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エホバの王国を告げ知らせるものみの塔 1953
塔53 9/15 321–326ページ

家族一致の影 約束を与える

『ほんとに私は悟りました,神は偏頗な方ではなく,神を畏み正義を行う者は民族の如何を問わず,受入れ方であることを』― 使行 10:34,35,口語。

1,2 (イ)キリスト教国内のどんな状態が,神の礼拝を空しいものとしましたか?(ロ)同様などんな状態が異教国内に存在して居ますか? だが,神のどんな御目的が確かでありますか?

ヱホバ神の正しい御要求を忠実に遂行して居る者なら如何なる者であつても,神の民の中で劣等感や孤独を懐く必要はありません。クリスチャン会衆内に満ち満ちて居る正義と公平とは,ヱホバの証者の最初の会衆がエルサレムに生れる前既にイエスキリストによつて打ちたてられた原則なのであります。即ち,西歴33年のペンテコストに於いて,神の活動力が120人の弟子に注がれた直後,エルサレムに最初のヱホバの証者が生まれたのでありますが,それ以前既にイエスによつてうちたてられた原則なのであります。この点に関して,キリスト教国の人々は,他の多くの人々と同様に,教育を受けた牧師階級という特殊階級をつくつて,礼拝を空しきものにしました。その牧師達は,制度内で優越した立場を占め,自分達の例にならい或る特定の人々を高くします。その人々は勢力を振るい大衆を軽んじるのです。そして多くの誠実な人々は遂に自分達が歓迎されず,必要とされない者であると感ずるにいたるのです。

2 この状態はただにキリスト教国だけに限られて居る事でありません。全世界にまたがつて,分裂の壁が立ちふさがり,或人々には人類が永久に分裂するかのように見えます。家族は家族の上に,民族は民族の上に生じ,階級は更に幾つかの小さい階級に分裂し,或国々に於いては,世襲的階級制度があり,それによつて夫々の社会的地位やその全生涯の歩みが生れた時から宿命的に決定されて居るのです。だがそれについて如何なる手をうつことが出来るでしよう?と尋ねる人も居ることと思います。確かに,我々の世代に於いては救われる希望が少しもありません!『騙されるな,神は侮らるべき方ではない』(ガラテヤ 6:7,口語)一つに一致調和した家族関係こそヱホバの御目的であり,これは失敗することなく必ずや全地に行われるでしよう。ヱホバの御目的の達成に信頼する人々は,現在ヱホバの真の会衆内に存する機会の平等と承認の公平が,初代会衆時代と同様に熱意をもつて守られなければならないと熱心に主張して居ります。

初期の御準備,目的を示す

3 アダムの生殖力のうちに,神の広大な如何なる御目的があらわされましたか?

3 エデンの園に居た時にアダムとエバは,将来に全地を満たす一家族になるという前途を有して居りました。彼らの偉大なる親ヱホバが彼らに与えた生殖力こそ実にこの大いなる人類家族内に存すべき一致の証拠でありました。何故なら,地上のあらゆる人はアダムの体から出て,偉大なる神の像に似せて生れると断言出来ないでしようか? この広大な生殖計画に於いて彼の相手となつた彼の妻自身も,彼自身の助骨よりつくられ,「彼の骨と骨,肉と肉」であつたではありませんか? そしてヱホバ神が彼らと子孫の為に認めたその結合は,彼ら最初の両親が何千何万,否何百万もの子孫を生み,その子孫がすべて彼ら二人と同じ人間で,すべてが互に縁故関係を持ち,すべてがアダムの子であり神の子である為でした。―創世 1:28。

4 アダムが神の御目的を無視した結果は何でしたか? そして,カインはその状態を如何に一層悪化させましたか?

