14章
人間の古い秩序が神の新秩序に道を譲る時!
1,2 (イ)大いなるバビロンはどんな手先によって滅ぼされますか。(ロ)啓示 17章17節はあの緋色の「野獣」の「十本の角」について何と述べていますか。
大娼婦」大いなるバビロンが差し迫った「大患難」に際して滅ぼされる時,人間の古い秩序の長年続いてきた部分は過ぎ去ります。偽宗教のあのバビロン的な世界帝国は以前の愛人たちによって滅ぼされます。つまり,その滅びは「緋色の野獣」すなわち世界平和と安全のための世界的機構の「七つの頭」にある象徴的な「十本の角」の手先によってもたらされます。大戦後のその機構は西暦1919年に作られ,最初国際連盟という名称のもとに機能しました。
2 その象徴的な「野獣」に恐ろしい様相を帯びさせている「十本の角」に関して,啓示 17章17節はこう述べています。「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れたからである。すなわち,彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行し,神のことばの成し遂げられるに至ることである」。
3 (イ)「十本の角」は何を象徴していますか。(ロ)政治諸国家間に存在する関係については,啓示 17章17節は何と述べていますか。
3 1919年の講和会議により幾つかの新しい政治国家が創設されました。こうして,第一次世界大戦後には同大戦直前よりもさらに多くの象徴的な「角」が存在しました。それで,世のすべての政治国家間の関係はどうなるのであろうかという疑問が焦眉の問題となりました。(十という数は聖書では全体制を意味するものとして用いられている完全数なので,それら諸国家すべては「十本の角」で表わされていた。)この問題に関しては,「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れ」ました。そのような事をどのようにしてなし得たのでしょうか。
4 政府について言えば,1914年には何が起こりましたか。
4 さて,霊的なイスラエル人の従順な残りの者は1914年における異邦人の時の終わりを公に知らせていました。その年に,異邦人国家が神のメシアによる王国の干渉を受けずに世界を支配することを認めた神の許可が切れました。そして,メシアによる王国を天で,ダビデ王の永久相続者イエス・キリストの手に樹立することによって,ご自分の許可がそのように終わった旨表明されました。ダビデの王統のメシアによる王国は,2,520年前の西暦前607年に踏みにじられたように蹂りんされることは二度と再びありません。―ルカ 21:24。
5 地上の政治諸強国に対しては,それら諸強国が自分たちの支配権を神の支配するメシアに引き渡すべき時が到来したことを知らせるどんな通告が伝えられましたか。
5 霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者にとっては,1914年の荒れ狂う第一次世界大戦とそれに伴って起きた食糧不足や疫病は,同年の異邦人の時の終わりに神のメシアによる王国が天で完全に生まれ,完全に樹立されたことを確証する事柄でした。それで彼らは樹立された神の王国の良いたよりを宣べ伝えましたが,ついに戦時下の事情や激しい迫害のため彼らの業は事実上中止させられました。王国を宣べ伝えるこの業は,地の異邦人政治強国すべて,つまり象徴的な「十本の角」に対する通告の業でした。妨げられることなく世界を支配できるよう神が諸国家に与えた権限が尽きたことを諸国家は知らされました。神の宇宙主権を認め,天で即位した神のメシアに自分たちの支配権を引き渡すべき時が来たのです。
6 神は異邦諸国家が行なう事柄に関する「ご自分の考え」をどのように既に明らかにしておられましたか。それはどんな考えでしたか。
6 とは言え,象徴的な「十本の角」はそうしないことを神は考え抜き,予告しておられました。例えば,詩篇 2篇はこのことに関する神の考えを明らかに示して,地の異邦人の王や高官たちが一団となって神とその即位した王に逆らうことを述べています。(使徒 4:24-30と比べてください。)既にダニエル書 2章44節の中でも,神はご自分の宇宙主権に逆らう不変の抵抗者としての彼らすべての滅びを予告しておられました。今や神の考えは,「十本の角」で表わされる異邦諸国家を神が全創造物の前で滅ぼすのを正当なことと証明し得る特定の行動を諸国家にはっきりと取らせることでした。神の考えは,諸国家が糾合して一団となって一致した行動を取り,そのすべてを神が一度に滅ぼせるようにすることでした。これこそまさしく諸国家が行なったことでした。このような訳で,神が特定の行動を取ることによって,神の考えを行なおうとする意向を象徴的な「十本の角」の心に入れたことが分かります。
7 (イ)「十本の角」はどのようにして自分たちの「王国を野獣に与え」ましたか。(ロ)彼らが「野獣」と共に権威を持つことになっている「一時」とはどんな期間ですか。
7 その証拠として啓示 17章17節はさらに,「すなわち,彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行し」と述べています。それにしても,彼らは自分たちの王国を霊的なイスラエルの残りの者によって告げ知らされた神のメシアによる王国に与えはしませんでした。それどころか,象徴的な「野獣」,つまり当時国際連盟と呼ばれた世界平和と安全のための人間の作った機構に自分たちの王国を与えました。時たつにつれて,さらに多くの国家が連盟に加盟し,そのようにして自分たちの「王国」を連盟に与えました。そのようにして,彼らは「一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受けるのである」と言えました。それら諸国家は一つの考えを持っており,またそれゆえに「自分たちの力と権威を野獣に与える」のです。(啓示 17:12,13)諸国家は「一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受ける」ことになっているのですから,象徴的な「野獣」は比較的短期間,あたかも「一時」の間存在することになっています。これまでその「野獣」的機構は,新バビロニア世界強国の存続期間(西暦前607-539年)よりも少ないわずか55年間存在してきたにすぎません。
8 予告された通り,「十本の角」はエホバ神の代理としてどんな仕事を成し遂げなければなりませんか。
8 その象徴的な「十本の角」,世界平和と安全のための機構の加盟諸国は,エホバ神の代理として成し遂げるべき仕事を持っています。それは何ですか。それは大いなるバビロンによって象徴されている偽宗教の世界帝国を滅ぼすことです。神の使いは使徒ヨハネにこう述べます。「あなたの見た十本の角,また野獣,これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼きつくすであろう」― 啓示 17:16。
9 現実に即した言い方をすれば,それは何を意味していますか。
9 これはその時まで存在する,宗教と国家,また教会と国家間のいかなる密接な結合関係も解消されることを意味しています。依然存在している国民教会あるいは国教会は廃され,宗教団体の免税処置は中止されます。聖書を出版,頒布するキリスト教世界の諸協会さえも活動を禁止されるでしょう。キリスト教世界の教会の宣教師の仕事はやみ,軍隊や議会の付属牧師は解雇され,復活祭やクリスマス,ヨム・キプル(贖罪の日)や過ぎ越しの祝いは行なわれなくなります。非常な窮境に陥った政府は,略奪者が思いのままに力ずくで奪ったあとに残る,宗教制度の莫大な物質上の富を収用するでしょう。男女を問わずだれであれ,キリスト教世界の宗教団体の成員であることを示す独特の僧服を着ている者は,国家の敵もしくは危険人物として襲われたり逮捕されたりする羽目になるでしょう。多くの人びとにとってはなお驚くべき事と思えるかもしれませんが,キリスト教世界は永遠になくなってしまいます!
