人間は神についての知識を必要としている
「あなたはエホバへの恐れを理解し,まさに神についての知識をも見いだすことであろう」― 箴言 2:5。
1 人間の心臓は神の工学の傑作である,と言えるのはなぜですか。
今地上では,およそ56億個の人間の心臓が脈打っています。あなたの心臓は毎日10万回鼓動を繰り返し,7,600㍑相当の血液を体内の全長10万㌔に及ぶ心臓血管系に送り込んでいます。神の工学の傑作と言えるこの心臓ほどよく働く筋肉は,ほかにありません。
2 あなたは比喩的な心臓,つまり心を,どのようなものとして説明しますか。
2 地上では,56億の人間の比喩的な心臓,つまり心もまた働いています。心には,わたしたちの感情,動機,欲求などが宿っています。心は,わたしたちの考え,わたしたちの理解,わたしたちの意志の座なのです。心は,高慢にもなれば謙遜にもなり,憂うつにもなれば楽しくもなり,暗くなることもあれば啓発されることもあります。―ネヘミヤ 2:2。箴言 16:5。マタイ 11:29。使徒 14:17。コリント第二 4:6。エフェソス 1:16-18。
3,4 人々の心は,良いたよりによってどのように動かされていますか。
3 エホバ神は人間の心を読むことがおできになります。箴言 17章3節には,「るつぼは銀のため,炉は金のため。しかしエホバは心を調べる方」と記されています。それでも,単に各人の心を読んで裁きを宣告するのではなく,エホバはご自分の証人たちを用いて,良いたよりによって人の心を動かすようにしておられます。このことは,使徒パウロの次の言葉と調和しています。「『エホバの名を呼び求める者はみな救われる』のです。しかし人は,自分が信仰を持っていない者をどうして呼び求めるでしょうか。また,自分が聞いたこともない者にどうして信仰を持つでしょうか。また,宣べ伝える者がいなければ,どうして聞くでしょうか。また,遣わされたのでなければ,どうして宣べ伝えるでしょうか。『良い事柄についての良いたよりを宣明する者の足は何と麗しいのだろう』と書かれているとおりです」― ローマ 10:13-15。
4 エホバは,ご自分の証人たちを地の隅々にまで送り出して「良い事柄についての良いたよりを宣明」させ,受け入れる心を持つ人たちを探させることを喜びとされました。現在,わたしたちエホバの証人の数は500万人を超え,地上の約1,200人に対して一人という割合になっています。地上の幾十億もの人々に良いたよりを伝えるのは容易なことではありませんが,神はイエス・キリストを通してこの業を導いておられ,心の正直な人たちを引き寄せておられます。そのため,「小さな者が千となり,小なる者が強大な国民となる。わたし自ら,エホバが,その時に速やかにそれを行なう」という,イザヤ 60章22節に記されている預言が,そのとおり成就しています。
5 知識とは何ですか。世の知恵については何と言えますか。
5 その時とは今であり,一つのことは明らかです。つまり,地上の幾十億もの人々は知識を必要としているということです。基本的に,知識とは,経験,観察,研究などによって得られた諸事実に通じていることを意味しています。この世は知識を積み重ねてきました。交通機関,医療,通信といった分野では進歩が見られました。しかし,人間が本当に必要としているのはこの世の知識でしょうか。そうではありません。戦争,圧制,病気,死などが,相変わらず人間を悩ませています。世の知恵はこれまでにも度々,砂嵐の砂のような,絶えず移り変わる,当てにならないものであることが証明されてきたのです。
6 血に関する見方の点で,神についての知識を世の知恵と比較すると,どんなことが分かりますか。
6 例を挙げましょう。今から2世紀前には,治療と称して,静脈から血液を除去する瀉血を行なうことが習慣になっていました。アメリカ合衆国の初代大統領ジョージ・ワシントンは,死ぬ前の数時間,何度も瀉血を施されました。ある時ワシントンは,「静かに死なせてくれ。もう長くはないのだから」と言いました。ワシントンの勘は当たりました。まさにその日,1799年の12月14日に息を引き取ったからです。今日では瀉血に代わり,人間の体の中に輸血をすることが強調されています。どちらの方法にも致命的な問題が付きまとってきました。しかし,神の言葉は初めから,「血……を避けてい(なさい)」と述べていました。(使徒 15:29)神からの知識は常に正しく,信頼でき,古くなることがないのです。
7 子供の養育に関し,聖書の正確な知識を世の知恵と比較すると,どんなことが分かりますか。
