第22章
「神の秘義」に対する地上の敵
1,2 (イ)「神の秘義」がエデンの園で紹介されて以来,悪魔サタンはどんな立場を取って来ましたか。(ロ)それは,「神の秘義」が終了し,他の者たちに明らかにされるのを阻止しようとした支配分子をどこに置きますか。(ハ)ヨハネは幻の中で次に何を見ましたか。
悪魔サタンは,「神の秘義」つまり,栄光を受けたイエス・キリストの管理する,神のメシアによる王国に対する大敵です。エデンの園で神の預言的な通告が彼に与えられ,それが創世記 3章15節に記録されて以来,「初めからのへび」は,この「神の秘義」が終了し,天と地のすべての者の注視する前で完全に明らかにされるのを阻止しようと試みてきました。そうであれば,この「神の秘義」の敵である地上の支配分子たちが,象徴的な「大いなる龍」,「初めからのへび」の側に付いていることに議論の余地はありません。彼らが,メシアに関する秘義の神からではなく,悪魔サタンから出ていることは間違いありません。使徒ヨハネは,「大いなる龍」と使いの悪霊たちが天から地へ放逐され,地上にいる,神の油そそがれた残りの者,つまり,神の「女」の胤のうちの「残っている者たち」に戦いをいどみに行くところを見ましたが,彼がその次に目にした幻の明白な意味は,実はそのことだったのです。ヨハネはこう述べています。
2 「そして龍は海の砂の上に立ち止まった。また,わたしは一匹の野獣が海から上って行くのを見た。十本の角と七つの頭があり,その角の上には十の王冠があったが,その頭には冒とく的な名があった。さて,わたしの見た野獣はひょうに似ていたが,その足はくまの足のようであり,その口はししの口のようであった。そして,龍は自分の力と座と大きな権威をその野獣に与えた」― 啓示 13:1,2。
3,4 (イ)ヨハネが見た象徴的な「野獣」は,1914年に存在するようになりましたか。(ロ)「野獣」がこの時点で幻の中に持ち出されたのはなぜですか。(ハ)象徴的な「海」は何ですか。
3 海の砂の上に立ち止まった龍は,その象徴的な龍自身と使いの悪霊たちが天から投げ出された後に初めて,野獣が海から上って行くのを見たのではありません。この象徴的な「野獣」は,実際には,1914年の天における神のメシア王国の誕生,およびその後に生じた,龍と使いの悪霊たちの地への放逐より,はるか以前から存在し,獣的性質を発揮していました。龍は海の砂の上に立ち止まり,見える地的組織が自分の代理また手先としてどのように機能を果たし,また作用するかを見ていると描写されています。これは,龍が今この地球の近辺にいることから,当を得ていると言えます。海は言うまでもなく象徴であり,人類の非常に大きな部分(「もろもろの民と群衆と国民」)を表わしています。この部分は,神の主権に逆らい,神から遠ざけられており,自分の好む政治形態を生み出します。(啓示 17:15)これと一致して,神の預言者はイザヤ書 57章20,21節で次のように述べています。
4 「悪者はなみだつ海のごとし 静かなること能はずしてその水つねに濁と泥とをいだせり わが神いひたまはく悪き者には平安あることなしと」。
5 どの聖句は,「底知れぬ深みから上る野獣」と「海から」上って行く「野獣」とが同じものであることを明らかにしていますか。
5 自然の海には,そこいも知れぬ深さがあります。(創世 1:2; 7:11; 8:2。申命 8:7; 33:13,LXX)それで,『底知れぬ深みから上り』,神の「ふたりの預言者」を殺す「野獣」は,「海から上って行くのを」龍が見た「野獣」と同じです。(啓示 11:7)「龍」の,目に見えない影響力の下に,この象徴的な野獣は動揺する人類の「海」から出て来ます。それは神の平安を得ておらず,メシアによる王国に望みを置いてもいません。この「野獣」が海から出て来たことは,西暦前6世紀における預言者ダニエルの夜の幻の一つを思い起こさせます。彼はその幻の中で,風に揺れ動く海の中から「四箇の大なる獣」が出て来るのを見ました。神の使いの説明によると,その四つの獣は相次いで生じる四つの政治的世界強国を象徴しており,第一の獣はしし,第二の獣はくま,第三の獣はひょうのようでした。(ダニエル 7:1-26)それと同様に,海から上って来るのを龍が見る野獣も,人間の政治組織を象徴しています。
6 この野獣がひょうに似ており,さらに,くまの足とししの口を備えていることは,その始まりの時に関して何を示唆していますか。
6 この海の獣は,ひょうに似ていることから,ダニエルの見た第三の獣,つまり,ギリシャ(マケドニア)世界強国を表わす獣に幾分似ていました。その足がくまの足に似ている点で,ダニエルの見た第二の獣,つまり,メディア-ペルシャ世界強国を表わす獣の特徴を備えていました。また,口がししの口のようであったことは,ダニエルの幻の中の第一の獣,つまり,バビロニア世界強国を表わす獣の特徴を持っていたことになります。このことは,この象徴的な「野獣」が,西暦前7世紀ないし6世紀つまり,ししのようなバビロニア帝国の時代にすでに存在していたか,あるいは形成途上にあったことを示唆しています。
7 「野獣」は実際にはどれほど昔から存在していましたか。
