サタン悪魔がつながれるとき人類はどうなるか
「彼は,悪魔でありサタンである龍,すなわち,[元の]へびを捕えて千年の間つなぎおき」― 黙示録 20:2,[新世]。
1 とくにだれをつなぐ必要がありますか。どんな事実はその日の近いことを示していますか。
すべての創造物のうちの最大のかく乱者,また最大の法律違反者をつなぐことは必要です。今日,地上のすべての国々は,非常に困惑した事態にたちいたっています。人間家族が生きつづけるためには,この事態に責任をもつ者を,わたしたちの世代のうちにもつながねばなりません。世界の国々が困惑し,最後的な手段にさえ近づこうとしていることは,この事態の責任者のつながれる日が近いことのしるしであり,いまの世代の人々の中には,その日を目撃し,その後のすばらしい時代に生きつづける人がいるでしょう。ちかい将来,世界情勢が最悪の事態に至るとき,それはその事態の責任者をつなぐのに絶好の機会となり,またそのことがもっとも必要な時ともなります。つなぐ仕事をできる者はこの機会をとらえ,すべての人の平和と安寧をはかるでしょう。
2,3 (イ)人類の前途を権威をもって予告するものとして,わたしたちが信頼できるのはなんですか。(ロ)聖書の巻末の本は諸国家の最終的な事態と,かく乱者をつなぐこととについて何と述べていますか。
2 今日の無気味な現実を見るとき,わたしたちは世界の国々の終わりがちかいことを否定できません。しかし,現代の科学を至高の権威として,わたしたち人類の前途を予告,ないし決定することは不可能です。現代科学よりずっと長い歴史をもち,ずっと信頼できるものがあり,それが至高の権威をもって物事に答えます。それは聖書です。聖書は全巻66冊からなり,それが書き終えられたのは今から1900年ほどまえです。西暦第1世紀の終わりに書かれた聖書の巻末の本は,地上の諸国民の最終的な事態を予告しており,その予告どおりの事柄が西暦1914年以来の世界に実現しています。その本は,全宇宙的なかく乱者がつながれるまえの状態と,そのとき地上で起きる事柄とをいきいきと描き,ついでその者がつながれる様子を予告して,読む者の心を喜ばせます。聖書の終わりから3番目の章はこう書いています。
3 「またわたしが見ていると,ひとりの御使が,底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを手に持って,天から降りてきた。彼は,悪魔でありサタンである龍,すなわち,〔元の〕へびを捕えて千年の間つなぎおき,そして,底知れぬ所に投げ込み,入口を閉じてその上に封印し,千年の期間が終るまで,諸国民を惑わすことがないようにしておいた」― 黙示録 20:1-3,〔新世訳〕。
4 悪魔サタンは諸国民を惑わして,どのように考えさせていますか。それで聖書はこの者をなににたとえていますか。
4 この聖句から主要な法律違反者,またかく乱者がだれであるかがはっきりわかります。それは悪魔サタンです。これまで地上の諸国民を惑わしてきたのはこの者であり,これからもつながれるまで,この者は惑わしつづけるでしょう。今日の諸国民が極度に困惑していることになにか不思議がありますか。サタンは諸国民をして恒久平和と繁栄にむかっていると考えさせ,実際には諸国民を破局に導いているのです。それゆえ,サタンがへびにたとえられているのも不思議はありません。そして,人類史のいちばん初めに人間をあざむき,人間を惑わしたのはサタンであるため,サタンは「〔元の〕へび」とも呼ばれています。(創世記 3:1-15,〔新世訳〕)人に危害を加え,人間をえじきにするサタンの力は強大であるため,悪魔サタンは7つの頭をもつ大きな赤い龍にもたとえられています。―黙示録 12:3,4。エレミヤ 51:34。
5,6 (イ)サタンのつながれる時を知る助けとして,わたしたちはどんな適切な問題を取り上げますか。(ロ)この問題に対する答えはなんですか。なぜこのことは確かですか。
5 龍のようなサタンはすべての人間を自分の支配下におこうとしてきました。このサタンのつながれる時はいつか,それがわたしたちの世代のうちに起きるのかを知るために,ここでわたしたちはひとつのことを尋ねます。すなわち,龍で象徴されるこの悪魔サタンは,つながれ,底知れぬ所に投げ込まれ,封印されるすぐまえに,諸国民にどんなことをするのですか。サタンは諸国民を惑わしてなにに導くのですか。終極的な戦争にです! このことには少しの間ちがいもありません。サタンをつなぐことに関する記述のすぐまえの5つの節にこう書いてあるからです。
6 「また見ていると,ひとりの御使が太陽の中に立っていた。彼は,中空を飛んでいるすべての鳥にむかって,大声で叫んだ,『さあ,神の大宴会に集まってこい。そして,王たちの肉,将軍の肉,勇者の肉,馬の肉,馬に乗っている者の肉,また,すべての自由人と奴隷との肉,小さき者と大いなる者との肉をくらえ』。なお見ていると,獣と地の王たちと彼らの軍勢とが集まり,馬に乗っているかたとその軍勢とに対して,戦いをいどんだ。しかし,獣は捕えられ,また,この獣の前でしるしを行って,獣の刻印を受けた者とその像を拝む者とを惑わしたにせ預言者も,獣と共に捕えられた。そして,この両者とも,生きながら,硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。それ以外の者たちは,馬に乗っておられるかたの口から出るつるぎで切り殺され,その肉を,すべての鳥が飽きるまで食べた」― 黙示録 19:17-21。
7 王たちとその軍勢を戦いの場に臨ませるのはだれですか。このことはその戦いの描写の何節かまえにどのように示されていますか。
7 ここにあるとおり,象徴的な龍,悪魔サタンは「獣」と「にせ預言者」を使い,地の王たちとその軍勢を戦いの場に臨ませます。この聖句は戦いの場面を描写していましたが,これよりも何節かまえの16章13節から16節で聖書はこう述べています。「そしてわたしは,たつの口から,獣の口から,にせ預言者の口から,蛙に似た三つの汚れた霊感の表現が出るのを見た。それらは悪霊に霊感された表現で,しるしを行なう。そして人の住む全地の王たちのもとに出て行く。全能の神の大いなる日の戦いに彼らを集めるためである。……それらはヘブル語でハルマゲドンと呼ばれる場所に王たちを集めた」― 黙示録 16:13-16,新世訳。欽定訳,ドウエイ訳をもごらんください。
8,9 (イ)これが通常の戦いでないことを何が示していますか。地の王たちはどの側に集められますか。(ロ)そのため諸国家は当然になにを受けますか。
