天の御国による完全な武装解除
『戦いのことを再びまなばざるべし。』― イザヤ 2:4。
1 なぜ完全な武装解除は,いま行なわれていますか。誰がそれを楽しみますか。
武装解除は宇宙的に行なわれています。今の20世紀からずつと昔,そのことについてのまぼろしが与えられていました。25世紀以上のむかし,書き記されて今まで保存された言葉のうちにそれは予め告げられました。今日の私たちは,生きのびてその実現を見るのですから,祝福された人間です。私たちは,諸国家の歴史上で最大の武装,いちばん費用のかかる武装の重荷を負わされています。しかし,私たちはまた最大の救助を楽しみます。私たちは大規模な破壊をもたらす最も恐ろしい手段を心配して,心を痛めています。しかし,破れることのない平和がもたらされるとき,私たちは心のやすらぎを得るでしよう。私たちは多数の人命が失なわれることと,この地的な住居が広範囲にわたり荒廃するという事態に面しています。しかし,死ぬことはなくなつてしまい,人間の最初の楽園と同じくらいに美しい地,そして花の咲きみだれる地上で完全な健康と美のうちに生活する時代に入ることができます。完全な武装解除は,特別顕著な仕方で私たちの時代の中に行なわれます。全国民の武装を解除してしまう敵しがたい力は,現にあるのであつて,私たちの時代のうちに永遠につづく真実の武装解除を確立するでしよう。
2 人間は,それを実現せしめる誉を誰に帰しますか。彼らが彫りつけた預言的な言葉にはどんな約束がありますか。
2 完全な武装解除を実現させる誉は,誰が持ちますか。この世の人々は,人間に頼つて,人間とか人間の機関にその誉を帰すでしよう。たとえば,ニューヨーク市の中心にある国際連合の広場の側にある石の壁に,次のような預言的な言葉が彫りつけられています。『かくて彼らはその剣をうちかえて鋤となし,その槍をうちかえて鎌となし,国は国にむかいて剣をあげず,戦いのことを再びまなばざるべし。』a この言葉のうちには国際的な武装解除の約束があります。そしてその後には平和と人間の兄弟愛の時代が来ます。そして地は耕されて実を多く産出するでしよう。
3 国際連合を名誉ある機関にするため,どんな委員会が設置されましたか,そして,どんな結果が生じましたか。
3 魂をゆり動かすほどのその言葉を成就する機関が誰であろうとも,またはどんなものであろうともそれは誉をほんとうに楽しむことができます。そして,国際的な平和と兄弟愛のうちに生命を楽しむすべての人からの感謝をうけるにふさわしいものです。国際連合は,その制度を名誉ある機関にしようと決意しています。そして,国際連合憲章の条項に一致するため,軍縮委員会を設置しました。その委員会は,12年働いてきましたが,成果はすこしもありません。ついに,保障会議の強力な一成員からの圧力をうけて,実際の軍縮会談は国際連合軍縮委員会から取りのぞかれ,国際制度外にある10ヵ国委員会に移されました。
4 常と異なる特別の日がいつ国連に来ましたか。その時までには,人間の達成した最新の業績は何でしたか。
4 それから,国際連合にとつては常とことなる特別の日が,1959年9月18日の金曜日に来ました。その時までには,原子爆弾や水素爆弾を弾頭につけて,海洋を横断して敵国に打ちこめる大陸間弾道弾は疑いのない事実となつていました。核戦争のことが話されて,準備されただけでなく,化学戦争や生物学的な戦争も用意されました。宇宙空間高く打ち上げられた人間製の月は,もの凄い噴射力を持つロケットによつて軌道にのせられ,地球のまわりをまわつていました。人間製の遊星は,太陽のまわりをも軌道に沿つてまわりました。そして,その前の日曜日には,共産主義レピエトの地からロケット発射された860ポンドの球は,月の「静かの海」と「晴れの海」近くに打ちあたりました。
5 その金曜日の午後,国連では何が生じましたか。そのとき提唱された計画の結果は,どのようなものになるはずでしたか。
5 それは強烈な影響を及ぼした金曜日の午後でした。ソビエト社会主義共和国連邦の首相は,歴史上はじめて国際連合総会場の演壇にのぼり,82ヵ国から成るその制度の代表者たちに演説をしました。彼の演説は,現代の焦眉の問題についての新しい計画を発表する前に,世界的な重要性を帯びる多くの事柄に触れました。彼の新しい提唱は,この世界のすべての国家が『全般的かつ完全な軍備撤廃』を行なう,ということでした。4年以内にすべての国家は軍備と軍隊を撤廃し,平和の技術において友好的な競争をしなけばならない。現代の兵器を持つだけでも危険がありました。それですから,『ひとつの火花』だけで,核戦争を始めるのに十分でしよう。しかし,彼がいま提唱した『全般的かつ完全な軍備撤廃』が行なわれるなら,『国家が,平和政策以外の道を追求する重大な可能性は残らないであろう。』それで,国内の治安を守る警察隊だけを持つべきである,というのです。
6 なぜこの最新のロシアの提唱は,総会を大いにあわてさせなかつたのですか。そして,ソビエト連邦は,後になつて,総会がなにをするようにとすいせんしましたか。
6 ソビエトの首相が述べた最新のロシアの提唱も,国連の総会を大きく驚かすことにはなりませんでした。その前日,首相の準備した演説から,ある程度の驚きは取りのぞかれていました。というのはアメリカの国務長官と英国の外務大臣が西欧の計画を総会に提出したからです。これは平衡の取れた軍縮を3段階に分けて行ない,後にソビエト首相が提唱した完全な軍備撤廃にみちびくものでした。さらに,その目的にむかつて取られる各段階は,能率的な制御を受けることが必要でした。査察と制御のむずかしい問題に面したソビエト首相も,次のことを提唱しました,すなわち『何人もそれぞれの義務を破る』ことがないようにするため,『我々はすべての国々で成り立つ国際制御機関の設立を提唱する。』この『全般的かつ完全な軍備撤廃』という大々的な提唱は,ある人々にとつて多くの疑問をいだかせました。しかし,ロシアの提唱を真剣に採りあげてその真価を十分に研究し,それがどのくらい実際的であるか,またどのように行なうべきかをしらべて見よ,とすいせんする人々もいました。それからすぐ後,ソビエト連邦は,『全般的かつ完全な軍備撤廃』という首相の提唱を『重要にして緊急なもの』として取りあげるよう国連総会にすいせんしました。
7,8 (イ)12年間,行き詰まつていたことから判断すると,私たちはいまどんな質問を自問すべきですか。(ロ)そのような計画にたいしてどんな以前の拒絶は,いまでもその成就をあり得ないものにしていますか。
7 そのときまでの12年間,軍縮問題はすこしも進歩せず,国連の軍縮委員会は何の成果をもあげませんでした。それでは,ロシアの首相の述べた提唱に刺激されて国連の82ヵ国は,真剣になつてこのことの核心にふれる,と期待できるでしようか。いまや全人類の福祉について考え,ついにおそろしい『ひとつの火花』が点火されて世界の核戦争が始まる前に,その問題を解決するでしようか。全く緊迫している必要性を認識している諸国民は,首相の提唱を聞いて,全般的かつ完全な軍備撤廃を誠実に信じていますか。