7 しかし,「野獣」は七つの頭を持っており,これは,その「野獣」がバビロニア世界帝国以前に存在していたか,または形成途上にあったことを示しています。といっても,どれほど以前のことですか。それは,聖書歴史の中でエホバの選ばれた民と関係を持った最初の世界強国の時代です。それはエジプト世界強国であり,西暦前8世紀以前,さらには,エジプトの首相であったヘブライ人ヨセフの死後(西暦前1657年),つまり西暦前17世紀の昔にさかのぼります。ですから,これは古代エジプトから英米世界強国に至る七つの世界強国より成る複合的な野獣,複合的な政治組織です。
8 (イ)海の獣の七つの頭に対応するものはどこに見いだされますか。それは何を暗示していますか。(ロ)海の獣は何を表わしていますか。
8 この海の獣の七つの頭は,龍の七つの頭に対応し,龍の七つの頭を反映しています。(啓示 12:3)この相応関係は,「大いなる龍」である悪魔サタンが,相次いで起こる七つの世界強国の上に目に見えない頭の権を行使し,それら強国の上に,『ペルシャの君』,「ギリシャの君」といった,目に見えない悪霊の君を任命してきたことを暗示しています。(ダニエル 10:13,20)この海の獣の実体を調べて行くにつれ,それが,ノアの時代の洪水後二世紀に始まり,今日まで存続している,全世界にまたがる悪魔サタンの政治組織全体を表わしていることがいよいよはっきりしてきます。
9 海から出て来た象徴的な「野獣」の始まりを描写しなさい。
9 海から出て来た象徴的な「野獣」は,実際には,族長ノアの曾孫であるニムロデの時代,そして洪水後ノアがまだ生きていた間に動きを開始しました。創世記 10章8-12節〔新〕はこの点を次のように描写しています。「クシ,ニムロデを生り彼始めて世の権力ある者となれり 彼はエホバ〔に逆らう〕権力ある猟人なりき是故にエホバ〔に逆らう〕夫権力ある猟人ニムロデの如しといふ諺あり 彼の国の起初はシナルの地のバベル[バビロン],エレク,アツカデ,及びカルネなりき 其地より彼アツスリヤに出でニネベ,レホポテイリ,カラ およびニネベとカラの間なるレセンを建たり是は大なる城邑なり」。
10 海の獣にその力を与えたのはだれですか。その目的は何ですか。
10 これらの事柄から明らかなように,海から出て来た野獣に「自分の力と座と大きな権威」を与えたのは,「龍」すなわち悪魔サタンであり,エホバ神ではありません。(啓示 13:2)野獣はその力,座そして大きな権威を,エホバ神に敵し,また,「神の秘義」を終了させようとするそのご意志に終始逆らって用いてきました。
11 (イ)「野獣」の角の数が頭の数より多いことに関し,どんな説明が可能ですか。(ロ)角は何を表わしますか。力と権威に関し,獣とイエス・キリストはどのように比較されますか。
11 それは頭の数よりも多い角を持っています。したがってある頭には,メディア-ペルシャ,東西両帝国から成るローマ帝国,また英米世界強国などの二重世界強国を表わす,二つの角があったのかもしれません。「角」は「王」また支配的要素を示しました。各の角の上に「王冠」があることは,その点を強調しています。「龍」の場合には,七つの頭の各に王冠がありましたが,現在統治しておられるイエス・キリストに関しては,「頭には多くの王冠がある」と書かれており,その数が七つか十か,あるいはそれ以上なのかは述べられていません。それら「多くの王冠」は,彼が「王の王また主の主」であるしるしです。(啓示 19:12,16; 17:12-14。ダニエル 8:20-22)それゆえ,海から出て来る野獣の持つ,王としての十の「角」は,ハルマゲドンにおける神の戦争のさい,王なる王に抵抗することができず,王権と権威をはく奪され,王座を失います。王冠を着けた十の角が七つの頭の上にあるということは,海から上って来た野獣が,西暦前23世紀のニムロデの時代から今日に至る,地上全世界に及ぶサタンの年経た政治組織を表わすという論議を強めるものです。
12,13 「野獣」は『その頭に冒とく的な名』を持っていました。どのように。
12 この政治的「野獣」の,悪魔的性質は,『その頭に冒とく的な名』があるという点にさらに示されています。(啓示 13:1)「冒とく的」という語を用いた使徒ヨハネは,ギリシャ語の「冒とく」という語が,「評判(あるいは,信用)を傷つける(爆破させる)」,打つために「言葉またはうわさを投げつける」という考えを伝える語根から出ていることを知っていたと思われます。
13 それで,「冒とくする」とは,「神ご自身に関し,あるいは,神とある特有の関係にあるものに関し,不敬な態度で話す」という意味を持つようになりました。(パーカーストの「新約聖書希英辞典」,97ページ)例えば,エジプト世界強国のファラオは自分を神と同格に置きましたが,エホバ神に対する彼らの態度は,預言者モーセに対する次の侮べつ的なファラオの返答に公然と示されています。「エホバは誰なればか我その声にしたがひてイスラエルを去しむべき我エホバを識ず亦イスラエルを去しめじ」。(出エジプト 5:2)こうしてエホバの真の民を扱う点で,七つの頭のような,サタンの政治組織の世界強国すべては,真の神を冒とくしたのです。彼らは「冒とく的な名」を自分のものとしました。
「致命的な打ち傷」がいえる
14 野獣の命はどのように,また,何によって脅威にさらされましたか。
14 海から出て来た「野獣」の命は,現代二十世紀において,脅威にさらされたように見えます。使徒ヨハネはそのことが預言的に幻の中で描かれるのを見,こう記しました。「そしてわたしは,その頭の一つがほふられて死んだようになっているのを見た。しかし,その致命的な打ち傷はいえた。それで,全地は感服してその野獣に従った」。(啓示 13:3)この死の打ち傷,または死に至る打ち傷は,戦争の剣によるものであり,象徴的な「頭」はそのために,まるで「ほふられて死んだように」見えました。―啓示 13:14。
