8章
親としてのあなたの役目
1-3 (イ)赤ちゃんの誕生は両親にどんな影響を与えますか。(ロ)父親と母親の両方がそれぞれ親としての役目を理解するのはなぜ大切ですか。
いろいろな出来事の中には,わたしたちにあまり影響しないものもある一方,後々まで大きな影響を及ぼす出来事もあります。子供の誕生は明らかにその後者の例です。夫婦にとって,子供が誕生した後の生活は必ず変化します。非常に小さいとはいえ,家族のその新しい成員は,声で自分の存在を知らせるので,無視することはできません。
2 両親の生活はいっそう充実した幸福なものになるはずです。しかし対処しなければならない難しい問題も生じてきます。最善の結果を得るには,両親が共にそれらと取り組まねばなりません。ですから誕生後の子供の発育にも二人が大切な役割を果たします。この時ほど,誠実で一致した,そして謙虚な協力が必要な時はありません。
3 父親また母親の役目,およびそれぞれの役目がどのように調和するかを理解することは,子供の必要を満たして良い結果を得るのに大いに役立ちます。平衡を取ることは必要です。頭では理性的であろうとしても,感情に押し流されて平衡を失うことが往々にしてあります。どうかすると過少から過度へ,そしてまた過少へと,両極端に走りがちです。父親が頭の権を行使するのは望ましいことですが,行き過ぎると横柄になります。母親が子供の訓育にあずかるのは良いことですが,父親を押しのけてその仕事を独占するなら,家族の構造は脅かされます。それ自体良いものでも,行き過ぎると悪いものになることがあります。―フィリピ 4:5。
母親の大切な役目
4 赤ちゃんが母親にしてもらう必要のある事柄にはどんなものがありますか。
4 生まれたばかりの赤ちゃんは,当面必要なものをすべて母親から与えてもらわねばなりません。母親がそうした必要物を愛情を込めて与えるなら,赤ちゃんは安心します。(詩 22:9,10)赤ちゃんには乳を十分に与え,いつも清潔に,また暖かさが保てるように気をつけてやらねばなりませんが,体に必要な物を与えるだけでは不十分です。感情面の必要も同様に大切なのです。愛情を示されないと,赤ちゃんは不安になります。子供が親の注意を引こうとするとき,母親はその必要の程度が実際にどれほどのものかすぐにわかるようになります。しかし,泣いても泣いてもほっておかれるなら,赤ちゃんは病気になります。そして感情的に満たされないときが一定期間あると,その子供は感情的にいじけた人間になる恐れがあります。
5-7 最近の研究によると,母親の愛と注意は赤ちゃんにどのように影響しますか。
5 多くの様々な場所における実験は,次の事実を確証しました。つまり赤ちゃんは,話しかけたり,さわったり,さすったり,抱きしめたりして愛情を示してやらないと病気になり,死ぬことさえあるということです。(イザヤ 66:12。テサロニケ第一 2:7と比較してください。)他人がそうすることもできます。しかし,赤ちゃんは母親の胎内で生を受け,人生の最初の数か月間そこではぐくまれたのですから,道理から言っても,そのようにして愛情を示す最適任者が母親であることに疑問の余地はありません。母親と子供の間には自然の相互作用があります。母親は生まれた赤ちゃんを本能的に抱き寄せようとしますし,それに合わせて赤ちゃんは本能的に母親の乳房を捜し求めます。
6 研究によって明らかにされたところによると,赤ちゃんの脳は非常に活動的で,知覚,聴覚,視覚,臭覚が刺激されると,知能の発達が促されます。乳を飲むとき,子供は母親の膚のぬくもりやにおいを感じます。そして,乳を飲ませる母親の顔からほとんど目を離しません。また,自分に話しかけてくれたり,歌ってくれたりする母親の声だけでなく,母親の心臓の鼓動も聞きます。それは赤ちゃんがまだ胎内にいたときに聞いた音です。ノルウェーのある出版物の中で,児童心理学者のアン・マリ・ドゥブは次のように述べています。
「瞳孔の動きは脳の働きの度合いを明示するゆえに,強力な皮膚の刺激,すなわち,強い接触,授乳の際の少なからぬ接触は知的な活動を刺激し,ひいては,大人になってからより優れた知的能力を持つ可能性につながると信じる理由がある」。
7 したがって,母親が赤ちゃんを抱き上げたり,抱き締めたり,おふろに入れたり,体をふいてやったりするときに,赤ちゃんは母親がたびたび自分に触れるのを感じますが,そうした刺激は赤ちゃんの発育に,そして後の人格形成に重要な役割を果たすのです。夜中に起きて,泣く子をあやすのは必ずしも楽しいことではないかもしれませんが,後々どんな益があるかを知るなら,睡眠が妨害されても大いに償われると言えるでしょう。
