見張りの者は言った,「彼女は倒れた!」
1 なぜわたしたちは意志を堅固にして,イザヤが告げなければならなかった「幻」を調べてみるべきですか。
急速に近づきつつある将来の出来事に関する幻は厳しい幻である。預言者イザヤは,当時世界を支配していたアッシリア帝国の全盛時代においてさえ,事態をそのように言い表わしました。その「幻」は現在わたしたちが調べることのできないほど「厳しい」ものでしょうか。それでもわたしたちは意志を堅固にして,イザヤが述べる事柄に注意を払いましょう。イザヤはこう述べています。「わたしに告げられた厳しい幻がある。裏切りを働く者は裏切りを働き,奪い取る者は奪い取っている」― イザヤ 21:2,新。
2 (イ)「奪い取る者」とはだれのことですか。どうしてそれが分かりますか。(ロ)「裏切りを働く者」は特にだれに対して裏切りを働きましたか。なぜですか。
2 はなはだしく『裏切りを働いていた』者の名前は挙げられていませんが,その正体をつきとめることは可能です。これは第3世界強国となった古代バビロンのことです。この国はエルサレム市だけではなく,同市のエホバの神殿の至聖所をも奪い取って卑しむべき悪名をはせていました。確かに,エホバはユダ王国を懲らしめるためにバビロンの皇帝ネブカデネザルをご自身の「僕」としてお用いになりましたが,バビロンはエホバの契約の民に対して裏切りを働きました。バビロンは,70年が過ぎ去ろうとしていたにもかかわらず,ユダヤ人の流刑囚を解放して,神から与えられた故国へ戻すことはしませんでした。(イザヤ 14:3-17)西暦前537年にこれらの「囚人たち」が本国へ戻れるよう道を開くために用いられたのは,バビロニア帝国を征服した者でした。ですから,見張る者イザヤに告げられた「幻」が,国々の民,特にイザヤの神の民を奪い取る者であったバビロンにとって「厳しい」ものであったのは当然です。
3 「裏切りを働く者」,「奪い取る者」であるという点で,バビロンの現代版となるのは何ですか。
3 古代バビロンの現代版の場合はどうですか。その現代版も,エホバ神との契約関係にあるクリスチャンを扱う際に,キリスト教の教理に関して負けず劣らず裏切りを働いてきています。そのようなクリスチャンがエホバ神の命令を守り,即位した王イエス・キリストについての証しの業を行なうという理由で,無情にも彼らを奪い取ってきました。(啓示 12:17)とりわけ第一次世界大戦以後,先に立って裏切り行為や奪い取ることをもくろんだのはキリスト教世界です。「厳しい幻」が現代の偽りの宗教の世界帝国である大いなるバビロンの上に成就する時,同世界はその幻の持つ力を特に強く感じることでしょう。では,まもなくこの「厳しい幻」を実現させるためにエホバに用いられるのはだれですか。
4 イザヤ 21章2節で,バビロンを攻撃すると述べられているのはだれですか。ペルシャ人のことがここで述べられていないのはなぜですか。
4 イザヤはさらに,「エラムよ,上れ! メディアよ,包囲せよ! 彼女のゆえに出るすべての溜息をわたしはやめさせた」と述べ,その答えの基礎を据えています。(イザヤ 21:2,新)エラムはチグリス川の東側に位置し,ペルシャと呼ばれた国の一部となりました。ただし今はイランがその地域を所有しています。a メディアはメソポタミアの谷の東側にあったより広範に及ぶ地域です。イザヤの預言の約200年後,クロス大王(2世)はメディア人を制圧し,ペルシャ王国をメディアに勝る権力を持つものとしました。ところがクロス大王の母はメディア人であり,その軍隊の兵士も大部分はメディア人でした。このクロスは,イザヤが神の霊感を受けて予告したクロスつまりコーレッシのことです。(イザヤ 44:28から45:7)イザヤの預言が行なわれた時期には,メディア-ペルシャ帝国はまだ興っていませんでしたから,ペルシャ人も目立った存在ではありませんでした。したがってエホバは,バビロンを攻撃するものとしてエラムとメディアの名だけを挙げておられるのです。
5 エホバは,「彼女のゆえに出るすべての溜息」をどのように終わらせましたか。「捕らわれ人」はどのように故国に帰る自由を得ましたか。
