聖書の12番目の書 ― 列王記第二
筆者: エレミヤ
書かれた場所: エルサレムおよびエジプト
書き終えられた年代: 西暦前580年
扱われている期間: 西暦前920年ごろ-580年
1 列王記第二では,どんな歴史が述べられていますか。それは何を立証するものですか。
列王記第二の書は,引き続きイスラエルとユダ王国の不穏な進路をたどって行きます。エリシャはエリヤのマントを取り上げ,エリヤの霊の二つの分に恵まれて,エリヤの八つの奇跡とは対照的に16の奇跡を行ないました。彼は背教したイスラエルの滅びを預言しつづけました。そのイスラエルでは,ただエヒウだけがエホバに対する熱心さを短いせん光のように示したにすぎません。イスラエルの歴代の王はますます邪悪の深みに沈んで行き,最後にはこの北の王国は西暦前740年にアッシリアの前に崩壊してしまいました。南のユダ王国では,少数の傑出した王たち,とりわけエホシャファト,エホアシュ,ヒゼキヤ,およびヨシヤが,しばらくの間,背教の風潮を押し戻しましたが,ついにネブカドネザルが西暦前607年にエルサレムとその神殿,およびユダの地を荒廃させることによってエホバの裁きを執行しました。こうして,エホバの預言は成就し,そのみ言葉の正しさはまさしく立証されました。
2 列王記第二の筆者や正典性については何と言えるでしょうか。どんな期間のことが扱われていますか。
2 列王記第二は元々,列王記第一と同一の巻き物の一部だったので,列王記第一の正典性や信ぴょう性を示す証拠の場合と同様,エレミヤが筆者であることに関してすでに述べられた事柄が,ここでも同じように当てはまります。この書は西暦前580年に書き終えられており,西暦前920年ごろにイスラエルのアハジヤの治世をもって始まり,西暦前580年におけるエホヤキンの流刑の37年目で終わる期間のことが取り扱われています。―1:1; 25:27。
3 どんな驚くべき考古学上の発見が列王記第二を支持していますか。
3 列王記第二の記録を裏付ける考古学上の諸発見はこの書の真正さをさらに裏付ける証拠を提供しています。例えば,有名なモアブ碑石がありますが,その碑文はモアブとイスラエルの間の戦争についてモアブ人の王メシャの見解を示しています。(3:4,5)また,今ではロンドンの大英博物館に展示されている,アッシリアのシャルマネセル3世の黒い石灰岩のオベリスクがありますが,それにはイスラエルの王エヒウのことが名を挙げて指摘されています。アッシリアの王ティグラト・ピレセル3世(プル)の碑文もあって,それには,メナヘム,アハズ,およびペカハを含め,イスラエルとユダの数人の王たちの名が挙げられています。―15:19,20; 16:5-8。a
4 列王記第二が霊感を受けた聖書の肝要な一部分であることを何が証明していますか。
4 この書の信ぴょう性を明らかに示す証拠は,エホバご自身の民に対するその裁きの執行をこの書が極めて正直に述べている点に見られます。まずイスラエル王国が,次いでユダ王国が崩壊し,廃虚と化してゆくにつれ,申命記 28章15節から29章28節にあるエホバの預言的な裁きの威力のほどを痛感させられます。それら両王国の滅亡に際し,「エホバの怒りがこの地に対して燃え,この書に記される呪いをそっくりそこに臨ませられた」のです。(申命記 29:27。列王第二 17:18; 25:1,9-11)列王記第二に記録されているほかの出来事は,聖書のほかの箇所でも説明されています。ルカ 4章24節から27節で,イエスはエリヤとザレパテのやもめに言及した後,エリシャとナアマンについて語って,ご自分がなぜ郷里で預言者として受け入れられないのかを示しておられます。このように,列王記第一および第二は共に聖書の肝要な一部であることが分かります。
列王記第二の内容
5 エリヤはアハジヤにどんな戒めと宣告を伝えますか。それはなぜですか。
