第16章
最初の四つのラッパが吹かれる
1 第六の封印が開かれることによって啓示される事柄は,どんな啓示をもって終了しましたか。そして何が残りましたか。
秘義の巻き物の第六の封印が開かれることによって明らかにされる事柄は,神のみ座の前および子羊イエス・キリストの前に立つ,地上の「大群衆」に関する啓示をもって終了しました。栄光に輝く天のみ座にすわっておられる神の右手から子羊が受け取ったその巻き物には,もう一つの封印,七番目の封印が開かれずに残っていました。
2 「地の四方の風」を抑え始める時はいつでしたか。それを抑える理由は何でしたか。
2 第六の封印が開かれることによって啓示された場面は,地の四隅にいる「四人の使い」が「地の四方の風」を抑えているところでした。それは,神がご自分の予備的な業を終了し,彼らに合図を送られるまでであり,そのとき神は,ご自分から出る全世界的な滅びのあらしが,邪悪な地的事物の体制を襲うのを許されます。聖書に予告されていたあらしの抑えられる時が,1918年11月11日,あるいは,ユダヤ暦の1918年キスレウ6/7日の第一次世界大戦終了時であったことは明らかです。歴史の事実が示すとおり,14万4,000人の霊的イスラエル人の残りの者に証印を押し,その後,神の地的臣民また崇拝者からなる数え切れない「大群衆」を集めることに関する,ハルマゲドン前の神の大掛かりな業は,その時点においては決して終了してはいなかったのです。―啓示 7:1-17。
3 子羊が第七の封印を破った時に何が起きたかを,わたしたちはどんな観点から見ますか。
3 ですから,神の秘義の巻き物の第七の封印が開かれる時は,全人類を襲う全地球的なあらしがとどめられているこの時期の初めに相当する,と考えるのが妥当です。では,終戦直後の1918年から1919年の過渡期にさかのぼってみましょう。そしてその時点に立って,子羊イエス・キリストが啓示の巻き物の第七の封印,つまり最後の封印を破った時,何が起こり始めるのを使徒ヨハネが見たか,その点に注意を払うことにしましょう。「また,彼が第七の封印を開いた時,約半時間のあいだ天に静寂が起こった。そしてわたしは,神の前に立つ七人の使いを見た。そして,七つのラッパが彼らに与えられた」― 啓示 8:1,2。
4 天に約半時間のあいだ静寂が起こったのはなぜですか。
4 天が約半時間のあいだ静寂になったのです! それにしてもなぜですか。明らかにそれは,地からの祈りが聞かれる時だったのです。だれの祈りですか。み座についておられる神がそれらの祈りを聞かれるまで,七人の使いはラッパを鳴らすことを許されませんでした。地上のエルサレムの神殿において,祭司がその聖所の香壇に香をささげるのに約半時間かかりました。その間,外の,神殿の中庭で崇拝をしている人びとは,静粛を保ち,香の昇り行く神に向かって,思いの中で祈りをささげました。(出エジプト 30:1-8。ルカ 1:8-10,21)このことと一致して,詩篇 141篇1,2節〔新〕は次のように述べています。『エホバよ我なんぢを呼ふ ねがはくは速かにわれにきたりたまへ われ汝をよばふときわが声に耳をかたぶけたまへ われは〔香〕のごとくにわが祈をみまへにささげんことをねがふ』。1918-1919年の過渡期は,地上の油そそがれた残りの者が神に真剣な祈りをささげるべき時だったのです。天はそれを聞くため,静寂になるでしょうか。
5 当時,油そそがれた者たちにとって,祈りをささげるべき特に重大かつ緊急な必要がありました。なぜですか。
5 神のあわれみと堪忍により,油そそがれた残りの者は第一次世界大戦の困難と迫害を生き残りました。神はなぜ,彼らが期待していたように,異邦人の時の終わりに彼らを天に上げず,生き長らえさせ,地上に残されたのですか。終戦直後,神は彼らに対しどんなご意志を持ち,またどんな業を託そうとしておられたのでしょうか。残りの者はそれを知りたいと思いました。a 彼らは,軍国主義的な政権や,その宗教的めかけである大いなるバビロン,すなわち,バビロン的偽宗教の世界帝国によってもたらされる恐れや拘束から自由になりたいと願いました。神の助け,啓発,導きを得,再び活発になるため,天の神に祈る必要があったのです。彼らは直ちにそうする傍ら,聖書をさらに深く調べました。全地で知られている自分たちの一般的名称,国際聖書研究者協会という名にふさわしく行動することが,かつてない程必要でした。キリストを通しての彼らの祈りは,天の神殿におられる神へのかぐわしい香のごとくに受け入れられることが必要でした。彼らは,神の使いたちが七つの象徴的なラッパを鳴らす準備をしていることを知らねばならなかったのです。
6 ヨハネはこの祈りの時期およびその後に生ずる事柄をどのように事前に見ましたか。
6 祈りのこの歴史的時期と,それに引き続いて生じた,興奮を引き起こす出来事を,使徒ヨハネは幻で事前に見ました。啓示 8章3-6節によると,彼はそれを次のように記しています。「それから,別の使いが到着して祭壇のところに立った。黄金の香炉を携えていた。そして,み座の前にある黄金の祭壇の上ですべての聖なる者たちの祈りとともにささげるため,多量の香が彼に与えられた。そして,香の煙が,聖なる者たちの祈りとともに,その使いの手から神のみまえに上った。しかし,使いはすぐに香炉を取り,それに祭壇の火をいくらか満たして地に投げつけた。すると,雷が生じ,声といなずまと地震が起こった。そして,七つのラッパを持つ七人の使いがそれを吹く準備をした」。
7 (イ)第八の使いは神の聖なる者たちに対し,どんな資格で行動しましたか。(ロ)残りの者は何を祈り求めましたか。
7 第八の使いは,神の聖なる者たちの祈りに伴われて香をささげることにより,エルサレムの神殿におけるアロンの家系の祭司のように行動しました。(啓示 5章8節で,二十四人の長老によってささげられる香はそれ自体,「聖なる者たちの祈り」を意味すると述べられており,二十四人の長老自身そうした「聖なる者たち」を表わし示しています。)したがって第八の使いは,「聖なる者たち」の祈りが神に受け入れられるよう,「約半時間」にわたる天の静寂のあいだ,彼らのために仕えたのです。重大な年であった1919年におけるすべての証拠は,「聖なる者たち」の油そそがれた残りの者の悔悟の祈りが,「契約の使者」イエス・キリストを通してエホバ神に聞き入れられたことを示しています。(マラキ 3:1)象徴的な「香の煙」は,神との更新された正しい関係,および,地上でさらに業を推し進めるために神の導きを求める,悔い改めを示した,油そそがれた残りの者の祈りとともに,イエス・キリストの手から昇って行きました。(啓示 2:5,16,21,22; 3:3,19)しかし,祈りに続いて今度は行動を起こさねばなりません。第八の使いは直ちに行動に取り掛かり,また,行動を促しました。
