第23章
「野獣の像」
1,2 啓示の幻に示されているように,「第一の野獣」は何を使って自分に対する崇拝を要求しますか。
像は長い間,偶像礼拝のために用いられてきました。「第一の野獣」すなわち,サタンの世界的な政治組織は,偶像化されることを好み,人びとが像を用いて自分を偶像化するよう促します。いえ,実際にはそうすることを要求するのです。それも,第七の頭を用いてそうします。使徒ヨハネに与えられた啓示の幻が示すところによると,この像に関する提案は,「別の野獣」つまり,二つの角を持つ,地から上って来た野獣によってなされます。しかし,この二本の角を持つ地の獣が,海から出てきた「第一の野獣」の七番目の頭と同じものであることを思い起こすと,「第一の野獣」がどのように像に関する提案を行なうか,興味をそそられます。それは自分が崇拝されるよう提案するのですが,その提案を第七の頭によって行ないます。啓示 13章14,15節でヨハネがこの点をどのように描写しているか,注意してみてください。
2 「そして,野獣の前で行なうことを許されたしるしによって,地に住む者たちを惑わし,一方では,剣の一撃を受けながら生き返った野獣のために像を作るようにと地に住む者たちに言う。またそれには,野獣の像に息を与えることが許された。それによって野獣の像はものを言うようになり,また,野獣の像をどうしても崇拝しない者たちを殺させるようにするのである」。
3 二つの角を持つ地の獣は悪魔サタンと全く同じ話し方をします。どのようにですか。それが地の住民を惑わすことに成功するのはなぜですか。
3 「大いなる龍」である悪魔サタンは,常に偶像礼拝を奨励してきました。ですから,やはり「龍のごとくに話す」,二本の角を持つ地の獣も,それに倣い,人類史の非常に重大な時期に偶像礼拝に関する提案を行なうのです。地の獣はそれにより,さらに「地に住む者たちを惑わし」ます。第七世界強国として地から上って来た時以来,それは「[第一の]野獣の前で行なうことを許されたしるしによって」人類を惑わし,神およびメシアによる王国から人類を遠ざけてしまいました。それが地の住民を惑わすことに何の不思議があるでしょうか。地の野獣の行なう「しるし」自体,それが「偽預言者」と同一物であることを明白にしています。「偽預言者」の口からは,「かえるのように見える三つの汚れた霊感の表現」の一つが出ます。それらの表現は,「人の住む全地の王たち」とその軍隊を,エホバ神と戦うハルマゲドンの壊滅的な戦争へと集めるのです。―啓示 16:13-16。
4 二本の角を持つ地の獣と「偽預言者」が同一のものであると,どうして分かりますか。
4 この「偽預言者」が二本の角を持つ地の獣と同じであることを示す鍵は,ハルマゲドンの戦争に関する記述,つまり「第一の野獣」が捕らえられるところを描写した啓示 19章20節に見いだされます。それと共にだれが捕らえられますか。「それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた」。
5 「偽預言者」が「野獣のために像を作るよう」通告を出した時がいつかは,どのようにして確かめることができますか。
5 重大な時期に,二本の角を持つ地の獣は「偽預言者」として,「剣の一撃を受けながら生き返った野獣のために像を作るようにと地に住む者たちに言う」のです。(啓示 13:14)この時「第一の野獣」は,西暦1914-1918年の第一次世界大戦における手痛い敗北を象徴する「剣の一撃」をすでに受けていました。したがって,「野獣のために像を作るように」との通告は,1918年11月11日に休戦条約の調印をもって終わりを告げた,第一次世界大戦以後に出されたに違いありません。その通告はパリ平和会議において発せられました。人びとはそれにこたえて,偶像礼拝のための「像」に相当する何を作りましたか。
6 「野獣の像」はどんなものであるはずですか。その成就は今日どこに見いだされますか。
