時間が必要です。必要な時間を掛け,それを調べるだけの辛抱強さを働かせるなら,その指導者の資格および信任状を支持する証拠はたくさんあります。そうすることによって,ひずみを正すことができ,その指導者に従って得られる益を現在も将来も受け得るのであれば,調べるための要求はそれほど大きいとは言えません。その指導者は,自分に従うことを進んで選んだ人々に対してすでに多くのことを行なっています。その指導の益にまだあずかっていない人々には,彼の側に立つ機会がなお開かれています。そうすることをまだ決定しておられないとしても,あなたはその指導者の側に立つことに関心を持っておられますか。
今日の情勢で必要とされているのは,増大する人類の諸問題に対処することに失敗している,様々な人間の指導者のだれとも全く異なる方です。あらゆる国籍の人々を一致させる能力を持ち,注意を要するいかなる問題をも解決する資格を備えた指導者が緊急に必要とされています。そのような指導者はしばらく前から現われていて活動していると聞かされると,多くの人は驚きます。その人物は,人々の選出によって指導者の立場に就いたのではありません。もともと,神の任命によってその立場を占めたのです。わたしたちはだれのことを話しているのでしょうか。では,歴史を少し概観してみましょう。
神によって任命された,わたしたちの指導者に従う
1,900年前に,親密な人々からなるあるグループは,その指導者から偉さに関して珍しい助言を受けました。それは非常に適切なことでした。なぜなら,そのうちの10人は,残りのふたりが高い地位を求めたことから,だれが偉いかという問題で憤慨していたからです。指導者はグループの人々に例えを用いて次のように話しました。「あなたがたは,諸国民の支配者たちが人びとに対していばり,偉い者たちが人びとの上に権威をふるうことを知っています。あなたがたの間ではそうではありません。かえって,だれでもあなたがたの間で偉くなりたいと思う者はあなたがたの奉仕者でなければならず,また,だれでもあなたがたの間で第一でありたいと思う者はあなたがたの奴隷でなければなりません」。(マタイ 20:25-27)その時の話し手はほかならぬイエス・キリストでした。イエスは,教える事柄やご自身が他の人々に仕えることによってすでにその偉さを実証しておられました。それまで,イエスは,ご自分が苦しみに遭うことやどんな死に方をするかということについてお話しになっていました。それを聞いていた12人はイエスの使徒たちでした。そのうちのふたりは兄弟で,その母親は息子たちが王国でイエスの右と左の地位に就けられるように頼んでいました。―マタイ 20:17-24。
イエスは,それら12人の使徒やイエスに従う他の弟子たちの承認された指導者だったばかりか,支配者,そうです神の王国で王座に着く王となることに定められていました。(マタイ 23:10; 25:31-34)偉さとは何かを指摘するに際して,イエスはご自分が地上に来たふたつの理由を関連付けながら,ご自分を例に引かれました。イエスは言われました。「ちょうど人の子が,仕えてもらうためにではなく,むしろ仕え,かつ自分の魂を,多くの人と引き換える贖いとして与えるために来たのと同じです」。(マタイ 20:28)イエスが天から遣わされて来られたのは,み父に仕えそのご意志を行なうためであり,同時に人類の世を益する仕方で仕えるためでした。
イエス・キリストにとって,その使命を果たすには,上の領域を離れ,天的な栄光を捨て,謙そんに地上の割当てを受け入れる必要がありました。しかも,地上ではイエスの従順を完全にするための試練や苦しみが待ち受けていたのです。聖書によれば,イエスは,「自分を無にして奴隷の形を取り,人のようなさまになりました。それだけでなく,人のすがたでいた時,彼は自分を低くし,死,それも苦しみの杭の上での死に至るまで従順になられました」。(フィリピ 2:7,8)そのようにして神に仕えるには,イエスにとって謙そんさが大いに求められたに違いありません。地上の何人といえども神を喜ばすためにイエスほど多大の犠牲を払ったことはありません。
仕える,すなわち奉仕するために,イエスは『奴隷の形を取って』来られました。そして,割当ての仕事を果たすのに時間を浪費したり,手間取ったりなさいませんでした。ヨルダン川でバプテスマを受けた後,イエスは神の聖霊によって油そそがれました。それから,霊に動かされて荒野に導かれました。そこで,イエスは自分の前途にある行程について熟考されたに違いありません。(詩 19:14)荒野にいた40日間の間に,イエスは悪魔の誘惑を首尾よく退けられました。(マタイ 4:1-10)それから間もなくイエスは,伝道し教える徹底的な業を開始されました。イエスの音信にあいまいなところは少しもありませんでした。マタイの記録によれば次の通りです。「その時からイエスは伝道を開始し,『あなたがたは悔い改めなさい。天の王国は近づいたからです』と言いはじめられた」。(マタイ 4:17)イエスはその活動を,たとえばご自分が育った故郷のナザレのような一つの場所に限られはしませんでした。ナザレの会堂の集会でイエスはイザヤ 61章1,2節に述べられているご自分の使命を朗読なさいました。それから間もなくナザレを去って,奇跡的ないやしを行なわれたばかりか王国の良いたよりを伝道したり教えたりしながら,しばらくの間ガリラヤの他の町々村々を回られました。大勢の人は引き付けられてイエスの言葉を聞き,病気がいやされることを求めました。人々の状態を観察し,イエスは,収穫が大きいのでさらに多くの働き人が必要であることをお知りになりました。(マタイ 9:35-38)そして,ご自分が宣明している同じ希望の音信を携えて出掛けて行くように使徒たちと弟子たちを訓練することにより,それら働き人が備えられるように取り計らわれました。時が緊急だったので,働き人たちは身の回り品をたくさんかかえ込んで煩うべきではありませんでした。必需品だけで十分だったのです。―マタイ 10:5-10。ルカ 10:1,2。
「多くの人と引き換える贖いとして自分の魂を与える」時が来たとき,イエスはしりごみするどころか進んで犠牲の死を遂げることによってその偉大さを示されました。(マルコ 10:45)イエスは,冒とくの罪を犯していると偽って非難されました。そのようにして命をなげうつことはやさしいことではなく,信仰と献身を真に試みるものでした。そのことはイエスの次のような祈りから明らかです。「わたしの父よ,もしできることでしたら,この杯をわたしから過ぎ去らせてください。それでも,わたしの望むとおりにではなく,あなたの望まれるとおりに」。(マタイ 26:39)イエスが死に至るまで忠実を保ったことにより,み父のみ名に栄光が帰され,イエスご自身の忠誠と神の右に高められるに値することが証明され,全人類家族に最大の益が及ぶ結果になりました。
