神の政府のもとでの人間の幸福
1,2 人間が地上で生活を十分に楽しむための主要な要素の一つはなんですか。
庭園のような環境の中で健康に生活できるとすれば,それはなんとすばらしいことでしょう。清く澄んだ湖や流れ,そして健康的な食物と澄みきった空気があれば,生活はほんとうに楽しいものになります。さらに,すべての人が共通の目的,つまり地球の資源を人類の益のために使うという点で協力するなら,そこでの仕事は喜びあふれたものになります。そうした状態になれば,地球はほんとうにパラダイスになります。
2 もとより,こうした願わしい状態をもたらすためには,喜ばしい環境や協力的な人々以上のものが必要です。すなわち,清潔で腐敗することのない政府が必要です。「正しい者が権力を得れば民は喜び,悪しき者が治めるとき,民はうめき苦しむ」ということは容易に理解されるからです。(箴言 29:2,口語)人間が考え出したいろいろな政府は,望ましい状態をもたらすという点で失敗してきました。それは,そのような願わしい政府を持つことは不可能であるという意味ですか。
3,4 神は地に対して何を意図しておられますか。そして,すべての者の幸福を保証するために何を行なわれますか。
3 創造者は聖書の中で,地を治める義の政府を意図しておられることを明らかにしておられます。創造者は「幸福な神」であり,また,人間の創造者であるので,人間の幸福な生活のためにどんな政府が必要であるかを知っておられます。(テモテ前 1:11,新)創造者は,ご自分の預言者エゼキエルを通して,その政府のしくみを啓示されました。
4 地の所有者であるエホバは,この地球を人間の住みかとして定められました。また,主権を持つ支配者として,個々の人を自分の選びのままに地上に置かれます。それは単にご自身の満足のためだけでなく,関係者すべての最大の幸福のためでもあります。―出エジプト 19:5。詩 115:16。
例証となるもの
5 地をその住民の間で分配することに関してエホバはどんな例を示されましたか。
5 このことを例証するものとして,エホバは預言者エゼキエルに一つの幻を与え,その中でイスラエルの十二部族のそれぞれに場所を定め,その境界を明示されました。このページの図をご覧になれば,管理的な位置に「首長」と記された細長い土地があったことに気づかれるでしょう。その北側には,それと平行して七つの区分があり,南側には,イスラエルの残りの五部族に割り当てられた土地がありました。それぞれの領土として割り当てられた細長い土地は東西に横たわり,地中海からヨルダン川もしくは死海に及びました。―エゼキエル 47:15-20。
6 エゼキエルの幻の中で,聖所もしくは神殿はどこに位置していましたか。
6 レビ族はエホバの聖所での務めを得たために割り当てられた相続地を持ちませんでした。その聖所は,管理的位置にあった細長い土地の中,2万5千キュビト(約13㌔)平方の区画の中にありました。(ここで測定に使われているキュビトは「一キュビトと手はば」[約52㌢]です。)この正方形の部分は「なんじらが献ぐるところの献納地」と呼ばれ,モリア山の周辺にありました。―エゼキエル 43:13; 48:8,9。
7 (イ)「献納地」はどのように分割されましたか。北側の細長い土地を占めたのはだれですか。(ロ)祭司たちにはどの部分が割り当てられましたか。
7 この「献納地」は,それぞれ2万5千キュビトの長さを持つ三つの細長い土地にさらに区分されることになっていました。北側とまん中の区分は1万キュビトの幅を持ち,南側の区分は5千キュビトでした。北側の区分は祭司でないレビ人たちに割り当てられました。(エゼキエル 48:13,14)「献納地」のうちまん中の幅1万キュビトの部分にはエホバの聖所があり,「祭司に属」する「聖き献納地」と呼ばれ,『レビの境界に沿ふいと聖き』場所とされました。―エゼキエル 48:10-12。
8 いちばん南側の細長い土地はなんのために使われましたか。