6 人間の作った「像」を崇拝のために用いることは,エホバ神の律法によって禁じられています。それは,唯一の生けるまことの神を崇拝し,神のメシアによる王国を信頼することから人びとを引き離すからです。偶像礼拝に用いられるその像は,「第一の野獣」に型を取りました。その野獣は海から上って来たものであって,新しいエルサレムのように天から下って来たものではありません。サタン悪魔である龍は,その「第一の野獣」に「自分の力と座と大きな権威」を与えたのです。したがってその「第一の野獣」は,世界を包括する,サタンの見える政治組織を象徴しているに違いありません。(啓示 13:1,2; 20:1,2,10)ゆえに,人間の手になるこの偶像が「野獣の像」であるためには,同じく政治組織であること,そして世界的な規模また範囲を持つものであることが要求されます。国際連盟およびその後身である国際連合は,そのとおりのものであることを証明しました。世界の平和と安全のためのこの国際的な政治組織は,現代における「野獣の像」なのです。
「像」を作る
7,8 かつての英国の首相ロイド・ジョージ氏の声明は,二つの角を持つ地の獣が「[第一の]野獣の像」を作るよう人びとに命じたことを証明しています。どのようにですか。
7 二本の角を持つ地の獣が象徴的な「[第一の]野獣の像」を作るよう命令したことは,歴史の事実に照らして明らかです。1919年の平和会議に出席した最も重要なメンバーの一人は,当時の英国首相ディビッド・ロイド・ジョージでした。1931年初頭,ロイド・ジョージ氏は英国で行なった演説の中で,自分が和平のために尽力したことを国民に思い起こさせ,自分自身に関して次のように述べました。
「1919年パリで開かれた主要連合国の政治家たちによる集まりにおいて,最初の決議案を提出したのは,40年前にこの町で選出された議員であるこの私です。後の国際連盟規約はその時の会議に基づいており,私が率いた内閣は,同会議が召集される前,いや休戦条約の調印前から,その決議の原則を実行に移すため慎重に計画を練り,その準備に当たった,世界でただ一つの政府です。その時の内閣は,大戦の成り行きが最も憂慮された時にあっても,地上に平和を確保する国家連合の設置を立案するため,委員会を構成していました」。a
8 この点を確証するものとして,ロイド・ジョージ氏は「回顧録」の28章でこう述懐しています。
「平和会議の席上明らかになったことであるが,平和連盟の設立に関し,実際的な構想を打ち出すために手段を講じていたのは,ただ英国政府のみであった。ウィルソン大統領はばく然とした考え,警抜な詞句の域を出ず,自分の考えを具体化する試みはまだしていなかった」― 1935年2月13日号の「黄金時代」(英文)第402号,311ページをごらんください。
9 (イ)二つの角を持つ獣のもう一方の角は,どのように「像」を提唱することに荷担しましたか。(ロ)“キリストの教会”米国連邦協議会は,この偶像崇拝を促進させるために何をしましたか。(ハ)どんな警告が神の代表者たちによって与えられましたか。
9 第一次世界大戦中,英国の同盟国となったアメリカの大統領T・ウッドロー・ウィルソンは,1919年初頭に開かれたパリ平和会議において国際連盟を提唱しました。その連盟規約は,提唱された講和条約の一部として承認され,パリ平和会議の終身議長となった,フランスの首相で,「とら」の異名をとったジョルジュ・B・E・クレマンソーをはじめ,列強の指導者たちの支持を得ました。しかし,国際連盟規約を肝要な一部として含む講和条約が採択された後,アメリカ上院は同条約の批准を拒否し,その後(1921年8月25日)敗戦国ドイツとの間に別個の平和条約を締結しました。ところが,“キリストの教会”米国連邦協議会(プロテスタント)は連盟に賛同を表し,平和会議に出席していたウィルソン大統領にあてたメッセージの中で次のように述べました。
「そうした連盟は単なる政治的方便ではなく,むしろ,地上における神の王国の政治的表現です。……教会は善意の精神を付与することができ,それなくしてはいかなる国際連盟も存続し得ません。……国際連盟は福音に根ざしており,福音と同じく,『地に平和,人々に善意』を目的としています」。
しかしその後,同年9月7日,日曜日,ものみの塔聖書冊子協会の会長は7,000人の聴衆を前にして行なった公開講演のなかでこう述べました。「しかし,主の不興は必ずや連盟に臨みます。なぜなら,神の代表者であると主張するカトリックおよびプロテスタントの僧職者たちは,神の計画を捨てて国際連盟を是認し,それを地上におけるキリストの王国の政治的表現として歓迎したからです」― 1919年9月8日付,オハイオ州サンダスキーのスター・ジャーナル紙。