15 この「致命的な打ち傷」は,一つの世界強国が他の世界強国を覆すことでしたか。説明しなさい。
15 一つの世界強国が次の世界強国によって覆される,それが野獣の頭に「致命的な打ち傷」を与えることになぞらえられているのではありません。さもなければ,頭は最終的には七回ほふられて死ぬことになります。しかし幻によると,七つの頭のうち一つだけが,「ほふられて死んだように」傷を負っていました。エジプト世界強国がアッシリア世界強国によって覆されたからといって,その『海から出て来た獣』全体の存在が危険にさらされたわけではありません。バビロンによるアッシリアの滅亡,メディア-ペルシャによるバビロンの滅亡,ギリシャ(マケドニア)によるメディア-ペルシャの滅亡,ローマによるギリシャの滅亡,大英帝国によるローマの滅亡,そのいずれについても同じことがいえます。それら六回の滅亡によって「致命的な打ち傷」が生じたのではありません。
16 「致命的な打ち傷」は一体何を表わしていますか。
16 啓示のその後の個所,つまり13章14節で,この打ち傷は「剣の一撃」と呼ばれています。であれば,この「致命的な打ち傷」は西暦1914-1918年の第一次世界大戦を表わしており,それは,第七の「頭」(英米世界強国)が,第六の「頭」すなわち,ローマ世界強国(東西の両ローマ帝国)に負わせたものです。
17,18 (イ)大英国はいつ「世界最強の商業及び植民帝国」になりましたか。(ロ)第六世界強国が傷を受け,「ほふられて死んだように」見えた様子を描写しなさい。(ハ)その「致命的な打ち傷」はどのように「野獣」の命に脅威を与えましたか。
17 スペイン,オランダ,フランス(いずれもローマ帝国の残存勢力)との二世紀にわたる抗争を経て,西暦1763年,大英国(アメリカの十三の植民地を含む)は「世界最強の商業及び植民帝国」として台頭してきました。こうして大英国は,ローマ帝国の残存部分から世界支配を奪い取り,聖書に預言されていた第七世界強国となりました。a しかし,大英帝国は1914年にドイツ帝国,オーストリア-ハンガリー帝国,トルコ帝国と,そして1915年にはブルガリアと戦闘を交えました。この第一次世界大戦は,1917年に参戦した北アメリカの合衆国をも含め,28の国や帝国を巻き込みました。それは,ドイツ国家の神聖ローマ帝国残存勢力に深刻な敗北をもたらしました。それらは領域および植民地を失い,自国の領土さえ割譲しなければなりませんでした。
18 トルコ帝国は,かつては第六世界強国つまりローマ帝国の一部であったパレスチナを,エルサレムをも含めて失いました。その世界強国のドイツまたはチュートン残存勢力は,世界に引き続き挑戦的な影響を与えることに関しては,「ほふられて死んだように」見えたのです。海から出て来た「野獣」全体の命そのものが危険にさらされているかに見えました。第一次世界大戦の惨禍は著しく,全地球を覆うこの規模の大戦がもう一度起きれば,人類世界がそれに耐えることは不可能であろうと一般に考えられたほどです。
19 「野獣」の「致命的な打ち傷」はどのようにいえましたか。
19 しかしながら,全世界に及ぶ悪魔サタンの政治組織,すなわち象徴的なその海の獣は,第一次世界大戦の影響を生き延びました。主にドイツによって表わされているその第六の頭は,非常に順調な回復を遂げ,1926年9月8日,ドイツ共和国は国際連盟に加盟を認められました。その後,1933年にナチスの総統アドルフ・ヒトラーの独裁制が樹立されるに及び,ドイツは国際連盟を公然と無視し,第三ドイツ・ライヒ(帝国)の建設に取り掛かりました。ヒトラーに率いられたドイツは,1939年9月,意図的に第二次世界大戦を挑発しました。第六の頭が回復したことから事態を判断するなら,「致命的な打ち傷」は疑問の余地なくいえたのです。
20 どのように『全地は感服してその野獣に従いました』か。
20 こうしたことすべては,神の建てられたメシアによる王国,つまり終了した「神の秘義」に対する切なる願いを,人類の世に生み出しましたか。または,その願いを高めたでしょうか。啓示 13章3節は次のように預言的に述べ,正確な答えを提出しています。「それで,全地は感服してその野獣に従った」。(新)「全世界は,驚異の念をもって感服し,その獣のあとについて行った」。(新英)これは人類の世が,全世界に及ぶ悪魔の政治組織の持つ,回復し,いえる能力に対する自信を新たにしたことを意味しています。彼らは,七つの異邦人の時すなわち,その象徴的な「野獣」が神のメシアによる王国の干渉を受けずに世界を支配する期間が,西暦1914年に終了したことを真剣に考慮しませんでした。マタイ 24章14節でイエス・キリストが予告された,「王国のこの良いたより」が宣べ伝えられたにもかかわらず,戦後の人類の世は,神のメシアによる王国を賞賛し,それを「第一に」求めるようにはなりませんでした。(マタイ 6:33)国家主義の精神がかつてないほど国家群を支配し,諸国家は感服して独自の政府に従ったのです。この事態が1939-1945年の第二次世界大戦へと発展するのは避けられないことでした。
21 幻によると,人類はそうすることによりどのように悪霊崇拝に携わりましたか。