愛されることによって愛することを学ぶ
8-10 (イ)赤ちゃんは母親の愛からどんなことを学びますか。(ロ)それはなぜ大切ですか。
8 愛されることは,赤ちゃんの感情面の発育にきわめて重要です。赤ちゃんは,愛されること,愛の模範を示されることによって愛することを学ぶのです。神への愛について,ヨハネ第一 4章19節には,「わたしたちは,彼がまずわたしたちを愛してくださったので愛するのです」と述べられています。愛することを最初に教える立場にあるのは主として母親です。母親はベッドの赤ちゃんの上にかがみ込み,手をその胸の上に置いて顔を赤ちゃんの顔にくっつけるようにしながらやさしくゆさぶり,“いた,いた”と言います。むろん,赤ちゃんはその言葉(どうせ,特につじつまのあったことを言うわけではありませんが)がわかりません。でも,からだを動かして,うれしそうにくっくっと言います。おもしろい手の動きや声の調子から,“あなたをとてもとても愛しているのよ”とはっきり言われていることがわかるからです。赤ちゃんは新たに自信を得て安心します。
9 赤ちゃんでも幼児でも愛を示されるとそれを感じ取ります。そして自分もその愛をまねて,母親の首にかわいい腕を回したり,熱烈にキスしたりして愛を実際に行動に表わします。するとまた母親から感情のこもった温かい反応を刈り取る結果になるので,喜びを感じます。こうして子供たちは,愛することは愛されることと同じように幸福であるという,そしてまた,愛を示すなら,自分も愛を示されるという大切な教訓を学び始めます。(使徒 20:35。ルカ 6:38)証拠の示すところによると,幼いときに母親と愛情のきずなで結ばれない子供は,のちになって他の人々を深く愛したり,他の人々のために何かをしてあげることに大きな困難を感じます。
10 子供は生まれるとすぐに物事を学び始めますから,最初の数年間は最も大切な時です。その時期に母親の愛はきわめて重要です。母親が,甘やかすのではなく,愛を示し愛を教えることに成功するなら,その益は永久的なものとなります。一方,それに失敗するなら,その害も永久的なものとなります。良い母親になることは,女性の仕事の中で最も取り組みがいがあり報いのある仕事です。さまざまな苦労や要求が伴いはしても,良い母親になることほど有意義で,永続的な満足の得られる“一生の”仕事が世の中にあるでしょうか。
父親の重要な役目
11 (イ)父親は子供の心に自分の役目をどのようにしっかり意識させますか。(ロ)それはなぜ重要ですか。
11 子供が非常に小さいとき,母親のほうが子供の生活の中で大きな役割を演ずるのは自然です。しかし,生まれたあとは,父親も子供の世界の中に入っていなければなりません。子供がまだ小さくても,父親は,時おりその世話をしたり,遊んでやったり,泣くときにはあやしたりして,子供とのつながりを持てますし,またそうすべきです。そのようにして,父親は自分の存在を子供にしっかり意識させます。時がたつにつれ父親はしだいに大きな役割を果たすようにならなければなりません。もし遅すぎると,それは問題の始まり,つまり懲らしめを与えるのがいっそう難しくなる十代に特によく表面化する問題の始まりとなるかもしれません。十代の男の子はとりわけ父親の助けが必要です。早くから良い関係が築かれていないと,長い間にできたみぞは,数週間で埋まるものではありません。
12,13 (イ)家族の中で父親はどんな役目を持っていますか。(ロ)父親が責任を正しく果たすなら,権威に対する子供の見方にどのように影響しますか。
12 子供が男の子であれ女の子であれ,平衡の取れた丸味のある性格を身につけるのに,父親の男らしい特質は重要な影響を与えます。神のみ言葉は,父親が家の頭であるべきことを教えています。父親は家族を物質的に養う責任があります。(コリント第一 11:3。テモテ第一 5:8)しかし,「ただパンだけによって人(は)生きず,エホバの口から出るすべての言葉によって人(は)生きる」のです。子供に関しては父親は,「エホバの懲らしめと精神の規整とをもって育ててゆきなさい」とも命ぜられています。(申命 8:3,新。エフェソス 6:4)父親が自分に与えられた神聖な使命を果たす動機は,子供への自然の愛情であるべきですが,とりわけ大切なのは,創造者に対する責任感です。