10 国際連盟はいつ正式に発足し,いつ解消しましたか。
10 国際連盟は,ベルサイユ条約がフランスのパリで批准された1920年1月10日に正式に発足しました。連盟の本部所在地については1919年に合意が成立しており,本部はスイスのジュネーブに置かれました。そして1920年11月15日,同市で列国の最初の会議が召集されました。しかしその後の歴史が示すとおり,国際連盟の目的は1939年に第二次世界大戦が突発したことにより阻止され,連盟は1946年4月18日正式に解消しました。そしてその資産は,連盟の後継機関である,新しく設立された国際連合に移譲されました。
11 アメリカ合衆国は,「野獣の像」を作り,それを維持することにどのように力を貸しましたか。
11 国際連盟は,国際司法裁判所の機構に関する草案を作成するため,専門委員を任命しました。連盟の事務総長は,国際司法裁判所が「国際連盟に不可欠な要素」であることを指摘しました。連盟と司法裁判所は互いに補足し合うものと考えられ,司法裁判所の目的は,連盟の司法上の傍系機関たることでした。アメリカ合衆国はやがてこの国際司法裁判所に加盟し,そのため,国際連盟に加盟したも同然であるとの非難を受けました。国際連盟に関してアメリカの果たす役割は,時とともに着実にその重要性を増して行きました。このようにして,第二の野獣の頭に生えている象徴的で,「子羊のような二本の角」は,「[第一の]野獣の像」を作り,それを維持することに力を貸したのです。
12 (イ)この同じ「野獣の像」は啓示 17章でどのように描かれていますか。(ロ)それが「八人めの王」であるというのはどういうわけですか。それはいつ息を与えられましたか。
12 したがって,「[第一の]野獣の像に息を与え」,それを生命のあるものとし,機能を果たすようにさせる許可が二本の角を持つ地の獣に与えられたというのは,歴史的に当を得たことなのです。(啓示 13:15,新。新英。ア標。改標。モ)その第一の野獣は七つの頭と十の角を持っていました。その「像」も,同じ特徴を備えることでしょう。もっとも,その体の色は必ずしも同じではないかも知れません。啓示 17章3-17節は,「野獣の像」に息が吹き込まれるところを描写していますが,そこには,「冒とく的な名で満ちた,七つの頭と十本の角を持つ緋色の野獣」が出てきます。啓示 17章11節を読むと,この緋色の野獣「それ自身は八人めの王でもあるが,[七つの頭]から出」るとなっており,政治的な「野獣の像」が全体として,実質的には第八世界強国であることを示しています。しかし,それは七つの象徴的な「頭」,特に,自分に息を与える第七の『頭』に存在を負っています。その「像」は1920年1月10日に息を与えられ,機能を開始しました。
13 「[第一の]野獣の像」に命の息を与える目的は何でしたか。それは,その目的と調和してどのように行動しましたか。
13 「[第一の]野獣の像」に命の息を与える目的は何でしたか。啓示 13章15節は続けてこう述べています。「それによって野獣の像はものを言うようになり,また,野獣の像をどうしても崇拝しない者たちを殺させる」。「野獣の像」の目的は,ものを言うことにありました。それも,いたずらに語るのではなく,権威をもって語るのです。「像」は,特に国際司法裁判所を通じてそうしてきました。それは,崇拝されるためのものだったのです。「像」には,諸政府を通して地の住民に崇拝を強制する権限さえも付与されました。国民は,この国際的な政治組織の成員である自国の政府によって代表されるからです。それを崇拝しない者は『殺される』ことになっていました。連盟規約によると,紛争の解決は直接戦争行為に訴える代わりに仲裁に付託する,という誓約を破る国家は,「自動的に他国との関係において法益を剥奪され,諸国は当該背任行為国とすべての経済および政治上の関係を断つ義務を負」いました。(「アメリカナ百科事典」,第17巻[1929年版],176ページ)国々は「野獣の像」を崇拝する必要を感じ,国際連盟の加盟国はついには総合計63を数えました。
