戦いからの永遠の解放
1 昔から,主要な戦争が行なわれるたびに,どんな希望が掲げられてきましたか。
この地上のあらゆる戦争を最終的に終わらせる戦いがあるということを多年聞かされてきました。強力な狩猟者ニムロデの日以来行なわれてきた幾千もの戦争のうちの主要なものの多くは,最後の戦争になると考えられてきました。第1次および第2次世界大戦については特にそうです。第1次世界大戦は,「世界を民主主義にとって安全な場所にする」戦争であると言明されました。第2次世界大戦は,世界を自由な,民族自決の場とし,人類のための「四つの自由」を保証する戦いとなるはずでした。
2 第2次世界大戦が最後の主要な戦争であったかどうかを示す事がらについて述べなさい。
2 第2次世界大戦は最後の主要な戦争となりましたか。それとも,さらにひどい荒廃をもたらす別の戦争が行なわれるのでしょうか。第2次大戦以後の諸国家の歴史からすれば,同大戦が最後の主要な戦争ではなかったことを示す多くの証拠があります。同大戦以来,非常に激しい戦争が幾つか行なわれてきました。しかも,関係諸国の間には,その種の激しい敵意がいっそう高まっています。多くの場所や,いま現に存在するさまざまな情勢は爆発点となる可能性を宿しています。
3 平和をもたらすことに関して,イエスは何を預言されましたか。
3 これまでに存在した最大の預言者であるイエス・キリストは,永続する平和をもたらす戦いが確かに起こることを示されました。イエスは,「世のはじめから今に至るまで起きたことがなく……二度と起きないような大患難」について話されました。(マタイ 24:21,新)この「大患難」には,聖書の他の箇所でも述べられているその種の戦いが含まれることになっています。
4,5 エゼキエルは,永続する平和の到来に先立って生ずる重大な戦争に関係する地上の軍隊をどのように描写していますか。
4 そのような戦いについて聖書の述べる事がらを考慮するのは価値のあることです。なぜなら,聖書はその戦いに加わる敵対者の実体を明らかにしており,その戦いの行なわれる理由や,その戦いがどうして永続する平和をもたらすものとなるかを述べているからです。ここではおもにエゼキエル書に注意を集中して論ずることにいたしますが,同書の述べる聖書の預言的な予測には目ざましいものがあります。エゼキエルはこう書きました。
5 『エホバのことば我にのぞみて言う人の子よロシ,メセクおよびトバルの君たるマゴグの地の王ゴグに汝の面をむけこれにむかいて預言し言うべし 〔主権者なる〕主エホバかく言いたもう ロシ,メセク,トバルの君ゴグよ 見よ我なんじを罰せん 我なんじをひきもどし汝の(あごにかぎをかけ)て汝および汝のすべての軍勢と馬とその騎者をひきいだすべし これみなそのいでたちに美をきわめ大盾小盾をもちすべて剣を執る者にして大軍なり ペルシャ,エテオピアおよびフテこれとともにあり 皆盾とかぶとをもつ ゴメルとそのすべての軍隊 北の極のトガルマの族とそのすべての軍隊など多くの民なんじとともにあり』― エゼキエル 38:1-6〔新〕(口語)。
ゴグと「マゴグ」の地
6 (イ)エゼキエルはなぜペルシア,エチオピア,フテ,ゴメルそしてトガルマに言及しましたか。(ロ)バビロンはなぜ含まれていませんか。
6 問題は,このゴグとはだれか,また「マゴグの地」とは何かということです。ここに述べられている諸民族の子孫は今日でも生存しています。しかし,明らかにその預言は単に特定の民族だけに言及したものではありません。むしろ,その預言は実例を用いて説明するために,その時代の強力な軍隊,つまり当時のイスラエルを脅かすおそれのあった軍勢を用いたのです。同様に,ゴグは今日のこの世界の装備の整った強力な軍隊をも思いのままに使えるでしょう。バビロンが含まれていないのは注目に値します。というのは,エゼキエルのこの預言の背景をなしているのは,バビロンがメディア・ペルシアの前に倒れた後の時代だからです。その勝利によって後者は聖書の歴史上の第4世界強国になりました。
7 ゴグの軍勢の実体を明らかにするのに,黙示録はどのように役だちますか。
7 聖書の黙示録の預言は,その攻撃の指揮者であるゴグの実体を明らかにし,またゴグの指揮するその戦いがどんなものかを理解するのに役だつ手がかりを与えています。黙示録はその17章と18章で,大いなるバビロンつまり偽りの宗教の世界帝国の完全な滅びを描写しています。次いで19章では,地上の軍隊とその政治諸組織つまり諸政府がともに滅ぼされることについて述べています。―黙示 19:17-21。聖書が世の政治諸政府を獣として比喩的に表わしていることに関しては,黙示録 19章19,20節とダニエル書 8章20,21節を比べてください。