10-12 (イ)滅ぼされるのはキリスト教世界だけですか。(ロ)イザヤ書 2章10-22節では,エホバの裁きの日は結果として人類にどんな影響を与えることが予告されていますか。
10 大いなるバビロンの最も強力な部分であるキリスト教世界がそうなるのであれば,同世界外の十分堅固に守られている古来の他の宗教組織すべてについては何が考えられますか。大いなるバビロンはすべて地上から必ず消滅します! それは全能者なるエホバ神の予告された裁きの日に生じますが,その日についてはこう記されています。
11 「あなたは岩の間にはいり,ちりの中にかくれて,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避けよ。その日には目をあげて高ぶる者は低くせられ,おごる人はかがめられ,〔エホバ〕のみ高くあげられる。これは,万軍の〔エホバ〕の一日があって,すべて誇る者と高ぶる者,すべておのれを高くする者と得意な者とに臨むからである。……
12 「こうして偶像はことごとく滅びうせる。主が立って地を脅かされるとき,人々は岩のほら穴にはいり,また地の穴にはいって,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避ける。その日,人々は拝むためにみずから造ったしろがねの偶像と,こがねの偶像とを,もぐらもちと,こうもりに投げ与え,岩のほら穴や,がけの裂け目にはいり,主が立って地を脅かされるとき,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避ける。あなたがたは鼻から息の出入りする人に,たよることをやめよ,このような者はなんの価値があろうか」― イザヤ 2:10-22,口語〔新〕。啓示 6:15-17と比べてください。
13 (イ)その預言の中で示されているように,人びとはその時,宗教に関する事柄をどのように取り扱いますか。(ロ)世俗的な人びとはどこに逃れますか。イザヤはそのことをどんな言葉遣いで予告しましたか。
13 人間の古い秩序に対するエホバのその裁きの日に,世俗的な人間は何を行なうでしょう。世界的に退廃してゆく状態に直面するため,宗教的な事柄に対する信仰を失って宗教的なものから離れ,それらを無益で無価値なものとして捨てるでしょう。そして,鼻を通して呼吸する空気に依存している人間以外の何ものでもない専門の宗教家を何ら価値のない者とみなします。今やそのような者に幻滅を感じさせられる人びとは,唯物主義的なものに専ら頼るようになります。そして,あらゆる世俗的な宗教を捨てて,非精神的で地的な組織に逃れ,それが山々やがけのように自分たちを守ってくれるものと考えて,そこに保護と救いを求めます。かつて,超人的な霊の領域と関係を持つ,神々のようにみなしていた宗教家にはもはや頼らなくなります。彼らが逃れる山のような組織の一つは,第「八」世界強国である国際連合です。「十本の角」を持つその象徴的な「野獣」は大いなるバビロンを滅ぼすからです。
14 大いなるバビロンの滅びという形で表明されるのは,実際にはだれの裁きですか。これはその方の正しさを立証するのにどのように役立ちますか。
14 大いなるバビロンを荒廃させ,裸にし,食い尽くして焼くのは,緋色の「野獣」の象徴的な「十本の角」が直接行なうことですが,それはやはりエホバ神からの裁きの執行の表われです。こうした見方と一致して,偽宗教の世界帝国について啓示 18章8節には,「そのために,彼女の災厄は一日のうちに来る。それは死と嘆きと飢きんであって,彼女は火で焼きつくされるであろう。エホバ神,彼女を裁いたかたは強いからである」と記されています。ですから,宗教上の「大娼婦」大いなるバビロンの支配下から人類を解放する誉れは,全能者なるエホバ神に帰されます。そして,エホバ神はバビロン的な偽宗教の世界帝国の創始者でもなければ,ましてやキリスト教世界の創始者ではないことが立証されるでしょう。
大いなるバビロンの滅びを喜ぶ
15-19 大いなるバビロンが滅ぼされる時,だれの間には喜びがありますか。使徒ヨハネはこのことについて何と書きましたか。
15 大いなるバビロンにとって神の手から臨む災厄の一つは「嘆き」ですが,エホバ神とその清い崇拝の側にいる人たちは大いなる喜びを経験します。霊感を受けた使徒ヨハネはエホバの崇拝者の側のこの喜びを描写しています。「大いなる都市バビロンが投げ落とされ,二度と見いだされ」なくなる預言的な光景を見た後,使徒ヨハネはこう書いています。
16 「これらのことののち,わたしは大群衆の上げる大きな声のようなものを天に聞いた。彼らは言った,『あなたがたはヤハを賛美せよ[ギリシャ語,ハレルヤ]! 救いと栄光と力はわたしたちの神のものである。その裁きは真実で義にかなっているからである。神は,その淫行によって地を腐敗させた大娼婦に裁きを執行し,ご自分の奴隷たちの血について報復をなし,それを彼女の手から要求された』。そしてすぐ,彼らは再びこう言った。『あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ]! そして,彼女から出る煙はかぎりなく永久に上りつづけるのである』」。
17 「すると,二十四人の長老と四つの生き物はひれ伏し,み座にすわっておられる神を崇拝して言った,『アーメン! あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ]!』」。
18 「また,声がみ座から出てこう言った。『神を恐れるそのすべての奴隷たちよ,小なる者も大なる者も,わたしたちの神を賛美せよ』」。
19 「またわたしは,大群衆の声のような,多くの水の音のような,そして激しい雷の音のようなものを聞いた。彼らはこう言った。『あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ!]。全能者なるわたしたちの神エホバは,王として支配を始められたからである』」― 啓示 19:1-6; 18:21-24。
20 エホバをそのように賛美する事態はどこで起きますか。しかし,ほかにだれが加わりますか。
20 エホバが予告された裁きを「大娼婦」に対して執行されたゆえにこのように賛美されている様はすべて,明らかに天で,それも聖なるみ使いたちの間で起きている事として表わされています。しかし,三度目のハレルヤという叫びが上がった後に天のみ座から聞こえてきた声はこう言いました。「神を恐れるそのすべての奴隷たちよ,小なる者も大なる者も,わたしたちの神を賛美せよ」。み座から出るこの命令には,「大娼婦」大いなるバビロンの滅びの後,地上になおとどまっている,ヤハ・エホバの「奴隷たち」のことが含まれています。それらの「奴隷たち」は,もっと前に天から出された神からの命令に服した人たちです。「わたしの民よ,彼女の罪にあずかることを望まず,彼女の災厄をともに受けることを望まないなら,彼女から出なさい。彼女の罪は重なり加わって天に達し,神は彼女の数々の不正な行為を思い出されたのである。彼女自身が返したとおりに彼女に返し,二倍を,つまり,彼女が行なったことの二倍を彼女に行ないなさい。彼女が混ぜ物を入れた杯に,二倍の混ぜ物を彼女のために入れなさい。彼女が自分に栄光を帰し,恥知らずのおごりのうちに暮らしたその分だけ,彼女に責め苦と嘆きを与えなさい」― 啓示 18:4-7。
21 西暦1919年以来大いなるバビロンから出て来たのはだれですか。それで,彼らにはどんな優れた見込みがありますか。
21 自分たちがエホバの「民」であることを証明するため,西暦1919年以来大いなるバビロンから出て来たのは,霊的なイスラエル人の残りの者と羊のような仲間の「大群衆」の両者を含む,エホバのクリスチャン証人です。彼らは「彼女の罪にあずかることを」望みませんでしたし,「彼女の災厄をともに受けること」も望みませんでした。従って,大いなるバビロンと共にその「死と嘆きと飢きん」の災厄にあずかって,もろともに「火で焼きつくされる」ことはありません。(啓示 18:8)それで,これらエホバの従順なクリスチャン証人は偽宗教のバビロン的な世界帝国の滅びを生き残ります。彼らはその滅びの証人となります。そして,「二十四人の長老」で象徴されている者たちを含め,天の大軍はあの「大娼婦」に対して聖なる復讐を行なわれたヤハ・エホバを賛美するのですから,生き残るそれらエホバのクリスチャン証人が歓喜して「ハレルヤ!」と叫ぶのは正当なことと言えるでしょう。しかし,それからどうなりますか。
子羊に対する「十本の角」と「獣」の戦い
22 (イ)大いなるバビロンの滅亡に次いで,どんな対決が起きますか。(ロ)エホバのクリスチャン証人はその時実際に何と対決しますか。
22 それから,その時地上に残っている者たちの間の対決があります。七つの頭と十本の角のある緋色の野獣と,その獣のことでなおも『驚いて感心している』地の住民は,論争の一方の側に立ちます。生き残るエホバのクリスチャン証人は他方の側に立ちます。その緋色の野獣は,「これと戦いうる」者はいないと考える人びとによって崇拝されている,海から上った,七つの頭と十本の角のある野獣の単なる「像」にすぎません。ですから,それはエホバのクリスチャン証人が実際には,その像が作られたこの象徴的な「野獣」と対決するようになることを意味しています。海から上ったこの野獣は,人間の支配権を有する世界的な政治体制を象徴しました。その体制に悪魔サタンは「自分の力と座と大きな権威」を与えたのです。(啓示 13:1-8)全地にまたがるこの政治体制は,今では人類の「海」から上った野獣の「像」となっている国際的機構である現代の国際連合のうちに,同体制を代表する138か国を有しています。これこそエホバの証人がその時対決しなければならないものなのです!
