「御心が地に成るように」(その11)
『みこころが地に成るように』
その11
第4章は,その題と一致して『神の国の前もつての光』を論じています。それはサレムの王なる祭司メルキゼデクやダビデ王そしてエルサレムのソロモンが,来るべき神の御国の油注がれたエホバの支配者,イエス・キリストの予表であることを指摘しました。ヱホバ神は,その最初からイスラエルの国の見えざる王でした。しかし,その国民には目に見える人間の王を持つことを許し,エルサレムにあつた『ヱホバの座位』に座る地的な代表者にしました。ダビデ王はヱホバ神に敬虔な献身をしたので,ヱホバ神は御国の契約を結びました。その契約によると,王権は神の女の約束されたすえの来るまでダビデの王系に存続する筈です。王権は,神の女の約束された裔に永久に属するでしよう。イスラエルの後継の王たちは悪い行いをしたために,地的な王国はキリスト前607年に滅びて,二度と再び設立されませんでした。イエス・キリストが驢馬に乗り,勝利を得た様子でエルサレムに入つたときでも,王国はその町で新しく始まりませんでした。イエスが死人の中から復活した後,そして天に昇つて帰られるすこし前に,彼の弟子たちはイエスに質問をしましたが,彼は御国の再興される時を告げなかつたのです。
15 そのとき,イスラエルは誰に油を注いで王にならせましたか。この者が死んだ後に,その国には何が生じますか。
15 サウロ王は戦いで死にました。イスラエル人たちは,ヱホバがサウロの後継者になるべくダビデに油を注いだことを認め,ヱホバの油そそいだ者としてダビデに油を注ぎました。ダビデは,エルサレムで自分の国をかたく建ててから,ヱホバの聖所を建てようと欲しました。それはモーセが荒野で建てた天幕または幕屋に代るものです。ヱホバは戦士であつたダビデに,この特権を与えませんでした。しかし,ダビデの敬虔な望みによろこばれたヱホバは,ダビデの家族から決して取り去ることのない御国の契約をダビデと結ばれたのです。それでは,ダビデの死んだときに何が生じますか。ダビデと結んだヱホバの御国契約は次のように述べていました,『我なんじの生る汝の子をなんじの後に立て,かつその国をかたうせん。彼わが為に家を建ん我ながく彼の位をかとうせん。我は彼の父となり,彼はわが子となるべし。我はなんじの先にありし者(サウロ)より取りたるごとくに彼よりは我がめぐみを取りさらじ。かえつて我かれをながく我が家に我が国にすえ置かん。彼の位は何時までもかたく立つべし。』― 歴代志略上 17:11-14。
16 なぜキリスト教国の王たちの中,ひとりとしてその御国契約の下に来ないのですか。
16 ローマのコンスタンチン皇帝の時から今日のキリスト教国内の王たち又は政治支配者たちにいたるまで,ダビデと結ばれたヱホバの御国契約の下に入つた王はひとりもいません。キリスト教国が存在して,王を持つようになる時から幾百年も昔に,その御国契約は適用し始め,神の御子なるイエス・キリストに働き始めました。
17 ダビデ王は,誰の御座に坐りましたか。彼はイスラエルの真実の王として誰を認めましたか。
17 ヱホバから油注がれた者であるダビデ王は,ヱホバの御座に座りました。しかし,ダビデの主であるイエス・キリストが,いま神の右に座つている仕方でヱホバの御座に座りませんでした。ダビデは,エルサレムにあるシオンの山の目に見える御座で,単にヱホバの代表者として座つたにすぎません。彼はヱホバをイスラエルの真実の王と認めました。詩篇 59篇13節で,彼は霊感の下に次のごとく書いています。『ヤコブのなかに神いまして統治めたまうことを彼らに知らしめて地の極にまでおよぼし給え。』ダビデの生涯の終りが近づいたとき,彼はイスラエルの指導者たちがなした寛大な寄付によろこびました。その寄付は,ダビデの子ソロモンが建てるヱホバの聖所のためでした。そしてダビデは神を賛えて,次のように言つたのです,『ヱホバよ,いきおいと能力と栄光と光輝と威光とは汝に属す。すべて天にあるもの,地にあるものは,みな汝に属す。ヱホバよ,国も又なんじに属す,汝は万有の首とあがめられたもう。』(歴代志略上 29:10,11)しかしダビデは又つぎのようにも言いました,『エホバ…我子ソロモンを選びこれをヱホバの国の位に坐せしめてイスラエルを治めしめんとしたもう。』― 歴代志略上 28:5。歴代志略下 9:8。