8 国際連合は,第一次世界大戦後に設立された国際連盟の後継者です。1927年,連盟の軍縮会議のとき,共産主義ロシアの代表者たちは各国家の完全武装解除を提唱しました。そのときは,ソビエト連邦は,年数のすくない革命政府であつて,自国の存続をはかり,第一次世界大戦の結果から回復しようと苦闘していました。共産主義の代表者たちが完全武装解除の提唱をしたのは,共産主義ソビエト政府の力が弱かつたから強国の力を弱めるのが狙いであつた,と批評家たちは信じていました。約5年が経過して1932年の2月2日,国際連盟主催の軍縮会議は,スイスのジュネーブで行なわれ,64の国々からの代表者が出席しました。ソビエト・ロシアのマクシム・リトビノフは,ふたたび完全武装解除を提唱しました。その提唱は,連盟の成員国により拒絶され,会議は真実の成果をあげずに閉会し,私たちを救うことになりませんでした。
9 (イ)いまでは,その計画の目的について,1927年になされたものと同じ批評をなぜすることができませんか。(ロ)1928年のどんな宣言により,武装解除についていますべての国が疑惑を受けるようになりますか。
9 国連総会における1959年の演説の中で,ソビエトの首相は見える聴衆と見えぬ聴衆にこのことを想起させました。しかし,戦争技術における現在の共産主義者の力を考えてみるとき,ソ連首相が『全般的かつ完全な軍備撤廃』を提唱したのは,ソビエトの国が軍事的にも,政治的にも,また経済的にも弱いからだ,などと批評家が言うならそれは『全くの非常識』です。しかし,首相の提唱の背後に正直な動機があるかを疑つた人々は,次のことを思い出しました。すなわち,1927年になされたリトビノフの武装解除提唱の真実の目的は,翌年の共産主義インターナショナル会議により示されたのです。その際,次のことが宣言されました,すなわちリトビノフ武装解除の提唱は,ソビエトがそれを信じたからでなく,いわゆる資本主義者たちを公然と表わし示すためであつたということです。資本主義者たちがそのような提唱を拒絶することは必至でした。すると現在のこの弾道弾,空間時代において,資本主義者および共産主義者のすべての国家に対して,疑惑の念を持たざるを得ません。いつたい,彼らは完全な武装解除を真実に信じていますか。
越えがたい障害
10,11 諸国家の信ずるものが何であろうと,武装解除に対する障害は何ですか。この事実を単なる想像であるとしりぞけないことは,なぜ私たちの益になりますか。
10 私たちは,特定な決定的な事実を無視して,偽りの希望を仰ぎもとめ,失望とその結果をこうむりたいと思いますか。そのようなことは望みません! それでは,事実に大胆に面し,最善のことを行うよう決定しましよう。現在の非常な緊張下にいる諸国家が,完全な武装解除を信じようと信じまいと,そのような武装解除には特定な超人間の障害があるのです。この世の全国民に制御し得ないひとつの障害は,すべての国の背後にいてすべての国を支配している目に見えぬ力です。それは何ですか。人類の大敵,全人類を殺す者,サタン悪魔の見えざる支配です。
11 不敬虔な国々のように,この事実を単なる想像であるとか,現代の科学的な時代に子供つぽい考えである,などと見なしてしりぞけてはなりません。天の宇宙的な神は,それを伝説的な想像であると見なしてしりぞけてはいません。天からこられた神の御子イエス・キリストは,今から19世紀前にそれを宗教的な想像である,と軽んじませんでした。天の全能の神と御子イエス・キリストのおふたりは,それを事実と認めています。それでおふたりは本の中でそのことを全人類に警告しています。その本の中からの引用句は,国際連合の広場の上にきざみこまれたのです。b その本とは,すなわち聖書です。私たちがクリスチャンであろうと,あるいはユダヤ人であろうと,またはそうでない者であつても,全能の神とその天的な御子により前もつて警告されることは,前もつて用意するという意味です。
12 人類の目に見えない敵は,いま何をすることをいといませんか。そのことを信ずるどんな理由がありますか。
12 全人類を殺す者になつた見えざる敵は,いまから19世紀むかしに全人類の救い主イエス・キリストをも殺しました。それですから,私たちの時代のしるしになる宇宙的な戦争において,全人類に滅びをもたらすことをいといません。彼は地上の者が救われて,すばらしい時代に入ることを望んでいないのです。その時代になると,死ぬことはなくなつて,楽園の地には永遠の生命があるのです。
13 この者は世界の支配者である,とイエスはどのように警告しましたか。その者が偽りを語る人殺しであると,彼はどのように示しましたか。
13 私たちの救い主は,サタン悪魔がこの世の悪い見えざる支配者であると警告しました。エルサレムの町の外で殺される前夜,イエス・キリストは11人の忠実な弟子たちにこう語りました,『私はもはや,あなたがたに,多くを語るまい。この世の君が来るからである。だが,彼は私に対して,なんの力もない。』『この世の君がさばかれる。』(ヨハネ 14:30; 16:11,新口)それよりも前の時,イエスはエルサレムで彼の生命を脅かした者たちに,こう語りました,『もしアブラハムの子であるなら,アブラハムのわざをするがよい。ところが今,神から聞いた真理をあなたがたに語つてきたこの私を殺そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかつた。あなたがたは,あなた方の父のわざを行なつているのである。……あなた方は自分の父,すなわち,悪魔から出て来たものであつて,その父の欲望どおりを行なおうと思つている。彼は初めから,人殺しであつて,真理に立つ者ではない。彼のうちには真理がないからである。彼が偽りを言う時いつも自分の本音をはいているのである。彼は偽り者であり,偽りの父であるからだ。』(ヨハネ 8:39,44,新口)この言葉を語つたイエスは,サタン悪魔を人殺しと示しています。サタンの偽りは,全人類に死の状態をもたらしました。
14,15 (イ)それ以外にサタンは何を始めましたか。その方向にむかつて彼はどんな最初の手段を取りましたか。(ロ)それでは,その者は,実際どのように全人類の殺人者になりましたか。