23 (イ)啓示 13章11-13節で予告されているように,『龍のごとくに話す』二本の角のある「野獣」とは何ですか。(ロ)国際連合はどんな「野獣」の「像」として言及されていますか。その政治的な「像」を作ることを提唱したのはだれですか。
23 野獣の「像」のうちに成員国を持っているそれら国家集団の中には,以前の大英帝国(西暦1931年以降,英連邦として再編成された)と北アメリカ合衆国があります。英語を話すこれら二つの集団は世界の危機に際して一緒に行動してきたので,この二者は二重つまり英米世界強国,聖書預言の第七世界強国を構成しています。一般的に言って,この第七世界強国は象徴的な野獣と共に働き,その獣のような世界的政治体制の代弁者あるいは預言者として行動してきました。このような訳で,啓示 13章11-13節ではそれは,子羊の角のような二本の角を持って「地」から上って来る,龍のような口のある野獣として描かれているのです。この二本の角のある二重世界強国が今日の国際連合の加盟国となっているのも実にもっともな話です。というのは,「海」から上った「野獣」の政治的な「像」を作るよう提唱し,その企てを成し遂げたのはこの英米世界強国だったからです。―啓示 13:14,15。
24 (イ)歴史の事実によれば,国際連盟,そして国際連合はどのようにして組織されることになりましたか。(ロ)国際連合は実際のところ,世俗的な政治家の側の何の表われですか。
24 第一次世界大戦の苦悶の最中,当時の英国の首相ロイド・ジョージは,戦後に第二の世界大戦をはばむ手段として働く国際連盟を組織することを考え,戦時下の米大統領T・W・ウィルソンは同連盟設立のため懸命に働きました。同様に,二度目の世界大戦の末期の何か月間かに,二本の角のある「野獣」の他方の構成国である米国は,当時消滅していた国際連盟の後身を組織するよう図りました。1945年10月,世界平和と安全のためのこの改められた機構は国際連合として出現しました。それは実際には政治上の「野獣」の例の同じ「像」でしたが,新しい名称を帯びていました。それは1914年における異邦人の時の終わり以来,エホバのクリスチャン証人が告げ知らせ,推奨していた,神のメシアによる王国を無視する世俗的な政治家によって提唱され,実施されたのです。
25 (イ)それで,啓示 17章の真の意義によれば,大いなるバビロンが滅ぼされた後,エホバのクリスチャン証人は何と対決しなければなりませんか。(ロ)それら証人たちが代表しているのはどんな政府ですか。
25 前述の事柄に照らしてみると,啓示 17章が七つの頭と十本の角のある緋色の「野獣」についてうんぬんする場合,この象徴的な「像」の背後にある真の強国,すなわち海から上った野獣で象徴されている世界的な政治上の支配体制のことを考えなければなりません。地から上った,二本の角のある野獣,すなわち英米二重世界強国は,海の獣によって表わされているより大きな政治体制の支配的な部分です。従って,象徴的な「像」の成員国である諸国家が宗教上の大いなるバビロンを滅ぼした後,エホバのクリスチャン証人が対決しなければならないのは非宗教的な政治政府のその世界的体制です。それら証人たちは人類の世に対する唯一正当な支配権を有するものとしての神のメシアによる王国をなおもしっかり支持して行きます。それこそ彼らの代表している天の政府です。事実,霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者は,メシアによる政府の「大使」なのです。―コリント第二 5:20。エフェソス 6:20。
26 (イ)大いなるバビロンが滅ぼされた後にも残る唯一の「宗教」とはどんな宗教ですか。(ロ)その宗教は世の政治問題に関係することに対してどんな態度を取るよう人に影響を与えますか。なぜですか。
26 イエス・キリストの予言した「大患難」の第一部は,宗教上の大いなるバビロンの滅びをもって終わります。(マタイ 24:21,22。ダニエル 12:1をも見てください。)今や地上では重大な時期が到来します。生き残るエホバのクリスチャン証人たちだけが,天地の創造者なる生ける唯一真の神の崇拝者として立っています。彼らの崇拝の方式は,その時存在する政治政府が一掃し得なかった唯一の「宗教」となるのです。それもそのはずです。なぜなら,それこそ「わたしたちの父なる神から見て汚点や欠点のないような宗教」だからです。(ヤコブ 1:27,新英語聖書)この「ような宗教」が地上からぬぐい去られない限り,不敬虔な諸国家は不満をかこちます。この「ような宗教」こそ,新たな政治機構と合体したり,自らを「世のもの」としたりしないよう,生き残るエホバのクリスチャン証人を守ってきたものなのです。(ヨハネ 15:19; 17:14,16)それら証人たちは終始一貫して,いと高き全能の神エホバの宇宙主権を支持します。
27 (イ)その時,どんな問題が結着を要しますか。(ロ)諸国家は一致結束してエホバのメシアによる王国に反対していることをどのようにして示しますか。
27 対抗関係なしに地を支配すべきなのはだれかという激烈な問題が今や発火点に達します。反宗教的な諸国家は全地に対する支配権を神のメシアによる王国に引き継がせまいと決意します。諸国家は全地を自分たちの領土であると主張しているのです。そして,国際連合機構の代理者による場合のように一致結束して,子羊イエス・キリストの手中にある,主権者なる主エホバのメシアによる王国に対する一か八かの反対を表明します。1914年における「異邦人の時」の終わりは諸国家にとっては何の意味もありません。国々は逃げ去ることを拒み,神の即位したメシアなる王である子羊に自分たちの国家主権を引き渡すのを拒みます。戦いを交えずに屈服することは決してしません。そうした必死の戦いのゆえに,核兵器を備えた諸国家は自分たちの戦力が頂点に達したことを感じます。ゆえに今度は,最後の決戦となります!