古来,人間の指導者として名を上げようとした人物は大勢います。しかし,イエス・キリストに比肩し得る人間はだれもいません。イエスは偉大さにおいて他のだれをもしのぐ方です。イエスは,アブラハムの生来の子孫のためばかりか,あらゆる国籍の人々からなるグループ,すなわちイエスに従うことを選ぶ,あらゆる人種からなる人々のための指導者として神に任命された人物として,特異な立場を占めておられます。(イザヤ 55:4)西暦1世紀にイエスに従った最初の人々は生来のイスラエル国民から現われましたが,やがて,異邦人すなわち非ユダヤ国民からもイエスを受け入れてその弟子になる人々が現われるようになりました。
今日,イエス・キリストの追随者であると唱える人は非常に大勢います。しかし,実際にそうであることの証拠はどこにあるでしょうか。マタイ 16章24節に書き記されている通り,イエスは,「だれでもわたしについて来たいと思うなら,その人は自分を捨て,自分の苦しみの杭を取り上げて絶えずわたしのあとに従いなさい」とおっしゃいました。キリスト教世界の教会の多数の信者はそのことをしているでしょうか。義の実を結び,イエスの王国に関する真理を知らせることによってイエスの弟子であることを証明しているでしょうか。キリスト教世界自身の指導者たちは,そうでないことを認めています。
それとは全く対照的に,エホバの証人はイエス・キリストを自分たちの指導者また手本として認め,それを公にしています。そして,イエスの足跡に忠実に従うことを決意しています。(ペテロ第一 2:21)エホバの証人は,証しのため全世界で王国の良いたよりを宣べ伝えなさいというイエスのご命令に従い,200を超える国でその業を行なっています。また,イエス・キリストが守ることをお命じになったすべての事柄を人々に教えて弟子を作ることも行なっています。1978奉仕年度中9万5,052人の新しい弟子がバプテスマを受けた事実は,エホバの証人たちが事物の体制の終結に至るまで王国の良いたよりを宣べ伝えて他の人々を教えるという使命を果たす決意をしていることを証明しています。(マタイ 28:19,20)あなたはそうした弟子のひとりでしょうか。もしそうでないなら,他の大勢の人々が,エホバ神の熱心なしもべに教えられ援助されたゆえにイエス・キリストの献身した追随者になったように,あなたもイエスの弟子になることに関心を持っておられるでしょうか。
現代のエホバの証人たちは,まだ時間のある間に弟子を作るため自分たちにでき得る限りのことをしています。証人たちは,神のみ言葉に基づく音信を広めるという神から与えられた業をたゆむことなく続けなければならないことを悟っています。それをどの程度行なわねばならないかについては,指導者イエス・キリストから与えられた指示を心に留めています。復活後の40日間の終わりごろ,『天に上げられる日』に,イエスは前もって取り決めておいたオリーブ山での集会に一部の弟子をお集めになりました。その折にイエスは,弟子たちの業がエルサレム,ユダヤ,サマリアよりもはるか遠くにまで,事実「地の最も遠い所にまで」拡大することを明らかにされました。(使徒 1:1-9)したがって今日のエホバの証人は,それら初期のイエスの弟子たちと同様に,クリスチャン活動が世界的な規模で,できる限り広範囲に進められるべきことを確信しています。この「年鑑」の24ページから31ページに掲載されているエホバの証人の1978奉仕年度の報告は,そうした活動やイエス・キリストの他のご命令が今日遂行されていることを如実に物語っています。
クリスチャン活動に用いられている協会および法人団体
世界的な王国伝道と弟子を作る業を適正に行なうために,多くの宗教法人団体と協会が結成されています。それら様々な組織を設立する主な目的は,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会(1884年に設立)の定款に述べられている事柄と一致しています。それは,すなわち,「キリスト・イエスの治める神の王国の福音を全能の神エホバのみ名とみ言葉と至上権に対する証しとして諸国民すべてに宣べ伝えること」であり,そうした手段を用いることはその目的の達成に必要です。
それらすべての法人団体もしくは協会の役員は,エホバ神の献身したしもべでありイエス・キリストの弟子でもあるエホバのクリスチャン証人たちです。役員全員は自分たちに課せられたいかなる法的義務も,すべてをエホバに対するごとく進んで,しかも無報酬で遂行します。―コロサイ 3:23,24。
エホバの証人の宗教活動が,できる限り円滑に運ばれるために,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会は世界各地に支部を設けています。支部事務所は98あり,現在「良いたより」が宣明されているすべての土地の神の民の福祉を図っています。そのうちの多くは印刷工場を持っており,エホバの証人が用いたり,真理を求める人々のために世界中で配布したりするための聖書,書籍,雑誌その他の出版物を生産しています。
今年は,非常に高性能のオフセット印刷方式が大規模に導入されました。それによって協会初の多色刷りによる「わたしの聖書物語の本」と題する出版物を発行することが可能になりました。
定款に述べられている目的の一端として,ものみの塔協会は,宣教者,特別開拓者,旅行する監督などの奉仕者やその他の代表者を国の内外に派遣しています。そのため昨年世界中で1,491万4,756.03㌦(約29億8,295万1,206円)が支出されました。このことは,エホバの証人の自発的な寄付によって可能になりました。物質的な資産を分かち,『彼らの貴重な物をもってエホバを尊ぶ』ように,人々の心を聖霊によって動かしてくださったことをわたしたちは天のみ父に深く感謝しています。―箴 3:9,新。
ものみの塔協会はコンピュータ方式の導入に踏み切る
1978年は,協会がコンピュータ方式の導入に踏み切って著しい発展を見ました。なぜそうした措置が取られたのでしょうか。それは印刷業界のすう勢によります。ホットメタルを使用する植字方式のための印刷部品は次第に作られなくなっています。したがって,協会は,書籍と雑誌を発行し続けなければならない以上,コンピュータ方式へ移行せざるを得ないのです。その目的で1977年の末にドイツ連邦共和国のウィースバーデンで集まりが開かれ,この重大な措置に直接関係のある17の支部の調整者および他の代表者がブルックリン本部の代表者たちと会合しました。コンピュータ・システムの最初のものは1978年7月にブルックリンに設置されました。そして,それは,(1)帳簿および記録(2)雑誌の分配(3)出版の三つの主要な分野のプログラム作成に用いられます。こうしたコンピュータの利用はまずブルックリンでなされますが,将来他の支部にも及ぶように設計されています。