18 ダビデの後継者たちは誰の御座の上に座りましたか,そしてイスラエルの国は何を模型的に表わしましたか。
18 それでダビデの後継者は,イスラエルの御座でヱホバを代表すると言われました,『ソロモンはヱホバの位に坐し,その父ダビデに代りて王となり,その繁栄を極む。』(歴代志略上 29:23)同じように,ヱホバの御国契約にしたがつてダビデの相続者になつたダビデの他の子孫たちは,みな『ヱホバの御座』に坐りました。その国はヱホバのもので,それは地上における神の模型的な御国でした。ダビデの家は,目に見える王たちを供給したのです。
19,20 (イ)それでは,ゼデキヤ王が王座から下ろされて,彼の息子たちが殺された後,御国の契約には何が生じましたか。(ロ)その国についてエゼキエルはゼデキヤ王に何と語りましたか。
19 それでは,バビロンの王ネブカデネザルがエルサレムの首都とその聖所を滅ぼし,セデキヤの位を覆して,彼を捕えてバビロンに連れ去り,そこで死なせたとき,その国の永遠の契約には何が生じましたか。そのとき御国契約は存在しなくなりましたか。そうではありません。その御国契約は神の女のすえの来る時まで存続したのです。神の女のすえについてヱホバは次のように言いました,『我かれを永く我が家に,我が国に居置かん。彼の位は何時までもかたく立つべし。』地上にあつた神の模型的な国は荒廃に帰して存在しなくなつただけです。ゼデキヤの王子たちは,バビロンの王により殺されました,しかしダビデ王の他の子孫たちがいましたから,ダビデの位についての公式の相続者および生来の相続者は彼らを通して来ます。エホバはゼデキヤ王を処罰して,次のように語つたとき,このことをたしかめました。
20 『汚れた悪人であるイスラエルの君よ,あなたの終りの刑罰の時であるその日が来る。主なる神はこう言われる,かぶり物を脱ぎ,冠を取り離せ。すべてのものはそのままには残らない。卑しい者は高くされ,高い者はいやしくされる。ああ破滅,破滅,破滅,私はこれをこさせる。私が与える権威をもつ者が来る時まで,その跡形さえも残らない。』― エゼキエル 21:25-27,新口。
21 キリスト前607年の後,ダビデの子孫たちは御国の契約について何をすることができましたか。
21 キリスト前607年にエルサレムが始めて滅んでから後,ダビデの子孫たちはエルサレムの地的な御座に座りませんでした。しかし,彼らは,御くらと王冠の権威を持つ最後の者が来るまで,その国についての権利を伝えて行くことができたのです。そのとき,神はその正当な相続者をみくらにつけて,冠をつけるでしよう。そのとき,予めに告げられている神の女の裔として,その者には『最初の蛇』サタン悪魔の頭を砕く権威が与えられます。
22 残れる者がバビロンからエルサレムに戻つたとき,なぜ神の模型的な国は再建しませんでしたか。なぜマツカビのジュダス・ヒルカナス・アリストバラスの設立した国は,神の国ではなかつたのですか。
22 それでは,荒廃した御国が復興して,神の御国が,その権利を持つ神の女の裔に与えられる時までどの位の期間がかかりますか。悔い改めていたユダヤ人の残れる者が,70年のあいだ人間と家畜のいなかつた自分の故郷に戻つたとき,ダビデの家系に属する神の模型的な国は再建しませんでした。彼らは非ユダヤ人の支配者,ペルシャのクロス王に従つていたのです。ダビデの王室から出た地方的な総督がいて,彼らは,その指示を受けました。キリスト前167年,シリヤ王アンチオカス4世エピハネスに対するマツカビの反乱が起り,マツカビ家は自分たちの政府を設立しました。キリスト前104年,ジュダス・ヒルカナス・アリストバラスは『ユダヤ人の王』という称号を取りました。しかし,それはレビ人の祭司の国でした。それは,ユダの王族に属するダビデ王の家系にあつて神の国が再興したものではありません。―創世 49:8-10。