13 母親の温かさ,やさしさ,同情心に加え,父親は,力強さや賢明な指導など,安定性を与える影響力を持っています。父親が神から与えられた役目をどう扱うかは,人間による権威にせよ神によるそれにせよ,権威というものに対して子供が将来どんな態度を示すか,つまり,権威を尊重するようになるかどうか,また,他人の指示の下で腹を立てたり反抗したりせずによく働くようになるかどうかに著しく影響します。
14 父親の良い手本は息子や娘にどんな影響を与えますか。
14 息子がいる場合,父親の模範と物事の扱い方は,その子供が弱々しくて優柔不断な人間に成長するか,それとも,男らしく,しっかりしていて,確固とした勇気を示し,進んで責任を引き受けようとする大人になるかを決める大きな要素になります。その男の子がやがてどんな夫や父親になるかということにも影響します。厳しく,がんこでかこくな人にもなれば,平衡の取れた,分別のあるやさしい人にもなるのです。家族に娘がいるなら,父親の影響や父親との関係はその女の子の男性観を左右しかねず,その子供の将来の結婚生活を成功に導くことも失敗に終わらせることもあり得ます。子供はごく幼い時から,父親のこういう影響を受けはじめます。
15,16 (イ)聖書によれば,父親には教育を施すどんな責任がありますか。(ロ)その責任をどのように果たせますか。
15 教育を施す父親の責任がどの程度のものであるかは,神がご自分の民にお与えになった指示,つまり申命記 6章6,7節(新)の次の言葉に示されています。「わたしが今日命じているこれらの言葉はあなたの心にあらねばならず,あなたはそれを自分の息子に教え諭し,家に座する時も,道を歩く時も,寝る時も,起きる時もそれについて話さねばなりません」。
16 神のみ言葉の語句だけでなく,それに含まれる教訓も,子供が日々しっかりと心に刻みつけるようにしてやらなければなりません。そうする機会はいくらでもあります。庭に咲いている花,空中を飛ぶこん虫,木の間に見える鳥やりす,浜べにころがる貝殻,山で拾うまつかさ,夜空に輝く星,こうしたすべての驚異は創造者について物語っています。したがって,親はそれらが語る言葉の意味を子供たちに説明してやらねばなりません。詩篇記者はこう述べています。「天は神の栄光を告げ知らせ,大空はみ手の業を語り告げる。日は日に次いで言語をほとばしりいだし,夜は夜に次いで知識を示す」。(詩 19:1,2,新)これらのものを用いるのに機敏であるなら,とりわけ日常生活の中の事柄から例を取って正しい原則を強調し,神の助言の持つ知恵と益を示すのに機敏であるなら,父親は,子供の心と思いの中に,将来のための最も重要な基礎,すなわち,神がおられるという確信だけでなく,『神がご自分をせつに求める者に報いてくださる』ことに対する確信をも築くことができます。―ヘブライ 11:6。
17,18 (イ)父親はどのように子供を懲らしめるべきですか。(ロ)多くの規則を作るよりももっと効果的なのは何ですか。
17 懲らしめを与えることも父親の役目の一つです。「父親が懲らしめを与えない子はいったいどんな子でしょうか」という問いがヘブライ 12章7節にあります。しかし父親の務めは,子供をいら立たせたり苦しめたりするほど過度のきょう正を加えるような極端に走らずに懲らしめを与えることです。父親に対して,神の言葉は,「あなたがたの子どもをいらいらさせて気落ちさせることのないようにしなさい」と述べています。(コロサイ 3:21)制限を課すことは必要ですが,重苦しくなるほど規則を多く作ったり拡大したりして,人を落胆させてしまうこともあり得ます。
18 昔のパリサイ人は規則の好きな人々でした。規則を山ほどもうけて,多くの偽善者を作り出しました。次々と規則を作れば問題が解決すると考えるのは人間の欠点です。実際の経験から明らかなのは,心を動かすことに真の解決策があるということです。ですから,規則を設けることは控え目にし,そのかわりに,神ご自身と同じ方向を目ざして,原則を教えこむことに努めてください。「わたしは,わたしの律法を彼らの思いの中に置き,それを彼らの心の中に書く」― ヘブライ 8:10。
父親と母親はお互いにパートナー
19 家族が心を通じ合わせるようにするためにどんなことができますか。