28 啓示 17章12-14節にあるように,これらの事柄がどのように説明されているかを述べなさい。
28 この世紀の戦いについて啓示 17章12-14節はこう述べています。「あなたが見た十本の角は十人の王[地上の政治強国すべて]を表わしている。彼らは[使徒ヨハネの時代には]まだ[国際連盟や国際連合に加わって]王国を受けていないが,一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受けるのである。これらの者は一つの考えをいだき,それゆえに自分たちの力と権威を野獣[平和と安全のための世界的機構]に与える。これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼とともに征服する」。
29 政治支配者たちは子羊イエス・キリストと直接戦おうとしてもキリストを見ることができるでしょうか。使徒パウロはそのことをどのように示していますか。
29 使徒パウロは仲間の宣教者テモテに手紙を書き送り,かつて犠牲にされましたが今では栄光を受けた状態にある神の子羊について述べ,こう言っています。「すべてのものを生かしておられる神,また,証人としてポンテオ・ピラト[ユダヤのローマ人知事]の前でりっぱに公の宣言をされたキリスト・イエスのみまえであなたに命じます。わたしたちの主イエス・キリストの顕現の時まで,汚点のない,またとがめられるところのないしかたでおきてを守りなさい。その顕現は,幸福な唯一の大能者がその定めの時に示されるのです。彼は王として支配する者たちの王,主として支配する者たちの主であり,[それら主や王たちすべての中で]ただひとり不滅性を持ち,近づきがたい光の中に住み,[栄光を受けた不滅の状態にあるので]人はだれも見たことがなく,また見ることのできないかたです」。(テモテ第一 6:13-16)従って,「野獣」である国際連合の象徴的な「十本の角」は世界支配の問題で直接子羊イエス・キリストと戦おうとしてもキリストを見ることはできません。
30 では,「十人の王」は彼らの攻撃をだれに向けますか。
30 しかし,その「十人の王」が行なう戦いは,王なる子羊イエス・キリストの見える地上の代表者たちに向けられます。それは霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者と,「王国のこの良いたより」を告げ知らせる献身した人たちの「大群衆」を含むエホバのクリスチャン証人です。(マタイ 24:14)それら証人たちは世界的汚染や諸国家の苦難にもめげず,生活の中で神の霊の実すべてを生むと共に神の恵みと保護と清い崇拝にあずかる霊的なパラダイスを享受してゆきます。
31 諸国家はイエスの忠実な弟子たちを攻撃する際,だれと戦うことになりますか。
31 彼らの励みとなるよう,子羊イエス・キリストは「事物の体制の終結」に関するその預言の中で,ある事柄を述べました。それはつまり,「これらわたしの[霊的な]兄弟のうち最も小さな者のひとり」に対してなされた事は皆,直接王なるイエスに対してなされたも同然であるということです。(マタイ 24:3; 25:40)わたしたちが実際にその「事物の体制の終結」の時期にいる今,この規則は依然として当てはまります。それで,イエス・キリストの忠実な弟子たちを絶滅させようとして戦う際,諸国家は栄光を受けた神の子羊と戦うことになります。ゆえにエホバのクリスチャン証人は,基本的に言ってその戦いは証人たちではなく,神とその子羊に対する戦いであることを正しく評価します。
「マゴグの地のゴグ」の指揮下で戦う
32 (イ)その最終的な戦いが起きる時,真の崇拝者たちの年来のどんな敵は見当たりませんか。(ロ)それにしても,「十本の角」をかり立てて戦わせるのはだれですか。
32 霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者と,りっぱな羊飼いの「ほかの羊」の「大群衆」を構成するその忠節な仲間に対するこの最終的な戦いの際には,以前彼らを攻撃したある者が見当りません。それは偽宗教の世界帝国である大いなるバビロンです。過去においては同帝国はその手先として“国家権力”を用いて,イエス・キリストの足跡に従うエホバの「聖なる者たち」に対する激しい霊的な戦いを行ないました。使徒ヨハネは次のように記して彼女の犯罪記録を聖書の中に残しました。「わたしは,その女が聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た」。(啓示 17:6)しかし今度は,彼女は「十本の角」によって滅ぼされたので,緋色の「野獣」に乗って何らかの点で影響を及ぼすことはありません。それにしても,地上に生き残っている忠実な弟子たちによって代表される子羊と戦うよう,「十本の角」をせき立てる力があります。その見えない超人的力は悪魔サタンです。―啓示 13:1,2。
33 (イ)悪魔サタンはその時もなおどんな立場を保っていますか。(ロ)地上のエホバの崇拝者に対してなされる戦いは実際には悪魔のせいであることを聖書はどのように示していますか。
33 宗教上の大いなるバビロンが滅びるからと言って,悪魔サタンがイエスから呼ばれた「この世の支配者」,あるいは使徒パウロから呼ばれた「この事物の体制の神」の立場から退けられる訳ではありません。(ヨハネ 12:31; 14:30; 16:11。コリント第二 4:4。啓示 13:3,4)悪魔崇拝を推し進めた大いなるバビロンが滅ぼされた後,地上のエホバの崇拝者であるクリスチャンに対する悪魔の怒りはそれまで以上に激しくなります。悪魔は天から放逐されて以来ずっと彼らに対して行なって来た戦いを激化させます。その戦いについては次のような言葉で預言的に伝えられています。「龍は女[メシアによる王国を生み出した,神の天的組織]に向かって憤り,彼女の胤のうちの残っている者たち,すなわち,神のおきてを守り,イエスについての証しの業を持つ者たちと戦うために出て行った」― 啓示 12:17。
34 ハルマゲドンで神に対する戦いを推し進めるのは悪魔とその政治体制であることを啓示 16章12-16節はどのように示していますか。
34 ゆえに今や,ハルマゲドンと呼ばれる世界情勢のあの段階で「全能者なる神の大いなる日の戦争」の勃発する時が訪れます。サタンが世の諸国家をその最後の戦いに駆り立てる様は啓示 16章12-16節に示されています。そこで使徒ヨハネはこう書いています。「わたしは,かえるのように見える三つの汚れた霊感の表現が,龍[悪魔サタン]の口から,野獣の口から,偽預言者[野獣の政治的『像』を作ることを提唱し,促進させた者たち]の口から出るのを見た。それらは実は悪霊の霊感による表現であってしるしを行ない,また人の住む全地の王たちのもとに出て行く。全能者なる神の大いなる日の戦争に彼らを集めるためである。……そして,それらは王たちを,ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所に集めた」。それで,世界的な政治体制と英米世界強国は龍と共に働いて,ハルマゲドンにおける神との総力戦を推し進めます。
35 (イ)大いなるバビロンが滅ぼされた後の出来事の中で悪魔が演ずる役割は,どんな預言の中で述べられていますか。(ロ)そこで「ゴグ」として述べられているのはだれですか。「マゴグの地」とは何ですか。
35 放逐された悪魔が大いなるバビロンの滅亡後,彼の地上の見える組織の残っているものを集めて神の子羊と戦わせる点で演ずる役割は,エゼキエル書 38章1節から39章16節までの預言の中で鮮やかに描かれています。その預言の中では,地の近辺に放逐された悪魔サタンは「マゴグの地のゴグ」と呼ばれています。その地は遠い北方,「北の果」に位置する場所として描写されています。それは神の恵みから遠く退けられた卑しめられた状態,つまり完全な無活動の底知れぬ所に投げ込まれる前の短期間,悪魔サタンとその悪霊たちが拘束されているこの地の近辺を表わしています。(エゼキエル 38:6,15; 39:2,口語。啓示 20:1-3)マゴグの地の象徴的なゴグとして悪魔サタンは,北と南から,またかつてユーフラテス河畔に立っていたバビロンの東のペルシャからも大いなる軍勢を集める様が描かれています。