7 世の知恵が信頼できないことを示すもう一つの例を考えてみましょう。かつて幾年かの間,心理学者たちは,子供に対する放任主義を唱道しましたが,それを唱道した人の一人は,後に自説の間違いを認めました。ドイツ言語学会も,「いま我々が抱えている若者の問題は,少なくとも間接的には[放任主義]に起因する」と述べたことがあります。世の知恵は風にもまれるかのように揺れ動くかもしれませんが,聖書の正確な知識は揺るぎないものです。聖書は子供のしつけに関し,釣り合いの取れた助言を述べています。箴言 29章17節には,「あなたの子を打ち懲らせ。そうすれば,彼はあなたに休みをもたらし,あなたの魂に多くの喜びを与えるであろう」とあります。そのような懲らしめは,愛をもって施されます。というのは,パウロが,「父たちよ,あなた方の子供をいら立たせることなく,エホバの懲らしめと精神の規整とをもって育ててゆきなさい」と書いているからです。―エフェソス 6:4。
「まさに神についての知識」
8,9 あなたは,人間にとって本当に必要な知識について箴言 2章1-6節が述べている事柄を,どのように説明しますか。
8 パウロは教育のある人でしたが,こう述べています。「あなた方の中で,自分はこの事物の体制において賢い者であると考える人がいるなら,その人は愚かな者となりなさい。こうして,賢い者となるためです。この世の知恵は神にとっては愚かなものだからです」。(コリント第一 3:18,19)神だけが,人間にとって本当に必要な知識を与えることがおできになります。そのような知識について,箴言 2章1節から6節はこう述べています。「我が子よ,あなたがわたしのことばを受け入れ,わたしのおきてを自分に蓄え,そして,耳を向けて知恵に注意を払い,心を識別力に傾けるなら,さらに,理解を求めて呼ばわり,識別力を求めて声を上げるなら,銀を求めるようにそれを求めつづけ,隠された宝を求めるようにそれを尋ね求めつづけるなら,そのとき,あなたはエホバへの恐れを理解し,まさに神についての知識をも見いだすことであろう。エホバご自身が知恵を与えてくださるからである。そのみ口からは知識と識別力が出る」。
9 良い心に動機づけられている人たちは,神から与えられた知識を正しく用いることにより,知恵に注意を払います。そのような人たちは心を識別力に傾け,自分が学んでいる事実を注意深く比較考量します。彼らは事実上,理解を求めて,つまり,ある論題の様々な面が互いにどう関係し合っているかを見る能力を求めて呼ばわります。正しい心を持つ人は,あたかも銀を求めて土を掘るように,また隠された宝を尋ね求めるかのように努力します。では,受け入れる心を持つ人たちは,どんな貴重な宝を見つけるのでしょうか。それは「まさに神についての知識」です。それは一体何ですか。簡単に言えば,神の言葉聖書に収められている知識のことです。
10 わたしたちは優れた霊的健康を楽しむために何をしなければなりませんか。
10 神についての知識は,健全で,安定しており,命を与えます。それは霊的な健康を促進します。パウロはテモテに,「キリスト・イエスに関連した信仰と愛をもってわたしから聞いた健全な言葉の型を常に保ちなさい」と勧めました。(テモテ第二 1:13)言語には言葉の型があります。同様に,聖書の真理の「清い言語」にも,王国によるエホバの主権の立証という聖書の主題をおもな基盤とした,「健全な言葉の型」が備わっています。(ゼパニヤ 3:9)わたしたちは,心と思いの中にこの健全な言葉の型を保たなければなりません。心の病を避け,霊的に健康であるためには,聖書を生活に当てはめ,神が「忠実で思慮深い奴隷」を経路として設けてくださっている霊的な備えを十分に活用しなければなりません。(マタイ 24:45-47。テトス 2:2)優れた霊的健康を保つためには神についての知識が必要であるということを,常に忘れないようにしましょう。
11 人間は神についての知識を必要としている,と言えるどんな理由がありますか。
11 地上の幾十億という人々が神についての知識を必要としているのはなぜかに関し,他の理由も考えてみてください。それらの人は皆,地球と人間がどのように存在するようになったかを知っているでしょうか。いいえ,知りません。人は皆,まことの神とそのみ子を知っているでしょうか。どの人も,神の主権と人間の忠誠に関してサタンの引き起こした論争に気づいているでしょうか。いいえ,やはり知らないのです。一般の人々は人が年老いて死ぬ理由を知っているでしょうか。この問いに対してもやはり,ノーと言わなければなりません。地上に住んでいる人は皆,神の王国が今や支配しており,今が終わりの日であることを悟っているでしょうか。邪悪な霊の勢力に気づいているでしょうか。人は皆,幸福な家庭生活を送る方法について,信頼できる知識を持っているでしょうか。さらに,一般の人々は,楽園での喜びにあふれた生活が,従順な人間に対する創造者の目的であることを知っているでしょうか。それらの質問についても,答えはやはりノーです。ですから,人間が神についての知識を必要としていることは明らかです。