火が地に投げつけられる
8 イエス・キリストは地上におられた時,どのように「地上に火を起こ」されましたか。
8 西暦32年,地上におられたイエス・キリストはこう言われました。「わたしは地上に火を起こすために来ました。そして,それがすでにたきつけられた以上,このうえわたしの願うべきことがあるでしょうか」。(ルカ 12:49,新,ロ)確かに彼は「地に火をつけ」(新英),そして,激論を生じさせ,人間および諸制度の多くの偽りの教えや主張を焼きつくすことになった論争を提起されました。
9 第八の使いが地に火を投げつけたことの成就は何でしたか。
9 第八の使いが香炉に祭壇の火を満たし,それを地に投げつけた時にも,同様に論争が火を噴きました。その香炉は,祈りの器から,地に火を起こす道具に変えられたのです。神のメシアによる王国に関する激論の火が起こされることになりました。というのは,火は神の聖なる祭壇から取られたからです。実に,神の王国の熱した論争の火が,疑いなくみ使いの導きの下に,そうです,キリストの導きの下に,1919年,油そそがれた残りの者により地の舞台に投ぜられました。それをあかしするものとして,同年の「ものみの塔」誌(英文)に掲載された,「王国の伝令は“殺される”」(1919年5月1日号),「天の王国は近い」(1919年5月15日号),「神の王国」(1919年8月1日号),「王国をふれ告げる」(1919年9月15日号)などの記事を挙げることができます。
10 (イ)「雷」,「声」,「いなずま」,「地震」は,使いが地に火を投げつけた後に引き続いて生じました。どのようにですか。(ロ)オハイオ州サンダスキーのスタージャーナル紙は,1919年のオハイオ州シーダーポイント大会におけるラザフォード兄弟の話について何と述べていますか。
10 啓示 8章5節に描かれているように,「雷」,「声」,「いなずま」,「地震」など,神の超自然的な力の顕現が続きました。雷を伴うあらしのような警告が与えられ,あらしのような声または音が発せられました。神の啓発と啓示のいなずまがきらめき,目標物を撃ったのです。さらに,地には動揺と大変動が起きました。その年の注目すべき出来事は,国際聖書研究者協会がアメリカ,オハイオ州シーダーポイントで,9月1-8日にかけて開いた一週間の大会でした。その大会には,それら聖書研究者が約6,000人出席しました。9月7日,日曜日の午後,その五か月半前に不当な投獄から釈放された,ものみの塔聖書冊子協会の当時の会長J・F・ラザフォードは,「苦悩する人類の希望」と題する公開講演を行ないました。オハイオ州サンダスキーのスタージャーナル紙は,翌日その講演を次のように報道しました。
ラザフォード会長は,日曜日午後,木陰の聴衆約7,000人に話をした。彼は,政治および経済上の諸勢力が,平和の樹立と豊かな暮らしにより人類の向上を図ろうとする願いに動かされて組織した国際連盟は,多くの善を成し遂げるであろうと語った。だが,次いで,主の不興が必ず連盟に臨むと言明した。その理由は,神の代理者であると主張するカトリックおよびプロテスタントの僧職者たちが,神の計画を無視して国際連盟を是認し,連盟を地上におけるキリストの王国の政治的表現として歓迎したことにあると述べた。―1919年10月1日号の「ものみの塔」誌(英文),298ページ。
11 そうした宣言は何を開始させましたか。それは今も続いていますか。
11 声および印刷によるそうした宣言は,火を燃え立たせましたか。その後半世紀を経た今日なお,神のメシアによる王国と,世界の平和と安全のために人間の作り出した国際組織 ― 現在は国際連合 ― とをめぐって,火は勢いよく燃え続けています。神のみことばから出る,雷を伴うあらしのような警告は,王国相続者の油そそがれた残りの者を通して,依然鳴り響いています。あらしのような声や音も聞かれ,神の啓発のいなずまが光り,聖書の預言や真理が照らし出されています。地の諸国民は,神のメシアによる王国および,急速に迫り来る,人類の地的事物の体制に対する神の報復の日が絶えず宣べ伝えられることにより,かく乱と動揺を味わっています。さて,「約半時間」の祈りの静寂が1919年までに終わったのですから,「七つのラッパを持つ」天の「七人の使い」が,それを吹く準備をすべき時が来ました。
12 (イ)古代イスラエルにおいてラッパはどんな目的で使用されましたか。(ロ)「七人の使い」が「七つのラッパ」を吹く準備をした時,油そそがれた残りの者はどのようにそれに関係することになりましたか。
12 エホバ神の古代の民の間で,ラッパは,会衆を召集したり,合図をしたり,太陰月の新月の始まりを祝ったり,また,神殿でささげられる燔祭や酬恩祭の犠牲の上に吹きならしたり,エホバの助けにより勝利を得るための戦いの叫びをあげたり,さらに,祭りの時を知らせたりするのに用いられました。b ラッパの音は広い区域にわたって聞こえるので,一般の人たちはラッパが鳴ると,公共の関心をひく何かが行なわれている,あるいは,行なわれるか発表されようとしていることを知りました。啓示 8章1-6節に描写されているように,第八の使いが行動した後,天の「七人の使い」は「七つのラッパ」を吹く準備をしました。その時,王国相続者の油そそがれた残りの者たちはそれに関係することになったのです。み使いは彼らにとって,「公の奉仕のための霊」なのです。(ヘブライ 1:14)残りの者はすでに祈りをささげました。今度は,ラッパを吹く七人の天の者と調和した行動を取らねばなりません。各ラッパが吹き鳴らされた後に,使徒ヨハネが象徴を介して起こるのを見た事柄の意味をふれ告げねばならないのです。
13 油そそがれた残りの者は,ラッパを吹く天の者たちと調和した行動を確かに取っているということを示す,何を行ないましたか。