5 イスラエルの王アハジヤ(1:1-18)。アハブのこの息子は自分の家で転落して,病気になります。そこで彼はエクロンの神バアル・ゼブブに人をやって,自分が回復するかどうかについて尋ねさせます。エリヤはその使者たちを途中で止めて,彼らを王のもとに送り返し,まことの神に伺おうとしなかったことで彼を責め,イスラエルの神に頼らなかったために,彼は必ず死ぬであろうと告げます。王は一人の長を50人の部下と共に遣わし,エリヤを捕らえて王のもとに連れて来させようとしますが,エリヤは天から火を降らせて,それらの人を食らい尽くさせます。2番目の長とその50人の者たちにも同様のことが生じます。3番目の長と50人の者たちが遣わされると,この度は,その長の敬意のこもった嘆願のゆえに,エリヤは彼らの命を容赦します。エリヤは彼らと共に王のもとに行き,再びアハジヤに死の宣告を下します。王はエリヤが述べた通り死にます。それから,アハジヤの兄弟エホラムがイスラエルの王となります。アハジヤには彼に代わる息子がいないからです。
6 エリヤはどんな状況のもとでエリシャから別れますか。「エリヤの霊」がエリシャの上にとどまっていることは,ほどなくしてどのように示されますか。
6 エリシャはエリヤの跡を継ぐ(2:1-25)。エリヤの取り去られる時がやって来ます。エリシャはギルガルからベテルへ,そしてエリコへ向かう旅でエリヤに付き従い,最後にヨルダンを渡りますが,エリヤはその職服でヨルダンの水を打ち,その水を二分します。エリシャは火の戦車と火の馬が自分とエリヤの間にやって来て,エリヤが風あらしに乗って上って行くのを見ると,エリヤの霊の約束の二つの分を受けます。エリシャはほどなくして,「エリヤの霊」が自分の上にとどまっていることを示します。(2:15)エリシャは落ちたエリヤの衣を拾い上げると,それを用いて再び水を分けます。それから,彼はエリコで悪い水をいやします。その後,ベテルに行く途中で,小さい少年たちがエリシャをやじりはじめ,「はげ頭,上って行け! はげ頭,上って行け!」と言います。(2:23)そこでエリシャがエホバを呼ぶと,森の中から2頭の雌熊が出て来て,それら非行少年たちのうち42人を殺します。
7 エホバはどうしてエホシャファトとエホラムを救出されますか。
7 イスラエルの王エホラム(3:1-27)。この王はヤラベアムの罪に付き従って,エホバの目に悪いことを行ない続けます。モアブの王はイスラエルに貢ぎを納めていましたが,今や反抗します。そこでエホラムはモアブを攻めるためにユダの王エホシャファトとエドムの王の助けを得ます。その攻撃に向かう途中で,彼らの軍隊は水のない地域に行き,今にも滅びうせそうになります。3人の王たちはエリシャのもとに下って行って,その神エホバに伺うことにします。エホバは忠実なエホシャファトのゆえに彼らを救出し,彼らにモアブに対する勝利を得させます。
8 エリシャはさらにどんな奇跡を行ないますか。
8 エリシャがさらに行なった奇跡(4:1-8:15)。預言者の子らのある人のやもめは,その債権者たちが彼女の二人の息子を捕らえて奴隷にしようとしているため,エリシャの助けを求めます。エリシャは彼女の家にあるわずかな油の蓄えを奇跡的に増やし,こうして彼女はそれを売って,その負債を支払うに足るお金を得られるようになります。あるシュネム人の婦人はエリシャがまことの神の預言者であることを認め,彼女とその夫は,エリシャがシュネムにいる時に使うための一つの部屋を用意します。エホバはこの婦人の親切さのゆえに彼女に一人の男の子を恵まれます。何年かたった後,その子は病気になって死にます。その婦人は直ちにエリシャを探します。エリシャは彼女に同伴してその家に行き,エホバの力によってその子供をよみがえらせます。エリシャはギルガルにいる預言者の子らのもとに戻ると,毒のあるうりを無害なものに変えることにより,『なべの中の死』を奇跡的に除去します。それからエリシャは,大麦のパン20個で100人の人々に食べさせますが,それでも『なお余ります』。―4:40,44。
9 ナアマンや斧の頭に関連してどんな奇跡が行なわれますか。
9 シリアの軍隊の長ナアマンはらい病人です。とりこになったイスラエル人のある少女が,サマリアにはナアマンをいやすことのできる一人の預言者がいることをその妻に告げます。ナアマンはエリシャのもとに旅をしますが,エリシャは彼を個人的に世話する代わりに,ヨルダン川へ行って七度身を洗うよう,ただ伝言しただけです。ナアマンは敬意に欠けているように見えるこの取り扱い方に憤慨します。ダマスカスの川のほうがイスラエルの水よりも勝っているのではありませんか。しかし彼はエリシャの言うことに従うよう説得され,そしていやされます。エリシャは報酬としての贈り物を受け取ることを拒みますが,後にその従者ゲハジがナアマンの後を追いかけて行き,エリシャの名で贈り物を求めます。ゲハジは戻って来て,エリシャを欺こうとしますが,逆にらい病に襲われます。さらに,エリシャは斧の頭を浮かばせて,もう一つの奇跡を行ないます。