8 それで,わたしたち人類は戦いにむかっているのであり,これを避けることはできません。これは通常の戦いではありません。通常の戦いであれば,「全能の神の大いなる日の戦い」と呼ばれることはないからです。ここで,「人の住む全地の王たち」と呼ばれている政治支配者のすべてがその戦いに集められるのであり,そのすべてはおなじ側,すなわち「全能の神」に敵対する側に集められます。諸国家の宗教指導者は,政治支配者である「人の住む全地の王たち」に説いて,これは神のための戦いであると言うかもしれません。しかし,それは悪魔サタンの口から出る「霊感の表現」による欺きです。地上の諸国家が真理と正義の神,天と地の創造者のために戦うのでないことは明白です。なぜなら,神ご自身が,これらの諸国家を滅ぼすと,みことばの中で述べておられるからです。なぜ滅ぼすのですか。
9 なぜなら,これらの諸国家が神に敵対し,神の目的と神の天の政府に逆らうからです。全能の神に敵対する者のかしら,すなわち龍,悪魔サタンは「獣」と「にせ預言者」とを利用しており,諸国家はすべてこの悪魔サタンに惑わされています。諸国家が滅ぼされるのは,これまで4000年以上にわたって悪魔サタンに惑わされてきたことの最終的な結果です。
10 なぜハルマゲドンでの戦いはこれから到来しなければなりませんか。なぜサタンのつながれる日は近いと言えますか。
10 龍,悪魔サタンとその配下の悪霊たちとはまだつながれておらず,まだ底知れぬ所に投げ込まれていません。それゆえ,ハルマゲドンで行なわれる「全能の神の大いなる日の戦い」はこれから到来しなければなりません。サタンとその配下の悪霊たちとを底知れぬ所に閉じ込めることは,全能の神の大いなる日の戦いが終わり,地上で神に敵対するものすべてが滅ぼされたのちに行なわれます。こうして悪魔サタンは,自分の地上の組織がぬぐい去られたことをまず知り,自分の敗北を覚えるのです。今日,ハルマゲドンの戦いが近づいている以上,悪魔サタンとその配下の悪霊がつながれ,閉じこめられる日も近いのです。
単なる「悪の本質」ではない
11 諸国家が神と戦うと言っても,どうして諸国家を侮辱することにはなりませんか。
11 世界の諸国家すべてがそろって全能の神に敵対し,全能の神を敵にして戦おうとしているとあからさまに述べましたが,これは大げさな言いかたですか。いいえ,そうではありません。こう言ったからといって,諸国家を侮辱しようというのではありません。神の霊感を受けた聖書がそう言っているのであり,諸国家が大きな龍,悪魔サタンとその配下の悪霊に惑わされていると述べているのは聖書です。
12 このことは世界支配者に対するだれのどんなことと相いれませんか。世俗的に賢い人々は人格的な悪魔の存在について聞くとなぜ笑いますか。
12 もとより,諸国家の宗教指導者,キリスト教国や非キリスト教国の司祭や牧師は,自分と友交的な関係にある政治指導者に対して,そのようには言わないでしょう。地上の宗教ならびに政治の指導者はあまりに世俗的に賢く,世俗的な学問に高慢であるため,自分が目に見えない龍,悪魔サタンに導かれて軍事的なハルマゲドンに向かっていると言われるのを好みません。高等教育を受けた人々の中には地上に悪のはびこっていることを認めても,人格的な悪魔の存在を一笑に付す人が少なくありません。そうした人々は,悪魔サタンとは単に「悪の本質」をさすのであり,文字どおりに存在する者ではないと言います。a
13 むかし風の絵かきが書くどんな悪魔サタンは存在しませんか。サタンは「悪の本質」をさすにすぎないという考えは最近始まったものですか。
13 割れたひづめ,長くぎのような尾,2本の角などをもつ色の赤い悪魔が実在しないことはたしかです。そのような生き物はむかし風の絵かきや宗教的に無知な人々が想像したものにすぎません。しかし,世界の現状を見る以上,悪魔サタンが人間の目に見えない超人間の霊者であり,悪の源,また悪を助長する者であることを否定し,「悪の本質」を擬人化したものであるなどと考えてはなりません。それは自分を欺くことです。悪魔を単なる「悪の本質」とする考えは,原子力と宇宙旅行の時代である最近に始まったものではありません。この宗教上の考えは,すでに1894年,ニューヨーク市で出版された,二人の学者ジョン・マクリントックとジェイムス・ストロングの「聖書,神学ならびに教会文書の百科辞典」第9巻の中で取り上げられました。
14,15 (イ)この「百科辞典」は,サタンが実際に存在するかどうかをどのような仕方で判断していますか。(ロ)サタンを人格的な存在として描こうとしなかったなら,聖書の記述者は実際に用いたような表現をしましたか。(ハ)記述者たちの説明の仕方からみて,サタンは単なる比喩であったと言えますか。サタンを比喩であるとすることは実際には何をすることですか。
14 この巻の361頁は「サタンの存在」について論じ,サタンが実在者であるかどうかの判断を,「シーザーとナポレオンが実在の人物であったか,あるいは抽象的な概念の人格化,すなわちふたりにまつわる歴史とふたりに帰せられた性格とによって作り出された人物であったかを判断」するのとおなじ方法でしています。ついでこの第9巻は,ユダヤ人の預言者モーセや1世紀のイエス・キリストの弟子など,敬けんな聖書記述者に言及してこう述べています。
15 「聖なる記述者たちは人格的な行為をあらわすことばでサタンの行為と性格を説明している。彼らはサタンが権威と支配権をもち,使者や追随者を有するとしている。サタンは誘惑し,反抗する。サタンは責任や罪を問われ,またさばきや,最終的な刑罰を受ける」。敬けんな記述者たちはサタンの実在性を教えようとしたのであるが,仮りにそうでなかったとするなら,「彼らは実際に用いたような表現を使わなかったであろう」。だれにしても,「現実的で真正の,また意識的で道義観念をもつ行為者として描かれているこのもの」を単なる比喩,無生のものの擬人化,また想像の産物にすぎないと想定する人は,「霊感された筆者に語法上の罪を負わせているのである。すなわち,比喩であることを明示せずに比喩を用いた罪,修辞上の法則を無視して比喩を用いた罪である。しかも,筆者たちはほかではその修辞上の法則に従っているのである」。
16 (イ)聖書の記述者は悪魔についてわたしたちを欺こうとしたのですか。(ロ)悪魔は「悪の本質」を擬人化したものであるという説にめんどうな問題は伴いませんか。
