神が全地の王となる時
「永遠の福音」大会において,57万5632人がこの講演を聞きました
1 (イ)すべての人の共通の願いは何ですか。(ロ)この問題に関して時宜を得たどんな質問に直面しますか。
世界のあらゆる国の人々は,政治をよくすることを望んでいます。人々の望む通りのよい政治を行なう力が自分たちにあると確信する政治家は,政治権力を握ろうとし,それを保持しようとします。かりに世界中の人に選択の自由が与えられ,すべての大人が全く自由に投票できる選挙を行なったとすれば,だれが全人類を治める王あるいは支配者としてすべての人から一致して選ばれますか。すべてとまで行かなくても大多数の人から,全世界の支配者として望まれるのはだれですか。世界の指導者と目される人あるいは人々は,このような地位につくべき候補者をあげることができますか。世界的にきわめて重要なこの地位につく資格を持つ者として,世界の指導者の信任を得る人がいますか。このような務をりっぱにはたせる人がありますか。かりにあったとしても,その死後にはだれが後継者となるのですか。人間は何時までも多くの国家にわかれ,それぞれの領土を守り,独自の支配者,独自の形態の政府と法律を持つのですか。これは現実的な問題です。このような問題をしらべるとき,全人類のおかれている困難な事態が痛感されます。
2 現実的な人々は,独裁政治をどのように見ますか。
2 今日,現実を知る多くの人は,たとえ各部門の担当者が補佐するにしても,世界の支配を一人の人に委ねるのは危険なことを知っています。不完全で,しかも利己的な人間の性質を知り,理解している人は,このような考えに賛成しません。世界を治めるのは,一人の人にはとうていなし得ないことです。
3 今日の政府の直面している問題をあげなさい。
3 では人類家族を治める統一した支配の必要がますます大きくなっている現在,どんな道をとるべきですか。一国また一地方の政府を運営する費用は,年々増加しています。機械が人間の労働にかわるにつれて,健康なからだを持ちながら職につけず,生計の道のない男女がふえます。産児制限を行なわないまゝ今の割合で人口が増加すれば,寿命の延びたことと相俟って,狭い地球上の人間はふえる一方です。このすべての人に必要な食物をどうして得るのですか。世界人口をへらすために,第三次世界戦争を始めて多過ぎる人々を殺したいと思う人はありません。現在の軍事力を考えてごらんなさい。そんなことをすれば,人口をへらすどころか,たとえ核兵器から身を守る地下壕があっても,世界中の人が死んでしまうでしょう。今日,全人類の自滅は不可能ではありません。世界の問題には施すすべがないように見えます。
4-6 (イ)完全な子供を生み出すことについて聞かされるならば,一般の人はおそらくどんな意見を述べますか。(ロ)エホバにとって,それは不可能なことでしたか。(ハ)エホバはこの点で何をされましたか。
4 現代医学は優秀な子供を生み出すための研究をつゞけています。しかしいま精神と肉体の健全な未婚の婦人が性関係を持たず,またいわゆる人工受精も行なわずに,完全な子供を生むことは可能ですか。不可能であると,だれでも答えるでしょう。地上においてこのような子供を生み出す必要がかつてありました。それは人間にとって不可能なことでした。今日でもそのことに変りはありません。しかしそれは行なわれました。それは不可能ではなかったのです。
5 だれにとっては不可能ではなかったのですか。人間の創造主に不可能なことはひとつもありません。人間の創造主は見えるものも見えないものも,天と地のすべてのものの創造主です。ほとんど2000年前,この創造主はガブリエルと呼ばれる使を天からお遣わしになり,何時か全地を治める王となる子供の誕生を告げさせました。天使ガブリエルは,この将来の王の母となるべきおとめに現われました。このおとめはシリヤの古い町ダマスコから南西に約75マイル離れた小さな町ナザレに住む未婚のおとめでした。このおとめはダビデと呼ばれた王の子孫です。ダビデは,いまヨルダンの地にある昔のエルサレムで治めた王でしたが,その王統はこの天使が訪れた時よりも600年以上昔に絶えてしまっていました。人類のために全地を治めるべき,ダビデ王の子孫を生み出す創造主の時が来たのです。天使ガブリエルはおとめにこう告げました。
6 「恐れるな,マリヤよ,あなたは神から恵みをいただいているのです。見よ,あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。彼は大いなる者となり,いと高き者の子と,となえられるでしょう」「そしてエホバ神は彼にその父ダビデの王座をお与えになり」「彼はとこしえに〔その先祖〕ヤコブの家を支配し,その支配は限りなく続くでしょう」。
7 未婚の若い女マリアはどんな反応を示しましたか。
7 マリヤはまだ結婚しておらず,夫のことについて天使ガブリエルから何も聞かなかったので,どうして自分が永遠の王の母になるのかを理解できませんでした。そこでガブルエルに申し述べました,「どうして,そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。
8,9 ガブリエルはマリヤ,そして後にヨセフをどのように納得させましたか。
8 処女からの人間誕生という,あとにもさきにも唯一の出来事がどうして起こるのかを説明するため,天使ガブリエルはマリヤに告げました,「聖霊があなたに臨み,いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに,生れ出る子は聖なるものであり神の子と,となえられるでしょう…神には,なんでもできないことはありません」。マリヤは神のみ心が自分の身に成るようにと答えました。―ルカ 1:26-38,新口と新世。