23 イエスが勝利を得てエルサレムに入つた後に神の国は設立されましたか。又は,イエスが復活を受けた後,あるいは五旬節の日に,神の国は設立されましたか。
23 (西暦)33年の春,勝利を得たイエスは驢馬に乗つてエルサレムに入つてきました。それよりずつと以前の幾世紀もむかし,ソロモンも戴冠式のときに驢馬に乗つてきたのです。しかし,そのときダビデ王の正しい相続者による神の国は,新しく設立しなかつたのです。イエスが死人から復活した後,そして神の右に座るために天にのぼられる直前,イエスの弟子たちはイエスに単刀直入にこう尋ねました,『主よ,イスラエルのために国を復興なさるのは,この時なのですか。』イエスは,実際のところ,否と答えたのです。彼は次のように語りました,『時期や場合は,父がご自分の権威によつて定めておられるのであつて,あなた方の知る限りではない。ただ,聖霊があなた方にくだる時,あなた方は力を受けて,エルサレム,ユダヤとサマリヤの全土,さらに地のはてまで,私の証人となるであろう。』(使行 1:6-8,新口)それから十日後の五旬節の祝いの日に,神の聖霊は彼らの上に注がれて,彼らは力を受けました。しかし,イスラエルの国はその首都エルサレムに再び建てられませんでした。
24 なぜキリストの弟子たちは,神の国の設立されることをエルサレムで待ちませんでしたか。エルサレムの滅びたときにサタンがキリストの弟子たちの足下に踏みくだかれなかつたと,黙示録 12章17節はどのように示していますか。
24 キリストの忠実な弟子たちは,神の御国がイスラエルのために再興されるのを待つためにエルサレムに止まつていませんでした。彼らは,神の御国の正しい相続者が天でヱホバの右にすわられたことを知りました。それで,彼らはキリストについて証言を行い,エルサレムから出て行つたのです。(西暦)70年,タイタス将軍のひきいるローマの軍隊はエルサレムとそのヘロデの宮を滅ぼしました。しかし,その恐ろしい滅びの来る時よりもずつと以前にエルサレムにいたクリスチャンたちは,その滅びに定められた町から逃げて,その町と共に滅びるのをまぬかれました。彼らはルカ伝 21章20-24節にあるイエスの指示にしたがつて行動しました。使徒パウロは,その時よりも前に,ローマにあつたクリスチャン会衆に宛てて次のように書きました,『平和の神は,サタンをすみやかにあなたがたの足の下に踏み砕くであろう。』(ロマ 16:20,新口)しかし,神の大敵対者を彼らの足下に踏み砕くことは,西暦70年に不忠実なエルサレムが滅びた時には起きませんでした。それから25年以上の後,『すぐにも起るべきこと』についてヨハネに与えられた黙示録は,もとの蛇が神の『女』をはげしく迫害し,地上にいる彼女の霊的な子供たち,すなわち主イエス・キリストの霊的な兄弟たちに戦争をしかけると警告しました。―黙示 12:17。
25 蛇を打ち砕く者について,そして蛇を打ち砕く者の御国について,私たちは今日どんな質問をいたしますか。
25 ヨハネは,黙示録の中で,神の言葉の故に,そしてその行つていた証言の業の故に殺された忠実なクリスチャンたちの魂が,次のように叫ぶのを聞きました,『聖なる,まことなる主よ。いつまであなたは,さばくことをなさらず,また地に住む者に対して,私たちの血の報復をなさらないのですか。』(黙示 6:9,10,新口)そして,今日でも私たちは次のように尋ねます,すなわち神の女のすえはいつ悪しき蛇のかしらを砕きますか。模型的な神の国がキリスト前607年に滅びてから,神の天的な御国が設立され,蛇を打ち砕く者すなわち御国の権利を持つ神の女のすえに与えられる時までの期間はどのくらいですか。
26 神の模型的な国の首都を踏みつけることは,何時始まりましたか。イエスが地上に居られた時でも,その踏みつけることは終らなかつたと,私たちはどのように知りますか。