8,9 (イ)「ゴグ」とはだれですか。(ロ)「マゴグの地」とは何ですか。
8 それにしても,いったいゴグとはだれですか。この点でも,黙示録が助けになります。というのは,黙示録は諸国民が悪霊の影響を受けて戦いに導かれていることを明らかにしているからです。そうした悪霊のかしらは「龍」つまり悪魔サタンです。(黙示 12:9; 16:13,14,16)ですから,ゴグとは,地に追い落とされて以来の悪魔サタンのことです。ゴグの住んでいる地,つまり「マゴグの地」とは何ですか。聖書の歴史では,このような名称の土地のことが指摘されている箇所はほかにありません。この「地」は,「北の極」の地として描写されています。(エゼキエル 38:6)それは孤立した,定住者のまばらにしかいない土地でした。
9 「マゴグの地」の比喩的な意味についていえば,黙示録の預言は,天でキリストが即位した後,サタンは天での戦いに敗れ,地に追い落とされることを示しています。それは,『地に災いが来る』ことをあらかじめ示すものです。その災いは最後の戦いで最高潮に達します。悪魔は地の近くに閉じ込められており,それ以上天に近づくことはできないので,悪霊以外は伴えない孤立した状態に置かれています。それで,「マゴグの地」とは,サタンが攻撃を行なうさい閉じ込められている目に見えない場所もしくは領域のことです。―黙示 12:5,7-12,新。
ゴグの攻撃目標
10,11 エホバは,ゴグの攻撃がその当時の時代に生ずるのではないことを,どのように明らかに示されましたか。
10 ゴグが開始しようとしている戦いの重大さをご存じのエホバは,ゴグにこう言います。『汝備えをなせ 汝と汝にあつまれるところの軍隊みな備えせよ しかして汝かれらの〔保護者〕となれ』。(エゼキエル 38:7〔口語〕)ゴグは「保護者」もしくは総司令官になります。彼は悪霊と世のそれらの軍勢すべての「君」なのです。ゴグに向かって次のように述べたエホバは,その攻撃が昔の時代においてではなく,むしろ遠い後代に起きるものであることを明らかに示されました。
11 『多くの日の後なんじ罰せられん 末の年に汝かの剣をのがれてかえり多くの民のうちよりきたれる者の地にいたり久しく荒れいたるイスラエルの山々にいたらん これは国々より導きいだされて皆やすらかに住まうなり 汝そのすべての軍隊および多くの民をひきいて上り暴風のごとく至り雲のごとく地を覆わん』― エゼキエル 38:8,9。
12 ゴグの攻撃を受ける民とはだれのことですか。説明しなさい。
12 ゴグの攻撃を受ける,『剣をのがれてかえった民』とはだれですか。彼らの「地」とは,現代の政治国家であるイスラエルの地をさしていますか。いいえ,そうではありません。軍隊を擁する現代のイスラエルは,サタンがその「神」と呼ばれているこの世の一部となっているのです。(コリント後 4:4)イスラエルはまた,国際連合を構成する政治諸国家の一つです。ゴグが攻撃するイスラエルとは,「神のイスラエル」つまり霊的なイスラエルです。(ガラテヤ 6:16)それはどうしてですか。というのは,イスラエル国民がメシヤを退けたとき,神はご自分の専属の国民としての生来のイスラエルを捨て去り,西暦33年のペンテコステの日にクリスチャン会衆を設立されたからです。(マタイ 23:38。使行 2:1-43)後日,使徒パウロはこう説明しました。「外面のユダヤ人がユダヤ人ではなく,また,外面の肉の上での割礼が割礼でもないのです。内面のユダヤ人がユダヤ人なのであり,その人の割礼は霊による心の割礼で,書かれた法典によるものではありません」― ロマ 2:28,29,新。
13 ゴグの攻撃を受けるのは生来のイスラエル国民ではないことを示す,もう一つの理由を挙げなさい。
13 そのうえ,エホバはゴグとの戦いによって,地の諸国民すべてにご自分が『エホバなることを知らせる』のです。このことは生来のイスラエルによっては行なえるものではありません。生来のイスラエルは,エホバというみ名を用いることを拒んでいますし,自分たちの政府は神権政府,すなわちエホバの清い崇拝を促進するために立てられた,神の支配する政府であるなどと唱えてはいません。―エゼキエル 38:23。