21 人類の世は,キリスト教世界の人びとをも含め,象徴的な「野獣」に驚異の念を抱き,それに感服して従って行くことが,悪霊崇拝と同じであることを信じようとはしませんでした。国際聖書研究者協会および,ものみの塔聖書冊子協会の出版物からこの点を指摘されると,彼らは憤りました。しかしこの点に関する使徒ヨハネの言葉遣いに,少しもあいまいな所はありません。地上の人間について彼はさらに次のように述べています。「そして彼らは,野獣に権威を与えたことで龍を崇拝し,また,『だれがこの野獣に等しいだろうか。いったいだれがこれと戦いうるだろうか』と言って野獣を崇拝した」― 啓示 13:4。
22 人びとはミカエルの名の意味に反するどんな質問を提起しましたか。また,異邦人の時の満了についてどう感じましたか。
22 こうした問いは,全能者なる神とそのキリストに対する直接の挑戦でした。異邦人の時が西暦1914年に終了したからといって,それがどうしたというのだ。その時エホバ神は,政治的な「野獣」を全地を支配する地位から追い払わなかったではないか,と人びとは感じました。「野獣」は自分の立場を強化しようと努め,権力の座を永続させるために戦う決意をしたのです。この野獣と「戦いうる」かたは,神のみ使いの頭ミカエルであり,その名は「神のごとき者はだれか」という意味です。しかし,地の人びとは,「だれがこの野獣に等しいだろうか」という,反対の問いを提起したのです。彼らはこの問いにより,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」を懇願していたことになります。
「野獣」の活動
23 「野獣」の崇拝が,「龍」すなわち悪魔サタンの崇拝をも意味することを聖句から証明しなさい。
23 今では天のみ使いの頭ミカエルとなっておられるイエス・キリストは,人間として地上にいた時,悪魔サタンがこの世の支配者であると言われました。(ヨハネ 12:31; 14:30; 16:11)当然のことながら,象徴的な「龍」であるこの支配者が,「権威をその野獣に与えた」者です。使徒パウロは彼を「この事物の体制の神」と呼びました。(コリント第二 4:4)つまり,彼は象徴的な「野獣」の「神」なのです。ということは,「野獣」の崇拝は必然的に,その「神」である象徴的な「龍」,すなわち悪魔サタンの崇拝をも意味します。「野獣」は悪魔崇拝を推し進めており,まことの神,全能者なるエホバの崇拝に反対します。それで,ヨハネは「野獣」についてこう述べているのです。
24 ヨハネは「野獣」がまことの神エホバの崇拝に反対していることを続けてどのように示していますか。
24 「そして,大いなることや冒とく的なことを語る口がそれに与えられ,また,四十二か月のあいだ行動する権威が与えられた。そして,それは口を開いて神を冒とくした。そのみ名と住まい,さらには天に住む者たちを冒とくするためであった。そして,聖なる者たちと戦って彼らを征服することが許され,あらゆる部族と民と国語と国民に対する権威がそれに与えられた。そして,地に住む者はみなそれを崇拝するであろう。ほふられた子羊の命の巻き物には,彼らのうちのだれの名も,世の基が置かれて以来書かれていない」― 啓示 13:5-8。
25,26 (イ)「野獣」は七つの口を持っているのに,「大いなることや冒とく的なことを語る[一つの]口がそれに与えられ」たと述べています。それはどういう意味ですか。(ロ)「野獣」の口に指図を与えたのはだれですか。冒とく的な発言はいつ増大しましたか。
25 海の底知れぬ深みから上って来た「野獣」は,七つの頭を持っています。つまり,七つの口を持っているわけです。しかし,「大いなることや冒とく的なことを語る[一つの]口がそれに与えられ」たと述べられています。これは,大いなることや冒とく的なことを口にする機会がそれに与えられ,七つの頭すべてが合体してそうした事柄を話す,つまり,一つの口によってであるかのようにそうする,という意味です。
26 この「野獣」に力と座と権威を与えた「龍」,つまり悪魔サタンは,言うまでもなく,「大いなること」すなわち,世界支配に関しエホバ神を無視した騒々しい高言や,偉そうな主張を述べるよう野獣を唆します。龍は,宇宙の主権者であるまことの神に対し,「冒とく的なこと」を語るようこの政治的な「野獣」を動かすのです。これは,獣の頭から出てきた小さい角つまり,「大なる事を言ふ口」を持ち,「至高者に敵して言」を述べるあの小さい角に関する,ダニエル書 7章8,11,20,24,25節の預言の成就が実現を見る時,特に真実となります。野獣がふさわしくない方法で「口」を用いる事態は,神のみ子イエス・キリストが地上に来て,キリスト教を創始された後に一層悪化します。
27,28 (イ)「野獣」に権威の与えられた四十二か月,また,聖なる都市が踏みにじられた期間が何か明らかにしなさい。(ロ)したがって,聖書に述べられているどんな三つの期間は同一の期間ですか。それらはいつ始まり,いつ終わりますか。
27 この「野獣」の生涯と活動において注目すべき期間は,次の言葉によって明らかにされています。「また,四十二か月のあいだ行動する権威が与えられた」。(啓示 13:5)これは,『聖なる都市を踏みにじる』ため異邦諸国民に与えられた,と述べられている期間と同じ長さです。事実それは同じ期間を指しています。なぜなら,その同じ期間に,神の「ふたりの証人」は「粗布を着て千二百六十日のあいだ」預言するからです。(啓示 11:2,3)また,ダニエル書 7章25節〔新〕の獣の小さな角に関する個所は,「至高者の〔聖なる者たち〕」が「一時と二時と半時を経るまで彼の手に付され」ることになっていたと述べています。ダニエル書 12章7節〔新〕によると,その獣の小さい「角」が『聖民の〔力〕を砕くこと』に成功するのは,これが最後になるはずでした。