14 またサタンは地上最初の暴行による殺人を始めました。どのようにしてですか。約6000年のむかし,人間は地上で存在し始めました。その開放されていた美しい家,エデンの園では,その人は武装をすこしも必要としませんでした。彼のまわりを取りかこんでいたあらゆる種類の動物に対しても武装は必要でなかつたのです。創造主なる神は,この最初の人間アダムに次のことを告げました。すなわちアダムの天的な父である神の命令に完全に従うなら,彼は死を永久に避け得るというのです。下等動物はみな,それぞれの類に属するものを産んでふえました。最初の人間アダムが,神の像と状に似た人類を地に満たすことができるようにするため,神は女を創造してアダムに与え,彼の妻にならせました。両人はいつしよに平和な生活を送り,自分たちの楽園の住居を耕し,管理いたしました。すると,天の御父なる神の反対者,そしてそしる者は,目に見えぬ仕方で登場し,創造主なる神に敵対する戦争を始めると共に,人類を自分に従わせようとしました。人類を捕りよにするため,彼は神を偽り者と叫び,アダムの妻エバにそのことを信じさせました。彼女はエデンの園についての神の律法を破つたのです。
15 サタンはエバを通してアダムにはたらきかけ,神にそむかせて不従順な者にならせました。アダムとエバの良心はたちどころに悪くなり,恐れ始めました。両人は神との平和を失いましたが,目に見えないサタン悪魔はそのことを為さしめた原因者でした。神はサタン悪魔と共にアダムとエバをさばきました。神は新しく出現した反対者と誹謗者を滅びに宣告しました。しかし,この滅びはずつと後の時まで行なわれないでしよう。神はまた人類の最初の両親を死に処罰しました。サタン悪魔は,この処罰を人類にもたらしたので,最初の人殺し,全人類の殺人者になりました。―創世 2:7–3:24。
16 それと同じ時,神はまたサタンについて何を予めに告げましたか。
16 同じ時に主なる神は,サタン悪魔との戦いを前もつて告げ,そして人類種族からサタンの見えざる支配を取りのぞく者が誰であるかも指摘しました。神は,野の蛇のごとく見なされたサタンにたいし,次の言葉を語りました,『わたしは恨みをおく,おまえと女とのあいだに,おまえのすえと女のすえとの間に。彼はお前のかしらを砕き,おまえは彼のかかとを砕くであろう。』(創世 3:15,新口)この言葉によると,神の『女』のすえは,かかとの傷のごとき苦しみを受けます。しかし,彼は回復して蛇の頭を砕くごとく,サタン悪魔を滅ぼしてしまいます。
17 その蛇を砕く者がイエス・キリストである,と聖書を書いたひとりの人はどのように述べていますか。
17 このことをする御方は,神の御子イエス・キリストであつて,彼は33年半のあいだ地上の人間になりました。聖書を録した一人の人は,次のように述べています,『しばらくの間,御使たちよりも低い者とされたイエスが,死の苦しみのゆえに,栄光とほまれとを冠として与えられたのを見る。それは彼が神の恵みによつて,すべての人のために死を味わわれるためであつた。「子ら」が血と肉とにあずかつているので,イエスも同様に同じものを備えておられる。それは死をもたらす手段を持つ者,すなわち悪魔を御自分の死によつてほろぼし,死の恐怖のために一生涯奴隷となつていた者たちを解き放つためである。』(ヘブル 2:9,14,15,新世)それで,今日核戦争とか毒を用いる化学戦争や生物学的な戦争で人類に死を生ぜしめる手段を持つ者,サタン悪魔は,国際連合よりも大いなる者,すなわち女のすえであるイエス・キリストにより滅ぼされるでしよう。
18,19 (イ)誰が地上で暴力を用いた最初の殺人者になりましたか。なぜ?(ロ)ヨハネの説明によると,彼は誰の子であると示しましたか。
18 私たちの最初の両親アダムとエバは,神の律法を破つて,サタン悪魔の側についたので,その楽園の住居から未開地に追い出され,処罰をうけた罪人として死にました。死の処罰下にいたその二人に生まれた最初の息子は,カインと名づけられました。次に生まれた息子は,アベルと名づけられました。カインは成長して,長男である自分こそ大いなる蛇のかしらを砕く女のすえであると考えたにちがいありません。神に形式的な崇拝を捧げることにより,自分が神の約束されたすえであることを示そうとしました。カインは善を行なつて,罪を治めねばならぬと,神は告げました。しかし,カインは神の指示に従わなかつたのです。しつとに燃える憎しみの気持からカインは,アベルを蛇のすえであるかのように取りあつかいました。カインはアベルを撃ち殺し,地上で暴力を用いた最初の殺人者になりました。(創世 4:1-12)この行ないをしたカインは,神の子でなく悪魔の子であると証明しました。なぜなら,悪魔は彼の背後にいたからです。この事実について,イエス・キリストの弟子ヨハネは,次のように書いています。
19 『神の子と悪魔の子との区別は,これによつて明らかである。……私たちは互に愛し合うべきである。これが,あなた方の初めから聞いていたおとずれである。カインのようになつてはいけない。彼は悪しき者から出て,その兄弟を殺したのである。なぜ兄弟を殺したのか。彼のわざが悪く,その兄弟のわざは正しかつたからである。』― ヨハネ第一書 3:10-12,新口。
20 レメクは,誰の暴虐な精神を表わしましたか。ノアは誰の精神を表わしましたか。そして,各人にはどんな結果が生じましたか。
20 殺人者カインから5代目にあたるレメクは,曽祖の荒々しい精神を表明して,その二人の妻に次のような言葉を語りました,『私は受ける傷のために,人を殺し,受ける打ち傷のために,私は若者を殺す。カインのための復讐が七倍ならば,レメクのための復讐は七十七倍。』(創世 4:17-24,新口)時たつ中に『地は暴虐で満たされた』ということも当然です。この理由の故に神は,暴虐で信仰を持たぬその時代に世界的な洪水をもたらすことが良いと見られました。カインの子孫ではないノアとその家族は,その暴虐と地の荒廃に参加しませんでした。聖書の記録は,『ノアは神とともに歩んだ』と述べています。この平和の道は報われました。ノアとその家族は,災いをもたらす洪水について前もつて警告をうけ,それをどのように生き残るかについての仕方を告げられました。殺人者カインの子孫は,みな滅ぼされました。(創世 6:9より9:2まで)しかし,今はカインの精神を持つ人は,大ぜいいます。このわけで,地はいま暴力で満ちているのです。
力ある猟夫ニムロデ
21 ノアの大洪水後間もなく,誰が『悪魔の子』として立てられましたか。なぜアッスリアは彼の国と知られるようになりましたか。
21 大洪水が終つて間もなく,サタン悪魔は別の『悪魔の子』を生ぜしめました。それは,バベルまたはバビロンの王ニムロデでした。ニムロデは武器を使用しました。彼は野獣に対して使用しただけでなく,仲間の人間に対しても使用したのです。今日の猟夫がニムロデのような者と呼ばれるのも,理由がないわけではありません。最初のニムロデは,ノアの曽孫でした。野心にみちていたこの侵略的なニムロデについて,聖書の記録は次のように語つています。『ニムロデははじめて地上で権力を持つ者になり,ヱホバ(神)に反対する力ある狩猟者であつた。そのわけで,「ニムロデのごとく,ヱホバに反対する力ある狩猟者」ということわざがある。彼の国の始まりはシナルの地のバベル,エレク,アッカデおよばカルネであつた。彼はその地からアッスリアに出て,ニネベを設立した。』(創世 10:8-11,新世)アッスリアの地は『ニムロデの地』と知られるようになりました。アッスリアはきわめて好戦的な国で,聖書の歴史上で第2番目の世界強国になり,エジプトをその優勢な地位から落しました。(ミカ 5:5,6)忠実な王ヒゼキヤと預言者イザヤの時代に,アッスリアはエルサレムの聖都を脅かしました。この理由のために,アッスリア世界強国は,ヒゼキヤの神そしてイザヤの神であるヱホバの御手から悲惨な敗北を奇跡的にこうむつたのです。―イザヤ 36:1から37:38。