12 わたしたちはどのように「霊と真理をもって」神を崇拝することができますか。
12 人間は,イエスが地上での生涯の最後の夜に祈りの中で言われた事柄のゆえにも,神についての知識を必要としています。使徒たちは,「彼らが,唯一まことの神であるあなたと,あなたがお遣わしになったイエス・キリストについての知識を取り入れること,これが永遠の命を意味しています」とイエスが言われるのを聞いて,深く感動したに違いありません。(ヨハネ 17:3)そのような知識を適用することこそ,受け入れられる仕方で神を崇拝する唯一の方法なのです。「神は霊であられるので,神を崇拝する者も霊と真理をもって崇拝しなければなりません」と,イエスは言われました。(ヨハネ 4:24)わたしたちは信仰と愛に満ちた心に動かされるとき,『霊をもって』神を崇拝しています。では,どのように「真理をもって」崇拝しますか。み言葉を研究し,啓示された真理,すなわち「まさに神についての知識」に従って崇拝することにより,そうします。
13 使徒 16章25-34節にはどんな出来事が記録されていますか。わたしたちはその出来事から何を学べますか。
13 毎年,新たに幾十万という人々がエホバを崇拝するようになっています。しかし,関心を持つ人との聖書研究は長期間続けなければなりませんか。それとも,心の正直な人たちがもっと速くバプテスマの段階まで進歩することは可能でしょうか。例えば,使徒 16章25節から34節で述べられている牢番とその家の者たちに生じた事柄について考えてみてください。パウロとシラスはフィリピで投獄されていましたが,真夜中ごろに大きな地震が起きて牢屋の戸が開きました。牢番は囚人たちが皆逃げてしまったので厳しく処罰されると思い,自殺しようとしますが,パウロはそれを見て,自分たちは皆ここにいる,と牢番に知らせます。パウロとシラスは「エホバの言葉を彼に,またその家にいるすべての者に語(り)」ました。その牢番と家族は,以前に聖書を学んだことなどない異邦人でした。ところが,彼らは一晩のうちに信者になりました。それだけでなく,「彼もその家の者もひとり残らずすぐにバプテスマを受けた」のです。この時の状況は特別のものでしたが,新しい人たちは,基本的な真理を教えられた後,他の事柄は会衆の集会で学びました。今日でも,それと同様のことが可能なはずです。
収穫は大きい!
14 より短い期間で終わる効果的な聖書研究をもっと数多く司会する必要があるのはなぜですか。
14 もしエホバの証人が,より短い期間で終わる効果的な聖書研究をもっと数多く司会できれば,それはすばらしいことです。これは本当に必要とされています。例えば,東ヨーロッパの幾つかの国の人々は,聖書研究を希望する人たちの順番待ちリストに名前を載せてもらわなければなりません。そのような状況は他の場所でも見られます。ドミニカ共和国のある町では,5人の証人のところに余りにも大勢の人から依頼が殺到したため,全員の研究を司会することができませんでした。証人たちはどうしたでしょうか。関心を持つ人たちに,王国会館での集会に出席し,聖書研究の順番待ちリストに名前を載せてもらうよう勧めたのです。同様の状況が,地上の多くの場所に見られます。
15,16 神についての知識をもっと速く広めるために何が用意されましたか。これについてはどんな事実がありますか。
15 神の民の前には広大な区域 ― 収穫を待つ広い畑 ― が開かれています。「収穫の主人」であるエホバはより多くの働き人を遣わしてくださっていますが,成すべきことはまだ沢山あります。(マタイ 9:37,38)それで,『忠実な奴隷』は,神についての知識をもっと速く広めるために,聖書研究生が一回の研究ごとに霊的な進歩を遂げられるような,明確な情報を簡潔に提供するものを用意しました。それは新しい出版物で,これを使えば家庭聖書研究を比較的速く,おそらく数か月で終えることができます。また,この本は自分の鞄やハンドバッグに,あるいはポケットに入れて手軽に持ち運べます。エホバの証人の「喜びに満ちた賛美者」地域大会に集った何十万という人々は,「永遠の命に導く知識」と題する,192ページから成るこの新しい書籍を受け取って大変喜びました。
