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王国と「聖なる場所」ものみの塔 1982 | 12月15日
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王国と「聖なる場所」
「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです。それゆえ,荒廃をもたらす嫌悪すべきものが,預言者ダニエルを通して語られたとおり,聖なる場所に立っているのを見かけるなら,(読者は識別力を働かせなさい,)その時,ユダヤにいる者は山に逃げはじめなさい」― マタイ 24:14-16。
1 設立された神の王国の熱心な宣明者たちは,今日,何に関心を抱いていますか。
あなたは,「王国のこの良いたより」を宣べ伝える業に熱心にあずかってきた人の一人ですか。そうであれば,『終わりの来ること』を熱烈に待ち望んでおられるでしょう。それに関連して,「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」とそれが『聖なる場所に立つということ』が今日何を意味するかを識別することにも,深い関心を抱いておられるでしょう。これらの事柄に関する預言者ダニエルの言葉の現代的な適用や,どうすれば今日,『山に逃げること』によって救いを見いだす者の一人として数えられるかを知りたいと思われるでしょう。―マタイ 24:3-16。
2 (イ)ダニエルの預言にある「聖なる者たち」を見分ける上で,幾つかのどんな聖句が助けになりますか。(ロ)最近,どんなほかのグループが現われましたか。これらの二つのグループには,どんな共通の関心事がありますか。
2 ダニエルの預言には,王国を受け継ぐ「聖なる者たち」について数多くのことが述べられています。(ダニエル 7:27)これらの人々は,『再び生まれた』クリスチャンである霊的イスラエル人の小グループを構成する人々で,サタンの攻撃にさらされても忠誠を保ち続け,そのようにして天の王国内の場所にふさわしい者であることを証明してきました。(ヨハネ 3:3。ルカ 12:32)近年,神の油そそがれたこれらの証人の残りの者たちに,楽園の地で永久に生きる希望を持つ「すべての国民……から来た……大群衆」が加わって来ました。あなたはこれらのグループのいずれかに属していますか。もしそうであるなら,神の霊的神殿の地上の聖なる所で,今,神に「神聖な奉仕」をささげる特権があります。これは,古代エルサレムにあったエホバの神殿の聖なる所に相当する「聖なる場所」で行なわれる聖なる奉仕です。―啓示 7:4,9,15。ローマ 12:1,2。
3,4 (イ)どんな三つの「エルサレム」がわたしたちの注意を引きますか。(ロ)神の言葉は,これら「エルサレム」の各々をどのように描写していますか。
3 神のみ子をさえ殺害したユダヤ人の背教のゆえに,地上のエルサレムは神によって捨て去られ,見捨てられました。(マタイ 23:37,38)しかし,はるかに壮大なエルサレムはその後もエホバの恵みを受け続けました。ガラテア 4章26節はそれを「上なるエルサレム」と呼んでいます。それは,エホバの「女」であり,エホバご自身の天の妻のような組織です。西暦33年,人類のために「自分の[人間としての]魂を……贖いとして」与えた神の霊的なみ子イエス・キリストを生み出したのは,このエルサレムでした。―マタイ 20:28。
4 イエスが霊において復活させられたあと,イエスは天のみ父の右に高められました。西暦1914年の定められた時に,エホバはイエスをご自分の王国に即位させました。ヘブライ 12章22節は,その天の王国を「天のエルサレム」と呼び,エルサレムという名と結び付けてもいます。この王国はやがて,サタンの邪悪な体制を滅ぼし,この地球に楽園を回復します。―マタイ 6:9,10。
「聖なる場所」を荒廃させる
5 (イ)イエスは,地上のエルサレムについて何を述べましたか。(ロ)そのため,どんな質問が生じ,どんな預言が語られましたか。
5 では今度は聖書のマタイ 23章を開きましょう。その38節に,エルサレムの『家が見捨てられている』というイエスの言葉があることにお気付きになるでしょう。次いでイエスは,戸惑っているご自分の弟子たちに,あの地上のエルサレムの神殿に関してマタイ 24章2節にある次のような言葉を語られます。「あなた方に真実に言いますが,石がこのまま石の上に残されて崩されないでいることは決してないでしょう」。そのために弟子たち4人は,3節にある質問をイエスにしました。「わたしたちにお話しください。そのようなことはいつあるのでしょうか。そして,あなたの臨在と事物の体制の終結のしるしには何がありますか」。次にイエスは,マタイ 25章の終わりまで続く,有名な預言を語られます。