36,37 (イ)ゴグの攻撃はいつ起きますか。(ロ)エゼキエル書 38章8,9節で述べられているように,ゴグが攻撃をしかける「地」とは何ですか。
36 マゴグの地のゴグとしての悪魔サタンによる攻撃が行なわれる時はエホバ神によって定められており,それは「終りの年」「終りの日」に起こることになっています。(エゼキエル 38:8,16,口語)これは悪魔の地上の見える組織の終わりに近い時代を意味しています。従って,その攻撃は霊的なイスラエルの悔い改めた残りの者がエホバの恵みにあずかる正当な霊的状態に回復された後,相当の期間がたってから行なわれるものと考えられます。それは霊的なイスラエル人が神の力によって大いなるバビロンへの捕らわれから解放され,自由に王国奉仕を行なえる状態に復帰した西暦1919年の何年も後のことを意味します。別名マゴグの地のゴグと呼ばれる悪魔サタンに対して次のように述べた神は,中東のイスラエル共和国ではなく,クリスチャンである「神のイスラエル」の回復された霊的な状態のことを指しておられたのです。
37 「多くの日の後,あなたは集められ,終りの年にあなたは戦いから回復された地,すなわち多くの民の中から,人々が集められた地に向かい,久しく荒れすたれたイスラエルの山々に向かって進む。その人々は国々から導き出されて,みな安らかに住んでいる。あなたはそのすべての軍隊および多くの民を率いて上り,暴風のように進み,雲のように地をおおう」― エゼキエル 38:8,9,口語。
38,39 (イ)霊的なイスラエルの残りの者に対するこのような攻撃が起きるのはどういう訳ですか。(ロ)この時代における神の民の霊的な状態はエゼキエル書 38章10,11節でどのように描写されていますか。
38 霊的なイスラエル人の回復された残りの者にこのような最後の攻撃がなされるのはどうしてでしょうか。それは神の祝福のもとで繁栄する地上の彼らの霊的状態がエホバ神の宇宙主権の正しさを示す世界的な証拠となるからです。それに加えて,彼らはこの世のものとはならず,世の紛争に対してはクリスチャンとしての厳正中立を保ちながら大胆に進出し,しかも自衛や保護の手段として恐ろしい兵器などにも頼っていないからです。それに彼らは,霊的なパラダイスの中でエホバの崇拝と活発な奉仕を楽しく行なっているのです。次のような言葉がゴグの口に上るのはそのためです。
39 「わたしは無防備の村々の地に上り,穏やかにして安らかに住む民,すべて石がきもなく,貫の木も門もない地に住む者どもを攻めよう」― エゼキエル 38:10,11,口語。
40 この預言の次の節には,地上のエホバの崇拝者がその時霊的なパラダイスを享受していることをさらに示すどんな証拠が含まれていますか。
40 回復された崇拝者たちが霊的なパラダイスの中にいることを証言して,エホバはマゴグの地のゴグにこう言います。「あなたは物を奪い,物をかすめ,いま人の住むようになっている荒れ跡を攻め,また国々から集まってきて,地の中央に住み,家畜と貨財とを持つ民を攻めようとする」。世の評者たちが侵入しようとするマゴグの地のゴグにこう尋ねるのはそのためです。「あなたは物を奪うために来たのか。物をかすめるために軍隊を集めたのか。あなたは金銀を持ち去り,家畜と貨財とを取りあげ,大いに物を奪おうとするのか」― エゼキエル 38:12,13,口語。
41 このような国際的攻撃を招くのは霊的なパラダイスの住民の物質上の富ではありません。なぜですか。
41 霊的なイスラエル人の回復された残りの者と霊的なパラダイスの仲間の住民の「大群衆」は,大いなるバビロンが何世紀にもわたって蓄積してきた物質上の膨大な富や資産と比べられる物質的な富を持ってはいません。彼らはイエス・キリストの助言に従って,この唯物主義的な世の物質上の財産よりもむしろ,第一に神の王国と神の義を求めてきました。(マタイ 6:33)では,地的財産という点で,現代のマゴグの地のゴグの見えぬ指揮下にある軍隊によるそのような国際的攻撃を招来するどんなものを持っているのでしょうか。
42 (イ)エホバのクリスチャン証人の霊的なパラダイスは実際には何を示していますか。それはどうしてですか。(ロ)世の諸国家はこのことで何を行なう覚悟でいますか。
42 物質上の富ではなく,エホバのクリスチャン証人の霊的なパラダイスによって表わされているものこそ,大いなるバビロンが灰じんに帰した後,悪魔サタンの見える地的な組織による世界的な侵攻を招くものとなります。エホバ神が地上に設けられた,彼らの霊的なパラダイスは,全地に対する主権を行使する正当な資格が神にあることを示しています。しかし,地に対する主権こそ世の諸国家がその権利を主張しているもので,国際連合の各加盟国は今なお自国の国家主権を固執し続けています。霊的なパラダイスの住民は「新しい地」つまり新しい地的社会の基を構成します。従って,現代のマゴグのゴグの指揮下の世の諸国家は「新しい地」のその基をはぎ取り,そうすることによって自己の利己的益のために,主権者なる主エホバから独立した古い地的社会を存続させたいと考えています。これを成し遂げることは自己統治を主張する諸国家にとって金銀や物質上の富や資産以上のものを意味します。
43 (イ)ゴグの大軍の侵攻はエホバのクリスチャン証人の用いている法人団体やその所有する資産にどんな影響を及ぼし得ると考えられますか。(ロ)これはエホバのクリスチャン証人が存在しなくなることを意味していますか。
43 大いなるバビロンが滅びた後にゴグの大軍が「イスラエルの地」に入ることがエホバのクリスチャン証人にとって何を意味するかは,その時の地上の出来事が雄弁に物語るでしょう。もし,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会の九十七の支部が閉鎖され,その資産が反宗教的政府により収用されても驚くには及びません。霊的教導を受ける場所として地球上の至る所でエホバのクリスチャン証人の建てた何千軒もの王国会館がどうなるかは,将来分かるでしょう。エホバの証人が聖書や聖書文書の印刷・頒布を遂行する機関として用いている各種法人団体の設立許可書や登録証を発行した政府がその時,こうした法人団体を許可もしくは認可するとはまず期待できないでしょう。無論,敵意を抱く政府機関と言えども全世界のエホバのクリスチャン証人を解体させることはできません。と言うのは,証人たちはいかなる土地でも人間の作った「カエサル」の法律のもとで法人化されているのではないからです。
44 政府機関と言えども「忠実で思慮深い奴隷」やその統治体を解体できるものではありません。なぜですか。
44 同様に,現代のマゴグのゴグの指揮下の国や州の政府は,統治中の王イエス・キリストにより信頼できるものであることを知られ,キリストの地上の「すべての持ち物」をつかさどるよう立てられた「忠実で思慮深い奴隷」の団体を解体することはできません。そうすることはできません。と言うのは,この集合的な「奴隷」は世界のいかなる政府機関の法律のもとでも決して法人化されたことはないからです。(マタイ 24:45-47。ルカ 12:42-44)この「奴隷」級は王なる主人イエス・キリストによって組織された西暦1世紀以来存在し,この時代に至るまで主の奉仕に活発に携わり続けており,「カエサル」やマゴグの地のゴグではなく,主人に対して責任を負っています。このことはまた,油そそがれた「忠実で思慮深い奴隷」級の,聖書に基づく統治体についても当てはまります。象徴的な「野獣」の政治機関はペンシルバニアのものみの塔聖書冊子協会の法人組織やその理事会,また各地のエホバのクリスチャン証人の他の法人団体を解体させるかもしれません。しかし,「忠実で思慮深い奴隷」級を代表する統治体の神権的な任命を解消もしくは無効にすることはできません。