10 エホバの優勢な軍勢のことがどのように示されますか。エリシャはどのようにシリア人を引き返させますか。
10 エリシャがイスラエルの王に,王を殺そうとするシリア人の陰謀のことを警告すると,シリアの王は軍勢をドタンに送り,エリシャを捕らえさせようとします。その都市がシリアの軍隊によって囲まれているのを見たエリシャの従者は,恐れを抱きます。エリシャは,「恐れてはならない。わたしたちと共にいる者は,彼らと共にいる者よりも多いからだ」と言って,彼を安心させます。それから,エリシャは,自分の周りにいる大いなる軍勢を従者に見させていただきたいとエホバに祈り求めます。すると,『見よ,山地はエリシャの周囲の火の馬と戦車で一杯です』。(6:16,17)シリア人が攻めて来ると,預言者は再びエホバに祈り,シリア人たちは精神的に盲目にされ,イスラエルの王のもとに導かれて行きます。ところが,彼らは殺されるどころか,エリシャは,彼らに食事を与えてから彼らを送り返すよう王に命じます。
11 シリア人とベン・ハダドに関するエリシャの預言はどのように成就しますか。
11 後に,シリアの王ベン・ハダドはサマリアを攻め囲み,大飢きんが生じます。イスラエルの王はそれをエリシャのせいにしますが,この預言者は,翌日,食物が豊かになることを予告します。その夜,エホバはシリア人に大軍勢の音を聞こえさせ,そのために彼らは逃げ去り,自分たちの食糧をすべてイスラエル人のために残して行きます。しばらく後に,ベン・ハダドは病気にかかります。彼はエリシャがダマスカスに来たという報告を聞くと,ハザエルを遣わして,病気が治るかどうかを伺わせます。エリシャの答えは,王が死んで,ハザエルがその代わりに王となることを示唆しています。ハザエルは自ら王を殺して王権を引き継ぎ,その言葉通りになるよう事を運びます。
12 エホシャファトの子エホラムはどのような王となりますか。
12 ユダの王エホラム(8:16-29)。一方,ユダでは,今やエホシャファトの子エホラムが王となっています。彼はイスラエルの王たち同様,エホバの目に悪いことを行ないます。彼の妻はアハブの娘アタリヤで,イスラエルでは,これまたエホラムという名の彼女の兄弟が治めています。ユダのエホラムの死に際して,その子アハジヤがエルサレムで王となります。
13 エヒウは油そそがれて後,どんな電撃的な作戦に従事しますか。
13 イスラエルの王エヒウ(9:1-10:36)。エリシャは預言者の子らの一人を送って,エヒウに油をそそいでイスラエルの王とし,アハブの全家を討ち倒すよう彼を任命します。エヒウは機を失することなく,戦いで受けた傷の回復をエズレルで図っていたイスラエルの王エホラムの跡を追って出かけて行きます。見張りの者は近づいて来る人々の波打つ大軍を見,ついに王にこう報告します。「あの車の駆り方は,ニムシの孫エヒウの車の駆り方のようです。気が狂ったように車を駆っているからです」。(9:20)イスラエルのエホラムとユダのアハジヤはエヒウの意図について尋ねます。エヒウは次のように質問をして答えます。「あなたの母イゼベルの淫行とその多くの呪術とがある限り,どんな平安があり得ようか」。(9:22)エホラムが向きを変えて逃げようとすると,エヒウは矢を射て彼の心臓を貫きます。その遺体は,アハブによって流された罪のない者たちの血のためにさらに支払うものとして,そこ,ナボテの野に投げ捨てられます。その後,エヒウとその部下たちはアハジヤを追跡し,これを討ち倒し,こうして彼はメギドで死にます。エヒウの最初の電撃的な作戦で,二人の王が死にます。
14 イゼベルに関するエリヤの預言はどのように成就しますか。
14 さて,今度はイゼベルの番です! エヒウが意気揚々とエズレルに乗り込むと,イゼベルは極めて魅力的な化粧を施して,窓に姿を現わします。エヒウは感銘を受けるどころか,従者たちに向かって,「その女を落とせ!」と呼びかけます。彼女は落ちて行き,その血は壁や馬にはね掛かり,馬はその女を踏みつけます。人々が彼女を葬ろうとして行ってみると,ただ頭蓋骨と両足とその両手のたなごころしか見つかりません。これはエリヤの預言の成就で,『犬がその女を食らい,彼女はエズレルの一続きの土地で肥やしのようになりました』。―列王第二 9:33,36,37。列王第一 21:23。