6,7 (イ)預言の成就として,今や何が脅かされるようになりましたか。(ロ)こうして,「嫌悪すべきもの」はどのように「聖なる場所に立つ」ようになりましたか。
6 西暦33年当時,イエスの弟子たちが関心を持っていたのは,地上のエルサレムとその神殿を中心とする,背教に走った宗教体制,つまりユダヤ人の体制の終わりでした。ところがその背教にもかかわらず,エルサレムはイエスの死後も,「聖都」として引き続き知られていました。(マタイ 27:53)イエスの預言の成就として,エルサレムとユダヤ,そして他の近隣の国民には苦難が増しました。その後西暦66年には,ガルス将軍の率いるローマの軍隊がエルサレムを襲撃しました。イエスの予告通り(ルカ 21章20節による),エルサレムは「野営を張った軍隊に囲まれ」ました。歴史家ヨセフスの記述にあるように,これらの軍隊は自らの偶像礼拝的な軍旗を携えて正に都に入り,神殿の壁を打ち壊し始めました。
7 これらのローマ軍は,確かに「聖なる場所」に立っていました。彼らは,「エホバの都」,つまり幾世紀もの間エホバの崇拝とかかわりのあった都を荒廃させようと身構えていました。(詩編 101:8)ユダヤ人の背教者から見ても,クリスチャンとなったユダヤ人から見ても,正に「嫌悪すべきもの」です。しかしクリスチャンだけは,これがイエスの預言されていた状況であることを認めました。「聖都」とその崇拝の神殿が脅かされただけでなく,エホバとその真理のみ言葉に対して忠節であった,中に住むクリスチャンたちも同じ状況にあったのです。どうすればこれらの人々は生き残ることができたでしょうか。
8 その後エホバはどのように事を運ばれましたか。どんな結果が生じましたか。
8 エホバは奇跡的に事を運ばれました。突如としてローマ軍は撤退し,クリスチャンがイエスの預言に従うための道が開けたのです。そして彼らは確かに従い,ギレアデの「山に逃れ」ました。その後西暦70年に「嫌悪すべきもの」が戻って来ました。わずか4か月で,ティツス将軍の率いるローマ軍はエルサレムを荒廃させ,「聖なる場所」とされた所を瓦礫の山としてしまったのです。その大虐殺によって100万人以上のユダヤ人が死亡し,生存者は少数でした。(ダニエル 9:26)しかしクリスチャンとなったユダヤ人たちは安全でした。なぜでしょうか。偉大な教え手であられるイエス・キリストの語った真理の預言的な言葉に従ったからです。―マルコ 13:1,2,14。
現代それに類似するもの
9 1世紀のこれらの出来事がわたしたちの興味をそそるのはなぜですか。
9 西暦1世紀のこれらの出来事には,今日のわたしたちにとって重大な意味があります。なぜでしょうか。これらの出来事には,この20世紀において著しく類似するものがあるからです。イエスの偉大な預言がその最終的な,世界に衝撃を与える成就を見るのは現代なのです。しかしながら,今度関係してくるのは,エルサレムの都とユダヤの地だけではなく,幾万もの都市を備え,幾百という国家的・部族的グループや44億人という人々が住む全地,つまり全世界的な事物の体制です。
10 (イ)1914年にどんな期間が終わりましたか。どのようにですか。(ロ)この地上に今,未曽有の「災い」があるのはなぜですか。
10 世の歴史家たちも,西暦1914年が画期的な変化をもたらした年であることに注目しています。実際,その年に「諸国民の定められた時」が終わったのです。(ルカ 21:24-28)もはやエホバは,異邦人の勢力が好き勝手に支配することを許されません。したがって,次の預言は主イエスに関して成就しました。「あなたの力の杖を,エホバはシオン[『天のエルサレム』,メシアの王国]から送り出して,こう言われます。『あなたの敵のただ中で従えてゆけ』」。(詩編 110:2)即位した王は従順にも,サタンとその悪霊の大群を天から地の近くに投げ落としました。そのため,『短い時の間』,『地にとっては災い』があります。(啓示 12:7-12)1914年以降の今,マタイ 24章と25章のイエスの偉大な預言は,全世界的な規模で成就しつつあります。
11 イエスの偉大な預言の成就として,あなたはご自身の目で何を見ていますか。
11 わたしたちは皆,「事物の体制の終結のしるし」を目撃してきたのではありませんか。わたしたち自身の目で,大戦争,食糧不足,疫病,地震,およびイエスが予告した他の「恐ろしい光景」を見ているのではありませんか。クリスチャンに対する迫害を経験し,「あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で」「王国のこの良いたより」を宣べ伝える業にあずかっているのではないでしょうか。確かにわたしたちの多くはそうしています。(マタイ 24:3-14。ルカ 21:10-12)しかし,マタイ 24章15,16節にある,「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」に関するイエスの言葉はどうですか。