8 いちばん南の幅5千キュビト(2.59㌔)の細長い土地には,その中央に,5千キュビト平方で,「都市」(新)と呼ばれる所がありました。その都市の城壁の長さは一面が4,500キュビトであり,周囲に残る幅250キュビトの土地は牧草地(「郊地」,文語)とされました。(エゼキエル 48:15-17)都市の両側(東側と西側)には,それぞれ長さ1万キュビト,幅5千キュビトの土地がありました。この広い土地は,都市で働くすべての人の食物を生産するために耕作されることになりました。その都市で働く人々は多部族から来た職員たちを構成し,レビ人以外の十二部族すべてから来た人々でした。―エゼキエル 48:18,19。
天の政府の見える代表者たち
9 「首長」とはだれのことでしたか。その領地はどこにありましたか。
9 この幻の都市政府の見える頭は「首長」(「君」,文語)と呼ばれました。彼に割り当てられた領地はかなり広く,2万5千キュビト平方の「献納地」の両側にある土地からなっていました。この,幅2万5千キュビトの細長い土地は,「献納地」の西方は地中海にまで達し,東方はヨルダン川と死海にまで及んでいました。―エゼキエル 47:18,20。
10 (イ)「都市」が天の都市,新しいエルサレムを表わしていなかったことを示しなさい。(ロ)「都市」は何を表わしていましたか。
10 エゼキエルの幻の中の都市は,そのすぐ近く,特別の「献納地」の中に神殿があったとはいえ,都市そのものの中に神殿はありませんでした。この点は注目に価します。祭司とレビ人たちはこの都市に住んだりそこで働いたりしたのではありません。したがって,メシアの千年統治下におけるこの幻の成就において,この幻の都市は,霊的なイスラエル人から成るキリストの会衆であり,またキリストの花嫁に例えられる,天の都市,新しいエルサレムを表わすものとはなりません。(黙示 20:3,4,6; 21:1,2,9-21)これらの人々は祭司,「王なる祭司」であり,天に登録されているのです。(ペテロ前 2:9。ヘブル 12:23)したがって,この「都市」は,イエス・キリストおよびそのもとにある十四万四千人の王また祭司たちから成る天の政府ではなく,贖われた人類の物事をつかさどる,見える地上の管理機関の所在地を表わしています。
11 幻の中の「首長」がメシアの姿を象徴的に表わすものではないことを示しなさい。
11 したがって,この幻の中の「首長」は,イエス・キリストの象徴的な姿ではありません。この首長は,神殿においてではなく,「世俗的な」部分で仕えたのに対し,イエス・キリストは偉大な大祭司であり,エホバの霊的な神殿の天的な領域で仕えるのです。(ヘブル 3:1; 8:1)エホバが,エゼキエルの預言のこれより前の章で,メシアのことを「首長」と呼ばれたことは確かです。しかし,そのところで神は,その首長を「わがしもべダビデ」と述べておられるのに対し,この「都市」に関する幻の中の首長についてそのような言及はなされていません。ダビデはイスラエルの王であり,肉的な血筋について言えば,メシアはこのダビデの家系から来ました。(エゼキエル 34:24; 37:25。使行 2:29-36)そしてイエス・キリストは,予告されたメシアとして,大祭司であるとともに天の王となるのです。
12 「首長」はだれを象徴的に描き出しているのですか。
12 では,この神殿の幻の中の「首長」はだれを象徴的に描き出しているのですか。エホバがイスラエル国民をご自分の「しもべ」と呼んだ場合のように,「しもべ」ということばはときに集合的な意味で使われましたが,この「首長」という語も集合的な意味を含んでいます。この語は,天のメシア,イエスが,「新しい天」の監督のもとにある「新しい地」にご自分の見える代理者として任命する人々を表わしています。―イザヤ 43:10。黙示 21:1,2。
13-15 (イ)詩篇作者は,霊感のもとに,「首長」級についてどのように描写していますか。(ロ)預言者イザヤは「首長」級の支配の影響をどのように描いていますか。
13 詩篇作者は,王イエス・キリストに対する預言の形で呼びかけ,イエスの地的な子どもとなる人々に関してこう書き記しました。「あなたの[地的な]父祖たちに代ってあなたの子らが現われ,あなたはこれを全地に君として任命するであろう」。(詩 45:16,新)キリストは,彼を通して命を得ることによってその「子ら」となるこれらおよび他の同様な人々が,地上の義なる『君たち』として人類の物事を公正に管理し,人類の安全を保つように見届けます。そのことは,イザヤ書 32章の次の壮大なことばの中で保証されています。