16 しかしながら,預言者モーセからクリスチャン使徒ヨハネにいたる,霊感を受けた聖書記述者は悪魔ということばを比喩として用いたのではありません。これら記述者は,悪魔サタンが実在し,意識と知性をもつ霊者であることを,わたしたち聖書の読者に知らせ,理解させることを意図して強力な手法で書きました。彼らは語法を無視したのではありません。また,わたしたちを欺いて悪魔サタンが単に「悪の本質」を擬人化したものではなく,生きた者であると信じさせようとしたのでもありません。それゆえ,先に引用した「百科辞典」はさらにこう述べています。「これは全体的な問題であるが,擬人化説の難点はこれだけではない。悪魔は『悪の本質』であるとするのがこの説であるが,これ〔この説〕によって聖書の二,三の節を解釈してみよう」。ついでこの「百科辞典」はクリスチャン使徒マタイの記述の中から,イエス・キリストがユダヤの荒野で悪魔サタンに誘惑を受けた部分をとりあげてこう述べています。
17 前記の「百科辞典」は荒野でイエスが誘惑を受けたこと(マタイ 4:1-11)についてどう論じていますか。
17 「『ついでイエスは悪魔の誘惑を受けるため霊に導かれた』。(マタイ 4:1-11)イエスは人格的な存在者の誘惑を受けたのか。あるいはそれは悪の本質によったのか。後者であるとするなら,その本質はだれの中に,あるいはなんの中にあったのか。それはイエスの中か。もしそうだとすれば,イエスに罪がなかったということは偽りになるであろう。罪の本体がイエスの中にあったとするなら,イエス自身をしてこの時の誘惑者とすることになる。これは悪い〔解釈のしかたであり〕,さらに悪質な神学を生むものとなる。つぎの点も忘れてはならない。すなわちこの悪の本質が道徳上の悪であるためには,それは意識的で道徳的な行為者にそなわるものでなければならない。罪が悪となるのはそれが人格的な,そして責任を取ることのできる行為者の行為ないしは状態をさす場合である」。
18 「悪の本質」の擬人化という考えに対する同じ論議を,エホバ神の場合にどのように用いることができますか。
18 全能の神自身について考えてみても,悪魔サタンは「悪の本質」を擬人化したものであるという考えをおなじようにして反論することができます。それは神を恐れたヨブという人の場合です。ヨブは紀元前1500年の預言者モーセの時代に生きていました。聖書のヨブ記は,天界における神の使たちの集まりの際に,サタン自身が神のみまえにあらわれたことを書いています。ヨブ記 1章7節はつぎのとおりです。
19,20 ヨブ記 1章7節の悪魔サタンが単に「悪の本質」であったとするなら,どんな疑問が起きますか。そしてどんな結論を得ますか。
19 「エホバサタンにいひたまひけるは,なんぢいづくより来りしや,サタンエホバにこたへていひけるは,地を行きめぐり,ここかしこ経あるきて来れり」。(文語)
20 さて,ここにいたサタンは人格的な存在ではなく,単なる「悪の本質」でしたか。もしそうなら,エホバ神はだれに語っていたのですか。ご自身にですか。もしそうなら,擬人化された悪の本質であるサタンはエホバ神ご自身の中にひそんでいたことになります。そして,全能の神自身が悪の本質をそなえ,唯一の生きたまことの神が道徳的な悪の源であるということになります。このような冒とく的な考えは聖書全篇の教えにもとります。
21 悪の本質の擬人化という説が正しいとするなら,神の前でヨブを訴えたのはだれになりますか。自ら矛盾した言動をしたのはだれになりますか。また,結果において偽り者となるのはだれですか。
21 さらに,神はヨブを「全く,かつ正しく,神を恐れ,悪に遠ざかる者」と宣告されました。しかしサタンはヨブを訴え,ヨブがエホバ神に仕えるのは地的な利益を望みみているからであると語りました。こう書いてあります。「サタンは〔エホバ〕に答えて言った,『ヨブはいたずらに神を恐れましょうか。……しかし今あなたの手を伸べて,彼のすべての所有物を撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって,あなたをのろうでしょう』」。(ヨブ記 1:8-11,〔新世訳〕)さて,ここで人間ヨブを神に訴えたサタンが擬人化された「悪の本質」であったとするなら,エホバ神ご自身がこのときの告訴者となり,地に並ぶ者のない善人であると宣言した直後に自らヨブを訴えたことになります。その場合には至上の神ご自身の中に悪の本質がやどり,神が自ら矛盾した言動をしていたということになります。さらに,神はサタンがヨブを徹底的に試みることを許し,ついでサタンの主張の偽りであることを実証されましたが,サタンが悪の本質にすぎないものであったとするなら,神はご自身を偽り者としたことになります。―ヨブ記 1:12-22。
22 (イ)そのような説はヨブに関して神を再度偽り者としますが,そのことを説明しなさい。(ロ)この説をあてはめることから来る結論はどうして不可能ですか。
22 サタンは最初の試みに失敗したとき,さらにヨブを試みる許しを求め,エホバ神はこれを許されました。そしてヨブに対するサタンの告訴は偽りであることがふたたび証明されました。もしこのサタンが実際にはエホバ神の中に宿る「悪の本質」を擬人化したものであったとするなら,エホバ神は再度,偽り者であるとされたことになります。しかし,神は偽ることができないのです。他方,イエス・キリストは悪魔サタンを最初の偽りの「父」ないしは創始者であるとしました。その最初の偽りによって悪魔サタンは人類家族を殺したのです。―テトス 1:1,2。ヘブル 6:18。ヨハネ 8:44。
23 こうして悪魔サタンは実際には何であると証明されますか。また,ヨブ,そしてエホバ神さえ何であると証明されますか。
23 それゆえ,聖書の語法と理性的な物事の判断にしたがって言うなら,サタンは目に見えない霊界にいる,生きた人格的な存在でなければなりません。ヨブの忠実さはサタンが悪い者であり,そしる者であることを実証しましたが,そののち神はヨブの大きな苦難を取り除き,彼をゆたかに祝福されました。モーセ以外の聖書記述者も,ヨブを架空の人物ではなく,歴史上の人物であるとしています。このことは,聖書のヨブ記の中のエホバ神が意識をもつ道徳的な行為者であり,実在者であるとおなじく,悪魔サタンも歴史上実際に存在した者であり,また今日実在する者であることを示しています。―エゼキエル 14:14,20。ヤコブ 5:11。黙示録 12:9-12と比較。
24 今,なにをするには時間が足りませんか。悪魔の人格的な存在を証明することについて,「百科辞典」はどんなことをも述べていますか。
24 聖書のほかの句をあげて,悪魔サタンを人格的な存在ではなく,非人格的な「悪の本質」にすぎないとすることの愚かさを論証することもできますが,それには時間が足りません。マクリントックとストロングの「百科辞典」もヨハネによる福音書 8章44節を取り上げてこう述べています。「明白さに程度の差はあっても,人格的な悪の霊が存在することは聖書の中にくりかえし示されており,そのことをひとつひとつ証明することは時間の無駄使いになるであろう。彼のものとされている性格と行為はいずれも,この者が人格的な存在であることを示しており,どんな方法によってもそれを言い抜けることはできない」― 第9巻 361頁b。