13 その間に,32ページの新しい雑誌「黄金時代」(現在の「目ざめよ!」)の特別号第27号が,1920年9月29日付で配布され始め,その配布数は400万部に達しました。その号の特別記事は,「諸国民の苦悩: 原因,警告,解決策」と題するもので(ルカ 21:25,欽定),第一次世界大戦中,キリスト教世界の僧職者とその政治および軍事上の同盟者たちが,国際聖書研究者の上に集中的にもたらした,神に逆らう迫害の多くを暴露しました。それより少し前の1920年6月,政府の制限や禁止処分を解かれた「終了した秘義」(英文)と題する本が,雑誌版および本となって広告され,再び配布され始めましたが,これはキリスト教世界に不快の念を与えました。翌年(1921年)後期,聖書の重要な基本的教理を扱う「神のたて琴」と題する384ページの本が出版され,22の言語で581万9,037部という驚異的な配布を見ました。少しの時が経過し,やがて,ラッパを吹く第一の使いが有効に利用できる出来事が到来しました。それは,1922年,9月5-13日にかけて,油そそがれた残りの者がオハイオ州シーダーポイントで開いた国際大会です。
第一の使いがラッパを吹く
14 第一の使いがラッパを吹いた時,ヨハネは幻の中で何を見ましたか。
14 使徒ヨハネは預言的にこう書きました。「そして,第一の者がラッパを吹いた。すると,血の混じった,雹と火が生じ,それが地に投げつけられた。すると,地の三分の一が焼きつくされ,木の三分の一が焼きつくされ,緑の草のすべてが焼きつくされた」― 啓示 8:7。
15 地に投げつけられた,「血の混じった,雹と火」の目的は何でしたか。
15 「地の三分の一」が雹に打たれ,多大の被害が生じ,もろい物は打ち砕かれました。下って来た火は恐らく,いなずまでしょう。それは啓発のためではなく,可燃性の物を焼きつくすためのものです。火に伴う血は,天からの,飲むことの可能なものなどではありませんでした。血を飲むことは,全人類の族長ノアに与えられた神の律法に反します。この血は,流された血と同じく,死を意味し,投げ落とされたところ一帯を汚く染めてしまいました。それは,モーセの時代に古代エジプトを襲った血と雹と火の災厄に似ていました。(出エジプト 7:15-25; 9:22-33)しかし,第一のラッパが鳴り響いた後,「地の」どの「三分の一」にこの破壊的な降下物が注がれたのですか。
16 「三分の一」とは何を表わしていますか。「焼きつくされた」この「地の三分の一」の実体は何ですか。
16 聖書の中で三という数字は強調の意味で用いられており,三度言われたり行なわれたりすることは非常に強調されます。同じく,何かの三分の一とは,相当の,あるいは,かなりの部分を意味することになります。(エゼキエル 21:27。啓示 4:8。伝道 4:12)それは地の重要な部分ではありますが,そのこと自体,それが「地の」どの「三分の一」かを明らかにするわけではありません。しかし,イザヤ書 19章23-25節(新)でエホバ神は,枢要な「三分の一」すなわち,聖書歴史の中で二番目の世界強国となった北方のアッシリア,および第一世界強国であった南のエジプトと一緒にされた,古代イスラエルについて述べておられます。それはこの「三分の一」を明らかにする助けとなります。というのは,昔エホバ神との律法契約下にあった不忠実なイスラエルは,聖書預言において,自分が霊的イスラエルであり,仲介者キリストを通して神との新しい契約関係にあると主張する,現代キリスト教世界の模型だったからです。では,キリスト教世界が,「地の三分の一」つまり,七つのラッパの最初のラッパが吹かれた後に続いて生じた物の投げつけられるところだったのですか。そのとおりです。
17 (イ)1922年のシーダーポイントにおける第二回目の大会で,ものみの塔聖書冊子協会の会長は「神の王国は近い」という聖句に基づく講演を行ないましたが,その中で彼はどんな宣言をしましたか。(ロ)その二日後,大会出席者は何をしましたか。
17 1922年9月8日,金曜日の「かの日」,オハイオ州シーダーポイントにおける二回目の大会で,ものみの塔聖書冊子協会の会長は,「天の王国は近い」(マタイ 4:17,欽定)という聖句に基づいて講演を行ないました。その感動的な講演は,キリスト教世界がキリストによる神の王国を捨て,人間の案出した間に合わせの国際連盟を,「地上における神の王国の政治的表現」として推奨し,是認し,支持したため,神から致命的に撃たれ,とこしえの死に定められていることを明らかにするものでした。9月10日,日曜日の午後,J・F・ラザフォード会長は,1万8,000人の聴衆を前に講演をした後,「挑戦」と題する決議を読み,その採択を提出しました。集まっていた大勢の聴衆は起立し,割れるような拍手をもって決議を承認しました。それは,キリスト教世界の僧職者が血なまぐさい第一次世界大戦を支持し,その後,政治的国際連盟を採用して世界の平和と安全のためにそれに頼ることにより,神のメシアによる王国を拒否した,神に対するその忠節の欠如を指摘するものでした。翌月,同決議とそれを支持する資料4,500万部以上が,全世界で配布され始めました。
18 第一の使いがラッパを吹いて以来,キリスト教世界は何を経験していますか。
18 その時から今日に至るまで,キリスト教世界はひゆ的に言って,第一の使いが天でラッパを吹いた後に生じた事柄により,苦しみを受けてきました。同世界および,特に,カトリックとプロテスタントの僧職者たちは,さわやかな神の祝福の雨滴によってではなく,聖書の真理と預言に基づく,そして神ののろいを暗示する,強く重い告訴また暴露という形を取る,地を打つ雹の凝結した水によって激しく撃たれています。聖書的な言葉に託された神の憤りが,キリスト教世界に火のように表明されており,同世界の宗教的偽善の行ないを包み隠す,偽りのクリスチャンの覆いを焼きつくしているのです。キリスト教世界が無慈悲に流し,また流させた人間の血すべてに対し,神は同世界に血を浴びせ返されました。そのため,キリスト教世界は血に染まっており,神の手にかかって死ぬべきものであることが明らかになっています。神は,キリスト教世界にその滅亡において血を飲ませます。
19 第一の使いのラッパの音に引き続いて起こった事柄により,キリスト教世界にはどんな事態が生じていますか。
