第20章
第七の使いがラッパを吹く
1-3 復習の意味で,第六の天の使いがラッパを吹いた後に何が起きたか説明しなさい。
19世紀前,使徒ヨハネは,第六の天の使いがラッパを吹いた後に何が起きたかを象徴(「しるし」)を介して見ました。ラッパが吹かれた後に続いて生じたことは,三つの災いから成る一連の災いの二番目のものであると宣言されました。「第二の災い」は,大川ユーフラテスにつながれている「四人の使い」を解くことによりもたらされたのです。―啓示 9:13-15。
2 「四人の使い」が解かれた直後,恐ろしい形相をした二億の馬が,騎手を乗せ,「人びとの三分の一」を殺すため,彼らに向かって突撃しました。同様のこととして,生き返った,神の「ふたりの証人」が天に上り,「都市」が大「地震」によって損害を被った後,神の天の王国を支持し,国際連盟および国際連合に反対の立場を取る何億という聖書文書が,「ふたりの証人」級の指導の下に配布されました。それは,キリスト教世界に対する何という災いだったのでしょう。
3 それで,使徒ヨハネは,「大いなる地震」について報告した後,極めて適切にこう記すことができました。「第二の災いが過ぎた。見よ,第三の災いが速やかに来る」。(啓示 11:14)この「第三の災い」に関しては,まだ吹き鳴らされていないラッパを持つ,残された唯一の使い,すなわち「第七の使い」にその発表がゆだねられました。彼はどんな災いをふれ告げるのでしょうか。
4,5 第七の使いがラッパを鳴らした後にどんな壮大な発表が行なわれましたか。
4 「また,第七の使いがラッパを吹いた。すると,大きな声が天で起きて言った,『世の王国はわたしたちの主とそのキリストの王国となった。彼はかぎりなく永久に王として支配するであろう』」― 啓示 11:15。
5 「わたしたちの主とそのキリストの王国」という表現は,この政府が主エホバ神によって建てられた,メシアによる王国であることを示しています。なぜなら,「そのキリスト」つまりメシアがその王国の特権にあずかるからです。エホバはこの王国により,「かぎりなく永久に王として支配する」のです。
6 (イ)神は世に対するご自分の王権が中断されることをどのように,またどれほどの期間許しましたか。(ロ)西暦1914年10月,世の王権に関して何が生じましたか。
6 人類の世の王国は,当然エホバ神に帰属します。しかしエホバは,西暦前607年以降,ダビデ王家の,油そそがれた子孫による世の王権が失効すること,つまり中断されることを許されました。どれ程の期間ですか。『七つの時』,つまり象徴的な七つの「時」に相当する,2,520年の期間です。(ダニエル 4:16,23,25)異邦の世界強国が何の挑戦も受けずに,また,中断されることもなく世を支配する『七つの時』は,西暦1914年の10月4/5日ごろに終了しました。その時,人類の世の王国は正当に,「わたしたちの主とそのキリストの王国」になったのです。天のキリストつまりメシアなるイエスはその時,すべての正当な王権の源であるエホバから王権を受けました。
7 イエスはどのように王権を拒みましたか。拒んだ理由は何でしたか。
7 西暦29年,誘惑の場となったある山で,誘惑者サタンから次のように言われたイエスは,王権を受けることを拒みました。「この権威すべてとこれら[人の住む地のもろもろの王国]の栄光をあなたにあげましょう。それはわたしに渡されているからであり,だれでもわたしの望む者に,わたしはそれを与えるのです。それで,あなたが,わたしの前で崇拝の行為をするなら,それはみなあなたのものになるのです」。イエス・キリストは悪魔サタンの申し出をきっぱりと拒み,エホバ神の側を選んで悪魔にこう答えました。「『あなたの神エホバをあなたは崇拝しなければならず,彼だけに神聖な奉仕をささげねばならない』と書いてあります」。(ルカ 4:5-8。マタイ 4:8-10)その三年半の後,杭の上で死に処される少し前,イエスはエルサレムでローマ人の知事ポンテオ・ピラトにこう言いました。「わたしの王国はこの世のものではありません。……しかし実際のところ,わたしの王国はそのようなどころからのものではありません」。(ヨハネ 18:36)彼は,悪魔サタンの手中にある,地に対する王権を拒んだために死を遂げました。それは,西暦1914年に,主エホバ神の手中にある王権を受けるためであり,エホバはその王国に関しイエスと契約を結んでおられたのです。―ルカ 22:28-30。ダニエル 7:13,14。