4 最初の美わしい赤子が創造主の栄光の為に未だ生れぬ時,アダムが神より受ける永遠の生命の権利を自ら棄てて,神の一大家族制度から文字通りに追い出されてしまつたとは,何たる悲劇でありましよう! そして,アダムの最初の息子が,苦しみのうちに産まれた時,希望を願つたその母が野心的にカインと呼んだのは,ヱホバの御目的に就いて何という嘲りなのでしよう! 何故なら,彼女はこう言つたからです ―『我ヱホバによりて一個の人を得たりと』(創世 4:1)しかし乍ら,カインは肉の父の子であることをはつきりと表わしました。カインは間違えた崇拝をしてから反抗し,自分の弟を殺して,アダムの家族の一致の為にのこされたものを断絶してしまいました。『何故彼は兄弟を殺したか。彼の行いは悪く兄弟の行いがよかつたからである。』― ヨハネ第一 3:12,口語。

5 家族を通じて全地に人を住ましめる神の御目的は,如何に表明されましたか?

5 しかし乍ら,全地に人を満たすという神の御目的が依然として家族制度を通じて遂行されるという事は,約1526年後に神が明白に表明した所であります。神の記録はこう宣明して居ます ―『ノアの子セム,ハム,ヤペテの伝はこれなり。洪水の後,彼らに子等生れたり。是らより諸国の洲島の民は分れ出て各々,其の方言と其の宗族と其の邦国とに循いて其の地に住めり』(創世 10:1,5)生み殖えよとの聖命は模型的な意味でノアに与えられ,70の家族が出来たことにより成就しました。その70家族は創世記 10章に記されて居り,族長社会として建てられました。更に857年を経て,ヱホバが家長アブラハムの子孫を組織して,一つの国民をつくり,各支族に分けて,『その宗族に循い,その父祖の家にしたがい……自己の出生を述た』時,その点が一層強調されました。(民数 1:18)まこと,家族関係は,疑いもなく神の創りしものであります。そして,調和の強い紲の為の神のこの御準備を正しく認識する人々に対して,神は豊かな祝福を与えます。それは詩篇記述者が次の如く述べた通りであります。『然はあれど貧しき者を患難のうちより挙げてその家族をひつじの群のごとくならしめ給う。』

6 神は閥族的家族社会をつくり給わなかつたという事は,如何に説明できますか?

6 だが或人々は反対して次の様に言うでしよう ― 即ち,この事実は実際上,階級社会を認めて居り,神は世襲的家族制度を認めて居るばかりでなく,それらの例に於いて世襲制度を実践させて居るではありませんか? そして,この支族が不調和を来たし,遂には階級制度を生ぜしめて,他に認められる優越或は強制的な優越をもつて一つの家族が他の家族の上に立つ結果とならないでしようか? 神の民に関して,神の為された過去の歴史に精通して居たパウロは,いいえと答えます。パウロは,アレオパゴスでアテネの人々,及び多くの外国人の前に立つて,上手にしかも力強く階級制に関する見解を述べました ―『神は唯一人の人からすべての民族をつくり,地の全面に住ましめ,それぞれの時代と彼らの住居の境界とを定めて居られる。これは人々が神を求めるように,また神を探しさえすれば,きつと見出せるようにする為である』(使行 17:26,27,口語)又,パウロはこの点に関し新しい原則をたてたのでもありません。何故なら,14年程前,ペテロは,割礼なくして神に受け容れられた最初の異邦人を認めて次の如く申したからです。『ほんとに私は悟りました,神は偏頗な方ではなく,神を畏み正義を行う者は民族の如何を問わず受け入れ給う方であることを。』(使行 10:34,35,口語)ここに於いて,本来のユダヤ人ペテロは,神の活動力の霊感のもと,モーセがユダヤ民族に対する神の仲保者として古代のユダヤ人に銘記せしめたことを再びくり返したのであります。『汝の神ヱホバは……人を偏り視ず又賄賂を受けず。』(申命 10:17,ア標)又,忠実な王ヨシャパテが,国民を審く時次の様に警告したことも著明であります。『汝らその為すところを慎め,汝らは人の為に裁判するに非ずヱホバのために裁判するなり,裁判する時にはヱホバ汝らとともにいます。されば汝ら……つつしみて事をなせ,我らの神ヱホバは悪しき事なく人を偏視ることなく賄賂を取ることなければなり。』(歴代下 19:6,7,ア標)されば,ヱホバが御目的遂行の為にとられる方法の如何に拘らず神の正義と公平の原則は,絶対に変りません。又神が家族関係の故に或特定の人に恵みを与えることも,又或特殊な家族だけを偏りみることも,絶対にあり得ないのです。神のこの正義と公平の原則は,神と人類の交際の始めから定められ,神の聖い宣言中の除き得ない部分として記録されて居るのです。今日の世界を苦しめて居る不調和と階級差別は,神が人類に定めたとりきめの結果ではなく,神の御心と御目的に直接反逆する組織的な努力の結果であります。