15 サマリアに行く途中で,エヒウはどんな異なった出会いを経験しますか。
15 次いで,エヒウはアハブの70人の息子たちの殺りくを命じ,彼らの首をエズレルの門の所に積み重ねます。エズレルにいたアハブの追従者たちは皆討ち倒されます。今度は,イスラエルの首都サマリアへ向かいます! その途中で彼は,何が起きているかも知らずにエズレルに向かって旅をしているアハジヤの42人の兄弟たちに出会います。彼らは捕らえられて討ち殺されます。しかし,今度は,それとは違った思いがけない出会いが起こります。レカブの子エホナダブが出て来てエヒウを迎えます。「わたしの心があなたの心と共にあるように,あなたの心は,わたしと共にあって廉直ですか」というエヒウの質問に対して,エホナダブは,「そうです」と答えます。するとエヒウは,「エホバと張り合う関係を一切認めていない」ことを直接見て,知ってもらうため,自分の兵車にエホナダブを同乗させます。―列王第二 10:15,16。
16 アハブの家とバアルとに対するエヒウの処置はどのように徹底したものですか。
16 サマリアに着いたエヒウは,エリヤに対するエホバの言葉に従って,アハブの者で残っている者を根絶やしにします。(列王第一 21:21,22)しかし,バアルの忌むべき宗教についてはどうですか。エヒウはこう宣言します。「アハブはバアルを少ししか崇拝しなかったが,エヒウはこれを大いに崇拝するであろう」。(列王第二 10:18)それら悪霊崇拝者すべてをバアルの家に呼んで,エヒウは彼らに身分を証明するものとなる服を着けさせ,彼らのうちにエホバの崇拝者がひとりもいないことを確かめます。それから,彼は部下を送り込んで,ただの一人も逃れさせることなく,彼らを討ち倒させます。バアルの家は破壊されて,その場所は屋外便所に変えられ,エレミヤの時代までそのまま残ります。『こうして,エヒウはイスラエルからバアルを滅ぼし尽くします』― 10:28。
17 エヒウはどんな点で失敗しますか。エホバはどのようにしてイスラエルに罰をもたらし始めますか。
17 しかし,熱心なエヒウでさえ失敗します。どんな点ででしょうか。それは,ヤラベアムがベテルとダンに立てた金の子牛になおも従っているという点においてです。彼は「心をつくしてイスラエルの神エホバの律法にしたがって歩むよう注意」するのを怠ります。(10:31)しかし,アハブの家に対して取ったその措置のゆえに,エホバはエヒウの子孫が4代にわたってイスラエルを治めることを約束されます。エヒウの時代に,エホバはその王国の東部を切り取り始め,シリアのハザエルにイスラエルを攻めさせます。エヒウは28年間治めた後に死に,その子エホアハズが彼の跡を継ぎます。
18 ユダにおけるアタリヤの陰謀はどのようにしてくじかれますか。エホアシュの治世についてはどんなことが注目に値しますか。
18 ユダの王エホアシュ(11:1-12:21)。皇太后アタリヤは,肉においても,霊においてもイゼベルの娘です。その子アハジヤの死について聞いた彼女は,王族の者を全部処刑するよう命じて,王座を引き継ぎます。ただアハジヤの子である赤子のエホアシュだけがかくまわれて,死を免れます。アタリヤの治世の第七年に,祭司エホヤダはエホアシュに油をそそいで王とさせ,アタリヤを殺させます。エホヤダはエホバの崇拝の点で民を導き,その年若い王に神の前におけるその務めを教え,エホバの家を修理するよう取り決めます。エホアシュはシリアの王ハザエルによる攻撃を贈り物によって阻止します。エホアシュはエルサレムで40年間支配した後,その僕たちによって暗殺され,その子アマジヤが彼に代わって王として支配しはじめます。
19 (イ)イスラエルのエホアハズおよびエホアシュの治世中,どんな偽りの崇拝が存続しますか。(ロ)エリシャはエホバの預言者としての歩みをどのように終えますか。