14,15 エホバの証人はどのようにして,『剣をのがれてかえって』きましたか。戦争が行なわれるさい,エホバの民はどんな立場を取りますか。
14 ゴグの攻撃目標に関するこうした理解は,このことに関する黙示録の描写とも調和しています。黙示録は,天を追われた悪魔がそれ以後,地上でエホバを代表し,イエスの証を行なう人たちを主要な攻撃目標にするであろうと述べています。―黙示 12:17。
15 エゼキエルの預言はその「末の年」におけるエホバの霊的な民,つまりエホバのクリスチャン証人の状態あるいは状況に注意を集中しています。彼らは『剣をのがれてかえって』きました。つまり,第1次世界大戦のもたらした迫害や大戦後に続いた迫害を生き残りました。そして,彼らは自分たちの王また牧者である主イエス・キリスト,つまりより大いなるダビデのもとに集められ,完全に一致結束しています。ゴグが攻撃を開始する時分には,偽りの宗教は滅ぼされてしまっていますが,エホバの清い崇拝を支持してきた人びとの唯一のグループである,それらクリスチャンの証人たちは,霊的に安全なところに住んでいることでしょう。―エゼキエル 34:23,24; 37:22-25。
エホバはゴグを戦いにおびき寄せる
16,17 (イ)エホバはなぜゴグをおびきよせて戦いを行なわせるのですか。(ロ)神はどのようにしてパロを同様に扱われましたか。
16 エホバはなぜ「[ゴグ]のあごにかぎをかけ」て,ゴグと,装備を十分に整えたその軍勢すべてを引き出して,集められた神の民に敵対させるのでしょうか。(エゼキエル 38:4,口語)なぜなら,エホバの戦いの時が到来したからです。そうすることにより,エホバは悪魔と悪魔に味方をする者たちに,ご自分に対する憎しみをあらゆる人びとに示させるのです。また,エホバはその戦いによって,ご自分のみ名と主権を全宇宙に対して立証されます。エホバはこう仰せられます。『我なんじをわが地に攻めきたらしめ汝をもて我の聖きことを国々の民の目のまえにあらわして彼らに我をしらしむべし』― エゼキエル 38:16。
17 わたしたちはこの時点でのエホバの行動を,古代エジプトのパロに対するエホバの処置と比べることができます。バロは,神と神の民に逆らう強情な敵でした。エホバの民,つまり当時エホバの証人として用いられた国民であるヘブル人を隷従させ,打ちひしがせる,あるいはもしそうすることができなければ彼らを徹底的に滅ぼすのが,パロの望みでした。(イザヤ 43:12)エホバは,ご自分の民にとって最大の益をもたらし,同時にご自身のみ名に栄光を帰する時期を選ばれました。エホバは,パロとその軍勢に対して講じた処置によって,ご自分が至上者であり,エジプトの神々すべての征服者であることを証明されました。―出エジプト 12:12; 14:4。
18,19 エホバは,ゴグを動かして攻撃を開始させるものとなる何をゴグに提供しますか。
18 サタンをおびき寄せて攻撃を行なわせるさい,神は,サタンにとってその憤りと憎しみをエホバの証人にぶちまける好機となるように思える機会を単に提供するにすぎません。預言は,サタンがいだいている動機を次のように明らかに示しています。
19 『〔主権者なる〕主エホバかくいいたもう その日に汝の心に思想おこり悪しきはかりごとをくわだてて言わん 我平野の町々にのぼり穏やかにして安らかに住める者どもにいたらん これみな石垣なくしており関も門もあらざる者なりと かくして汝物を奪い物をかすめ汝の手をかえして彼の人の住むにいたれる荒れあとを攻め またかの国々より集まりきたりて地の(中央に住み)て群れと財宝をもつところの民をせめんとす』― エゼキエル 38:10-12〔新〕(口語)。
20,21 ゴグが奪いたいと願っている「物」とは何ですか。
20 一見無防備のように見えるその民からサタンが奪おうと願っている「物」とは,物質上の利得のことでしょうか。いいえ,そうではありません。というのは,エホバの証人は比較的にいって,この世の品物をあまり持ってはいないからです。(ヤコブ 2:5。コリント前 1:27-29)彼らはまた,軍備を持ってはおらず,害を加えることをしません。サタンが奪いたいと願っているのは,この民が持っている王国の権益です。なぜなら,エホバの証人はその王国と王国の良いたよりを引き続き人びとに宣べ伝えており,そうした王国の権益を全世界で管理しているからです。しかも,その点で彼らは成功しており,あらゆる国民の中から多くの人びとをその王国の側に集めているのです。