全世界的な成就
12 「大患難」はエルサレムの滅びとはどのように異なりますか。
12 この預言の西暦1世紀における成就は,今日わたしたちが予期できる事柄の一つの型となっています。しかし,詳細な幾つかの点は,そっくりそのまま対応するわけではありません。例えば,21節と22節でイエスはこう述べておられます。「その時,世の初めから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような大患難がある(の)です。実際,その日が短くされないとすれば,肉なる者はだれも救われないでしょう。しかし,選ばれた者たちのゆえに,その日は短くされるのです」。頂点を成す「大患難」は,エルサレムや他のどこかの都市だけに臨むわけではありません。それは,この地を襲った災いの中でも最大のものであり,規模においても世界的なものとなります。―エレミヤ 25:30-33。マタイ 24:30。
13 エルサレムの滅びを生き残った「肉なる者」とは異なり,「大患難」の際に救われるのはどんな「肉なる者」ですか。
13 加えて,生き残る「肉なる者」とは,地上のエルサレムが滅ぼされた時とは異なり,奴隷になるように定められていた,少数の背教したユダヤ人たちの肉なる者ではありません。むしろそれは,地上で「天のエルサレム」を代表する人々,すなわち「選ばれた者たち」の「肉なる者」と,彼らの仲間である,あらゆる国民から来た「大群衆」の「肉なる者」です。その大群衆に関して啓示 7章14節はこう述べています。「これは大患難から出て来る者たちで,彼らは自分の長い衣を子羊の血で洗って白くした」。ではわたしたちは,現代の成就においてマタイ 24章15,16節をどのように理解したらよいのでしょうか。
「読者は識別力を働かせなさい」
14,15 ダニエル書 7,8章を調べる際に,どんな事柄を『読者は識別します』か。
14 イエスはここで「預言者ダニエル」に言及し,「読者は識別力を働かせなさい」と付け加えています。ダニエルが,日を経た方であられるエホバ神に関する,またその方がメシアの王国を通して世の諸国家を裁く様に関する幻を与えられたのは,「バビロンの王ベルシャザルの第一年」でした。世の諸国家がそのように裁かれる時,それは,「定められた時が到来して聖なる者たち(が)その王国を取得した」時となるはずでした。―ダニエル 7:1,9-14,21,22,27。
15 ダニエルはベルシャザルが王位についてから3年目に,さらに別の幻を見ました。ダニエル書 8章3節から9節の中で,この預言者はひゆ的な言葉を用いて,「野獣」とこれらの「獣」の頭から出て来る強力な「角」の興亡を描写しました。ダニエル書 8章20節から25節は,これらの獣が,メディア-ペルシャから始まり,その後ギリシャ,ローマ,そして最後に,『その力が強大になるまで成長する小さい角』である大英帝国へと続く,過去2,500年にわたる世界強国であることを明らかにしてくれます。共和国アメリカはその後,大英帝国と提携するようになりました。このようにして二重世界強国が確立されました。
16 (イ)どんな「定められた時が到来し」,その後「聖なる者たち」はどんな経験をしましたか。(ロ)「ものみの塔」誌の1938年6月号はなぜ神の民にとって重要でしたか。
16 西暦1918年に,「聖なる者たち」が王国を受ける『定められた時が到来しました』。1919年以後,まだ地上に残っていた「聖なる者たち」は,設立されたメシアの王国を広く全世界にふれ告げるために組織されました。(マタイ 24:14)やがて,彼らは「エホバの証人」として世界中に名をはせるようになり,仲間の働き人である「大群衆」が彼らに加わり始めました。(イザヤ 43:10,12。啓示 7:9)しかし,1930年代には,迫害の暗雲が群がりました。エホバは,彼らを神権的に再組織することにより,ご自分の民がこの脅威に立ち向かえるよう支えられました。1938年6月1日号と15日号の「ものみの塔」誌(英文)は,特別に「組織」という主題の研究記事を載せました。その記事は,第二次世界大戦中に彼らの活動の基盤として役立つ,神権的な機構を神の民に備えるものとなりました。―イザヤ 60:17。
17 ダニエル書 8章10,11節は,今やだれに成就しましたか。