22 この世の諸国家は,今にいたるまで誰にならいましたか。その行いは彼らが誰によって支配されたことを証明しますか。
22 この年にいたるまで諸国民,特にアッスリアの後につづいた世界強国は,ニムロデの模範にならいました。それらは軍事力に頼り軍備をととのえました。このことは次のことを証明します,すなわちそれらはイエス・キリストが『この世の支配者』と呼んだ目に見えぬ者によつて影響を受け,支配を受けた,ということです。神の御子イエスが1900年前にこの地上に居られたとき,彼には聖書歴史上第6番目の世界強国,すなわち軍事国家であつた,ローマ帝国とこの世の他の国々をゆずり受ける機会が与えられました。
23 世界の支配を得る機会が,イエスには,どのように提供されましたか。しかし彼は何を選びましたか。
23 イエスは,世界を支配するこの機会を誰から提供されましたか。目に見えない『世界の支配者』サタン悪魔からです。それは,イエスが伝道といやしのわざを始める前に荒野で誘惑を受けた時でした。サタンは『またたくまに世界のすべての国々』をイエスに示して後,こう語りました,『これらの国々の権威と栄華とをみんな,あなたにあげましよう。それらは私に任せられていて,だれでも好きな人にあげてよいのですから。それで,もしあなたが私の前にひざまずくなら,これを全部あなたのものにしてあげましよう。』サタンがこの世の権威と栄光を与え得る,ということについては,イエスは否定しませんでした。しかしイエスはヱホバ神に崇拝をささげヱホバ神に仕えつづけることを選んだので,サタンに,去れと命じました。(ルカ 4:5-8,新口)イエスは,サタンの世界強国と結びつきを持つことを拒絶しました。
24,25 (イ)第1世紀の終りまでサタンは諸国民を支配したと,どのように明確に述べられましたか。(ロ)このことを証明するものとして,どんな言葉は天における戦争とその結果について描写していますか。
24 イエスが地上におられた時代から今にいたるまで,サタン悪魔はこの世の諸国民の背後にいる目に見えない力であつて,この世の諸国民の目をくらましています。イエスが誘惑を受けてから20年以上もたつて後,クリスチャン使徒パウロは次のように書きました,『もし私たちの福音がおおわれているなら,滅びる者どもにとつておおわれているのである。彼らの場合,この世の神が不信の者たちの思いをくらませて,神のかたちであるキリストの栄光の福音の輝きを見えなくしているのである。』(コリント後 4:3,4,新口)それからずつと後,1世紀の終りに近い西暦96年頃,ヨハネはサタン悪魔が諸国民を支配していると言いました,『神から生れたかたが彼を守つていて下さるので,悪しき者が手を触れるようなことはない。また,私たちは神から出た者であり,全世界は悪しき者の配下にあることを,知っている。』(ヨハネ第一書 5:18,19,新口)それと同じ頃,ヨハネは,私たち20世紀についての預言的なまぼろしを見ました。そのまぼろしは,『この組織制度の神』と神の女の約束されたすえのあいだに戦われる天の戦いに関するものです。ヨハネは,20世紀におけるこの見えざる戦いとその結果について,次のような描写の言葉を述べています。
25 『この巨大な竜,すなわち,悪魔とか,サタンとか呼ばれ,全世界をまどわす年を経たへびは,地に投げ落され,その使たちも,もろともに投げ落された。そのとき私は,大きな声が天でこう言うのを聞いた,「今や,われらの神の救と力と国と,神のキリストの権威とは,現れた。われらの兄弟らを訴える者,……は投げ落された。……地と海よ,おまえたちはわざわいである。悪魔が,自分の時が短いのを知り,激しい怒りをもって,おまえたちのところに下ってきたからである。』― 黙示 12:7-12,新口。
26 それでは,諸国家の完全武装解除をはばむ超人間の障害として何が立つていますか。
26 第一次世界大戦が1918年に終って以来,地と海にはわざわいがありましたか。その責任者は誰であるか,私たちは聖書から知つています。怒り狂つているこの世の支配者は,征服者によつて頭がくだかれるまでの時が短いことを知つているのです。それでは,彼は完全な武装解除の実現を許し,人類の救い,平和そして繁栄をはかると信ぜられますか。信ずることはできません。たとい,諸国家が『完全な武装解除の目標を目ざして絶対たしかな追求をする』ように呼びかけたアメリカ為政家の言葉に注意を払う努力をしたところで,この世の支配者がそのようなことをゆるすとは,信ぜられません。(1959年9月23日,ニューヨーク・タイムス紙)国際連合軍縮委員会はこの超人間の障害,すなわちサタン悪魔を取りのぞくことはできないでしよう。そして,諸国家の全般的かつ完全制御の軍備撤廃は実現することができないでしよう。
正しい動機は欠けている
27 どんな他の障害がありますか。アメリカの国務長官は,その必要なものが不足していることの恐れを,どのように語りましたか。
27 完全な武装解除を図る国際的な努力の成功をはばむ別の障害は,諸国家をそそのかしている悪い動機です。彼らの動機は,利己的な恐れであつて,正義を愛する気持ではありません。彼らは正しい道徳の認識を持つていません。アメリカ国務長官は,正しい道徳の導きが不足しているという恐れを言明しました。それはソビエット首相の軍縮演説が国連総会になされてから4日後の正餐会の席上で話されたものです。アメリカ国務長官は,次のように言いました。『あの制御に関する件には,きわめて慎重な研究が必要である。その演説の内ですこしも言われなかったが,きわめて慎重な研究を必要とする2番目の事柄は,次のことだ。すなわち仮に世界の全国家が彼の指摘したような状態,つまり国内の治安を維持するのに必要だけな軍隊と軍備だけを持つと仮定する。それでは,ナイフを用いてでも互に戦争しようと主張しつづける諸国家のあいだの平和を維持するには,道徳の力以外にどんな力があるのか。』― 1959年9月23日,ニューヨーク・タイムス紙。
28 キリスト教国でさえも,どんな道徳の認識を持つていないと示しますか。第6番目のいましめを破るために,キリスト教国はどんな手段を取りましたか。