7 ノアによつて組織された多くの家族単位は,何によつて共通な一致を維持出来ますか? それを壊るものは何ですか?

7 この結論が真実であるという事は,記録によつて証明されて居ます。即ち,大洪水後に於いて神が定めた族長社会に反逆した記録によつて証明されて居ます。既に学んだ通り,神は全地に人を住ませる為にノアを通じて御準備なさいました。それはノアの子孫である70人の族長によるものでした。鋭敏な組織者,ノアは不完全な人間が野望を持つときに落ちる陥穽を知つて居ましたから,或る家族を他の家族の上に高めませんでした。又自分は勿論,他の如何なる者が王となつても自分の兄弟を支配することにも反対し斥けました。ノアは,人間が若しヱホバを最高至上者として認め,ヱホバの律法を人間の正しい行動原則として認めるならば,他の如何なる連合勢力をも必要としないという事を知つて居ました。ノアは,人々がそれらの原則に固く従うならば,それ以後に生ずるすべての家族とあらゆる人々が平和と調和のうちに『全地のすべての面に住む』ことが出来るという事を,自分の行動によつて主張したのです。その証拠には如何なる階級差別であつても,その階級差別は調和ある社会を砕いてしまいます。この真実性を証明する次の事件は何であつたでしよう? ノアはその生存中に,その様な計略がなされたのを眼のあたりに見たのです。

『優越人種』計画は破滅を招く

8 閥族制度をつくろうとする最初の組織的努力は何でしたか? それはどんな結果に終りましたか?

8 ノアの末の息子ハムの血統より,カインの如き倣慢不遜な者があらわれました。彼は優越な立場を占めようとの野心にもえて居ました。誰も知る通りそれはあの有名なニムロデであります。彼の名は今でも気ままに動物を殺すことに関係づけられて居ます。そのニムロデは,ヱホバに反逆して,一人の人間が支配する世界建設計画をたてました。彼は,当時良く打ちたてられ認められて居た家族一致を固く守りませんでした。又ノアが神の御心にしたがつて,家族を地の果にまで移し及ぼさんと計画した事をもかえりみませんでした。それどころか彼は反対の方角に働き始め,異つた目的を達成しようと活動しはじめました。中心人物の政府を高め,暴力で人々を征服しようとの彼の計画は,明らかに勢力を増しました。何故なら,彼に従う者について次の如く記されて居るからです。『又曰けるは去来邑と塔とを建て其の塔の頂を天にいたらしめん,斯くして我ら名を揚て全地の表面に散ることを免がれんと。』ヱホバが家族単位に分けた目的はその様なことの為でなく,又その様な『優越階級』的態度に嫌悪を持つたことを表明する為に,ヱホバは御自分の目的を強引に遂行しました。即ち,ただ彼らの言葉を混乱させるだけの方法でそれを遂行したのです。『ヱホバ遂に彼らを全地の表面に散らし給いければ,彼ら邑を建ることをやめたり。』(創世 11:4,8)人間がヱホバに反逆して,優位な『世襲』制度をつくろうとして為した最初の組織制度は,遂に不名誉な敗北を蒙つて終つたのであります。

9 第一番目の世界強国が為した同様な努力は何でしたか? それは如何なる結果をもたらしましたか?