5 これら攻撃を加える者たちは成果を上げ,南西アジアと中東の情勢を変えることになっていましたか。その通りです。イザヤが次に述べる,「彼女のゆえに出るすべての溜息をわたしはやめさせた」という言葉にそのことが示されています。これは確かに宇宙の主権者なる主「万軍のエホバ」の言葉です。その方はエラムとメディアをご自分の代理者として用いることにより,抑圧的なバビロンゆえに出る「すべての溜息」を終わらせました。霊感を受けた詩篇作者は,イスラエル人が捕らわれの状態で朽ちてゆくことを少しも意に介さない略奪者の手から解放してくださるようエホバ神に訴え,次のように述べました。『ねがわくは汝のみまえに捕らわれ人の嘆きのとどかんことを 汝の大いなるみ力により死にさだめられし者をまもりて長らえしめたまえ』。(詩 79:11-13。イザヤ 14:17)この祈りに対する答えは,ユダヤ人がバビロンに追放されてから70年目に,クロス大王の勅令という形で与えられました。―イザヤ 35:8-10。
バビロンの倒壊に対する個人的反応
6,7 バビロンの倒壊が,不利な影響を受ける人々に及ぼすその影響について,イザヤはどのように描写していますか。
6 勢力を振るっていた第3世界強国が西暦前539年に倒れ,イスラエルという小さな国に特別な益がもたらされたことが想像し難いとしても,それは当然のことです。この事件は世界史の流れを大きく変えるものとなりました。「海の荒野」の中心に位置していた同帝国が倒壊したことで不利な影響を受けた人々は,悶え苦しむ運命にありました。そうした人たちに及ぶ影響は,「厳しい幻」について述べるイザヤの次の言葉の中に描かれています。
7 「それゆえに,わたしの腰は激しい痛みで満たされた。出産しようとしている女のけいれんのようなけいれんがわたしを捕まえた。わたしは錯乱状態となったので,ものが聞こえない。わたしは動揺させられたので,ものが見えない。わたしの心はさまよい,身震いがわたしをおびえさせた。わたしが慕っていたたそがれは,わたしにとってはおののきとなった」― イザヤ 21:3,4,新。
8 イザヤの描写的な言葉は,偽りの宗教の世界帝国が倒壊する時のキリスト教世界や異教世界の宗教指導者に関して,何を示していますか。
8 裏切り者である第3世界強国の倒壊と関連のあるこれらの描写的な表現は,バビロンの現代版が倒れる時に,世界の宗教的社会の骨組を伝わる衝撃波を表わしています。それは,現在エホバの証人たちが1914年以来のこの「終わりの時」に伝えている強烈な音信より,はるかに深く現代の対型的なバビロニア人の宗教感情を傷つけます。(ダニエル 12:4,新)キリスト教世界および異教世界の宗教団体に属する司祭や他の職員は呆然とし,生じていることを見ることも聞くこともできないかのように度肝を抜かれることでしょう。その心は落ち着きと平静を失い,かつて崇拝していた神々にゆらぐことのない信頼を置くこともできなくなります。宗教的偽善が暴露されたことが主な原因となって,身震いが彼らをおびえさせるほどに状態は恐ろしくなります。1日の仕事を切り上げるころ,安らぎと慰めを約束するかのように訪れる「たそがれ」は,暗黒へと向かうわななきの時となるのです。彼らが自らの宗教組織内の人々を誤導し抑圧した時代は,恐ろしい終わりを告げます。出産の苦しみのために自分の腰を押える女のように,彼らはけいれんします。
9 イザヤに明かされた舞台装置は,突然,エホバの命令のために変化します。それはどんな命令ですか。
9 預言者イザヤに明かされた舞台装置は,突然,劇場の場面が変わるように変化します。イザヤは次のようなエホバからの命令を耳にします。「食卓を整え,座席の位置を決め,食べかつ飲むように。君たちよ,立ち上がって盾に油そそげ。エホバはわたしにこのように言われたからである」― イザヤ 21:5,6,新。
10 その神の命令は何を描写していましたか。そこに描かれている事柄は,何があって,エホバ神にはなはだしい侮辱をもたらすものとなりましたか。
10 これは,世界支配の最後の夜を迎えたバビロンの宮殿の場面の簡単な描写です。ベルシャザルの宴会の様子が写実的に描かれています。父である皇帝ナボニドスはその席にいません。そのとき,確かにバビロンの幾千人もの高官たちの座席を決めることが行なわれました。そして陽気に食べたり飲んだりしました。しかしその宴会は,人々がエホバ神の神殿のものであった卓上食器を使って飲み食いし始めるに及んで,エホバ神にはなはだしい侮辱をもたらすものとなりました。それらの食器はバビロニア人がエルサレムを占領し,その神殿を破壊するまではエホバ神の神殿のものだったのです。
