ヨブの生涯について記録したのはモーセです。ヨブの死後しばらくして書いたようです。神の聖なる力に導かれたモーセは,ヨブが経験した事柄だけでなく,天で起きた出来事についても明らかにしています。
ヨブ記は,ヨブが充実した幸せな日々を過ごしているところから始まります。ヨブはアラビア北部にあったと思われるウツに住んでいます。裕福で,広く知られていて,尊敬されています。貧しい人に物を快く分け与え,社会的弱者を助けています。10人の子供にも恵まれました。何よりも,神に導きを求める人でした。遠い親戚のアブラハム,イサク,ヤコブ,ヨセフのように,エホバが喜ぶことをしたいと思っています。これら族長たちと同じく,家族のために祭司として奉仕し,いつも子供たちのために動物の犠牲を捧げています。(ヨブ 1:1-5; 31:16-22)
ここで場面が天に切り替わり,私たちはヨブが知らなかった天での出来事について学べます。エホバに忠実に仕える天使たちが集まり,反逆した天使サタンも登場します。サタンにとって正しい人ヨブは目障りな存在でした。それに気付いていたエホバは,ヨブの揺るぎない忠誠心に注目させます。サタンは厚かましくもこう反論します。「ヨブは本当に純粋な気持ちで神を畏れているのでしょうか。彼も家族も全ての持ち物も,あなたが柵で囲んで守ったのではありませんか」。サタンは忠誠を尽くす人を憎んでいます。人がエホバ神への揺るぎない専心を示すとき,自分が冷酷な裏切り者だと暴かれてしまうからです。それでサタンは,ヨブは都合のいいときだけ神に仕えていると主張します。もしヨブが全てのものを失うなら,面と向かってあなたを侮辱する,と言ったのです! (ヨブ 1:6-11)
そうしたやり取りをヨブは知りませんでしたが,エホバはヨブに大きな信頼を寄せ,サタンのうそを証明する機会を与えます。サタンにはヨブが持つもの全てを奪うことが許されます。ただし,ヨブ自身に手を出してはなりませんでした。サタンは容赦なくヨブを痛めつけます。1日のうちに,ヨブの身に悲惨な出来事が嵐のように降り掛かります。突然,自分の家畜が全滅したという知らせが届きます。牛とロバ,羊,ラクダが相次いで殺されたのです。家畜を世話する召し使いたちも殺されます。その一部は「神の火」に襲われたと知らされますが,これは稲妻だったのかもしれません。家畜や召し使いを失ったことを悲しむ間もなく,さらにつらい出来事が起きます。10人の子供たちが長男の家に集まっていた時,強風が吹き付けて家が倒壊し,子供たち全員が死んでしまったのです! (ヨブ 1:12-19)
この時,ヨブはどんな気持ちだったでしょう。ヨブは衣服を引き裂き,髪を切り落とし,地面に座り込みます。神が与え,神が取り去ったのだと考えます。ずる賢いサタンは,災難を招いたのは神であるかのように見せ掛けます。しかしサタンの予告に反して,ヨブは神を侮辱したりせず,こう言います。「エホバの名が引き続き賛美されますように」。(ヨブ 1:20-22)