どうして存在するようになったか
25 悪魔サタンが存在するようになったいきさつを説明しているのはどの本ですか。この者の名前にはどんな意味がありますか。
25 善と正義の神が道義的な悪や悪行の源となられることはありませんから,皆さんは,悪魔サタンがどうして存在するようになったか,またどうして今日,人類全体をおびやかすようになったかとお考えになるでしょう。しかしながら,聖書はこの点を簡明に説明しています。「悪魔サタン」とは「そしる者である反抗者」という意味です。ある者がほかの者,とくにエホバ神に対して反抗者ないしは反対者となり,またそしる者〔ディアボロス〕となることは珍しくありません。
26 ペテロとイスカリオテのユダの例は人が自らサタンまた悪魔となり得ることをどのように示していますか。
26 たとえば,イエス・キリストが自分の使徒ペテロをサタンすなわち「反抗者」と呼んだことがあります。イエス・キリストが自分の横死を予告したとき,ペテロはこれをなじりましたが,これに対して主イエスはペテロにむかい,「サタンよ,引きさがれ。わたしの邪魔をする者だ。あなたは神のことを思わないで,人のことを思っている」と言われました。(マタイ 16:23)べつの時,イエスは「神の聖者である」,との信仰を言い表わしたおなじペテロに対して,イエスは,ヨハネによる福音書 6章68節から71節にあるとおり,こう答えられました。「『あなたがた十二人を選んだのはわたしではなかったか。それだのに,あなたがたのうちひとりは悪魔〔ディアボロス〕である』。これは,イスカリオテのシモンの子ユダをさして言われたのである。このユダは,十二弟子のひとりでありながら,イエスを裏切ろうとしていた」。ここにあるように,イスカリオテのユダは自ら悪魔すなわちそしる者となったのです。―ヨハネ 6:70。
27 そしる者という意味で,女や男が自ら悪魔となる場合のあることを使徒パウロはどのように示していますか。
27 クリスチャン婦人に対する指示を書いたとき,クリスチャンの使徒パウロは,「女たちも,同様に謹厳で,他人をそしらず〔あるいは,女の悪魔とならず〕」,「年老いた女たちにも,同じように,たち居ふるまいをうやうやしくし,人をそしったり〔ディアボラス〕……せず」と述べました。(テモテ第一 3:11。テトス 2:3)パウロはまたこのようにも書きました。「終りの時には,苦難の時代が来る。その時,人々は自分を愛する者,金を愛する者,大言壮語する者,高慢な者,神をそしる者……そしる者〔ディアボロイ〕……となるであろう」。(テモテ第二 3:1-3)それで,人や神をそしる者という意味で,霊者の悪魔以外に人間の悪魔もいるのです。「真実の神」がそうした者を悪魔,すなわちそしる者とするのではあません。男や女が自らそうなるのです。―詩篇 31:5,〔新世訳〕。
28 自分をひとかどの者とするこのことはだれにも起こりますか。ヨハネによる福音書 8章44節においてイエスはこのことをどのように確証しましたか。
28 自分をひとかどの者とするこのことは,聖書が「巨大な龍,すなわち,悪魔とか,サタンとか……全世界を惑わす〔元の〕へび」とか呼ぶ,超人間の霊者にも起こります。(黙示録 12:9,〔新世訳〕)この者がここに言われているような者となったのは,エホバ神に創造されてからのことです。主イエス・キリストは自分を殺そうとした宗教的な人々にむかい,この霊者についてこう語られました。「あなたがたは自分の父,すなわち,悪魔から出てきた者であって,その父の欲望どおりを行おうと思っている。彼は初めから,人殺しであって,真理に立つ者ではない。彼のうちには真理がないからである。彼が偽りを言うとき,いつも自分の本音をはいているのである。彼は偽り者であり,偽りの父であるからだ」。(ヨハネ 8:44)このイエスのことばについて,先に引用した「百科辞典」(第9巻364頁a)はこう述べています。「ここにある アプ アルケス〔初めから〕ということばは,この者が初めて人間に働きかけたときのことをさしているようである」。
29 悪魔サタンとなった者はどのように偽りの「父」となりましたか。この者はいつ人殺しとなりましたか。
29 前述のとおり,ここに出てくる霊者は初めから悪魔サタンとして創造されたのではありません。神はこの者を人殺しとしてではなく,真理にある者として創造されました。しかし,この者は真理にとどまらず,みずから偽る者,そしる者(ディアボロス)となりました。それゆえ,この者が偽りを語ったとき,自分の天の父親の意思と精神にしたがって語ったのではなく,自分から,すなわち自分の意思で語ったのです。この者は神の真理に固く立たず,偽りを言い始めましたから,偽りの父と呼ばれました。この者は人殺しでもありました。神に創造されたときからではなく,悪魔サタンとなったときからです。この者はみずから悪魔サタンとなったのです。
30 悪魔サタンが行動を始めたのはいつですか。この者はどのように反抗的な態度を取りましたか。
30 悪魔サタンがどのように存在するようになったかを告げているのは,預言者モーセによって書かれた聖書の最初の本の第3章です。この者は超人間の霊者として,人間の最初のすみかであり,今日の西南アジアにあったエデンの園に,目に見えないかたちで存在していました。悪魔サタンがこの場所で活動を始めたのは,エホバ神が女を創造して,完全な人間アダムの伴りょとならせたのちのことです。この目に見えない神の霊的な子は,いっぴきのへびを仲立として,完全な女エバの天の父親である神について,エバに恥ずべき偽りを語り,エホバ神に反抗ないしは反対する者となりました。
31 どんな行為によってこの者は欺まん者となりましたか。この時以来,聖書の巻末にいたるまで,神はこの者の象徴として何を用いられましたか。
31 こうして,この反抗者ないし反対者は自ら,そしる者すなわち悪魔となったのです。エバを惑わして神にそむかせるために偽りを語ったこの者は,同時に欺まん者ともなりました。この者はエバに姿を見せず,目に見えるへびを使ってエバに偽りを語らせました。聖書が,「エバ(は)へびの悪巧みで誘惑された」と書いているのはこのためです。(コリント第二 11:3)またこのために,エホバ神はエデンの園においてすぐ,へびを欺まん者サタンの象徴とされました。聖書の巻末の本は,この大欺まん者を「全世界を惑わす〔元の〕へび」,また「年を経たへび」と呼んでいます。―黙示録 12:9; 20:2,新世訳,口語訳。
