7. (ア)神の名前にはどんな意味があると考えられていますか。(イ)モーセは神の名前について尋ねた時,どんなことを知りたいと思っていましたか。
7 神が自ら選んだエホバという名前には,深い意味があります。「エホバ」には「彼はならせる」という意味があると考えられています。エホバは唯一の創造者として,全てのものが存在するようにしました。また,自分の目的を必ず果たす方であり,そのために不完全な人間をも何にでもならせることができます。こうしたことを考えると,エホバへの畏敬の気持ちが湧いてきます。では,神の名前の意味から,神についてさらにどんなことが分かるでしょうか。モーセは何を知りたかったのでしょうか。エホバが創造者だということや,エホバという名前であることを,モーセはすでに知っていました。神の名前は何世紀も前から使われていたからです。ですから,モーセは神の名前について尋ねた時,その名前を持つ神がどういう方なのかを尋ねていたのです。つまり,こう聞いていました。「あなたについてどんなことを伝えたら,イスラエル人はあなたへの信仰を強め,あなたが本当に救出してくださると確信できるようになるでしょうか」。
8-9. (ア)エホバはモーセの質問に答えて何と言いましたか。その言葉はどのように不正確に訳されていることが多いですか。(イ)「私は自分がなろうとするものとなる」という言葉にはどんな意味がありますか。
8 エホバはモーセに答えて,自分の素晴らしい一面を明らかにしました。それは先ほど考えた神の名前の意味と関係がありますが,「私は自分がなろうとするものとなる」とモーセに言いました。(出エジプト記 3:14)多くの聖書では,この言葉が「私は『私はいる』という者である」というふうに訳されています。しかし,より厳密な訳を見ると,神が単に自分は存在すると言っていたわけではないことが分かります。エホバはモーセに,また後に聖書を読む人全てに,次のことを教えていました。エホバは自分の約束を果たすために必要などんなものにもなる,ということです。J・B・ロザハムの翻訳では,この言葉が「わたしは何であれ自分の望むものになる」と適切に訳されています。聖書ヘブライ語のある専門家は,この言葉についてこう説明しています。「いかなる状況や必要……が生じようとも,神はその必要に応える解決策と『なる』のである」。
9 エホバは当時のイスラエル人に何を伝えたかったのでしょうか。イスラエル人がどんな障害に直面しようと,どんな窮地に陥ろうと,エホバは彼らを救い出して約束の地に連れていくために必要などんなものにもなる,ということです。イスラエル人たちは神の名前の意味を知って,神への信頼が強まったに違いありません。現代の私たちも同じ気持ちになるはずです。(詩編 9:10)どうしてそう言えるでしょうか。
10-11. エホバという名前の意味を考えると,エホバがあらゆる状況に対応できる最高のお父さんだと確信できるのはどうしてですか。
10 例えで考えてみましょう。子供を育てる親は,いろいろな状況に対応するためにさまざまな務めを果たす必要があります。1日の間に,看護師,コック,先生,しつけ係,裁判官といった役割をこなさなければならないかもしれません。やることが多過ぎて大変だと感じる人もいます。幼い子供からの絶大な信頼がプレッシャーになることもあります。子供は,お父さんやお母さんがけがの手当てをしてくれたり,きょうだいげんかを解決してくれたり,壊れたおもちゃを直してくれたり,いろいろな疑問に答えてくれたりすることを信じ切っています。親の中には,自分にはうまくできないと感じてがっかりしたり,自信をなくしたりする人もいます。
11 エホバも愛情深い親です。でも,人間の親とは違うところがあります。エホバは,地上の子供たちを十分に世話するために,自分が定めた完全な基準の範囲内で何にでもなることができるからです。それで,エホバという名前の意味を考えると,エホバが最高のお父さんだと確信できます。(ヤコブ 1:17)モーセや他の忠実なイスラエル人は間もなく,エホバがその名前の通りの方であることを実感しました。エホバが自分たちにとって必要なさまざまなものになるのを目にしたからです。例えばエホバは,無敵の軍司令官,並ぶ者のいない立法者,裁判官,建築家になりました。また,イスラエル人のために自然界の力をコントロールしたり,食物や水を与えたり,服やサンダルが擦り切れないようにしたりもしました。
12. エホバに対するファラオの態度は,モーセの態度とどのように違っていましたか。
12 このように神は,自分の名前を知らせ,自分がどういう神なのかを明らかにし,自分がエホバという名前の通りに行動することを証明してきました。ですから,神が自分のことを知ってほしいと思っていることがはっきり分かります。では,あなたは神のことをもっと知りたいと思いますか。モーセは神のことを知りたいと強く願っていたので,神に仕える生き方を貫き,天の父との絆を強めることができました。(民数記 12:6-8。ヘブライ 11:27)残念なことに,モーセと同じ時代に生きていた人の多くは,神のことを知りたいとは思いませんでした。例えば,エジプトの王ファラオは,モーセがエホバについて話した時,傲慢にも「エホバが何者だというの[か]」と言いました。(出エジプト記 5:2)イスラエルの神などどうでもいい,知る価値などない,という態度を示したのです。現代の多くの人も同じような考え方をしています。そのため,エホバが主権者である主だという重要な真理を知らずにいます。