17 ダニエル書 8章10,11節が成就したのは第二次世界大戦の期間中のことでした。「小さい角」は,「軍の君」であられるエホバ神に敵対して行動しました。この「軍」とは何のことですか。それは,キリスト教世界に属する数え切れないほど多くの宗派の信者たちの軍のことでしょうか。そうではありません。彼らは自らをサタンの世の一部としているので,「憎しみの的」とはなっていません。(マタイ 24:9。ヨハネ 15:18-20)ダニエルはここで,ミディアン人の大軍と比較すれば非常に小さな,ギデオンの戦力に類似した,はるかに小さな軍のことを述べているのです。(裁き人 7:8,12)それは,14万4,000人の「聖なる者たち」からなる「軍」の,地上にいる残りの者たちです。彼らは,「天のエルサレム」のシオンの山で,子羊キリスト・イエスと共に統治します。―啓示 14:1-5。
「聖なる場所」を占める
18 (イ)「聖なる場所」とはどこである,と聖書は述べていますか。(ロ)ダニエル書 8章12節によれば,その場所で何が生じますか。
18 今日,これらの残りの者たちは「聖なる場所」を占めており,「天のエルサレム」とその神殿の取決めを地上において代表しています。ダニエルはこのことを(11節で)神の「足台」,つまり地上における「[エホバの]聖なる所の定まった場所」と表現しています。(イザヤ 66:1)ダニエルはこう述べます。「その方[エホバ]からの常供のものが取り去られた。また,その方の聖なる所の定まった場所は打ち捨てられた。さらに,軍そのもの,そして常供のものも共に徐々に引き渡されていった。それは違犯のためであった。それは真理を地に投げつけてゆき,行動して成功を得た」。(ダニエル 8:11,12)これはどのように成就しましたか。
19 (イ)『小さい角の違犯』とはどんな意味であることが,ここで分かりますか。(ロ)それはどのようにして『真理を地に投げつけ』続けましたか。
19 では,忠実な聖書研究者であるエホバの証人は,第二次世界大戦中にどんなことを経験したでしょうか。激しい迫害です。これは「違犯」,つまり神の「聖なる所」級を荒廃させ,日々の公の崇拝という「常供のもの」をエホバから取り去ろうとする努力に相当します。それはまず,ナチスやファシストの国々で始まりましたが,やがて,『力が強大になった小さい角』の広大な領域全体で,『真理は地に投げつけられました』。王国宣明者の「軍」と王国の真理を宣べ伝える彼らの業は,英連邦のほぼ全域で禁令下に置かれました。これらの国々が人的資材を徴用した際,彼らはエホバの証人に関しては聖職者としての免除を与えることを拒みました。彼らは,神の奉仕者としての神権的な任命に敬意を示さなかったのです。米国の忠実なエホバの僕たちは,群衆による暴行や他の侮辱を何度も受けました。
20 (イ)ダニエル書 8章14節は,どんな保証をわたしたちに与えますか。(ロ)どのように,「聖なる場所は勝利を得て現われ」ましたか。(ハ)第二次世界大戦が終わりに近付いたころ,エホバの組織内ではどんな進展が見られましたか。
20 しかし,ダニエル書 8章13,14節によれば,『二千三百日』(6年4か月と20日)の期間のあと,「聖なる場所」は再び「正しい状態に」される,あるいは「勝利を得て現われる」(新英訳聖書)のです。実に,エホバの証人は,『支配者として人間より神に従うこと』を主張し続けたために,ひどい迫害を受けました。(使徒 5:29)しかし第二次世界大戦の末期に,彼らはエホバの支配権を賛美し,彼らの組織の中でそれに付き従おうとする自分たちの決意を再確認しました。その目的のために,エホバの証人の業と統治機構の再調整が1944年から始まりました。1944年10月15日号の「ものみの塔」誌(英文)は「最終的な業のために組織される」という主題を掲げました。この記事,および奉仕に重点を置いた同じ時期の他の記事は,「聖なる場所」がエホバの観点からすると,再び「正しい状態」に置かれたことを示しました。a
21 この時までに,王国はどのように勝利を収めていましたか。
21 「聖なる場所」を荒廃させ破壊しようとする敵の邪悪な試みは,完全に失敗に終わりました。地上に残っている「聖なる者たち」は,「大群衆」という彼らの仲間と共に,勝利を得る結果となりました。至上者エホバとそのキリストの王国は勝利を収めたのです。エホバの預言的な言葉によれば,そのあとにどんなことが生じますか。これから調べてみましょう。
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逃れるべき時!ものみの塔 1982 | 12月15日
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逃れるべき時!