26 キリスト前607年に滅びた神の模型的な国の首都は,非ユダヤ人の国民によつて踏みつけられ始めました。バビロンのネブカデネザル王は,この踏みつけを始めたのです。バビロンの捕われの状態から荒廃した地に戻つた忠実な残れる者は,キリスト前537年に再び新しく設立されました。しかし,非ユダヤ人の国民がエルサレムを足下に踏みつけることは続きました。イエスは,使徒の時代の中に再建したエルサレムが滅びると予言しました。中東にいたローマの軍隊は(西暦)70年の数ヵ月中にこの滅びの仕事をしたのです。しかし,その踏みつけることは,その後も更につづくとイエスは言われました。どの位の期間? 彼の言葉を聞いてごらんなさい,『地上には非常な苦難があり,この民には怒りがのぞみ,彼らは剣の刃に倒れ,また捕えられて諸国民に連れて行かれるであろう。エルサレムは諸国民の定められた時の満ちるまで諸国民に踏みにじられているであろう。』― ルカ 21:23,24,新世。
27 キリスト前607年に踏みつけ始められたエルサレムは,何を表わし示しましたか。それでは,神の定めた時に踏みつけることが終るとは,何を意味しますか。
27 むかしのキリスト前607年当時では,くつがえされたエルサレムは神の国を表わし示しました。それはヱホバの模型的な座位を持つており,ヱホバの油注がれた者はその王としてそこに座りました。同じく,この世の諸国民によつて踏みつけられるエルサレムは,神の御国を代表します。地上に居られた当時のイエスは,山上の垂訓中の一部に次のような言葉を述べられました,『いつさい誓つてはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは「大王の都」であるから。』(マタイ 5:34,35,新口)それで『諸国民の定められた時』が全く成就してエルサレムの踏みつけられることが終るとは,象徴的なエルサレムである神の御国が再び立つことを意味します。それは神の御国をダビデ王の大いなる相続者に与えることを意味します。ダビデ王は昔のエルサレムにあつたヱホバの座位に座つていました。この相続者は,ヱホバ神がダビデ王と結んだ御国契約と一致して統治をする権利を持つ故に,統治を始めるでしよう。
『諸国民の定められた時』
28 エルサレムが踏みつけられている『時』はいくつありますか。誰の夢によつて私たちは知りますか。
28 それで,この『諸国民の定められた時』の長さを知ることは肝要です。その時はいくつありますか。それぞれの時は,どのくらいの長さつづきますか。聖書の中では,7という数は霊的な完成または完全の象徴として用いられています。七日は神の完全な創造の週をつくり上げませんでしたか。それで,神はダニエルの啓示の書物を通して,エルサレムを足下に踏みつける諸国民の定められた時が完全な数の7であると示しています。彼はネブカデネザル王に一つの夢を送りましたが,バビロンの科学者,賢人,そして宗教指導者の中のひとりとしてその夢を解釈することはできなかつたのです。ついにヱホバの予言者であるダニエルが召されました。恐れおののいていたネブカデネザル王は,その夢の詳細をダニエルに告げ,その意味をつつみかくさずに話してもらいたいとダニエルを励ましました。王からベルテシャザルという名前で呼ばれたダニエルは,次のように言いました。
29 ダニエルは,どんな識別によつてその夢の解き明かしを始めましたか。
29 『わが主よ,どうか,この夢は,あなたを憎む者にかかわるように。この解き明かしは,あなたの敵に臨むように。あなたが見られた木,すなわちその成長して強くなり,天に達するほどの高さになつて,地の果までも見えわたり,その葉は美しく,その実は豊かで,すべての者がその中から食物を獲,また野の獣がその陰にやどり,空の島がその枝に住んだ木,王よ,それはすなわちあなたです。あなたは成長して強くなり,天に達するほどに大きくなり,あなたの主権は地の果にまで及びました。』― ダニエル 4:19-22,新口。
30 その時ネブカデネザル王は,何の象徴でしたか。なぜ,そのときの彼と,それにつづく他の諸国民は,神の国の干渉を受けなかつたのですか。