秘義は終了する
8 啓示 10章7節で,使いは誓いの下にどんな約束をしましたか。
8 しかし待ってください。啓示 10章7節で,神の使いは誓いの下に厳粛にこう宣言しています。「第七の使いが吹き鳴らす日,彼がラッパを吹こうとするその時に,神が預言者なるご自分の奴隷たちに宣明された良いたよりに基づく神の神聖な奥義は,たしかに終わりに至る」。また,アメリカ標準訳によると,次のとおりです。「第七のみ使いの声の日に,彼がラッパを吹き鳴らそうとすると,その時,神がご自分の預言者なるしもべたちに宣明された良きおとずれによる神の秘義は終了する」。さて,第七のラッパが吹き鳴らされる時,この「神の秘義」は何であることが判明しますか。
9 第七の使いがラッパを吹き鳴らそうとする時に「神の秘義」は終了するであろう,という使いの宣言はどのように成就しましたか。
9 第七の使いが実際にラッパを吹き鳴らし始めた時,天の声が大きな声で次のように言うのが聞こえました。「世の王国[王権,つまり統治する権利および権原]はわたしたちの主とそのキリスト[そのメシア]の王国となった」。これは,「神の秘義」が主エホバ神の王国であること,つまり,ご自分のメシアすなわちキリストによる,エホバ神の王としての支配であることを証明しています。古代イスラエルにおいて,エホバ神は西暦前1077年から607年の間,エルサレムにある「エホバのみ座」にすわったご自分の油そそがれた者たち,つまり,ダビデとその王統の子孫たちにより王として支配しました。(歴代上 29:23,新)しかし今は,ご自分の対型的ダビデすなわち,愛するみ子イエス・キリストによって統治しておられるのです。
10 (イ)いつ,またどのようにこの王に関する「神の秘義」は終了しましたか。(ロ)エホバは地に対する王としてのご自分の支配が中断されることを再び許されますか。(ハ)キリストの追随者つまり,霊によって生み出される14万4,000人の完成と復活は,イエス・キリストの即位前に,あるいは即位後に起こりますか。
10 では,いつ,またどのように,この王に関する「神の秘義」は終了したのですか。それは,1914年の異邦人の時の終わりに,そして,エホバが,メシアつまりキリストなる,復活させられた栄光のイエス・キリストによってご自身のこの王国を開始させられることにより,終了したのです。こうしてエホバは,ご自分の秘義の目的をついに実行に移されました。王として人類の世を支配するその権限を,エホバご自身が宇宙主権者として正当に取り上げられたのです。その表明として,エホバはご自分のメシアつまりキリストに冠を与え,彼を天に,ご自分の右に即位させました。(詩篇 110:1,2)それ以来,王として人類の世を支配する権限は,主なる全能の神エホバに属し,そのメシアつまりキリストは,エホバの代理を務めているのです。今より後,全能者なるエホバ神は限りなく永久に王として支配されます。そして,地に対する王としてのご自分の支配が,異邦諸国の統治によって中断されることを二度と許されません。み子イエス・キリストはご自分が即位するのに,真の教会つまり,霊によって生み出される14万4,000人の,ご自分の忠実な追随者から成る会衆の完成と復活,そして栄化を待つ必要はありませんでした。1914年当時,彼らのうちの一人として天にいた者はいません。
11 世の統治は将来どうなりますか。
11 エホバ神のメシアとして即位させられたイエスは,悪魔サタンと悪霊を縛った後,千年間統治を行ないます。悪魔サタンは,イエス・キリストおよび栄光を受けるその会衆の千年統治の終わりに機会を与えられるにもかかわらず,二度と地に対する異邦人の支配を打ち建てることはできません。―啓示 20:1-10。