14 『ここにひとりの王あり 正義をもて統治め その君たちは公平をもてつかさどらん また人ありて風のさけどころ暴雨ののがれどころとなり かわける地にある水のながれのごとく うみつかれたる地にある大いなる岩陰のごとくならん。
15 『そのとき公平は荒れ野にすみ 正義はよき田にをらん かくて正義のいさをは平和 正義の結ぶ果はとこしえの平隠と安きなり わが民は平和の家におり 思ひわずらひなき住みかにをり 安らかなるいこひ所にをらん』― イザヤ 32:1,2,16-18。
16 マタイ 19章28節,ルカ 22章29,30節にある,使徒たちに対するキリストのことばは,その時どのように実現しますか。
16 エホバは,ご自分の民をバビロンにおける流刑から戻してエルサレムとその神殿を再建させたさい,彼らのためにこのことを小規模に行なわれました。神はキリストの千年統治のさい,全地の民のために,このことをはるかに大きな規模で行なってくださるはずではないでしょうか。その時,使徒たちに対するキリストのことばが実現します。つまり,彼らはキリストとともに座に着いて,「イスラエルの十二部族」を,すなわち贖い取られた人類のすべての者を,地上の見える代理者であるこの義なる君たちを通して『裁き』ます。―マタイ 19:28。ルカ 22:29,30,新。
その都市の名に含まれる深い意味
17 (イ)だれが「首長」級とともに働きますか。(ロ)その都市の城壁の門に関する幻の描写の中にどんなことが示されていますか。
17 全地のあらゆる場所,そして贖われた人類のあらゆる隊伍から来る自発的な人々が「首長」級に加わって,これと密接な協力関係に入ります。これはその「都市」で行なわれ,そこは,「首長」級が全人類の物事を管理するための見える公式の中心地を表わしています。エゼキエルの幻は,その都市の四方の城壁のそれぞれに三つの門を描き出し,それがイスラエルの十二の部族すべてに開いていることを示しています。(エゼキエル 48:30-34)この,都市のような管理機関は,天の新しいエルサレムを完全に反映するものとなります。その天のエルサレムにも十二の門があり,その十二の門には「イスラエルの子らの十二の部族の名」が書き込まれています。(黙示 21:12,新)したがって,キリストとそれに従う祭司たちの示す近づきやすさと愛のこもった配慮とは,地上の『君たち』によるこの管理機関も同じように示します。重要な問題に関して助けを得ようとする人は,だれでも全く自由に近づくことができるのです。
18 この都市の名はわたしたちにどんなことを約束していますか。
18 エゼキエルの預言は,結びとしてこの都市の名を次のように示しています。「[その都市の]四周は一万八千[キュビト]あり [都市]の名はこの日よりエホバこゝにいますといふ」。(エゼキエル 48:35)これは黙示録 21章3節の約束と同じです。「見よ! 神の天幕が人とともにあり,神は彼らとともに住み,彼らはその民となるであろう。そして神みずから彼らとともにおられるであろう」。(新)エホバは,愛と恵みに満ちた配慮をこの「都市」に向けることによって,ご自分が神として臨在していることを明らかにされるのです。神の霊の実,すなわち「愛,喜び,平和,辛抱強さ,親切,善良,信仰,柔和,自制」はそこにみなぎり,神の栄光をたたえるものとなります。―ガラテヤ 5:22,23,新。
19 「新しい天」の監督のもとにある「首長」級の支配を通して人類にはどんな益が及びますか。
19 こうして,エホバの霊がこれらの『君たち』を通して働くのですから,その時わたしたちは,神の栄光,公正,正義,そして民の幸福に深い関心を払う義の政府を確かに持つことができます。偉大な大祭司イエス・キリストと,そのもとにある天の祭司たちによって,罪を贖うことのできるキリストの犠牲の価値が適用され,そのあらゆる益が及びます。「新しい天」の全面的な監督のもとにある,この都市のような見える管理機関は,従順な人々が心と思いと体の面で向上するのを助け,地上に再確立されるパラダイスにおいてその完全な状態に至らせます。黙示録 21章4節はさらにこう述べています。「神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死もなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。(新)