9 天使ガブリエルがマリヤに告げた神の御告げは,いと高き神にとって不可能なことではなかったのです。やがてマリヤは,まだ夫と一緒にならず未婚のまゝで身ごもりました。み子を処女から誕生させる神の力を知らない人は,マリヤが不品行をしたと考えました。しかし神の天使がナザレのヨセフの考え違いを正したので,ヨセフはマリヤを妻にしました。
10 イエスがベツレヘムで生れたことには,どんな意義がありましたか。
10 ヨセフがマリヤをめとって約6カ月後,マリヤは男の初子をうみ,その子はイエスと名づけられました。しかしイエスはエルサレムから南に約5マイルはなれたダビデ王の出生地ベツレヘムで生れたのです。それは当時より700年以上の昔,ベツレヘム近在の人ミカが語った預言の成就でした。イエスの誕生を預言したミカは,イエスが世界的に重要な支配者になることを次のように述べています。ミカは霊感の下に語った神の代弁者でした。「しかしベツレヘムエフラタよ,あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが,イスラエルを治める者があなたのうちからわたしのために出る。その出るのは昔から,いにしえの日からである」。(ミカ 5:2,新口)ミカがこの重要な支配者の誕生地を何世紀も前に預言したのは,全能の神の力によるのです。―マタイ 1:1–2:6。ルカ 2:1-20。
11 世界を統一する支配者を人間の手で生み出すことができなくとも,確かな希望を持てるのはなぜですか。
11 従って人類を一致させる世界の支配者がどんな国の王家からも出ず,また今日の政治家の中にいなくても,全能の神はその御国の支配の始まるとき,有能なふさわしい者に世界の支配を委ねます。ゆえに今日の人類が恐ろしい状態に陥っていても,絶望する必要はありません。この神を知り,全人類を治める神の国のために神がすでに行なわれた事またこれから行なって下さる事を知るならば,更に何事も不可能ではない神に信仰を持つならば,希望を持てます。人類は破滅から救われます。「人にはそれはできないが,神にはなんでもできない事はない」。奇跡的に生れたイエスご自身,人間の救いについてこのように言われました。―マタイ 19:26,新口。
12 御国を用いて人類の最大の必要をみたすことをエホバがさしひかえるでしょうか。なぜ?
12 全人類を治める御国のために,神はすでに何を行なわれましたか。また神の国がくるとき,地に住む人々はどんな生活をするのですか。全宇宙を治める神の国のために神は多くのことをされました。それで神は今から計画を変えることなく,お目的をことごとく成就させるでしょう。たとえ人間にとって不可能であり,また世の政治,宗教が神の国に反対しても,御国に関するお約束のゆえに,神はご自身の述べられたことをかならず実現させます。御国の勝利について神は言われました,「万軍のエホバさだめ給へり誰かこれを破ることを得んや,その手をのばしたり誰かこれを押返すことを得んや」。(イザヤ 14:27)では勇気を出してこの問題を更にしらべようではありませんか。私たちは不可能なことを話しているのではありません。
神が楽園を治めたとき
13 (イ)今日,人類の大部分はどんな政府に関心を持っていますか。(ロ)その人々は神の政府を考えに入れていますか。(ハ)人間が存在するようになるずっと前に,エホバは何をされましたか。エホバは人間を創造して,どんな出発をさせましたか。
13 新しい独立国家がいくつとなく誕生しつゝあるこの揺れ動く世界において,自治と国家主権はしばしば話題に上ります。しかし人間のうちでだれが,地に対する神の主権を問題にしましたか。全地を治める王国を建設するのに,神以上の権利を持つ者がありますか。神は地球と人間と地の動物を創造しました。全地は神のものであり,人間も動物もその生命は神に依存しています。神のみわざを記録した聖書は冒頭に次のことばをしるしています,「はじめに神は天と地とを創造された」。(創世 1:1,新口)男女を創造する前に,神は動物,魚,鳥,野の獣を造りました。そのとき神は全地を治め,あらゆる種類の動物が繁殖しました。人間はそのことに対し何もしていません。また神と争う人間もまだ存在していなかったのです。遂に神は,前に造り出した動物とは全く異なり,a また動物にまさった男女を創造しました。人間は岩の中や地中に住むために造られたのではありません。人間はからだも心も完全に創造され,地に住む神の子として平和と幸福を楽しむことのできる楽園に置かれました。神に創造されたときの人間は,石の武器で動物を殺す,いわゆる石器時代の人間ではありません。人間は恐れを抱かずに動物を治め,支配する者とされたのです。動物によっては飼いならすことさえできました。
14 エホバが人口過剰を恐れていなかったことは,どうしてわかりますか。
14 地球上に人間と動物がふえ過ぎはしまいか,という心配は神にとって無用のものです。神は楽しみのパラダイスにおかれた完全な男女に次のようにお命じになりました,「生めよ,ふえよ,地に満ちよ,地を従わせよ。また海の魚と,空の鳥と,地に動くすべての生き物とを治めよ」― 創世 1:26–2:25,新口。
15-17 (イ)人間の最初の支配者はだれでしたか。人間はどんな前途がありましたか。(ロ)神のお目的通りがみたされてのち,支配者は変ることになっていましたか。
15 約6000年前,地上に人間が現われたとき,全地の支配者はだれでしたか。それは地の上に住む人間でしたか。そうではありません。全地を治めたのは地球の創造主である神です。完全な人間は宇宙の支配者である神に従う者に過ぎませんでした。神は神権者でした。神権とは神の支配という意味です。全地は神の支配を受けていました。