14 (イ)この「像」の促進者たちは,「像」の崇拝の絶対的必要性に関しどんな主張をしましたか。(ロ)1945年,「像」を崇拝するどんな劇的な行為がなされましたか。
14 「野獣の像」およびその促進者たちの話しぶりによると,地上のすべての人の命そのものがこの国際的政治組織の崇拝に懸かっていました。それが存在し,機能を果たさないかぎり,世界戦争を阻止することは不可能である。もう一度世界戦争が起きれば,全文明が破壊され,すべての者が『殺される』,と彼らは述べます。「像」を崇拝するか,あるいは崇拝を拒んで殺されるかは重大な問題だったのです。第二次世界大戦がぼっ発し,その政治的「野獣の像」が当時の形態では役に立たないことが判明した後,国際連盟の後継機関が大戦後の1945年,国際連合という新しい組織形態を取って現われました。これは,「野獣の像」を崇拝する行為としては非常に劇的なものでした。新しく始まった原子時代にあって,世界はその「像」なくしては存在しえない,と全世界の人びとは信じていました。「野獣」が地上に存続するためには,「野獣の像」が存在し,崇拝されることが必要なのです。
15,16 「像」が生存し,効力を発揮することがいかに必要であるかが,数年前どのように指摘されましたか。
15 1968年8月21日,ソ連と四つの衛星国家の軍隊がチェコスロバキアに“電撃的侵入”を行なった後,「野獣の像」が“第三勢力”として生存し,効力を発揮することがいかに必要であるかが指摘されました。この事態に際し,当時の国連事務総長ウ・タントは,国連加盟国のうち最も強力な二国間の力の均衡が極めて不安定であることを理由に所信を表明しました。
16 1968年9月19日,国連の前事務総長,故ダグ・ハマーショルド記念基金を支持するために催された昼食会の席上,ウ・タントは,「人類の良心」の声を反映するため,「力強い,整然たる第三勢力」が必要であると述べました。「世界の平和を維持するため,国際連合機構に対する依存度を高める絶対的必要性を全加盟国に」銘記させる第三勢力が必要とされたのです。当時の加盟国は,最初から国連を強力に支持してきたアメリカ合衆国をも含め,124を数えました。それらはすべて「野獣の像」の崇拝者でした。―1968年9月20日付ニューヨーク・タイムズ紙。
17 ソ連の首相アレクセイ・N・コスイギンは,象徴的な「野獣の像」の必要性についてどんな見解を述べましたか。
17 それより前,1967年7月19日付ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると,当時のロシアの首相アレクセイ・N・コスイギンでさえ,国際連合の重要性を強調しました。7月9日モスクワ発UPI特電は次のように報じています。「アレクセイ・N・コスイギン首相は今日次のように語った。国際情勢は『重大な危険をはらんでおり』,合衆国とソ連二国間だけで世界の諸問題を解決することは不可能である。問題解決は国際連合にゆだねられるべきである。……『すべての国際問題がこの二つの強大国によって解決されると信ずるのは誤りである。すべての国によって解決が図られねばならない。我々が世界の諸問題に関する二大強国間の合意を信用しないのは,そのためである。我々は,大国も小国もすべての国が代表される国際連合に信頼を置いている。現在の国際情勢は重大な危険をはらんでいるのである」。
野獣の印,名そして数字
18 「像」を崇拝する人は実際には「野獣」そのものを崇拝しています。どのように。
18 古代バビロン帝国(第三の「頭」)の王ネブカデネザルは,自国のあらゆる場所にいる役人が一つの像にひれ伏し,こぞってその像を崇拝するよう命じました。帝国の統一がそのねらいでした。それと同じく今日でも,1920年以来,政治的「野獣」それ自体の解体を防ぎ,それを永続させるため,「野獣の像」を崇拝させようとする圧力が全人類にのしかかっています。「野獣の像」を崇拝することは,実際には「野獣」そのものを崇拝することであり,実物の「像」は主要な崇拝ではなく,「相対的な崇拝」を受けるにすぎません。使徒ヨハネは,現代になされるある努力を預言的に見ました。それは,地の住民すべてに,自分たちが政治的「野獣」の崇拝者であることを認めさせようとする努力であり,ヨハネは次のように記しています。