世界中のベテル家族
ベテルとは「神の家」という意味です。したがって,ベテルは,世界中の支部で様々な活動に従事する熱心な男女の住む所を示す適切な言葉です。各ベテル家族の成員は,神聖な奉仕のすばらしい特権を得ており,世界各地の王国の関心事に資する割当ての務めに全時間を捧げることができます。ベテル家族は様々な奉仕を行ないます。ベテル・ホームの仕事をしていようと,工場で出版物の生産に従事していようと,あるいは,ベテル家族用の食糧を生産する協会の農場で奉仕していようと,ベテルの成員たちはそうした割当てのどれひとつも,欠かすことができないものと考えています。ベテル家族の成員たちは一致協力することによって,王国の音信を印刷物の形で世界各地へ伝えるという膨大な仕事を成し遂げています。例えば昨年中,彼らは,聖書,書籍,小冊子を合計7,057万6,240冊,「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌を合わせて4億2,228万5,935冊生産することにあずかりました。パンフレット,プログラム,ビラその他の印刷物も多数生産されました。
そのようにして奉仕する最大のグループはアメリカ合衆国にあります。ブルックリン本部には1,825人のベテル家族がおり,ものみの塔農場で奉仕する646人を加えると合計2,471人になります。ベテル奉仕というこのまれな特権を楽しんでいる人は,世界中で3,000人を上回ります。そのすべては,割り当てられた会衆に交わって,王国の良いたよりの伝道に参加しています。
世界中で開かれている様々な学校
協会の定款は私立の聖書学校や教室の開設を規定しています。
ものみの塔ギレアデ聖書学校は,1943年以来,献身して資格のある男女を訓練して宣教奉仕に備えさせるために用いられてきました。昨年53人が同校を卒業し,25の国に割り当てられて派遣されました。現在ギレアデの卒業生は世界各地の120を超す国々で奉仕しており,すばらしい働きをしています。そして,その努力は豊かに祝福されてきました。
ブルックリンでは1977年12月から,支部委員のための新しい学校の最初のクラスが始まりました。1978奉仕年度中に4クラスが開かれ,1979奉仕年度にも引き続きクラスが設けられます。その課程では,聖書に関する科目,組織上の事柄,ホーム,事務所および工場における実際的な訓練という単元が扱われます。そのプログラム全体は,出席者が任命された区域での業の世話に伴う責任を果たすのを助けるために準備されています。ブルックリン本部の兄弟たちと交わることは,出席者たちにとって,また同伴できた彼らの妻たちにとって大きな励ましとなり,築き上げるものとなっています。出席者たちの,それぞれの国における業に関する報告や経験は,ブルックリンとものみの塔農場のベテル家族の成員にたいへん感謝されました。
自分自身と群れのすべてに注意を払うように命じられている会衆の長老たちには大きな責任が課せられています。彼らは聖霊によって群れの監督に任命されているのです。(使徒 20:28)それら長老たちが王国宣教学校で特別な教育を受ける取決めが昨年中に設けられました。ここ数年間に多くの新しい長老たちが任命され,その人々は互いに協力する際に自分たちより経験のある長老から学ぶ必要のあることを悟っています。デンマーク支部から次のような手紙が届きました。「この15時間の課程は正に必要とされていたものでした。優れた資料が,様々な点に関して長老たちの考えや洞察を引き出すような質問を使う効果的な方法で提供されました」。
1977年の地域大会以来,多くの人は開拓奉仕学校の益にあずかることを待ち望んできました。昨奉仕年度中に,正規および特別開拓者,宣教者,旅行する監督の妻たちなど大勢の人々がその課程から多大の益を受けました。この学校は出席者にとって大きな励ましの源であることが証明されています。出席者たちは霊的に若返った気持ちになり,王国の良いたよりを伝道し教える面でいっそう効果的なしもべとして前進する決意をしています。
この課程では,生徒たちが実際に野外で証言をする単元があるので,興味深い経験が得られます。コロンビアの22人からなる一クラスは三つの予約を得,95冊の雑誌と124冊の書籍を配布し,30件の家庭聖書研究を始めました。区域は徹底的に網羅されているので,生徒たち自身その結果に驚きました。
ジャマイカの73歳になる一開拓者はこう語っています。「わたしは,開拓奉仕をこれ以上やっていけないと感じられたので,開拓奉仕をやめることを考えていましたが,学校から新たな活力を与えられました」。学校に出席したすべての人は今や,受けた訓練を,必要のより大きな区域で活用する立場にあります。
エホバの証人の4万2,255の会衆すべてにおいては,神権学校が司会されています。この学校に入学している人はクラスの前で発表する割当てを定期的に与えられます。会衆の成員全員には,週単位の聖書朗読のプログラムについてゆくことが勧められています。現在,兄弟たちが他の人々と聖書に関する事柄を話し合ったり,家庭聖書研究を司会する能力を改善して,それらをずっと効果的に行なっていることに,この学校の益が表われています。また,この学校は資格のある男子のクリスチャンが奉仕会の割当てを扱うのを助け,彼らを訓練して多くの公開講演者を生みました。
これらの学校に加えて,比較的大きな支部ではベテル家族の新しい成員のための学校が開かれています。こうした教育的な取決めすべてで教えられる事柄は神のみ言葉に基づいています。様々な学校で教えを受ける人々は,学ぶ事柄を個人的に当てはめることにより,各々の進歩を明らかにすることができます。―テモテ第一 4:15,16。
業によって明らかになる信仰
世界中でエホバの証人は,聖書の知識を取り入れ続けることによって信仰が増し加わることを知っています。したがって証人たちは,会衆で毎週定期的に開かれる集会に出席することによって強められています。神権学校のほかに,聖書の公開講演と「ものみの塔」研究や,奉仕会と会衆の書籍研究が毎週開かれています。そのすべてにおいて,熟考すべき優れた資料が備えられます。これらの集会は,神の民の霊性を築き上げ,生活の諸問題に対処して聖書の原則と一致して生活するのを助けます。さらには,他の人々に証言する業に定期的に参加するよう交わるすべての人を励まします。