30 その夢の木は,先ず最初に,夢を見た人に個人的な適用をしました。しかしネブカデネザルは,全能のヱホバ神により世界強国なるバビロンを設立するよう許された者です。バビロンは,第一次世界強国と第二次世界強国,すなわちエジプトとアッスリアの後継国でした。このバビロンの世界強国は,世界的な注意と尊敬を集めたのです。それで,ネブカデネザルは,彼自身よりは大きなものの象徴でした。彼は世界支配の象徴として立つていました。彼はそのとき,この世界支配を,最高の神の許可を受け,その目的に従つて行つたのです。ヱホバ神は彼を用いて不忠実なユダの国民の上に神の報復をなし,その国をくつがえしました。かくして,『諸国民の定められた時』は始まつたのです。この時のあいだ,エルサレムはこの世の諸国民によつて踏みつけられねばなりません。このわけで,バビロンと,その『定められた時』の期間中につづく他の諸国民は,たとえ模型的な仕方にしてもヱホバ神の国による干渉を受けなかつたのです。国家的な強国としての神の模型的な国は切り断たれました。
31 その象徴的な木には何が成されましたか。それについてどのくらいの時が過ぎましたか。
31 ダニエルは言葉を続けて次のように語りました,『ところが,王はひとりの警護者,ひとりの聖者が,天から下つて,こう言うのを見られました,「この木を切り倒して,これを滅ぼせ,ただし,その根の切り株を地に残し,それに鉄と青銅のなわをかけて,野の若草の中におき,天からくだる露にぬれさせ,また野の獣と共にその分にあずからせて,七つの時を過ごさせよ」と。王よ,その解き明かしはこうです。』― ダニエル 4:23,24,新口。
32 いちばん簡単な意味において,それは何を表わし示しましたか。その間,バビロンの政府制度には何が生じましたか。
32 いちばん簡単な意味において,このことは次のことを表わし示しました。すなわちネブカデネザル自身はこの世界支配という立場から追い落されるが,しかし滅亡して再び権力を握ることはできない,ということではありません。彼の『切り株』は,地に残りますが,『七つの時』のあいだは成長もせず,拡大もしないでしよう。その間,バビロンの政府制度は運営をつづけました。ただネブカデネザルが王座について行政をしなかつただけです。彼の息子であるエビル・メロダクは,政府支配の代理としてネブカデネザルの代りに支配したことでしよう。
33 切り倒された真実の世界支配は何でしたか。誰が支配を取りましたか。
33 切り倒された木についての大きな意味,すなわち正しい権利を持つものによる世界支配は切り倒されました。神の国だけが,世界支配の権利を持つています。ヱホバの油そそがれた王だけが,全地を支配するという神より与えられた権利を持つているのです。丁度,神に忠実を保つていた年月中にイスラエルの国は約束の地を支配しました。しかし,その模型的な神の国は,キリスト前607年に滅び,世界を支配したネブカデネザルは,約束の地の全部を支配したのです。この国際的な変化にあたつて,たけ低くはびこつたぶとうの木,すなわちユダのゼデキヤ王は,その根本から引き抜かれ,その実を取られ,その子供たちは殺されました。(エゼキエル 17:5-10,20,21)そのとき,神の御国契約は,別の者をその相続者にしました。
34 ダニエルの解明は,そのときネブカデネザル王について何と言いましたか。
34 ダニエルの解明は,次のようにつづいています,『これはいと高き者の命令であつて,わが主なる王に臨まんとするものです。すなわちあなたは追われて世の人を離れ,野の獣と共におり,牛のように草を食い,天からくだる露にぬれるでしよう。こうして七つの時が過ぎて,ついにあなたは,いと高き者が人間の国を治めて,自分の意のままに,これを人に与えられることを知るに至るでしよう。また彼らはその木の根の切り株を残しおけと命じたので,あなたが,天はまことの支配者であるということを知つた後,あなたの国はあなたに確保されるでしよう。』― ダニエル 4:24-26,新口。