9 然し人間は以後その様な計略を決して止めたわけではありません。又,その厳しい教訓の為に,他の国民も『優越人種』になろうとの烈しい努力をしなくなつたわけでもありません。アダムより受けついだ我儘と,自分の兄弟を支配しようとの飽くことを知らぬ慾望に駆られて,今度は第一番目の世界強国エジプトが『最高人種』の戦土としてたちあがりました。エジプト人は,自分達の国の奴隷であるイスラエル民族が増え,戦争の時,自分達に刃向いはしないかと恐れてイスラエル人を消滅せしめようと計画しました。『かかりしかばパロそのすべての民に命じていう,男の子の生るるあらば汝らこれを悉とく河に投いれよ,女の子は皆生しおくべし。』(出埃 1:22)エジプト人は,イスラエルの男子を根絶させることによつて,イスラエルの女子は結局エジプト人と結婚しなければならなくなり,その人種は次第にエジプト人種に吸収され,エジプト人が覆えされるという危険もなくなるであろう,と考えたのです。だが,彼らは,ヱホバの御目的と御力や,イスラエル民族自身のゆるがぬ信仰は考慮にいれませんでした。ヱホバは己の民の叫びを聞いて救助者をたて,御自分の腕をさしのべて,全エジプト人の眼の前でイスラエル人を導き出し,第一番目の世界帝国の力を粉砕したのであります。この様にして,エジプトの『優越人種』計画は破滅の結果を招いたのであります。そして,この階級或は人種の優越問題に関する神の立場が確実に表明せられ,エジプト人は神の呪を受けたのであります。

10 同様な型にならつて生じた現代的『優越人種』計画は何でしたか?

10 現代に於いても,ヱホバ神は『優越人種』として傲慢になる人々に対する怒りの御手を表明して来ました。現代史の頁をめくれば,同様な病的自負心と偏狭心とが,ヒットラーのうちにみられるのです。即ち,彼が現代に於いて人種の集団虐殺を計つたことにそれがあらわれて居ります。彼が当時,神の撰民であるヱホバの証者に対して烈しい憎しみを持つて居たということは明白な事実であります。そして,肉的なユダヤ人達は嘗て神の撰民でしたから,常にサタンとサタンにあやつられる者の攻撃を受けてきました。ですから彼らがやはり圧制の鉄の手に苦しめられ,ナチ支配下の国々に於いて絶滅の淵近くまで追いつめられたのも当然と言わなければなりません。だが,この狂つた人間がヱホバの忠実な証者達を虐待し,御国の音信に烈しく反対したのち,彼も亦地におとされ,彼の提唱した『優越人種』も共に地におちたのであります。その様な『優越心』を持つものはすべてよろしく注意すべきであります。

11 ヱホバがイスラエルを高くした時にも,ヱホバは優越人種を喜び給うたのでないとどうして言えますか?

11 ここに於いて,誰かが再び反駁するかも知れません。次の如く言うかも知れません。ヱホバ自身がイスラエル人を自分の民として撰び,彼らを他の凡ゆる民族の上にたてた時,ヱホバはその原則に反対しなかつたではありませんかと。又ヱホバは,ユダヤ民族の人種的優越を喜んで居たと言えないだろうかと。だが我々は再び神の御言葉に耳を傾け,力強い『否!』の御声を聞きます。ヱホバはイスラエル民族を撰んだ理由について,イスラエル人を欺いたのではありません。『汝の神ヱホバは地の表の諸の民の中より汝を撰びて己の宝の民となし給えり,ヱホバの汝らを愛し汝らを撰び給いしは,汝らが万の民よりも数多かりしによるにあらず,汝らは万の民の中にて最も小さき者なればなり。ただヱホバ汝らを愛するに因り,また汝らの先祖たちに誓し誓を保たんとするによりてヱホバ強き手もて汝らを導きいだし汝らをその奴隷たりし家よりエジプトの王パロの手より贖いいだし給えるなり。』(申命 7:6-8,ア標)この民族が優れて居ることは,疑いもなく彼らがヱホバの御名を高める民であるという事によるのであります。何故なら詩篇記述者が次の如く歌つたからであります。『ヱホバはその御名のゆえをもて彼らを救い給えり,こは大いなる能力をしらしめんとてなり。』― 詩 106:8。

12 神が,アブラハムとの友情の為にイスラエル人を一民族として永久に保つのでないのは何故ですか?