昨奉仕年度中,エホバの証人は野外奉仕に3億727万2,262時間を費やして,他の人々を助けることに努力しました。王国に関して証言することに加えて,弟子を作ること,実際に聖書の基本的な真理を人々に教えることもエホバの証人の使命です。これにより,人々は大いなるバビロンから出,世から離れ,真理の側に堅く立つことができます。(ヨハネ 18:37)世界中ですばらしい支持を受けた奉仕の運動の中に,冊子と「血」の小冊子の配布がありました。二種類の優れた冊子は非常に効果的に用いられました。一方の冊子は「家族 ― それは存続しますか」という話題を扱い,もう一方の冊子は「わたしたちはなぜここにいるのですか」という興味深い問いを投げ掛けていました。これらの話題は,戸口で音信を紹介するのに,またその後可能な場合にいつでも優れた話し合いを進めていくのに良い土台を据えました。
聖書文書を活用することは,多くの人に真理を伝える上でエホバの証人の助けになっています。例えばコロンビアから,特別開拓者が任命された新しい区域の報告が次のように寄せられています。「当地エルボルドにおける伝道の業がすぐに受け入れられ,6週間でわたしたち4人が1,067冊の書籍を配布したことをお知らせしたいと思います。わたしたちはすでに18件の家庭聖書研究を司会しています。わたしの10歳になる息子は68冊の書籍を配布し,2件の研究を司会しています。近くのパストにある会衆の援助により,わたしたちは長いすを六つ手に入れることができ,すでに集会を開いています。この間の日曜日には35人が出席しました。わたしたちは,エホバの祝福によって会衆を設立することができると信じています」。
次の報告に示されている通り,ポルトガルの兄弟たちは聖書研究の業で様々な聖書の手引きが用いられることをたいへん喜んでいます。「わたしたちが接するどんなタイプの人にもその人に適した出版物があるのはほんとうにすばらしいことです。『若い時代』の本は十代の人々に強く訴える力があります。ひとりの若い特別開拓者の兄弟は,最近の運動期間中に高等学校で199冊配布しました。わけてもわたしたちにとってうれしいのは,わたしたちと真剣に聖書を学ぶ人が引き続き増加し,家庭聖書研究の数が過去2か月間で1万6,000件を上回ったことです」。
「エホバの証人と血の問題」と題する小冊子を用いた特別の運動は優れた結果を生みました。この小冊子は,医師,看護婦,病院管理者,裁判官および弁護士にエホバの証人の立場を十分に知ってもらうのに役立ちました。協会の本部や支部事務所に,同小冊子中の聖書に基づく優れた説明に対する感謝の手紙が多数寄せられました。それら専門分野の人々は,この小冊子によって,重要な血の問題に関するエホバの証人の,聖書に基づき道理にかなった立場を認めることができました。
補助開拓奉仕
世界中の多くの国で補助開拓者の数がすばらしく増加していることが観察されています。事情を調整して正規開拓奉仕に参加できない人々は,一年のうちに時折,あるいは続けて補助開拓の業にあずかれることに気づいています。非常に大勢の年長者と奉仕のしもべが補助開拓奉仕にあずかることができ,会衆の他の人々に立派な模範を示しました。それらの兄弟たちは,伝道者たち,特に若い伝道者たちとより多くの時間を野外で費やせました。
『彼らはあなたと戦う』
昨奉仕年度中,兄弟たちはエレミヤ記 1章19節に基づく年句,すなわち,「彼らはあなたを打ち負かすことはない。『わたし[エホバ]が,あなたと共にいて……あなたを救い出すからである』」という言葉に大きな慰めを見いだしました。クリスチャンたちは何度もこの激励の言葉に信頼を置きました。王国の業が反対され,大きな圧迫や激しい迫害を受けた兄弟たちの場合は特にそうでした。エホバの証人のクリスチャンの崇拝と活動に公の禁令や制限が課されている国は40か国を上回ります。それらのすべての国で兄弟たちは勝利の信仰を表わし,指導者であるイエス・キリストに従い,人々に善を行なうゆえに受ける苦しみ,侮辱,拘禁,その他の迫害を進んで忍耐し続けました。―マタイ 24:9。ペテロ第一 3:16,17。
あるアフリカの国で,兄弟たちは一緒に集まることがきわめて困難で危険なことを知っています。しかし,兄弟たちはヘブライ 10章24,25節の警告を忘れず,共に集まって崇拝する方法を見いだしています。ある報告によると,「所によっては外出禁止令のため1日にわずか2時間から6時間しか家を自由に空けられません。そのことは,特に兄弟たちの家が散らばっている会衆において大きな問題となっています」。
アフリカのもう一つの国では,兄弟たちは一つの地区に閉じこめられていて,『行動が非常に制限されており,たとえ必需品を入手するためでもキャンプから離れることを許されません』。
さらに別の国の兄弟たちは,外国から文書を受け取ることが許されていません。もっとも,霊的な食物は,兄弟たちを養っておられる天のみ父により何らかの方法で備えられています。あるアフリカの国では,兄弟たちの5%は投獄を経験しています。今だに投獄されている兄弟たちもいます。大勢の人が拷問を受け,3名は殺されました。(ヨハネ 16:2)イエスは,そうした事柄がご自分の追随者のある人々の上に信仰と忠誠の試みとして臨むことを示されました。しかし,そのように示される忠実さは,イエスご自身の場合と同じように,神に栄光と賛美を帰す結果になります。―ペテロ第一 1:6-8。
エホバの証人が公に受けている反対に加えて,聖書に予告されている,分裂した家庭内における反対も見過ごしてはなりません。兄弟たちの多くは,自分の家族内の未信者による迫害を忍耐しなければなりません。多くの場合,信者の立派な行状が,反対者を勝ち得る助けとなります。(マタイ 10:34-38。ペテロ第一 3:1,2)反対はありましたが,それによってエホバの証人が神の崇拝をやめることはありませんでした。確かに,兄弟たちは1978年の聖句であるエレミヤ記 1章19節の真実さを理解しています。
エホバの証人の「勝利の信仰」国際大会
1976年12月1日号(日本語では1977年3月1日号)の「ものみの塔」誌は,1978年に国際大会が計画されていることを初めて発表し,次のように述べていました。「神のみ言葉は,『この世のありさまは変わりつつある』とはっきり述べています。(コリント第一 7:31)現在の事物の体制が終わりに近づくにつれて,不安や緊張が高まるとしても,『永遠の良いたより』を全地に宣明するために,神の民の業は前進してゆかねばなりません。(啓示 14:6)そこで,エホバのご意志であれば,1978年中に一連の国際大会が開催されます」。昨奉仕年度の末までに,北半球で計画されていた国際大会の大部は終了し,エホバの証人の現代の歴史に付け加えられました。