19 今日,9億7,738万3,000人の成員を数えるとされている,地球の全人口のほとんど三分の一を占めるキリスト教世界は,天からのこの象徴的な火によって霊的に「焼きつくされ」た「地の三分の一」です。長い間,非常に安定し,信頼できると考えられてきた同世界の宗教組織は,焦げつくような熱で黒くされ,キリスト教のものではなく,異教のものであることが明らかになっています。キリスト教世界は,生気をもたらす神の祝福の下にあるのではなく,神の火のような憤りの下にあります。その中の際立った者たち,つまり,カトリック,正教会およびプロテスタントの僧職者たちは,神の任命されたクリスチャン奉仕者ではないとして「焼きつくされ」る,「木の三分の一」です。緑草の葉のようにおびただしい幾億もの教会員は,イエス・キリストに真に追随する者でも,見倣う者でもない,つまり,真のキリスト教を実践する者ではないとして「焼きつくされ」た草,すなわち「緑の草のすべて」です。
20 神の裁きのゆえに,キリスト教世界の外見は今やどうなっていますか。
20 キリスト教世界に象徴的な雹,火また血が注ぎ下る結果,同世界は神に対してクリスチャンの実を欠いていることが明らかになります。同世界の外見は,ヘブライ 6章8節に描写されている土,つまり,『退けられ,のろわれたも同然になり,ついには焼かれてしまう』土を思い起こさせます。この宗教的に焼きつくされた状態は,キリスト教世界にあって終始いよいよ明らかになっています。
第二の使いがラッパを吹く
21 第二の使いのラッパが吹かれたとき何が起こりましたか。
21 これにより激しい衝撃を受けましたか。それは,宗教感情を傷つけることをねらったものでしょうか。しかし気を引き締めて,次の描写に注目してください。使徒ヨハネはこう記します。「また,第二の使いがラッパを吹いた。すると,火で燃える大きな山のようなものが海の中に投げ込まれた。すると,海の三分の一が血になった。そして,海にいる,魂を持つ被造物の三分の一が死に,船の三分の一が難破した」― 啓示 8:8,9。
22 第二のラッパに付随して起こる事柄から影響を受けた,象徴的な海について説明しなさい。
22 第二の使いが吹いた大きなラッパの音を追いかけるかのように,地上の油そそがれた残りの者の成員たちは,1923年および1924年の初めにかけて,人びとの耳を打つ宣言を「忠実な証人」としてこだまさせました。聖書に支持されたそれらの布告は,象徴的な「海」に重大な衝撃を与えました。地と違って安定を欠く海は,液体のようにうねる急進的,革命的,また侵略的,軍事的な人類の要素を象徴しています。この要素は,長く存続した事物の体制に飽き,それに反抗しているとはいえ,人類の不幸すべてをいやすものとしてメシアの王国を約束された神に頼らず,その神権政府に逆らう立場を取っています。聖書に対する信仰を持たない彼らは,不敬虔で,武力と暴力手段の脅しをもってこの世的な自分の宣伝や企画をあわのように注ぎ出します。(イザヤ 57:20; 17:12,13)しかし,この象徴的な海の中に投げ込まれた火のようなものは何でしたか。
23 何が海に投げ込まれましたか。その行為は何を象徴しましたか。
23 それは山ではなく,「火で燃える大きな山のようなもの」つまり,「大きな山」ほどもある土の塊でした。それは,天からではなく,象徴的な地から投げつけられました。「地」からもぎ取られ,「海」の中に速い速度で移されたのです。聖書の中で山は安定した地の政府の象徴として用いられているので,山ほどの大きさのあるこの燃える土の塊は,落ち着きを欠いた,反抗の精神を持つ人たちの間に投げ込まれた,急進的,社会主義的,革命的政府に関する論争を表わしています。この人たちは,「海の三分の一」が影響を受けたとあるように,人類の相当部分を占めています。
24 その時期に,急進的,革命的政府に関する論争が,人びとに確かに押し付けられたことを示す事実を挙げなさい。
24 この特別な時期に,この政治論争が人びとに押し付けられました。1917年11月7日,急進的なボルシェビキはロシア政府を倒し,神を敬わない共産主義の政府を樹立しました。1922年10月30日,ベニート・ムッソリーニと彼の急進的な政党(1919年3月23日,イタリアのミラノで組織された)は,“ローマ進軍”を行ない,ファシスト協調組合国家を樹立しました。1923年11月8日,ドイツのミュンヘンで,アドルフ・ヒトラーはエーリック・フォン・ルーデンドルフ将軍の援助を得て,ナチズムを支持するヒトラー一揆として知られた反抗運動を組織しました。このすべては,不安定で,落ち着きを欠いた人類要素にどのような影響を与えたでしょうか。それは良い影響でしたか,それとも悪い影響でしたか。
「海」の三分の一が血になる
25 その山が『火で燃えていた』ことは何を表わしていますか。
25 神は何を予見し,また何を予示されたのでしょうか。神にとって,安定した地からもぎ取られた,この山ほどもある大塊は,祝福となるものではありませんでした。実に,それは火のような論争でした。そして現在もそれに変わりありません。しかし神にとって,それは自ら燃える山のようであり,古代バビロンと同じく,『滅ぼす山』また「焚山」だったのです。(エレミヤ 51:25)そのため,神は啓示 8章8節で,この論争および急進的,革命的政府を支持する政治運動を,「火で燃える大きな山のようなもの」として表わされました。それは,イザヤ書 11章9節,25章6-8節に描かれている,神のメシアによる王国の象徴的な山とは大いに異なっていました。この革命的,社会主義的,共産主義的な政府形態が,このように強制的に押し付けられても,何ら祝福はもたらされません。そのことは,『燃えている山』の塊が,その投げ込まれた象徴的な海に与えた影響によって表現されています。つまり,「海の三分の一が血になった」のです。
26 「海の三分の一」が血に変わったことはどんな結果をもたらしましたか。それはどれほど広範に及びましたか。