1 (イ)第二次世界大戦中,地上の「聖なる場所」の聖なる所で,何が生じましたか。(ロ)そのため,どんな質問が生じますか。
これまで注目してきたように,真の「聖なる場所」は,「天のエルサレム」,神のメシアの王国の領域内にあります。第二次世界大戦中,仲間の「大群衆」と共に地上の「聖なる場所」の聖なる所で仕える「聖なる者たち」は,主に英米二重世界強国の国々で踏みにじられました。(ダニエル 7:27; 8:10-12。啓示 7:9,15)では,英国と米国が「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」ということになりますか。そうではありません。この二重世界強国による「違犯」には,別の特色が含まれるからです。その特色とは何ですか。
2,3 (イ)まがいの神の王国はどのようにして生まれましたか。(ロ)このことは啓示の書の中でどのように描写されていますか。(ハ)では,ダニエル書 11章31節とマタイ 24章15節にある現代の「嫌悪すべきもの」とは何ですか。
2 英米世界強国は別の方法でサタンの目的を促進しました。まがいの神の王国をつくり出したのです。ダニエルの預言にある通り,また聖書の啓示の書にある通り,「獣」とその「角」は,世の政治勢力を象徴するために用いられています。啓示 13章は聖書歴史上の第7世界強国である英米を,獣に似た人間支配の「像」に命を与える,二本の角を持つ野獣として描写しています。この獣の「像」は,「七つの頭と十本の角を持つ[複合的な]緋色の野獣」です。(啓示 17:3)それはまず1920年に国際連盟として登場し,その後英国と米国が再び主要な唱道者となり,またそれにソ連が加わって,1945年に国際連合として復活しました。(啓示 13:11,15; 17:8)これは,「また彼らは荒廃をもたらす嫌悪すべきものを必ず据える」というダニエル書 11章31節を成就するものともなりました。a
3 それでこれが,マタイ 24章15節でイエスが語っておられた現代の「嫌悪すべきもの」です。しかし,それはどのようにして『聖なる場所に立つ』ようにされたのでしょうか。事実は何を示していますか。
4 (イ)国際連盟を「嫌悪すべき」と表現できるのはなぜですか。(ロ)宗教指導者たちは国際連合に関して,どんな「嫌悪すべき」主張を行ないましたか。
4 英国と米国が先頭に立ち,1918年に国際連盟を提唱した際,キリスト教世界の諸教会は心からの支持を与えました。アメリカ・キリスト教会連邦協議会は,それを「地上における神の王国の政治的表現」として歓呼して受け入れました。何という冒とくでしょう! サタンの世の政治国家を結合したものが,地上における神の王国だというのです。エホバの目に,また今や統治を開始した「天のエルサレム」の地上における大使として,真の意味で「聖なる場所」に立っている人々の目に,これは実に嫌悪すべきもの,忌むべきものです。さらに,世の僧職者たちは国際連盟の後身である国際連合について何と述べましたか。人類が『存続するための唯一の希望』,「友好と平和の最後の希望」,「平和と正義のための最高の討議の場」などという様々な表現を用いました。世の僧職者は国際連盟の場合と同じように,神の王国だけが達成できる事柄を国際連合がもたらすと主張することにより,国際連合を「聖なる場所」に置くのです。
5 国連が現在「聖なる場所」に属していないと言えるのはなぜですか。
5 キリスト教世界の僧職者は,正しくは,「天のエルサレム」である神の王国とそれを地上において代表する「聖なる者たち」に属する「聖なる場所」に,国連を据えることを選びました。しかし国連には何一つ「聖なる」ものはありません。国連には独自の礼拝堂や仏教式釣鐘があり,国連広場の壁には,「かれらはその剣をうちかえて鋤となしその鎗をうちかえて鎌となし国は国にむかいて剣をあげず戦闘のことを再びまなばざるべし」というイザヤ書 2章4節(文語訳)の言葉が刻まれています。しかしこれらの事柄によって国連が「聖なる」ものとなるわけではありません。その成員国は絶えず互いに戦い合い,現在そのうちのかなりの国が,宗教と神を排する立場を取っています。ところが別の意味においても,「嫌悪すべきものが聖なる場所に立っている」ことが分かります。
著しい類似