45 エホバのクリスチャン証人にとって地下活動を遂行するのは何か目新しいことでしょうか。
45 エホバのクリスチャン証人にとって自分たちの霊的活動を遂行するため地下に潜ることは目新しい経験ではありません。西暦1世紀には一般の歴史によれば,忠実なクリスチャンは残忍な迫害の最中,ローマ帝国内の地下埋葬場で一緒に集まりました。この二十世紀でも,エホバのクリスチャン証人は禁令や追放にもめげず,首尾よく地下組織を維持して,弟子を作る活動を遂行してきました。
46 (イ)たとえ地下に追いやられても,エホバの民は互いのことを考えて何をしますか。(ロ)マゴグのゴグによるそのような攻撃は霊的なパラダイスを滅ぼすことになりますか。
46 これまでの何十年もの間,共産主義諸国を覆ういわゆる鉄のカーテンの背後でも,証人たちは神への崇拝と奉仕を続行してきました。たとえ,マゴグのゴグの大軍が侵攻する際,世界的に地下活動を余儀なくされようとも,証人たちは組織を保ってゆきます。互いに連絡を保つよう努力します。エホバの仲間の崇拝者たちから身体的に引き離される場合は特に互いのために祈ります。そして,霊的なパラダイスのうちにあって引き続き歓喜します。マゴグのゴグの手で激しい迫害を被ろうと,神からの恵みや是認や祝福を失っている訳ではないことを知っているからです。彼らの霊的な特質はかつてなかったほどに一層明るく輝きますし,単に体を殺し得ても,その後はエホバ神への忠誠を守る忠実なクリスチャンに対してそれ以上何もできない人間のために自分たちの霊的な命を消滅させるようなことは許しません。―ルカ 12:4。マタイ 10:28。
47 エゼキエルを通して与えられた預言は,マゴグのゴグの指揮下で実際に侵攻が行なわれることをどのように示していますか。
47 現代のマゴグのゴグの配下の大軍が一体どれほど深く侵入するのを全能者なるエホバ神が許されるかについては,注意を喚起されているエホバの証人は待機して見守らなければなりません。エゼキエルを通して与えられた預言は,侵攻がなされることを示しています。「〔主権者なる主エホバ〕は言われる,その日,すなわちゴグがイスラエルの地に攻め入る日に,わが怒りは現れる。わたしは,わがねたみと,燃えたつ怒りとをもって言う。その日には必ずイスラエルの地に,大いなる震動があり,海の魚,空の鳥,野の獣,すべての地の這うもの,地のおもてにあるすべての人は,わが前に打ち震える。また山々はくずれ,がけは落ち,すべての石がきは地に倒れる」― エゼキエル 38:18-20,口語〔新〕。
48 マゴグのゴグの軍勢による攻撃を受ける時,エホバのクリスチャン証人はどのように反応しますか。それはなぜですか。
48 マゴグのゴグの「軍勢」による激しい攻撃を受けるとは言え,エホバのクリスチャン証人はその愛のうちに,その是認のもとにありますから,霊的に安全です。預言によれば,「穏やかにして安らかに住」み,「すべて石がきもなく,貫の木も門もない」状態ですから,主権者なる主エホバのそれら崇拝者たちは,マゴグのゴグの重装備を持つ軍勢に激しく抵抗して手を挙げたりはしません。神にその保護の力を行使して守っていただきます。彼らはエホバの崇拝者たちが同様の侵入を受ける窮境に迫られて預言者が述べた次のような言葉を思い起こし,その言葉に信仰を抱きます。『この大衆のためにおそるゝなかれ 慄くなかれ 汝らの戦ひにあらず エホバの戦ひなればなり』。(歴代下 20:15)全能の神に信頼することは見当違いとはなりません。神はそれをご自分の戦いとします。その戦いは実際,証人たちに対するものではなく,彼らの神であるその方に対する戦いだからです。今や神は本当に怒り,その怒りを表わすのは全く正当なこととなります!
49 (イ)聖書の中でハルマゲドンと呼ばれているあの「場所」は何を意味していますか。(ロ)ご予定の時に,エホバはだれを用いて地上の敵に対するその戦いを遂行なさいますか。
49 今や「全能者なる神の大いなる日」が到来し,エホバの宇宙主権の正しさを立証するその日を印づける「戦争」の時となります。ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる,あの比喩的な「場所」,全能者なる神とゴグの勢力との間の敵意が爆発しそうになるあの段階に達するのです。(啓示 16:14,16)地上のエホバのクリスチャン証人ではなく,エホバが,今や戦闘隊形を整えた地上の敵に対して戦いを開始されます。エホバはその大元帥,戦士である王イエス・キリストに合図なさいます。イエスとその天の軍勢はその合図に従って直ちに行動を起こし,エホバの名において,あたかも軍馬にまたがってでもいるかのように戦闘に突入します。続いて起こる,宇宙的重要性を持つ戦い,および現代のマゴグのゴグ配下の軍勢の世界的な戦列に何が起きるかは,霊感を受けた聖書巻末の書の中でわたしたちのために描かれています。
ハルマゲドンにおける戦い
50 ハルマゲドンにおける戦いに関する事前の報告の中で,使徒ヨハネは義の側に立って戦う者たちのことをどのように描写していますか。
50 その戦場は象徴的にハルマゲドンと呼ばれています。時は,象徴的な「十本の角,また野獣」によって大いなるバビロンが火のような滅びを被った後と考えられます。(啓示 17:16から19:9)新聞やニュース雑誌の従軍記者のように使徒ヨハネはハルマゲドンにおけるその戦いに関する事前の報告を寄せて,こう書いています。「また,わたしは天が開かれているのを見た。すると,見よ,白い馬がいた。そして,それに乗っている者は忠実かつ真実と称えられ,その者は義をもって裁きまた戦う。彼の目は火の炎であり,頭には多くの王冠がある。彼には記された名があるが,彼自身のほかはだれもそれを知らない。そして,彼は血のかかった外衣で身を装っており,その称えられる名は神のことばである。また,天にある軍勢が白い馬に乗って彼のあとに従っていたが,彼らは白くて清い上等の亜麻布をまとっていた。そして彼の口からは鋭くて長い剣が突き出ている。それによって諸国民を打つためである。また彼は,鉄の杖で彼らを牧する。また,全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶねも踏む。そして,彼の外衣に,実にそのもものところに,王の王また主の主と書かれた名がある」― 啓示 19:11-16。
51 (イ)その時,地上にいるエホバの証人はなぜ大きな信仰を必要としますか。(ロ)王の王の口から突き出る「鋭くて長い剣」とは何ですか。
51 王の王の指揮下のそれら「天にある軍勢」はその姿を戦列を整えた地上の諸国家に見せはしません。それで,他を害さない無防備のエホバの証人にとって,非常な窮境の際にそれら天の軍勢の救助を受けられるということを信ずるには信仰が要ります。しかし,それら目に見えない軍勢はその戦闘活動を,悪魔サタンであるマゴグのゴグの指揮下の諸国家すべてに痛感させます。王の王は「鉄の杖で」諸国民を「牧する」ので,彼らは陶器師の陶器のように粉砕される時,その威力を思い知らされます。彼は神のことばです。ですから,その口から突き出る「鋭くて長い剣」とは,諸国民に対して刑を執行するために口から出る裁きの言葉です。彼の口の述べる事は諸国民に対して執行され,彼らは打たれて死にます。
52 (イ)諸国民の経験することはどうして酒ぶねの中のぶどうのそれに似ていますか。(ロ)聖書によれば,エホバの憤りは何によって表わされますか。
52 王の王が『全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶねをも踏む』以上,これは諸国民がいわばつぶされることを意味しています。その光景にふさわしく,彼らは途方もなく大きな「酒ぶね」に熟したぶどうのように投げ込まれ,「全能者なる神の憤りの怒り」がそこに投じられて彼らを押しつぶすような影響をもたらします。また,王の王と,馬にまたがったその天の軍勢はつぶす仕事,その象徴的な酒ぶねを踏むことに加わります。酒ぶねを踏む時に出現する象徴的な情景は,全能者なるエホバ神があたかも地震や疫病,はんらんを引き起こす豪雨や雹,火や硫黄,それに多大の流血をもってするようにマゴグのゴグの大軍に対してご自分の憤りや火のような怒りを表わすと言われたことと合致します。―エゼキエル 38:18-22。ヨエル 3:9-16や啓示 14:18-20と比べてください。
