イエスは1日中働いて疲れています。その日の夕方,弟子たちに,「向こう岸に渡りましょう」と言います。今いるカペルナウムの向こう側の場所です。(マルコ 4:35)
ガリラヤの海の東側はゲラサ人の地域です。この地域はデカポリスの一部です。デカポリスはギリシャ文化の中心でしたが,ユダヤ人もたくさん住んでいました。
イエスがカペルナウムから出発すると,人々はそれに気付き,ほかの舟に乗って後に続きます。(マルコ 4:36)向こう岸まではそれほど遠くありません。ガリラヤの海は大きな淡水湖で,長さが約21㌔,幅は一番広い所で12㌔ほどあり,深さもかなりあります。
イエスは完全な人ですが,忙しく伝道したので疲れています。そのため舟が岸を離れると,舟の後部で横になり,枕を使って眠ってしまいます。
使徒たちの中には舟の扱いに慣れている人もいますが,今日はどうも大変なことになりそうです。ガリラヤの海は山に囲まれていて,湖面の温度がかなり上がります。それで,山からの冷たい風が温かな湖面に吹き下ろすと,突然に猛烈な暴風が生じることがあります。まさに今,その状況です。波が激しくぶつかり,舟は「水をいっぱいかぶって危険な状態になって」きます。(ルカ 8:23)それでも,イエスは眠ったままです。
使徒たちはこれまで嵐を切り抜けてきた経験を生かして,必死に舟を操ります。しかし,この嵐はただ事ではありません。弟子たちは命の危険を感じてイエスを起こし,こう叫びます。「主よ,助けてください。死んでしまいそうです!」(マタイ 8:25)溺れてしまうのではないかと心配しているのです。
イエスは目を覚まして弟子たちに,「なぜそんなに怖がっているのですか。信仰の少ない人たち」と言います。(マタイ 8:26)それから風と海に向かって,「静まれ! 静かになれ!」と命じます。(マルコ 4:39)すると暴風はやみ,海は穏やかになります。(マルコとルカもこの印象的な出来事を記録していますが,イエスが嵐を奇跡的に静めたことをまず強調し,その後,弟子たちの信仰のなさについて述べています。)
弟子たちがどんな反応をしたか想像してみてください。荒れ狂っていた海がすっかり静まったのです。彼らは大変な畏れを感じ,「一体どういう方なのだろう。風や湖さえ従うのだ」と口々に言います。その後,無事に向こう岸に到着します。(マルコ 4:41–5:1)一緒に出発したほかの舟は西側の岸に戻っていったのかもしれません。
神の子が自然界をコントロールする力を持っているというのは,本当に心強いことです。イエスが王国で支配し,地上に深い関心を払う時,全ての人が安心して暮らせます。自然災害はなくなるからです。