6 (イ)西暦1世紀のエルサレムには対立するどんな二つのグループが存在していましたか。(ロ)ユダヤ人の宗教家たちは,どのような面で彼らの父祖たちに似ていましたか。
6 古代のエルサレムはその滅びの年まで,ユダヤ人から聖都,聖なる場所とみなされていました。西暦56年ごろに使徒パウロでさえも,エルサレムの神殿に上り,そこで,誓約を立てた他の4人のクリスチャンたちと共に儀式上の清めを行ないました。(使徒 21:23-26)そこにおいてパウロは,これらの者は『自分たちの教えでエルサレムを満たしてしまった』と非難して真のクリスチャンたちを迫害したたぐいのユダヤ人たちに,集団で襲われました。(使徒 5:28)これらのユダヤ人は,自分たちの背教的な伝統と崇拝に固執し,この点ではエレミヤの時代の父祖のようでした。その父祖たちは,「『これらはエホバの神殿だ,エホバの神殿だ,エホバの神殿だ!』という惑わしの言葉を」信頼したのです。(エレミヤ 7:4)しかしその信頼は間違った対象に向けられました。
7 (イ)キリスト教世界はどんな点で背教したエルサレムと類似していますか。(ロ)キリスト教世界の主張する「聖なる場所」とは何ですか。
7 今日でも同様の状況が見られます。現代のキリスト教世界には,古代の背教したエルサレム及びその神殿との著しい類似点があるからです。キリスト教世界の宗教が,「聖なる場所」― 同世界が主張する宗教上の諸権利及び活動領域 ― を有するとも主張していることに注目するとよいでしょう。同世界は幾世紀にもわたって,一般大衆に対する支配を行使する大切な領域を作り上げてきました。同世界はこれを,自分の霊的な権利であると主張します。その領域には,豪華な教会堂,宝石をちりばめた祭壇,高価なステンドグラスの入った窓,不動産,巨額の銀行預金なども含まれます。これらのすべては,同世界が主張する「聖なる場所」の一部なのです。それは同世界にとって神聖なものであり,だれもそこにあえて侵入することはありません。少なくとも同世界はそう考えています。
8 (イ)キリスト教世界の宗教と「大いなるバビロン」とはどんな関係にありますか。(ロ)キリスト教世界は背教したエルサレムとどのような点で似ていますか。
8 しかし,預言が成就した結果,西暦前607年また西暦70年に,古代のエルサレムとその「聖なる場所」はどうなりましたか。そして主イエスは,ご自分が使徒ヨハネに伝えた啓示の中で,わたしたちに何を示しておられますか。その啓示の書の17章には,神の裁きが「大いなるバビロン,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母」に執行される様が記されています。(啓示 17:5)この「大いなるバビロン」とは,偽りの宗教の世界帝国にほかなりません。キリスト教世界の諸教会は,その主要な部分を成しています。神との契約関係にあると称するキリスト教世界は,現代の背教した「エルサレム」です。
9 現代の成就において,『娼婦たちの母』は「獣」に関してどのように行動しましたか。
9 幾世紀にもわたり,『娼婦たちの母』,偽りの宗教は,獣のような国家や帝国の事柄を支配する面で何とかうまくやってきました。啓示 17章9節が示すとおり,この女は政治的な山の上に座り,15節はこの女が,「もろもろの民と群衆と国民と国語」を表わす「水」の上に座っていると描写しています。結合体である「緋色の野獣」が1920年に国際連盟として姿を現わした時,そしてそれが1945年に国際連合として再び現われた時,「大いなるバビロン」は益と利得を得るため,この国際的な機構の上に乗ろうと画策しました。この女は,政治的な種類のこの「嫌悪すべきもの」が立ってはならない所に立ち,正しくは,メシアによる神の王国,すなわち「天のエルサレム」の領域を意味する「聖なる場所」に侵入しているという事実を考慮に入れません。
「角」が行動を起こす
10 偽りの宗教には,どんな裁きの執行が待ち受けていますか。