28 仲間の人間を殺す悪および罪深さについてつよい認識を持つことによつて裏づけされる『道徳の力』がなければなりません。そのような道徳の力のみが,核兵器や化学兵器および生物学的な兵器,そしてナイフ以外のありきたりの兵器を捨てた諸国家のあいだに平和を維持することができるのです。創造者なる神の律法に一致するこの道徳的な認識を持つ国はキリスト教国のなかであつても,一つもありません。キリスト教国の国は,神が与えた十のいましめの6番目のいましめに従つていないのです。そのいましめとは,『なんじ殺すべからず。』あるいは『あなた方は殺人をしてはいけない。』といういましめです。(出エジプト 20:13,欽定,新世)キリスト教国でさえも,1959年9月21日号の(コロンビア地区)のワシントン紙,「アイ・エフ・ストンの週刊紙」内に述べられている手段を取りました。『人間は,戦争を愛しながらも,自分の兄弟を殺すことはためらう。どの戦争を始める前でも,敵を人間でない者と示すことは必要だ。敵を人間以下の者と示すことによつてその者を殺すことは罪でなく,また超人間と示すことによつてその者を殺すことは自分を守ることである,という風にしなければならない。』― 4頁,第2節。
29 ロマ書 13章の中で,このことは何を表わすとパウロは示していますか。
29 このことは,何を表わしますか。クリスチャン使徒パウロは,それは隣人への愛の欠如および十のいましめを与えた方に対する愛の欠如を表わす,と語つています。パウロの言葉は次の通りです,『人を愛する者は,律法を全うするのである。「姦淫するな,殺すな,盗むな,むさぼるな」など,そのほかに,どんな戒めがあっても,結局「自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ」というこの言葉に帰する。愛は隣り人に害を加えることはない。だから,愛は律法を完成するものである。』― ロマ 13:8-10,新口。
30 第三次世界戦争をさし控えている諸国家の動機はなぜ悪いものですか。
30 今日,諸国家は第三次世界大戦をさし控えています。その理由は神と隣人を愛しているからでなく,また十のいましめを与えた方を恐れているからでもありません。むしろ,各国家が持つている恐ろしい破壊的な軍備を心配しているからです。彼らは核力の使用される世界戦争の恐ろしい結果を恐れています。現在の世界平和は,恐怖の平和であつて,人命を取ることに関する正しい神の律法を道徳的に認識している平和ではありません。それですから,各国家の全般的かつ完全な軍備撤廃を提唱する動機は悪いものです。その動機は,宗教的なキリスト教国の国のものであろうと,あるいは無神論の共産主義の国であろうと,神の愛ではありません。その動機は,生命の大いなる与え主のいましめを守りたい,という心からの願望ではないのです。むしろ,宇宙空間時代の戦争によつて生ずるもの凄い災害を痛切に恐れているのです。この恐れは,全般的かつ完全な軍備撤廃を提唱した無神論者のソビエト首相の演説の中でも指摘されました。
31 彼らのどんな不信は,今日にもありますか。それで,真実の武装解除をさまたげるものは,何であると,はつきり示されますか。
31 さらに,1928年の共産主義者インターナショナル会議が認めたごとく,資本主義国家でも,共産主義国家でも,今日の国家で完全な武装解除を真実に信じている国はまずひとつもないでしよう。そのようなことは実行できないもの,不可能のもの,実際的なものでないと各国家は考えます。各国家はそのような包括的なことを互に信頼しません。それで,諸国家は疑惑の目をもちながら制御と査察制度を論じます。諸国家は地上の限定された地区での小さな戦争を今でもゆるします。その結果,肝要な正しい動機が欠如していることは,真の武装解除のさまたげであるとはつきり示されています。
32 (イ)諸国家が『平和と安全!』と言えるまでに武装解除しても,彼らは更に何に直面しますか。(ロ)諸国家は何をすることが必要ですか。しかし,どんな祈りは彼らに成就されますか。
32 しかし,緊迫した時勢のために諸国家が軍備を縮小して国家の治安を守るのに必要な警察力だけを持つと仮定しましよう。あるいは,国際的な力を採用して『平和と安全!』を唱えることができると仮定しましよう。すると,どうですか。このようなことをしても,彼らは全人類の歴史上でもつともおそろしい災から救われないでしよう。なぜですか。なぜなら,諸国家は最も肝要な面で武装解除をしていないからです! その理由の故に,諸国家はあらゆる災のうちでも最悪のわざわいに直面しつづけるでしよう。それは核力を用いる世界戦争でなく,天の全能の神と戦う宇宙戦争です。諸国家が真剣に研究して行なわねばならぬことは,神に対しての完全な武装解除です。諸国家は,神を無視しています。そして,世界の見えざる支配者サタン悪魔の影響をうけて盲目にされているため,啓示されて明らかに示されている神の目的を軽べつしてきました。この理由の故に霊感をうけた詩篇記者の預言的な次の祈りは,必ず答えられるでしよう。『かれらの面に恥をみたしめ給え,ヱホバよさらば彼らなんじの御名をもとめん。彼らをとこしえに恥おそれしめ,あわてまどいて滅びうせしめ給え,さればかれらはヱホバという名を持ち給う汝のみ全地をしろしめす至上者なることを知るべし。』― 詩 83:16-18。
33 諸国家は,ガマリエルの正当な助言に一致して何をすることを止めなければなりませんか。
33 諸国家は互いどうし戦うことを止めるだけでなく,ヱホバ神とその天的な御国に対して戦うことをも止めなければなりません。ヱホバ神の天的な御国は,現代のヱホバの証者により全地に伝道されているのです。この伝道は,この古い世の『終りの時』についてのイエスの預言を成就するものです。『御国のこの福音は,もろもろの国人に証をなさんため全世界に宣べ伝えられん。しかして後,終りはいたるべし。』(マタイ 24:14)それで,諸国家は最高法廷の判事,ガマリエルというパリサイ派のユダヤ人の述べた正当な助言に従うことが必要です。彼はイエス・キリストの使徒たちを反対して迫害していたユダヤ人たちに,次のように語りました,『この際,諸君に申し上げる。あの人たちから手を引いて,そのなすままにしておきなさい。その企てや,しわざが人間から出たものなら,自滅するだろう。しかし,もし神から出たものなら,あの人たちを滅ぼすことはできまい。まかり違えば,諸君は神を敵にまわすことになるかも知れない。』― 使行 5:38,39,新口。
34 サタンは,自分の諸国家に何をさせませんか。それで,諸国家の上に何が来ることは必至ですか。
34 しかし,聖書の預言は,私たちに次のことを警告しています,すなわちこの世の悪い神なるサタン悪魔は,地上の諸国家に武装解除させず,またヱホバ神と平和な関係に入らせません。それで,ノアの日と同じようにこの暴虐な世に災が来ることは必至です。
たしかな武装解除の真実の代理者
35 なぜ人間の努力が失敗することは確実ですか。しかし,心をよろこばせるどんな知らせは,絶望を追いはらいますか。
