8-9. パウロとヤコブの言葉をどのように考える人がいますか。どうしてですか。
8 何世紀にもわたり,キリスト教の指導者たちの間で,信仰と行動の関係性が激しく議論されてきました。聖職者の中には,主イエス・キリストを信じるだけで救われると教える人もいます。あなたも,「信じる者は救われる」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。聖職者は,「行いによらずに神から正しいと見なされる」というパウロの言葉を引用することさえあります。(ロマ 4:6)一方,聖地巡礼や教会が定める儀式を行うことで救われると教える人もいます。そういう人たちは,ヤコブ 2章24節にある次の言葉を持ち出すかもしれません。「人は行動によって,正しいと認められるのです。信仰だけで認められるのではありません」。
9 それで,信仰と行動に関するパウロとヤコブの意見は食い違っていると考える聖書学者もいます。ある聖職者たちは,パウロは行いによらずに信仰によって正しいと見なされると言っているのに対し,ヤコブは神に喜ばれるには行動が欠かせないと教えている,と考えています。ある神学教授はこう言っています。「ヤコブは,パウロが行いによらずに信仰によって[正しいと認められる]と言った理由をよく理解していなかったようだ」。でも,パウロもヤコブも聖書を書いた時,エホバの聖なる力に導かれていたので,内容に矛盾はないはずです。(テモ二 3:16)では,どんなふうに理解したらいいのでしょうか。それぞれの文脈を考えてみましょう。
10. パウロはどんな「行い」について話していましたか。(ローマ 3:21,28)(挿絵も参照。)
10 パウロはローマ 3章と4章でどんな「行い」について話していたのでしょうか。主に,シナイ山で与えられたモーセの「律法に従った行い」のことを話していました。(ローマ 3:21,28を読む。)当時,ユダヤ人のクリスチャンの中には,モーセの律法に従う必要がなくなったことを受け入れにくく感じている人たちがいました。それでパウロは,アブラハムの例に注目させ,神から見て正しい人と見なされるために必要なのは「律法に従った行い」ではなく,信仰であると教えました。このことは私たちにとって励みになります。エホバとイエスに信仰を持つならエホバに喜ばれる人になれる,ということを確信できるからです。
11. ヤコブは何について説明していましたか。
11 一方,ヤコブ 2章で説明されているのは,「律法に従った行い」のことではありません。クリスチャンが毎日の生活の中で取る行動のことです。そこに,神を本当に信じているかどうかが表れます。どんなものがあるか,ヤコブが挙げた2つの例を考えましょう。
12. ヤコブは信仰と行動の関係についてどのように説明していますか。(挿絵も参照。)
12 ヤコブは1つ目に,全ての人に分け隔てなく接することの大切さを教えています。ヤコブの例えに出てくる人は,裕福な人には親切にしますが,貧しい人のことは見下しています。この人は信仰を持っていると言うかもしれませんが,その行動からすると,神を信じているとはとても思えません。(ヤコ 2:1-5,9)2つ目に,兄弟や姉妹が着る物や食べ物に困っていることに気付いても,必要な物を与えない人について語っています。この人も信仰を持っていると言うかもしれませんが,その信仰に価値はありません。ヤコブが言っている通り,「信仰[は],行動が伴っていないなら,死んでいるのです」。(ヤコ 2:14-17)
13. ヤコブは信仰に基づいて行動することの大切さをどのように教えていますか。(ヤコブ 2:25,26)
13 ヤコブは,信仰を持って行動したラハブの手本について取り上げました。(ヤコブ 2:25,26を読む。)ラハブはエホバについて聞き,エホバがイスラエル人を支えていることを理解しました。(ヨシュ 2:9-11)それで,信仰に基づいて行動し,偵察に来た2人のイスラエル人をかくまい,命を助けました。ラハブはイスラエル人ではありませんでしたし,完璧な人でもありませんでしたが,アブラハムと同じようにエホバから正しい人と認められました。このことから,信仰を持って行動することの大切さを学べます。
14. パウロとヤコブの説明が矛盾していないといえるのはどうしてですか。
14 こうして考えてみると,パウロとヤコブは信仰と行いの関係についてそれぞれ別の角度で説明していたことが分かります。パウロはユダヤ人のクリスチャンに,モーセの律法に従うだけではエホバに良いと認めてもらえないということを教えました。一方ヤコブは,全てのクリスチャンに,人に親切にして信仰を示すことの大切さを強調しました。
15. エホバに信仰を持っていることをどんな方法で示せますか。(写真も参照。)
15 エホバから正しい人と認めてもらうために,アブラハムと全く同じことをしなければいけないわけではありません。エホバに信仰を持っていることを表す方法はいろいろあります。引っ越してきた兄弟姉妹や集会に出席するようになった人を温かく歓迎したり,困っている仲間を助けたりできます。家族に親切にすることもエホバに喜ばれます。(ロマ 15:7。テモ一 5:4,8。ヨハ一 3:18)さらに,良い知らせを熱心に伝えることはとても大切です。(テモ一 4:16)私たちは皆,エホバの約束が必ず実現することや,エホバの方法が一番良いものであることを信じています。その信仰に基づいて行動しましょう。そうするならエホバに正しい人と認めてもらい,エホバの友になることができます。