19 父親はふつう一家の働き手です。仕事を終えて帰宅するときには疲れているかもしれず,ほかにまだしなければならない事があるかもしれません。それでも,父親は妻と子供のために時間を作らなければなりません。家族と心を通じ合わせることに努め,家族がいっしょにする話し合いや仕事,楽しい遊びやピクニックなどのための時間をもうけます。家族の一致と団結はそういうことから生まれるのです。夫婦は子供ができるまではひんぱんに外出したかもしれません。しかし,二人があいかわらずあちこち出歩き,夜ふかしをすることもあるとすれば,それは責任ある親にふさわしい行動とはいえません。それは子供に対してきわめて不公平な行為です。親は,早晩,不規則な生活をし責任をうとんじた代償を払うことになるでしょう。大人と同様に子供も,生活が基本的に安定し規則的であるほうが,うまくやっていけるのです。安定した規則的な生活は精神的,身体的,感情的な健康に寄与します。親が不必要に波風を立てなくても,毎日のきまり決った家族生活に波風は十分にあります。―マタイ 6:34。コロサイ 4:5と比較してください。
20 子供を懲らしめるとき,どうすれば両親は分裂せずにすみますか。
20 子供の扱い方や,子供を教え,子供に制限を課し,子供を懲らしめ,また愛することにおいて,父親と母親は協力しなければなりません。「家が内部で分裂するなら,その家は立ち行け(ません)」。(マルコ 3:25)両親がどんなしつけをするかについて話し合うのはよいことです。そうすれば,しつけについて二人の意見が一致していないところを子供たちに見せないようにすることができます。さもないと,子供たちは,“分裂させて征服”しようとするかもしれません。親が性急に,あるいは腹立ちまぎれに極端な懲らしめを与えたり,すべての事実を考慮すると本当は懲らしめる必要が全くなかったりすることが時としてあるのは確かです。そのようなときには,両親が二人だけでそのことについて話し合ったのち,賢明に行動しなかったほうの親は,自分で子供との問題を正すこともできるでしょう。また,両親が二人だけで話し合えない場合,配偶者を支持することは不公正を支持することになると感じるほうの親は,“あなたが腹を立てる気持ちはわかります。もしわたしがあなたの立場にあったら,やはり同じような気持ちになると思うわ。でも,あなたが気づいていらっしゃらないことがあるのではないかしら。それは……”と言って,次に何でも見過ごされていると思われることをはっきり話します。このようにすれば,懲らしめを受けた子供の前で分裂や不一致を見せずに,子供の気持ちをなだめることができます。霊感による箴言に,「僭越さによって人はただ苦闘を起こすだけである。しかし相談をする者たちには知恵がある」とある通りです。―箴 13:10,新。伝道 7章8節もご覧ください。
21 懲らしめは片方の親にだけ任せておくべきでしょうか。その理由を述べなさい。
21 ヘブライ語聖書は,「聴きなさい,わたしの息子よ,あなたの父の懲らしめを。そしてあなたの母の律法を捨ててはならない」と述べて,懲らしめが共同で行なうべき役目であることを示しています。クリスチャン・ギリシャ語聖書も同様に,「子どもたちよ,主と結ばれたあなたがたの親に従順でありなさい。これは義にかなったことなのです」と教えています。父親は,子供を懲らしめるのは妻の仕事だと考えることがあります。反対に,妻は,“お父さんが帰っていらっしゃったら知りませんよ”と言って,悪いことをした子供を脅すだけのこともあるでしょう。しかし,家族が幸福で,両親がそれぞれ子供の愛と尊敬を受けるには,その義務を分担することが必要です。―箴 1:8,新。エフェソス 6:1。
22 子供が何かを求めて来る場合,何を避けるべきですか。なぜですか。
22 この点で両親が一致協力し,自分の責任を進んで果たそうとする態度を示すのを子供たちが目にするのは大切なことです。子供が父親に何かを頼むと,決まって“お母さんに聞きなさい”と言われるなら,あるいは母親が必ず問題を父親のところにもどして父親に決定させようとするなら,“いけません”と答えねばならない方の親は悪者の役をさせられます。むろん,父親が,“ああ,しばらく外へ行ってもいいよ。でも,夕飯がいつできるかお母さんに聞いてからにしなさい”と言える場合もあります。また母親は,子供の頼みを聞いてやっても別に悪くないように思えても,夫の意見も聞かなければならないと感じることがあるでしょう。しかし二人とも,子供が両親を対立させて自分の目的を遂げるのを助長したり許したりすることが絶対にないように気をつけます。賢明な妻は,自分が分担している権威を夫とはり合う形で行使しないようにも注意します。子供を甘やかし,夫をさしおいて子供の愛情をひとり占めしようとするようなことをしません。