35 完全な武装解除をはばむいちばん重大な障害は,人間の力ではとうてい取りのぞくことはできません。国際連合と提携しようとしなかろうと,国際的な努力がことごとく失敗することは確実です。しかし,幸いなことに神の御言葉である聖書は,私たちに希望を与えています。聖書は,次のようなたしかな知らせで私たちを啓発し,よろこばせ,そしてみちびきます,すなわち戦争のない新しい正義の世をともなう完全な武装解除は,天の御国,天の神の御国によつて来る,ということです。
36 天の御国は誰のものである,とイエスは言いましたか。彼と彼の弟子たちは,そのわざをどのように表明しましたか。
36 19世紀のむかし,神の御子イエス・キリストは山上の垂訓の中で次のように語りました,『幸福なるかな,心の貧しき者。天国はその人のものなり。幸福なるかな,平和ならしむる者。その人は神の子と称えられん。幸福なるかな,義のために責められたる者,天国はその人のものなり。』(マタイ 5:3,9,10)聖書によると,イエスはこの世の国々とその栄光を与えると申し出たサタンの提供をしりぞけた後『イエスあまねくガリラヤを巡り,会堂にて教をなし,御国の福音を宣べつたえ,民の中のもろもろの病,もろもろのわずらいをいやし給う。』イエスはまた御自分の12使徒たちを伝道につかわし,次のように告げました,『往きて宣べつたえ,「天国は近づけり」と言え,病める者をいやし,死にたる者を甦えらせ,癩病人をきよめ,悪鬼を追い出せ。価なしに受けたれば,価なしに与えよ。』(マタイ 4:23; 10:7,8)イエスとその弟子たちは,天の御国のわざを表明しました。
37 なぜ昔のイスラエルは,武装をつけた国民でしたか。しかし,なぜキリスト教国は,むかしのイスラエルがかつて得たような援助を受けませんか。
37 たしかにイエスとその使徒たちは,むかし軍事兵器を用いていたユダヤの国民に属しました。しかし,むかしのその時にはヱホバ神は,御自分の地的な敵共を滅ぼすための刑執行の軍勢としてイスラエルの選民を用いたのです。そのわけで聖書の記録は次のように述べています。『イスラエルの神ヱホバ,イスラエルのために戦いたまい。』(ヨシユア 10:14,42; 23:3。歴代志略下 20:29)しかし,イエスが地上に居られた時代から後は,ヱホバ神が地的なイスラエルのために戦つたことは1度もありません。ヱホバ神がキリスト教国のために戦つたことは1度もなく,今日でも,不敬虔な共産主義に対抗するキリスト教国のために戦つていません。なぜですか,なぜなら,キリスト教国は,たしかに御子イエス・キリストの名を取り,ヱホバ神と新しい契約を結んでいる,と主張していますが,しかし,キリスト教国はヱホバ神の目に見える制度ではないからです。キリスト教国は国際連合と契約を結んでいる,と事実は示しています。国際連合は全般的かつ完全な軍備撤廃という焦眉の問題を論じなければなりません。キリスト教国はイスラエル共和国の設立を援助しましたが,キリスト教国自体は神の霊的イスラエルに属しません。―ガラテヤ 6:16。
38 イエス・キリストはどんな国民の頭になりましたか。彼は,山上の垂訓の中で教えたことをどのように行いましたか。
38 イエス・キリストは,死んで埋葬されたとき,肉によるユダヤ人またはイスラエル人ではなくなりました。ヱホバ神は,イエスが死んで3日目に彼を天の不滅の生命によみがえしました。そのとき,イエス・キリストは霊的イスラエルのかしら,指導者になりました。キリスト教国が武装解除を行なつたことは1度もありません。しかし,イエス・キリストは御自分の忠実な弟子たちで構成されている霊的イスラエルの武装をとりのぞかせました。イエスが敵に裏切られたとき,彼の使徒ペテロは剣を抜いて一ユダヤ人の耳を切り落しました。しかし,イエスはペテロに剣をさやに納めさせ,その人の耳をいやしました。(マタイ 26:51-56。ヨハネ 18:10,11)イエスは,山上の垂訓で使徒たちに教えた原則を実行されたのです。―マタイ 5:9,21-48。ルカ 6:27-36。
39 その後,ペテロはそのことについてのどんな助言を書いて与えましたか。
39 その後,ペテロは剣をとつたことが1度もありません。かえつてペテロは次のように書きました。すなわちイエスは不当の苦しみを受けたが,それは不当の苦しみを受ける弟子たちに対する模範を残されたというのです。それで,ペテロは次のように言葉をつけ加えました,『あなた方のうち,だれも,人殺し,盗人,悪を行う者,あるいは,他人に干渉する者として苦しみに合うことのないようにしなさい。しかし,クリスチャンとして苦しみを受けるのであれば,恥じることはない。かえつて,この名によつて神をあがめなさい。』― ペテロ前 2:21-25; 4:15,16,新口。
40 (イ)パウロは,彼とテモテが戦かつた戦争について何と語りましたか。(ロ)彼はエペソ人のクリスチャンたちに,その戦争とそれに必要な武器をどのように説明しましたか。
40 パリサイ派のユダヤ人,タルソのサウロは,かつてクリスチャンを殺すことに参加しました。しかし,彼は矯正をうけて使徒パウロになつて後は,殺人を止めました。彼は青年のテモテにこう語つています。『なんじキリスト・イエスの良き兵卒として我とともに苦しみを忍べ。』(テモテ後 2:3)イエス・キリストの良き兵卒であるパウロとテモテは,コリントにいる聖徒のクリスチャンたちにこう語りました,『我らは肉にありて歩めども,肉に従いて戦わず,それ我らの戦の武器は肉に属するにあらず,神の前にはとりでを破るほどの力あり,我らはもろもろの論説を破り,神の示教に逆いて建てたるすべての櫓をこぼち,すべての思いとりこにしてキリストに従わしむ。』(コリント後 1:1; 10:3-5)パウロは,エペソにいるクリスチャンたちに対し,彼らの戦うべき戦争の種類とそのような戦いに用いる武器の種類について説明し,次のように語りました,『悪魔の手立てに向いて立ち得んために,神の武具をもてよろうべし。我らは血肉と戦うにあらず,政治,権威,この世の暗黒をつかさどるもの,天の処にある悪の霊と戦うなり。この故に神の武具を取れ。』どんな武具ですか。真理の帯,『正義の胸当』『平和の福音の備え』の靴,『信仰の盾』『救のかぶとおよび御霊の剣,すなわち神の言葉』を取りなさい。そして『常にさまざまの祈と願とをなし』なさい。(エペソ 6:11-18)彼らは,そのような霊的な武器を用いることによつて,この世の偽りの神とその超人間の悪霊共に対して戦うことができます。
41 ペテロとパウロは今日のどんな宗教的な役目をしませんでしたか。両人はどんな武器を用いましたか。
41 使徒ペテロとパウロは,この通りに行ない,この世の軍隊付き牧師になつたことは1度もありません。両人がこの世の軍隊や兵器の上に祝福を与えたり,『聖水』をふりかけたことは1度もありません。ペテロとパウロは,『もろ刃のつるぎよりも鋭い』神の書かれた御言葉を用いました。(ヘブル 4:12,新口)両人は,私たちの真実の模範です。
マゴグのゴグは武装解除に反対
42 今日,真のクリスチャンは誰にならいますか。それでは,完全な武装解除はどのように来ますか。
