読者からの質問
● 「神の自由の子となってうける永遠の生命」と題する本の328頁にあるさし絵はノアの3人のむすこを描いていますが,ひとりの皮膚が他の二人より黒かったことはどうしてわかりますか。黒人はだれの子孫ですか。―アメリカの一読者より。
問題のさし絵は動物を屠殺している3人の男の絵です。この3人はノアの3人のむすこ,セム,ハム,ヤペテを表わしています。(創世 10:1)色の黒い人はハムです。ハムの名は「浅黒い」または「褐色の」という意味で,「暑い」という連想を伴っています。通俗および批評的聖書百科事典第2巻754頁に次のように出ています。「通俗の説によれば,南方の民族はすべてハムから出ている。(ギリシャ語と同様,ヘブル語の語根ハーム……“日焼けした顔”もある程度この説を裏づける)」。ジェイムス・ヘースチングスの聖書事典によれば,ハムを意味するヘブル語は「黒」を意味するエジプト語と関係があり,このエジプト語のことばは砂漠の砂と対照してエジプトの黒い土をさしています。ハムの名が誕生の時につけられたとすれば,彼は兄弟よりもやや色が黒かったものと思われます。さし絵はそのことを示しています。
ハムにはクシ,ミツライム,プテ,カナンの4人のむすこがありました。ペリシテ人,エジプト人などミツライムの子孫は黒人種ではありません。(創世 10:6,13,14)カナンもその子孫も黒人種ではありません。しかしハムの子プテはアフリカ東部に定着したことが聖書地図に示されており,その子孫は黒人種です。(ナホム 3:9)ハムの子クシについて言えば,彼が(おそらくプテとともに)黒人種すなわち皮膚の黒い人種の先祖であることは明らかです。(エレミヤ 13:23)その子孫のある者たちが定着した地方を見てもそれはわかります。(創世 10:7)この事実は,カナンの受けたのろいを黒人種に結びつけようとする一部の人の説のまちがいを証明しています。クシの兄弟カナンからは黒人種は生まれず,カナンはパレスチナのカナン人諸部族の先祖となったからです。(創世 9:24,25; 10:6,15-18)色の黒い人種はハムの子孫であり,したがって前述のさし絵は,その名と一致してハムをその兄弟よりも色の黒い人として描いています。
● ヨブ記 1章4節はヨブの子供たちが誕生日を祝ったことを示していますか。―英国の一読者より。
この節は誕生日のことをさしてはいません。少し調べればそれは明らかになります。その節にはこうしるされています。「その[ヨブの]むすこたちは,めいめい自分の日に,自分の家でふるまいを設け,その三人の姉妹をも招いて一緒に食い飲みするのを常とした」。
英語の聖書の中で「誕生日」ということばは創世記 40章20節に出ており,その節は異教徒であるエジプトのパロが誕生日を祝ったことをしるしています。ストロングの聖句索引によってみると,「誕生日」は二つのヘブル語すなわちヨーム([日の暑い時間としての]日を意味する)と,ヤラド(子を産むの意)から出たフレデスとの復合語です。しかしヘブル語聖書において「日」(ヨーム)はしばしば単独に用いられ,単にある日を意味します。「日」と「誕生日」との区別は,両方の表現が使われている創世記 40章20節において認められます。「さて3日[ヨーム]目は パロの誕生日[字義どおりにはパロの誕生(フレデス)の日(ヨーム)]であった」。
ヨブ記 1章4節にフレデスは現われておらず,ヘブル語本文においてヨームだけが使われています。ゆえにそれはヨブのむすこたちが「めいめい自分の誕生日に」ではなく,「めいめい自分の日に」ある事柄をしたことを述べているのです。
ふるまいが設けられた理由について,聖書は,くわしく述べていません。収穫の時など特定の時節に。7人のむすこが一族の会合を設け,それぞれのむすこが「めいめい自分の日に」自分の家で主人役となって,7日にわたるふるまいを回り持ちで設けたとも考えられます。あるいはこのふるまいは,1年のうちの異なった時期に一族が再会するという性質のものであったかもしれません。神を敬わない人が飲食と遊興にふける奔放なお祭り騒ぎとは異なってこれが楽しい,暖かい家族の集まりであったことは,むすこたちが思いやり深く姉妹たちを招いた事実からも伺われます。