イエスは荒野で40日間過ごした後,ガリラヤに向かいます。しかしまずは,バプテスマを施してくれたヨハネの所に戻ります。イエスが近づいてくると,ヨハネはイエスを指さし,人々に大きな声でこう言います。「見なさい,世の罪を取り去る,神の子羊です! これこそ私が言っていた方です。『私の後から来る方がいる。私より優れた方である。私より先に存在したからである』と」。(ヨハネ 1:29,30)ヨハネはイエスよりも少し年上ですが,自分が生まれる前からイエスが天で生きていたことを知っています。
数週間前にイエスがバプテスマを受けにやって来た時,ヨハネにはイエスがメシアになるという確信がなかったようです。それでヨハネは,「私もこの方を知りませんでしたが,私が水でバプテスマを施したのは,この方がイスラエルにはっきり知られるためでした」と言いました。(ヨハネ 1:31)
それから,イエスにバプテスマを施した時にどんなことが起きたかを話し始めます。「聖霊が天からハトのように下ってくるのを見ましたが,それはこの方の上にとどまりました。私もその方を知りませんでしたが,水でバプテスマを施すように私を遣わした神が言いました。『聖霊が下って誰かの上にとどまるのを見たら,それこそ聖霊でバプテスマを施す者である』。私はそれを見たので,この方こそ神の子だと証言したのです」。(ヨハネ 1:32-34)
次の日,ヨハネが弟子2人と一緒にいると,再びイエスが近づいてきます。それでヨハネは,「見なさい,神の子羊です!」と言います。(ヨハネ 1:36)すると,バプテストのヨハネの弟子2人はイエスの後に付いていきます。1人はアンデレという名前で,もう1人はこの出来事を記録したヨハネ本人のようです。このヨハネはイエスのいとこで,サロメの息子と思われます。サロメは恐らくマリアの姉妹であり,夫はゼベダイといいます。
イエスはアンデレとヨハネが付いてくるのに気付いて振り返り,「何の用でしょうか」と尋ねます。
2人は,「ラビ,どこに滞在しているのですか」と聞きます。
するとイエスは,「一緒に来なさい。そうすれば分かります」と答えます。(ヨハネ 1:37-39)
時刻は午後4時ごろで,アンデレとヨハネはその日の残りの時間をイエスと一緒に過ごします。アンデレは興奮のあまり,自分の兄弟でペテロとも呼ばれるシモンを見つけると,「私たちはメシアを見つけた」と話します。(ヨハネ 1:41)そしてペテロをイエスの所に連れていきます。ヨハネも自分の兄弟ヤコブを見つけてイエスの所に連れてきたようですが,ヨハネはそうした個人的な事柄を記録していません。
翌日,イエスはベツサイダ出身のフィリポに会います。ベツサイダはガリラヤの海の北の岸に近い町で,アンデレとペテロの生まれ育った所です。イエスはフィリポに,「私の弟子になりなさい」と言います。(ヨハネ 1:43)
フィリポは,バルトロマイとも呼ばれるナタナエルを見つけ,次のように話します。「私たちは,モーセの律法と預言者の書に記されている人を見つけた。ヨセフの子で,ナザレから来たイエスだ」。するとナタナエルは疑わしそうに,「何か良いものがナザレから出るだろうか」と言います。
フィリポは,「来れば分かる」と誘います。イエスはナタナエルが近づいてくるのを見て,「見なさい,まさにイスラエル人,心に偽りがない人です」と言います。
「どうして私のことを知っているのですか」とナタナエルは尋ねます。
イエスは,「フィリポがあなたを呼ぶ前に,あなたがイチジクの木の下にいるのを見ました」と答えます。
ナタナエルは驚き,「ラビ,あなたは神の子です。イスラエルの王です」と言います。
するとイエスはこう話します。「イチジクの木の下にいるのを見たと言ったから信じるのですか。あなたはもっと驚くような事を目にします」。そして,次のように約束します。「はっきり言っておきますが,あなたたちは,天が開いて神の天使たちが人の子の元に上り下りするのを見ます」。(ヨハネ 1:45-51)
このすぐ後,イエスと新しい弟子たちはヨルダン渓谷を出発し,ガリラヤに向かいます。