今とらえるべき真の希望
20 (イ)現在,正しいことを行なおうとする人にとってはどんな闘いがありますか。(ロ)誠実な人は,悪との闘いにおける完全な勝利をどのように収めることができますか。
20 今の時代にあっては,この事物の体制の影響下にあるために,そして,わたしたちの父祖アダムから受け継いだ罪のゆえに,不完全な肉体が持つ悪い破壊的な傾向に打ち勝つためには,真のクリスチャンでさえ不断の戦いをしなければなりません。(ロマ 7:19,24,25)人間は自分だけではきわめて無力な存在であり,「この事物の体制の神」であるサタンの影響と,民の福祉を顧みない地上の諸政府とのゆえに,哀れむべき状態に追いやられています。(コリント後 4:4)しかし,義に基づく「新しい天と新しい地」のもとに,神を恐れる君たちから成る管理機関が地上に設けられるとき,次の預言のことばが成就します。「エホバの栄光を認むるの知識地上にみちてあたかも海を水のおほふがごとくならん」。(ハバクク 2:14。ペテロ後 3:13)エホバ神と,その無上の慈愛,知恵,公正さ,また人類の幸福のためにしてくださったご準備について知るとき,人々は神の栄光をたたえ,またその道に倣うでしょう。その時には,詩篇作者が預言的に歌ったとおりになります。『あはれみと真実とともにあひ 義と平和とたがいにくちつけせり 真実は地よりはえ 義は天よりみおろせり エホバ善き物をあたへたまえばわれらの国は物産をいださん」― 詩 85:10-12。
21 この事物の体制において一般に行なわれている事がらに対して不調和なものを感じている人は何を行なうべきですか。そして,いつ?
21 こうした良いものを願い求めるかたのひとりであれば,あなたはこれらのことが現在の事物の体制において実践されていないことに気づかれるに違いありません。そしておそらくは,世に行なわれている事がらを見て,憤りと不安とを感じておられるかもしれません。(エゼキエル 9:4)もしそうであれば,あなたが義を愛しておられることを今示してください。神はあなたの前に,救出の機会を差し伸べておられます。それは,腐敗しきった都市ソドムにいた義人ロトに対して行なわれたのと同じです。(ペテロ後 2:7-9)自己満足的な態度でただ待っていてはなりません。エホバはこの腐敗した世界とそれにすがりつく者すべてを滅ぼそうとしておられるからです。(ペテロ後 3:7-9。ペテロ前 4:17-19)今,神のご意志を学び,それを自分の生き方とするために,必要な処置を取ってください。
『視よわれ新しき天とあたらしき地とを創造す 人さきのものを記念することなく之をその心におもひ出ることなし 然どなんじらわが創造する者によりて永遠にたのしみよろこべ 視よわれはエルサレムを造りてよろこびとしその民を快楽とす……かれら家をたてて之にすみ葡萄園をつくりてその果をくらふべし……豺狼とこひつじと食物をともにし ししは牛のごとく藁をくらひ 蛇はちりを糧とすべし 斯てわが聖山のいづこにても害ふことなく傷ることなからん これエホバの聖言なり』― イザヤ 65:17,18,21,25。
[632ページの図/地図]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
聖なる献納地と十二部族
ハマテに至る
ダン
アセル
ナフタリ
ガリラヤの海
マナセ
エフライム
ルベン
ユダ
ヨルダン川
首長
聖なる献納地
エネグライム
ベニヤミン
エンゲデ
シメオン
塩の海
イッサカル
ゼブルン
タマル
ガド
メリボテカデシ
エジプトの川
マイル
0 ― 5 ― 10 ―― 20 ―― 30
[図]
聖なる献納地の拡大図
A
B
C
a b c
l d
D k E e D
j f
m i h g
Aはレビ人の相続分,Bはエホバの聖所,Cは祭司の相続分,Dは都市の耕地,Eは「エホバここにいます」(エホバ,シャンマ)という名の都市。
門: aはルベン,bはユダ,cはレビ,dはヨセフ,eはベニヤミン,fはイッサカル,iはゼブルン,jはガド,kはアセル,lはナフタリの門。
牧草地: m。