32 悪魔はどんな目的でエバを惑わしましたか。そのため,わたしたちすべてはどんな状態で生まれましたか。
32 「悪魔〔ディアボロス〕とか,サタンとか呼ばれ(る)……〔元のへび〕は,どんな目的でエバを惑わし,エバの神また父を恐怖に満たされた偽り者であるとしたのですか。事の次第から言うならば,この者の目的はエバを神にそむかせ,ついでエバを使ってその夫アダムを神にそむかせ,かくして二人を自分の側に入れ,自分の配下に置くことでした。さらには,二人の子孫すなわち人類全体を自分の支配下に置き,全地を反逆者すなわちエホバ神に反抗する者の土地とすることでした。この時より4100年ほどのち,クリスチャン使徒ヨハネは,「全世界は悪しき者の配下にある」と書きました。(ヨハネ第一 5:19)同時に,悪しき者サタンは人類を罪と死の配下に置きました。「罪の払ふ価は死」というのが神の定めだからです。(ロマ 6:23,文語訳)わたしたちはすべて,アダムとエバ以来の罪と死をもって生まれました。
33 アダムに対する宣告を実施するため,神は何をされましたか。なぜ罪と死はわたしたちすべてに伝わりましたか。
33 エホバ神は罪人に対する死刑の宣告を実施するため,アダムとエバをエデンの園から追い出し,園にあった命の木に近づかせないようにしました。そのことを聖書はこう書いています。「〔エホバ〕神は言われた,『見よ,人はわれわれのひとりのようになり,善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ,命の木からも取って食べ,永久に生きるかも知れない』。そこで〔エホバ〕神は彼をエデンの園から追い出して,人が造られたその土を耕させられた」。罪人アダムとエバが子供を持つようになったのはこののちであり,エデンの園の中ではなく,その外においてでした。(創世記 3:22–4:3)神の宣告と遺伝の法則とにしたがって,二人の子孫であるわたしたちすべてに罪と死が伝わりました。(ローマ 5:12)これは大きな堕落ではありませんか。
34 その時ほかにだれが堕落しましたか。神はエデンの園でこのことをどのように示されましたか。
34 しかし天使でありながら,「悪魔でありサタンである……〔元の〕へび」となった神の子も,堕落を見ずにはすみませんでした。このことは,エデンの園でこの者に言われた神のことばの中に明らかです。エホバ神は,エバを惑わすため,サタンが用いた実際のへびに語るかのごとくにして,サタンにこう言われました。「おまえは,この事を,したのですべての家蓄,野のすべての獣のうち,最ものろわれる。おまえは腹で,這いあるき,一生,ちりを食べるであろう。わたしは恨みをおく,おまえと女とのあいだに,おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き,おまえは彼のかかとを砕くであろう」― 創世記 3:14,15。
35 こうしてサタンはなんの父になりましたか。それゆえこの者は何に定められていますか。
35 こうして悪魔サタンは神ののろいのもとに置かれ,「のろわれた者ども」の父となりました。(マタイ 25:41)したがって悪魔サタンは,到来を約束された神の「女」のすえによってかしらを砕かれ,永遠に滅ぼされます。このことと一致して,クリスチャン使徒パウロは,この神の「女」のすえとなる者たちにむかって,「平和の神は,サタンをすみやかにあなたがたの足の下に踏み砕くであろう」と述べました。―ローマ 16:20。
いつ天から追い出されたか
36-38 聖書を読む人の多くはサタンがいつ天から落ちたと考えていますか。その人々はそのことの描写を聖書のどこに求めますか。
36 聖書を読む人の中には,神がエデンの園のへびに先の宣告のことばを語られたときに,悪魔サタンは天から追い出された,そして,聖書の最後の本黙示録の12章3節から13節は,その時サタンが天から落ちた様子を描いている,と考える人が多くいます。黙示録のその部分はこうです。
37 「また,もう一つのしるしが天に現れた。見よ,大きな,赤い龍がいた。それには七つの頭と十の角とがあり,その頭に七つの冠をかぶっていた。……龍は子を産もうとしている女の前に立ち,生れたなら,その子を食い尽そうとかまえていた。女は男の子を産んだが,彼は鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者である。この子は,神のみもとに,その御座のところに,引き上げられた。……
38 「さて,天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが,龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが,勝てなかった。そして,もはや天には彼らのおる所がなくなった。この巨大な龍,すなわち,悪魔とか,サタンとか呼ばれ,全世界を惑わす年を経たへびは,地に投げ落され,その使たちも,もろともに投げ落された。その時わたしは,大きな声が天でこう言うのを聞いた,『今や,われらの神の救と力と国と,神のキリストの権威とは,現れた。われらの兄弟らを訴える者,夜昼われらの神のみまえで彼らを訴える者は,投げ落された。……地と海よ,おまえたちはわざわいである。悪魔が,自分の時が短いのを知り,激しい怒りをもって,おまえたちのところに下ってきたからである』。龍は,自分が地上に投げ落されたと知ると,男子を産んだ女を追いかけた」。
39 その黙示録 12章3節から13節の預言的な記述は,エデンの時のサタンの堕落をさすものではありませんが,それはどんな肝要なことがそのとき起きていなかったからですか。
39 この記述は,エデンの園の時に,「悪魔」とか,サタンとか呼ばれ(る)……〔元の〕へび」が,神の恵みからはずされたことを説明するものですか。いいえ,そうではありません。先に引用した「百科辞典」さえ,黙示録 12章の7節と9節を取り上げ,「これらの聖句の意味がどうあるにしても,サタンの最初の堕落をさしているのでないことは確かである」と述べています。b 今からほとんど6000年前のそのとき,子供を生んだ女はまだいませんでした。また象徴的な神の女が約束された「男の子」を生んでいなかったことも確かです。その時エホバ神は,ご自分の「女」がへびのかしらを砕くすえを生むことを約束されたにすぎません。そしてこの時以来,「〔元の〕へび」悪魔サタンは頭を砕かれて滅ぼされるのを防ごうとして,神の「女」のすえを食い尽そうとしていたのです。そのとき,悪魔サタンを追い出す天の戦争は起きませんでした。