19 イスラエルの王,エホアハズとエホアシュ(13:1-25)。エヒウの子エホアハズは引き続き偶像崇拝を行ない,イスラエルはシリアの支配下に置かれますが,エホアハズは廃位させられません。エホバはやがてイスラエル人を解放されますが,彼らは引き続きヤラベアムの子牛崇拝を行ないます。エホアハズが死ぬと,その子エホアシュが彼に代わってイスラエルの王となりますが,その間,ユダではもうひとりのエホアシュが治めています。イスラエルのエホアシュはその父の偶像崇拝を続けます。彼が死ぬと,その子ヤラベアムが王となります。エホアシュの治世中のことですが,エリシャは,エホアシュがシリアを3回討ち倒すことを述べた最後の預言を語った後,病気になって死にます。そして,その預言はしかるべき時に成就します。エリシャの最後の奇跡とみなされる事柄がその死後に生じます。つまり,ひとりの死人がその同じ埋葬所に投げ込まれますが,その人はエリシャの骨に触れるや否や,生き返って立ち上がります。
20 ユダのアマジヤの治世について述べなさい。
20 ユダの王アマジヤ(14:1-22)。アマジヤはエホバの目に廉直なことをしますが,崇拝のために用いられた高き所を破壊しそこないます。彼はイスラエルのエホアシュに戦いで破れます。彼は29年間統治した後,陰謀に遭って殺されます。その子アザリヤが彼に代わって王とされます。
21 イスラエルではヤラベアム2世の治世中,どんなことが起きますか。
21 イスラエルの王ヤラベアム2世(14:23-29)。イスラエルの王となった2番目のヤラベアムはその父祖の行なった偽りの崇拝を続けます。彼はサマリアで41年間治め,イスラエルの失った領地を取り戻すことに成功します。その子ゼカリヤが後継者として王座に就きます。
22 ユダのアザリヤの治世に関してどんなことが述べられていますか。
22 ユダの王アザリヤ(ウジヤ)(15:1-7)。アザリヤは52年間支配します。彼はエホバの前に廉直な人ですが,高き所を破壊しそこないます。後に,エホバはらい病の災いを彼に臨ませ,その子ヨタムが王の務めを取り扱い,アザリヤの死に際して王となります。
23 アッシリアの脅威が高まる中で,イスラエルはどんな害悪で悩まされますか。
23 イスラエルの王,ゼカリヤ,シャルム,メナヘム,ペカフヤ,およびペカハ(15:8-31)。エホバの約束にしたがって,イスラエルの王座はエヒウの家に,第4代のゼカリヤの時までとどまります。(10:30)したがって,彼はサマリアで王となり,6か月後,一人の暗殺者により討ち倒されます。その王位さん奪者シャルムはわずか1か月しか持ちこたえません。偽りの崇拝,暗殺,および陰謀が引き続きイスラエルを悩まし,その間に,メナヘム,ペカフヤ,およびペカハが相次いで去ります。ペカハの治世中に,アッシリアが押し寄せて来て,これを討ち取ろうとします。次いでホシェアがペカハを暗殺し,イスラエルの最後の王となります。
24 ヨタムの後,ユダのアハズは崇拝に関してどのように罪をおかしますか。
24 ユダの王,ヨタムとアハズ(15:32-16:20)。ヨタムは清い崇拝を行ないますが,高き所はそのまま存続させます。その子アハズはエホバの目に悪いことを行なって,隣のイスラエルの王たちに見倣います。イスラエルとシリアの王たちによる攻撃を受けたアハズは,アッシリアの王に援助を要請します。そこでアッシリア人は彼を助けにやって来て,ダマスカスを攻略します。アハズはそこへ行ってアッシリアの王と会います。そこに礼拝のための祭壇があるのを見,アハズは同じ型にしたがってエルサレムに一つの祭壇を立てさせ,エホバの神殿の銅の祭壇の代わりに,その上で犠牲をささげはじめます。その子ヒゼキヤは彼の後継者としてユダの王となります。
25 イスラエルはどのようにして捕囚の身に陥りますか。それはなぜですか。
25 イスラエルの最後の王ホシェア(17:1-41)。今や,イスラエルはアッシリアの支配下に置かれます。ホシェアは反抗して,エジプトの助けを求めますが,その治世の第9年にイスラエルはアッシリアにより征服され,人々は捕らわれの身となって連れ去られます。こうして,10部族で成るイスラエル王国は終わりを告げます。それはどうしてですか。こう記されています。「イスラエルの子らが……彼らの神エホバに対して罪をおかし……たからである。こうして,彼らは糞像に仕え続けた。それについてエホバはかつて彼らに,『あなた方はこのような事をしてはならない』と言われたのである。それゆえ,エホバはイスラエルに対して大いにいきり立ち,彼らをみ前から除かれた」。(17:7,8,12,18)アッシリア人は東方から人々を連れて来て,この国に定住させます。それらの人々は依然として自分たちの神々を崇拝してはいますが,『エホバを恐れる者』となります。―17:33。