10 しかしよく見てください! これらの諸国家が「平和だ,安全だ」と言う時,この恐ろしい「野獣」の「角」は突然荒々しくなります。「娼婦」に対する積年の憎しみをもはや抑えることはありません。彼らは,「獣」の上に安楽に座っていた売春婦を振り落とします。これらの急進的で軍国主義的な「角」と「野獣」は「娼婦」を荒れ廃れさせて「裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼き尽くす」のです。(啓示 17:16)地上で,神のみ前に「聖なる場所」を持つと主張してきたキリスト教世界をはじめ,偽りの宗教は完全に荒廃させられます。したがって,キリスト教世界の滅びは,地上のエルサレムの神殿の滅びと同じほど完全なものとなるでしょう。イエスはその地上のエルサレムの神殿について,「石がこのまま石の上に残されて崩されないでいることは決してないでしょう」と言われました。―テサロニケ第一 5:3。マルコ 13:2。
11 (イ)真の「聖なる場所」に関して,1914年に何が起きましたか。(ロ)それから,キリスト教世界が主張する「聖なる場所」に,何が侵入しはじめましたか。
11 キリスト教世界を含む,娼婦のような偽りの宗教は,これから自分の身に起ころうとする事柄を懸念しているでしょうか。今日の世界の出来事の型を解釈できるなら,当然懸念するはずです。そして,聖書中の預言的な真理に注意を払っていたなら,同世界は大きな恐れを感じていたことでしょう。実際,キリスト教世界が,自分自身「聖なる場所」と考えるところ,つまり同世界の活動領域に対する圧力を経験しはじめたのは,「聖なる場所」を占めるにふさわしい「天のエルサレム」が1914年に生み出された直後のことでした。1917年には,ロシアでマルクス主義者の革命が生じました。その時以来,無神論の社会主義的な勢力は,地の広範に及ぶ部分を接収しています。これらの勢力は第二次世界大戦後いよいよ攻撃的になって前進しています。彼らは声高に,宗教は「人民のあへん」であるとふれ告げます。キリスト教世界の方は,非常に多くの「民」を失ったことだけでなく,自分が「聖なる場所」と主張するところに共産主義者が侵入してきたことを嘆いています。
キリスト教世界の「聖なる場所」に対する脅威!
12,13 ニュース記事は,キリスト教世界の「聖なる場所」が脅威にさらされていることを,どのように強調していますか。
12 共産主義者の支配する国々で生じている事柄は,1981年の終わりごろ,香港<ホンコン>スター紙に掲載された次の記事に示されています。「難民やヨーロッパの外交官,ならびに外国人僧職者たちの話によると,ベトナムの共産主義政権は,仏教の僧侶を兵役につかせ,幾百人ものキリスト教の僧職者を投獄し,神学校や教会を閉鎖した。その目的は,すべての宗教を政府の独占的な支配のもとに置くことにある,と彼らは述べている。政府当局者はカトリックの国ポーランドの暴動を,教会の“反革命的傾向”の証拠として引き合いに出しており,南ベトナムのローマ・カトリック教会は特別な圧力を受けるようになった,と難民たちは語っている」。
13 1982年1月2日付,米国アトランタ市のジャーナル・アンド・コンスティチューション紙は,「[1981年]の大事件の多くには宗教がからむ」という見出しを掲げました。その記事はさらに,法王ヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂,イスラム教の軍人によるエジプトのサダト大統領の暗殺,イランにおける暗殺事件と大量処刑,アラブゲリラとイスラエルとの徹底的な交戦,アイルランドにおける爆撃,殺人,ハンガーストライキによる死亡事件などを列挙しています。そうです,確かに世界の災いの多くには宗教がからんでいるのです。しかし,『十本の角と野獣』が行動を起こし,キリスト教世界と同世界が考える「聖なる場所」を含む偽りの宗教を間もなく完全に荒廃させる時,これらすべてのニュース記事も影が薄くなります。
14 真の「聖なる場所」にいる人々も,どのように脅かされますか。
14 では,真実の「聖なる場所」で崇拝する人々,つまり「天のエルサレム」を支持し,この地上で「神聖な奉仕」を行なっている人々についてはどうですか。これらの人々も,今なお国連の成員国となっている軍国主義的な「角」の攻撃にさらされるでしょう。啓示 17章14節によると,この政治的な結合体は,「聖なる場所」に立つ権利がないことを示します。それは「子羊と戦う」からです。
15 (イ)「聖なる者たち」への攻撃において顕著になるのはだれですか。(ロ)どのように『彼は自分の終わりに至り』ますか。