28 この「四十二か月」,「千二百六十日」また「一時と二時と半時」は,すべて同じ期間すなわち,1914年のティシュリ15日から1918年のニサン14日までb,つまり1914年10月4/5日から1918年3月26/27日までの期間を指します。
29 海から出て来た「野獣」の冒とく的な発言の一例を挙げなさい。また,それが古代および現代,どのように行動に移されたかを示しなさい。
29 海から出て来た「野獣」が,「そのみ名と住まい,さらには天に住む者たちを冒とくするため」,「口を開いて神を冒とくした」一例として,古代バビロン王の次の言葉は大胆極まりないものです。「われ天にのぼり我くらいを神の星のうへにあげ 北の極なる集会の山にざし たかき雲漢にのぼり至上者のごとくなるべし」。(イザヤ 14:3,4,13,14)バビロンの王は西暦前607年,山の上にあるエルサレムを滅ぼし,その神殿つまり神聖な集会の場所を略奪し,破壊した時,ひゆ的な仕方でその言葉を実現させました。バビロンの王が象徴した霊の被造物すなわち悪魔サタンは,西暦1918年にこの冒とくの行為を繰り返しました。その年,彼は至高の神エホバの聖なる者たちの行なう証しの業をやめさせるため,彼らの力を地に砕き始めたのです。―ダニエル 12:7。
30 「野獣」はだれに敵対してきましたか。特にだれに矛先を向けましたか。
30 政治的「野獣」は洪水後の存在当初から,エホバ神に恵みを示された者たち,そして,象徴的なへびとその邪悪な胤を砕く,神の『女』の胤の到来を待ち望み,それに備えてきた者たちに敵対しています。(創世 3:15)しかしこの「野獣」は,エホバの「聖なる者たち」つまり,神の「女」の胤と実際に結び付いている,イエス・キリストの油そそがれた残りの者たちに対し,特別な敵意を抱いています。
31 (イ)「聖なる者たち」が「上にある権威に服し」ているにもかかわらず,「野獣」はなおも彼らを憎みます。なぜですか。(ロ)神はなぜ「野獣」が「聖なる者たち」に戦いをいどむことを許されましたか。それは特にいつから激しさを加えましたか。
31 「野獣」は,彼らが「野獣」を代表する「上にある権威に服しなさい」との神の命令に従うことだけでは満足しません。(ローマ 13:1)その「聖なる者たち」が神のメシアによる王国の「大使」であり,王国を至る所で宣べ伝えるゆえに,象徴的な「野獣」は彼らを憎むのです。(コリント第二 5:20)彼らを試し,神のメシアによる王国に対するその破れることのない忠節を実証させるため,エホバ神は「野獣」がその「聖なる者たち」に対し戦争を,しかも苛烈な戦争をいどむことを許されました。これは,異邦人の時が終了した1914年以来,特に真実となっています。イエス・キリストご自身に対する場合と同じく,「野獣」は神の許しがない限り,彼らに対して何をすることもできません。―ヨハネ 19:11。
32 第一次世界大戦はなぜ,「野獣」にこの戦争を行なう機会を提供しましたか。それはどの程度成功しましたか。
32 したがって,使徒ヨハネが「野獣」に関して記した次の言葉は正確なものだったのです。「そして,聖なる者たちと戦って彼らを征服することが許され,あらゆる部族と民と国語と国民に対する権威がそれに与えられた」。(啓示 13:7)「野獣」にとって第一次世界大戦は,神の聖なる者たちにこの戦いをいどむ絶好の機会となりました。「野獣」は,戦争行為と軍事的勝利を妨害する扇動者たちに対して戦う,という名目の下に攻撃を加えました。1918年,第一次世界大戦の終結前に,「野獣」は神の聖なる者たちを獣的な仕方で征服しましたが,それは短期間しか続きませんでした。神の「ふたりの証人」,つまり「粗布を着て」預言した「ふたりの預言者」は,いわば,わずか「三日半」,死んだ状態でほうって置かれ,恥辱にさらされたにすぎません。驚くべきことに,1919年,エホバ神はご自分の象徴的な「ふたりの証人」をよみがえらせ,まるで天に上って行くかのように彼らを王国の奉仕に高められました。―啓示 11:11,12。
33,34 (イ)人類の他の者たちは,「野獣」の足下にあって,どんな状態に置かれましたか。(ロ)すべての人はどんな選択をしなければなりませんか。それはどんな結果を招来しますか。
33 しかし,「野獣」の足下に置かれた残りの人類の状態はどうでしたか。「野獣」は彼らの上に世界的な支配権を振るいました。「あらゆる部族と民と国語と国民に対する権威がそれに与えられた」のです。それはどんな結果になりましたか。
34 この「野獣」は,政治に関心のある愛国主義的な人びとに崇拝を要求し,現にその崇拝を得ています。「そして,地に住む者はみなそれを崇拝するであろう。ほふられた子羊の命の巻き物には,彼らのうちのだれの名も,世の基が置かれて以来書かれていない」。(啓示 13:8)「地に住む者はみな」,「野獣」か,ほふられた「神の子羊」かのどちらかを選ばねばなりません。その象徴的な「子羊」すなわちイエス・キリストは,西暦33年,神のメシアによる王国ゆえに「ほふられ」ました。また,「世の罪を取り去る,神の子羊」,つまり犠牲として「ほふられ」ました。(ヨハネ 1:29,36)彼を支持しない者たちは,彼に,また彼による救いに敵対しているのです。したがって,彼を支持しない地の住民は,必然的に政治的「野獣」を「崇拝する」ことになります。そうした崇拝者の名が,神のメシアによる王国内でのとこしえの命に値する者として,『子羊の命の巻き物に書かれる』ことなど,どうしてあり得るでしょうか。アダムとエバの時代に人類の世の基が置かれた時以来,神の「子羊」に敵する者たちの名がその「命の巻き物」に書き込まれることはありません。―創世記 3:15。啓示 21:27。