11 ベルシャザルのこの不敬な宴会で,エホバは奇跡的にどんなことを行なわれましたか。このとき,解き明かしを行なう者としてダニエルは何をしましたか。
11 ベルシャザルの宴会は,エホバをそうした状態に陥れたため,不敬なものとなりました。エホバは奇跡を起こし,王の目に入る宴会場の壁に,手が文字を書き記すようにされました。それは,「メネ メネ テケル そして パルシン」という文字でした。これらの暗号を解読するには,どうしても捕囚の身のユダヤ人預言者ダニエルが登場しなければなりません。手書きの文字の末尾の語パルシンは,カルデア語ペレスの複数形で“分けられたもの”を意味します。それでダニエルは霊感を受けて解き明かしを行ない,「ペレス,あなたの王国は分けられて,メディア人とペルシャ人に与えられました」と語りました。―ダニエル 5:28,新。
12 君たちから油そそがれる「盾」とは何でしたか。このような「盾」に油そそぐようにという命令は何を意味していましたか。
12 ダニエルはその褒美として,王室の衣服を与えられ,帝国内の「第三の支配者」とされました。しかしながらこのことによって,「君たちよ,立ち上がって盾に油そそげ」という,バビロンの貴族階級に対して語られたエホバの命令が成就したわけではありません。(イザヤ 21:5,新)この命令は,バビロンを包囲する者たちと戦うための軍事用の盾に油を塗ることを君たちに求めるものでもありませんでした。むしろ,「盾」という表現は,国家の首長たる王に適用されるものでした。(詩 89:18と比較してください。)では,「盾に油そそげ」との命令にはどんな意味があるのでしょうか。それはこうです。ベルシャザル王がまさに殺されようとしていたので,別の人がバビロニア帝国内の“第二の支配者”の立場を引き継ぐ必要が生じるということです。でも,新しい象徴的な「盾」が油そそがれて就任することにはなりませんでした。ベルシャザルの横死は,実際に王室から後継者の出る余地を残しませんでした。
13 それで,イザヤ書 21章2節にある命令はむなしくなりましたか。新しくダニエルに与えられた地位は,政治体制が変わっても引き継がれましたか。
13 ダニエル書 5章30,31節にはこう記されています。「まさしくその夜,カルデア人の王ベルシャザルは殺され,メディア人ダリヨスがその王国を受けた。彼はおよそ62歳であった」。それは世界政治のなんという電撃的な変化だったのでしょう。「エラムよ,上れ! メディアよ,包囲せよ!」とエホバがお命じになった事柄はむなしくなりませんでした。(イザヤ 21:2,新)メディア人とペルシャ人の前にバビロンが倒れた時,メディア人ダリヨスがバビロンの“第二の支配者”の地位につきました。ダニエルは新しく与えられたバビロンの「第三の支配者」としての地位に,メディア-ペルシャの体制下においても引き続きとどまるということはできませんでしたが,ベルシャザルと一緒に殺されることはありませんでした。
14 古代バビロンの倒壊は何を予示していますか。それに関係する人々はどんな影響を受けますか。
14 古代バビロンの驚くべき倒壊は,その現代版である大いなるバビロンが突如として倒壊することを予示しています。この出来事は,油断している世界の宗教家たちを捕らえます。したがって,偽りの宗教の世界帝国が無敵であることを信ずる人が同帝国の倒壊の間近いことを予期しないなら,その自己満足は,必ずや不意の衝撃を受けることでしょう。
見張りの者が報告すべき事柄
15 ベルシャザルの宴会に関する預言的な描写の後に記されている命令は,古代バビロンとその現代版について何を示していますか。
15 それにしても,ベルシャザルの宴会が催された西暦前539年のあの苦しい夜に関する予告編を,イザヤが示しているのはなぜですか。それは,その後に続くもの,つまり,「裏切りを働く者」の倒壊を喜ぶ,エホバの契約の民にとって世紀の大事件となる事柄を報告するためでした。イザヤ書 21章5,6節には,バビロン倒壊の直後に生ずることが次のように示されています。「君たちよ,立ち上がって盾に油そそげ。エホバはわたしにこのように言われたからである。『さあ,見張りを配置し,その見るところを告げさせよ』」。この出来事は世界中に知れ渡ることになるのです。では,大いなるバビロンの倒壊についても大々的に告げ知らせなければなりません。