26,27 (イ)ユダのヒゼキヤはどのようにエホバの目に正しいことを行ないますか。(ロ)エホバはアッシリア人を引き返させることにより,どのようにヒゼキヤの祈りに答えられますか。(ハ)イザヤの預言はさらにどんな成就を見ますか。
26 ユダの王ヒゼキヤ(18:1-20:21)。ヒゼキヤはすべてその父祖ダビデがしたことにしたがって,エホバの目に正しいことを行ないます。彼は偽りの崇拝を根絶し,高き所を打ち壊し,モーセが造った銅の蛇をさえ壊します。なぜなら,人々がそれを崇拝するからです。アッシリアの王セナケリブは今やユダに侵入し,防備の施された都市を数多く攻略します。ヒゼキヤは巨額の貢ぎ物をもってセナケリブに手を引かせようとしますが,セナケリブは使者ラブシャケを送り,ラブシャケはエルサレムの城壁の所まで上って来て,降伏を要求し,民すべての聞こえる所でエホバを嘲笑します。預言者イザヤは,『エホバはこのように言われた。「恐れてはならない」』と語って,セナケリブに対する破滅の音信をもって忠実なヒゼキヤを元気づけさせます。(19:6)セナケリブがおびやかし続けると,ヒゼキヤは次のようにエホバに嘆願します。「それで今,私たちの神エホバよ,どうか,彼の手から私たちを救ってください。地のすべての王国が,エホバよ,あなただけが神であることを知るためです」― 19:19。
27 エホバは利己的なところのないこの祈りに答えられますか。エホバはまず,イザヤを通して,「万軍のエホバの熱心」が敵を追い返すことになるという音信を伝えます。(19:31)それから,その同じ夜,エホバはみ使いを遣わして,アッシリア人の陣営で18万5,000人を討ち倒させます。朝になってみると,『彼らはみな死がいとなっています』。(19:35)セナケリブは敗北を喫して戻り,ニネベに住むようになります。そこで,その神ニスロクはまたもや彼にとって何の役にも立たないことを示します。というのは,セナケリブが身をかがめて礼拝をしている時に,イザヤの預言が成就して,彼は自分の息子たちに殺されるからです。―19:7,37。
28 ヒゼキヤはどんなことで有名ですか。しかし,彼はどんなことで罪をおかしますか。
28 ヒゼキヤは病んで死にそうになりますが,エホバは再びその祈りに留意され,その寿命をさらに15年延ばされます。バビロンの王は贈り物を持たせて使者たちを遣わすと,ヒゼキヤは大胆にもその宝物庫をことごとく彼らに見せます。そこでイザヤは,ヒゼキヤの家の中にあるものはみな,いつかバビロンに運び去られることを預言します。その後,ヒゼキヤは死にますが,彼はその力強さと,エルサレム市内に水を補給できるようにするために造った地下水道で有名です。
29 マナセはまた,どんな偶像崇拝を始めますか。エホバはどんな災いを予告されますか。マナセはさらにどんな罪をおかしますか。
29 ユダの王,マナセ,アモン,およびヨシヤ(21:1-23:30)。マナセはその父ヒゼキヤの跡を継ぎ,55年間治めますが,エホバの目に悪いことを大規模な仕方で行ないます。彼は偽りの崇拝に用いる高き所を修復し,アハブがしたように,バアルのために祭壇を立て,聖木を造り,エホバの家を偶像崇拝の場所とします。エホバは,サマリアに対して,『それをすっかりぬぐって,ひっくり返して』行なったように,エルサレムに災厄をもたらすことを予告されます。マナセもまた罪のない者たちの血を「おびただしく」流します。(21:13,16)その子アモンが彼の跡を継ぎますが,アモンも2年間悪いことを行ない続け,ついに暗殺者たちにより討ち倒されます。
30 ヨシヤはなぜ,またどのように心をつくしてエホバに立ち返りますか。