21 悪魔とその精神を持っている者たちとは,このことを嫌っています。イエスが王国の権益を守ったために悪魔がパリサイ人を扇動したことを,わたしたちは思い出します。人びとはイエスのことばに耳を傾けました。しかし,それらユダヤ教の支配者たちは互いにこう言いました。「あなたがたの見るとおり,何一つうまくいっていない。見なさい,世は彼について行ってしまった」― ヨハネ 12:19,新。
22 エホバの証人はどのように『地の中央に住んで』いますか。
22 悪魔を動揺させているのは,地上にいる神の油そそがれた証人たちの手に委ねられているそうした王国の権益なのです。もし悪魔がエホバのそれら証人たちをどうにかして滅ぼすことができれば,エホバの主権を擁護する者は地上にはひとりもいなくなるでしょう。その攻撃が行なわれる時点では,「大患難」の最初の部分はすでに始まっており,その結果,他のすべての宗教は政治支配者により滅ぼされてしまっています。それらの宗教諸制度には何ら保護となるものがありません。なぜなら,神のしもべであるというその主張は,偽りだからです。しかし,エホバの証人は依然としてその立場を保ってゆきます。彼らは自分たちの周囲のあらゆる政治的また軍事的争いに対して常に中立の立場を取ってきました。彼らは自分たちの霊的な状態の中に,つまり比喩的にいって「地の中央[ヘブル語,ナベル]に」住んでいます。彼らはそのような立場に立ってエホバを崇拝しているゆえに,ゴグの敵意の注がれる焦点つまり主要な標的となっているのです。―エゼキエル 38:12,口語。
平和を乱す者たちの最期
23,24 エホバはどのようにしてゴグの軍勢を恐怖に陥れますか。
23 ゆえに,ゴグは無謀にも攻撃を開始し,戦いが始まります! ゴグの軍隊は核・細菌・化学兵器その他の恐るべき装備を整えているため,世の人びとの心は恐怖で打ちのめされるかもしれません。しかし,エホバがその民に対するゴグの攻撃によって怒りを燃え立たされるとき,エホバは人びとにさらにどれほど激しい恐怖の念を引き起こさせることになるかは計り知れません。エホバの民を攻撃する者たちは,「彼の目の珠を打つ」ことになるのです!(ゼカリヤ 2:8)エホバはこう仰せられます。
24 『〔主権者なる〕主エホバかくいいたもう その日すなわちゴグがイスラエルの地に攻め来たらん日にわが怒り面にあらわるべし 我ねたみと燃えたつ怒りをもて言う その日には必ずイスラエルの地に大いなる震動あらん 海の魚 空の鳥 野の獣すべて地にはうところのはうもの すべて地にある人わが前に震えん また山々崩れ がけ倒れ 石垣みな地に倒れん』― エゼキエル 38:18-20〔新〕。
25,26 ゴグの軍隊を戦りつさせる大いなる震動に続いて何が起こりますか。
25 そうした震動のためにゴグの大軍勢は恐れて麻痺状態に陥り,大混乱を招く結果になるでしょう。続いてしるされていることばは,エホバが思いのままに駆使できる恐るべき軍勢を用いて,かつて例のない激しい憤りをもって敵を撃つことを明らかに示しています。
26 『〔主権者なる〕主エホバいいたもう我剣をわがすべての山によびきたりて彼をせめしめん 人々の剣その兄弟を撃つべし 我疫病と血をもて彼の罪をたださん 我みなぎる雨と雹と硫黄を彼とその軍勢および彼とともなる多くの民の上に降らすべし しかして我わが大いなることと聖きことを明らかにし多くの国民の目のまえに我を示さん 彼らはすなわち我のエホバなることをしるべし』― エゼキエル 38:21-23〔新〕。
27 エホバがゴグの軍勢との戦いにおいて成し遂げる主要な事がらとは何ですか。
27 こうして,「全能者なる神の大いなる日の戦争」は,戦争をする者たちを滅ぼして,永続する平和をもたらします。その戦争は,ハルマゲドン(諸国民が到達する,戦いのための舞台となる情勢)と呼ばれる象徴的な『戦場』で行なわれます。エホバはその戦いの間中,ご自分の民を保護し,ご自身が宇宙の主権者であり,ご自分の民の守護者で,救出者であることを立証されます。ゴグに組した諸国民は,滅びをこうむる直前に,エホバの予告どおり,「我のエホバなること」をいやおうなく見させられ,自覚させられるでしょう。―黙示 16:14,16,新。
28 次号の「ものみの塔」誌上では,どんな事がらが考慮されますか。
28 当誌の次号の記事では,エホバの敵に臨むそうした滅びに続いて生ずる事態に関して神のみことばがあらかじめ告げている事がらを考慮いたします。