12,13 (イ)どうしてこのメシアによる神の王国が災いであり得ますか。(ロ)この点が真実であることを,使徒が次に幻の中で見た事柄はどのように示していますか。
12 しかし,神のメシアによるこの王国が,災い,つまり「第三の災い」であるというのはどうしてですか。メシアによるこの王国は,地の全家族の祝福のためのものではないのですか。(創世 12:1-3; 22:18)そのとおりです。しかし,王に関する「神の秘義」が終了することは,ある者にとっては災いの原因となり,ある者にとっては神に感謝をささげるいわれとなるのです。世の王国は主なる神とそのメシアつまりキリストの王国となった,また,その時から主なる神がキリストにより限りなく永久に統治される,と天で大きな声による発表がなされるのを聞いた後に,使徒ヨハネはある場景を見ましたが,それはこの点をよく予表していました。啓示 11章16-18節で彼はこう記しています。
13 「すると,神の前で自分の座にすわっている二十四人の長老がひれ伏し,神を崇拝して言った,『いまおられかつておられたかた,全能者なるエホバ神よ,わたしたちはあなたに感謝します。あなたはご自分の偉大な力を執り,王として支配を始められたからです。しかし,諸国民は憤り,あなたご自身の憤りも到来しました。また,死んだ者たちを裁き,預言者なるあなたの奴隷たちと聖なる者たちに,そして,あなたの名を恐れる者たち,小なる者にも大なる者にもその報いを与え,地を破滅させている者たちを破滅に至らせる定めの時が到来しました』」。
14 幻の示すところによると,エホバ神が人類の世の王権を取られたことに対し,だれが感謝をささげていますか。それらの者全員がそうし得るのはどうしてですか。
14 この幻によると,全能の神エホバが全能の力を示し,人類の世の王権を取られたことに対して感謝をささげるのは,神の前の座にすわっていた象徴的な「二十四人の長老」です。彼らはキリストと共に王国を受け継ぐ14万4,000人の相続者を表わしています。エホバ神が1914年,王として支配する権限を取られた時,地上にはその残りの者がいたにすぎません。その大多数の者はまだ死の眠りに就いており,エホバがメシアなる使者を伴って霊的神殿に到来し,次いで自分たちを死人の中から復活させてくださるのを待っていたのです。(マラキ 3:1。テモテ第二 4:1)それら復活を受ける者たちは,全能のエホバ神が大いなる統治の権限を取られたことを天で知らされる時,ひれ伏し,自分たちの神また至高の王としてエホバを崇拝し,次いで,エホバがメシアによる王国である「神の秘義」を終了させ,かつ統治しておられることに対し,感謝せずにはおられません。まだ地上に肉体でとどまっている油そそがれた忠実な残りの者たちは,来たる栄化を前にした今の時にあっても,エホバ神のみ前にひれ伏して崇拝をささげ,キリストにより統治を始められたことに感謝をささげます。
15 他方,世の諸国民は,「神の秘義」のこの終了に対してどのような反応を示しましたか。
15 他方,第七のラッパの吹奏と「神の秘義」の終了は,世の諸国民にとっては災いの最高潮となります。統治される宇宙主権者に感謝の念を抱き,忠誠を示す代わりに,それら諸国民は「憤り」ました。どのようにですか。迫害により自分の憤りを表明する「この事物の体制の神」,つまり悪魔サタンに倣うことによってです。(啓示 12:13,17)それで,異邦諸国民は憤りを抱き,新たに始まった神のメシアによる王国の地的大使に迫害をもたらし始めました。彼らは,1914年の異邦人の時の終わりから1918年の春に至るまで,『聖なる都市を四十二か月のあいだ踏みにじり』ました。(啓示 11:2)神の「ふたりの証人」が「粗布を着て」預言していた「千二百六十日」の間,彼らはこの証人たちを迫害するため,第一次世界大戦という状況を利用したのです。異邦諸国民は,エホバ神の「これらふたりの預言者」を損なおうとしました。それらクリスチャン「預言者」に戦争をいどみ,ついに,ひゆ的に言って彼らを征服し,殺したのです。(啓示 11:5-8)こうして諸国民は,神の王国に対する憤りを表わし始めました。