16 古代バビロンおよび大いなるバビロンの場合に,部署についていた「見張り」について何と言えますか。
16 「見張り」を配置してその目に映るものを報告させるようにと命じられたのはイザヤです。イザヤは,自分が予告したことや自分が書いた記録の目撃証人となるまで生き延びたわけではありません。ですからイザヤの民の中のだれか外の人が,配置された見張りの役を務めなければなりませんでした。その時からかなりの時が流れた後の,大いなるバビロンの倒壊が差し迫っている時代にも同様の見張りが部署についています。それはエホバの聖霊で油そそがれたグループです。依然として「ものみの塔」という名称の雑誌と,適切にも関連を持つグループです。エホバ神がイエス・キリストを通してこの「見張り」級を任命しておられる証拠には事欠きません。この人々は,全世界が暗闇に覆われる今の不吉な「夜」の時間に至るまで,その資格で奉仕してきました。(マタイ 24:45-47)では,この「見張り」は,しかるべき時に何を知らせてくれると考えられますか。
17 部署についている「見張り」は何を見ましたか。それは何を表わしていましたか。
17 「見張り」に関するイザヤの預言は,さらに続きます。「すると,彼は一対の乗用馬と共に戦車やろばの戦車やらくだの戦車を見た。そして,彼は思いを凝らして厳重な注意を払った」。(イザヤ 21:7,新)これらの車は,駿足のペルシャの早馬ないしは乗用馬のスピードで近づいているものと思われます。そして「[征服された]海の荒野」からやって来ています。戦車が縦隊を作っているようです。ろばに引かれた戦車の縦隊は,メディア人ダリヨスの率いるメディアの軍勢を表わします。馬よりも速く走れるより大きな動物であるらくだが引く戦車の縦隊は,クロス大王bの指揮するペルシャ勢を表わします。このペルシャ人は,事実上,メディア人とペルシャ人から成る連合軍の指揮官でした。エホバがイザヤを通して,わたしはあなた個人の名を呼んだ,と述べられた征服者は,メディア人ダリヨスではなく,ペルシャ人クロスのことでした。このクロスの前に,エホバはバビロンの金属製の門と扉を開いてクロスがユーフラテス川の川床を上り,堅固な城壁に囲まれたバビロンの町に侵入できるようにされたのです。―イザヤ書 44:27から45:4。ダニエル 8:1-4,20と比較してください。
18 イザヤ書 21章8,9節によれば部署についている「見張り」はどんな種類の人ですか。それは現在に至るまで同じですか。
18 自分の部署についているこの見張りは,見張りの者としてどれほど忠実で信頼できる者でしょうか。イザヤ書 21章8,9節(新)は次のように述べてその答えを示しています。「それから彼はししのように呼ばわった,『エホバよ,わたしは昼間はずっとものみの塔の上に立っていますし,わたしは夜通しわたしの見張り所についております。それが何と,今,人の乗った戦車が,一対の乗用馬と共にやってきます!』」見張りは,自分がうむことなく警戒していた重大な情景をその鋭い目で見る時まで,しっかりと目覚め,自分の部署を離れませんでした。同様に,現在の「見張りの者」級も,神から与えられた使命を果たすために「ものみの塔」誌や他の神権的な出版物,および公開講演を用いて,声を大にし,恐れることなく叫び続けてきました。待望の発表が行なえるまで,見張りはエホバの尽きることのない力によって,そのことをこれからも行ない続けます。
19 戦車が近づいて来ることの意味を見張りの者が的確につかんでいたか否かを,何が示していますか。
19 見張りの者は,自分が立つものみの塔から得られる視界の中に入ってきた戦車の重要性を悟りました。70年間ユダの地が荒廃するというエホバの時の定めにより,また捕囚の身となったダニエルが西暦前539年に開かれたベルシャザルの不敬な宴会の前に行なった預言により,見張りの者は,非バビロニア人の戦車が何にも妨害されずやって来ることの意味を的確に解釈することができました。イザヤ書 21章9節(新)の後半には次のように述べられています。「それから彼は語り,こう言い始めた。『彼女は倒れた! バビロンは倒れ,彼女の神々の彫像すべてを彼は地に砕いた!』」