30 人々は今やアモンの子ヨシヤを王とします。その31年間の治世中,ヨシヤは「その父祖ダビデのすべての道に歩んで」,短期間ですが,ユダが滅びに突入するのを食い止めます。(22:2)彼はエホバの家の修理を始め,そこで大祭司は律法の書を見つけます。その結果,エホバに対する不従順のゆえにその国民に滅びの臨むことが確証されますが,ヨシヤは忠実さのゆえにその滅びは彼の時代のうちには臨まないと告げられます。彼はエホバの家と全国から悪霊崇拝を一掃し,その偶像破壊活動をベテルにまで広げ,そこで列王第一 13章1節と2節の預言の成就として,ヤラベアムの立てた祭壇を破壊します。そして彼は再びエホバに対して過ぎ越しを祝うことを始めます。こう記されています。「彼のように,心をつくし,魂をつくし,活力をつくして,モーセのすべての律法にしたがって,エホバに立ち返った王は彼の先にはいなかった」。(23:25)それでも,エホバの怒りはマナセの違反のゆえになおも燃えます。ヨシヤはメギドにおけるエジプトの王との会戦の最中に死にます。
31 ヨシヤの死後,ユダはどのように後退しますか。
31 ユダの王,エホアハズ,エホヤキム,およびエホヤキン(23:31-24:17)。ヨシヤの子エホアハズは3か月間治めた後,エジプトの王によってとりことして連れて行かれ,その兄弟エリヤキムが,その名をエホヤキムと改められて,王座に就けられます。彼はその父祖たちの誤った道に従い,またバビロンの王ネブカドネザルの臣下となりますが,3年後にその王に反抗します。エホヤキムが死ぬと,その子エホヤキンが治めはじめます。ネブカドネザルはエルサレムを包囲し,これを攻略し,イザヤによって『エホバが話された通りに』,エホバの家の宝物をバビロンに運び去ります。(24:13; 20:17)エホヤキンとその臣下の幾千人もの人々は追放の身となってバビロンへ連れ去られます。
32 どんな劇的な出来事が重なって,エルサレムとその地は荒廃するようになりますか。
32 ユダの最後の王ゼデキヤ(24:18-25:30)。ネブカドネザルはエホヤキンのおじマタヌヤを王とし,その名をゼデキヤと改めます。彼はエルサレムで11年間治め,エホバの目に悪いことを行ない続けます。ゼデキヤはバビロンに反抗します。そこで,ゼデキヤの第9年にネブカドネザルとその全軍が上って来て,エルサレムの周囲に攻囲壁を築きます。18か月の後,都は飢きんのために荒廃します。それから,城壁は打ち破られ,ゼデキヤは逃げようとしましたが,捕らえられます。その息子たちは彼の前で打ち殺され,彼は盲目にされます。その翌月,エホバの家や王の家を含め,都の主な家々はすべて焼かれ,都の城壁は取り壊されます。生き残った者たちの大半はとりことしてバビロンに連れ去られます。ゲダリヤはユダの田舎の地方に残っている少数の身分の低い者たちの上に総督として任じられます。ところが,彼は暗殺され,人々はエジプトへ逃げ去って行きます。こうして,西暦前607年の第7の月以降,その地は完全に荒廃したまま横たわります。列王記第二の最後の言葉は,バビロンの王がエホヤキンに対してその捕囚の第37年に恵みを示したことを述べています。
なぜ有益か
33 列王記第二の中には,わたしたちの従うべきどんな優れた模範が収められていますか。
33 列王記第二はイスラエルとユダ両王国の致命的な衰微を扱ってはいますが,エホバとその正しい原則に対する愛を示した個々の人々をエホバが祝福されたことを示す,多数の実例で輝いています。あるシュネム人の女は,彼女よりも前のザレパテのやもめのように,神の預言者を親切にもてなしたことで豊かな祝福を受けました。(4:8-17,32-37)後にイエスが同様の奇跡を行なうことになっていた通り,エリシャが20個のパンで100人の人々を養った時,必要なものを常に備えるエホバの能力のほどが示されました。(列王第二 4:42-44。マタイ 14:16-21。マルコ 8:1-9)エホナダブが,バアル崇拝者たちを撲滅するところを見るために,エヒウの兵車に乗って一緒に行くよう招かれて,どのように祝福を受けたかに注目してください。それに,どうして祝福を受けたのでしょうか。なぜなら,彼は熱心なエヒウを迎えるために出て来るという点で,積極的な行動を取ったからです。(列王第二 10:15,16)最後に,謙遜さと,エホバのみ名や律法に対する正しい敬意を表わすという点で,ヒゼキヤやヨシヤの示した見事な模範があります。(19:14-19; 22:11-13)それらはわたしたちの従うべきりっぱな模範です。
34 列王記第二は公式の僕たちに対する敬意に関して,また流血の罪に関してどんなことをわたしたちに教えていますか。
