西暦30年春の過ぎ越しの祭りの後,イエスと弟子たちはエルサレムを出発します。とはいえ,ガリラヤにある自分たちの家に真っすぐ帰るわけではありません。ユダヤ地方に向かい,そこで多くの人にバプテスマを施します。バプテストのヨハネは約1年にわたり,恐らくヨルダン川流域で同じ活動をしてきました。ヨハネは今も自分の何人かの弟子たちと一緒にいます。
イエスはバプテスマを施さず,イエスの指示を受けた弟子たちがそれを行います。この時期,イエスとヨハネは2人とも,律法契約に対する罪を悔い改めたユダヤ人たちを教えます。(使徒 19:4)
ところが,ヨハネの弟子たちはイエスに嫉妬し,ヨハネにこう言います。「ヨルダン川の向こうで一緒にいた人[イエス]……がバプテスマを施していて,みんながその元に行っています」。(ヨハネ 3:26)もちろん,ヨハネは嫉妬していません。イエスの成功を喜んでおり,自分の弟子たちにも喜んでほしいと思っています。それで,次の点を思い起こさせます。「『私はキリストではなく,その方より前に遣わされた者だ』と私が言ったことを,あなたたち自身が証言できます」。そして,皆がこのことを理解できるように,例えを用いてこう説明します。「花嫁を迎えるのは花婿です。しかし花婿の友人も,そばに立って花婿の言葉を聞くと,非常に喜びます。それで,私は喜びに満たされています」。(ヨハネ 3:28,29)
数カ月前にもヨハネは,自分の弟子たちをイエスに紹介し,花婿の友人のように喜んでいることを示しました。そのうちの何人かはイエスに従うようになり,やがて聖霊によって油を注がれます。ヨハネは,いま自分と一緒にいる弟子たちにもイエスに従ってほしいと願っています。結局のところ,ヨハネの任務はキリストによる伝道のために道を整えることなのです。ヨハネは,「あの方は盛んになっていき,私は衰えていかなければなりません」と話します。(ヨハネ 3:30)
すでにイエスの弟子となっていたもう1人のヨハネは,イエスがどこから来たのか,人類を救うためにどんな重要な役割を果たすのかについて,次のように記しています。「上から来る者は他の全ての者の上にいる。……父は子を愛していて,全てのものを子に委ねた。子に信仰を抱く人は永遠の命を受ける。子に従わない人は命を得ず,神の憤りがその人の上にとどまる」。(ヨハネ 3:31,35,36)これは人々が知るべき大切な真理です。
バプテストのヨハネは,自分の役割と活動が衰えていくと話してから間もなく,ヘロデ王の命令で逮捕されます。ヘロデは異母兄弟フィリポの妻ヘロデアを奪い取って結婚しました。ヨハネが人々の前で2人の姦淫を暴露したため,ヘロデはヨハネを牢屋に入れます。それを聞いたイエスは,弟子たちと一緒にユダヤ地方を離れ,「ガリラヤに去って」いきます。(マタイ 4:12。マルコ 1:14)