忍耐と信仰の必要性
35 幻は次に,神のしもべたちが厳しく試されることをどのように示していますか。
35 国家の崇拝は全世界に広がろうとしていました。また,エホバ神の定められた目的により,この政治的「野獣」はこれほどにまで世界に支配権を行使することを許されていました。ですから,神の「聖なる者たち」は当然厳しく試されるはずです。それゆえ,啓示 13章9,10節は,「野獣」の冒とく的で,神を公然と無視した行動を,続けてこう適切に表現しています。「耳のある者がいるなら,聞きなさい。捕われの身となるはずの者がいるなら,その者は捕われの身となる。剣で殺す者がいるなら,その者は剣で殺されなければならない。ここが聖なる者たちの忍耐と信仰を意味するところである」。c
36,37 「捕われの身となるはずの者がいるなら,その者は捕われの身となる。剣で殺す者がいるなら,その者は剣で殺されなければならない」,という宣言は何を意味していますか。
36 したがって,第一次世界大戦の苦難のなかにあって,政治的「野獣」がエホバの油そそがれた証人の残りの者を捕らえ,その文書を禁書処分に付し,公の集会所で崇拝する自由を認めず,彼らを刑務所や軍の収容所に投獄した時,残りの者がそれに服し,忍耐するのは容易ならぬことでした。自分たちの崇拝する全能の神が許すそうした事態の下で,献身したクリスチャンとしての彼らが,「上にある権威」(象徴的な「野獣」)の手により「捕われの身」になろうと,それに対し武力をもって抵抗するのは正しいことではありませんでした。彼らは聴く耳をもって次の警告に注意を払う必要があったのです。「剣で殺す者がいるなら,その者は剣で殺されなければならない」。
37 これは,第一次世界大戦で一方の側に付いて,人を殺すような行為には直接間接を問わず荷担しない,という意味だけにとどまりません。むしろ,軍国化した「野獣」により,いや応なく「捕われの身」にされようとも,刀剣を取りあげ,武力をもって激しく反抗するようなことはしない,という意味です。イエスはゲッセマネの庭で,クリスチャンにふさわしくないそうした行動を戒めました。(マタイ 26:52)それに従い,神の「聖なる者たち」は,平和を愛し,法律を守る者であることを実証しました。
38 この事態は「聖なる者たちの忍耐と信仰」をどのように要求しましたか。
38 第一次世界大戦のさなかにあって,また,その後の同様な事態の下で,「聖なる者たちの忍耐と信仰」が要求されました。彼らがこのように事前の警告を受けたのは良いことでした。もちろん,防衛と保護の目的で適切な法令に訴える処置を取りはしましたが,それ以外の場合,油そそがれた「聖なる者たち」は模範者イエス・キリストに倣い,抵抗することなく自分を引き渡しました。それゆえ「野獣」にとって,剣による武力抵抗を試みたという理由で彼らを国家の剣によって殺す正当な根拠は存在しませんでした。全能の神が許されたことを受け入れた彼らは,「捕われの身」に耐える一方,神がご自分の方法により,ご自分の時にしたがってこの「捕われの身」から釈放してくださるとの強い「信仰」を保ち続けたのです。その「忍耐と信仰」は西暦1919年,なんと豊かに報われたのでしょう。それにより彼らは,それ以後今日まで続く試みに耐えられるよう強められました。
第二の「野獣」― 地から出る
39 (イ)「野獣」の第七の頭がヨハネの時代,一種の秘義であったのはどうしてですか。(ロ)この第七の世界強国が,別個の身分と存在をも持つものとして描かれているのはなぜですか。
39 海から出て来た政治的「野獣」は,第六の頭(ローマ世界強国)を使って老齢の使徒ヨハネを「捕われの身」とし,彼をパトモス島に拘禁しました。彼はそこで,「イエスとともになって患難と王国と忍耐」を仲間のクリスチャンたちと分け合ったのです。(啓示 1:9)当時,「野獣」の第七の「頭」は一種の秘義でした。というのは,間接的に,啓示 17章9,10節はそれに関しヨハネにこう述べているからです。「他のひとりはまだ到来していない。しかし到来したなら,少しの間とどまらなければならない」。したがってこの第七の「頭」は,象徴的な「野獣」の頭の中で,より現代に近い政治的世界強国であると考えられます。この第七の世界強国は,政治的預言者,また政治国家の崇拝を促進させる者としての役割を果たします。それゆえ,それは第七の頭として「野獣」に属していながら同時に,別個の身分また存在を持つものとして描かれているのです。ヨハネは啓示 13章11-13節でその姿について次のように述べています。
40 第七の世界強国は,獣の頭であることに加え,他のどんなものとして幻の中で描かれていますか。
40 「また,わたしは別の野獣が地から上って行くのを見た。それには子羊のような二本の角があったが,龍のごとくに話しはじめた。そして,第一の野獣のすべての権威をその前で行使する。また,地とそこに住む者たちに,致命的な打ち傷のいえた第一の野獣を崇拝させる。また,大いなるしるしを行なって,人類の前で火を天から地に下らせることさえする」。