34 エホバはご自分の公式の僕たちに対する無礼な態度を決して容認されません。例の非行者たちがエホバの預言者であるエリシャを嘲笑した時,エホバは速やかに報復されました。(2:23,24)その上,エホバは罪のない人たちの血を尊ばれます。エホバの裁きはアハブの家に重苦しくとどまりましたが,それは単にバアル崇拝のためだけでなく,その崇拝に伴った流血行為のためでもありました。こうして,エヒウは「すべてのエホバの僕たちの血のためにイゼベルの手に」復しゅうするよう,油そそがれました。裁きがエホラムに対して執行された時,エヒウはそれが「ナボテの血とその子らの血」のためであるというエホバの宣告を思い起こしました。(9:7,26)同様に,ユダの破滅を最終的に動かぬものとしたのは,マナセの血の罪でした。マナセは偽りの崇拝を行なって罪をおかしたことに加えて,『エルサレムを端から端まで血で満たしました』。マナセは後にその悪い歩みを悔い改めたとはいえ,血の罪は残りました。(歴代第二 33:12,13)偶像崇拝をことごとく除き去ったヨシヤの良い治世でさえ,マナセの治世以来持ち越されてきた共同の血の罪を除き去るものとはなりませんでした。何年も後に,エホバはご自分の刑執行者たちをエルサレムに攻め上らせ始めた時,それはマナセが「罪のない者の血でエルサレムを満たした。それでエホバは許しを与えようとはされなかった」ためであると言明されました。(列王第二 21:16; 24:4)同様に,イエスは西暦1世紀のエルサレムが滅びうせなければならないことを言明されましたが,それはその祭司たちが預言者たちの血を流した者たちの子らで,『地上で流された義の血すべてが彼らに臨む』ことになるからでした。(マタイ 23:29-36)神は罪のない人たちの流された血,とりわけ「神の言葉のために……ほふられた者たちの魂」の血のために復しゅうすることを世に対して警告しておられます。―啓示 6:9,10。
35 (イ)エリヤ,エリシャ,およびイザヤは真の預言者であることがどのように確証されていますか。(ロ)エリヤに関連して,ペテロは預言について何と述べていますか。
35 エホバは誤ることのない確かさをもって,ご自分の預言的な裁きを成就されますが,このことも列王記第二の中で示されています。3人の主要な預言者,すなわちエリヤ,エリシャ,およびイザヤのことが注目されています。それら各々の預言者の預言は著しい成就を見ていることが示されています。(列王第二 9:36,37; 10:10,17; 3:14,18,24; 13:18,19,25; 19:20,32-36; 20:16,17; 24:13)エリヤはまた,山上での変ぼうの際に預言者モーセと大いなる預言者イエス・キリストと共に現われて,真の預言者であることが確証されています。(マタイ 17:1-5)その出来事の壮大さに言及したペテロは,こう述べています。「したがって,わたしたちにとって預言の言葉はいっそう確かなものとなりました。そしてあなた方が,夜があけて明けの明星が上るまで,暗い所に輝くともしびのように,心の中でそれに注意を払っているのはよいことです」― ペテロ第二 1:19。
36 エホバはなぜご自分の民に憐れみを示されましたか。胤の治める王国に対するわたしたちの確信はどのように深められますか。
36 列王記第二に記されている出来事は,偽りの宗教を行なう者すべて,また罪のない人たちの血を故意に流す者すべてに対するエホバの裁きは絶滅であることをはっきりと示しています。それでも,エホバはご自分の民に対して,「アブラハム,イサク,ヤコブとの契約のために」恵みと憐れみを示されました。(列王第二 13:23)エホバはその民を「その僕ダビデのために」生き長らえさせたのです。(8:19)エホバは今日,ご自分に頼る人たちに同様の憐れみを示されます。聖書の記録とその数々の約束を振り返ってみるとき,「ダビデの子」,すなわち約束の胤であるイエス・キリストの王国を,何と深められた確信を抱いて待ち望めるのでしょう。その王国のもとでは流血や邪悪なことはもはやないのです。―マタイ 1:1。イザヤ 2:4。詩編 145:20。
[脚注]
a 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,152,325ページ; 第2巻,908,1101ページ。