20 バビロンの神々の彫像を砕いたのが,バビロンに追放されたユダヤ人でなかったのはなぜですか。この偶像破壊者はだれでしたか。
20 ここで語られている偶像破壊者は,唯一の生ける真の神,ねたむ神つまり「専心の献身を求める神」であられるエホバのことです。(出エジプト 20:5,新)バビロンの神々を崇拝しなかったメディア人とペルシャ人にバビロンを征服させることにより,エホバは第3世界強国の偶像的な神々が偽りであり,実在しないことを証明されました。第3世界強国に反旗を翻し,同国を覆したのはバビロンに追放されていたユダヤ人ではありませんでした。彼らの神エホバは,そのユダヤ人たちにそうする権限や命令をお与えになりませんでした。むしろエホバは,メディア人ダリヨスとペルシャ人クロスをお用いになり,世界強国としての偶像礼拝的なバビロンを破滅に至らせたのです。(ダニエル 2:32,36-38)したがって,「裏切りを働く者」の倒壊を生じさせたのは「見張りの者」ではありません。「見張りの者」はバビロンの破滅を証しし,預言の神,主権者なる主であられるエホバの正しさを立証したに過ぎません。
21 イザヤの預言の「見張りの者」が行なった発表に似たどんな発表がその後に行なわれますか。
21 イザヤの預言の「見張りの者」が行なった発表に似た,すべての人が影響を受ける重要な発表がこの現代になされると予告されていました。1世紀の終わりまで生きていたクリスチャンの使徒ヨハネは,発表を行なう者に関する幻を見,次のことを書き記しました。「わたしは,別の使いが天から下って行くのを見た。彼は大いなる権威を持っており,地は彼の栄光によって照らし出された。そして,彼は強い声で叫んで言った,『彼女は倒れた! 大いなるバビロンは倒れた。そして,悪霊たちの住みか,あらゆる汚れた呼気のこもる場所,またあらゆる汚れた憎まれる鳥の潜む場所となった!』」― 啓示 18:1,2。
22 大いなるバビロンを廃虚にしてしまうのはだれですか。その方はその目的のためにどんな代理者を用いますか。
22 大いなるクロスである栄光を受けた主イエス・キリストこそ,将来に大いなるバビロンの字義通りの倒壊をもたらし,そこを人の住まない荒れ地とならせる方です。今日,エホバのクリスチャン証人たちはエホバの王国とその復しゅうの日について世界中に宣べ伝えることを望み,またそれを余すところなく行なうことができます。しかしそれで偽りの宗教の世界帝国が粉砕されるわけでは決してありません。彼らは,大いなるバビロンが倒れたとの発表ができる時を切に待ち望んでいるのです。(啓示 18:2)大いなるクロスは大いなるバビロンを覆すために,平和を守る地上の弟子たちは用いられませんから,啓示 17章に示されているように,獣のような代理者を用いられます。それは10本の角を持つ緋色の獣として描かれています。その七つの頭は聖書歴史上の七つの世界強国を表わします。かの国際的娼婦大いなるバビロンは,第一次世界大戦後の国際連盟が結成された時に,この20世紀の象徴的な獣の背中に乗りました。
23 象徴的な獣を以前支持していた人々は,次にだれに攻撃のほこ先を向けますか。大いなるクロスは何を行ないますか。
23 大いなるバビロンは今日に至るまで,連盟の後を継いだ国際連合の上に乗ってきました。しかしほどなくして,国際連合を支持する政治家たちは偽りの宗教の世界帝国に牛耳られることにあきあきし,彼女を振り落として滅ぼします。そして「見張りの者」が「大いなるバビロンは倒れた」と大声で叫んだ後に,政治家たちは全力をあげて,今度は生き残っているエホバのクリスチャン証人たちに攻撃のほこ先を向けます。ここで大いなるクロスである「王の王」イエス・キリストが介入され,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」で,国際連合を以前支持していた人々を滅ぼすのです。複合の見張りの者が叫ぶ知らせにこたえ応じた,エホバの油そそがれた「見張りの者」級と「大群衆」は,天と地すべての主権者としてのエホバ神の正しさを立証したため,神の保護を受けてこの最終的な戦争を生き残ります。