26 20世紀の今日,人の血の輸血に関していろいろな主張がなされていますが,どんな被造物も,血に変えられたそれ程広い海の中で生きることはできません。モーセの時代,古代エジプトに臨んだ血の災厄の間,血となった川の中で魚は死に,ナイル川は悪臭を放ち始め,エジプト人は神格化されたナイル川から水を飲むことができませんでした。(出エジプト 7:20,21)同様に,山のような火の塊が投げ込まれることによって血に変えられた象徴的な「海の三分の一」については,「海にいる,魂を持つ被造物の三分の一が死に」ました。(啓示 8:8,9)こうして神は,地上の物質的パラダイスにおける命が,そうした急進的,また革命的な政治運動を通して可能になるのではないことを示されたのです。1917年以来多くの国に共産主義が入り込むことにより,また,1949年アジア本土に共産主義中国が成立するに至り,今や世界人口の三分の一は,神を信じない共産主義の支配下にあります。ところが,長年にわたる共産主義の統治の結果,人類のこの「海の三分の一」の状態,また,将来の見通しはどうですか。第二の使いがラッパを吹いた後の,神の預言的な描写にあるとおり,それは死人の血のようです。
27 急進的,革命的諸政府は臣民をどの方向に押しやりましたか。それゆえ,イエスのどの例え話は,1923年のロサンゼルス大会における議題としてふさわしいものでしたか。
27 聖書預言の成就が示すところによると,西暦1918年以来,イエス・キリストは神の霊的神殿に臨在しており,中東の羊飼いが群れの羊をやぎから分けるように,あらゆる国民を分けておられます。(マタイ 25:31-46)過激で,攻撃的,急進的,革命的な運動および政府が,臣民を象徴的なやぎの側に押しやる役割を果たしたことは確かです。その側とは,キリストの霊的兄弟の油そそがれた残りの者に対する扱い方にとがめられるべきところがあるため,到来するハルマゲドンの戦争で滅ぼされる者たちの側です。それで,国際聖書研究者協会は,極めて適切にも,しかも明らかにラッパを吹く第二の使いの導きの下に,1923年8月18-26日にかけて,アメリカ,カリフォルニア州のロサンゼルスで地域の大会を開きました。8月25日,土曜日,ものみの塔聖書冊子協会の会長J・F・ラザフォードは,「事物の体制の終結」に関するイエスの預言の中の最後の例え話について話しました。それは,羊とやぎに関する例え話でした。―マタイ 24:3から25:46。
28 「警告」と題する決議はどんなことを述べていましたか。そうした情報はどのように公の警告となりましたか。
28 次いで講演者は,「警告」と題する歴史的な決議を2,500人の聴衆に提出し,聴衆は圧倒的な反応を示して決議の承認を表明しました。それは,キリスト教世界の僧職者たちが,神の王国の良いたよりを全世界にふれ告げるキリストの霊的兄弟を援助しなかったこと,それゆえに彼らはやぎのような特質を示していることを暴露するものでした。決議は結論の部分で,僧職者の支持する国際連盟ではなく,神の王国を「国家および個人の不幸に対する唯一の救済」として頼るよう,羊のような人びとに訴えました。8月26日,日曜日,この同じ決議が,3万人の出席した大会の公開集会で採択されました。1923年10月15日号の「ものみの塔」誌には,「羊とやぎの例え話」と題する8ページの記事が掲載されました。その後,同年12月,大会の決議を載せた,「宣言 ― すべてのクリスチャンへの警告」と題する小冊子の作成が始まり,アメリカだけでも,配布用として1,347万8,400部印刷され,さらに数百万部の小冊子が他の国々で印刷されました。
29 (イ)共産主義の発展と拡大は主にだれの責任に帰せられますか。(ロ)そうした急進的要素およびそれに追随する者たちは,神の目から見てどんな立場にありますか。なぜですか。
29 僧職者たちが公に認めていることですが,東ヨーロッパ,ロシア,および,何世紀もの間キリスト教世界の強力な一部であった,それらの近隣諸国における共産主義の発展と拡大は,多分にキリスト教世界の僧職者の失敗に起因していました。よく知られているように,ロシア正教が今日に至るまで共産主義政体のいわば侍女としての役割を果たしているのに対し,エホバの献身したクリスチャン証人は地下運動に追いやられています。それらクリスチャン証人の活動を禁止し,彼らを迫害することにより,この世の急進的かつ革命的な支配要素は,イエスの例え話の「羊」とは懸け離れた行動を取っているのです。その例え話は,象徴的な「やぎ」が天の神からのろわれることを明らかにしています。(マタイ 25:41-46)神のこののろいと一致して,急進的,革命的,社会主義的また共産主義的な運動は,死をもたらすものであり,死人の流した血のように生命のないものです。それは人類の大海に投げ込まれることにより,その相当部分つまり,「海の三分の一」を血に変えました。それと比例して,「海にいる,魂を持つ被造物の三分の一が」,ハルマゲドンの戦争の時,死に直面するのです。
30 “赤”い政府が命と平和をもたらし得ないことを,神の民はさらにどのように暴露しましたか。
30 “赤”い社会主義および共産主義の運動が,人びとに命,幸福また平和をもたらし得ないことは,「宣言 ― すべてのクリスチャンへの警告」と題する小冊子が配布されている時でさえ,さらに力強く強調されました。ものみの塔聖書冊子協会は,1924年2月15日,「望ましい政府」と題する64ページの冊子を出版し,その年の終わりまでに,多くの事柄を暴露するこの冊子を74万1,449部発送しました。その冊子は,特に「政府の失敗 ― 病弊」という副見出しの下に,この世の人間の組織した政府すべてが間もなく死に面することを指摘しました。
31 その冊子は政府の改革を図る人間の試みについて何と述べていましたか。
31 当時,ロシアはボルシェビキ共産主義による支配の七年目に入ったばかりでしたが,「望ましい政府」の5ページ,2節はこう述べています。「世の指導者たちは政府の改革を図って種々の企てや方策を提唱しましたが,それはことごとく失敗に帰しました」。これには,ロシアで試みられた政治改革も含まれています。というのは,この冊子は23ページで,「ロシア,ドイツ,オーストリア,そして他のヨーロッパ諸国における大革命」に注意を向けていたからです。また,54ページでは極めて正確にも,「ロシアがすでに経験しているような」困難な事態がさらに起きると述べていました。
32 「船の三分の一」が難破することは,幻の中で何を預言的に表わしていましたか。