16 パラダイスの完全な男女は,神の支配下にあって全く幸福でしたか。二人は全く幸福でした。しかも天にいます神権者に全く従うならば,その幸福なパラダイスで永遠に生きる機会があったのです。パラダイスのこの男女から生れ出た人々がやがて地をみたしたとき,全世界を治めるのはだれですか。すべての人の父となった最初の人ですか。そうではありません。全地を治めるのは人間の創造主,天にいます神権者です。これは創造主である神のはじめのお目的でした。以来6000年を経たに過ぎない今日,そのお目的は変っていません。今日地に住む何億の人間がこれに反対しようとも,神はみ心を変えませんでした。
17 神のつげられたことばは,霊感によって書かれた神の本に記録されています。「われエホバは易らざる者なり」。(マラキ 3:6)全世界を治めるという不変のお目的を成就することは,神にとって不可能ですか。過去において神の言われたこと,神の行なわれたことを考えれば,それは全く可能です! この時代の人間は,たとえ人間が何をしても創造主である神のお目的は妨げられずに成就することを知るでしょう。
18 エホバが人間の支配者を立てることをお始めになったと考えるのは,なぜ理にかないませんか。
18 ではどうして人間の王がそれぞれの領土を治めるようになったのですか。そのことを始めたのは創造主なる神ではありません。考えてごらんなさい! 創造主が神権者としてのご自身の地位を否定し,全地あるいは地の一部を支配する王の地位に人間を任命するとお考えですか。そのうえ人間は不完全で不従順であり,神から遠く離れているのです。では人間の王国,世界帝国を始めたのはだれですか。今日の世界に見られるいろいろな政府を作り出したのはだれですか。
19 当然のこととして,神は人間に対するどんな要求を定めましたか。それに不従順ならば,どんな結果になりますか。
19 神が最初の男と女すなわちアダムとエバを創造したとき,神は二人にとって天にいる父となりました。父また生命の与え主として神を敬い,忠実と愛を示し,子供のように従順であることは二人に期待され,また当然に要求されました。神は二人に完全な生命をお与えになりました。それで二人が不従順になって神に背くならば,生命をとりあげて滅ぼすことも,神にはできるのです。神の治める広大な宇宙から見れば,この地球はごく小さなものに過ぎません。天と地にあるすべての造られたものを支配する神は,完全な人間を治める法律を当然に定め,これを人間に知らせました。そして神の律法に背くならば,「きっと死ぬであろう」とアダムに言われました。(創世 2:15-17; 3:3)これは不従順なアダムの生命をとることであって,アダムはどこにも存在しなくなるという事です。
神の支配にそむく
20 神の正義の支配にはじめて反逆したのはだれですか。なぜ反逆したのですか。
20 すべてが平和で前途も明るいように見えたこのとき,人の住む地球を治める主権の争いが起きました。この20世紀に至るまでそれは解決されていません。しかしこの時代のうちに解決されることはたしかです。そのことに間違いはありません。見えない天においてこの問題を起したのは,野心を抱いた神の子でした。その野心は人類の支配者となり,地を治める主権を自分のものにすることでした。この神の子は創造主なる神,自らの父に敵対する者となり,自らをサタンにしました。サタンは反対者を意味します。父なる神をそしったこの霊者は,また自らを悪魔にしました。悪魔はそしる者,悪意を抱いて中傷する者の意です。この霊者はエデンの園において蛇を使い,女すなわちアダムの妻エバを欺きました。それで欺く者となったこの霊者はへびによって象徴されるようになりました。年を経たへびという名は,その汚名の一つです。―黙示 12:9; 20:2。
21 不従順のために,アダムとエバはどうなりましたか。だれが二人の主権者となりましたか。
21 アダムとエバに利己心をおこさせたサタンは,二人が神の律法を破り,神の主権の下から離れてへび,サタン悪魔の主権の下にくるように仕向けました。この反逆のゆえに,創造主なる神は楽しみのパラダイスから二人を追放しました。二人はその後も生きて子供をうみますが,やがては死ぬのです。人間はサタン悪魔を自らの主権者に選びました。そこで神は人間のなすまゝに任せ,アダムとエバあるいはその子孫の上に王を任命しませんでした。―創世 3:1–5:5。
22 そののち,神はご自身の創造した地球に大きな関心を持たれることを,どのように示されましたか。
22 その時から1700年を経ないうちに地は暴力で満たされ,世の人はその道を乱しました。神はご自身の創造された地のありさまをごらんになり,それを憂えましたか。そうです! 神はどのようにして悪を一掃しましたか。人間社会の改革あるいは世界の改宗をはかりましたか。そうではありません。神は腐敗した人間をことごとく滅ぼしたのです。神はご自分の預言者ノアに言われました,「すべての人の末期わが前に近づけり其は彼らのために暴虐世にみつればなり視よ我彼等を世とともにほろぼさん…視よ我洪水を地に起して凡て生命の気息ある肉なる者を天下よりほろぼし絶ん」― 創世 6:11-17。
23 神はなお宇宙主権者であることを,どのように示されましたか。
23 家族と共に大洪水を生き残るため,水に浮く大きな箱舟を作り,いろいろな鳥と動物の見本を箱舟の中に携えいれることを,神はノアに命じました。ノアとその家族が完成した箱舟にはいって戸を閉じたその日に洪水が地を襲い,天から何十億トンの水が地の上に40日のあいだ落ちつゞけました。神の保護を受けたノアの箱舟は,山よりも高くなった水の上に安全に浮いていましたが,箱舟の外の悪の世の人々は滅びました。これは神が自然の力を支配していることを如実に物語ると共に,神の宇宙主権を表明しています。
24 神は変らないゆえに,今日私たちは何を期待できますか。