16 (イ)王国の良いたよりを宣べ伝える業は,今やどんな新しい面を提供することになりましたか。諸国民はそれをどう受け入れますか。(ロ)終了した「神の秘義」は,諸国民の憤りと反対ゆえに,彼らに最悪の災いをもたらします。なぜですか。
16 生き返らされた「ふたりの証人」に対し,諸国民は今日に至るまでなお憤っています。彼らが勇気をもって「王国のこの良いたより」,それも,今や終了した「神の秘義」の良いたよりを宣べ伝え続ける業に,反対や圧力また迫害を加えることにより,諸国民はその憤りを明らかにしているのです。(マタイ 24:14)次いでこれは,エホバ神の憤りを招くことになります。ヘブライ語でハルマゲドン(アーマゲドン,欽定)と呼ばれる場所における「全能者なる神の大いなる日の戦争」で,エホバ神がご自分の憤りを表明する時は,今や間近に到来しようとしています。(啓示 16:14,16)その戦争でメシアなる王としてのイエス・キリストは,「全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶね」の中でそれら諸国民を踏みつけます。(啓示 19:11-16)諸国民にとって,それは最悪の災いとなるでしょう。
裁きを下し,報いを与える時
17 「神の秘義」の終了は,敵の諸国民に対する災いの外に何を招来させましたか。
17 「神の秘義」の終了は,敵である諸国民に対する災いに加え,『死んだ者たちを裁き,預言者なるあなたの奴隷たちと聖なる者たちに,そして,あなたの名を恐れる者たち,小なる者にも大なる者にもその報いを与える定めの時』を招来させました。(啓示 11:18)これは死人の中からの復活を意味します。
18 (イ)イエスの水のバプテスマより死人の中からの復活に至るまで,どれ程の期間が経過しましたか。(ロ)復活されるわずか数日前,イエスは何をしましたか。(ハ)イエスはこの古代の型をどのように,より大いなる意味で成就されましたか。(ニ)『死んだ者たちを裁く定めの時』はいつ来ましたか。イエスはどの死者から裁きを始めましたか。
18 しかしそれはいつのことですか。水のバプテスマを受けてから死人の中より復活させられるまでのイエス・キリストの宣教期間は,西暦29年のティシュリ15日ごろから西暦33年のニサン16日に至る「四十二か月」間,つまり「千二百六十日」でした。これは何も偶然の事柄ではありません。(ダニエル 9:24-27)復活されるわずか六日前のニサン10日,月曜日,イエスはエルサレムの神殿に入り,商売や金もうけをしている者たちを神殿から追い出して清め,神の裁きを執行されました。(マタイ 21:12,13。マルコ 11:11,15-17)同様に,西暦1914年の異邦人の時の終わりから四十二か月つまり千二百六十日後,栄光を受けたイエス・キリストは天の父エホバ神に従って霊的神殿に来られ,裁きの業を開始したのです。(マラキ 3:1-5)その時,『死んだ者たちを裁く定めの時』が来ます。物事の正しい順序によると,『裁きは神の家から始まる』のですから,復活を受ける最初の者は,「聖なる者たち」つまり,「イエスにより死んで眠っている」14万4,000人の王国共同相続者の者たちです。―ペテロ第一 4:17。テサロニケ第一 4:14-16。
19 (イ)報いを与えられる『預言者なる奴隷』とはだれのことでしたか。(ロ)啓示 14章13節で語られている幸いはだれに当てはまりますか。彼らはなぜ「幸い」ですか。