40 黙示録の12章に描かれていることはエデンの時に起きたのではありませんが,黙示録 1章1節はそのことをどのように示していますか。
40 別の点を取りあげましょう。聖書の最後の本は,イエス・キリストが死んで復活し,天にもどってから何年ものちに,伝説的には63年のちに書かれました。それゆえ,この本が書かれたのは第1世紀の終わりごろです。そして黙示録 1章1節は,「イエス・キリストの黙示。この黙示は,神が,すぐにも起るべきことをその僕たちに示すためキリストに与え……たものである」となっています。それで,黙示録 12章に書かれているのは,復活したイエス・キリストが忠実な使徒ヨハネにこの黙示を与えた西暦96年ごろよりのちに起こることがらであったのです。
41 ヨブ記はサタンが天に近づくことについて何を示していますか。ヨブ以後に書かれたヘブル語聖書はこのことについてなにを示していますか。
41 それゆえ,エデンの園でエバを惑わした時より2500年のちのヨブの時代に,悪魔サタンがなお天にはいり,神の民を神の面前で告訴したことが,モーセによって書かれたと思われるヨブ記の中に出ていても少しも不思議はありません。(ヨブ記 1:6–2:7)また,ヨブの時代よりのちに書かれた霊感によるヘブル語聖書で,悪魔サタンが天から投げ出されたことをしるしているものは,預言者マラキの時代にいたるまでひとつもありません。
42 それで今,サタンが天から投げ出されることについて,わたしたちはどんな問題を取り上げますか。
42 それでは,悪魔サタンは今日すでに天から投げ出され,地上に落とされていますか。もしそうなら,それはいつ起こりましたか。この者が人間に見えない霊者である以上,私たちはどうしてそのことを理解できますか。
サタンが追い出されたことの証拠
43 第一次世界大戦以来の世界の状態に対してはどんな責任者がいるにちがいありませんか。黙示録 12章12節を取り上げるのはなぜですか。
43 1914年から1918年の第一次世界大戦以来の地上の状態を見てごらんなさい。サタンが天から投げ出され,地に落とされるなら,地上の物事は大きな影響を受けるはずです。そして黙示録 12章12節もこう言っています。「地と海よ,おまえたちはわざわいである。悪魔が,自分の時が短いのを知り,激しい怒りをもって,おまえたちのところに下ってきたからである」。「自分の時が短い」とはいつまでのことですか。それはサタンとその使いが捕えられ,鎖でつながれ,底知れぬ所に投げ込まれて,1000年のあいだ諸国民を惑わせなくなる時までです。(黙示録 20:1-3)第一次世界大戦以来の悲惨な地上の状態には,だれか超人間の責任者がいるはずです。それは放逐され,怒りをいだいたサタンではありませんか。この点を調べましょう。
44 黙示録 12章10節によれば,サタンの放逐はなんのしるしですか。それゆえ,サタンの放逐は実際になんの結果ですか。
44 サタンの放逐がなんのしるしであるかに注意して下さい。サタンとその悪霊の使いが天の戦いに負けたのち,天においては次のような大きな声の聞かれることが予告されました。「今や,われらの神の救と力と国と,神のキリストの権威とは,現れた」。(黙示録 12:10)この意味深い発表のことばから明らかなとおり,サタンとその悪霊の使いを高い天から投げ出し,この地上に落とすことは,神の国が天に建てられたのちに起こります。サタンが放逐されるのは,神の天の「女」が男の子を生み,ついで龍によって象徴される悪魔サタンが男の子を食い尽すことに失敗し,この男の子が「神のみもとに,その御座のところに,引き上げられた」のちです。(黙示録 12:1,2,4,5)それゆえ,男の子の誕生と,それが天の神のみもとで御座につけられたこととは,神の右にある神の子イエス・キリストが王座につけられ,天の神の国が誕生したことを表わしているにちがいありません。天において,「今や,われらの神の……国と,神のキリストの権威とは,現れた」という発表がなされたのはそのためです。
45 メシヤによる神の国が天で誕生したのはいつですか。そのことのどんな証拠がありますか
45 キリストが王座につけられ,神の国が誕生したのは西暦1914年です。1914年以来すでに50年以上を経過していますが,この間の世界のできごとはイエス・キリストご自身の預言と一致しています。イエス・キリストは,自分が神によって天の王座につけられ,メシヤなる王として天と地の敵のただ中で支配を始める時の,地上の状態やできごとを予告されたのです。―詩篇 110:1-6。ヘブル 10:12,13。マタイ 24:3–25:46。黙示録 6:1-8; 11:15-18。
46 それゆえ二つのどんな戦争が同時に起きたことになりますか。わたしたちのわざわいはどうなりましたか。
46 サタンとその配下の悪霊を放逐するため『天で起こった戦い』は,1914年から1918年まで地上で起きた第一次世界大戦の少なくとも一部と時をおなじくしていたはずです。政治家たちは第一次世界大戦を呼んで,「すべての戦争を終わらせるための戦争」また「世界を民主主義に安全な場所とするための戦い」であると言いましたが,第一次世界大戦によって世俗的な戦争が終わり,世界が民主主義に安全な所となり,わたしたちのわざわいが終わったわけではありません。
47 わたしたちは明らかにどんな「時」に住んでいますか。今日の宗教上の迫害をどのように説明できますか。
47 皆さんは1914年以来の世界に,聖書の預言が成就しているのをお気付きになりますか。これによってサタンがすでに天から地に放逐され,その活動が地上に限定されていることは明らかです。わたしたちは,サタン自らも知る,サタンに許された『短い時』に住んでおり,天の戦いに敗れたサタンは激しい怒りをもって,『地と海にわざわい』を起こしています。それだけでなく,サタンは宗教的な面でも迫害活動を起こしています。なぜならこう書いてあるからです。「龍は,自分が地上に投げ落されたと知ると,男子を産んだ女を,〔迫害〕した。……龍は,女に対して怒りを発し,女の残りの子ら,すなわち,神の戒めを守り,イエスのあかしを持っている者たちに対して,戦いをいどむために,出て行った。(黙示録 12:12-17,〔新世訳〕)それゆえ,メシヤによる神の国が1914年に誕生したとのあかしを持つ,エホバのクリスチャン証人が,全世界で迫害を受けていても,なんの不思議もありません。
48 (イ)サタンは自分に残る『短い時』をどのように用いていますか。(ロ)ハルマゲドンでの戦いの日はどのように「大いなる日」となりますか。