19 現代,地の全住民に彼らが政治的「野獣」の崇拝者であることを認めさせようとする努力がなされています。使徒ヨハネはそれをどのように描写していますか。
19 「またそれは,すべての人,すなわち,小なる者と大なる者,富んだ者と貧しい者,自由な者と奴隷を強制して,その右手や額に印を受けさせ,また,その印,つまり野獣の名もしくはその名の数字を持つ者以外にはだれも売り買いできないようにする。ここが知恵の関係してくるところである。そう明な者は野獣の数字を計算しなさい。それは人間の数字なのである。そして,その数字は六百六十六[χξς']である」― 啓示 13:16-18。
20 この「印」は何ですか。
20 「すべての人」すなわち,「小なる者と大なる者,富んだ者と貧しい者,自由な者と奴隷」が関係しているのですから,今日わたしたち各自は,自分の身分を証明するものとなる「印」を持っているかどうかを確かめることが肝要です。「印」(ギリシャ語でカラグマ)とは,何かが真正なことを証明するために押された印影,または,奴隷や動物の皮膚に押された焼き印のことです。つまりそれは,人がだれにまたは何に属するか,あるいは,どの神に宗教上の献身と奉仕をささげているかを示す,身分証明の「印」なのです。
21,22 (イ)「野獣の像」の崇拝者たちはどんな印を受けますか。(ロ)額に印を受けるとはどんな意味ですか。(ハ)人は「右手」に印を受けることにより,自分に関して何を明らかにしますか。
21 偶像礼拝に関係する「野獣の像」は,その崇拝者たちの「右手や額」にこの印を受けさせます。彼らは,「野獣の像」の「印」ではなく,「野獣」そのものの「印」を受けます。つまり,「野獣の像」を崇拝すると,自動的に「野獣」の「印」を得るのです。焼き印を押された奴隷の場合と同じく,政治的「野獣」の崇拝者としての印,また「野獣」に所有された者としての印を押されます。額は一般に,会う人すべての目に留まるところですから,額の印はその人の所有者つまり主人がだれであるかを明示します。
22 左利きの人の場合は別として,普通一般に使われるのは「右手」です。目に見える,サタンの世界的な政治組織の象徴である「野獣」を崇拝する人は,必然的に,その政治組織に援助と協力の手を差し伸べることになります。当人はその政治論争,政治運動,選挙さらに国家主義的な計画や企画に積極的に加わります。そうすることにより,「右手」に象徴的な印を受けるのです。また,その行動により,自分の政治上の人格がどんなものであるかを,まるで額に政治的な印を押されているかのように公然と示します。こうしてその人は,自分が神のメシアによる王国の支持者ではなく,「野獣」の「七つの頭」によって表わされる,様々な局面におけるサタンの世界的な政治組織の支持者であることを露呈するのです。キリストの真の追随者とは極めて対照的に,「世のもの」であることを公に示します。しかしキリストの真の追随者は,イエス・キリストご自身が「世のものでない」のと同じく,やはり『世のものではありません』。(ヨハネ 17:14,16; 15:19)彼らは,「額と手に印を受けなかった」のです。―啓示 20:4。
23 (イ)「野獣の像」を崇拝しなければ臨む『殺される』事態とは何を意味していましたか。(ロ)印を受けている者以外は,どのようにだれも売り買いできなくなりますか。
23 「野獣の像」を崇拝しない者は,『殺される』ことになっていました。この『殺される』とは,脅しであって,世界の平和と安全のための国際機構がなければ襲うであろう,世界の破滅における避けることのできない死を意味したものと考えられます。「像」を崇拝することは,「野獣」を崇拝することをも意味しました。とはいえ,「像」が建てられる以前に存在していた国々の場合のように,「野獣の像」を崇拝しなくても,「野獣」を崇拝することは可能でした。つまり,地上の全住民を強制し,直接間接を問わず,「野獣の像」を通して「野獣」に崇拝をささげさせようとのもくろみが立てられたのです。崇拝をしなければ,とても生活できなくなるような手段が講じられます。それはボイコットの形でもたらされ,「その印,つまり野獣の名もしくはその名の数字を持つ者以外にはだれも売り買いできないように」なります。―啓示 13:15,17。