24 古代イスラエルは,どのような点でエホバの脱穀場の「子」でしたか。今日,同じようなだれの脱穀がまもなく終わりを迎えますか。どのように。
24 古代バビロンに70年間追放されていたユダヤ人たちは,こうしてまるで「脱穀」されるかのように矯正されました。彼らは,象徴的に言って,エホバの脱穀場の「子」を構成するものとなりました。バビロンが倒壊した後に,矯正を施すこの「脱穀」は終わりを告げることになっていました。この点に関し,イザヤ書 21章10節(新)には,思いやりを示し,慰めを差し伸べるかのような言葉があります。「脱穀されたわたしの者たちと,わたしの脱穀場の子よ,万軍のエホバ,イスラエルの神から聞いたことを,わたしはあなたに報告した」。同様に,大いなるバビロンには,エホバの忠実な証人たちを脱穀することが許されてきました。が,大いなるバビロンが倒壊して破滅に至った後は,大いなるバビロンによる「脱穀」は終わります。その以前の政治的情夫は脱穀を引き延ばそうとするでしょう。その報いとして,彼ら自身が脱穀され,エホバの象徴的な脱穀場で滅ぼされてしまいます。―啓示 14:14,15。ヨエル 3:13-16。ミカ 4:12,13。
25 大いなるバビロンの倒壊が近づいていることを考えて,今は,以前のどの時にも増してエホバの「民」が神の命令を鳴り響かせるべき時だと言えるのはなぜですか。彼らはどんな目的を念頭に置いていますか。
25 大いなるバビロンの倒壊が近づいていることを考えると,今は以前のどの時にも増して,「見張りの者」級と「大群衆」が,「わたしの民よ,彼女の罪にあずかることを望まず,彼女の災厄をともに受けることを望まないなら,彼女から出なさい」という神からの命令を鳴り響かせるべき時です。(啓示 18:4)そうです,「彼女から出」,その政治的な情夫,つまり神に敵対するこの世の不信仰な勢力に加わらないようにするのです。そしてエホバに献身した民である「わたしの民」の一部となるのです。(エレミヤ 51:45,新)イザヤの「海の荒野に対する宣告」に基づいてすぐに行動するのです。―イザヤ 21:1-10,新。
26 何に関して「万軍のエホバ」への感謝を捧げるべきですか。それに留意する人々には,どんな喜ばしい希望がありますか。
26 それで,「見張りの者」級を立てて配置されたことに関し,また遠く広く鳴り響かせるべきすばらしい報告をそのグループにお与えになったことに関し,すべての感謝を「万軍のエホバ,イスラエルの神」に捧げましょう。神から与えられたその報告に留意するすべての人々には,この世に臨む恐ろしい「夜」を生き残り,大いなるクロスである解放者イエス・キリストの統治する義の満ちる新しい事物の体制という輝かしい「朝」を迎える喜ばしい希望があるのです。これは「万軍のエホバ」,わたしたちの主権者なる主の喜びとなり,賛美となります。
[脚注]
a エルサレム聖書(フランス語)はイザヤ書 21章2節についてこう述べています。「エラムとは,ペルシャ人の起こった高原の古代住民の名称である。メディア人はバビロン攻略前にはクロスに隷従していた」
b クロス大王が戦いにらくだを用いたことについては,「ヘロドトスの歴史」の中の,「クリオ」と題するその第1巻,29ページをご覧ください。
M・ラベによるフランス語訳聖書1884年版は,イザヤ書 21章7節に関して次のように説明しています。「戦車に乗ったこれら二人の騎手は,バビロンを攻略する義務を負った二人の王,メディア人ダリヨスとクロスである。メノキウス[17世紀のイタリア人イエズス会士そして聖書注釈者]が詳述しているとおり,彼らの乗っている馬はメディア人とペルシャ人を表わしている」。
アダム・クラーク博士の「旧約聖書に関する注釈」第4巻,2,724ページにある,イザヤ書 21章7節に関する同様の注解もご覧ください。
らくだを使うクロスの戦略に関しては,H・G・ウェルズ著「世界史大系」1971年版,「ギリシャ人とペルシャ人」と題する第20章,257ページ,2,3節をご覧ください。
[13ページの図版]
ベルシャザルの不敬な宴会は,バビロンの滅びというエホバの裁きを招く結果となった
[16ページの図版]
まず最初に偽りの宗教の世界帝国が,次いでその政治的情夫が,エホバの証人たちを「脱穀」した報いとして,自らが「脱穀され」滅んでしまう