19 西暦1918年に,イエスが神殿に来られた時,彼により死んで眠っていた者たちの多くはクリスチャン預言者でした。ですから,彼らは報いの与えられる「預言者なるあなたの奴隷たち」という表現に含まれています。油そそがれた残りの者である,神の「ふたりの証人」が「粗布を着て」預言したこと,また,彼らが「これらふたりの預言者」と呼ばれたことを思い出してください。(啓示 11:3,10)「イエスにより死んで眠って」いた者たちが,天において,神性を備えた霊の被造物としての命に復活させられた時から,啓示 14章13節に述べられている幸いが,「今からのち主と結ばれて死ぬ」油そそがれた残りの者たちに当てはまります。こうして忠実な死を遂げる油そそがれた残りの者たちは「幸い」です。なぜなら,彼らは一時といえども死の眠りに就く必要がなく,「神の性質」を付与された霊の被造物としての天的命に,即座に復活させられるからです。かつてこれは秘義,つまり「神聖な奥義」でした。―コリント第一 15:50-54。ペテロ第二 1:4。
20 (イ)「第一の復活」はいつ始まりますか。そしていつ終わりますか。(ロ)イエスの復活以前の古代の忠実な「奴隷たち」は,いつよみがえらされますか。それをもってキリストの復活の業は完了しますか。
20 こうして,「神の秘義」が終了した後の定めの時に,メシアなるイエスに追随する14万4,000人の油そそがれた者たちの「第一の復活」が始まります。これは,それら忠実な者たちの最後の者が地上の生涯を人間の死によって終え,即座に霊の天的命によみがえらされるまで完了しません。(コリント第一 15:42-49。啓示 20:4-6)しかし,神がハルマゲドンで勝利を収めた後,そして,悪魔サタンと悪霊たちを縛って底知れぬ深みに閉じ込めた後の神の選ばれた時に,人類の世の復活が始まるのです。その時には,神に献身した「奴隷」で,イエス・キリストの死と復活以前に,神の霊感を受けた預言者として奉仕した者たちが復活してきます。しかし,神のみ子イエスのメシアによる王国の下で,地上における人間の命に復活させられる者は,この人たちだけではありません。イエスは全世界の罪に対するなだめの犠牲として死んでくださったのであり,この犠牲の益にあずかる者たちは,しかるべき時に死から地上の命へとよみがえらされるのです。(ヨハネ第一 2:1,2。ヨハネ 1:29,36。テモテ第一 2:5,6)それには『小なる者も大なる者も』含まれます。
21 地に復活させられる者たちに対する裁きに関し,この世において小なるか大なるかということは決定的な要素となりますか。
21 そのすばらしい復活の時,「あなたの名を恐れる者たち,小なる者にも大なる者にも」報いが与えられます。それら地上で復活を受ける者に,神の裁きが表明されるのです。現在の命における権力,地位,影響力の大小は,その人たちを益するものでも,不利にさせるものでもありません。人が地的パラダイスの住まいにおけるとこしえの命という輝かしい報いに値するのは,その人が神のみ名エホバを恐れるが故です。―啓示 20:11,12。
22 この地をパラダイスにすることに関し,人間は1914年以降何をして来ましたか。しかし神はどんな目的を持っておられますか。
22 特に西暦1914年以来,人類の世が地の住みかを,全地にわたる楽しみのパラダイス,つまりエデンの園とは全く掛け離れた状態に変えてしまっていることは歴然としています。その年以来,堕落した人類はかつてないほど地球を破滅させ,地をますます生存に適しない,危険な場所としています。諸国の商業,政治また軍事に携わっている高官たちは,まるで地球を所有しているかのように行動しています。しかし地球は実際には,人にも団体にも国家群にも属していません。それはエホバ神のものであり,エホバがその創造者です。(啓示 4:11)エホバ神がその正当な支配者なのです。(詩篇 2:1,2,7-10)エホバは完全な人間を創造してこの地に住まわせた時,その完全な男と妻に,地を従わせ,至る所をエデンの園のようにするよう命じました。エホバはその園の中で彼らを創造されたのです。(創世記 1:26-28; 2:7-24)全能の神は依然その最初の目的を変えておられません。しかし1914年以降,利己的で罪深い人類は無法にも,神の目的に逆らう無謀な行動を取って来ています。
23 神が事態を逆転させる時はどのように到来しましたか。神はどのように行動されますか。