42 たしかに,従順なクリスチャンたちはマタイ伝 24章14節に述べられているイエスの命令を行なつて,全国民への証のために神の御国の良いたよりを伝道します。彼らはペテロとパウロにならい,霊的な武器だけを用いて戦います。それでは,神の御国である天の御国によつて,完全な武装解除はどのように実現しますか。それは国家の政府をペテロとパウロに模倣させて実現するのではありません。むしろ,その御国が宇宙的な戦争,すなわちヱホバの預言者エゼキエルの預言38章と39章の中で予めに告げられているごとく,マゴグのゴグに対する戦争を行うことによつて実現します。この預言によると,マブグのゴグはこの世の国の武装解除に反対しており,ヱホバ神とその設立した御国に対して最終的な戦いをするためにこの世の国をみちびくでしよう。「ブリタニカ百科辞典」(1910-1911年の第11版,第12巻190頁)は,ゴグについて次のように述べています,『エゼキエル書 38-39章と黙示録 20章に見出されるヘブル語の名前。それは,最終的な神意の直前に世界に表明される反神権の力を示す。……マゴグはおそらくマトーブグを短くした形であつて,マトとは「土地」という意味の一般のアッスリアの言葉である。』
43 最近の研究は,マゴグのゴグが誰であると証明しますか。彼は,地と海の上に最後的なわざわいをどのようにもたらしますか。
43 しかし,最近になつて聖書を調べた結果,マゴグのゴグは,神の天の御国のクリスチャン証者たちに最終の攻撃を加えるこの世の偽りの神,サタン悪魔を予言的に象徴するものであることが判明しました。この象徴的なマゴグのゴグは,神の御国が天で誕生して以来,天から追い落されました。c そして今は地と海に災をもたらしています。彼は,天の御国すなわちキリストによる神の御国に全面的な攻撃を加えるために諸国民をみちびき,諸国民に最終的なわざわいをもたらします。西暦1914年以来,諸国民は天の御国を捨てつづけて来ました。そして,二つの世界戦争で怒りと憤りを表わし,共産主義の国の中であろうと共産主義でない国の中であろうと,全国民に証として御国の良いたよりを伝道せよ,と命ずるイエスのいましめに従うクリスチャンたちに対して迫害を加えてきました。(黙示 11:15-18)肉の武器,すなわち軍事主義の崇拝者たちは,当然これらの御国の証者たちに攻撃を加えます。同じ時についてのダニエルの預言は,象徴的な北の王と南の王がその攻撃の中で顕著な者である,と示しています。―ダニエル 11:36から12:1まで。
44 誰が北の王と南の王の跡を継ぎましたか。
44 20世紀の歴史を参照しつつ行なわれた最近の聖書研究は,次のことを示しました。すなわち英米両国の世界強国は象徴的な『南の王』の跡を継ぎました。一方,1945年にナチの指導者アドルフ・ヒットラーとその枢柚国が倒された後は,ロシアの共産主義政治権力が『北の王』の跡を継ぎました。政治的にも,経済的にも,また軍事的にも敵対し合うこの二人の王,すなわち北の王と南の王は,平和な共存中は互に冷い戦争を行うでしよう。しかし,彼らはマゴグのゴグの下にあつて,支配している天の御国,すなわち神の御国に一致して敵対しています。
45 ダニエル書 11章37-39節から判断するとき,北の王の申し出た武装解除の提唱は,なぜ完全な武装解除を意味しませんか。
45 象徴的な『北の王』の軍事主義および軍備計画について,ダニエル書 11章37-39節(新口)は,預言的にこう述べています。『彼はすべてにまさつて,自分を大いなる者とするからです。彼はこれらの者の代りに,要害の神をあがめ,金,銀,宝石,および宝物をもつて,その先祖たちの知らなかつた神をあがめ,異邦の神の助けによつて,最も強固な城にむかつて,事をなすでしよう。』現代の『北の王』について述べるこの言葉から判断してみるとき,彼が全国家の全般的かつ完全な軍備撤廃を提唱したことは,ヱホバ神とイエス・キリストおよび霊的なイスラエルに対する完全な武装解除を意味するものでは決してありません。彼はゴグにみちびかれてその攻撃に加わります。
46 どんな国民と土地にむかつてゴグの攻撃がなされると,エゼキエルは言つていますか。
46 エゼキエルの預言は次のことを表わしています。すなわちマゴグのゴグの指揮下に行なわれるこの攻撃は,ヱホバ神の回復した民に対してなされる一致結合した国際的な攻撃である,ということです,『汝かの剣をのがれてかえり,多くの民の中より集まりきたれる者の地にいたり,……イスラエルの山々にいたらん。なんじわが民イスラエルにせめきたり,雲のごとくに地を覆わん。ゴグよ,末の日にこのことあらん。すなわち,我なんじを地に攻めきたらしめ,汝をもて我のきよきことを国々の民の目のまえにあらわして彼らに我をしらしむべし。主ヱホバ言い給う。その日すなわちゴグがイスラエルの地に攻め来らん日にわが怒り面にあらわれるべし。』(エゼキエル 38:8,16,18; 39:1,2)すると,これはパレスチナに戻つてイスラエルの民主共和国を設立したユダヤ人,すなわちイスラエル人に言及するのですか。そうではありません! なぜですか。
47,48 なぜエゼキエルは,イスラエル共和国を設立したユダヤ人,すなわちイスラエル人に言及していないのですか。
47 なぜなら,イスラエル共和国の人々は,神の御子イエス・キリストが指導者であり王である霊的なイスラエルではないからです。イスラエル共和国は,天の御国を認めない国際連合の一員です。さらに,『未の日』における神の民についてエゼキエルを通して述べられたヱホバ神の言葉は,イスラエル共和国に適合しません。神の言葉は,次のように述べています,『是は国々よりみちびき出だされてみな安らかに住まうなり。』この事実は,ゴグをして次のように言わせます,『我平原の町々にのぼり,おだやかに住める者どもにいたらん。これみな石垣なくしており,関も門もあらざる者なり。』(エゼキエル 38:8,11)武装を持たず平和を愛してヱホバに信頼する民について述べている言葉は,1948年から今日にいたるまでの軍事的なイスラエル共和国に適合しません。すべての歴史家たちは次のことを知つています,イスラエル共和国は,その設立と維持を図るために現代兵器を用いて戦いました。また,その兵士は1956年のスエズ運河危機のときシナイ半島を蹂躙しました。そして,今日にいたるまで隣国の敵兵に対して厳重な軍事警戒を怠らず,イスラエルでつくられた軍需品を売るために西ドイツと契約を結ぶことまでしました。
48 キリスト教国と同じく,イスラエル共和国も,ヱホバ神により約束され,イエス・キリストの犠牲の血で有効にされた新しい契約に入つていません。イスラエルは,軍事警察力に依存する国際連合の契約に入つています。―エレミヤ 31:31-34。マタイ 26:26-29。ルカ 22:14-20。ヘブル 8:6-13; 13:20。
武装をつけない霊的イスラエルの救い
