8. どうすれば上手に教えることができるようになりますか。
8 ヤコブは特別な教育を受けていたわけではありませんでした。当時の宗教指導者たちはヤコブのことを,ペテロやヨハネのような「教育のない普通の人」と見ていたでしょう。(使徒 4:13)しかし,ヤコブは上手に人を教えることができるようになりました。「ヤコブの手紙」を読むと,そのことが分かります。私たちもヤコブと同じように,特別な教育を受けたわけではないかもしれません。それでも,エホバの聖なる力と組織の訓練によって,上手に教えることができるようになります。では,教える面でのヤコブの手本と,そこから学べることについて考えていきましょう。
9. ヤコブの教え方はどのようなものでしたか。
9 ヤコブは難しい言葉を使ったり,複雑な説明をしたりはしなかった。それで,ヤコブからの手紙を読んだ人は,何をどのように行ったらよいかを理解することができました。1つの例を考えてみましょう。ヤコブはクリスチャンに対して,不公正な目に遭った時,腹を立てるのではなく,喜んで忍耐するべきことをどのように教えたでしょうか。ヤコブはこう書きました。「私たちは,忍耐した人は幸せであると考えます。皆さんはヨブの忍耐について聞き,ヨブがエホバのおかげでどんな結末を迎えたかを知っています。エホバは優しい愛情にあふれ,憐れみ深い方なのです」。(ヤコ 5:11)ヤコブは聖書に基づいて教えました。ヨブのようにエホバに忠実を示す人たちをエホバが必ず祝福する,ということを理解できるよう助けたのです。ヤコブは簡単な言葉や説明で大切な点を教えました。そのようにして,人々の注意を自分ではなくエホバに向けました。
10. どんな点でヤコブの教え方に倣えますか。
10 学べること: シンプルに説明し,聖書から教える。私たちが目指すべきなのは,私たちがどれほど多くの知識を持っているかを示すことではありません。エホバがどれほど多くの知識を持っていて,どれほど人間を気遣っているかに人々の注意を向けることです。(ロマ 11:33)私たちが聖書に基づいて話すなら,この目標を達成することができます。例えば,聖書を学んでいる人に対して,「私ならこうする」と説明することはしません。そうではなく,学んでいる人が聖書中の例を調べ,エホバの考えや気持ちを理解するよう助けることができます。このようにするなら,学んでいる人は,私たちではなくエホバに喜んでいただきたいという気持ちに動かされて行動するようになるでしょう。
11. ヤコブの時代のクリスチャンの中には,どんな問題と闘っている人がいましたか。ヤコブはそうした人たちにどんなアドバイスを与えましたか。(ヤコブ 5:13-15)
11 ヤコブは現実的な見方をしていた。「ヤコブの手紙」からすると,ヤコブは仲間の兄弟たちがいろいろな問題と闘っていることに気付いていました。それで,そうした問題をどのように乗り越えることができるかをはっきり教えました。兄弟たちはどんな問題と闘っていたのでしょうか。例えば,アドバイスをなかなか当てはめることができない人がいました。(ヤコ 1:22)また,裕福な人をえこひいきする人たちがいました。(ヤコ 2:1-3)人を傷つけるような言葉を言ってしまう人もいました。(ヤコ 3:8-10)こうしたことは,どれも小さな問題ではありませんでしたが,ヤコブは兄弟たちを見限ったりするのではなく,親切で率直なアドバイスを与えました。そして,こうした問題と闘っている人たちに対して,長老たちに助けてもらうよう勧めました。(ヤコブ 5:13-15を読む。)
12. 聖書を学んでいる人を助ける際,どうすれば前向きな態度を保つことができますか。
12 学べること: 現実的な見方をし,前向きな態度を保つ。私たちと聖書を学んでいる人は,多くの場合,学んだことを実践するのに難しさを感じます。(ヤコ 4:1-4)良くない習慣を捨て,キリストのような人格を身に着けるには時間がかかるかもしれません。それでも,ヤコブに倣って改善できる点を勇気を持って伝える必要があります。前向きな見方を保つ必要もあります。エホバが謙遜な人を引き寄せ,そうした人に生き方を変えるための力を与えてくださることを信じる必要があるのです。(ヤコ 4:10)
13. ヤコブ 3章2節によると,ヤコブはどんなことを認めていましたか。