23 エホバ神はメシアにより王として支配する大いなる権限を自分のものとされました。そのため,エホバが事態を逆転させる時が到来したのです。ご自分のみ名を恐れる人間のためにパラダイスの住まいを設けるというその不変の目的は,定めの時に必ず成就しなければならず,その時は刻々と近づいています。エホバはどのように行動されるのですか。地を破壊させる者たちに対し,ご自分の憤りを表明することによってです。ご自分の「聖なる者たち」と奴隷,預言者およびみ名を恐れる者すべてに報いを与えるだけでなく,「地を破滅させている者たちを破滅に至らせる」,エホバ神の時が到来したのです。(啓示 11:18)これは後者にとって,とこしえの破滅を意味します。「全能者なる神の大いなる日の戦争」が,それら破滅をもたらしている者たちすべてを地から清めるこの必要な業を成し遂げます。その後,神のみ名を恐れる者すべては,神のメシアによる王国の下で,神と共に働く者となり,人の住む全地をとわに美しさのあせることのないパラダイスとするのです。
全世界で行なわれるラッパのような発表
24,25 (イ)第七の使いがラッパを吹いた後に幻の中で発表された,それらすばらしい事柄を全世界に公表する業はいつ始まりましたか。(ロ)どんな重要な出来事がこの宣布の業の始まりを特徴づけましたか。
24 これはすべて本当に良いたよりです。しかし,鳴り響くラッパによるかのように,それを全世界に知らせる適切な時はいつだったのですか。「第七の使い」がラッパを吹き,大きな声が主なる神は王として権力を取られたとふれ告げるのは,現代のどの時だったのですか。―啓示 11:15。
25 西暦1928年,ふれ告げられた驚くべき事柄そのものではなく,そうした事柄に関する世界的な発表が始まりました。その始まりを顕著にしたのは,聖書研究者たちが年ごとに開く一連の大会の,第七番目の大会でした。この一連の大会では,世界的に重要な決議が採択されたほか,クリスチャンの他の業が成し遂げられました。年ごとに開かれた大会の七番目つまり最後のその大会は,1928年7月30日から8月6日にかけて,アメリカのミシガン州デトロイトで開かれ,8月5日,日曜日の朝,「民のための支配者」と題する公開講演が,国際聖書研究者協会の当時の会長によって行なわれました。会場にいた1万2,000人の聴衆がその講演を聞きましたが,その外にも,当時としては史上空前の規模であった107の放送局を結ぶ放送網を通じ,数え切れない大勢の聴衆が同じ講演を聴きました。この企画のために,5万3,600㌔の電話線と14万6,300㌔の電信線が必要とされたほどです。民のための神の政府に関するこの音信は,遠くオーストラリアやニュージーランドにまで短波放送されました。
26,27 「サタンに反対し,エホバを支持する宣言」の中で述べられている事柄は,第七の使いがラッパを吹き鳴らした時に幻の中でなされた発表(啓示 11:18)とどのように調和していましたか。
26 そのように多くの人びとが各地で聴いたこの講演は,実際には決議を裏付けるために行なわれたもので,その決議は講演の最初,定刻に,それら非常に大勢の聴衆に読み上げられました。「サタンに反対し,エホバを支持する宣言」と題するその決議は,8節から成っており,次のように述べていました。エホバ神は永遠の王であり,全創造物の真の友,また,恵みを施すかたである。サタンが人類に対する邪悪な支配を放棄しないので,エホバ神はご自分の執行官イエス・キリストと共にハルマゲドンの戦争を行ない,サタンの見える組織を滅ぼし,キリストにより地に義を打ち立て,全人類にとこしえの祝福をもたらされる。それゆえ,神の限りない祝福を受けるため,義を愛する者がエホバ神を支持する立場を取り,奉仕をささげる定めの時が来た。
27 裏付けを目的としたこの公開講演の終わりに,聴衆は感動のこもった声で真心から,その決議の採択を表明しました。この決議に関するかなり詳しい報告とその裏付けとなる講演は,後に雑誌「黄金時代」と「ものみの塔」に掲載されました。さらに,決議と講演は数か国語に翻訳され,「民の友」と題する冊子に収められ,数百万部配布されました。