49 それでは,ゴグの攻撃についての預言は誰に適用しますか。したがつて,攻撃をうける『イスラエルの地』とは何ですか。
49 全地の宗教制度を調べるとき,次のことが分ります。すなわち,ゴグの攻撃についての預言が適用する者たちは,全く献身して洗礼をうけたクリスチャン,すなわちヱホバの証者として神の聖なる御名をになう霊的なイスラエル人たちです。イエス・キリストがこの古い世の『終りの時』について予め告げたごとく,これらヱホバの証者はあらゆる国々で憎まれ,キリスト教国の宗教的な国々の中でさえも迫害を受けます。したがつて,ヱホバの預言が『イスラエルの山』『イスラエルの地』と呼んでいるものは,イスラエル共和国が占めている中東の小さな部分ではありません。それは地上のヱホバの証者が占めている現在の神権的な立場です。彼らは,あらゆる国,言語,皮膚の色,そして文化から,この立場に集められました。その立場に入つた彼らは新しい契約に従つてヱホバを崇拝し,天の御国すなわちキリストによる神の御国の民および証者として奉仕します。
50 この民は,誰からの保護を信頼していますか。彼らは,どのようにいま完全な武装解除の実際的な模範になりましたか。
50 敵意にみちるこの世から憎まれても,これらヱホバの証者は文字通りに武装を解除し,その神ヱホバの保護を信頼しています。彼らは,国際的な制度である国際連合が,ニューヨーク市内の広場の壁に彫りつけられた言葉を成就する,ことを待ちませんでした。その言葉はヱホバの預言者イザヤ 第2章第4節から引用されたものです,『かくて彼らはその剣をうちかえて鋤となし,そのやりをうちかえて鎌となし,国は国にむかいて剣をあげず,戦いのことを再びまなざばるべし。』第一次世界大戦以来,ヱホバの証者はヱホバの預言者が語つたこの言葉を行なつてきました。彼らは,霊感をうけたこの言葉が自分たちに適用する,と語りました。それは,マゴグのゴグの指導の下に国際的な攻撃が彼らに対して行なわれた後に適用するのでなく,天の御国が1914年に設立されて以来のいま,そうです,諸国家がもつとも現代的な仕方で武装をととのえているこの世の『終りの時』のいま適用されるのです。それで,1958年のニューヨーク市における国際大会と,アメリカ合衆国外で行なわれた90の都市での大会で,幾十万というヱホバの証者は一つの決議を採決し,神と人との前でイザヤの前述の預言に従うと誓いました。さらに,彼らは53の言語で印刷されたこの決議文を全世界にわたり7,200万部も配布しました。彼らはいま完全な武装解除の実際的な模範です。
51 この攻撃をうけるとき,誰が霊的なイスラエルのために戦うと,彼らは期待しますか。そのとき,天の御国は完全な武装解除を,どのように成し行いますか。
51 ヱホバの証者は,悪鬼の軍勢と人間の軍勢をともなつて襲いかかるマゴグのゴグの攻撃に警戒を払い,その攻撃を待ち受けています。彼らはヱホバ神とイエス・キリストが霊的なイスラエルのために戦うことを期待しています。『主ヱホバ言いたもう。我つるぎをわがすべての山に召きたりて彼(ゴグ)をせめしめん。人々の剣その兄弟を撃つべし。我疫病と血をもて彼の罪をたださん。我みなぎる雨と雹と火と硫黄を彼とその軍勢および彼とともなる多くの民の上に降らすべし。しかして,我わが大なることと聖きことを明らかにし,多くの国民の目の前に我を示さん。彼らすなわち我のヱホバなることを知るべし。』『なんじの左の手より弓をうち落し,右の手より矢を落しむべし。……我イスラエルにおいて墓地をゴグに与えん。』(エゼキエル 38:21-23; 39:3,11)かくして,天の御国は完全な武装解除を成しとげてヱホバに栄光を帰します。
52 そのとき,ペテロに告げたイエスのどんな言葉は真実ですか。それで,誰が生き残りますか。
52 その宇宙的な戦争においては,使徒ペテロに告げたイエスの次の言葉は真実です,『剣をとるものはみな,剣で滅びる。』(マタイ 26:52,新口)しかしイザヤ書 2章4節の言葉に従う者たちは,マゴグのゴグの攻撃を受けても,ちようどノアとその家族が世界的な大洪水を生き残つたように,その宇宙的な戦争に生き残るでしよう。
53 生き残る者たちは,軍事兵器の残り物について何をしますか。そのために費す時間は,何を示しますか。
53 現在の軍事的な兵器の残り物は,これら霊的なイスラエル人によりことごとく滅ぼされるでしよう。ヱホバ神はその宇宙戦争で彼らを守り,生き残らせます。戦争後の地上の活動について,ヱホバは次のように言われています,『イスラエル〔生き残る霊的なイスラエル〕の町々に住める者出できたり,よろい大楯,小楯弓矢,手槍,手予および槍を燃し焚き,これをもつて七年のあいだ火を燃さん。彼ら野より木を取りきたることなく,林より木をきりとらずしてよろいをもて火を燃やし,また己をかすめし己の物を奪いし者より物をうばわん。主ヱホバこれを言う。』(エゼキエル 39:3,9,10)すべての兵器を燃すのに必要な時間から判断すると,マゴグのゴグにみちびかれる諸国民の軍事兵器は,きわめて多いものです。しかし,かれらの兵器は,全能の神,万軍のヱホバとそのキリストに対しては何の役にもなりません。
54 なぜ地上は国際的な戦争で踏みにじられることがありませんか。なぜ獣を恐れることもなくなりますか。
54 この古い世の軍事力に対して,万軍のヱホバが勝利を得られるとき,それはなんとよろこばしいことでしよう! 神の創造されたこの美しい地球が,神の十のいましめを破る者たちの国際的な戦争でふみにじられるということは決してないでしよう。ヱホバの新しい世は,ヱホバを恐れ,イエス・キリストにならつて完全な武装解除をすでに行なつた地上の住民たちだけで始まるでしよう。獣のような諸国家を恐れる心配は,過去のものとなります。実際の獣から害を受ける,という恐れもなくなるでしよう。なぜなら,天の御国の地的な領域について,ヱホバ神は御自分の預言者を通して次のように語られています,『わが聖き山のいずこにても害うことなく,傷ることならん。そは水の海を覆えるごとく,ヱホバを知るの知識地にみつべければなり。』(イザヤ 11:6-11)この地上にニムロデのような猟夫は,もはやいないでしよう。
55 軍備に対するどんな影響は,神の地位を失いますか。人類をして永遠の武装解除を行わせる動機は何ですか。
55 あの象徴的な蛇なる竜,人間の目から姿をかくし,軍備を促進しつつ,この地上を支配している偽りの神,サタン悪魔はもはやいないでしよう。従順な人類は,唯一の生ける真の神エホバを恐れて歩くでしよう。ヱホバの御子イエス・キリストは彼らの天的な王,サタンのかしらを砕く神の女のすえになるでしよう。神を愛することと隣人を愛することが,心の動機となります。そして,天の御国の下に地上で永遠の生命を得るすべての者たちは,完全な武装解除を行いつづけ,永遠の地的な楽園で互に平和に生活するでしよう。
[脚注]
b 145頁の2節とその脚注を見なさい。
c 150頁24,25節を見なさい。