16 この「知識」の本については,いろいろな国の執筆者たちが資料を準備し,そうした資料が注意深く最終的な形にまとめられました。ですから,この本はどの国の人々の関心をも引きつけるはずです。では,この新しい出版物が世界中の様々な言語で発表されるまでには,長い時間がかかるのでしょうか。そのようなことはありません。192ページの本は,大型の本よりも早く翻訳できるからです。統治体の執筆委員会は,1995年10月の時点で,この本を英語から130余の言語に翻訳することを承認しました。
17 「知識」の本は使いやすいはずですが,それにはどんな要因がありますか。
17 研究生たちは「知識」の本の各章の内容を学んで,霊的にかなり速く進歩できるはずです。この本は,聖書に基づく真理を,人を築き上げるような方法で提示しています。偽りの教理については,詳しく述べていません。この本は言葉と論理的な展開が分かりやすいので,聖書研究を司会し,神についての知識を把握するよう人々を援助するのは,容易なはずです。引用聖句のほかに,研究生が討議に備えて調べることのできる参照聖句もあります。それらの聖句は時間の許す限り研究中に読むこともできますが,付加的な資料を持ち出すのは賢明ではないでしょう。要点がぼやけてしまう恐れがあるからです。そうするよりもむしろ,聖書研究を司会する人はこの本の各章が明らかにしている事柄を識別し,それを研究生に伝えるよう努めるべきです。ということは,教え手が勤勉に研究し,主要な考えを頭の中ではっきり理解していなければならないということです。
18 「知識」の本の使用に関して,どんなことが提案されていますか。
18 「永遠の命に導く知識」の本は,弟子を作る業をどのように速めることができるでしょうか。192ページから成るこの本は比較的短期間で研究し終えることができ,「永遠の命のために正しく整えられた」人であれば,この本を研究することにより,エホバに献身してバプテスマを受けるのに必要な事柄は十分に学べるはずです。(使徒 13:48)ですから,宣教において「知識」の本を十分活用しましょう。もし聖書研究生との研究が別の本で相当進んでいるのであれば,その本を最後まで研究するのが実際的かもしれません。しかし,さほど進んでいないのであれば,「知識」の本に切り替えて聖書研究をするよう提案されています。この新しい出版物を1冊全部研究したあと,同じその研究生と2冊目の本を研究することは提案されていません。真理を受け入れた人は,エホバの証人の集会に出席すると共に,自分で聖書やキリスト教の様々な出版物を読むことにより,知識を増し加えてゆくことができます。―ヨハネ第二 1。
19 「知識」の本を用いて聖書研究を司会する前に,「わたしたちの奉仕の務めを果たすための組織」の本の175-218ページを復習するのはなぜ有益ですか。
19 長老たちは,エホバの証人としてバプテスマを受けることを望む,バプテスマを受けていない伝道者と復習の討議をしますが,「知識」の本は,そのとき長老から尋ねられるすべての質問に答えられるよう当人を助ける目的で書かれています。ですから,司会者には,今行なっている聖書研究をこの新しい出版物に切り替える前に,数時間を割いて,「わたしたちの奉仕の務めを果たすための組織」という本の175ページから218ページにある質問を復習することが勧められています。a そうすることは,「知識」の本を用いて聖書研究を行なう際に,そうした質問の答えを強調する上で役立つでしょう。
20 あなたは「永遠の命に導く知識」の本を用いて何を行なうつもりですか。
20 どこに住んでいる人も,その良いたよりを聞く必要があります。そうです,人間は神についての知識を必要としています。それで,エホバはご自分の証人たちによってそれを与えておられます。今わたしたちは,愛ある天の父が,忠実で思慮深い奴隷を通して与えてくださった新しい本を手にしています。あなたはこの本を使って真理を教え,エホバの聖なるみ名に誉れを帰しますか。永遠の命に導く知識を多くの人に得させるため懸命に努力されるあなたを,エホバは必ず祝福してくださるでしょう。
[脚注]
a ものみの塔聖書冊子協会発行。
どのように答えますか
□ あなたは比喩的な心臓,つまり心を,どのようなものとして説明しますか
□ 神についての知識とは何ですか
□ 人間が神についての知識を必要としているのはなぜですか
□ どんな新しい書籍が入手できますか。あなたはそれをどのように用いるつもりですか
[10ページの図版]
地上の幾十億という人々が神についての知識を必要としている,と言える理由は数多くある