24 エホバ神は変りません。ゆえに地をおゝう洪水で腐敗した世が滅びたことは,今日の人々にとって警告となっています。いま再び暴虐は地にみち,神が手を下さなくても,核戦争によって人類の生存はおびやかされています。やがて地を治める王,ダビデの子で奇跡的に生れたイエスの言葉は,私たちの耳に鳴り響いていなければなりません。「そして,ノアの時にあったように,人の子の時にも同様なことが起るであろう。ノアが箱舟にはいる日……洪水が襲ってきて,彼らをことごとく滅した」― ルカ 17:26,27,新口。マタイ 24:37-39。
25 はじめて人間の王となったのは,だれですか。聖書はこの王について何と述べていますか。
25 大洪水ののち350年生きたノアの生存中に最初の人間の王が現われ,はじめて地上に帝国を建てることを始めました。この王はノアではありません。また,神がこのような王を起したのでも,このような帝国の基礎をすえたのでもありません。それはノアの曽孫で反逆の人ニムロデでした。聖書はニムロデのことを次のように記録しています。「彼始めて世の権力ある者となれり彼はエホバの前にありて権力ある猟夫なりき是故にエホバの前にある夫権力ある猟夫ニムロデの如しといふ諺あり彼の国のはじまりはシナルの地のバベル……」― 創世 10:8-10。
26 この人間の王の企てに対し,エホバの至上権はどのように行使されましたか。
26 エホバ神はニムロデの帝国の計画を挫折させました。神が人々の言語を乱したので,ニムロデの始めた塔の建築は中止されました。バビロンが世界強国の地位に興隆したのは,その後何世紀もたってからです。帝国の拡大に野心を燃やしたバビロンは,宮のあったエルサレムの町をさえ滅ぼしました。しかし人間の国の元祖,人間の建てた帝国の最初のものとなったバビロンは,今日どうなっていますか。その場所は今日のイラク共和国,ユーフラテス河のほとり,北緯32度の線のあたりです。バビロンはくずれ落ちたわずかの遺跡となり,人の住まない荒地となっています。その遺跡はわずか70年ほど前に発掘されました。これもエホバ神の宇宙主権を証明する歴史の事実です。
27 (イ)イスラエルのダビデは,どうして王となりましたか。(ロ)ダビデと全イスラエルはだれの子孫でしたか。(ハ)イスラエルを治めたのはどんな政府でしたか。その支配者はどなたでしたか。
27 では(いまヨルダンにある)ベツレヘムの羊飼の少年ダビデはどうしてエルサレムの王となったのですか。ニムロデのやり方にならってではありません! 忠実な預言者サムエルの手によって神がダビデを王に任じたのです。ダビデは,今日ユダヤ人,キリスト教徒のほか回教徒にもよく知られているアブラハムの子孫でした。アブラハムはエホバ神の友であることを証明した人です。アブラハムは,神に命ぜられるならば自分の愛する息子イサクをも犠牲にするほど神を愛しました。アブラハムがその独り子をさえ惜しまないことを示したので,エホバ神はアブラハムの子イサクおよび孫のヤコブから生れ出た民族を,ご自分の民として選びました。神は大きな奇跡を行ない,この選民にパレスチナの地を与えてそこに住ませました。彼らには人間の王がありませんでした。ノア,アブラハム,イサクそしてヤコブの神が王であり,立法者であり,裁き主だったのです。その政府は神から与えられたもの,すなわち神権政府でした。それは地に二つとない政府であり,当時の地上において最良の政府でした。神を崇拝することは,この神権政府の,目に見えない天の王の律法を守ることでした。神は神のかたちを表わす像を作ることを許さず,人の手で作った偶像あるいは自然の事物の象徴物を崇拝に使うことを律法によって禁じました。神に従順を示し,神を崇拝するかぎり,この民は栄えました。
28,29 (イ)イスラエルはどうして人間の王を持つようになりましたか。それは人々の益になりましたか。(ロ)イスラエル初期の王権の危機に,エホバはどう対処されましたか。
28 しかしエホバ神から中東の約束の地を与えられて約350年の後,信仰の弱くなった人々は目に見える人間の王を求めました。人々はこの点で地の他の国々と同じになることを望んだのです。人々の考え出したこの世の知恵は本当に賢く,また国家の益になるものでしたか。過去2000年間のユダヤ民族の歴史を見れば,その答はおのずと明らかでありましょう。神は,この支配権の変化が災を招くことを前以て警告しました。そして人々の願いをいれて神が許した最初の人間の王は,そのことを証明しました。
29 この最初の王は敵と戦って敗れ,その後を継いだ息子も殺されました。この危機の時に,エホバ神はダビデに油をそゝいで王としました。ダビデは神のみ心にかなう人であったからです。エルサレムにおいて王の座についたダビデ王は,その神エホバの代表者として治めました。ダビデは「エホバの位」に座したといえます。―歴代上 29:23。
30 (イ)王統はダビデの家にどれだけ続くことになりましたか。(ロ)その大いなる結末は何でしたか。
30 ダビデが神の崇拝に心をつくしたので,エホバは王権が永遠にダビデの家のものになることを約束されました。(サムエル後 7:1-17)神のこの約束すなわち契約に従ってダビデの後を継いだ最初の王は,知恵のすぐれたことで世界的に有名なソロモンでした。しかしいちばん大切なのは,ソロモン王よりも賢い者がダビデの家に生れて,王権を永遠に相続する者となったことです。その奇跡的な誕生が,19世紀前エホバの使ガブリエルによってナザレのマリヤに告げられたのです。その名をイエスと名づけるように,ガブリエルは告げました。それはイエスの名に意味があるからです。イエスはエホシュアを短縮したもので,聖書辞典によれば「エホバは救いなり」との意味です。全能の神はみ子のこの名に真実の意義を持たせます。そのためエホバ神はみ子に犠牲の死を遂げさせましたが,3日目には天の不滅の生命によみがえらせました。神は,今日の大気圏外ロケットが達し得るよりもはるかに高い天において,ご自身の右にみ子を座らせました。―使行 2:22-36。コリント前 15:3-28。