28 「政府」と題する本は,『世の王国がわたしたちの主とそのキリストの王国となった』ことをどのように強調していましたか。
28 この歴史的な出来事の意味と正確に一致するものとして,8月3日,金曜日,このデトロイト大会において,「政府」と題する368ページの本が聴衆に発表されました。わずか14年間のうちに,この聖書研究の助けは19か国語で268万747冊の配布を見ました。当時の重大な時の意味を強調しつつ,最初の章は冒頭でこう述べています。「1914年は人類の事態に転換期を画しました。それ以来,人びとは安定した政府の必要性をかつてないほど意識しています」。「神権政治」という主題を扱った第八章で,同書「政府」は次のように述べています。「その時,どんな形態の政府が地のもろもろの民を治めるでしょうか。それは純然たる神権政府です。幾世紀もの間,全創造物は呻吟しつつ,その政府の現われを待って来ました。(ローマ 8:19)……神はまさに1914年に,み子をご自分の聖なる座に据え,その愛するみ子を通して世の事態に権威を行使され始めたのです」― 242,247,248ページ。
29 今日に至るまでそれはどれ程広く宣布されていますか。
29 当時吹き鳴らされたその音信,つまり,サタンの世界支配にいどむ挑戦的な音信は,今日に至るまで響き渡っており,その音量は増大しています。印刷物を通し,また公開講演により,それは全地に鳴り響いており,何億という人びとがそれを聞いたり,読んだりしています。重大な年であった1914年から30年後に,「王国は近づいた」と題する本が出版され,さらに1963年には,世界各地で開かれた国際大会において,「『大いなるバビロンは倒れた』神の王国は支配す」と題する本が発表されました。これらの書籍や他の王国の文書は,メシアによる神の王国について学ぶ家庭聖書研究で用いるため,少なくとも200の国々,また165の言語で家々に提供されています。しかもその量は増大しているのです。諸国民が憤り,その余り王国の宣布者を迫害するのも無理からぬことです。彼らがそうして憤りをぶちまけたいのであれば,そうさせておけばよいでしょう。神がご自身の怒りを激発させる時は今にも臨もうとしています。そのとき神は,地を破滅させている者たちを永久に破滅させます。その後に,神のご意志は天におけるごとく地においても行なわれるのです。
神は王として支配する
30 わたしたちは人びとを安定させるどんな重大な事実を常に思いに留めておくべきですか。
30 諸国民が不穏かつ騒乱の状態にある現在,わたしたちが決して見逃してならないことが一つあります。それは,わたしたちを安定させる,宇宙的な重要性を帯びた事柄,つまり,全能の神が宇宙主権の座から支配しておられる,という事実です。このことは,第七の使いがラッパを吹いた後のこの時点に,使徒ヨハネが幻の中で見た事柄により明示されました。ヨハネはそれをこう描写しています。「また,天にある神の神殿の聖所が開かれ,神の契約の箱がその神殿の聖所の中に見えた。そして,いなずまと声と雷と地震と大きな雹が生じた」― 啓示 11:19。
31 ヨハネにとって,天の神殿の聖所に「契約の箱」を見るのは,なぜ非常にすばらしい光景でしたか。
31 それはなんとすばらしい光景だったことでしょう。西暦前607年にバビロニア人が地上のエルサレムとその神殿を破壊してからというもの,イスラエルの大祭司が神殿の至聖所の中にエホバ神の「契約の箱」を見ることはありませんでした。(民数記 10:33-36; 14:44。列王上 3:15; 6:19; 8:1-21。歴代下 35:1-3; 36:17-21)その時,契約の箱は消失し,その所在は分からなくなったのです。それは天に移されたのではありません。というのは,それはアカシヤの木と金,つまり物質でできたものであり,天的な実体を象徴するものだったからです。それに反し天それ自体は,それら実体そのものが存在する場所なのです。(ヘブライ 9:1-5,23-26; 10:1)物質でできたその契約の箱が神殿の破壊のさいに消失した時,エホバ神はダビデ王家の油そそがれた王によってイスラエルを統治することを停止しました。ダビデの家系による神の王国は滅びたのです。―エゼキエル 21:24-27。