41 (イ)第二の野獣はなぜ第八世界強国ではありませんか。(ロ)それが「子羊のような二本の角」を持っていることは何を表わしていますか。
41 この第二の野獣が第八世界強国であるはずはありません。なぜなら,全世界に及ぶサタンの政治組織全体を表わす「第一の野獣」は,ただ七つの政治的な「頭」に限られているからです。それは,第一の野獣のこの第七の「頭」が果たす歴史的な役割を,さらに詳しく描写するための,別の表現にすぎません。というのは,地から上って来たこの第二の野獣は,「子羊のような二本の角」を持っており,それは政治的な二重結合すなわち二重世界強国を象徴しているからです。聖書預言の中で取り上げられているこの第七世界強国は,英米世界強国であり,それはつい最近,世界の活動の舞台に登場して来ました。そして,1914年の異邦人の時の終わりに至るまで,そして今日なお,世界支配に関し成功を収めています。
42 二つの角を持つ野獣が象徴的な「地」から上って来たということは何を象徴していますか。
42 この二本の角を持つ野獣は,象徴的な「地」から上って来ました。地は,「第一の野獣」が上って来た海よりも安定しています。この野獣が今から二世紀前の西暦1763年,“驚異の年”に出現した時には,「地」つまり,海から出て来た獣が支配していた広い地域の人びとは,明確に制定された強い統治機関の下にあって比較的安定した状態にありました。どのようにですか。
43 海から出て来た獣の統治下にある地の大きな部分は,すでに,象徴的な「地」と言い得るほどに安定した状態になっていました。どのようにですか。
43 そのころまでには,ヨーロッパ諸国の宗教上の立場は,ローマ・カトリックかプロテスタントかのいずれかに落ち着いており,さらに,フランス帝国,オーストリア帝国,オランダ帝国,スペイン帝国,ポルトガル帝国といったヨーロッパの大帝国がすでに成立を見ていました。当時フランス帝国は,北アメリカ大陸に広大な領土を有しており,大英帝国もそこに植民地を持っていました。大英帝国は,1600年12月31目,女王エリザベス一世が勅令により英国東インド会社を設立した時その基礎を築きました。しかし1583年,英国はすでに北アメリカのニューファンドランドを領有しており,その後,セントローレンス川以南に13の植民地を建設しました。
44,45 大英国とアメリカ合衆国が二重世界強国となった経過を説明しなさい。
44 1775-1783年の独立戦争により,アメリカの13の植民地は大英国から独立をかちとり,アメリカ合衆国が形成されました。しかしそれは,1763年,大英国が自らを「世界最強の商業及び植民帝国」として確立した後のことです。その年に終了した七年戦争によって得た,アメリカ,インド,また海上における利得により,別の歴史家の言うように,「イギリス王国は大英帝国となった」のです。
45 アメリカ合衆国と大英帝国は,言語が同じである,主にプロテスタントの国である,多くの共通の伝統を有する,民主主義形態の国家である,などの多くの共通点を持っていました。両国は再調整の時を経て,外交および通商面で良い関係を保つことが共通の益になるとの認識に立ちました。アメリカ合衆国は大英国と非常に密接に結び付いていたため,1914-1918年の第一次世界大戦のさいには,中欧諸国つまりチュートン連合国と戦った大英国に協力しました。さらに,1939-1945年の第二次世界大戦においても,英国に援助の手を差し伸べた後,アメリカ合衆国は自ら戦争に突入し,やはり大英国の側に付きました。このように,大英帝国とアメリカ合衆国は,地から出て来た,二本の角を持つ野獣によって表わされている二重世界強国,つまり第七世界強国として,現代史を通じ共に行動してきたのです。
46 “ワシントン1月14日”発の1969年ニューヨーク・タイムズ紙の一記事は,大英国と合衆国が二重世界強国を形成していることをどのように指摘していますか。
46 以上の事柄と一致した内容を伝える,“ワシントン1月14日”発の特電がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。それは,アメリカ合衆国での八年間にわたる勤務の終了をわずか二週間後に控えた,駐米英国大使パトリック・ディーン卿に関する報告を伝えています。その特電は次のとおりです。
パトリック卿は,英国と合衆国の「特別な関係」が,国際的な政治社会における幾多の変化により,かなり修正された形を取りながらも,依然存続するとの確信を抱いている。両国の関係はもはや,ルーズベルト大統領とチャーチル首相との間に,また,やや規模を下回ったが,アイゼンハワー大統領とマクミラン首相との間に存在した,重大な危機に際し高いレベルの政治会談が必要とされる,というようなものではない。とはいえ,その関係は,共通の言語と遺産から発する単なる感情的な愛着以上のものである,と大使の職を去るパトリック卿は考える。両国のこの関係が最もよく発揮されるのは,両国の外交官の間で行なわれる戦略上重要な諸問題に関する意見の交換や分析などの実務レベルにおける協議,大使とディーン・ラスク国務長官のレベル,及び両国の首都間のより低いレベルにおいてである。―ニューヨーク・タイムズ紙,1969年1月15日付,17ページ。
47 二本の角を持つ獣はどのように,「第一の野獣のすべての権威をその前で行使」しますか。