35 ネブカデネザル王に臨んだ七つの時の期間中,彼のために何が確保されましたか。エルサレムの国が卑しめられている期間中,何がつづきましたか。
35 ネブカデネザルは,神が地についての政府の事柄を取扱うことを個人的に表わし示すべきでした。しかし,このように個人的に表わし示す期間中,ネブカデネザルの世界支配の地位は,木の切り株のように,七つの時が過ぎ去つて彼が正気に帰る時まで彼のために確保されました。同様にキリスト前607年,エルサレムの国によつて模型的に表わし示されたヱホバの国は,いやしめられ,切り倒されました。それは『七つの時』の期間中,いやしめられた状態で存続し,政府の働きをしなかつたのです。しかし,永遠の御国に関してヱホバがダビデ王と結んだ御国契約については,ヱホバ神はそれを果す義務を持ちつづけ,正しい相続者によつて全き成就が待たれていました。
36 1年の後,解明された夢は,ネブカデネザル個人の上に実際にどう成就しましたか。
36 ダニエルがそのことを解明してから12ヵ月後に,ネブカデネザルは世界強国なるバビロンについて誇つていました。そのとき,天の声は次のように述べたのです,『ネブカデネザル王よ,あなたに告げる。国はあなたを離れ去つた。あなたは追われて世の人を離れ,野の獣と共におり,牛のように草を食い,こうして七つの時を経て,ついにあなたは,いと高き者が人間の国を治めて,自分の意のままに,これを人に与えられることを知るにいたるだろう。』その日,地上における最強の支配者は,ただちに理性を失い,自分が動物,たぶん牛であると想像しました。『彼は追われて世の人を離れ,牛のように草を食い,その身は天からくだる露にぬれ,ついにその毛は,わしの羽のようになり,そのつめは鳥のつめのようになつた。』彼は自分自身を自慢にしてバビロンを神の国以上に高めたので,それは矯正を受けるにふさわしいものでした。そして,ネブカデネザルの偽りの神メロダクヌ又マードックは無力なることを暴露し,そのことを妨げることができなかつたのです。このような状態の中に『七つの時』が彼の上を過ぎているとき,彼は物言えぬ野の獣のような行いをしました。しかし,バビロンの代理政府は,悪と圧迫を行いつづけたのです。―ダニエル 4:28-33,新口。
37 大きな意味の『七つの時』のあいだ,この世の支配者たちはネブカデネザルのようにどう行いましたか。国民にはどんな影響を及ぼしましたか。
37 キリスト前607年に神の模型的なユダの国が滅びてから,大きな意味の『七つの時』が始まりました。その間,人類の政府はこの世の政治制度によつて統率されて行きましたが,神の御国契約に入つていない支配者たちは,気の狂つたネブカデネザルのような行いをしました。彼らは神のかたちにつくられた人間のような行いをしなかつたのです。それで,ヱホバの証者だけでなく,すべての国民は苦しみました。
38 ネブカデネザルは,彼に対する『七つの時』の終りに何が生じたと言いましたか。
38 ネブカデネザルの『七つの時』が終つたとき,何が生じましたか。彼は次のように告げています,『こうして,その期間が満ちた後,われネブカデネザルは,目をあげて天を仰ぎ見ると,私の理性が自分に帰つたので,私はいと高き者をほめ,その永遠に生ける者をさんびし,かつあがめた。その主権は永遠の主権,その国々は世々かぎりなく,地に住む民はすべて無き者のように思われ,天の衆群にも,地に住む民にも,彼はその意(どこに?)のままに事を行われる。だれも彼の手をおさえて「あなたは何をするのか」と言いうる者はない。この時私の理性は自分に帰り,またわが国の光栄のために,わが尊厳と光輝とが,私に帰つた。わが大臣,わが貴族らも来て,私に求め,私は国の上にかたく立つて,前にもまさつて大いなる者となつた。そこでわれネブカデネザルは今,天の王をほめたたえ,かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実で,その道は正しく,高ぶり歩む者を低くされる。』(ダニエル 4:34-37,新口)ネブカデネザルは,偽りの神マードックについてこう認めたのではなく,ダニエルの神ヱホバについてこう認めたのです。