15 ダニエル書 11章40節から45節には,共産主義的な「北の王」が「聖なる者たち」へのこの攻撃において顕著になるとはいえ,「彼は必ず自分の終わりに至る。これを助ける者はいない」と示されています。b こうして,すべての国家主義的な「角」と「緋色の野獣」自身がキリスト・イエスとそのみ使いの軍勢によって処刑されます。「子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する」のです。そこハルマゲドンで,「天のエルサレム」の統治する王は,「自分たちの力と権威を野獣に」与えた国家すべてに対して決定的な勝利を収めます。―啓示 17:12-14; 16:16。
『山に逃れる』
16 神の民はどのようにして,またどこに保護を見いだすことができますか。
16 では,神の民はどのようにして保護を見いだすのでしょうか。それは,『山に逃れること』によります。(マタイ 24:16)今日,これらの「山」とは,神から与えられた避難所,地上に残っている「聖なる者たち」と「ほかの羊」の「大群衆」が「大患難」を通過できるように見守るためのエホバの備えのことです。これは,ある「肉なる者」が救われるというイエスの預言と調和します。(マタイ 24:22)山には永続性があり,聖書の中では何度も統治機能をさすものとされているため,今日,神が設けられる避難所は,その神権組織に関連して見いだされるはずです。その神権組織は,地上においては,現在エホバの証人の全世界的な社会であることが証明されている,『真理の柱また支えなる,生ける神の会衆』の中に代表されています。―テモテ第一 3:15。
17 安全な所に逃れる人々には,どんな積極的な行動が求められますか。
17 エホバの組織に逃れる人は皆,地上のサタンの組織のどんな部分であれ,それを支持することをやめなければなりません。『この世のものではない』と言えなければなりません。そしてこの世から出ていなければなりません。世の宗教,世の政治,暴力を用いる世の運動,世の物質主義,世の不道徳を避けなければなりません。(ヨハネ 18:36)エホバ神に献身し,神の義の原則に従って生き,他の人々に神の栄光ある王国の目的を知らせなければならないのです。眠気を催したり,世のぜいたくな暮らしに戻ることはできません。神の是認を得て神の新秩序に入るために,絶えず『精力的に励まなければなりません』。―ルカ 13:24; 9:23。テモテ第二 2:15。
18 正しい心を持った人々が今『逃げはじめる』のはなぜ緊急なことですか。
18 今年1982年に入って,キリスト教世界が主張する「聖なる場所」に対する脅威が現実のものとなりました。実際,国連という「獣」の背中の上にある居心地の良かった席は,非常に不安定なものになっています。このことを『識別する』エホバの証人は,次の呼びかけを緊急なものとします。『偽りの宗教から,そうです,サタンの世のすべての体制から逃れなさい! 避難所を求めて神の組織に逃れなさい!』 西暦1世紀のエルサレムと同様,今のキリスト教世界は,『荒廃,絶滅』に直面しています。そして大いなるバビロンという偽りの宗教の世界帝国全体も同じです。―ダニエル 9:26後半,27後半。啓示 18:2,4。
19 (イ)詩編 72編は「山」について何と述べていますか。(ロ)どのようにすれば,「豊かな平和」を楽しむ資格が得られますか。
19 幸いなことに,避難所の「山」は祝福の「山」ともなります。詩編 72編1節から8節はこう述べているからです。「山々が民に平和を携えて来るように。また,もろもろの丘も,義によって。……[王なるメシアの日には]義なる者が芽生え,豊かな平和が月のなくなるときまで続くことでしょう」。あなたは,「豊かな平和」を楽しむ人の一人に数えられたいでしょうか。それでは,「堅く立って,動かされることなく,主の業においてなすべき事を常にいっぱいに持ちなさい」。まだ時間が残されている間に,正しい心を持った人々が『山に逃れはじめる』よう助ける面で自分を費やし尽くすことは非常に緊急なことです。ですから「これらのことをずっと続けなさい。そうすることによって,あなたは,自分と自分のことばを聴く人たちとを救うことになるのです」。―コリント第一 15:58。テモテ第一 4:16。
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