48 放逐されたサタンが配下の悪霊と共につながれ,底知れぬ所に投げ込まれ,1000年間とじ込められるまでの期間は,サタン自らも知るとおり『短い時』ですが,そのうち50年がすでに経過しました。なお残されている時間はごくわずかであるに違いありません。今や,焦そう的なサタンと配下の悪霊は,「人の住む全地の王たち」を聖書の最後の本がハルマゲドンと呼ぶ所に集めるため,その目に見えない力を用いています。それは「全能の神の大いなる日の戦い」のためです。(黙示録 16:13-16,新世訳)これは全能の神にとってまさに「大いなる日」となるでしょう。なぜなら,全能の神とその王イエス・キリストがハルマゲドンにおいて戦いに勝つからです。これは決定的な戦いであり,人類史上空前の戦いです。悪魔につく者のすべてはこの戦いに敗れます。これは人間にとって最悪の災いであり,サタンと配下の悪霊は人類をそこに導くのです。―マタイ 24:21,22。
49 わたしたちが今決定しなければならないどんな大切なことがありますか。このことはどうしてそれほど重大ですか。
49 わたしたち各自が決定しなければならない大切なことがあります。それは,自分は勝利の側にいるだろうか。ということです。これはきわめて重大な問題です。わたしたちは正しい決定をしたいと思うからです。この決定をすべき時は今です。そして,その決定のいかんによって,永遠の命を得るか,永遠の死と永遠の滅びを得るかが決まります。わたしたちは,「馬に乗っているかたとその軍勢」,すなわち「王の王,主の主」である天のイエス・キリストとそれに従う天使たちとに対して,戦いをいど「むために集まる,獣と地の王たちと彼らの軍勢」の側につきたいとは思いません。(黙示録 19:11-19)「獣」と地上の王たち,およびその軍勢の側につくなら,神の「大いなる日」に行なわれるハルマゲドンの戦いの結末を描く聖書の預言にあるとおり,わたしたちはその者たちと共に滅びることになるのです。―黙示録 19:20,21。
サタンをつなぐことによって人間に及ぶ益
50,51 (イ)黙示録 19章20節から20章3節によると,ハルマゲドンの時とそれ以後に,物事はどんな順序で起きますか。(ロ)ハルマゲドンにおいてサタンの地上の軍勢と共に滅びるなら,人はどうなりますか。
50 ハルマゲドンの戦いにおいて,サタンの地上の軍勢は壊滅しますが,サタンと配下の悪霊がつながれるのはその直後です。もしわたしたちがハルマゲドンで滅ぼされるなら,サタンをつなぐことによって人類に及ぶ永続的な益を楽しむことはできません。(黙示録 19:20–20:3)また,サタンと配下の悪霊がつながれ,底知れぬ所に投げ込まれ,活動を完全に拘束されたのちに1000年間つづく,王イエス・キリストの支配から祝福を見ることもできないでしょう。サタンが束縛されたのちの事の次第は,黙示録 20章3節から6節がこう示しています。
51 「〔天から降りてきた御使は悪魔サタンを〕底知れぬ所に投げ込み,入口を閉じてその上に封印し,千年の期間が終るまで,諸国民を惑わすことがないようにしておいた。その後,しばらくの間だけ解放されることになっていた。また見ていると,かず多くの座があり,その上に人々がすわっていた。そして彼らにさばきの権が与えられていた。また,イエスのあかしをし神の言を伝えたために首を切られた人々の〔魂〕がそこにおり,また獣をもその像をも拝まず,その刻印を額や手に受けることをしなかった人々がいた。彼らは生きかえって,キリストと共に千年の間,支配した。(それ以外の死人は,千年の期間が終るまで生きかえらなかった)これが第一の復活である。この第一の復活にあずかる者は,さいわいな者であり,また聖なる者である。この人たちに対しては,第二の死はなんの力もない。彼らは神とキリストとの祭司となり,キリストと共に千年の間,支配する」。
52,53 キリストの千年統治は地上のどんなものの支配から人類を解放しますか。
52 イエス・キリスト,および「獣」を拝まない神の「女」のすえの残りの者たちの1000年間の支配が始まればどうなりますか。まず人類はもはや「獣」に支配されなくなります。冗談だろう,獣が人類を支配したことはない,とお考えになるかも知れません。たしかに,実際の獣が人類を支配したことはありません。しかし,人類は象徴的な獣に支配されてきたのです。それはなんですか。その説明として,ヨハネに与えられた黙示は,龍,悪魔サタンが天から放逐されたことを述べたのち,このことばをつづけています。
53 「そして,〔龍は〕海の砂の上に立った。わたしはまた,一匹の獣が海から上って来るのを見た。それには角が十本,頭が七つありそれらの角には十の冠があって,頭には神を汚す名がついていた。わたしの見たこの獣はひょうに似ており,その足はくまの足のようで,その口はししの口のようであった。龍は自分の力と位と大いなる権威とを,この獣に与えた。……そこで,彼は口を開いて神を汚し,神の御名と,その幕屋,すなわち,天に住む者たちとを汚した。そして彼は,聖徒に戦いをいどんでこれに勝つことを許され,さらに,すべての部族,民族,国語,国民を支配する権威を与えられた。地に住む者で,ほふられた小羊のいのちの書に,その名を世の初めからしるされていない者はみな,この獣を拝むであろう」― 黙示録 12:18–13:8。
54 この「獣」は何を象徴していますか。このことを聖書からどのように確証できますか。
54 この「獣」はなにを象徴しているのですか。神の大敵対者であり,エデンの園において神を冒とくした「〔元の〕へび」,すなわちサタンの目に見えない支配の下に置かれる,全世界の政治制度です。使徒ヨハネに与えられた黙示の中のこの象徴的な表現と,ダニエルの預言書 7章にある象徴的な表現とを比べれば,この「獣」が,ノアの洪水の次の世紀にユーフラテス河畔に古代バビロンを建設したニムロデの時代以来,神の大敵対者サタンが用いてきた,全世界の政治制度をあらわしていることがはっきりわかります。ノアの曾孫であるニムロデは,「エホバに敵対する力ある狩人」と呼ばれたのです。―創世記 10:8-12,新世訳。
55 聖書が「獣」を象徴として用いたことの適切さをどうしたら理解できますか。
55 ニムロデ以来今日にいたる政治制度を特色づけるのは,神の民を圧迫した七つの連続的な世界強国です。この政治制度は「獣」のようでしたか。その判断は読者にゆだねます。まず,それらの世界強国すなわち古代エジプト,アッシリア,バビロニア,ペルシャ,ギリシャ,ローマ,英米政治同盟の歴史を読み,そののち正直に判断してごらんなさい。この象徴的な「獣」は崇拝されてきました。今日でも国家の崇拝,国家主権の偶像化が行なわれています。これは戦争を生んできました。
56 「獣」がハルマゲドンで滅ぼされ,サタンがつながれたのち,地上にどんなものはなくなりますか。