神の油そそいだ王は受け入れられず
31 諸国家は,神の油そそいだ王を支配者として受け入れますか。このような考えは,国連加盟国にどう受け入れられますか。
31 これは歴史の事実です。すべての王国,君主国,共和国,国連その他現存する政治機構も,これらの事実に目をおゝうことはできません。聖書また歴史にしるされたこれらの事実は,回教の世界あるいは西欧諸国から異教と目される世界において余り知られていなくても,キリスト教を唱える国々において当然に知られているはずです。疑うことのできないこれらの事実を前にして,今日の諸国家のすべて,あるいは一国でも,自分たちはもちろん全世界の人々を治める王として,創造主なる神を受け入れますか。国連の総会あるいは安保理事会にこのような考えを持ち出してごらんなさい。共産主義諸国だけでなく,111の加盟諸国のすべてが,このような考えを一笑にふすことでしょう。
32 現代には何が欠けていますか。それで人々はどなたを拒絶しますか。
32 宇宙開発の進む現代の物質的な世において,諸国家は創造主なる神に信仰を持っていません。その不信仰なことはエホバの預言者サムエルに人間の王を求めた昔のイスラエル人と同様です。イスラエル人の要求の真の意味は,エホバ神の次のことばに示されています,「彼ら〔は〕…わたしを捨てて,彼らの上にわたしが王であることを認めないのである」― サムエル前 8:1-22,新口。
33 (イ)1900年前,だれがエホバを主として受け入れ,まただれが受け入れませんでしたか。(ロ)ユダヤ人とローマ人のどんな行いは,彼らの態度を示していますか。
33 全地を治める王として,いまエホバ神を受け入れるのはだれですか。諸国家ではありません。19世紀前み子イエス・キリストがろばに乗ってエルサレムにはいり,王としてご自身を現わしたとき,ユダヤ人とローマ人がイエスを受け入れなかったのと,それは同様です。しかし当時の群衆は「エホバのみ名によって来る者に祝福あれ」「今きたる,われらの父ダビデの国に,祝福あれ。いと高き所に,ホサナ」「エホバのみ名によって来る王に祝福あれ」「天には平和,いと高きところには栄光あれ」と叫び,歓呼してイエスを迎えました。(マルコ 11:1-10。ルカ 19:28-38,新口と新世)ユダヤ人とローマ人が神のみ子イエス・キリストを拒んだことは,神を王とすることを拒んだしるしです。神のみ子が地上のエルサレムで治め,イスラエルの地を支配するのを妨げようとした祭司たちのたくらみによって,イエスは捕えられ,不正な裁判にかけられ,エルサレムのローマ総督の手に渡されました。そして宗教的な暴動の圧力によって死を宣告され,犯罪者の杭につけられました。
34 エホバはみ子のために何をなさいましたか。この世はいまなおどんな態度を示していますか。
34 ところが地の政府に関する神のお目的を妨げようとした不信仰な諸国民の努力は,全く無駄でした。3日目に神は,ダビデの王権の永遠の相続者である忠実なみ子を死からよみがえらせ,ご自身の右に高めて,天から治める王とならせました。神にとって不可能なことは一つもありません。諸国民がみ子を殺すことは,もはや不可能です。しかし核,細菌,放射線の戦争によって諸国家が自滅するのでなければ,み子は諸国家を滅ぼす力を持っています。永遠の王権を持ち,栄光を受けたみ子に関するこの事実に直面していながら,諸国家はユダヤ人の大祭司がローマ総督ピラトに叫んだのと同じことを叫んでいます。「わたしたちには,カイザル以外に王はありません」― ヨハネ 19:15,新口。
35,36 (イ)この世の態度がいまなお変らないことは,どうしてわかりますか。(ロ)しかしエホバの王権はどの程度宣べ伝えられていますか。
35 神が王となり,み子イエス・キリストを用いて治めることを,諸国家はどう思っていますか。神の国の永遠の福音の伝道に対して諸国家のとる態度がそれを物語っています。第一次世界大戦の勃発を見た1914年以来,イエスの次の預言は成就してきました。「そしてこの御国の福音は,すべての民に対してあかしをするために,全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである」。(マタイ 24:14,新口)神の国が設立されたというこの証は,その小規模なはじまりから今日194の国々で100万人以上の御国の証者が162の言語を用いて公にも家から家にも伝道を行なうまでに成長しました。アメリカ,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会は,世界各地にある90の支部から報告を受け取っています。
36 しかし国際連合に加盟している国も加盟していない国も,諸国家は良いたよりの伝道を受け入れましたか。イエスの従順な追随者が御国の良いたよりを伝道するゆえに迫害されると述べたイエスの預言は,その答です。この預言の意味は全く明白です。(マタイ 24:9-13; 25:31,41-45)諸国家は,神の証者がキリストによる神の国を伝道することを望みません。それで全地を治める神の国の支配を実際に受けるのを望まないことは,言うまでもありません。―ルカ 19:14,27。
37 いまどんな時宜を得た質問がありますか。その唯一の論理的は答は何ですか。