23 家庭において,決定は,すべて父親が下すべきですか。
23 実際,家族に関係した事柄を決める場合,家族の各成員は,特別な考慮に値する決定を下せる領域を持っているかもしれません。父親には,家族の全体的な福祉にかかわる問題に決定を下す責任があります。しかし,家族と話し合い,家族の願いや好みを考慮したうえで決定することが少なくありません。母親は台所やその他多くの家事に関する事柄を決定することができます。(箴 31:11,27)子供たちは大きくなるにつれて,遊びや,服装その他の個人的な事柄を自分で決めるのを許されるかもしれません。しかし,健全な原則が守られていること,子供の安全が脅かされていないこと,そして,他の人たちの権利が侵害されていないことを,親が十分に監督しなければなりません。このようにすれば,子供たちは徐々に決定を下せるようになります。
親を敬うのはやさしいことですか
24 子供たちが父と母を敬わねばならないことから,両親にはどんな責任がありますか。
24 子供たちは,「あなたの父と母を敬いなさい」と命令されています。(エフェソス 6:2。出エジプト 20:12)子供たちが両親を敬うことは神の戒めを敬うことでもあります。あなたは子供たちがそうするのを容易にしているでしょうか。妻は夫を尊敬するように命じられています。しかし,夫が神のみ言葉の要求に従って行動する努力をほとんどしないなら,妻が夫を敬うことは非常に難しいのではないでしょうか。夫は,愛するつれあいとして妻をいつくしみ,妻に誉れを配すべきですが,妻が助けになってくれないなら,そうすることは難しいのではないでしょうか。では親も,親を敬いなさいという神の戒めに子供たちが従いやすいようにしてやらねばなりません。平和な家庭を作り,良い標準を設け,親自身が模範的に振る舞い,健全な教えや訓練を施し,必要に応じて懲らしめを与えるなら親は子供たちの敬意をかち得ます。
25 子供たちのしつけの仕方について両親が一致していないと,どんな問題の起こる可能性がありますか。
25 「二人は一人に勝る。なぜなら,彼らは自分たちの勤労に対して良い報いを得るからである」とソロモン王は述べました。(伝道 4:9,新)二人の人がいっしょに歩いていて,片方の人が倒れたとき,もう一方の人は助け起こすことができます。したがって,家庭でも,夫と妻は互いに支え合い励まし合ってそれぞれの役目を果たせます。親として二人の役目が重なり合っているところは非常にたくさんありますが,それは家族の一致のためによいことです。子供は両親の関係をいっそう緊密にし,しつけという共同作業によって二人を一致させるはずのものです。しかし時には,子供にどんな訓練や懲らしめを与えるかということに関係して,意見の分かれるような問題も起こります。妻が子供に注意を向け過ぎるため,夫はうとんじられているように感じたり,腹を立てたりすることさえあります。それは子供に対する夫の態度に影響しかねません。夫は子供に冷淡になったり,逆に子供を溺愛して妻にあまり注意を払わなくなったりするかもしれません。夫にせよ妻にせよ,平衡を失うと高い代償を払うことになります。
26 母親が,生まれたばかりの赤ちゃんに多くの時間をかけねばならないとき,上の子供にしっと心を抱かせないためにどんなことができるでしょうか。
26 すでに子供がいて,新たに赤ちゃんが生まれる場合にも問題が起こるかもしれません。母親は生まれた子供に多くの時間を用いなければなりません。上の子供が,うとんじられていると感じたり,しっと心を持ったりしないように,父親が上の子供に特別な注意を払うのはよいことです。
27 配偶者の一方が未信者である場合,子供たちを霊的にどのように援助できますか。
27 確かに二人は一人にまさりますが,一人はだれもいないよりもまさっています。事情によっては,父親の援助を受けずに母親が一人で子供たちを育てなければならないかもしれません。あるいは,父親がそれと同様の挑戦に直面することもあるでしょう。片親はエホバ神の僕であるために聖書の助言に全き信仰を置いており,もう一方の親はそうではない,といったぐあいに,宗教的に分裂している家庭は少なくありません。夫のほうが献身したクリスチャンである場合は,家族の頭ですから子供のしつけや懲らしめの仕方に関してかなり自分の思うようになります。それでも夫は非常な辛抱強さと自制と忍耐を示す必要があるでしょう。重大問題のあるときは確固たる態度を保たねばなりませんが,腹の立つようなときでも道理をわきまえ,親切で,事情が許す限り融通を利かせるべきです。妻の方が信者で,夫に服している場合,そのやり方は夫の態度に大きく左右されます。夫は聖書に無関心なだけですか。それとも,妻が信仰を実践することや,自分が信じていることを子供たちに教えようとすることに反対しますか。夫が反対するなら,妻は使徒が述べている方法に頼らねばなりません。妻が自分の務めをりっぱに果たし,うやうやしい態度を示すなら,夫は『ことばによらずに引き寄せられる』かもしれません。さらに,妻は機会を捕らえて,子供たちを聖書の原則に従ってしつけます。―ペテロ第一 3:1-4。