47 数世紀の間に,大英帝国は次第に地上最大の帝国に発展し,ついには地表の四分の一および地球人口の四分の一を支配するに至り,さらに海洋をも制はすることになりました。合衆国の好意ある態度と協力は,同帝国に力を添えました。こうして,二本の角を持つ地の獣は,「第一の野獣のすべての権威をその前で行使する」のです。
48 「第一の野獣」の崇拝には何が含まれますか。この点に関しクリスチャンはどんな立場を取りますか。
48 この地の獣は,実際には「第一の野獣」に属し,その象徴的な第七の「頭」なのですから,それが次の預言的な描画を成就するのは当然のことと言えます。それは,「地とそこに住む者たちに,致命的な打ち傷のいえた第一の野獣を崇拝させる」。(啓示 13:12)「第一の野獣」を崇拝することは,龍つまり悪魔サタンの世界的な政治組織を崇拝することを意味します。それには,「第一の野獣」の第七の「頭」,すなわち,二つの角を持つ第二の獣によっても表わされている第七世界強国,つまり英米二重世界強国を崇拝することが含まれます。政治機関の崇拝という問題に関し,イエス・キリストは,当時第六世界強国であったローマ帝国に敵対する政治活動に全く関与されませんでした。また,今日に至るまでの彼の忠実な追随者たちも,第六世界強国および第七世界強国の政治に干渉したことはありません。彼らは神の王国を第一に求めているのです。―マタイ 6:33。ヨハネ 17:14,16。
49,50 (イ)「人類の前で火を天から地に下らせる」古代の例を一つ挙げなさい。(ロ)それを行なったエリヤの目的は何でしたか。(ハ)二つの角を持つ獣はどのように,またどんな目的で象徴的な火を天から地に下らせましたか。
49 それにしても,二つの角を持つ地の獣はどのように「大いなるしるしを行なって,人類の前で火を天から地に下らせることさえ」したのですか。(啓示 13:13)天から火が下るよう祈り求めることは,西暦前10世紀の預言者エリヤを思い出させます。カルメル山におけるバアルの預言者450人との争いのさい,預言者エリヤは,バアルの預言者たちが不名誉な敗北を被った後,真の神エホバに祭壇を築き,祈りをささげました。その祈りにこたえて天から火が下り,ずぶぬれになった祭壇の上の犠牲を焼き尽くしました。その後,十部族から成るイスラエル王国の新しい王が,自分の死を予告したエリヤを捕らえるため兵士の群を遣わした時,エリヤは天から下ってきた火により,二度にわたり「神の人」として保護されました。その火は各51人から成る二軍の兵士を焼き尽くしたのです。―列王上 18:17-40。列王下 1:2-12。
50 エリヤはこうした目覚ましい業により,エホバが唯一の生けるまことの神であるということのみならず,自分が真に「神の人」,エホバ神の真の預言者であることを実証しました。それに対応する理由をもって,二本の角を持つ地の獣は象徴的な火を天から地に下らせ人びとが自分に対して尊敬を払うよう命じました。特に,それが装う預言的な役割,および偶像礼拝を促進させることによって果たす祭司的な役割に対する尊敬です。世の観点から見る限り,この二重世界強国は天からの是認と支持を受けている証拠を提出しました。さもなければ,どうして地上の政治および軍事上最高の地位にのしあがることができたでしょうか。その驚くべき拡大と,最高の地位を維持するための陸海両域における勝利は,地上のその地位の正当性を支持する,超人的な天からの火のようでした。その上,この英米二重世界強国は,「地」から上って来たその出現当初から,クリスチャンであると主張してきました。大英帝国の君主は,神の恩寵によって支配すると主張し,英国国教会の宗教上の最高首長を務めています。
51 二本の角を持つ象徴的な獣は,子羊のような姿をしていましたが,龍のように語りました。どのように。
51 ですから,二本の角のあるこの象徴的な地の獣は,「子羊のような二本の角」を持ち,神の子羊イエス・キリストの政治的代表者であるかのような振りをしました。それは,子羊のように無害で,攻撃も侵略もせず,だれをも傷つけたり詐取したりする意図はないかのように装いました。しかし現実には,「龍のごとくに話しはじめた」のです。「大いなる龍」悪魔サタンがエホバ神にいどみ,全人類を支配する権利を要求したのと同じく,二本の角を持つ地の野獣も,帝国の力および陸海両軍の力の権により,全地と七つの海を支配する権利を要求しました。龍のように地とその諸民の多くを飲み込み,営利的な詐取と海軍基地の建設を目的としてそれを植民地化したのです。「日の没することのない大英帝国」と言われるようになったのも,もっともなことです。それに加えて,北アメリカ合衆国は南北アメリカ全土を支配するようになりました。このように,地的「野獣」の,羊のような二本の角が与えた印象は,全くの偽りでした。
52 この非常に強力な二重世界強国を出現させたサタンの目的は,明らかに何であったと考えられますか。
52 「大いなる龍」の,王冠を頂いた第七の頭は,七つの世界強国すべての中で最強のこの二重世界強国を,目に見えない様で統御していました。しかもそれは,明らかに,「神の秘義」の敵として最強の世界強国を龍が必要とする,その時においてだったのです。
[脚注]
a カールトン・J・H・ヘイズ著「1870年に至る現代ヨーロッパ」(英文),第八章“英国の拡大”,330-346ページをごらんください。
b この点に関する説明は第19章,287-290ページをごらんください。