37 では私たちはこゝで行き詰ってしまいましたか。そうではありません。それでは完全な政治を行なう人類の将来の支配者はだれの主権に基づいて決定されるのですか。それはこの世の諸国家の主権ですか,あるいは全創造を支配する神の主権ですか。人間も国家も神に敵対して利を得ることはありません。人間の歴史はそのことを証明しています。先見の明ある政治家 軍事専門家,経済問題の専門家は,人類の前途が容易でないことを再三警告しています。しかし本当の問題のありかを指摘していません。人間が地の支配権を神に渡そうとしないところに,本当の問題があるのです。
38 バビロンの王と同じく,諸国家はどんな事実をかならず知るようになりますか。
38 人間は今でも自分の思うまゝに事を行なおうとしています。そして地の事柄に関する神の時を変えようとしていますが,それは一定の時間に太陽が上るのを妨げようとするのと同じで不可能なことです。古代バビロンの大王となった人は,その教訓を得ました。この王に関して,預言者ダニエルはいと高き神に次のことを祈りました。「神のみ名は……ほむべきかな……神は時と季節とを変じ,王を癈し,王を立て(る)」。神はご自身が選んで油そゝいだ者に人類を治める国を与え,またご自身の定めた時にそのことをされます。強国バビロンの王も次のことを認めるに至りました,「地に住む民はすべて無き者のように思われ,天の衆群にも,地に住む民にも,彼はその意のままに事を行われる。だれも彼の手をおさえて『あなたは何をするのか』と言いうる者はない」― ダニエル 2:20,21; 4:17,25,35,新口。
39,40 1914年はなぜ人間歴史の上で画期的な年ですか。諸国家はどんな時を迎えましたか。
39 人間が地の上に主権を行使することには限りのあることを,神は定めました。聖書にしるされた神の時の定めによれば,その期間は1914年に終りました。神が天に御国を建て,ダビデ王の永遠の相続者,み子イエス・キリストにそれを委ねる時が来たのです。聖書の教えに従わず,宗教家の助言に従うことを選んだキリスト教国の諸国家は,世界主権の問題をめぐって1914年に世界大戦を始めました。それから半世紀を経た今日,諸国家は同じ問題をめぐって第三次世界大戦の起ることを防止しようと努めています。
40 このすべてにおいて,人間が創造主なる神を無視していることは明らかです。それは人間にとって害となります。「〔異邦人の〕諸国民の定められた時」が終った1914年以来,この世のすべての国は「終りの時」にはいりました。(ルカ 21:24,新世。ダニエル 12:1-4,新口)世界的な反対や迫害にもかゝわらず,神の国の永遠の福音を宣べ伝えてきたエホバの証者は,この事実をたえず諸国民に告げてきました。―マタイ 24:9-14。マルコ 13:10。
41 (イ)この時が何時終るかを定めるのは,どなたですか。その終る時には何がありますか。(ロ)どんな人々だけが終りの時を生き残りますか。
41 この「終りの時」が何時までつゞくかを決めるのは神であって,世界政治を動かす人々ではありません。宇宙の時を刻む時計が間もなくその時を報ずるならば,「全能の神の大いなる日の戦闘」が始まります。それは偶然ではなく人間の誤算によるのでもありません。人間がこれ以上神に反対し,神を無視しつゞけることを,神は許さないのです。その大いなる日のために貯えられた破壊力を用いて神は遂に戦い,ご自身の主権がこの地球をも含む全宇宙に及ぶことを示されるでしょう。それは聖書の最後の本に預言されているハルマゲドンの戦いです。(黙示 16:13-16)それはノアの日に全地をおゝった洪水のように激しく襲うでしょう。そのような戦いはかつてなく,また後にもないであろうと,御国の永遠の相続者イエス・キリストは預言しました。み子イエス・キリストによる神の御国に従い,それを支持する人々,つまりノアとその家族のような人々だけが生き残ります。その人々だけが大いなる日の戦いのあいだ保護され,エホバの主権が何者にも妨げられることなく全地に行使されるのを見るでしょう。―マタイ 24:21,22,37-39; 25:34。
待ち望まれた変化
42 この戦争の結果,地の王権はどなたのものとなりますか。そのため人類にはどんな将来がありますか。
42 全能の神の大いなる日の戦いは決定的なものであり,そのもたらした結果は永続します。ゼカリヤは次のことを預言しました,「エホバ全地の王となりたまはん其日には只エホバのみ只その御名のみにならん」。(14:9)そのとき地上の状態がどんなに良くなるかを,想像できますか。想像や単なる推測に頼る必要はありません。不可能なことは何ひとつない神のことばが文字に書きのこされており,その預言は人類の将来の輝かしい希望を前以て告げているからです。詩篇 97篇1節の言葉は,喜びの時がやがて来ることを保証して,次のように述べています,「エホバはすべをさめたまふ,全地たのしみ多くの島々はよろこぶべし」
43 この決定的な戦いの結果を述べなさい。
43 大いなる日の戦いは全能の神の主権に敵対する者に対して行なわれ,その結果地上の人口は激減するでしょう。ノアの時代の大洪水の時にも同じことが起きました。おそらく輸送機関や通信も一時的にまひして,この古い組織制度の終りを生き残った世界各地の人々は互にすぐ連絡することができないと思われます。たとえば最高主権者エホバ神を崇拝する人は,今日194の国々にいます。そして1963年には,南北両半球にまたがり24の主要な都市でエホバの証者の世界一周大会が開催されました。
44 エホバの証者はいまどんな態度をとっていますか。
44 互に連絡し,集まり合うことを願うエホバの証者の気持は変らず,かえってハルマゲドンの宇宙戦争の後にはいっそうその気持が強められるでしょう。エホバ神の任命を受けて,地に住む人々を治める王イエス・キリストは,人々が互の消息を知り合い,クリスチャン兄弟として助け合うように導きを与えます。エホバの王に関して次のように書かれているからです,「彼の世に義は栄え,平和は月のなくなるまで豊かであるように。彼は海から海まで治め,川〔もはやバビロンの支配下にないユーフラテス〕から地のはてまで治めるように」。(詩 72:7,8,新口)王の民の中で孤立している人はありません。