「勝利の信仰」国際大会の最も興味深いプログラムを幾つか振り返ってみると,この大会が昨奉仕年度最大の出来事であり,エホバの目に見える組織の前進途上におけるもう一つの里程標であることは明らかです。出席する特権にあずかれた人々の生活は,彼らが見聞きし,経験した事柄によって確かに豊かなものになりました。箴言 10章22節(新)で次のように述べられている通りです。「エホバの祝福 ― それが人を富ませるものであり,彼はそれに痛みを加えられない」。エホバが祝福を豊かに注いでくださっていることを,わたしたちは本当に感謝しています。
大いに感謝された5日間のプログラム
実際的で時宜にかなったプログラムが組まれていたことに対する感謝が多数寄せられました。兄弟たちは,提供された情報が生活の諸問題と真正面から取り組んでおり,その霊的な宴で供されたものは正に時にかなった食物であると感じました。(マタイ 24:45)すべての人にとって,自分のためになるものがありました。監督であれ,若者や結婚している人や,幼い子供であれ,すべての人は,自分の生活に特に当てはまると感じる情報を与えられたのです。
第一日目の情報は特に,会衆の長老たちに役立つもので,彼らは,雄々しくあり,群れに注意を払い,同時に福音宣明の業を行なうように励まされました。強調された要点を理解した一兄弟は,「わたしたち長老がその責任を繰り返し思い起こさせられたことは,この大会で最も興味深い点でした」と述べました。
全時間奉仕に入ることを考えていた多くの人は,二日目に行なわれた開拓奉仕とベテル奉仕に関する幾つかの話に感謝しました。そして,かなり大勢の人がその情報に基づいて行動し,全時間奉仕に含まれるそれらの奉仕の申込書に記入しました。その日の午後のプログラムから,兄弟たちは,大会中に行なわれることになっていた特別な証言の業に熱意を奮い立たせられました。わたしたちはなぜ伝道活動に励まねばならないか,なぜ神の器を担う者として清さを保たねばならないか,また全世界の畑で神と共に働くとき信仰によって歩み続けなければならないのはなぜかということが聖書から示されましたが,兄弟たちはそれらの聖書的な理由を認識しました。
三日目の午後は,組織の中の若い人々に注意が向けられ,信仰の模範となるようにという励ましが彼らに与えられました。「わたしの聖書物語の本」と題する新しい出版物が発表されると,熱烈な反響がありました。その本が発表され,大勢の子供たちがそれぞれ自分用の本を受け取るときの様子はたいへんほほえましいものでした。さっそくそれを読み始める子供も多くいましたし,その新しい出版物を大事そうに胸にかかえている子供もいました。
四日目,結婚生活に関する話と家族生活を幸福にすることに関する話は非常に喜ばれました。「あなたの家族生活を幸福にする」と題する本が発表されたことについて,ある人はこのように述べました。「今日,家族は大きな圧迫を受けています。家族が圧迫となる問題に対処するのを助けるために企画されたたいへん多くの情報を聞いて,わたしたちはとても喜んでいます」。
次いで最終日には,信仰を強める話がなされ,その最高潮として「ヨハネによる良いたより」と題するカセットテープが午前中に発表されました。文字を読むのが困難な人ばかりか,病気の人や障害を持つ人を援助するためにも使用できるなど,そのテープにはいろいろな利用法があることに多くの人は興奮しました。公開講演は「イエス・キリスト ― 諸国民が清算しなければならない勝利の王」と題して行なわれ,詩篇 45篇の優れた説明を織り込んだ話でした。聴衆は次の点に深い感銘を受けました。すなわち,諸国民の清算の日は間近いこと,しかし,戦士なる王イエス・キリストの側にいる人々は,その勝利の王と彼の天の父エホバの是認を得ている限り清算の日を恐れる必要がないという事実です。
大会のプログラムの中には四つの聖書劇がありました。そのひとつひとつは理解しやすい,また適用されなければならない要点を強調していました。滅びに定められた平地の町から逃げたロトを扱った劇を見て,一出席者はこう述べました。「あの劇は,物質の追求を目標としている現在の体制へのいかなる強い愛着心をも捨て去ることがどれほど大切かを強調していました」。
大会の特別な証言活動
一連の大会が始まる前に,「わたしたちの王国奉仕」の折り込みを通して,大会三日目の午前中に行なわれる特別な証言活動への意欲が高められました。証言活動が行なわれるほとんどの都市では,かばんが大会出席者のために用意されました。そのそれぞれの伝道かばんには,前の日の午後に大会で発表された「二十世紀におけるエホバの証人」と題する新しい冊子が入っていました。また,「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌の最新号および,一般の人々を公開講演その他の大会プログラムに招待するビラも入っていました。
大会に出席した兄弟の大多数が,この特別な証言運動に参加したことが伝えられています。ある都市では,木曜日の出席者の約75%が金曜日の野外奉仕に参加しました。それは,その朝3万2,000人が野外に出たことを意味します。一観察者は,アメリカ,ワシントン州のシアトルの中心部は,金曜日の朝,たくさんの黄色い伝道かばんでさながらすいせんの海のようだったと評しました。ハワイのホノルルからは,同市でふたつの大会が開かれた結果,全市が徹底的に網羅されたことが伝えられています。アイルランドのダブリンでは,すべての人が特別な証言活動に参加できるように,金曜日の午前中の大半は,大会の活動が行なわれませんでした。日本のひとつの大会でも,それと同様のことがなされました。兄弟たちが一般の人々に王国の音信を伝えるこの特別な活動に参加して熱意と意気込みを示すのを見たのは,すばらしいことでした。大会の特別な証言活動は広く報道されました。幾つかの都市では,土地の新聞記者が,戸別の訪問をする兄弟たちに付いて行き,その後興味深い記事を書いて新聞に載せました。
大会のプログラムはイエス・キリストの役割を際立たせる
最終日の午後の「わたしたちはその意味を悟りましたか」と題する話は,大会のプログラムを復習する話でした。大会出席者たちが,時宜にかなって与えられた資料の意味を把握したことは明らかでした。例えば,出席者たちは,世の征服者かつ勝利の王としてイエスの役割を認識しました。イエスは,エホバの証人が自分たちの指導者と認める方であり,エホバ神がクリスチャン会衆の頭として任命された方でもあります。