39 ネブカデネザルの個人の場合に,その『七つの時』は,多くてどの位の長さですか。しかし,なぜこのことはエルサレムを踏みつけるということに当てはまりませんか。
39 ネブカデネザルは,43年間統治したと伝えられます。それですから,彼個人の場合に,この気の狂つていた『七つの時』は,多くて7年であつたにちがいありません。聖書の中のいろいろの場所で,一つの『時』は,実際の1年の代りに用いられています。(ダニエル 7:25; 12:7。黙示 12:6,14; 11:2,3)しかし,この場合にネブカデネザルは預言的な劇を行つており,この劇の中の1年ははるかに長い期間を表わし示します。そうでなければなりません,なぜならヱホバの国を代表するエルサレムが踏みつけられることは,ネブカデネザルの狂気の終つたときには終らなかつたからです。そして,6世紀の後にイエス・キリストは,異邦国民の定められた時の満ちるまで,エルサレムが踏みつけられると言いました。それでは,この『七つの時』はどのくらいの長さですか。
40 (イ)聖書の陰暦による時の計算によると,予言中の文字通りの一つの『時』は,どのくらいの長さですか。(ロ)すると,象徴的な『時』は,どの位の長さですか。そして,諸国民の『七つの時』は何時おわりますか。
40 聖書は,月と年を語るとき,陰暦ではかります。ネブカデネザルの場合,ひとつの『時』は,陰暦の1年を表わしました。その1年は360日です。実際には,12ヵ月で構成される陰暦の1年は,平均の太陽年よりも11日短いものでした。そのため,特定な年には,太陽暦と一致させるために,29日で構成される13番目の月が陰暦につけ加えられました。13番目の月をつけ加えることは,19年間中に7回行われました。長い時の期間については,1日は1年全部を表わし示すと神は言われました。このことから,360日で成り立つ陰暦の1年は,『一日を一年として』360年を表わします。(民数記 14:34,新口。エゼキエル 4:6)それで,象徴的なひとつの『時』は,360年ということになります。象徴的に言つて,『七つの時』は2520年となります。ネブカデネザルが正気を失つていた『七つの時』すなわち7年は,2520年の期間を予表しました。聖書の示すところによると,この『七つの時』すなわち2520年はキリスト前607年の初秋に始まりました。すると,『諸国民の定められた時』は,(西暦)1914年の初秋に終ることになります。
41 (イ)ネブカデネザルの場合木の切り株はどのような仕方で二重になわがかけられましたか。御座に戻つた彼は,どんな種類の支配者でしたか。(ロ)御国契約について,これは何を表わし示しましたか。
41 キリスト前607年以来のこの年月中,ヱホバ神の御国は,御国契約にしたがうところのダビデ王の油そそがれた子孫によつて運営されませんでした。それは,切り倒された木のようであつてその木の下や木の枝の下には生物がひとつもいなかつたのです。御国契約は地に残された木の切り株のようでした。『七つの時』が過ぎ去るまで,それはヱホバの抑制力により二重になわがかけられました。同様に,定められた『七つの時』すなわち7年が終るまでは,ネブカデネザルは自分の正気を取り戻してバビロン帝国内の自分の王位に良い状態で戻ることができず,世界を支配することはできなかつたのです。ダニエルの神である天の王を認めた支配者は,王座に戻つて国の中にかたくせられ,栄光と尊厳と光輝が与えられて『前にもまさる大いなる者』になつたのです。同じく2520年である『七つの時』が過ぎ去らない中は,御国契約は最終の全き成就をしないでしよう。神が抑制のなわを取りのぞく時は来ます。そのとき,油注がれた王ダビデの子孫でもつて御国を再建する時が来ます。そのとき,ヱホバの御国契約により,御国の権利を持つ者に御国は与えられます。
(次号につづく)