45 国家主権の消滅は,生き残る人類にとって何を意味しますか。
45 ハルマゲドンの戦いで人間国家の主権は消滅し,唯一の生ける真の神が全地を治める主権者となります。そしてエホバの一人の王が全人類を治めるとき,国境を設ける必要がありますか。人間の設けた国境は拭い去られ,未来の地図は国境のしるされていない地図になるでしょう。王イエス・キリストの民に国籍の別はなく,すべての人が王の子たち,贖なわれた民となります。その人々のために,イエスは19世紀前,ご自分の完全な人間の生命を犠牲にしたのです。(ヨハネ 3:16)イエスに忠実に従うことによって,この人々はイエスを通して永遠の生命を得ます。イエスはその人々にとって永遠の父となるのです。
46 この御国において支配する王は,地に住む人々とどんな関係にありますか。
46 イザヤ書 9章6,7節の預言は,ベツレヘムに生れ,ダビデ王の永遠の相続者になったダビデの子について,次のように述べています,「ひとりの嬰児われらのために生れたり,われらはひとりの子をあたえられたり,政事はその肩にあり,その名は奇妙,また議士,また大能の神とこしへのちゝ,平和の君ととなへられん。その政事と平和とはましくはゝりて窮りなし且ダビデの位にすわりてその国ををさめ,今よりのちとこしへに公平と正義とをもてこれを立てこれを保ち給はん,万軍のエホバの熱心これを成し給ふべし」。それで地に住むすべての人は王の民となり,王の子たちとなります。王の治めるすべての人は互に兄弟となります。
47 他にもどんな変化が起きて,人類の益となりますか
47 この核時代,宇宙時代の政府の支出はぼう大な額に上り,人々は重い税金に悩まされています。しかしそのとき事情は一変します。宇宙の主権者であるエホバ神は,人間から物質的な支援を必要としません。エホバは万物の造り主です。全宇宙はエホバのものです。今日の人類に対するご自身の立場を述べて,エホバは次のことを言われています,「わたしはあなたの家から雄牛を取らない。またあなたのおりから雄やぎを取らない。林のすべての獣はわたしのもの,丘の上の千々の家畜もわたしのものである。たといわたしは飢えても,あなたに告げない,世界とその中に満ちるものとはわたしのものだからである」。(詩 50:1,9,10,12,新口)人類を治める王とされた天の御子は平和の君であり,万物の相続者です。(ヘブル 1:1-6)王のぜいたくな暮しのために,人々に税を課する事はなくなります。地において王を代表する人々が圧制者となることを,王は許しません。(詩 45:16。イザヤ 32:1,2)「この組織制度の神」サタン悪魔とその悪鬼はとらえられ,聖書にいう底の無い穴につながれます。この穴は悪魔と悪鬼を閉じこめてのち,封印されます。―黙示 19:11から20:3。
48,49 (イ)地を再び満たすことについて,どんな興味深い質問がありますか。(ロ)地に人が住むことは,どのように保証されていますか。
48 エホバ神が最初の男と女をエデンの園に創造されたとき,二人を祝福して次のようにお命じになりました,「生めよ,ふえよ,地に満ちよ,地を従わせよ」。(創世 1:28,新口)今日,爆発的に増加している世界の人口は,ハルマゲドンの戦いの結果,大きく減少することでしょう。では神が全地の王となり,御子イエス・キリストを通して治めるとき,地は何時満たされますか。ノアの時代の大洪水から今日まで4000年以上経っています。その間二つの世界大戦をはじめ多くの戦争また人命を奪った災害があったにもかゝわらず,人口はいま30億を超えました。ハルマゲドンの後,神の国の支配下において地は何時頃満たされ,また地に満ちた人々の衣食住はどうなりますか。神にとってこれは不可能な問題ではありません。地に対する神の初めのお目的は成就されます。
49 イザヤ書 45章18節に述べられている通り,エホバ神は「地をも造り成し,これを堅くし,いたずらにこれを創造されず,これを人のすみかに造られ」ました。地球を創造されたとき,エホバはそれをごらんになって非常に良いと言われました。(創世 1:31)ゆえに神がこの良い地球を滅ぼすことはありません。現代の科学者,天文学者あるいは偽の宗教家の意見にかゝわりなく,地球は永続します。(伝道之書 1:4。詩 104:5)地は人で満たされます。
50 (イ)再び地を満たすことは何時始められますか。だれがその事にあずかりますか。(ロ)子供たちはどんな状態の下で生れますか。
50 正義の人類で地を満たすことは,全能の神の大いなる日の戦いが終ってのち,あらためて始められます。この宇宙的な戦争に生き残った人々がまずそのことに与るでしょう。大洪水の後,救いの箱舟から出たノアとその家族の例はその事を示しています。(創世 9:1,7)夫婦が大洪水に生き残り,その子供たち同志も成人したとき結婚しました。ハルマゲドンの戦いの場合もそれと同じであり,生き残る人々の結婚の絆は解消されません。ハルマゲドンを生き残る独身者の結婚も王イエス・キリストによって認められます。その人々は子供に恵まれるでしょう。ハルマゲドンを生き残る人々はまだ不完全であり,生れる子供たちも完全ではありませんが,そのとき死産や流産はなく,不具の子供が生れることもないでしょう。神の正義の新しい秩序の下にあって,子供たちは正義の両親によって,義のうちに生み出されます。そのとき産児制限の必要はありません。
死者のよみがえり
51 宇宙の主は,地を満たすため他に何をされますか。またその事をどのように保証されましたか。