一日目の午前中に行なわれた基調をなす話の中で,話し手は次のように述べました。「み子イエス・キリスト,『わたしたちをすべての罪から清めてくださる』かたを通して,全宇宙の最高主権者と結ばれることは,なんと大きな特権でしょう。……あなたは,……こうしてエホバのみ名,またそのみ子イエス・キリストの王国をたたえますか。そうすることによって,あなたも,信仰によって世を征服する者として栄えある成功を手にするでしょう」。
二日目の午後,「わたしたちの信仰の宣言」は,大会出席者たちの決意を次のように表明しました。「わたしたちは,贖い主,頭,王としてのイエス・キリストに対する自分の信仰を実証しなければならないことを知っています。……」。(380-383ページをご覧ください。)
最終日の午前中の,「イエス・キリストをほかにして,だれのところに行けましょう」と題する話で述べられた通り,エホバの証人は,主から「あなたがたも去って行きたいと思っているわけではないでしょう」と聞かれたときのペテロのように感じています。使徒ペテロは答えました。「主よ,わたしたちはだれのところに行けばよいというのでしょう。あなたこそ永遠の命のことばを持っておられます」。確かに,わたしたちが指導者として頼れる方はほかにいません。―ヨハネ 6:67,68。
公開講演では,話し手が次のように質問して最高潮に達しました。「わたしたちはこの詩篇作者に和して,あらゆる人が聞けるように,『わたしの業は王についてである』と言っているでしょうか。わたしたちは,この王,つまり神ご自身の油そそがれた方のことを恥じる理由は一つもありません。それで,私たちの主要な『業』は,この王なるメシアについて話し,教え,宣べ伝えることであるべきでしょう。わたしたちはおもにその王国の事柄のために働いているのであって,悲惨な終わりに近づいている世の諸王国のいずれのためにも働いているのではありません。わたしたちは感動して,神の王国とその油そそがれた王を宣伝するのに自分の舌を用います」。
そのほかに,大会で興味深かった事柄
初めて国際大会の開かれた国が幾つかありました。ポルトガルもそのひとつでした。1974年まで,エホバの民はポルトガルで集まり合うことができませんでした。したがって,会衆の集会は,小さなグループごとに個人の家で開かれました。しかし,それでも,兄弟たちはしばしば警察に悩まされました。伝道の業でも同様の問題があり,兄弟たちの中には逮捕されて裁判に掛けられた人々もいました。ところが,昨年ポルトガルで初めて,大会の主な講演が公に宣伝されたのです。大規模な大会を組織し,5日間のプログラムを催すことは,兄弟たちにとってたいへん貴重な経験でした。
同じ事情はスペインでも見られました。今年初めて,エホバの証人の国際大会がスペインで開かれたのです。それについて,スペインの兄弟たちはこう語っています。「1973年に国際大会の許可を得ることはできませんでした。その時以来スペインには多くの変動がありました。その結果,言論の自由が拡大しました。それで,1977年に,約5万人の人々を集めるのにふさわしい会場を探すことが始められました」。
スペインの大会に5万4,000人が出席しましたが,同国の兄弟たちがそのことを大いに喜んだのももっともです。大会は新聞やテレビで広く報道されたので,スペイン全土に証言がなされる結果になりました。
兄弟たちが長年の間制限を課せられてきたギリシャでもふたつの国際大会が開かれました。アテネとテサロニケの大会に2万8,417人が出席したことはギリシャの兄弟たちにとって大きな喜びでした。また,その機会に外国の代表者の訪問を受けられたことはとても励ましになりました。
イタリアではミラノとローマで国際大会が開かれましたが,出席者が初めて10万人を超えました。出席者の合計は11万1,320人でした。これはカトリックの国イタリアで優れた証言になりました。「ラ・ノタ」紙は1ページを割いてミラノ大会を報じ,同大会ほど大規模な非カトリック教徒の集まりはここ幾世紀もの間ミラノで開かれたことがないと評しました。その記事はさらに,大会に出席した兄弟たちが秩序正しく,穏やかであり,きちょうめんで清潔でよく組織されていると述べていました。また,兄弟たちは大会を全く整然と開いているとも報じました。翌週,ローマでは多くの人が法王パウロ六世の死を悼んでいましたが,エホバの証人はそこで大会を開きました。その週,ローマに報道関係者が大勢いたので,エホバの証人の大会は広く報道されました。
東洋に目を移すと,四つの大会が日本で開かれ,出席者の合計は7万8,136人でした。沖縄から大阪大会に出席しようとした800人を超える兄弟たちは,普通なら35時間で行けるところをしけのために64時間も航海しなければなりませんでした。台風で遅れたため,その兄弟たちは一日目のプログラムに出席できませんでした。その台風のおかげで,大阪大会の一日目に出席していた兄弟たちはずぶぬれになりました。しかし,彼らはプログラムが終わるまでずっととどまっていました。
北半球で開かれた71の大会でバプテスマを受けた人の合計を見ると,興味深いことに,その約34%は,ポルトガル,スペイン,イタリア,日本の4か国で受浸した人で占められています。啓示の7章に描かれている象徴的な四方の滅びの風が解き放たれる前に,それらの国には助けを必要としている人がまだ大勢いることは明らかです。
宣教者との会合が取り決められた大会都市で,彼らと交わる特権を得たことや,外国で奉仕している大勢の宣教者から話を聞いたことはほんとうに励みとなりました。ほんの少しの宣教者しか出席しなかった所もありますが,比較的大規模な大会では,一堂に会した宣教者たちは大きな群れになりました。特に大勢だったのは,カナダのモントリオールと,ドイツ連邦共和国のミュンヘンで開かれた宣教者の集まりでした。出席者全員で特別なごちそうを楽しみ,任命地で忠実に奉仕してきた宣教者の経験を聞くのは大きな喜びでした。その特別な分野に10年,20年,30年,あるいはそれ以上携わってきた人は少なくありません。ギレアデ学校の初期の卒業生は任命地で老齢になりましたが,今も信仰をもって業を続けており,忍耐の立派な模範を示しています。宣教者が自分の国の国際大会に出席でき,家族や友人に会えたのは,昨年中に兄弟たちから寄せられた寄付のおかげでした。それで宣教者全員はそれらの兄弟たちに感謝の言葉を述べたいと願っています。その寛大さに対する宣教者たちの感謝と認識をこの紙上を通して全世界のエホバの証人の皆さんにお伝えしたいと思います。