32 血となったこの「海」の波に乗り,そうした象徴的な海に住む被造物を利用する急進的,また革命的な組織も,やはりハルマゲドンのあらしにおいて滅びに定められています。それは,第二の使いがラッパを吹いた後の預言的な描写に示されているとおりです。「船の三分の一が難破した」。(啓示 8:9)急進的,革命的,社会主義的,共産主義的支配は成功しません。彼らは,人びとが長く祈り求めてきた,キリストによる神の王国を憎み,それに反対しているからです。1928年,ものみの塔協会が出版した「政府」(英文)と題する本には,次のような考えが述べられており,今日その考えを改める理由は少しもありません。
33-35 1928年に出版された「政府」と題する本は,諸政府,特に社会主義および共産主義形態の政府について何と述べていましたか。
33 ソ連の政府は成功しませんでした。いえ,成功するはずがなく,それを試みた人びとに満足をもたらすものとは到底いえません。人民の声を反映するとされるあらゆる他の政府形態と同じく,扇動政治家と党員が各種機関を牛耳っています。したがって,ソ連の政府は,他の政府に勝る利点を何ら提供しておりません。ボルシェビキの主義・主張は,実際には人びとに多大の苦難をもたらしており,他の諸国および地上の政府の多くはそれに恐れを抱いています。
34 人間の試みたあらゆる政治形態は,君主政治,貴族政治,民主政治,共和政治また社会主義政治のいずれを問わず,満足の行く結果をもたらしませんでした。―244,245ページ。
35 神の王国を世界じゅうで唱道し,ふれ告げるエホバのクリスチャン証人は,1923年,天の第二の「使い」がラッパを吹いた後に描画的に明らかにされた情報を,今日に至るまであらゆる場所で告げ知らせているのです。
第三の使いがラッパを吹く
36 幻の中で,第三のラッパが鳴らされた後に何が起こりましたか。
36 第三のラッパを鳴らす時が来ました。使徒ヨハネが幻で見るものは「星」です。といっても,それは,栄光を受けたイエス・キリストの右手にある「七つの星」の一つではありません。それらの星は,「七つの会衆の」七人の「使い」を象徴するものでした。(啓示 1:16-20)ヨハネは次のように記しています。「また,第三の使いがラッパを吹いた。すると,ともしびのように燃える大きな星が天から落ちた。それは川の三分の一と水のわき出るところとに落ちた。そして,その星の名は“にがよもぎ”(ギリシャ語,アブサン)という。すると,水の三分の一はにがよもぎに変わり,多くの人がその水のために死んだ。それが苦くされたためである」― 啓示 8:10,11。
37 (イ)天から淡水の中に落下した「大きな星」は何ですか。(ロ)それはなぜ「にがよもぎ」と呼ばれましたか。
37 ここでは,塩分を含んだ海水ではなく,淡水の川や泉が影響を受けています。天からそれらの淡水に落ちた「大きな星」は,象徴的な「七つの星」と同様な宗教上の特権を享受していながら,聖書が宗教上の「星」に託している特権と機会の高い標準から落ちた者たちの級を明らかに表わしています。献身し,バプテスマを受け,霊によって生み出された真のクリスチャンは,「キリスト・イエスとの結びつきにおいて……天の場所に」よみがえらされ,共に座につく,と述べられています。(エフェソス 2:1-6)しかしこの象徴的な「大きな星」は,天の場所にあると公言するその主張にふさわしい行動を取ってはいません。むしろ,自らの行動により落ち,そのような霊的な高さに達しないのです。それは霊的な光を照らすものになり得たのですが,天から落ち,「ともしび」,また,たいまつのように「燃え」,火に包まれながら自らの滅びに向かいます。それで,その名は“にがよもぎ”,文字どおりにはアブサンとなっているのです。つまり,中東に数種類の変種が見いだされる苦い植物の名前なのです。それが淡水の中に投げ込まれると,水を甘くする代わりに苦くし,にがよもぎの苦みを放散させます。
38 (イ)「大きな星」は何を特に象徴していますか。それはどのように落ちましたか。(ロ)それが落ちたところ,つまり象徴的な水は何ですか。その結果,それらの水はどうなりましたか。
38 こうした特質を考えると,この燃え落ちる「大きな星」は,カトリック,正教会,プロテスタントおよび他の宗派から成るキリスト教世界の背教した僧職者以外の,一体どんな宗教人の級を表わしているといえるでしょうか。特に西暦4世紀のローマ皇帝コンスタンティヌス大帝の時代から,キリスト教世界の僧職者は教会内の人びとに,命を与え,命を支える真理の新鮮な水を提供しているかのように装ってきました。しかし,僧職者が真のキリスト教から背教へと転落して行った結果,世界人口の大きな部分を占めるキリスト教世界の象徴的な川や泉はどうなりましたか。人は生きるために川や泉から新鮮な水を得る必要があります。しかし,人の霊的命を支える霊的な「水」であるべきものを,背教したキリスト教の僧職者たちは,飲むことのできない,致命的な,にがよもぎの水に変えてしまったのです。どのようにしてですか。地獄の火による永ごうの苦しみといった,キリスト教と聖書に反する偽りの,異教の教理を教会員に教えることにより,また,血なまぐさい戦争のような,クリスチャンに反する行動に人びとを導き入れることによってです。
39,40 (イ)1924年,キリスト教世界の僧職者たちの教理のもたらす苦い影響を,ラッパの音のように暴露するどんなことが起きましたか。(ロ)オハイオ州コロンバスのこの大会で,どんな事柄が僧職者たちの失敗・怠慢を公にする面で助けになりましたか。
39 キリスト教世界の人びとにとって,背教したキリスト教の僧職者たちの教理や宗教上の歩みがどれほど苦く,また致命的であるかが,西暦1924年,特に強調されました。同年7月20-27日にかけて,国際聖書研究者協会はアメリカ,オハイオ州コロンバスで大会を開きました。その意図は,あたかも,この点に関する事実を耳が張り裂けるようなラッパの音によって公にふれ告げることにあるかのようでした。7月25日,金曜日,協会の会長は,「誘惑 ― 敗北と勝利」に関して講演を行ないました。彼は講演の終わりの部分で,「告発」と題する決議を提出し,それは大会出席者の圧倒的な支持によって採択されました。翌々日,7月27日,日曜日,会長は「滅亡に定められた文明社会」と題する公開講演を行ないました。滅亡に定められたこの文明社会には,顕著な存在としてキリスト教世界が含まれています。