51 神の国の正義の民で地が満たされるのは,結婚だけによるのではありません。ハルマゲドンを生き残る人々のほまれある結婚から子供たちが生れ,更にはハルマゲドン後に生れた人々の結婚から子供たちが生れるにしても,それは明らかに一定の期間だけです。それが何世代のあいだつゞくかはわかりません。なぜならば,文字に書かれた神のことばにあるすばらしい預言の成就を,考えなければならないからです。その預言は何を約束していますか。それは死者のよみがえりです。改めることができないほどの悪を行なわず,従って神の記憶から消し去られていない人々は,復活を受けます。神がご自分のみ子イエス・キリストを死からよみがえしたことは,人類一般の復活の保証となりました。イエスはその御国を望み見て言われました,「記憶の墓にいる者がみな彼の声を聞いて出て来る時がくる……〔彼らは〕復活するであろう」。(ヨハネ 5:28,29,新世)あなたの亡くした者をよみがえすことのできる支配者が,今日,地上にいますか。
52 ハルマゲドンを生き残る人々の子供たちおよび死者のよみがえりによって,人がふえ過ぎる心配はなぜありませんか。
52 全地を治める神の国の祝福を享け,地に永遠に住むことのできる生命を得る機会に与るため,何十億の人々が地上の生命によみがえされることを,考えてごらんなさい。これが地の人口過剰という結果になることはありません。また食糧問題や失業問題をひきおこすこともないでしょう。農業と地の管理は,そのとき王イエス・キリストの監督の下に賢明に行なわれます。全地は耕され,また管理されて遂に至るところ楽園となるのです。それは創造主なる神がアダムとエバに対し,「地に満ちよ,地を従わせよ」と言われたとき,二人の前におかれた目標でした。地を荒廃させる者,空気,土壌,水を汚染させる者は一人もいません。心身の完全な健康を得るのに役立つ滋養に富んだ食物が,豊かに生産されるでしょう。
53 霊的食物はなぜ大切ですか。
53 普通の食物のほかに霊的な食物も与えられます。霊的な食物をとらなければ,楽園の地で永遠に生きることは不可能です。王イエス・キリストご自身も,神のことばを引用して,次のように言われました,「人はパンだけではなく,エホバのみ口から出るすべての言葉によって生きなければならない」。(マタイ 4:4,新世。申命 8:3)王はその民が楽園に永遠に住むことを望みます。
54 神の支配の下に住む人々には,どんな祝福がありますか。
54 千年にわたる王の支配の下で,神のみ心どおり正義の人類は地を満たします。最後の死者がよみがえされたとき,墓は滅ぼされ,墓地はなくなります。アダムとエバから全人類におよんだ罪が王イエス・キリストの贖いの犠牲によって除かれ,アダムから受け継がれた不完全さと悪の性癖が全く拭い去られるとき,アダムから受け継いだ死はもはや地にありません。聖書の最後の本にある預言は,次のことを宣言しています,「神自ら人と共にいまして,人の目から涙を全くぬぐいとって下さる。もはや,死もなく,悲しみも,叫びも,痛みもない。先のものが,すでに過ぎ去ったからである」。(黙示 21:3,4,新口; 20:4-6)人々は幸福になります。これこそ望むべきことです。支配者の栄えは民の義と幸福またその下に住むことを望む人の多いことによってはかられます。ダビデの子で賢い王ソロモンは,王の栄えが何にあるかを述べました。「王の栄えは民の多いことにあり,君の滅びは民を失うことにある」。(箴言 14:28,新口)キリストの治める千年王国の栄えは,楽園の地に満ちた幸福な正義の民によって示されます。キリストはその民のすべてのために死なれたのです。
55 なぜ新しい世には失業がないのですか。
55 労働力を節約する機械また現代のいわゆるオートメイションによって生ずる失業問題は,その時起きません。王は民のすべてに十分な仕事を与え,人々は熟練した働き人となります。仕事は適宜に配分され,失業はありません。「働こうとしない者は,食べることもしてはならない」という神の原則が行なわれます。(テサロニケ後 3:10,新口)最大の仕事は神のみ心を行なうことであり,神のみ心が天の通り地にも行なわれるように祈りつゝ働くことです。(マタイ 6:9,10)愛の心で神のみ心を永遠に行なうことによってのみ,完全な男女はエホバの神権政府の下に永遠の生命の報いを得ます。
56 神が全地の王となる時を待ち望む私たちは,いま何をすべきですか。
56 これこそ人々の望んでいる完全な政治です。この政府は永遠につゞきます。宇宙主権者である神は永遠に存在するからです。この神は不滅,全能,至上です。(ダニエル 2:44。詩 145:10-13)神の国の到来を祈るだけでなく,神の国をいま支持して,その永遠の福音をいたるところに宣べひろめるのは,私たちの特権です。神が全地の王となる栄光の時を望みつゝ,生きることを,私たちの今後の決意にしようではありませんか。
[脚注]
a ヨブ記 38-41章をごらん下さい。
[6ページの図版]
『あなたはみごもって男の子,イエス,いと高き者の子を産むでしょう』
[11ページの図版]
エルサレムの王座についたダビデは「エホバの位」にすわった
[12ページの図版]
「エホバのみ名によって来る王に祝福あれ」
[16,17ページの写真]
右: 世界一周大会の最初となった,ミルウォーキー市,カウンティースタジアム。公開講演を聞く5万7055人の聴衆。
左: 世界を半周したN・H・ノアは同じ講演をタイ語の通訳を通して961人の聴衆に話した。
下: マニラ。3万7806人が三つの言葉を通して,会長の講演を開いた。
左: ミュンヘンでは,ノア会長の講演「神が全地の王となる時」を聞くために10万7164人が集まった。
下: ストックホルムでは,F・Wフランズ副会長が,スウェーデン語,デンマーク語,ノルウェー語,フィンランド語の通訳により,2万5160人の聴衆に講演した。
[18ページの図版]
子供は義のうちに生み出される