大会都市の出席者数とバプテスマを受けた人の数の表
次の表は,各大会都市の公開講演の出席者数とバプテスマを受けた人の数を示しています。多くの大会では,様々な言語でプログラムが司会されました。例えばカナダのモントリオールでは,英語以外にアラビア語,フランス語,ギリシャ語,イタリア語,ポルトガル語およびスペイン語で同時にプログラムが司会されました。この報告をまとめるまでに開かれた他のすべての,「勝利の信仰」国際大会と比べて,公開講演の出席者数が最大だったという点でもモントリオール大会は際立っていました。同大会はカナダでこれまでに開かれた最大の大会であり,モントリオール市の住民に対してばかりか,ケベック州の人々に対しても多大の影響を与えました。
一連の「勝利の信仰」国際大会は,アメリカ合衆国で6月14日から18日にわたって開かれた大会を皮切りにして9月と10月には東南アジアで,11月の下旬から1月(1979年)にかけては,中南米,南太平洋およびアフリカ大陸の数か国で開かれました。
全世界の奉仕活動
1978奉仕年度に成し遂げられた奉仕を考察すると,感謝の気持ちが起こります。(詩 32:11)世界中のエホバの証人の活動は別表に示されている通りです。各国はアルファベット順に並んでいますが,その最後に幾つかの国の報告がいっしょにまとめられています。それらの土地では厳しい反対や迫害があるためです。他の国にも難しい事情はありますが,まとめて報告されている16か国においては,別個に掲げるのが賢明でないほど大きな危険があるのです。反対,迫害,経済的困難,その他の試練など,世界のどこにも何らかの問題があります。使徒と初期の弟子たちの場合と同様に,今日のエホバのしもべは,神が与えてくださる助けと力によって世界的な証言を辛抱強く行なってくることができたのです。(使徒 26:22。ペテロ第一 4:11)証人たちは,様々な試練に耐えねばならないにもかかわらず,そのように奉仕することに大きな喜びを感じています。―ヤコブ 1:2-4。
報告は205の国々と島々から寄せられています。掲げられている国の総数が減少しているのは,数か国の報告が他の支部の報告といっしょにまとめられているからです。例えば,昨年,マヌス島,ニューブリテン島,ニューギニア,ニューアイルランド島,北ソロモン諸島は別個に挙げられていましたが,今年それら全部はパプア・ニューギニアの報告の中に含められています。現在それらの島はひとつの国を形成しているからです。アブダビ,ドバイ,シャルジャはアラブ首長国連邦として表わされています。現在,ベクイア,カリアコウ島,トリニダド島はそれぞれセントビンセント島,グレネーダ島およびトリニダド島の一部になっており,ブータンの報告はインドのそれに含まれています。
王国伝道者の数は全体で1.4%減少しました。これは,合計について見る限り,業の他の面の低下と関係があります。引き続き増加を示している国もありますが,その他の国は活動の低下もしくは減少を示しています。9万5,052人が新たにバプテスマを受けて信仰を表明し,イエス・キリストの弟子であることを言い表わしましたが,それに応じた増加が王国伝道者数に見られませんでした。それに反して,「良いたより」を知らせる業にあずかった人々の平均は,前年の211万7,194人に対して208万6,698人でした。伝道者の最高数は218万2,341人でしたが,それも前年度を下回っています。何らかの理由で大勢の人が毎月証言活動に参加しなかったことと,不活発になった人がいることは明らかです。
こうした状況をどのように見るべきでしょうか。過度に当惑して霊的な平衡を失う必要は全くありません。他のすべての事柄におけると同様に,クリスチャンは神の言葉によって自分の考えを調整し,思いを正します。エホバはいつも,ご自分で定められた時にご自身の方法で必要な導きをクリスチャンたちにお与えになります。エホバはご自分の民を決してお見捨てになりません。(列王上 8:57。詩 94:14)新しい今奉仕年度中,わたしたちは神に導きを祈り,さまよい出た人を復帰させることに努めつつ,確信をもって神に頼ります。(マタイ 18:12-14)わたしたちの会衆内に手をたれている人たちがいるなら,特に従属の牧者たちは,言葉によって,また,とりわけ良い模範を示すことによってそうした人々を親切に励ます努力を払わねばなりません。―ヘブライ 12:12,13。コリント第一 11:1。
それと同時に,わたしたちは予期すべき事柄をあらかじめ警告している聖句を思いに留めます。つまずいて離れていく者たち,様々な理由で実を結ばなくなる者たちが出るでしょう。(マタイ 13:18-22)さらに,啓示 3章15,16節に示されているごとく,主イエス・キリストは,イエスの追随者であると唱える人ひとりひとりの霊的状態を知っておられて,なまぬるい状態を容認なさることはありません。イエスは,現在なまぬるい状態にある人に,ご自分を喜ばせたいならばそうした状態を正さなければならないと言っておられます。一世紀にある者たちが真理から離れて行ったように,今日同様のことが起きても驚くにはあたりません。エホバはご自分に属する人々を知っておられます。(テモテ第二 2:18,19)正に約束の地に入ろうとしていたイスラエル人に臨んだ事柄を警告の例とするなら,わたしたちひとりひとりが自信過剰にならないように守られます。(コリント第一 10:12)このことの重大さは,昨年2万9,893人が排斥された事実を考えるとはっきり分かります。今日,わたしたちの信仰が試みられていることに疑問の余地はありません。エホバは清い人々のみに,そうです,あらゆる聖書的な要求にかない「良いたより」を託されるに足る者であることを証明しようと努力する人々のみに恵みを施され,そうした人々のみをお用いになるでしょう。―ミカ 6:8。コリント第二 6:17–7:1。テサロニケ第一 2:4。
王国の奉仕に3億727万2,262時間が費やされたことから考えて,幾百万人もの人々が証言を受ける機会を得たことは明らかです。人々が神の目的を知るのを援助するために,エホバの証人は2,558万648冊の書籍を配布しました。これは1977年の配布数よりも60万7,899冊上回っていました。また,「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌を2億1,670万9,937冊配布したほか,これら2種類の雑誌の予約購読の契約を149万6,766件得ました。さらに,1,510万7,899冊の小冊子を配布しました。エホバの証人が王国の音信に対する関心を呼び起こすことや聖書文書を配布することだけに関心があるのではないことをはっきり示しているのは,証人たちが1億3,017万7,724件の再訪問を行ない,125万7,084件の家庭聖書研究を司会したことです。証人たちがそのようにする目的は,『イエスがお命じになった事がらすべてを』,答え応じる人々に教えて弟子を作ることです。(マタイ 28:19,20)こうした勤勉な努力すべては,地の最も遠い所にまで徹底的な証言を行なうことに貢献しています。―使徒 1:8。