40 コロンバス大会を特徴づけたこの決議は,全キリスト教世界の背教した僧職者に対するなんと重大な“告発”だったのでしょう。「教理」という副見出しの部分では,僧職者による偽りの,そして神に非難をもたらす教理が容赦なく暴露されました。また,僧職者が政治社会の仲間たちと共に,キリスト教世界の人びとを導き入れている宗教上の歩みが致命的なものであることも明らかにされました。僧職者たちは,宗教的には,にがよもぎのように苦いもの,そうです,今は霊的な死を,そして,ハルマゲドンにおいては永遠の肉体的滅びをもたらすものを人びとに飲ませていたのです。
41 幻の示すところによると,落下して行く「星」は人類にどんな影響を及ぼしますか。
41 星のような僧職者が与えた損害の程度は,使徒ヨハネが幻で見たことによく描写されていました。すなわち,「多くの人がその水のために死んだ。それが苦くされたためである」。(啓示 8:11)最高の文明を誇るキリスト教世界にとって,それら僧職者はなんと誤り惑わす「星」だったのでしょう。彼らは人びとを神の王国へ導く代わりに,国際連盟と国際連合へ向かわせたのです。「キリストの代理をする」真の「大使」である,聖書研究者のクリスチャンとは対照的に,僧職者はなんという転落を経験したのでしょう。―コリント第二 5:20。
42 第三の使いのラッパが吹き鳴らされた後に現わされた事柄は,どの程度広くふれ告げられていますか。
42 キリスト教世界の僧職者に対するこの告発は,ラッパによるかのように,オーストラリアを含む全地に響き渡りました。アメリカだけでも,決議「告発」が配布のために1,354万5,000部印刷されました。さらにアメリカ以外の国でも,外国語による印刷が数百万部行なわれ,その年の十月に全世界で配布が開始され,最終的には5,000万部以上の配布を見ました。その告発は,1924年9月1日号の「ものみの塔」誌を通じても伝えられました。これは,第三の天の使いがラッパを吹いた後に明らかにされた事柄をふれ告げる,ほんの始まりにすぎなかったのです。その後繰り返し,放送局あるいは放送網を通じ,また,公開講演や,書籍・冊子・雑誌・小冊子により,キリスト教世界の僧職者の背教と人びとに対するその影響が容赦なく告げ知らされました。1963年には,「『大いなるバビロンは倒れた』神の王国は支配す」(英文)と題する704ページの本が出版され,その印刷部数は1968年までには280万3,296冊に達しました。また1969年には,「聖書はほんとうに神のことばですか」と題する本が,11の主要な言語で紹介され,初版として三百万部印刷されました。この本は,僧職者が真のキリスト教の信仰から離反していることをさらに暴露するものとなっています。
43 ラッパを吹く残りの四人の使いたちから聞こうとしている事柄に対し,わたしたちはどんな態度を取るべきですか。
43 しかし,現在の事物の体制の物事を描き出す全容は,これで完結したわけではなく,さらに四人の使いのラッパの音を聞かねばなりません。提供される全部の描画を見ることを恐れてはなりません。では,使徒ヨハネと共に,その後の幻が明らかにされて行くのを見ることにしましょう。
第四の使いがラッパを吹く
44 幻の中で,第四の使いがラッパを吹いた後に何が起こりましたか。
44 「また,第四の使いがラッパを吹いた。すると,太陽の三分の一が強打され,月の三分の一と星の三分の一が強打された。それは,それらの三分の一が暗くされ,昼がその三分の一にわたって光明を持たず,夜も同じようになるためであった」― 啓示 8:12。
45 天体が暗くなると,地の住民はどうなりますか。しかし神の民はそれと同じように影響を受けますか。
45 大気圏外でこのような異常現象が起こるなら,地あるいは地の住民の三分の一は,昼も夜も光を少しも受けないことでしょう。それは,古代エジプトよりさらに広範な地域に及びます。エジプトはモーセの時代,三日間昼も夜も,まるでさわれるほどの濃い,全きやみにうたれました。エジプトに臨んだその古代の苦しみは,一種の打撃,災厄とみなされ,エホバ神のみ手からの十の災厄中九番目に当たります。(出エジプト 10:21-23)しかし,エジプトで虐げられていた,エホバの民は例外で,彼らの『住まいには光』がありました。今日,油そそがれたクリスチャンの忠実な残りの者は,エホバ神を崇拝する仲間の「大群衆」と共に,自分たちの住まいに天からの霊的光を持っており,地の「三分の一」を覆うやみを指し示しているのです。
46 異教徒の人たちの霊的な状態については何と言えますか。
46 聖書は,地の異邦諸国民すべて,つまり,エホバの選ばれた民に属さない者たちが,宗教的なやみの中にあって,まことの神から疎外されていたと,あからさまに述べています。(エフェソス 5:8; 6:12。コロサイ 1:13。テサロニケ第一 5:4,5。ペテロ第一 2:9。イザヤ 60:1,2)ですから,いわゆる異教徒たちが霊的なやみにいると描写しても,少しも奇異なことではありません。しかし,自分は“異教徒”とは別であるとする,キリスト教世界はどうですか。
47 キリスト教世界の観点から見ると,同世界はどんな霊的状態にありますか。
47 現在,世界人口の約三分の一を包含するキリスト教世界は,昼夜天からの霊的光に浴していると主張します。同世界は自分の領域に聖書を1,337の言語で,20億冊配布しました。また,カトリック,正教会およびプロテスタントの僧職者を有していることを誇り,彼らのみが正式な任命を受けたキリスト教の僧職者であり,聖書を説明する権限を付与された者であると主張します。同世界は,教会の有力者に著名な政治家,軍の高官,富裕な実業家がいることを自慢できるので,神から恵みの光を受けていると考えます。また,政治国家の保護も受けています。キリスト教世界の観点から見ると,同世界だけが,太陽,月,星で表わされる天からの霊的な光を享受しています。しかし,「第四の使い」が啓示したところによると,事実はどうですか。
48 (イ)1925年8月,第四の天の使いの導きの下に何が起こりましたか。(ロ)この大会で採択された決議は,キリスト教世界に天の光が全く臨んでいないことをどのように示しましたか。