13 ヤコブは自分に対して正しい見方を保った。ヤコブは,自分がイエスの弟であり,特別な責任を委ねられているからといって,兄弟姉妹よりも自分が優れているとは考えませんでした。そうではなく,仲間のクリスチャンのことを「私の愛する兄弟たち」と呼びました。(ヤコ 1:16,19; 2:5)またヤコブは,自分は間違いをしないと思わせることもしませんでした。自分のことを含めて,「私たちは皆,何度も過ちを犯します」と述べました。(ヤコブ 3:2を読む。)
14. 自分も間違いをすることを率直に認める必要があるのはなぜですか。
14 学べること: 誰もが間違いをするということを忘れない。私たちは,聖書を学んでいる人よりも自分の方が上であると考えてはいけません。なぜでしょうか。私たちは間違いをしないと思わせてしまうなら,学んでいる人は,神の基準に従って生きるなんて自分には無理だ,と思ってしまうかもしれません。でも実際には,私たちにとっても,聖書の教えに従うのが難しいことがあり,エホバの助けによってそうした問題を乗り越えることができています。こうしたことを率直に認め,学んでいる人に話すなら,学んでいる人は,自分もエホバに仕えることができると思えるようになるでしょう。
15. ヤコブの例えについてどんなことが言えますか。(ヤコブ 3:2-6,10-12)
15 ヤコブは人々の心を動かす例えを使った。ヤコブは,聖なる力の助けを受けていただけでなく,兄イエスの例えからも教え方について多くのことを学んだでしょう。ヤコブが手紙の中で使っている例えはシンプルなもので,どう当てはめたらよいかが分かりやすいものでした。(ヤコブ 3:2-6,10-12を読む。)
16. 例えを上手に使うことが大切なのはなぜですか。
16 学べること: 上手に例えを使う。ぴったりの例えを使うなら,学んでいる人は,耳で聞くだけでなく心の中に思い描くことができます。そして,聖書の大切な教えをしっかり覚えることができます。ヤコブは,例えを上手に使ったイエスの手本に倣いました。では,ヤコブの例えを調べ,それがなぜ良いものだったのかを考えましょう。
17. ヤコブ 1章22-25節にある例えが良いものであると言えるのはなぜですか。
17 ヤコブ 1:22-25を読む。ヤコブが使った鏡の例えは,幾つもの面で良いものでした。ヤコブが教えたい点ははっきりしていました。それは,聖書を自分に役立てるには,読むだけでなく行動する必要があるということです。また,ヤコブが使った鏡を見ている人の例えは,人々にとって理解しやすいものでした。ポイントは何でしょうか。鏡を見て直すべき所に気付いても何もしないなら,それは愚かなことです。同じように,聖書を読んで人格を変えなければならないことに気付いても何もしないなら,それは愚かなことです。
18. 例えを使う時には,どんな3つの点を意識する必要がありますか。
18 例えを使う時には,ヤコブに倣って次の3つの点を意識しましょう。(1)要点とぴったり合った例えを使う。(2)聞く人が理解しやすい例えにする。(3)どのように当てはめたらよいかがはっきり分かるようにする。良い例えを思い付かない場合には,「ものみの塔出版物索引」を調べてみてください。「例え」の見出しの中に,使えそうな例えを幾つも見つけることができるでしょう。とはいえ,例えはマイクに似ているということを忘れてはいけません。マイクを使うと声が大きくなるのと同じように,例えを使うとその部分が強調されます。ですから,例えは本当に大事なポイントでだけ使うようにしましょう。もちろん,私たちがもっと上手に教えられるようになりたいと思う一番の理由は,人々の注意を自分に向けることではなく,エホバの家族に加わるようできるだけ多くの人を助けることです。
19. 仲間を愛していることをどのように示せますか。
19 私たちにはイエスのような完全なお兄さんはいません。それでも,素晴らしいことに,信仰で結ばれた大きな家族の中でエホバに仕えることができています。私たちは,仲間と一緒に楽しい時間を過ごしたり,仲間から学んだり,共に宣教を熱心に行ったりすることによって,仲間への愛を示すことができます。ぜひこれからも,態度や行いや教え方の面で,ヤコブの手本に倣うようにしましょう。そうするなら,エホバをたたえることができ,愛情深い天のお父さんエホバと親しくなるよう,誠実な人を助けることができます。