キリストの死の記念式に,再び500万人を上回る人々が出席したのはほんとうに喜ばしいことでした。1978年3月23日に開かれたこの最も重要な催しに出席したのは正確には509万5,831人で,表象物にあずかったのは9,762人でした。このことから,次のことはきわめて明らかです。すなわち,心の正しい大勢の人々が世界中の4万2,255の会衆と定期的に交わるように援助するために,なすべきことがたくさんあるということです。
長年にわたり,エホバはご自分の民の活動を豊かに祝福してこられました。過去60年間の活動状況を10年おきに示した次の表はその間の進歩を知るのに役立ちます。
忠実な残りの者たちは,前途を見つめつつ,自分たちが「子羊(イエス・キリスト)の行くところにはどこへでも従って行く」ことを証明し続けます。(啓示 14:4)彼らと交わる「大群衆」も同様にそうします。彼らすべては一致して,自分たちの指導者イエス・キリストに従い続けます。また,エホバ神とみ子の後ろだてが十分にあることを知りつつ,次のふたつの使命を果たし続けます。それはすなわち,『王国のこの良いたよりを,あらゆる国民に対する証しのために』宣べ伝えること,および,『すべての国の人びとを弟子とする』という使命です。―マタイ 24:14; 28:19,20。
[20-22ページの図表]
開催地 出席者数 受浸者数
アラスカ,アンカレッジ 2,519 27
オーストリア,ウィーン 14,359 203
バルバドス,ブリッジタウン 6,142 45
ベルギー,ブリュッセル 23,567 289
英国諸島,シェフィールド(第一) 19,651 81
シェフィールド(第二) 16,842 50
ロンドン(第一) 31,190 154
ロンドン(第二) 30,272 97
エジンバラ 12,621 82
カナダ,モントリオール 80,008 831
ウィニペグ 16,164 93
バンクーバー 22,819 165
エドモントン 21,599 137
デンマーク,コペンハーゲン 16,912 107
フィンランド,ヘルシンキ 16,345 211
フランス,マルセーユ 12,371 203
リール 10,957 130
ナント 10,197 171
パリ 28,827 445
ツールーズ 9,365 127
グルノーブル 11,702 133
ドイツ,ミュンヘン 58,559 647
デュッセルドルフ 50,186 427
ギリシャ,アテネ 19,407 167
テサロニケ 9,010 132
グアドループ,ポアンタピートル 6,274 74
ハワイ,ホノルル(第一) 8,730 67
ホノルル(第二) 8,815 54
香港 1,321 30
アイルランド,ダブリン 4,437 37
イタリア,ミラノ 45,880 1,080
ローマ 65,440 1,208
日本,名古屋 10,282 238
大阪 31,785 629
札幌 8,099 205
東京 27,041 586
韓国,大邱 5,845 78
ソウル(第一) 8,673 187
ソウル(第二) 11,884 193
開城 5,169 73
リーワード諸島,アンチグア 1,717 35
マルチニク島,フォール・ド・フランス 2,888 21
オランダ,ロッテルダム 35,361 122
フィリピン,マニラ 35,684 305
ポルトガル,リスボン 37,567 1,130
プエルトリコ,サンフアン(第一) 9,963 123
サンフアン(第二) 9,045 111
サンフアン(第三) 13,259 118
スペイン,バルセロナ 54,283 1,356
スウェーデン,ストックホルム 25,338 248
台湾,台北 1,603 22
アメリカ合衆国
テキサス州,アービング(スペイン語) 16,682 162
ウィスコンシン州,ミルウォーキー 50,143 330
ルイジアナ州,ニューオーリアンズ(第一) 36,006 209
ワシントン,D.C. 52,302 306
フロリダ州,レイクランド(スペイン語) 7,725 90
ルイジアナ州,ニューオーリアンズ(第二) 34,015 203
ミシガン州,ポンチアック 58,410 301
カリフォルニア州,ロサンゼルス(第一) 47,243 249
ペンシルバニア州,フィラデルフィア 41,965 238
ミズーリ州,セントルイス 33,776 249
テキサス州,ヒューストン 58,430 468
カリフォルニア州,ロサンゼルス(第二) 41,406 290
ニューヨーク州,ニューヨーク 71,566 487
カリフォルニア州,サンフランシスコ 50,820 274
オハイオ州,シンシナチ 40,729 315
ニューヨーク州,モンロー(フランス語) 1,969 28
ペンシルバニア州,ピッツバーグ 36,996 279
ワシントン州,シアトル 46,391 326
カリフォルニア州,ロサンゼルス(スペイン語)28,905 416
ニューヨーク州,エルモント(スペイン語) 24,012 319
合計 1,807,465 19,023
[24-31ページの図表]
全世界のエホバの証人の1978奉仕年度の報告
(出版物を参照)
[32ページの図表]
10年おきに見る王国伝道の活動状況
年 報告した 平均伝道者数 奉仕時間 配布された 配布された
国 書籍と小冊子 雑誌
1918 14 3,868 19,116 359,384 13,140
1928 32 23,988 2,866,164 20,412,192 1,381,107
1938 52 47,143 10,572,086 26,772,882 6,933,307
1948 96 230,532 49,832,205 17,031,901 11,380,767
1958 175 717,088 110,390,944 16,038,445 86,498,251
1968 200 1,155,826 208,666,762 21,674,179 157,511,892
1978 205 2,086,698 307,272,262 40,688,547 216,709,937