24 国家に限らず,個人をも「像」の崇拝に加わらせようとする試みがなされます。どのように。
24 加盟国(個人ではない)についていえば,規約の条令を犯す加盟国は法益をはく奪され,他の加盟国はその違犯国との経済および政治関係を断絶する,と国連憲章に規定されています。しかし個々の市民に関してはどうですか。全体主義あるいは官憲主義の政治国家では,単独政党の支配分子に荷担することや,それを支援することを拒んだ市民はボイコットされ,自由に売り買いする当然の権利を否定されます。それにより,生計を立てることは不可能になります。ですから,もう生きて行けないと感じる人は,そうした強制に屈し,政治的「野獣」の「印」を受けざるを得なくなるのです。
25 (イ)この強制手段の基本原理は何ですか。(ロ)忠実なまことのクリスチャンは,そうした強制にどう応じますか。
25 この強制手段の基本原理は次のとおりです。政治的「野獣」との商売を望み,それによりこの世における繁栄と出世を願うなら,自分の方から「野獣」と商売しなければならない。「野獣」を援助し,擁護すべく最善を尽くして手を貸さねばならない。また,所有者かつ主人としての「野獣」に属していることを示すため,自分の素顔を見せねばならない。つまり,その所属が人格からはっきり読み取れるようでなければならない。国民としての矜持を抱いて政治国家に属さねばならない,というものです。政治国家にのみ信頼を置く者が,こうした強制に屈し,「右手」と自己を表現する「額」とに印を受けます。忠実なまことのクリスチャンは,そうした強制に公然と抵抗し,この世的な偶像礼拝を否み,偶像礼拝者として印を受けることを拒みます。そして,西暦1914年に秘義としては「終了した」,エホバのメシアによる王国に信頼を置くのです。王国に奉仕し,支持を与えるために手を貸し,この世の政治には干渉しません。とはいえ,法律に従う立場を保ち続けます。―ローマ 13:1-7。
26,27 (イ)野獣の「印」に関するエホバ神の見解と,愛国心の強い人びとの見解とを比較対照しなさい。(ロ)ヨハネへの幻の中で,エホバ神はどのように偶像礼拝者たちの愛国的感情に衝撃を与えていますか。
26 「その名をエホバという」まことの神の観点から見れば,野獣の「印」を右手と額に帯びるのは恥ずべきこと,また,クリスチャンにふさわしくないことです。愛国心の強い人びとは反対を唱えるかも知れませんが,壮麗,高貴,立派で,価値があるもの,人心を鼓舞するものとして彼らが崇拝しているそのものが,エホバ神にとっては,海から出て来たいとも醜い,冒とく的な「野獣」のごとくに映るのです。(啓示 13:1)そうした偶像礼拝者たちは,自分たちの愛国心や国民意識をあおるその敬慕の対象が,777という数つまり第三段階もの完全さ(7+70+700)を象徴する,象徴的な価値を有する名に値すると考えたかったことでしょう。もしそうであったなら,「野獣の名もしくはその名の数字」を印として受けることは,偶像礼拝者たちにとって一種の栄誉として映ります。しかし,偶像礼拝者たちの愛国的感情は衝撃を受けるかも知れませんが,エホバ神は「野獣」にそれより劣った等級の数を付与されました。この点を識別するには知恵が必要です。といっても,それは,「龍」すなわち悪魔サタンの影響下にある人間の持つ,この世の知恵ではなく,神からもたらされる天的な知恵です。啓示 13章18節はこう述べています。
27 「ここが知恵の関係してくるところである。そう明な者は野獣の数字を計算しなさい。それは人間の数字なのである。そして,その数字は六百六十六である[χξς']」。
28 ここで使われている6という数が何を表わしているか説明しなさい。