53,54 (イ)ハルマゲドンにおける宇宙的な戦いにおける勝者はだれであることが明らかですか。(ロ)戦いが終わる前でさえ,「中天を飛ぶすべての鳥」に対してどんな招きが差し伸べられていますか。
53 霊的なマゴグのゴグの配下で戦闘隊形を整える多国連合軍は,いと高き全能の神エホバの宇宙主権のために戦う,王の王で主の主なる方に対して地歩を保てるなどとどうして考えられるでしょう。国際連合機構また核兵器を備えた諸国家と言えども,決してそうすることなどできるものではありません! ハルマゲドンにおける宇宙的な戦いの際の勝者はだれかという結論の答えは既に分かっています。全能者なる神は敵の死者のしかばねで戦場を覆わせますが,それらしかばねは,中空を飛ぶ,腐肉を食べる鳥すべてのためのいわゆる「神の大きな晩さん」のごちそうとなります。その戦いがなお最後まで行なわれないうちに,太陽の光で飾られたひとりの天の使いがそれらの鳥すべてに向かって,神が彼らのためにハルマゲドンで用意する食事を食べに来るよう差し招く様が描かれています。そのことについて,ニュース記者ヨハネはこう述べています。
54 「わたしはまた,ひとりの使いが太陽の中に立っているのを見た。彼は大声で叫び,中天を飛ぶすべての鳥に言った。「さあ来なさい,神の大きな晩さんに集まれ。王たちの肉,軍司令官たちの肉,強い者たちの肉,馬とそれに乗る者たちの肉,そしてすべての者,すなわち自由人ならびに奴隷および小なる者と大なる者の肉を食べるためである」― 啓示 19:17,18。
55 (イ)それらの鳥は「野獣」や「偽預言者」を食べるよう招かれているのではありません。どうしてでしょうか。(ロ)エゼキエルの預言では,鳥のほかにどんな生き物がその宴に招かれていますか。
55 「中天を飛ぶすべての鳥」が政治的な「野獣」や政治的「偽預言者」の死骸を食べるよう招かれているのでないことは注目に値します。(啓示 13:1-8,11-13; 16:13)ここで描かれているのはまさしく,敵の軍勢の死骸で覆われた戦場の光景です。それはどう猛な野獣を追跡したり,唯一の「偽預言者」を攻撃したりするような光景ではありません。霊的なパラダイスに住む,回復されたエホバの民に対するゴグの軍勢による攻撃に関する預言者エゼキエルの幻の中では,『もろもろの類の鳥』以外のものも,打ち負かされた敵の死骸を食べるよう招かれています。『野のもろもろの獣』も皆,「勇士の肉」『馬と騎者と勇士ともろもろの軍人』を食べるよう招かれています。(エゼキエル 39:17-20)「全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶね」の中で天の軍隊によって踏みつぶされる者たちに対するエホバの侮べつや軽べつの念は,殺された敵の死骸を葬らずに鳥や獣のための腐肉のえさとして放置させることによって示されます。
56 啓示 17章はエホバの王を攻撃する,マゴグのゴグ配下の結束した地的勢力をどのように描写していますか。
56 悪魔サタンの結束した見える組織全体がその戦いに加わります。マゴグのゴグの配下で地上の諸勢力がエホバの王の王に敵して結束する様は,七つの頭と十本の角のある集団的な唯一の「野獣」による攻撃として描写されています。この緋色の「野獣」は最初に,偽宗教の世界帝国である大いなるバビロンを滅ぼすものとして描かれています。その集団的な「野獣」の十本の角で表わされている反宗教的政治支配者たちに関して,使徒ヨハネはこう言われました。「これらの者は一つの考えをいだき,それゆえに自分たちの力と権威を野獣に[国際連合に]与える。これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼とともに征服する」― 啓示 17:13,14。
57 (イ)子羊は「主の主,王の王」と呼ばれていますが,このことにはどんな意義がありますか。(ロ)国際連合を表わす「野獣」による襲撃の目標となるのはだれですか。
57 七つの頭と十本の角のある野獣と子羊とが戦うのでは互角の戦いとは思えません。ところが,この預言の象徴的な子羊は,エホバの用いる任命された主の主で王の王ですから,加盟138か国を有する国際連合である象徴的な「野獣」のうちに結束している主や王たちすべてよりも勝っています。彼らは地的な存在ですから,直接子羊と戦おうとしても肉眼ではその子羊を見ることはできません。しかし,「召され,選ばれた忠実な者たち」の油そそがれた残りの者が肉身で地上にいるのを見ることができます。それらの者は王の王また主の主なる方を代表しているゆえに,国際連合の加盟諸国は特に王国の共同相続者の油そそがれた残りの者と戦うことによって,子羊と戦います。この忠実な残りの者と交わっているのは,エホバの宇宙主権をしっかり支持し,立派な羊飼いイエス・キリストに従う「大群衆」の数え切れないほどの成員です。ですから,「大群衆」に属するそれら弟子たちもまた,油そそがれた残りの者と共に反宗教的な国際連合の猛攻撃を受けます。
58 その時,(イ)王の王,(ロ)その地上の臣民はどんな征服を仕遂げますか。
58 象徴的な「十本の角」と緋色の「野獣」は,王の王の地上の忠実な代表者すべてを滅ぼせるものではありません。マゴグのゴグによる攻撃に関する預言的描写の場合のように,「召され,選ばれた忠実な者たち」や「大群衆」が王の王の保護を受けている霊的なパラダイスを一掃できる訳ではありません。(啓示 7:9-17; 12:17)天界のみ使いたちの軍勢と共に王の王は,「野獣」という世界的機構に属する,戦う「十本の角」を文字通り征服します。地上では「召され,選ばれた忠実な者たちも彼[王の王]とともに」,全地を支配する王の王の権利を決して否認せず,永遠の王エホバ神の宇宙主権を決して否定せずにクリスチャンの信仰によって征服します。(啓示 15:3)霊的なパラダイスの仲間の住民の「大群衆」も同様に妥協を拒み,十本の角と七つの頭のある「野獣」の,全地に対する世界支配にかかわる要求に屈することもしません。
59,60 (イ)その時,信仰によって征服するとは言え,中には敵の手にかかって死ぬ人がいるでしょうか。(ロ)このようにしてエホバの主権に対する忠節を実証するよう,それらの人を強めるのはどんな希望ですか。(ハ)その時,油そそがれた残りの者と「大群衆」が敵によって一掃される可能性が果たしてあるでしょうか。
59 信仰によって征服する者たちの中には,エホバのメシアによる王国に激しく反対する者らの手にかかって死を遂げることにより神の宇宙主権に対する忠節を実証することを全能者なる神から許される人たちがいるかもしれません。とは言え,それは彼らがエホバの元帥イエス・キリストの指揮下のみ使いの軍勢によって処刑されるという意味ではありません。
60 宇宙の神の主権のために死ぬそのような忠実な殉教者は,キリストによるエホバの支配の正当性を立証する者として忠実のうちに死にます。エホバの恵みと感謝を受けながら死ぬのです。「いおうで燃える火の湖」で象徴されているような永久の滅びである「第二の死」に投じられることはありません。(啓示 19:20; 20:10,14,15; 21:8)イエス・キリストご自身も死なれたように,神のご予定の時に死人の中から復活させられるという心強い希望を抱いて,征服されることなく死ぬのです。(啓示 2:10; 14:13; 20:4,6,11-13)とは言え,油そそがれた残りの者の成員すべてがエホバのメシアによる王国に反対して戦う者たちによって絶滅される訳ではありません。また,啓示 7章9-14節は,ほかにも「大群衆」の数え切れないほどの成員が「大患難」のその最高潮に生き残ることを保証しています。個々の人は死ぬ場合があるかもしれませんが,残りの者と「大群衆」全体がそうなることはありません。