56 ハルマゲドンにおいて「獣」が滅ぼされ,その目に見えない支配者である龍,悪魔サタンがつながれるなら,そのような「獣」が崇拝され,人類がそれに抑圧され,またエホバ神の崇拝者がそれから迫害を受けることはもはやありません。すなわち,国際的な戦争や内乱はもとより,政治同盟,条約機構,国際連合,また平和に住むことを願う人々をへだてる国境などはみなほうむられるのです。さらには,関税や税関や税金,また商業上の抗争や世界的な市場競争など,政治上の国家を神として崇拝することから起こる今日の分裂的な制度はすべて一掃されるのです。
57 政治制度の支配権が悪魔から来ているということをどのように感ずる人がいますか。しかし,イエス・キリストを誘惑した時,悪魔自身が何を明らかにしましたか。
57 「獣」を崇拝する人々は,すべての部族,民族,国語,国民を支配するこの世の政治制度の支配権,王権,権威などが龍すなわち悪魔サタンから来ていると聞いて怒るかもしれません。しかし,イエス・キリストを誘惑し,全地の支配権を譲ることを申し出た時の悪魔自身のことばを読むなら,それらの人々はなんと言えますか。その人々にルカによる福音書 4章5節から8節を読んでもらいましょう。こうです,悪魔サタンはイエスを高い所へ連れて行き,「またたくまに世界のすべての国々を見せて言った,『これらの国々の権威と栄華とをみんな,あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて,だれでも好きな人にあげてよいのですから。それで,もしあなたがわたしの前にひざまずくなら,これを全部あなたのものにしてあげましょう』イエスは答えて言われた,『「あなたの神〔エホバ〕を拝し,ただ神にのみ仕えよ」と書いてある』」〔新世訳〕。
58,59 (イ)イエスと使徒パウロはサタンを架空のものとせず,何と呼びましたか。サタンをつなぎ,閉じ込めることは人類に何を意味しますか。(ロ)エホバ神を崇拝することは人類に何を意味しますか。
58 サタンを「この世の支配者」と呼んだイエス・キリストは何かを空想していたのではありません。(ヨハネ 16:11,新世訳)サタンを「この世の神」と呼んだクリスチャン使徒パウロも,何かを空想していたのではありません。同じパウロは,「サタンも光の天使に擬装する」と述べ,また「サタンの手下どもが,義の奉仕者のように擬装した」と言いました。(コリント第二 4:4; 11:14,15)悪魔サタンは実際に存在するのであり,この者はつながれねばなりません。そして実際につながれ,閉じ込められます。これが果たされる時,すべての人は歓呼するでしょう。サタンと配下の悪霊がついに底知れぬ所に投げ込まれ,人類との接触を絶たれるなら,宗教上の対立,分裂,憎悪と共に偽りの宗教すべても終わるのであり,また,魔術,まじない,霊媒術,占星術,悪霊崇拝などは皆なくなるのです。その時,全地で行なわれるのは,人に命を与える,ただ一つの,まことの宗教です。人々は詩篇 83篇18節の言う,「〔エホバ〕という」名を持たれるかた,生きた唯一まことの神を崇拝するでしょう。エホバを神として崇拝する者に及ぶ祝福をイエス・キリストはこのように言いました。
59 「永遠の命とは,唯一の,まことの神でいますあなたと,また,あなたがつかわされたイエス・キリストとを知ることであります」― ヨハネ 17:3。イザヤ 11:9,ハバクク 2:14をもごらん下さい。
60 (イ)これまでのサタンの支配とは対象的に,キリストの千年統治は人類にとり何を意味しますか。(ロ)こうしてさしのべられる機会は地上で最終的な出来事を生きのびる人々のものですか。あるいはだれの?
60 これまで数千年にわたった悪魔サタンの支配が人類に与えたものは,罪と死と人類一般の墓への下降でした。神の「女」の残りのすえと共に行なわれる,イエス・キリストの1000年の統治は,「〔元の〕へび」の頭を砕き,この者を滅ぼします。(黙示録 20:7-10。創世記 3:14,15。ローマ 16:20)これは,人類がいつまでも住むべきところとしてついに喜びの楽園に変えられた地上で,神を敬う完全な政府の支配を受けつつ,永遠に幸福に生きる機会を人間に与えることになります。この貴重な機会は,ハルマゲドンの戦いと,悪魔サタンおよび配下の悪霊がつながれ,閉じ込められる時を生き残る敬けんな人々にだけ与えられるのではありません。イエス・キリスは1900年前に『かかとを砕かれ,あがないの犠牲として死なれましたが,このすばらしい機会は,イエスの死なれた人々すべてに差しのべられるのです。―テモテ第一 2:5,6。マタイ 20:28。
61 (イ)このことはどうして可能ですか。(ロ)「それ以外の死人」が「生きかえ」るのはいつですか。どのように?
61 このことはどうして可能ですか。死んで一般の墓にいる人々の復活があるのです。(使徒行伝 24:15)すべての者が同時に復活するのではありません。しかし,1000年の終わりまでに,人類の一般の墓はすべての死人を出しているでしょう。1000年が終わったのちに行なわれる,神への献身をためす最終的な試練を通る従順な人々は,神の命の書に自分の名を記録されるでしょう。こうしてこれらの人々は,キリストの千年統治の終わりに,完全に「生きかえ」るのです。最終的な試練に負ける者たちは,地上の楽園に住むすべての者を最終的に試みるため,神によってしばらく活動を許されるサタンおよび配下の悪霊と共に,永遠に滅ぼされます。―黙示録 20:5,7-15。
62 このような祝福の実現をどのように祈り求めることができますか。
62 それゆえ,サタンと配下の悪霊がつながれ,閉じ込められることによって人類にはなんとすばらしい希望が実現するではありませんか。わたしたちは,「御国がきますように。みこころが天に行なわれるとおり,地にも行なわれますように」との主の祈りを天の父にひきつづきささげて,このすばらしい祝福が実現する日の早いことを絶えず祈ろうではありませんか。―マタイ 6:9,10。
[脚注]
a 英国ロンドンで出版されたアダム・クラーク法学博士の新約聖書の注解第2巻(1836年版)3063頁。第2欄は黙示録 12章9節に関する脚注の中でこう述べています。「あの古いへび〕律法学者はこの者について多くを語っており,ときにיצרהרעエトセルハラ,悪の本質の意を付しており,またときにサマエルと呼んでいる。
「彼は地に投げ出され,その使いは彼とともに投げ出された〕これはソハルのバヒル書27葉1の7欄のことば,『そして神はサマエルとその軍勢をその聖なる場所から投げ出した』によく似ている」。
b マクリントックとストロングの「百科辞典」第9巻363頁b「サタン」の項から引用。