12 まこと,それは神が彼らの先祖たちと結んだ誓の為であると神が申しました。然し,神がそれによつて,そのすべての民を自分の民として永久に保たねばならないという絶対的義務は有して居なかつたという事は,彼らがエジプトから脱出して2年目に荒野で生じた事柄が良く示して居ります。カナンの地を偵察する為に12人のスパイ使者がつかわされましたが,その中の10人が恐しがつて良くない報告をしてからは,ヱホバはこの民族に怒りをもちました。即ち信仰なき事の明白なあらわれを怒り給うたのです。『ヱホバすなわちモーセに言いたまわく,此の民は何時まで我をかろんずるや,我もろもろの体徴をかれらのうちに行いたるに彼ら何時まで我を頼むことをせざるや,我疫病もて彼らを撃ち滅し汝をして彼らよりも大いなる強き民とならしめん。』(民数 14:11,12)何世紀か後,洗礼者ヨハネが,アブラハムの裔である或人々を非難した時,彼も上述の点について証言したのであります ―『蝮の子孫よ。やがて来るであろう御怒りを避けるようにと,誰がお前たちに教えたのか。それならば,悔改めにふさわしい実を結べ。お前たちは「私たちの祖先にはアブラハムがある」と自分に向つて言い出してはならない。私はお前たちに言う,神はこれらの石ころからでも,アブラハムの子らを起こすことがおできになる。』(ルカ 3:7,8,口語)明らかに,ヱホバは人間自身の為や,人の立場に伴う所謂『優位』の為だけで人々に興味を持つことはあり得ないのです。又,神はここで彼らの祖先アブラハムとの友情のゆえをもつて,神のお悦びを永久に持ち得る『優越人種』をつくつたのでもありません。ヱホバ神はその正義の原則を決して変えず,エデンに於いて打ちたてた立場を常に維持して居ります。

模型的イスラエル,結合の家族

13 ヱホバは,祭司職が特別な閥族的階級でないという事を如何に強調しましたか?

13 ですから,イスラエルの制度内に於いて,律法のもと,如何なる階級差別も許されなかつたことについては何の不思議もありません。又,ヱホバが祭司職をたて,祭を行う者とし,イスラエル民族の神に近づく方便とした時にも,ヱホバが世襲制度をつくつて居たのでない事は当然であります。ヱホバ神は罪に苦しめられて居るユダヤ人の状態を強調して居たのですから,礼拝に於いてヱホバに近づき得る為何らかの準備が必要でありました。祭司は,この職の為に潔められたのですから,律法の契約によつて定められた犠牲と供物を通じて,神に近づく方便を準備することが出来たのです。然し,祭司達がこの特別な特権を与えられても,ヱホバはやはり,御自分がすべてのイスラエル人の神であるという事を強調しました。『ヱホバは言い給う,その時,われはイスラエルの諸の族の神となり,彼らは我が民とならん。』― エレミヤ 31:1。

14 レビ族はどのように恵まれた地位につきましたか?

14 更に最初神の別ち撰び給うた者は,レビ族でありませんでした。エジプトに於いて,ヱホバの天使が国全体を経めぐつてエジプトの初子すべてを殺した時,イスラエル全家族の初子はすべてヱホバにより聖め別たれ,生命を救われてヱホバの所有となりました。この様にして,全家族はヱホバの所有として全く同様の立場を有つて居ました。さて,古代の慣例によれば,長子は時至るに及んで祭司として仕えるのが普通でありました。然し,ヱホバには他に頼らずに自分ですべてを行う権利があります。それで国家的な祭司職をつくるに及んで,レビ族を起用したのであります ―『ヱホバすなわちモーセに告げて言い給わく,視よ我イスラエルの子孫の中なる始に生れたる者すなわち初子の代にレビ人をイスラエルの子孫の中よりとれり,初子はすべて吾が有なり我エジプトの国の中の初子をことごとく撃ちころせる時,イスラエルの初子を人も畜もことごとく聖別て我に帰せしめたり,是はわが有となるべし,我はヱホバなり。』(民数 3:11-13。又44:51節をも見よ)かくして,ヱホバは律法の契約を紹介するにあたり,イスラエルの全家族に次の如く申したのです。『されば汝らもし善く我が言を聴き,わが契約を守らば,汝らは諸の民に愈りてわが宝なるべし,汝らは我に対して祭司の国となり聖き民となるべし。』(出埃 19:5,6)ですから,ヱホバがレビ族によつて高位な祭司職を始めたのでないことは確実であります。又それによつて階級差別制を設けたのでもありません。