王の反対者たちを壊滅させる
61 啓示 19章19-21節で使徒ヨハネは,ハルマゲドンで処刑される者たちのことをどのように描写していますか。
61 啓示 19章19-21節で使徒ヨハネは,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」で永遠の命を受けるにふさわしくない者として地上で処刑される者たちについて報じています。その事前のニュース記事の中でヨハネはこう書いています。「そしてわたしは,野獣と地の王たちとその軍勢が,馬に乗っているかた[王の王また主の主]とその軍勢に対して戦いをするために集まっているのを見た。そして,野獣[サタンの世界的政治体制]は捕えられ,それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像[国際連合]に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた。彼らは両方とも生きたまま,いおうで燃える火の湖に投げ込まれた。しかし,そのほかの者たちは,馬に乗っている者の長い剣で殺された。その剣は彼の口から出ているものであった。そして,すべての鳥は,彼らの肉を食べて満ち足りた」。
62 その時,諸国民は反宗教的態度によってどの程度特徴づけられているでしょうか。
62 ハルマゲドンでこの戦争を行なう時分までには大いなるバビロンは絶滅させられています。偽宗教のあの世界帝国の滅びのことがここで述べられていないのはそのためです。完全な無宗教状態が諸国民の間に行き渡るその時までにはまた,もはや大いなるバビロンと淫行を行なえないためにしばしの間泣くような「王たち」はいなくなります。同様に,もはや彼女と共に利己的な商売を行なえないゆえに泣いて嘆き悲しんだ「旅商人」もいません。また,もはや大いなるバビロンと利己的な交易を行なえぬゆえに泣いて嘆き悲しんでいる『すべての船長,またどこであろうと航海をする者もみな,また水夫たちや海で暮らしを立てる者もみな』いなくなります。(啓示 18:9-19)もしそれらの者が大いなるバビロンの滅亡後まで生き残りたいのであれば,龍であるサタンが力と権威と座を与えた,七つの頭と十本の角のある「野獣」の政治的な「像」に対する崇拝は別として徹底的な反宗教の立場に転ぜざるを得なくなります。―啓示 13:1-8; 14:9-11; 16:2。
63 地上の支配者たちによる偽宗教の世界帝国の滅びは,神のメシアによる王国に対する彼らの愛を示すものとなりますか。彼らはそのことをどのようにして示しますか。
63 それで啓示 19章19-21節のその戦いの幻が成就する時には,象徴的な「野獣」と「地の王たちとその軍勢」はあの宗教上の「娼婦」に対する憎しみを表わして,「大いなるバビロン」を片付けてしまっています。彼女は決してエホバの神権政府を代表したことはありません。キリスト教世界と呼ばれる,彼女のあの部分と言えどもそうです。しかし,偽宗教である大いなるバビロンの滅びは,神のメシアによる王国に対する「地の王たちとその軍勢」の側の何らかの愛を示すものではありません。それら地上の王たちとその軍勢は全地に対する独自の政治的主権に対する愛ゆえに神の王国を憎んでいます。そこで今度は,大いなるバビロンがなくなったので,彼らはイエス・キリストとキリストの運営する天の王国に対して戦いを行なうことに注意を集中できます。
64 (イ)残りの者と「大群衆」は「地の王たちとその軍勢」にとってどうして不快な存在ですか。(ロ)敵はどんな手段によってエホバの民に対して戦うと考えられますか。
64 キリストの油そそがれた共同相続者の生き残っている残りの者は,それに彼らの忠節な仲間の「大群衆」もまた,人の住む全地でメシアによる王国の良いたよりを終わりに至るまであらゆる国民に対する証しのために宣明してきたゆえに世の諸国民の標的となってきました。(マタイ 24:14)エホバの宇宙主権のこのような擁護者たちは,「地の王たちとその軍勢」にとって不快で鼻持ちならぬ存在です。それで彼らは思いのままに用い得る政治・軍事・司法・経済上の手段を駆使して戦いを行なうことにより,目に見えない王の王に対する敵意を表わします。「地の王たちとその軍勢」は,やつらを根絶しろ! というスローガンを唱えるでしょう。天の王の王は,油そそがれた残りの者と「大群衆」に対する彼らの敵意のある行動をご自分に対するものとみなされます。最高司令官であられるエホバ神から正確に時を定めて出される合図と同時に,王の王とそのみ使いの軍勢は,神を侮る地上の敵に対する戦いに突入します。
65,66 (イ)啓示 19章20節で描写されているように,神の地上の敵の一致はハルマゲドンでどのようにして打ち破られますか。(ロ)この処置が取られる時,「野獣」や「偽預言者」が「生きたまま」であるということは何を示していますか。(ハ)それらが「いおうで燃える火の湖」に投げ込まれるということは何を示していますか。
65 最初の措置は,地上の敵の一致を打ち砕くことです。それは海から上った「野獣」で象徴されている世界的な政治体制を粉砕することを意味します。それが解体されると共に,第八世界強国つまり「野獣の像」で象徴された世界平和と安全のための全地球的な機構である国際連合が解体され,また第七世界強国すなわち「偽預言者」で象徴されている英米二重世界強国も解体されてしまいます。従って,使徒ヨハネはこう述べています。
66 「そして,野獣は捕えられ,それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた。彼らは両方とも生きたまま,いおうで燃える火の湖に投げ込まれた」。(啓示 19:20)この処置が取られる時,それら政治組織が「生きたまま」であるということは,「全能者なる神の大いなる日の戦争」がハルマゲドンで始まる際,今日のそれら世俗的組織はなお機能していることを示しています。世界を支配している「野獣」と英米「偽預言者」は共に,油そそがれた残りの者とその霊的なパラダイス内の「大群衆」を滅ぼそうと努めている最中に捕らえられます。次いでそれらの組織は解体され,残りの者と「大群衆」を滅ぼす代わりに,神を侮る人間のそれら政治組織が未来永劫にわたって壊滅させられます。その非業の死は,再組織される希望のない「第二の死」となります。ゆえに,それらのものは「いおうで燃える火の湖」に投じられる様が描かれているのです。
67 悪魔サタンとその悪霊たちは,いつあの「火の湖」で「野獣」や「偽預言者」と一緒にされますか。
67 このように,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」の時でさえ,また悪魔サタンが底知れぬ所に入れられて人類に対するキリストの千年統治が始まる前に,ハルマゲドンで王の王とそのメシアの王国に敵して戦う者たちは「第二の死」に処されることが分かります。「第二の死」という処罰は,「いおうで燃える火の湖」で象徴されています。キリストの千年統治が終わった後,神のご予定の時に,悪魔サタンと配下の使いである悪霊すべてはその「火の湖」で,「野獣」および「偽預言者」で表わされた,人間の作ったもろもろの政治組織と一緒にされます。(啓示 20:10)それは「悪魔とその使いたちのために備えられた永遠の火」となります。―マタイ 25:41。
68 人間の見える古い秩序が除き去られると共に,生き残る人たちにはどんなすばらしい見込みがありますか。
68 こうして,宗教上の大いなるバビロンと,七つの頭のある「野獣」や「偽預言者」で表わされている政治組織が悲惨な終わりを遂げると共に,人間の見える古い秩序はこの地のための神の新秩序に道を譲ります。それは人類史上,生き抜くのに最も困難な時期となるでしょう。(マタイ 24:21,22。ダニエル 12:1)しかし,地上にはそれを生き残る人たちがいます。生き残って祝福された神の新秩序に入る人たちは何と幸いでしょう。