28 この名の数値は,第三段階もの6という数字,すなわち6+60+600です。それは「人間の数字」つまり人間的な数字です。しかし人類は過去六千年にわたり,不完全さの印を身に帯びてきました。それは,六が七に不足の数であるのと同じです。七という数字は完全さの象徴であり,啓示の書に度々出てきます。また,六という数字は,エホバ神に侮べつの態度を取った人びとに結び付けられています。例えば,エホバをあざけり,イスラエル人の羊飼いであった,ベツレヘムのダビデを大いに憤らせたペリシテ人の巨人ゴリアテは,手と足にそれぞれ六本の指を持っていたものと思われます。(歴代上 20:5-7)バビロンの王ネブカデネザルは,高さ六十キュビト,幅六キュビトの背の高い黄金の国家像を建てました。そして,預言者ダニエルの三人の友を,エホバの律法を破ることを拒み,その黄金の像を崇拝しなかったという理由で火の燃える炉に投げ込みました。(ダニエル 3:1-23)こうした関連を考えると,六という数は,人間製のもの,神に反抗する人間のように不完全で罪あるもの,エホバ神を侮り,敵対する可能性を持つもの,つまり神に非とされるものを表わしています。
29 「野獣の名」あるいは「野獣の数字」において,その数が三回繰り返されています。このことから獣がどんなものであると分かりますか。
29 しかも,あることが三回繰り返されると,それは強調されるので,六という数字の三段階に及ぶ複合つまり六+六の十倍+六の百倍は,格別不完全で悪いもの,神によって非とされるもの,完全さから程遠いものを意味します。霊感を受けた神のみことばが与える天的知恵によって,「野獣の名」あるいは「野獣の数字」を計算すると,以上のような結果が得られます。古代バビロンの創設者,強力な狩人ニムロデの時代このかた,人類史が示すとおり,人間の不完全さと無能さを表わすこの数字は,野獣によって象徴される,サタンの見える,世界的な政治組織を特徴づけています。このような特色ある数を帯びる人間製のものを,神の律法を無視してまで崇拝する価値があるでしょうか。それは,各自が神のみ前で答えなければならない問題です。
30 (イ)すべての人は神が「野獣」にどんな数を付与されたかに注意を払うべきです。なぜですか。(ロ)14万4,000人の忠実な者たちは何を「その額に書かれて」いますか。
30 666という数字は,特に現代,すべての人に対する警告となっています。今日,身分証明となる焼き印つまり「野獣の名もしくはその名の数字」を,すべての人間の「右手や額」に押すため非常な努力がなされているからです。唯一の生けるまことの神エホバを忠実に崇拝する者たちは,たとえどんなことがあろうと,野獣の数字を押されることを拒絶します。666という数を啓示している啓示 13章18節のすぐ次の節によると,子羊イエス・キリストの油そそがれた,勝利を収める14万4,000人の追随者たちは,何か別のものを「その額に書かれて」いると描かれています。それは何ですか。子羊の名と天のみ父の名です。(啓示 13:18; 14:1)さらに,啓示 7章2-8節には,それら14万4,000人の霊的イスラエル人が,神の奴隷として「額に」「生ける神の証印」を押されているとも述べられています。
31 「野獣」の印に関し,「大群衆」はどんな立場を取りますか。
31 その幻の直後に,国際的な「大群衆」が手にやしの枝を持ち,「野獣」ではなく,「神殿」におられるエホバ神を崇拝している場景が現われます。(啓示 7:9-15)それは何という栄光の「大群衆」なのでしょう! しかも今日,その一員であれるのはこのうえない特権ではありませんか。エホバ神と子羊イエス・キリストのみ前における,彼らの恵まれた立場を享受するためには,「神の秘義」に対する獣のような敵,その政治的「野獣」の印,数字を絶対に受けないようにしなければなりません。
注: ヨハネへの啓示の残りの部分,すなわち啓示 14章1節から22章21節にかけての各節の説明は,704ページの本「『大いなるバビロンは倒れた』神の王国は支配す」(英文)の21章(454ページ)から結びの31章までをごらんください。この本は,ニューヨーク市ブルックリン,コロンビア・ハイツ124番地,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会(郵便番号11201)により1963年に出版されました。
[脚注]
a 1931年1月15日号の「ものみの塔」誌(英文)に掲載された,デンマーク発,A・J・ウエストの手紙をごらんください。また,英国の役割に関しては,1921年1月1日号の「ものみの塔」誌(英文),「像を造る」という小見出しの付された数節,11,12ページをごらんください。