15 (イ)イスラエルに於いて,家族が必要以上には重要視せられなかつたということを示す証拠は何ですか?(ロ)階級差別は如何にして阻止されましたか?

15 又,イスラエルに於いて,家族が普通以上には重要視せられなかつたという証拠に,異つた族の間で結婚することも許されたのであります。尤も,結婚によつて土地の相続がその族から他へうつつてしまう様な場合は許されませんでした。(民数 27:5-11; 36:1-13)外国人との結婚は許されなかつたけれども,或場合に於ては戦で捕虜にした婦人と結婚する事すら許されました。(申命 21:10-13)キリストイエスの祖先であるラハブという女性がサルモンによつてユダ族に迎えられ,サルモンと結婚したことや,ルツがボアズの妻となつた場合を銘記して下さい。(マタイ 1:2-5。ヨシュア 6:23,25。ルツ 4:10,13)結婚の問題に於いて更に著明なことは,男が僕であつても,自分の主人の娘と結婚することが出来たという事です。(歴代上 2:34,35)この事より,イスラエルに於いては,僕は非常に恵まれた地位を占めて居たという事が分ります。奴隷制度が認められて居たことは本当ですが,イスラエル全国民はすべてヱホバの奴隷であるという事が強調されたでありませんか?(レビ 25:55)更に血統上から見てアブラハムの子孫をその兄弟の永久的な奴隷として強制的に売り渡すことも許されませんでした,(出埃 21:2-8。レビ 25:39-55。申命 15:12-18)加うるに,どんな方法によつてであろうと,僕をしいたげることは出来ず,反つて僕の待遇に充分の考慮を払わねばなりませんでした。主人の手によつて僕が傷を負うならば,それを認めて罰を受けるか或は適当な償をしなければならず眼や歯を失わせた理由でその僕を自由にしてやることすらしなければなりませんでした。(出埃 21:20,21,26,27,32)又給料を後らせたり差しひかえたりすることも出来ず,常に速かな支払をしなければなりませんでした。(レビ 19:13。申命 24:14,15)従つて次の事が明らかになります。即ち,イスラエルに於いては,階級はあつたけれども,律法は生活上の地位の為に,或群や或個人に不利な差別をすることを絶対に許さなかつたという事が明白になります。ただその国民の敵となつた者のみが,追放されるか,或は追放人と考えられたのであります。―申命 7:1-3。

16 本国生れの者と他国人に対して平等な唯一つの律法が与えられたという事は何を描いて居りますか?

16 しかしながら,我々は再びここに神の憐みが表明されたのを知ります。ヱホバはイスラエル民族に与えた地に不法に居住する者すべてを滅せという積極的な命令を与えましたけれども,ユダヤ人に好意をよせて居た他国人に対しては特別な御準備をしました。即ち,若し彼らが進んで割礼を受け,イスラエルの律法すべてを守るならば,彼らはイスラエル民族の一部として受けいれられ,ユダヤ人として生れた者と同様に多くの祝福を受けることが出来ました。(民数 15:14-16)従つて,イスラエル民族は,あらゆる点に於いて,今日に於けるヱホバの民の会衆内に存する調和を美しく描いて居ると言えましよう。自国生れの者と他国人の双方に対する一つの律法は,油そそがれた『小さい群』と『他の羊』の双方に対する唯一の神権的助言を良く描いて居ります。両者は一緒に住み『一つの群』となり,全く分裂なき一家族となつて居ります。

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