32 (イ)幕屋に,また後にはソロモンの神殿に置かれた,契約の箱について説明しなさい。(ロ)天の神殿の聖所に神の契約の箱が現われたことは何を意味しますか。その理由は。
32 二つの黄金のケルブを載せた,その箱の覆いは,適切にも王なるエホバ神の王座を表わし示していました。エホバ神はそこから預言者モーセに話されたのです。(民数記 7:89)イスラエルの大祭司はその前で,贖罪の日の犠牲の血をふりかけました。するとエホバ神は,契約の箱の覆いの上方にある雲の中に現われました。(レビ記 16:1-3,14,15)神殿の聖所における至聖所の四つの側面には,ケルブの像の装飾が施してありました。(出エジプト 26:1,31-33; 36:8,35。列王上 6:23-35)それら描画的な事柄と一致して,エホバ神はケルブの上に座している,と言われています。(詩篇 80:1; 99:1。イザヤ 37:16)これは,天のみ座にすわっておられるエホバ神に関して使徒ヨハネが得た幻に合致します。(啓示 4:6-8)古代の契約の箱の黄金のふたには,このように王に関係した意味がありました。したがって,第七の使いがラッパを吹き鳴らした後に天の神殿に神の契約の箱が現われたことは,エホバ神がメシアつまり油そそがれた者により,再び統治しておられることを意味していたのです。
33 ヨハネの視界に映った神の神殿の聖所は何でしたか。
33 ヨハネの視界に映った神の神殿の聖所の中には契約の箱が見えましたが,その神殿は,主要な隅石としてのイエス・キリストの上に建てられた,14万4,000の生ける石から成る霊的神殿ではありませんでした。(ペテロ第一 2:5-9。エフェソス 2:20-22)そうではなく,それはエホバ神が建てられた神殿の聖所です。そして大祭司イエス・キリストは,西暦33年のペンテコステにご自分のクリスチャン会衆を設立する以前に,そこに入られました。(ヘブライ 8:2; 9:11-14)それは,エホバが公式の立場にあるケルブたちに囲まれてみ座に着かれる,天の天における絶対神聖な場所なのです。
34 (イ)文字どおりの黄金の契約の箱が消失した時から,それが天の神殿に見られたことによって表わし示されている時まで,どれ程の期間が経過しましたか。(ロ)異邦人の時のこの年代に関する預言は,天の声の発表および神の秘義の終了とどのように壮大に結び付いていましたか。
34 イスラエル王国に対する神の統治が終わったしるしとして契約の箱が消えうせてから2,520年後,つまり西暦1914年に,異邦人の時の終わりが到来しました。その時,対型的な「契約の箱」が,天にある開かれた神の神殿の聖所に出されたのです。こうして神は,メシアなる祭司かつ王であるイエス・キリストによりご自分が再び統治していることを示されました。これは,第七の使いがラッパを吹き鳴らした後に大きな声が述べていることと,壮大な一致を見せています。「世の王国はわたしたちの主とそのキリストの王国となった」。(啓示 11:15)神の秘義は実際に終了したのです。
35 幻の中で見られた,人を畏怖させる事柄は,忠実な油そそがれた残りの者たちを通して成就しましたが,そうした事柄は何にのみ帰すことができますか。
35 ヨハネの幻において,神が天の神殿で統治しておられる証拠は,人間の力をしのぐ,いなずま,超人間的な声,雷,地震,また激しい雹の大降りなどが,畏怖の念を起こさせるような仕方で示されることにより明らかにされました。西暦1914年以来,そうした地的現象によって象徴される事柄が,エホバの見える組織,つまり,油そそがれた忠実な残りの者たちの働きを通して生じたのです。それら油そそがれたクリスチャンによって成し遂げられたこの驚異的な事柄は,神の驚くべき力をもってしか説明が付きません。壮観なこれらの事柄すべては,エホバが天のみ座から統治しておられることを立証するものなのです。