48 今日から見て分かることですが,国際聖書研究者協会は,天の第四の使いの導きの下に,1925年,8月24-31日にかけて,アメリカ,インディアナ州インディアナポリスで地域の大会を開きました。8月29日,金曜日午後,協会の当時の会長は,大会に集まった幾千人もの出席者を前に,イザヤ書 62章10節の預言に基づき,「行動への召し」という主題で話をしました。彼はその結びの部分で,「希望の音信」と呼ばれることになった決議を提出しました。この決議は主に,世の霊的光であると主張するキリスト教世界に関するものでした。では,その6,7節に注目してみましょう。
カトリック教は,正当には神にのみ属するものを自分のものであると主張し,また,そうみなしています。現代主義者は神を否定し,そのみことばと贖いの計画とを否定し,人間の荒廃した状態を救済するものとして,盲目的な力を提供しています。根本主義者は聖書を信じていると公言するものの,行動によりそれを否定しています。彼らは,神に恥辱を与える偽りの教理を教え,カトリック教徒および現代主義者と共に,この世の政治および商業上の権力者と結び,神の王国を地上に樹立し得ると冒とくの主張をしています。彼らすべては,自分たちの最高の主サタンの下に結託し,神をすみに押しやってしまい,そのみ名を汚しています。
その結果人びとは,商業上の不当利得者やそれにくみする者たちの圧制の下敷きになってあえいでおり,政治指導者に対する信頼を失い,自分たちを誤導した宗教家たちに,もはや敬意を抱いてはいません。そうした不敬虔で,神聖を汚す同盟の偽りの光に導かれ,諸国民はやみに落ち込んだのです。……
49 この大会の期間中およびその後,一般の人びとはどのようにキリスト教世界のやみについて知らされましたか。
49 大会出席者は,このように暴露された事実をふれ告げる決議の採択を,起立によって表明しました。8月31日,日曜日の午後,会長は「人びとのために旗印を掲げる」という主題の公開講演を行ないましたが,その講演には約1万人が出席しました。講演に先立ち,大会ですでに採択されていた「希望の音信」と題する決議が聴衆のために読まれ,公開講演の終わりに,その大勢の聴衆は決議とそれを支持する論議を承認するしるしとして起立しました。決議はさらに,雑誌「ものみの塔」と「黄金時代」に掲載され,1925年10月31日,土曜日には,英語の話される幾つかのキリスト教国で,冊子になった「希望の音信」の配布が始まりました。最終的にこの冊子は,いろいろな言語で約5,000万部配布され,こうして,人口の宗教的三分の一としてのキリスト教世界に関し,『昼はその三分の一にわたって光明を持たず,夜も同じようになる』ことがあまねく明らかにされました。(啓示 8:12)同世界は,天の真理と恵みの光を享受してはいなかったのです。
50 キリスト教世界の深まるやみを人びとに知らせるため,1925年以降何が行なわれていますか。
50 混乱した世界情勢の中で施すすべもなくもがいているキリスト教世界の様相は,同世界を包む宗教的なやみがいかに徹底的なものであるかを痛ましく強調しています。エホバのクリスチャン証人の油そそがれた残りの者たちは,第四のラッパが吹かれた後に象徴的に明らかにされた暗黒の状態を,恐れなく大胆に指摘し続けてきました。1955年,「キリスト教世界またはキリスト教 ― どちらが『世の光』ですか」と題する32ページの冊子が出版され,深まるキリスト教世界のやみに特別の注意が向けられました。この冊子は数か国語で広く配布されました。しかし,真のキリスト教とキリスト教世界の相違は,今日に至るまで,忠実な油そそがれた残りの者たちとその仲間である,神の「善意の人びと」の「大群衆」により暴露され続けており,この相違に気づく人びとは増える一方です。
「鷲」
51 ヨハネは次に,地に対するさらに多くの災いを予告する何を見ましたか。
51 不利な影響を受けた人たちは,天の使いたちが最初の四つのラッパを吹いた後に生じた情景の成就だけで十分の災いだ,と考えたかもしれません。しかし,さらに多くの,もっと恐ろしいこの種の事柄が起ころうとしていました。そして,それは神の完全な目的に従って実際に生じたのです。そのことは,使徒ヨハネが第四のラッパと第五のラッパが吹かれる間に生ずるのを目にした休止によって表わし示されていました。彼は次のように記しています。「またわたしが見ると,中天を飛ぶ一羽の鷲が大声でこう言うのが聞こえた。『災い,災い,災いが地に住む者たちに来る。ラッパを吹こうとしている三人の使いの吹き鳴らす残りのラッパの音のために』」― 啓示 8:13。
52 (イ)なぜ鷲は幻の中で発表を行なうのにふさわしいものでしたか。(ロ)この鷲は何を表わしていましたか。鷲の語ったことと調和して,油そそがれた残りの者は何をしましたか。
52 鷲は非常に高いところを飛ぶので,その下にいる人間は広い範囲にわたって,その姿を見,その声を聞くことができます。鷲の目は遠くまで見通すことができ,はるか前方をはっきり見ることができます。(ヨブ 39:29)ヨハネが神の天のみ座の回りに見た「四つの生き物」の中に,第四の生き物で,「飛んでいるわし」に似た者のいたことが思い出されます。(啓示 4:6,7)この鷲のような「第四の生き物」は,黙示の第四の騎士“死”が,ハデスに伴われながら,青ざめた馬を乗り進めているのを,ヨハネに来て見るよう招待しました。(啓示 6:7,8)中天を飛んでいるのをヨハネが見た象徴的な「鷲」が,世界的な重要性を帯びる発表をしている,神の天のケルブのひとりを表わしているかどうか,わたしたちに確かなことは分かりません。いずれにせよ,この鷲は,直前の事態を予見できる力を神から付与されており,「鷲」が使徒ヨハネに事前の通知を与えたように,自分の予見したことを地上の油そそがれた残りの者に知らせるあるしもべ,あるいは,しもべ級を表わしています。こうして残りの者は,引き続いて生じる災いに関するあからさまな暴露に先立ち,さらに三つのラッパが吹かれることを思い起こさせられました。それは,残りの者に対するさらに多くの業を意味しており,勇気が大いに必要とされます。そのため,ものみの塔聖書冊子協会はさらに国際大会を計画し,それを発表しました。
[脚注]
a 「ものみの塔およびキリストの臨在の告知者」誌,1919年5月1日号の133-139ページ,「刈り入れは終わった ― 次に何が起こるか」(英文)と題する記事をごらんください。