家庭環境
28,29 望ましいのはどんな家庭環境ですか。なぜですか。
28 ふた親の責任は家庭の雰囲気を温かいものにすることです。その温かさを感じると,子供たちは,親に話すのを恐れて不安や失敗を心の中にためたりはしません。話を聞いてもらえ,理解してもらえること,そしてまた問題は親切に関心をもって扱ってもらえることを知っているからです。(ヨハネ第一 4:17-19。ヘブライ 4:15,16と比べてください。)家庭は雨露をしのぐ所であるだけでなく,いこいの場所でもあります。親の愛情によって子供たちは元気はつらつとした子供になります。
29 スポンジを酢につけておきながら,それが水をふくむように期待することはできません。スポンジは周りにあるものを吸収するだけです。ですから,水に浸さなければ水を吸収しません。子供たちも,周りにあるものを吸収します。周囲の人々の態度を感じ取り,周りで行なわれている事柄を観察して,スポンジのようにそれらを吸収するのです。精神的に緊張していようと,あるいはくつろいだ穏やかな気分でいようと,子供たちは親の気持ちを感じ取ります。赤ちゃんでさえ,家庭の雰囲気の特色を吸収しますから,信仰,愛,霊性およびエホバ神への信頼といった特質は非常に大切です。
30 子供たちを立派に導いているかどうか判断するのに,親はどんな事柄を自問できるでしょうか。
30 次のことを自問してみてください。わたしは子供がどんな標準に到達することを期待しているだろうか。両親ともその標準にかなっているだろうか。自分の家族がよりどころとしているものは何だろうか。自分は子供に対してどんな手本になるだろうか。不平を言ったり,あらさがしをしたり,他の人々を批判したり,消極的なことをくよくよと考えたりするだろうか。自分が望んでいるのはそういう子供だろうか。それとも,家族のために高い標準をもうけ,それに従って行動し,子供たちにもそうすることを期待しているだろうか。家族の一員である以上は,幾つかの条件を満たす必要があり,してよいことと,して悪い行ないや態度があることを,子供たちは理解しているだろうか。子供たちは親に属しているという安心感を求めますから,家族の標準に従うときには,認められ受け入れられていることを子供が感じるようにしてやらねばなりません。人は自分にかけられている期待にこたえようとするものです。自分の子をだめな子供だと考えるなら,おそらくその通りになるでしょう。ですから子供に良いものを期待し,その期待にこたえるように励ますことです。
31 親の指導には常にどんな裏付けがなくてはなりませんか。
31 人々は言葉よりも行ないによって判断されます。子供たちも,言葉より行ないのほうをよく注意して見るでしょう。また子供たちは偽善に目ざといものです。多くのことを言い過ぎると,子供たちは混乱するかもしれません。あなたの言う事柄は,必ず行ないによって裏付けられていなければなりません。―ヨハネ第一 3:18。
32 いつもだれの助言に従うべきですか。
32 父親であっても母親であっても,その役目はやさしいものではありません。しかし命の与え主の助言に従ってそれと取り組むなら,喜ばしい結果が得られます。あなたに割り当てられた役目を,命の与え主に対して果たすように,良心的に果たしてください。(コロサイ 3:17)極端を避けて平衡を取り,「あなたが道理をわきまえていることを」,お子さんを含めて『すべての人に知らせてください』。―フィリピ 4:5。
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母親のまなざし,膚の感触,声の調子などから赤ちゃんは愛されていることを感じる
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子供といっしょに行なう事柄を計画しますか