あなたは政府に何を望みますか
政治家や支配者の宣言文を読むと,人類が幸福であるために真実に必要としている多くの事柄を彼らがよく知っていることにわたしたちは気づきます。政治家は人びとの票を獲得するために何を約束したらよいかを知っています。これらの事実から明らかなように,世の指導者は概して,人民の指導者としての自分の責任に無知であったり,気づいていなかったりするわけではありません。しかしほとんどの人は,そうした必要が満たされない場合が多いことを認めます。それを政府に期待するのは無理なことでしょうか。
実際,人間男女が幸福であるために要求される事がらを述べるのに,多くの紙面は必要ではありません。それはいくつかの簡単で基本的な要求に過ぎないからです。人びとは,たとえば,政府が自分たちに生活必需品を全部支給するように期待しているわけではありません。また,自分たちの生活のあらゆる行動を政府が規制することを欲しているのでもありません。自分の楽しめる職業に従事する自由,それとともに,家族をささえるためにいつも仕事を与えられるという保証を望んでいるのです。労働の成果を楽しむ少しの余暇を持つこと,危害や妨害を加えられたり,強盗にあったりする心配なく,家族と平和に暮らすことを望んでいるのです。人びとは,汚染されていない清浄な環境が与えられたら,また娯楽のために,自然の美と野生の動植物を楽しめるきれいに整えられた場所があったらと願っています。
また,人間男女が真に幸福であるためには,自由でなければなりません。思想の自由,崇拝の自由,また他人の自由と権利を侵害しない限り,信じていることを話し,集まり合い,適当と思う行動を取れる自由がなければなりません。
そうした自由と安全が得られる所に住むことは幸福ではないでしょうか。それを保証できるのは,人びとの協力を得た良い政府のみです。もし,国籍や人種の違う人びととほんとうの親しみをもって文通したり,行き来して交わったりすることができたなら,また,その人たちが戦争をしかけはしないかと疑ったり恐れたりしなくてよいなら,それはなんとここちよいことでしょう。
この点に問題があります。たとえ各国の政府が,国境内に安全と平和をもたらしたとしても,国家間の平和が保証されることにはなりません。そのためには世界政府が必要です。
幸福に欠かせない別の要因があります。それは人びとの健康です。この問題と取り組む面で,諸政府は最近に至るまで何ほどのこともしてきませんでした。言うまでもなく,人の幸福は,自分が健康でないかぎり,また自分の愛している人たちが同じく健康でないかぎり完全とは言えません。そして,はちきれるような健康,平和また自由を享受している人は,だれひとりとして死にたいとは思いません。したがって,曇ることのない真の幸福のためには,死の恐怖が取り除かれねばなりません。しかしどの政府がそれをなしえますか。どの政府が,民のために,命をささえる確実な物質的備えを設け,同時にその精神的,霊的な必要を満たすことができますか。いったいそうした可能性があるのでしょうか。
民が望み,かつ基本的に必要とする物事をすべて,またその大部分でもよいから提供しうる政府があるのでしょうか。願わしい状態をもたらしうる愛や協力の精神を民のうちに浸透させる政府があるのでしょうか。あるいは,その目標に向かって進歩がなされていると信ずる理由があるのでしょうか。今日に至るまでの人間の支配に関する記録は何を示していますか。